JPH1193950A

JPH1193950A - スラスト玉軸受

Info

Publication number: JPH1193950A
Application number: JP9258819A
Authority: JP
Inventors: Masatoshi Niina; 正敏新名; Hajime Nomura; 肇野村
Original assignee: NTN Corp; NTN Toyo Bearing Co Ltd
Current assignee: NTN Corp
Priority date: 1997-09-24
Filing date: 1997-09-24
Publication date: 1999-04-06

Abstract

(57)【要約】【課題】相互に偏心回転する二つのスクロール部材間に
取付けられるスラスト玉軸受は、調心機構の調心動作に
対して、ボールが軌道溝から乗り出す等の現象が生じる
場合がある。【解決手段】本発明のスラスト玉軸受１は、相互に偏心
回転する二つのスクロール部材の軸方向に相対向する装
着部に、それぞれ取付けられる一対の軌道輪と、この一
対の軌道輪に形成された軌道溝間に配されるボールとで
構成される。その一方の軌道輪６は、軌道溝６ａ以外の
少なくとも一箇所に、円周方向に長穴状になったガイド
穴６ｅが形成され、そのガイド穴６ｅを装着部４ｂに設
けたピン８に挿嵌することにより、調芯機構の調心動作
に合わせて移動する構成を有している。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、スクロー
ル圧縮機における旋回スクロール部材と静止スクロール
部材のように、相互間で偏心回転運動を行なう二つの部
材間に介装されるスラスト玉軸受に関する。

【０００２】

【従来の技術】図４に示すように、スクロール圧縮機
は、旋回スクロール部材１１及び静止スクロール部材１
２にそれぞれ螺旋状隔壁１１ａ，１２ａを具備し、両螺
旋状隔壁１１ａ，１２ａ間に形成される圧縮室Ｐを、旋
回スクロール部材１１の静止スクロール部材１２に対す
る偏心回転に伴って容積変化させることにより、圧縮室
内の流体の圧縮動作を行なうものである。

【０００３】旋回スクロール部材１１の軸心Ｃ１と駆動
モータ２０の出力軸の軸心Ｃ２とは、所定の偏心量ｓだ
け偏心しており、駆動モータ２０が作動すると、旋回ス
クロール部材１１が偏心量ｓに等しい旋回半径で偏心回
転する。このとき、旋回スクロール部材１１には、これ
を自転させようとする力が働き、また、流体の圧縮動作
に伴なうスラスト荷重が負荷される。

【０００４】そこで、旋回スクロール部材１１の自転を
防止し、スラスト荷重を支持するため、旋回スクロール
部材１１と、静止スクロール部材１２に固定された静止
フレーム１３との間にスラスト玉軸受１４を介装してい
る。

【０００５】スラスト玉軸受１４は、例えば一対の同形
状の軌道輪１５，１６と、これら軌道輪１５，１６間に
介在する複数のボール１７とを具備する。軌道輪１５，
１６は、それぞれ、旋回スクロール部材１１と静止フレ
ーム１３の軸方向に相対向した装着部１１ｂ，１３ｂに
固定される。

【０００６】図５（ａ）に示すように、軌道輪１５（軌
道輪１６も同様の構成である。）は、例えば鋼板素材か
らプレス加工等により成形されたリング状の薄板部材
で、その一方の端面には複数の環状形状の軌道溝１５ａ
（１６ａ）が同一円周上に形成されている。ボール１７
は、各軌道溝１５ａ（１６ａ）に配され、旋回スクロー
ル部材１１の偏心回転に伴なって、軌道溝１５ａ（１６
ａ）のピッチ円ＰＣＤ上を転動する。なお、軌道溝１５
ａ（１６ａ）のピッチ円ＰＣＤの直径ｄ１は、偏心量ｓ
と等しい。

【０００７】軌道輪１５（１６）には、軌道溝１５ａ
（１６ａ）以外の少なくとも一箇所にピン穴１５ｄ（１
６ｄ）が形成され、一方、装着部１１ｂ（１３ｂ）に
は、図５（ｂ）に示すように、軌道輪１５（１６）のピ
ン穴１５ｄ（１６ｄ）に対応する部分にピン穴１１ｄ
（１３ｄ）が形成される。

