JP5376769B2 - 帯電防止性フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、帯電防止性フィルムに関する。さらに詳しくは、本発明は、優れた帯電防止性能を有し、また帯電防止性能の耐水性に優れた帯電防止性ポリエステルフィルムに関する。
ポリエチレンテレフタレートあるいはポリエチレンナフタレートに代表されるポリエステルフィルムは、機械的強度、寸法安定性、平坦性、耐熱性、耐薬品性、光学特性等に優れ、コストパフォーマンスにも優れるため、製版用フィルム、包装用フィルム、光学用フィルムを始めとする幅広い用途に使用されている。
しかしプラスチックフィルム共通の問題として、静電気が発生して帯電しやすいという欠点がある。そのためフィルム加工時あるいは加工製品の走行性不良や、周囲の埃等を引きつけるという問題を起こす。
一般に、ポリエステルフィルムの帯電防止方法としては、フィルムの表面に種々の帯電防止性の化合物を塗布する方法がある。
特にポリエステルフィルムへの塗布に関しては、塗布組成物を含有する塗布液を、フィルム製造工程中で塗布する方法(いわゆるインラインコーティング)が経済性および良好な特性が得られることから広く行われている。典型的な例としては、縦延伸後に塗布を行い、その後横延伸および熱固定する方法がある。
また帯電防止性化合物としては、高分子量のカチオン性化合物が比較的特性が良いことが知られている(特許文献1、特許文献2)。
しかし特許文献1に挙げられるような、高分子側鎖についた4級アンモニウム塩基は、一般的に耐熱性が弱く、上記のようなインラインコーティングに適用した場合には、その際にかかる温度が非常に高温となるため、分解を起こしやすく、帯電防止性能を悪化させる。
一方、特許文献2に挙げられるような化合物は、その4級アンモニウム塩基が高分子骨格内にあるため耐熱性に優れ、非常に良好な帯電防止性能が得られる。ただし、このような化合物は、それ自体が非常に親水性となるため、得られる塗布層は、耐水性が不足する場合がある。具体的には、水洗などの工程を経ると、帯電防止性能が悪化することがある。
特開2004−123932号公報 特開平1−146931号公報
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、優れた帯電防止性と耐水性を有する帯電防止性フィルムを提供することにある。
本発明者らは、上記の課題に関して鋭意検討を重ねた結果、特定の種類の化合物を含有する塗布層を設けることにより、上記課題が解決されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、下記構造式1および2で示される構成要素を繰返し単位として有する帯電防止性高分子化合物と、熱硬化性のメチル化メチロールアミノ樹脂とを含有する塗布層をポリエステルフィルムの一方の面に有することを特徴とする帯電防止性フィルムに存する。
Figure 0005376769
(上記式中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数が1〜3のアルキル基であり、Xは1価の陰イオンである)
Figure 0005376769
(上記式中、Rは水素原子または炭素数が1〜3のアルキル基であり、Rは−O−または−NH−、Rは炭素数が1〜6のアルキレン基である)
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステルフィルムに用いられるポリエステルとは、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸のようなジカルボン酸またはそのエステルとエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのようなグリコールとを溶融重縮合させて製造されるポリエステルである。これらの酸成分とグリコール成分とからなるポリエステルは、通常行われている方法を任意に使用して製造することができる。
例えば、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとの間でエステル交換反応をさせるか、あるいは芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接エステル化させるかして、実質的に芳香族ジカルボン酸のビスグリコールエステル、またはその低重合体を形成させ、次いでこれを減圧下、加熱して重縮合させる方法が採用される。その目的に応じ、脂肪族ジカルボン酸を共重合しても構わない。
本発明のポリエステルとしては、代表的には、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられるが、その他に上記の酸成分やグリコール成分を共重合したポリエステルであってもよく、必要に応じて他の成分や添加剤を含有していてもよい。
