JP3712298B2 - 積層フイルム及びインクジェット記録シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層フイルム及びインクジェット記録シートに関するものであり、詳しくは、二軸延伸ポリエステルフイルムの少なくとも一方の表面に易接着樹脂層を形成して支持体フイルムとなし、当該支持体フイルムの易接着樹脂層の表面に水系機能層を設けて成る積層フイルムにおいて、接着性、帯電防止性、固着防止性に優れた易接着樹脂層を備えた積層フイルム及び当該積層フイルムの水系機能層にインク受像層を使用して構成されるインクジェット記録シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエチレンナフタレート(PEN)に代表されるポリエステルフイルムは、機械的強度、寸法安定性、平坦性、耐熱性、耐薬品性、光学特性等の優れた特性を有し、コストパフォーマンスに優れるため、各種の用途において支持フイルムとして使用されている。
【0003】
ところで、ポリエステルフイルムは、その表面が高度に結晶化されているために凝集力が強く、従って、各用途毎の機能層との接着性に乏しい欠点がある。そこで、斯かる欠点を解消するため、ポリエステルフイルムの表面にプライマーとして水分散性のポリエステル系樹脂やアクリル樹脂を塗布する方法が提案されている(特公昭49−10243号公報、特開昭52−19786号公報、特開昭52−19787号公報、特開昭54−43017号公報など)。
【0004】
しかしながら、プライマーとしてポリエステル系樹脂を使用した支持フイルムは、ロール巻した際に固着し易い欠点があり、アクリル樹脂を使用した支持フイルムは、機能層との接着性などに劣ると言う欠点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、インク受像層などの水系機能層に対する接着性に優れ、しかも、帯電防止性および固着防止性が優れた易接着樹脂層を有する積層フイルムを提供することにあり、本発明の他の目的は、上記の積層フイルムの水系機能層にインク受像層を使用して構成されるインクジェット記録シートを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の第1の要旨は、二軸延伸ポリエステルフイルムの少なくとも一方の表面に易接着樹脂層を形成して支持体フイルムとなし、当該支持体フイルムの易接着樹脂層の表面に、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、セルロース及びこれらの誘導体の群から選ばれる1種の成分から成る水系機能層を設けて成る積層フイルムにおいて、前記の易接着樹脂層が、特許請求の範囲に記載の一般式(I)で表されるスルホン酸基またはスルホン酸塩基含有モノマーと、アミノ基または水酸基と反応性不飽和二重結合とを有するモノマーの共重合によって得られたものであり、更に、水溶性または水分散性のバインダー樹脂(B)を含むことを特徴とする積層フイルムに存し、第2の要旨は、上記の積層フイルムの水系機能層にインク受像層を使用したことを特徴とするインクジェット記録シートに存する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において、ポリエステルフイルムを構成するポリエステルとしては、代表的には、例えば、構成単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートであるポリエチレンテレフタレート(PET)、構成単位の80モル%以上がエチレン−2,6−ナフタレートであるポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)、構成単位の80モル%以上が1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)であるポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられる。その他には、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0008】
上記の優位構成成分以外の共重合成分としては、例えば、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリアルキレングリコール等のジオール成分、イソフタル酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸およびオキシモノカルボン酸などのエステル形成性誘導体が挙げられる。また、本発明で使用するポリエステルは、上記の単独重合体または共重合体の他に、他の樹脂との小割合のブレンド物であってもよい。
【0009】
本発明において、ポリエステルフイルムは、滑り性を付与するため、突起形成剤として、添加粒子、析出粒子、その他の触媒残渣などを含有していてもよい。これらの突起形成剤の種類、大きさ、配合量は、目的とする滑り性、透明性などに応じて適宜選択される。
【0010】
