JP2004175821A - 帯電防止性フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリエステルフィルムに、両性高分子化合物を含有する塗布液を塗布してなることを特徴とする帯電防止性フィルムであり、前記両性高分子化合物は、アニオン性基としてカルボン酸塩を、カチオン性基として4級アンモニウム塩基とを構成成分として持つ化合物や、一分子中でのカチオン性基とアニオン性基との比率が特定範囲にある化合物であることが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯電防止性フィルムに関する。さらに詳しくは、本発明は、帯電防止性能と基材フィルムへの密着性に優れた塗布層を有するポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
二軸延伸ポリエステルフィルムは、機械的強度、寸法安定性、平坦性、耐熱性、耐薬品性、透明性等の優れた特性を有することから、磁気記録媒体のベースフィルム、製版用フィルム、包装用フィルム、光学用フィルムを始めとする幅広い用途に使用されている。
しかしプラスチックフィルム共通の問題として、静電気が発生して帯電しやすいと言う点が挙げられる。そのためフィルム加工時あるいは加工製品の走行性不良や、周囲の埃等を引きつけるという問題を起こす。
【0003】
一般に、ポリエステルフィルムの帯電防止方法としては、有機スルホン酸塩等の低分子量のアニオン性界面活性剤タイプの化合物を練り込む方法、金属化合物を蒸着する方法、アニオン性化合物やカチオン性化合物、あるいはいわゆる導電性化合物を表面に塗布する方法等がある(特許文献1)。
アニオン性化合物を練り込む方法は、安価に製造できるという利点があるものの、帯電防止効果において限界がある。さらに低分子量化合物を用いるため、いわゆるブルーミングによりアニオン性化合物がポリエステルフィルム表面に集まり、ポリエステルフィルムと上塗り層との接着力が低下したり、アニオン性化合物がフィルムや搬送ロールに転着する等の問題が生じる。またこのため、帯電防止性能の耐久性も低下する。
【0004】
金属化合物を蒸着する方法は、帯電防止性が優れ、近年は透明導電性フィルムとして用途が拡大しているものの、製造コストが高く、特定の用途には向いているが、一般の帯電防止フィルムとしては利用し難い。
導電性カーボンなどの導電性化合物を塗布する方法は、帯電防止効果が比較的良好であると共に比較的安価に製造できる利点があるものの、フィルムの透明性が悪化するという欠点がある。
帯電防止剤として高分子量のアニオン性化合物をフィルムに塗布する方法は、上記のような欠点が少なく優れた方法ではあるが、アニオン性化合物は、高湿度下では高い帯電防止性を示すものの、低湿度下ではその性能は極端に悪化するという問題がある。
【0005】
一方、高分子量のカチオン性化合物をフィルムに塗布する方法は、低湿度下においても比較的に帯電防止性能の悪化が少ないため、ポリエステルフィルムの帯電防止法として広く採用されている。
ただし、これらの化合物の多くは、基材となるフィルムとの密着や耐水性に劣るため、摩耗や水洗によってフィルム表面から除去されやすいという欠点がある。
【0006】
この欠点を改良するために、塗布層の成分としてバインダー樹脂を導入する方法がある。しかし、カチオン性化合物には、一般的に使用されるバインダー樹脂との相溶性や混合安定性が悪いものが多く、そのためきれいに塗布できなかったり、所望の性能が得られなかったり、さらには塗布液が凝集して使用できなくなるといったことが起こり問題である。
【0007】
【特許文献1】特開昭47−21383号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、帯電防止性能に優れ、さらに基材フィルムへの密着性が優れた塗布層を有するポリエステルフィルムを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題に関して鋭意検討を重ねた結果、特定の種類の化合物を帯電防止剤として使用した塗布層を設けることにより、上記課題が解決されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、ポリエステルフィルムに、両性高分子化合物を含有する塗布液を塗布してなることを特徴とする帯電防止性フィルムに存する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルとは、ジカルボン酸成分とグリコール成分との重縮合により得られるポリエステルである。これらのジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸等が、グリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0011】
本発明において用いられるポリエステルとしては、代表的には、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられるが、その他に上記の酸成分やグリコール成分を共重合したポリエステルであってもよく、必要に応じて他の成分や添加剤を含有していてもよい。