本発明におけるポリエステルフィルムには、フィルムの走行性を確保したり、キズが入ることを防いだりする等の目的で粒子を含有させることができる。このような粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子、さらに、ポリエステル製造工程時の析出粒子等を用いることができる。
用いる粒子の粒径や含有量はフィルムの用途や目的に応じて選択されるが、平均粒径に関しては、通常は0.01〜5.0μmの範囲である。平均粒径が5.0μmを超えるとフィルムの表面粗度が粗くなりすぎたり、粒子がフィルム表面から脱落しやすくなったりすることがある。平均粒径が0.01μm未満では、表面粗度が小さすぎて、十分な易滑性が得られない場合がある。粒子含有量については、ポリエステルに対し、通常0.0003〜1.0重量%、好ましくは0.0005〜0.5重量%の範囲である。粒子含有量が0.0003重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、1.0重量%を超えて添加する場合には、フィルムの透明性が不十分な場合がある。また、適宜、各種安定剤、潤滑剤、帯電防止剤等をフィルム中に加えることもできる。
本発明のフィルムの製膜方法としては、通常知られている製膜法を採用でき、特に制限はない。例えば、まず溶融押出によって得られたシートを、ロール延伸法により、70〜145℃で2〜6倍に延伸して、一軸延伸ポリエステルフィルムを得、次いで、テンター内で先の延伸方向とは直角方向に80〜160℃で2〜6倍に延伸し、さらに、150〜250℃で1〜600秒間熱処理を行うことでフィルムが得られる。さらにこの際、熱処理のゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。
本発明におけるポリエステルフィルムは、単層または多層構造である。多層構造の場合は、表層と内層、あるいは両表層や各層を目的に応じ異なるポリエステルとすることができる。
本発明のポリエステルフィルムは、帯電防止性の塗布層を、フィルムの片面に設けていても、両面に設けていても、あるいは一方の面に他の塗布層を設けていても、本発明の概念に当然含まれるものである。
本発明における帯電防止性塗布層とは、具体的には、塗布層の表面固有抵抗が低く、電荷を漏洩する機構を持つ塗布層のことである。塗布層の表面固有抵抗が低いほど、帯電防止性が良好であるといえる。表面固有抵抗が1×1013Ω以下であれば帯電防止性を持つと言え、1×1011Ω以下であれば、良好な帯電防止性であると言える。
本発明においては、帯電防止性塗布層に、下記の構造式1および2で示される構成要素を繰返し単位として有する帯電防止性高分子化合物を含有する必要がある。
Figure 0005376769
上記式中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数が1〜3のアルキル基であり、Xは1価の陰イオンである。
Figure 0005376769
上記式中、Rは水素原子または炭素数が1〜3のアルキル基であり、Rは−O−または−NH−、Rは炭素数が1〜6のアルキレン基である。
ここでXは本発明の要旨を損なわない範囲で適宜選択することができる。工業的に入手、製造が容易である様態として、ハロゲンイオン、硝酸イオン、アルキルスルホン酸イオンなどが挙げられる。
本発明において、かかる高分子化合物中における、式1および式2で示される構成要素の比率は特に限定されないが、式2の構成要素は高分子化合物中の重量比率で1%以上であることが好ましく、さらに好ましくは5%以上である。式2の構成要素がこの範囲より少ない場合、塗布層の耐久性に劣る傾向がある。
一方、式1の構成要素が高分子化合物中に占める比率は限定されない。この比率が少ないほど、塗布フィルムの帯電防止性能が悪化するが、塗布層の厚さを増すことで帯電防止性能を向上させることができるからである。ただし、工業的に可能な塗布層の厚さには限界があり、また塗布層が厚くなりすぎると、ブロッキングや外観の悪化、コストの上昇などを招くため、必要に応じて適宜選択されるべきである。具体的には、重量比で70〜99%程度が好適である。
また、本発明における帯電防止性高分子化合物は、上記式1および2以外の成分を構成要素として有していてもよい。かかる成分としては、本発明の要旨を損なわない範囲で特に限定されないが、ビニル化合物のような、ビニル基もしくはその他の炭素−炭素二重結合を含有する化合物であることが重合の容易さから好ましい。そのような化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸のような各種カルボキシル基含有モノマー類、およびそれらの塩;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネートのような各種の水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドまたは(メタ)アクリロニトリル等のような種々の窒素含有ビニル系モノマー類。