また、ポリエステルフイルムは、必要に応じ、帯電防止剤、安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光線遮断剤、着色剤などを含有していてもよい。更に、フイルムの白色化のため、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化マグネシウム等で代表される白色顔料や、低密度化のため、ポリエステルと非相溶な樹脂、例えば、ポリプロピレン・ポリスチレン・ポリ−4−メチルペンテン等の様なボイド形成剤を含有していてもよい。また、ポリエステルフイルムは、多層構造であってもよく、この場合、その一部の層は、ポリエステル以外のポリマーで形成されていてもよい。
【0011】
本発明の積層フイルムは、二軸延伸ポリエステルフイルムの少なくとも一方の表面に易接着樹脂層を形成して支持体フイルムとなし、当該支持体フイルムの易接着樹脂層の表面に水系機能層を設けて成る。
【0012】
そして、本発明の最大の特徴は、上記の支持体フイルムを形成するための易接着樹脂層がスルホン酸基またはスルホン酸塩基とこれら以外の反応性官能基の一種以上を含有する樹脂(A)を含有している点にある。そして、樹脂(A)は、ポリエステルフイルムと水系機能層の接着性を高めると共に帯電防止機能を発揮して支持体フイルムの生産工程における走行性を改良する。以下、便宜上、樹脂(A)を接着性改良樹脂(A)と呼ぶ。
【0013】
接着性改良樹脂(A)における反応性官能基としては、特に、アミノ基または水酸基が好ましい。スルホン酸基またはスルホン酸塩基とアミノ基または水酸基などの官能基は、通常、接着性改良樹脂(A)の側鎖に導入され、スルホン酸基またはスルホン酸塩基含有モノマーとアミノ基または水酸基含有モノマー等との共重合によって得ることが出来る。
【0014】
本発明において、スルホン酸基またはスルホン酸塩基含有モノマーとしては、下記一般式(I)で表されるモノマーを使用する。そして、下記一般式( II )で表されるモノマーを併用することも出来る。一般式(I)又は(II)において、R1及びR2は水素原子またはメチル基、X及びYは、ナトリウム原子、カリウム原子またはアンモニウム基、nは0又は1の整数を表す。
【0015】
【化2】
【0016】
一般式(I)又は(II)で表されるスルホン酸基含有モノマーの具体例としては、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸などが挙げられる。
【0017】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、側鎖にアミノ基またはアルキロール化されたアミノ基を有し且つビニル基またはアクリル基などの反応性不飽和二重結合を有するモノマーが挙げられる。斯かるモノマーとしては、例えば、アクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、α置換ビニル化合物などを基本骨格とし且つアミノ基を含有するモノマーが挙げられる。α置換ビニル化合物の側鎖基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、置換フェニル基などが挙げられる。なお、アミノ基は架橋性官能基としても作用する。
【0018】
上記のモノマーの具体例としては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、2−アミノエチルメタクリレート、2−アミノエチルアクリレート、3−アミノプロピルメタクリレート、3−アミノプロピルアクリレート、2−アミノブチルメタクリレート、2−アミノブチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、N,N−ジエチルアミノエチルビニルエーテル、2−アミノエチルビニルエーテル、3−アミノプロピルビニルエーテル、2−アミノブチルビニルエーテル、これらのアミノ基をメチロール化したモノマー等が挙げられる。
【0019】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、側鎖に水酸基を有し且つビニル基またはアクリル基などの反応性不飽和二重結合を有するモノマーが挙げられる。斯かるモノマーとしては、例えば、アクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、α置換ビニル化合物などを基本骨格とし且つ水酸基を含有するモノマーが挙げられる。α置換ビニル化合物の側鎖基としては、アミノ基含有モノマーの場合におけるのと同様の側鎖基が挙げられる。なお、水酸基は、アミノ基の場合と同様に架橋性官能基としても作用する。
【0020】
上記のモノマーの具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。
【0021】
接着性改良樹脂(A)は、共重合成分として上記のモノマー以外の他のモノマーを含有していてもよい。他のモノマーとしては、例えば、アクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、α置換ビニル化合物などを基本骨格とし且つ架橋性官能基を有するモノマーが挙げられる。上記の官能基としては、例えば、カルボキシル基、メチロール基、酸無水物基、燐酸基、燐酸塩基、燐酸エステル基、アミド基、メチロール化されたアミド基、グリシジル基などが挙げられる。