本発明におけるポリエステルフィルムには、取扱いを容易にするために易滑性を付与する目的で粒子を含有させてもよい。このような粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子、さらに、ポリエステル製造工程時の析出粒子等を用いることができる。
【0012】
用いる粒子の粒径や含有量はフィルムの用途や目的に応じて選択されるが、平均粒径に関しては、通常は0.005〜5.0μm、好ましくは0.01〜3.0μmの範囲である。平均粒径が5.0μmを超えるとフィルムの表面粗度が粗くなりすぎたり、粒子がフィルム表面から脱落しやすくなったりする。平均粒径が0.005μm未満では、表面粗度が小さすぎて、十分な易滑性が得られない場合がある。粒子含有量については、ポリエステルに対し、通常0.001〜30.0重量%であり、好ましくは0.01〜10.0重量%である。粒子量が多くなるとフィルムの機械的特性や透明性が損なわれる傾向があり、少なければ易滑性が劣る傾向がある。
【0013】
また、必要に応じて上記の粒子のほかにも添加剤を加えてもよい。このような添加剤としては、例えば、帯電防止剤、安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、染料、顔料、光線遮断剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
本発明におけるポリエステルフィルムは、本発明の要件を満たしていれば多層構造であってもよく、その場合はポリエステルでない層が含まれても構わない。また、塗布層はフィルムの片面のみに設けていても、両面に設けていても、本発明の概念に当然含まれるものである。
【0014】
次に、本発明のフィルムの塗布層を構成する成分である化合物について述べる。
本発明において、帯電防止剤として使用される両性高分子化合物とは、電離してカチオン性を示す基と、アニオン性を示す基とを有する高分子化合物のことである。この場合、カチオン性基、アニオン性基としては、それぞれが一種類ずつである必要はなく、さらにその他の成分が共重合されていても構わない。
かかる両性高分子化合物の例として、カチオン性を示す構成単位と、アニオン性を示す構成単位をそれぞれ持つ化合物が挙げられる。
【0015】
カチオン性を示す構成単位としては、特に4級アンモニウム塩基を持つ単位が好ましく選択され、具体的な例としては、下記の(1)式、(2)式で示されるようなものが挙げられる。
【0016】
【化1】
【0017】
【化2】
【0018】
[上記(1)、(2)式中、R1は水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R2は炭素数1〜8のアルキレン基、R3、R4およびR5はそれぞれ独立して水素または炭素数1〜6のアルキル基、X−は陰イオンを表す]
また、アニオン性を示す構成単位としてはカルボン酸塩基を持つ化合物、硫酸エステル塩基を持つ化合物、スルホン酸塩基を持つ化合物、リン酸エステル塩基を持つ化合物などが挙げられるが、特にカルボン酸塩基を持つ化合物を選択すると、得られる塗布液に沈殿や凝集が生じにくい等の好ましい性質が得られる。具体的な例としては、下記の(3)式で示されるようなものが挙げられる。
【0019】
【化3】
【0020】
[上記(3)式中、R1は水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、Mは水素または陽イオンを表す]
またあるいは、両性高分子化合物のカチオン性基とアニオン性基は、別々の構成単位ではなく、同一の単位中にともに含まれている場合もある。この場合例えば、下記(4)式、(5)式のような化合物を例示できる。
【0021】
【化4】
【0022】
【化5】
【0023】
[上記(4)、(5)式中、R1は水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R2は炭素数1〜8のアルキレン基、R3およびR4はそれぞれ独立して水素または炭素数1〜6のアルキル基、R5は炭素数1〜4のアルキレン基、X−は陰イオン、Mは水素または陽イオンを表す]
【0024】
本発明においては、これらの化合物を組み合わせて両性高分子化合物とすることができるが、カチオン性基とアニオン性基の含有量が大きく異なることは好ましくない。通常は、一分子内でカチオン性基100モルに対し、アニオン性基が50〜200モルの間、好ましくは80〜125モルの間である。両者の含有量が上記範囲を外れると、帯電防止性能が悪化したり、塗布液に沈殿や凝集が生じにくいという特性が失われたりする。
また、本発明においては、両性高分子化合物の数平均分子量は、通常は1000以上であり、好ましくは2000以上、さらに好ましくは5000以上である。分子量がこの範囲より低い場合は、塗布層中から容易に除去されて経時的に性能の低下を引き起こしたり、塗布層がべたついたりするおそれがある。また、分子量が低いと耐熱安定性に劣る場合もある。
【0025】
一方、両性高分子化合物の分子量が高すぎる場合は、塗布液の粘度が高くなりすぎて塗工性を悪化させる等の不具合を生じる場合がある。そのような不具合を生じないためには、数平均分子量が500000以下、好ましくは100000以下であることが好ましい。