また、これらと併用して以下に示すような重合性モノマーを共重合することができる。すなわち、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンのような各種スチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのような各種のビニルエステル類;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、チッソ(株)製「サイラプレーンFM−07」(メタクリロイルシリコンマクロマー)等のような種々の珪素含有重合性モノマー類;燐含有ビニル系モノマー類;塩化ビニル、塩化ビリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロクロルエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンのような各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエンのような各種共役ジエン類などが挙げられる。
帯電防止性高分子化合物の分子量は、好ましくは数平均分子量で5000〜500000の範囲、より好ましくは8000〜100000の範囲である。数平均分子量で5000未満のものは、得られる塗布フィルムの帯電防止性能が不足しやすく、また500000を超えると、塗布液の粘度が上昇しすぎて、均一な塗布層を塗布することが困難になりやすい。
このような構成要素を繰返し単位とする高分子化合物は、上記のような式1、式2の単量体を、ラジカル共重合することで得られる。このようなラジカル共重合は公知の方法を用いることができる。例えば、各構成要素の単量体を水溶液とし、合計で濃度10〜50重量%となるよう混合調整し、窒素雰囲気下において、ラジカル開始剤水溶液と同時に反応器に滴下しながら、反応器内を攪拌しつつ50℃〜80℃に、加熱ないしは反応熱による温度上昇に対し冷却を行いながら、3〜8時間重合させればよい。さらに他の成分を加える場合も、前述のような炭素−炭素二重結合を含有する化合物であれば同時に混合水溶液を調整してラジカル共重合することができて容易である。なお、得られた共重合高分子中の各単量体成分の比率や分子量は、反応物を精製し、H−NMRやGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)などで分析し求めることができる。
また、本発明における帯電防止性塗布層には、熱硬化性樹脂を含有することが好ましい。特に、式2で表される化合物と反応性を持つ樹脂であると、塗布層の耐久性が向上して好ましい。そのような樹脂としては種々公知のものが適用でき、例えばイソシアネート系、オキサゾリン系、エポキシ系、グリオキサール系などが挙げられる。他のポリマー骨格に反応性基を持たせた、ポリマー型架橋反応性化合物も含まれる。本発明において特に好ましい様態としては、アミノ樹脂系の架橋剤を例示することができる。アミノ樹脂系の架橋剤としては、例えばアルキロール化したメラミン系、ベンゾグアナミン系、尿素系などがある。特に、アミノ基をメチロール化し、さらにそのメチロール基の一部をメチル化したものが、水溶性で取扱いがよく、反応性も高いことから好適に使用できる。また、架橋触媒を併用するとなお好ましい。
かかるアミノ樹脂系の架橋剤と、前述の構成の帯電防止性高分子化合物との組合わせは、得られる塗布層の帯電防止性、耐久性などにきわめて優れたものとなる。
本発明によって作られた塗布フィルムは、塗布層中に占める帯電防止性高分子化合物の重量が、塗布フィルムの面積あたり5mg/m以上であることが好ましく、10mg/m以上であることがさらに好ましい。帯電防止性高分子化合物の量がこれより少ないと、帯電防止性が不十分となることが多い。
また、塗布層中に占める帯電防止性高分子化合物の比率は限定されないが、上限は通常、重量比率90%、好ましくは80%、さらに好ましくは60%である。帯電防止性高分子化合物の比率がこれより高いと、塗布層の透明性が不十分となったり、塗布層の耐久性が不十分となったりすることが多い。また下限は通常10%であり、好ましくは20%である。帯電防止性高分子化合物の比率がこれより低いと、帯電防止性能が不十分となったり、十分な帯電防止性能を持つための塗膜が極めて厚くなったりすることがある。塗膜が厚くなると、外観・透明性の悪化や、フィルムのブロッキング、コストアップを招きやすく好ましくない。
塗布層中における帯電防止性高分子化合物と熱硬化性樹脂の比率は、重量比で通常5/1〜1/5の範囲であることが好ましく、より好ましくは4/1〜1/2の範囲である。この範囲を外れると、帯電防止性能や塗布層の耐久性、外観が悪化しやすい傾向がある。
本発明による帯電防止性塗布層は、特定の化合物を含有する塗布液をフィルムに塗布することにより設けられ、特に本発明では塗布をフィルム製膜中に行うインラインコーティングにより設けられることが好ましい。