【0022】
上記の官能基を有するモノマーの具体例としては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルメタクリレート、フェニルアクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、メチルビニルケトン、ブチルビニルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、アクリル酸塩、メタクリル酸塩、イタコン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クロトン酸塩(これらの塩を形成する対イオンは、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン等)、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、メチロール化アクリルアミド、メチロール化メタクリルアミド、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート等が挙げられる。
【0023】
接着性改良樹脂(A)は、更に、共重合成分として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイン酸またはその塩、マレイン酸のモノ又はジアルキルエステル、ビニル基を有するアルコキシシラン等を含有していてもよい。
【0024】
接着性改良樹脂(A)におけるスルホン酸基またはスルホン酸塩基含有モノマーの共重合比の下限は、特に限定されないが、湿熱条件下での接着性と帯電防止性の観点から、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、更に好ましくは20重量%以上、特に好ましくは30重量%以上とされ、その上限は、通常95重量%以下とされる。スルホン酸基またはスルホン酸塩基含有モノマーの共重合比が5重量%未満の場合は、所定の帯電防止効果を得ることが困難であり、特に40%RH以下の低湿度下における帯電防止性能が著しく低くなる。
【0025】
そして、接着性改良樹脂(A)に含まれるスルホン酸(塩)基に起因する硫黄元素の濃度は、帯電防止性能を一層高める観点から、1重量%以上するのが好ましい。上記の硫黄元素の濃度は、好ましくは3重量%以上、更に好ましくは5重量%以上とされ、その上限は、通常25重量%以下とされる。
【0026】
一方、アミノ基含有モノマー及び/又は水酸基含有モノマーの共重合比は、特に限定されないが、易接着性と帯電防止性との観点から、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、更に好ましくは20重量%以上とされ、その上限は、通常95重量%以下とされる。
【0027】
本発明において、易接着性樹脂層は、接着性改良樹脂(A)と共に水溶性または水分散性のバインダー樹脂(B)を含有する。ここに、水分散性バインダー樹脂(B)とは、水に溶解しないが分散可能な樹脂を言い、例えば、界面活性剤などによって水に強制分散可能な樹脂が挙げられる。水溶性または水分散性バインダー樹脂(B)としては、好ましくは、ポリエーテル類または水酸基などの様な非イオン性親水性成分、イオン性親水基(好ましくはアニオン性親水基)を有する自己分散型の樹脂が使用される。
【0028】
上記のアニオン性基は、共重合などによりバインダー樹脂(B)中に導入され、その具体例としては、例えば、スルホン酸、カルボン酸、燐酸およびそれらのリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩などから誘導されるアニオン性基が挙げられる。アニオン性基の樹脂固形分に対する割合は、通常0.05〜8重量%の範囲とされる。アニオン性基量が0.05重量%未満の場合は、バインダー樹脂(B)の水溶性あるいは水分散性が悪くなる傾向がある。逆に、アニオン性基量が8重量%を超える場合は、易接着樹脂層の耐水性が劣り、吸湿し易くなる。その結果、易接着性樹脂層を形成したポリエステルフイルム(本発明における支持体フイルム)が相互に固着(ブロッキング)することがある。
【0029】
上記のバインダー樹脂(B)としては、水溶性または水分散性のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂およびアクリル樹脂の群から選択される少なくとも1種が好適に使用される。
【0030】
上記のポリエステルは、以下の様な多価カルボン酸および多価ヒドロキシ化合物を原料とする通常の重縮合反応によって合成することが出来る。
【0031】
多価カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−カリウムスルホテレフタル酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム塩およびそれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0032】