本発明で用いる塗布液には、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂およびポリウレタン樹脂の中から選択される1種以上の樹脂を含有することができる。これらの樹脂をバインダー樹脂として含有することで、得られる塗布層の強度や基材フィルムへの密着性を向上することができる。通常用いられるイオン性高分子帯電防止剤では、その種類によっては、かかるバインダー樹脂との混合安定性が悪く、使用できないことがままあった。しかし、本発明で用いる帯電防止剤はそのような欠点が改良されているため、用途に合わせて種々のバインダー樹脂の中から適したものを選択できる。
【0026】
塗布液成分としてのポリエステル樹脂を構成する成分として、下記のような多価カルボン酸および多価ヒドロキシ化合物を例示できる。すなわち、多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−カリウムスルホテレフタル酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム塩およびそれらのエステル形成性誘導体などを用いることができ、多価ヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコール、ビスフェノールA−エチレングリコール付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコ、ールポリテトラメチレンオキシドグリコール、ジメチロールプロピオン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジメチロールエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロールプロピオン酸カリウムなどを用いることができる。常法の重縮合反応によってポリエステルを合成することができる。
【0027】
なお、上記のほか、特開平1−165633号公報に記載されている、いわゆるアクリルグラフトポリエステルや、ポリエステルポリオールをイソシアネートで鎖延長したポリエステルポリウレタンなどの、ポリエステル成分を有する複合高分子も本発明で用いる塗布剤ポリエステルに含まれる。
本発明で用いる、塗布液成分としてのアクリル樹脂とは、アクリル系、メタアクリル系のモノマーに代表されるような、炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーからなる重合体である。これらは、単独重合体あるいは共重合体いずれでも差し支えない。また、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタン等)との共重合体も含まれる。例えば、ブロック共重合体、グラフト共重合体である。あるいは、ポリエステル溶液、またはポリエステル分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にポリウレタン溶液、ポリウレタン分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にして他のポリマー溶液、または分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれる。
【0028】
上記炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーとしては、特に限定はしないが、特に代表的な化合物としては、例えば以下のようなものである。
アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸のような各種カルボキシル基含有モノマー類、およびそれらの塩;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネートのような各種の水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドまたは(メタ)アクリロニトリル等のような種々の窒素含有ビニル系モノマー類。また、これらと併用して以下に示すような重合性モノマーを共重合することができる。すなわち、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンのような各種スチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのような各種のビニルエステル類;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、チッソ(株)製「サイラプレーンFM−07」(メタクリロイルシリコンマクロマー)等のような種々の珪素含有重合性モノマー類;燐含有ビニル系モノマー類;塩化ビニル、塩化ビリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロクロルエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンのような各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエンのような各種共役ジエン類。