その際の塗布液中には、必要に応じて上記述べた成分以外を含むことができる。例えば、界面活性剤、バインダー、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、離型剤、有機粒子、無機粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料等である。これらの成分は単独で用いてもよいが、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
またこの際の塗布液は、取扱い上、作業環境上、また塗布液組成物の安定性の面から、水溶液または水分散液であることが望ましいが、水を主たる媒体としており、本発明の要旨を越えない範囲であれば、有機溶剤を含有していてもよい。
インラインコーティングは、ポリエステルフィルム製造の工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、ポリエステルを溶融押出ししてから二軸延伸後熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融・急冷して得られる実質的に非晶状態の未延伸シート、その後に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルムの何れかにコーティングする。これらの中では、一軸延伸フィルムにコーティングした後にテンターにおいて乾燥および横方向への延伸を行い、さらに基材フィルムと共に熱処理をする方法が優れている。かかる方法によれば、製膜と塗布層塗設を同時に行うことができるため製造コスト上のメリットがあり、コーティング後に延伸を行うために薄膜コーティングが容易であり、コーティング後に施される熱処理が、他のコーティング方法では達成することが難しいほどの高温とすることが可能であるために塗布層の造膜性が向上し、また塗布層とポリエステルフィルムが強固に密着する。また塗布層に架橋反応性化合物を含有する場合には、インラインコーティングの高温の熱処理により、反応残基が残りにくくなるというメリットがある。塗布層中に反応残基があることは、フィルムをロール状に巻いたときのブロッキング等を起こすことがあり好ましくない場合がある。特に本発明において、熱硬化性の樹脂を含有している場合に、インラインコーティングの高温によって架橋反応が進行し、塗布層の耐久性が極めて向上する。
また耐熱性に劣る帯電防止性化合物であれば、この方法による高温の処理によって分解を起こし、帯電防止性能が不足することがあるが、本発明の帯電防止性高分子化合物は耐熱性に優れているためにかかる問題は起こしにくい。
ポリエステルフィルムに塗布液を塗布する方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような塗布技術を用いることができる。具体的には、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、カレンダコーター、押出コーター、バーコーター等のような技術が挙げられる。
なお、塗布剤のフィルムへの塗布性、接着性を改良するため、塗布前にフィルムに化学処理やコロナ放電処理、プラズマ処理等を施してもよい。
帯電防止性塗布層の塗工量は、最終的な塗膜としてみた際に、通常0.005〜1.5g/m、好ましくは0.01〜1.0g/m、さらに好ましくは0.02〜0.5g/mである。塗工量が0.005g/m未満の場合は、十分な性能が得られない恐れがあり、1.5g/mを超える塗布層は、外観・透明性の悪化や、フィルムのブロッキング、コストアップを招きやすい。
本発明によれば、耐水性に優れた帯電防止性能を有する塗布フィルムを提供することができ、その工業的な利用価値は高い。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における評価方法やサンプルの処理方法は下記のとおりである。
(1)表面固有抵抗(Ω)
日本ヒューレット・パッカード社製高抵抗測定器:HP4339Bおよび測定電極:HP16008Bを使用し、23℃,50%RHの測定雰囲気でサンプルを30分間調湿後、表面固有抵抗値を測定した。
(2)帯電防止性能の耐水性
40℃の温水に24時間サンプルフィルムを浸した後、定性濾紙(TOYOアドヴァンテック製「No2」)で軽く挟んで付着した水分を取り除き、室温で一昼夜乾燥した後に、上記(1)に示すとおりの方法にて表面固有抵抗を測定した。温水浸漬後の測定値を、温水浸漬前の測定値で除して、何倍の値になったかを求め、以下の基準で評価した。温水浸漬後の悪化が少ない(温水浸漬前後で値の変化が少ない)ほど、耐水性が良好であると言える。
○:極めて良好。温水浸漬前の値からの悪化が10倍以内
△:良好。温水浸漬前の値からの悪化が10倍〜20倍の間
×:不良。温水浸漬前の値からの悪化が20倍以上