多価ヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコール、ビスフェノールA−エチレングリコール付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール、ジメチロールプロピオン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジメチロールエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロールプロピオン酸カリウム等が挙げられる。
【0033】
上記のポリウレタンは、以下の様なポリオール、ポリイソシアネート、鎖長延長剤、架橋剤などを原料とする通常の重合反応によって合成することが出来る。
【0034】
ポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシテトラメチレングリコールの様なポリエーテル類、ポリエチレンアジペート、ポリエチレン−ブチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリヘキシレンアジペート、ポリカプロラクトンの様なポリエステル類、アクリル系ポリオール、ひまし油などが挙げられる。
【0035】
ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネートの様な芳香族系ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートの様な脂肪族系ジイソシアネート等が挙げられる。
【0036】
鎖長延長剤または架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヒドラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、水などが挙げられる。
【0037】
上記のアクリル樹脂は、例えば、アルキルアクリレート又はアルキルメタクリレート(A成分)とこれらと共重合可能で且つ官能基を有するビニル単量体(B成分)とを原料とする通常の共重合によって合成することが出来る。上記のA成分およびB成分の合計量に対するA成分の使用割合は、通常30〜90モル%、B成分の使用割合は、通常10〜70モル%の範囲とされる。
【0038】
アルキルアクリレート又はアルキルメタクリレートと共重合可能で且つ官能基を有するビニル単量体としては、アクリル樹脂に親水性を付与して水分散性を良好にし、アクリル樹脂とポリエステルフイルムや易接着樹脂層上に設ける水系機能層との接着性を良好にし、易接着樹脂層に配合するポリエステルとの親和性を良好にする官能基を有するビニル単量体が好ましい。
【0039】
上記の官能基としては、例えば、カルボキシル基またはその塩、酸無水物基、スルホン酸基またはその塩、アミド基またはアルキロール化されたアミド基、アミノ基(置換アミノ基を含む)又はアルキロール化されたアミノ基あるいはそれらの塩、水酸基、グリシジル基などが挙げられ、特に、カルボキシル基またはその塩、酸無水物基、グリシジル基が好ましい。これらの基は、アクリル樹脂中に2種類以上含有されていてもよい。
【0040】
アルキルアクリレート及び/又はアルキルメタクリレートの共重合割合が30モル%以上のアクリル樹脂は、塗布形成性、塗膜の強度、耐ブロッキング性に優れる。アクリル樹脂中のアルキルアクリレート及び/又はアルキルメタクリレートの使用量を90モル%以下とした際は、共重合成分として特定の官能基を有する化合物をアクリル樹脂に導入することにより、水溶化、水分散化し易くすると共にその状態を長期に渡り安定に維持することが出来、更に、易接着樹脂層との接着性の改善、易接着樹脂層内での反応による易接着樹脂層の強度、耐水性、耐薬品性の改善などを図ることが出来る。
【0041】
上記のアルキルアクリレート及びアルキルメタクリレートのアルキル基としては、例えば、メチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0042】
上記の官能基を有するビニル単量体としては、反応性官能基、自己架橋性官能基、親水性基などの官能基を有するビニル単量体が使用できる。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩または無水マレイン酸などが挙げられる。
【0043】
また、アミド基またはアルキロール化されたアミド基を有するビニル単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、メチロール化アクリルアミド、メチロール化メタクリルアミド、ウレイドビニルエーテル、2−ウレイドイソブチルビニルエーテル、ウレイドエチルアクリレート等が挙げられる。
【0044】