【0029】
塗布液成分としてのポリウレタン樹脂としては、例えば、特公昭42−24194号公報、特公昭46−7720号公報、特公昭46−10193号公報、特公昭49−37839号公報、特開昭50−123197号公報、特開昭53−126058号公報、特開昭54−138098号公報等に開示された公知のポリウレタンまたはそれらに準じたポリウレタンを使用することができる。
例えば、ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0030】
また、ポリオールとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール類、ポリエチレンアジペート、ポリエチレン−ブチレンアジペート、ポリカプロラクトン等のポリエステルポリオール類、アクリル系ポリオール、ひまし油等を挙げることができる。通常、分子量300〜2000のポリオールが使用される。特に、ポリエステルポリオールを使用すると、塗膜の透明性、上塗り剤との接着性が向上して好ましい。
また、鎖長延長剤あるいは架橋剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ヒドラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、水等を挙げることができる。
【0031】
さらに本発明で使用する塗布液中には、必要に応じて、架橋反応性化合物を含んでいてもよい。架橋反応性化合物は主に、他の樹脂や化合物に含まれる官能基と架橋反応することで、塗布層の凝集性、表面硬度、耐擦傷性、耐溶剤性、耐水性を改良することができる。
本発明で使用する塗布液は、界面活性剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、有機粒子、無機粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料等の添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤は単独で用いてもよいが、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
本発明における塗布液は、取扱い上、作業環境上、水溶液または水分散液であることが望ましいが、水を主たる媒体としており、本発明の要旨を越えない範囲であれば、有機溶剤を含有していてもよい。
【0032】
塗布液の固形分濃度には特に制限はないが、通常0.3〜65重量%、好ましくは0.5〜30重量%、さらに好ましくは1〜20重量%である。濃度がこれらの範囲より高すぎる場合も低すぎる場合も、機能を十分に発現するために必要な厚さの塗布層を設けることが困難となることがある。
塗布層の厚さは乾燥厚さで、通常0.003〜1.5μm、好ましくは0.005〜0.5μm、さらに好ましくは0.01〜0.3μmである。塗布層の厚さが0.003μm未満の場合は十分な性能が得られない恐れがあり、1.5μmを超えるとフィルム同士のブロッキングが起こりやすくなる。
【0033】
ポリエステルフィルムに塗布層を設ける方法として、特にポリエステルフィルムを製造する工程中で塗布液を塗布する方法が、経済性およびその特性の面から好適に採用される。例えば、未延伸フィルムに塗布した後延伸する方法、一軸延伸フィルムに塗布した後延伸する方法、二軸延伸フィルムに塗布した後延伸する方法等がある。特に、未延伸または一軸延伸フィルムに塗布液を塗布した後、テンターにおいて乾燥および延伸を同時に行う方法が経済的である。
ポリエステルフィルムに塗布液を塗布する方法としては、通常用いられる塗布方式が適用できる。例えば、1999年、技術情報協会発行、「コーティング技術」に示されるような、具体的には、グラビアコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ダイコーター、スプレイコーター、カーテンコーター等、あるいはその他の塗布技術が挙げられる。
【0034】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における評価方法は下記のとおりである。
【0035】
(1)塗布液安定性
以下の実施例および比較例で用いた塗布液を、固形分濃度5wt%に調整し、栓付き硝子瓶に入れて23℃の環境下で48時間静置した後、目視にて液の状態を観察して以下の基準にて評価した。
○:液の外観に著しい変化が見られない。
×:液に凝集、沈殿などの異常が見られ、塗布に適さない。
【0036】
(2)表面固有抵抗値
日本ヒューレット・パッカード社製高抵抗測定器:HP4339Bおよび測定電極:HP16008Bを使用し、23℃,50%RHの測定雰囲気でサンプルを充分調湿後、印可電圧100Vで1分後の塗布層の表面固有抵抗値を測定した。測定した値は以下の基準で評価した。
○:良好。表面固有抵抗値が1×1011Ω以下。
△:普通。表面固有抵抗値が1×1014Ω以下で1×1011Ωより高い。
×:不良。表面固有抵抗値が1×1014Ωより高い。
【0037】
実施例および比較例において、塗布液を構成する成分として使用した化合物は、以下のとおりである。