【０００８】軌道輪１５（１６）の取付けは、まず、装
着部１１ｂ（１３ｂ）のピン穴１１ｄ（１３ｄ）にピン
１８を圧入し、次に、このピン１８に軌道輪１５（１
６）のピン穴１５ｄ（１６ｄ）を嵌め合わせて位置決め
を行ない、軌道輪１５（１６）を装着部１１ｂ（１３
ｂ）の肩部に嵌合する。これにより、軌道輪１５（１
６）は、旋回スクロール部材１１（静止フレーム１３）
の装着部１１ｂ（１３ｂ）に回り止め固定される。この
ように回り止めを必要とするのは、旋回スクロール部材
１１の偏心回転に伴なって、軌道輪１５（１６）が装着
部１１ｂ（１３ｂ）に対して自転するのを防止し、軌道
輪１５，１６相互間の位置関係を維持することにより、
軌道溝１５ａ，１６ａにおけるボール１７の円滑な転動
を確保するためである。

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】上記のような、スクロ
ール圧縮機において、旋回スクロール部材１１及び静止
スクロール部材１２の２つの螺旋状隔壁１１ａ，１２ａ
は、両隔壁１１ａ，１２ａ間に形成される圧縮室Ｐから
流体が漏れないように、常に接触している必要がある。
一方、螺旋状隔壁１１ａ，１２ａには、現実には、工業
製品として製造上のばらつきが不可避である。そこで、
圧縮室Ｐから流体が漏れるのを防止し、適切な圧縮動作
を確保するために、種々の調心機構を設けて上記製造上
のばらつきを吸収している。その調芯機構として、例え
ば、旋回スクロール部材１１を所定範囲で自転可能とす
る機構がある。

【００１０】しかし、旋回スクロール部材１１が静止ス
クロール部材１２に対して、調心のための自転運動等を
行なうことにより、装着部１１ｂ，１３ｂに回り止め固
定された軌道輪１５，１６相互間に位置関係のずれが生
じる。そして、そのずれが許容範囲を超えると、ボール
１７が軌道溝１５ａ，１６ａの溝肩に乗り上げる現象が
起こり、スラスト玉軸受１４の軸受機能が損なわれてし
まう可能性がある。

【００１１】本発明の目的は、上記のような調心機構を
設ける場合等における、軌道輪相互間の位置ずれに対応
し得る構成を提供することである。

【００１２】

【課題を解決するための手段】本発明のスラスト玉軸受
は、相互間で偏心回転運動を行なう二つの部材の、軸方
向に相対向した装着部に、それぞれ取付けられる一対の
軌道輪と、これら軌道輪に形成された複数の凹状の軌道
溝間に介在するボールとを備え、一方の軌道輪が装着部
に対して、ボールから受ける力に応じて所定範囲で移動
可能なものである。

【００１３】

【発明の実施の形態】以下、本発明をスクロール圧縮機
用スラスト玉軸受に適用した場合の実施形態について説
明する。

【００１４】図１は、図４に示すようなスクロール圧縮
機におけるスラスト玉軸受１の周辺部を示している。こ
のスクロール圧縮機は、旋回スクロール部材２が、静止
スクロール部材３に対して、旋回スクロール部材２の軸
心Ｃ１とモータの軸心Ｃ２との偏心量ｓに等しい旋回半
径で偏心回転し、両者の螺旋状隔壁２ａ，３ａ間に形成
される圧縮室Ｐが容積変化することによって流体の圧縮
を行なうものである。また、このスクロール圧縮機は、
両螺旋状隔壁２ａ，３ａを常に接触した状態に保ち、圧
縮室Ｐから流体が漏れないようにするための調心機構を
備えている。例えば、調心機構は、旋回スクロール部材
２を静止スクロール部材３に対して、所定範囲で自転可
能とするものである。