アミノ基またはアルキロール化されたアミノ基またはそれらの塩を有するビニル単量体としては、例えば、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、2−アミノエチルビニルエーテル、3−アミノプロピルビニルエーテル、2−アミノブチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、それらのアミノ基をメチロール化したビニル単量体の他、ハロゲン化アルキル、ジメチル硫酸、サルトン等により4級化したビニル単量体などが挙げられる。
【0045】
更に、上記のアクリル樹脂は、共重合成分として、例えば、アクリロニトリル、スチレン類、ブチルビニルエーテル、マレイン酸モノ又はジアルキルエステル、フマル酸モノ又はジアルキルエステル、イタコン酸モノ又はジアルキルエステル、メチルビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルトリメトキシシラン等を適宜併用していてもよい。
【0046】
上記のアクリル樹脂は、その製造過程から混入される界面活性剤を含有していてもよい。しかしながら、バインダー樹脂として、ポリエステル樹脂および/またはポリウレタン樹脂を併用する場合において、これらに対してアクリル樹脂の割合が多い場合は、アクリル樹脂に含まれる低分子体の界面活性剤が造膜過程で濃縮され、その結果、粒子と粒子の界面に蓄積し、易接着樹脂層の界面に移行し、易接着樹脂層の機械的強度、耐水性、接着性に問題を生じる場合がある。この様な場合は、界面活性剤を含有しない、所謂ソープフリー重合によるアクリル樹脂を使用するのがよい。
【0047】
界面活性剤を含有しないアクリル系樹脂の製造方法としては、経営開発センター出版部編集、経営開発センター出版部昭和56年1月発行、「水溶性高分子・水分散型樹脂総合技術資料」第309頁、産業技術研究会主催「〜最新の研究成果から将来を展望する〜エマルジョンの新展開と今後の技術課題」講演会テキスト(昭和56年12月)等に記載された方法を利用することが出来る。
【0048】
すなわち、低分子量界面活性剤の代わりに、オリゴマー又は高分子量界面活性剤を利用する方法、過硫酸カリウムや過硫酸アンモニウム等の重合開始剤を利用して重合体中に親水基を導入する方法、親水基を有するモノマーを共重合する方法、反応性界面活性剤を利用する方法、分散体粒子の内部層と外部層の組織を変化させた所謂シェル−コア型重合体の製造法などは、いわゆる界面活性剤を含有しない水分散性アクリル樹脂の製造技術として使用することが出来る。
【0049】
本発明における易接着樹脂層には、必要に応じ、上記以外に、他の水溶性または水分散性のバインダー樹脂を併用してもよい。斯かるバインダー樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アミド樹脂などが挙げられる。これらは、それぞれの骨格構造が共重合などにより実質的に複合構造を有していてもよい。複合構造を持つバインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂グラフトポリエステル、アクリル樹脂グラフトポリウレタン、ビニル樹脂グラフトポリエステル、ビニル樹脂グラフトポリウレタン等が挙げられる。
【0050】
本発明において、接着性改良樹脂(A)は、水溶性または水分散性のバインダー樹脂(B)と共重合された構造であってもよい。接着性改良樹脂(A)とバインダー樹脂(B)との相溶性が良い場合、接着性改良樹脂(A)による帯電防止効果が期待し難く、逆に相溶性が悪い場合、易接着樹脂層の強度が得られなくなる。従って、接着性改良樹脂(A)とバインダー樹脂(B)との間には適度な相溶性があることが好ましく、それ故に、接着性改良樹脂(A)は、バインダー樹脂(B)と共重合された構造とするのが好ましい。共重合の手法としては、グラフト共重合、ブロック共重合、ランダム共重合などがあるが、バインダー樹脂(B)を主鎖とするグラフト共重合が好ましい。
【0051】
易接着樹脂層は、接着性改良樹脂(A)の反応性官能基と反応する官能基を2個以上含有する架橋剤(C)を含有しているのが好ましい。架橋剤(C)としては、例えば、メチロール化またはアルキロール化した尿素系、メラミン系、グアナミン系、アクリルアミド系、ポリアミド系などの化合物、ポリアミン類、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、ブロックイソシアネート化合物、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコーアルミネート系カップリング剤、金属キレート、有機酸無水物、有機過酸化物、熱または光反応性のビニル化合物や感光性樹脂などが挙げられる。
【0052】
架橋剤(C)の選択においては、接着性改良樹脂(A)の反応性官能基と容易に反応する架橋剤(C)を選択する必要がある。例えば、反応性官能基が水酸基の場合、架橋剤(C)としては、メラミン系化合物、ブロックイソシアネート化合物、有機酸無水物などが好ましく、反応性官能基が有機酸または無水物の場合、架橋剤(C)としては、エポキシ系化合物、メラミン系化合物、オキサゾリン系化合物、金属キレート等が好ましく、反応性官能基がアミン類の場合、架橋剤(C)としては、エポキシ系化合物など等が好ましい。そして、斯かる架橋反応により、易接着樹脂層の固着性(耐ブロッキング性)や耐水性、耐溶剤性、機械的強度を効果的に改良することが出来る。