・帯電防止剤(A−1)
前記(1)式中の、R1がメチル基、R2がエチレン基、R3、R4、R5がメチル基、X−が−CH3OSO3 −であるような化合物(ac−1)、前記(3)式中のR1が水素、Mが2−ヒドロキシエチル−トリメチルアンモニウムであるような化合物(aa−1)およびメチルアクリレート(ao−1)を、モル比で2/2/1の割合で共重合して得られた、数平均分子量が12,000の化合物。
【0038】
・帯電防止剤(A−2)〜(A−6)
(A−1)と準する製造方法で、下記表1に示す組成を有する帯電防止剤(A−2)〜(A−6)を得た。
【0039】
【表1】
ただし、表1に示した構成単位は下記表2に示す化合物を指す。
【0040】
【表2】
【0041】
・帯電防止剤(A−7)、(A−8)
以下の表3に示す化合物を帯電防止剤(A−7)、(A−8)とした。
【0042】
【表3】
ただし、表3に示した構成単位は、上記の表2で示した化合物を指す。
【0043】
・ポリエステル樹脂(B−1)
スルホン酸ナトリウム塩水分散型ポリエステル樹脂である、大日本インキ化学工業製ファインテックス
・不活性粒子(S−1)
平均粒径0.05μmのシリカゾル
【0044】
実施例1
固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートのチップを十分に乾燥した後、280〜300℃に加熱溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電密着法を用いて表面温度40〜50℃の鏡面冷却ドラムに密着させながら冷却固化させて、未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを作成した。このフィルムを85℃の加熱ロール群を通過させながら長手方向に3.7倍延伸し、一軸配向フィルムとした。この一軸配向フィルムの片面に、下記表4に示すとおりの塗布液をメイヤーバーにより塗布した。そのフィルムをテンター延伸機に導き、100℃で幅方向に4.0倍延伸し、さらに230℃で熱処理を施し、フィルム厚みが50μmの基材フィルムの上に0.05g/m2の量の塗布層を設けた積層二軸延伸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0045】
実施例2〜6
実施例1において、塗布液の内容を下記表4に示すとおりに変更した以外は同様にして、厚みが50μmの基材フィルムの上に0.05g/m2の量の塗布層を設けた積層二軸延伸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得、それぞれ実施例2〜実施例6とした。
【0046】
比較例1〜2
実施例1において、塗布液の内容を下記表4に示すとおりに変更した以外は同様にして、厚みが50μmの基材フィルムの上に0.05g/m2の量の塗布層を設けた積層二軸延伸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得、それぞれ比較例1、比較例2とした。
【0047】
【表4】
なお、いずれの塗布液も水を主たる媒体とする水溶液または水分散液である。
【0048】
以上にて得られたフィルムの評価特性を下記表5に示す。
【0049】
【表5】
比較例1、比較例2は、塗布液が凝集し塗布を行うことが不能であった。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリエステルフィルムに優れた帯電防止性能を持つ塗布層を設けることができ、また従来技術と異なり、その塗布層と基材フィルムの密着性を向上させるための手法に対する制限が少ないため、その工業的な利用価値は高い。
Claims (5)
- ポリエステルフィルムに、両性高分子化合物を含有する塗布液を塗布してなることを特徴とする帯電防止性フィルム。
- 両性高分子化合物が、アニオン性基としてカルボン酸塩を、カチオン性基として4級アンモニウム塩基とを構成成分として持つ化合物であることを特徴とする請求項1記載の帯電防止性フィルム。
- 両性高分子化合物が、一分子中でのカチオン性基とアニオン性基との比率が下記式を満足する化合物であることを特徴とする請求項1または2記載の帯電防止性フィルム。
0.5≦(カチオン性基の量)/(アニオン性基の量)≦2.0
(上記式中、各基の量はモルである) - 塗布液が、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂およびポリウレタン樹脂の中から選択される少なくとも1種の樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の帯電防止性フィルム。
- 帯電防止層が、水性塗布液を塗布した後、乾燥および延伸されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の帯電防止性フィルム。
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Cited By (4)
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