【００１５】スラスト玉軸受１は、上記のような旋回ス
クロール部材２の偏心回転運動を支持すると共に、圧縮
空気圧によるスラスト荷重を支持する役割を持つ。

【００１６】以下、この実施形態におけるスラスト玉軸
受１の構成を説明する。

【００１７】スラスト玉軸受１は、旋回スクロール部材
２、及び、静止スクロール部材３に固定され、旋回スク
ロール部材２の下側に位置する静止フレーム４の、軸方
向に相対向する装着部２ｂ，４ｂに、それぞれ取付けら
れる一対の軌道輪５，６と、この一対の軌道輪５，６に
形成された複数の軌道溝５ａ，６ａ間にそれぞれ配され
るボール７とで構成される。

【００１８】図１（ｂ）に拡大して示すように、この実
施形態において、旋回スクロール部材２及び静止フレー
ム４の装着部２ｂ、４ｂはいずれも段状であり、旋回側
の軌道輪５の内周５ｂは装着部２ｂの肩部２ｃに嵌合さ
れ、静止側の軌道輪６の外周６ｃは装着部４ｂの肩部４
ｃに装着される。

【００１９】図２（ａ）は、静止側の軌道輪６を示して
いる。軌道輪６は、例えば鋼板素材からプレス加工等に
より成形され、内周及び外周が共に円形のリング形状の
薄板部材である。軌道輪６の端面には、複数の凹状の軌
道溝６ａが同一円周上に形成される。各軌道溝６ａは環
状の軌道を有する。また、図２（ｂ）に拡大して示すよ
うに、軌道輪６の軌道溝６ａ以外の少なくとも一箇所
に、円周方向に長穴状になったガイド穴６ｅが形成され
る。図２（ｃ）に示すように、ガイド穴６ｅに対応し
て、静止フレーム４の装着部４ｂにピン穴４ｄが形成さ
れ、このピン穴４ｄにピン８が圧入固定される。軌道輪
６の取付けは、軌道輪６を装着部４ｂに装着し、そのガ
イド穴６ｅをピン８に挿嵌することにより行なう。

【００２０】ここで、ガイド穴６ｅの円周方向寸法は、
ピン８の直径よりも所定寸法だけ大きく設定され、ま
た、ガイド穴６ｅの半径方向寸法は、ピン８に対して所
定の嵌合力が得られるよう、ピン８の直径よりわずかに
小さく設定される。そのため、軌道輪６は、ピン８との
所定の嵌合力を超える力が円周方向に作用すると、装着
部４ｂに対して、円周方向にずれ動き、その移動範囲は
ピン８とガイド穴６ｅとの円周方向の係合によって規制
される。

【００２１】一方、旋回側の軌道輪５は、例えば、図５
に示す従来の軌道輪１５と同様の形状を有し、かつ、同
様の態様で旋回スクロール部材２の装着部２ｂに回り止
め固定される。なお、旋回側の軌道輪５と静止側の軌道
輪６との円周方向の位置関係は、一方又は双方の位置調
整により、適切な位置関係に初期設定される。

【００２２】ボール７は、軌道輪５と軌道輪６の相対向
した軌道溝５ａ，６ａ間にそれぞれ配され、旋回スクロ
ール部材２の偏心回転に伴なって、軌道溝５ａ，６ａの
ピッチ円ＰＣＤ上を転動する。軌道溝５ａ，６ａのピッ
チ円ＰＣＤの直径ｄ１は、偏心量ｓと等しい。

【００２３】以下、上記スラスト玉軸受１の作用につい
て説明する。

【００２４】スクロール圧縮機が流体を圧縮するとき、
旋回スクロール部材２は、静止スクロール部材３に対し
て偏心回転運動を行なうと共に、両者の螺旋状隔壁２
ａ，３ａが常に相接触するように調心のための自転を行
なう。この時、旋回スクロール部材２の装着部２ｂに固
定された軌道輪５は、旋回スクロール部材２の調心動作
に伴ない静止側の軌道輪６に対して所定範囲の自転運動
を行ない、そのため両軌道輪５，６間に位置関係のずれ
が生じる。この位置関係のずれにより、ボール７は旋回
側の軌道輪５の軌道溝５ａから自転と同じ方向の力を受
け、これと同じ方向の力を静止側の軌道輪６の軌道溝６
ａに及ぼす。そして、このボール７からの力がピン８と
ガイド穴６ｅとの嵌合力を超えると、静止側の軌道輪６
がボール７から受ける力に応じて円周方向にずれ動く。
この静止側の軌道輪６の円周方向の移動によって、旋回
側の軌道輪５との位置関係のずれが修正される。