【0053】
架橋剤(C)は、官能基を2個以上含有する限りにおいて、低分子量化合物であっても、高分子重合体の何れであってもよい。架橋剤(C)の配合量は、易接着樹脂層に対する重量比として、通常1〜50重量部、好ましくは3〜30重量部の範囲から選択される。
【0054】
本発明において、易接着樹脂層は、接着性改良樹脂(A)、バインダー樹脂(B)及び必要に応じて架橋剤(C)を主たる構成成分とするが、更に、易接着樹脂層の滑り性改良のために水系不活性粒子を含有していてもよい。斯かる不活性粒子としては、例えば、コロイダルシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、酸化チタン等の無機粒子、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリビニル系樹脂などの有機粒子が挙げられる。不活性粒子の平均粒径(d)は、易接着樹脂層の平均膜厚を(L)とした際、通常(L/3)<d<(3L)、好ましくは(L/2)<d<(2L)の関係を満足する様に選択するのが好ましい。
【0055】
易接着樹脂層(塗布液)中の接着性改良樹脂(A)の含有量は0.01g/m2 以上が好ましい。接着性改良樹脂(A)の含有量が上記の範囲未満の場合は、易接着樹脂層中の接着性改良樹脂(A)の密度が低過ぎて易接着樹脂層の初期の目的を達成することが出来ず、また、所定の帯電防止効果が得られない。
【0056】
易接着樹脂層を形成する塗布液は、通常、安全性や衛生性の点から、水を主たる媒体として調製される。そして、上記の塗布剤は、水を主たる媒体とする限りにおいて、水への分散を改良する目的または造膜性能を改良する目的で少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は、主たる媒体である水に溶解する範囲で使用することが必要である。
【0057】
有機溶剤としては、例えば、n−ブチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコール等の脂肪族または脂環族アルコール類、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類、n−ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール誘導体、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸アミル等のエステル類、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。
【0058】
また、易接着樹脂層を形成する塗布液は、必要に応じ、界面活性剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、低分子帯電防止剤、有機系潤滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料などの添加剤を含有していてもよい。
【0059】
ポリエステルフイルムの表面に易接着樹脂層を形成する方法は、特に制限されないが、二軸延伸ポリエステルフイルムを製造する工程中で易接着樹脂層を形成する塗布液を塗布する方法(塗布延伸法またはインラインコート法)が好適に採用される。具体的には、未延伸シート表面に塗布して乾燥する方法、一軸延伸フイルム表面に塗布して乾燥する方法、二軸延伸フイルム表面に塗布して乾燥する方法などが挙げられる。これらの中では、一軸延伸フイルム表面に塗布後、フイルムに熱処理を行う過程で同時に塗布層を乾燥硬化する方法が経済的である。
【0060】
また、易接着樹脂層を形成する方法として、必要に応じ、前述の方法の幾つかを併用した方法も採用し得る。具体的には、未延伸シート表面に易接着樹脂第一層を塗布して乾燥し、その後、一軸方向に延伸後、易接着樹脂第二層を塗布して乾燥する方法などが挙げられる。本発明においては、一軸延伸フイルムに塗布し、乾燥または未乾燥の状態で更に先の一軸延伸方向と直角の方向に延伸した後に熱処理を施す方法が製造コスト面の点から推奨される。
【0061】
二軸延伸ポリエステルフイルム製造方法としては、公知の方法を採用することが出来る。例えば、予め乾燥したポリエステルチップと必要な添加剤を混合して押出機にホッパー投入し、押出機にて200〜300℃の温度で溶融混練し、ダイからシート状に押出して約70℃以下のキャスティングドラム(回転冷却ドラム)上で急冷して未延伸シートを得、得られたシートを縦および/または横方向に4倍以上、好ましくは9倍以上延伸し、更に120〜250℃の温度で熱固定を行う方法を採用することが出来る。
【0062】
ポリエステルチップの乾燥には、ホッパードライヤー、パドルドライヤー、真空乾燥機などを使用することが出来る。押出はTダイ法が好適である。また、キャスティングに際しては、静電密着法の採用が奨励される。熱固定は、一般的には緊張固定下で実施されるが、熱固定時および/または熱固定後の冷却時にフイルムの長手方向および/または幅方向に20%以下の弛緩や巾出しを行なうことも出来る。
【0063】