以下の実施例、比較例中で使用したポリエステル原料は次のとおりである。
(ポリエステル1):実質的に粒子を含有しない、極限粘度0.66のポリエチレンテレフタレート
(ポリエステル2):平均粒径2.5μmの非晶質シリカを0.6重量部含有する、極限粘度0.66のポリエチレンテレフタレート
また、塗布組成物としては以下を用いた。
(A1):下記式3の構成単位と、下記式4の構成単位とを重量比率で95/5の比率で共重合した、数平均分子量20000の高分子化合物
Figure 0005376769
Figure 0005376769
(A2):上記式(3)の構成単位、上記式(4)の構成単位、下記式(5)の構成単位を重量比率80/10/10の比率で共重合した、数平均分子量21000の高分子化合物
Figure 0005376769
(A3):上記式(3)の構成単位、上記式(4)の構成単位、上記式(5)の構成単位を重量比率98/1/1の比率で共重合した、数平均分子量12000の高分子化合物
(A4):上記式(3)の構成単位、上記式(4)の構成単位、下記式(6)の構成単位を重量比率85/10/5の比率で共重合した、数平均分子量18000の高分子化合物。
Figure 0005376769
(B1):上記式(3)の構成単位からなる、数平均分子量30000の高分子化合物
(B2):上記式(3)の構成単位と上記式(5)の構成単位とを重量比率95/5の比率で共重合した、数平均分子量23000の高分子化合物
(C1):メチル化ヘキサメチロールメラミンの架橋性樹脂である、大日本インキ化学工業製ベッカミンJ−101
(C2):メトキシ化ヘキサメチロールメラミン/尿素共重合の架橋性樹脂である、大日本インキ化学工業製ベッカミンMA−S
(D1):アミノ樹脂系架橋剤の架橋触媒である、大日本インキ化学工業製キャタリストO
(E1):ポリオキシエチレンラウリルエーテル(界面活性剤)。ただしオキシエチレンの平均重合度が4のものを用いた。
実施例1:
ポリエステル1とポリエステル2とを重量比で80/20ブレンドし、十分に乾燥した後、280〜300℃に加熱溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電密着法を用いて表面温度40〜50℃の鏡面冷却ドラムに密着させながら冷却固化させて、未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを作成した。このフィルムを85℃の加熱ロール群を通過させながら長手方向に3.7倍延伸し、一軸配向フィルムとした。この一軸配向フィルムの片面に、下記表1に示すとおりの塗布組成物を塗布した。次いでこのフィルムをテンター延伸機に導き、その熱を利用して塗布組成物の乾燥を行いつつ、100℃で幅方向に4.0倍延伸し、さらに230℃で熱処理を施し、フィルム厚みが38μmの二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムの上に0.03g/mの量の帯電防止性塗布層を設けた塗布フィルムを得た。このフィルムの特性を下記表2に示す。
実施例2〜6:
実施例1と同様の工程において、塗布液を表1に示すように変更し、フィルム厚みが38μmの基材フィルムの上に表1に示す量の帯電防止性塗布層を積層した塗布フィルムを得た。このフィルムの特性を、表2に示す。
比較例1〜3:
実施例1と同様の工程において、塗布液を表1に示すように変更し、フィルム厚みが38μmの基材フィルムの上に表1に示す量の帯電防止性塗布層を積層した塗布フィルムを得た。このフィルムの特性を、表2に示す。
Figure 0005376769
上記表1中の塗布量は、最終的に得られた塗布フィルムの面積あたりの、塗布層組成物の固形分重量を意味する。
Figure 0005376769
本発明のフィルムは、帯電防止性能が要求される種々の用途において、好適に利用することができる。

Claims (2)

  1. 下記構造式1および2で示される構成要素を繰返し単位として有する帯電防止性高分子化合物と、熱硬化性のメチル化メチロールアミノ樹脂とを含有する塗布層をポリエステルフィルムの一方の面に有することを特徴とする帯電防止性フィルム。
    Figure 0005376769
    (上記式中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数が1〜3のアルキル基であり、Xは1価の陰イオンである)
    Figure 0005376769
    (上記式中、Rは水素原子または炭素数が1〜3のアルキル基であり、Rは−O−または−NH−、Rは炭素数が1〜6のアルキレン基である)
  2. 塗布層中の帯電防止性高分子化合物と、熱硬化性のメチル化メチロールアミノ樹脂との重量比が、5/1〜1/5の範囲である請求項1に記載の帯電防止性フィルム。
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