【００２５】上記のように、スラスト玉軸受１は、静止
側の軌道輪６が装着部４ｂに対して円周方向に所定範囲
移動することによって、旋回側の軌道輪５との位置関係
のずれを修正するものであり、これによりボール７の適
切な転動が確保され、安定した軸受機能が維持される。

【００２６】なお、調芯機構によっては、旋回スクロー
ル部材の調心動作に伴ない、旋回側の軌道輪と静止側の
軌道輪との間に直径方向の位置関係のずれが生じる場合
がある。そのずれがある方向性をもっている場合は、図
３に示すように、ガイド穴６ｅ' を直径方向に長穴状に
形成し、軌道輪６' がその方向（直径方向）に移動可能
な構成とすることにより、旋回側の軌道輪と静止側の軌
道輪との位置関係のずれを修正することができる。

【００２７】以上の実施形態では、静止側の軌道輪に設
けた長穴状のガイド穴と静止側の装着部に設けたピンと
の係合構造によって、静止側の軌道輪を装着部に対して
所定範囲で移動可能な構成にしてあるが、長穴状のガイ
ド穴（ガイド溝）を装着部に設け、ピンを軌道輪に設け
てもよい。また、本発明の意図する範囲内において、そ
の他の係合構造を採用することができる。さらに、必要
に応じて、静止側の軌道輪を装着部に固定し、旋回側の
軌道輪を上記に準じて移動可能な構成とすることもでき
る。

【００２８】また、旋回側の軌道輪と静止側の軌道輪と
の位置関係のずれは、調芯機構によるものに限られず、
取付け誤差等によって生じる場合もあり、その場合に
も、本発明の構成は有用である。つまり、本発明は、こ
の種のスラスト玉軸受において、軌道輪相互間の位置関
係のずれを修正する手段として広く適用可能である。

【００２９】

【発明の効果】上述のように、本発明のスラスト玉軸受
は、一方の軌道輪が装着部に対して所定範囲で移動可能
な構成を有するので、調心機構の調心動作により、或い
は、軌道輪の取付け誤差等により、一対の軌道輪相互間
に位置関係のずれが生じた場合に、移動可能に取付けら
れた軌道輪が、ボールから受ける力に応じて、上記位置
関係のずれを修正するように移動する。これにより、従
来、調芯機構の調心動作等により起こっていた、ボール
が軌道溝から乗り上げる等の現象を回避し、ボールの適
切な転動を確保し、また、軸受機能を良好なものに維持
することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】（ａ）はスクロール圧縮機におけるスラスト
玉軸受の周辺部を示す断面図，（ｂ）はスラスト玉軸受
の近傍を示す拡大図。

【図２】（ａ）は本発明の一実施形態に係る固定側の
軌道輪の平面図，（ｂ）は（ａ）のｂ部拡大図，（ｃ）
は（ａ）のｃ−ｃ断面図。

【図３】本発明の他の実施形態に係る軌道輪のガイド
穴の近傍の平面図。

【図４】スクロール圧縮機の一形態を示す断面図。

【図５】（ａ）は従来の軌道輪及び本発明の一実施形
態に係る旋回側の軌道輪の平面図，（ｂ）は（ａ）のｂ
−ｂ断面図

【符号の説明】

１スラスト玉軸受２旋回スクロール部材２ｂ，４ｂ装着部３静止スクロール部材４静止フレーム５，６軌道輪５ａ，６ａ軌道溝５ｄピン穴６ｅガイド穴７ボール８ピンｓ偏心量

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】相互間で偏心回転運動を行なう二つの部材
の、軸方向に相対向した装着部に、それぞれ取付けられ
る一対の軌道輪と、これら軌道輪に形成された複数の凹
状の軌道溝間に介在するボールとを備え、一方の軌道輪が装着部に対して、ボールから受ける力に
応じて所定範囲で移動可能なことを特徴とするスラスト
玉軸受。