ポリエステルフイルムの表面に易接着樹脂層を形成する塗布液を塗布する方法としては、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるリバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター等を使用することが出来る。
【0064】
易接着樹脂層は、ポリエステルフイルムの片面だけに形成してもよいし、両面に形成してもよい。片面のみに形成する場合、その反対面には必要に応じて易接着樹脂層と異なる層を形成させ、本発明の積層フイルムに更に他の特性を付与することも出来る。なお、塗布液のフイルムへの塗布性および接着性を改良するため、塗布前のフイルムに化学処理や放電処理を施してもよい。また、表面特性を更に改良するため、易接着樹脂層形成後に放電処理を施してもよい。
【0065】
易接着樹脂層の乾燥後の厚さは、通常0.01〜0.5μm、好ましくは、0.03〜0.3μmの範囲とされる。易接着樹脂層の厚さが0.01μm未満の場合は、本発明の効果が十分に発揮されず、0.5μmを超える場合は、本発明における支持体フイルムが相互にブロッキングし易くなったり、特に支持体フイルムの高強度化を目的として塗布処理フイルムを再延伸する場合には、工程中のロールにフイルム粘着し易くなったりする。ブロッキングの問題は、特にポリエステルフイルムの両面に易接着樹脂層を設けた場合に顕著に現れる。
【0066】
本発明の積層フイルムは、上記の様に構成された支持体フイルムの易接着樹脂層の表面に水系機能層を設けて成る。水系機能層は、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、セルロース及びこれらの誘導体の群から選ばれる1種の成分から成る。これらの水系機能層は、写真用フイルム、インクジェット記録シート、水性インク受像フイルム、製版フイルム等の各用途毎に選択される。例えば、写真用フイルムの場合はゼラチン層、インクジェット記録シートの場合はインク受像層が挙げられる。インク受像層としては、数多くの提案がなされているが、その塗布液の一例としては、ポリビニルブチラール樹脂などのバインダー樹脂、架橋剤、コロイダルシリカ等の添加剤などを含有する水/アルコール混合溶媒溶液が挙げられる。
【0067】
本発明のインクジェット記録シートは、前記の積層フイルムの水系機能層にインク受像層を使用して構成されるが、インク受像層を形成する塗布液は、通常、上述の塗布装置を使用して常法により塗布される。インク受像層の厚さは、水性インクを速やかに垂直方向に吸収して水性インクのはじきやにじみを最小限にする等の観点から、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、更に好ましくは5μm以上とされる。本発明のインクジェット記録シートによれば、速やかに水性インクを吸収してにじみの少ない鮮明な印刷物を容易に得ることが出来る。
【0068】
本発明のインクジェット記録シートは、水性インクジェット方式(バブルジェットプリンター、マッハジェットプリンター又はこれらの方式によるプロッター)に好適に使用することが出来る。そして、本発明のインクジェット記録シートは、上記のインクジェット記録に使用されるOHPフイルム、ラベル、プロッター用フイルム、バーコードラベルとして使用することが出来る。
【0069】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、評価方法は以下に示す通りであり、実施例および比較例中の「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を表す。
【0070】
(1)水性インク接着性:
インクジェットプリンタ(キャノン製「BJC−600J」)を使用し、インク受像層を設けた試料表面に適当な面積のテスト的なベタ印刷を行い、1日後に印刷表面にセロテープを貼って剥離した際のインク受像層の剥離状況(剥離面積)を目視観察し、以下の表1に示す基準にて判定した。
【0071】
【表1】
剥離なし :◎(優秀)
10%未満剥離 :○(良好)
10%以上50%未満剥離 :△(普通)
50%以上剥離 :×(不良)
【0072】
(2)表面固有抵抗:
内側電極直径50mm、外側電極直径70mmの同心円型電極(横河・ヒューレット・パッカード社「16008A」)に支持体フイルム(易接着樹脂層を形成したフイルム)の試料を設置し、100Vの電圧を印加し、高抵抗計(横河・ヒューレット・パッカード社「4329A」)を使用して電圧印可1分後の試料の表面固有抵抗を測定した。表面固有抵抗は、その値の対数をとり、以下の表2に示す基準で判定した。なお、測定雰囲気は、温度23℃、相対湿度50%RHの標準雰囲気とし、測定面は、インク受像層を設ける前の易接着樹脂層表面とした。
【0073】
【表2】
10未満 :◎(優秀)
10以上13未満:○(良好)
13以上15未満:△(普通)
15以上 :×(不良)
【0074】
(3)固着性(支持体フイルムのブロッキング特性):
支持体フイルムの易接着樹脂層面同士を重ね、温度40℃、湿度80%RH、荷重10kg/cm2 で20時間プレス処理を行い、ASTM D 1893により決められているプラスチックフイルム間のブロッキング度を測定して定量化する手法に準拠し、プレスしたフイルム面を剥がす際にかかる荷重からブロッキング度を求めた。判定基準は以下の表3に示す通りである。
【0075】
【表3】
50g未満 :◎(優秀)
50g以上100g未満 :○(良好)
100g以上250g未満:△(普通)
250g以上 :×(不良)
【0076】
また、使用した接着性改良樹脂(A)及びバインダー樹脂(B)は、下記の通りである。
【0077】
接着性改良樹脂(A01)の調製:
p−スチレンスルホン酸ナトリウム塩(40重量部)、メタリルスルホン酸ナトリウム塩(40重量部)、N,N’−ジメチルアミノメタクリレート(20重量部)を蒸留水(200重量部)中に溶解し、フラスコ内で約60℃に加熱攪拌しながら重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩(1重量部)を添加して重合を行った。
【0078】
接着性改良樹脂(A02)〜(A15)の調製:
以下の表4に示すモノマー組成を使用し接着性改良樹脂(A01)と同様の方法で調製した。
【0079】
【表4】
【0080】
表4中の略号は以下の通りである。
SSS:p−スチレンスルホン酸ナトリウム塩
SMC:メタリルスルホン酸ナトリウム塩
SAS:アリルスルホン酸ナトリウム塩
SVS:ビニルスルホン酸ナトリウム塩
DMAEMA:N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
MMA:メタクリル酸
BMAA:N−ブトキシメチルアクリルアミド
【0081】
接着性改良樹脂(A16)の調製:
樹脂(A01)の調製において、p−スチレンスルホン酸ナトリウム塩およびメタリルスルホン酸ナトリウム塩の対イオンをカリウム塩に変更した以外は、樹脂(A01)と同様にして調製した。
【0082】
接着性改良樹脂(A17)の調製:
樹脂(A01)の調製において、p−スチレンスルホン酸ナトリウム塩およびメタリルスルホン酸ナトリウム塩の対イオンをアンモニウム塩に変更した以外は、樹脂(A01)と同様にして調製した。
【0083】
接着性改良樹脂(A18)の調製:
樹脂(A01)の調製において、p−スチレンスルホン酸ナトリウム塩およびメタリルスルホン酸ナトリウム塩の対イオンをジエチルアミン塩に変更した以外は、樹脂(A01)と同様にして調製した。
【0084】
ポリエステルバインダー樹脂(B01):
テレフタル酸、イソフタル酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオールから成るポリエステル樹脂。
【0085】
ポリエステルバインダー樹脂(B02):
テレフタル酸、イソフタル酸、ピロメリット酸、エチレングリコール、ネオペンチルグリコールから成るポリエステル樹脂のアミン中和物。
【0086】
ポリウレタンバインダー樹脂(B03):
イソホロンジイソシアネート、テレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコール、ジエチレングリコールより構成されるポリエステルポリオールと、2,2−ジメチロールプロピオン酸(鎖延長剤)から成るポリウレタン樹脂。
【0087】
アクリルバインダー樹脂(B04):
メチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ブチルアクリレートから成るポリアクリル樹脂。
【0088】
実施例1
固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートを280〜300℃の温度で溶融押し出しし、静電密着法を併用しながら冷却ドラム上にキャストし、厚さ約720μmの未延伸フイルムを得た。このフイルムを85℃で縦方向に3.7倍延伸し、更に100℃で横方向に3.9倍延伸し、210℃で熱処理し、厚さ50μmの二軸延伸ポリエステルフイルムを得た。
【0089】
上記の工程において、縦延伸後、横延伸前のフイルムの両面に次の易接着樹脂層用の塗布液を延伸乾燥後の塗膜厚さが0.1μmになる様に塗布して支持体フイルムを得た。上記の塗布液は、樹脂(A01)30重量部、樹脂(B01)55重量部およびポリアクリル樹脂5重量部を含有する水分散体に、5重量部の3官能水溶性エポキシ化合物および5重量部のコロイダルシリカ(平均粒径0.1μm)を添加して調製した。
【0090】
次いで、バーコーターにより、上記の支持体フイルムの一方の易接着樹脂層の表面(塗布表面)に次の受像層用塗布液を乾燥厚さが7μmとなる様に塗布してインクジェット記録シートを得た。塗布液としては、8重量%のポリビニルブチラール樹脂(積水化学(株)社製「KX−1」)を含有する水/アルコール混合溶媒溶液を主たる成分とし、コロイダルシリカを含有する塗布液を使用した。
【0091】
実施例2〜16
実施例1において、易接着樹脂層用の塗布液の組成を次の表5に示す様に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録シートを得た。
【0092】
【表5】
【0093】
比較例1〜5
実施例1において、易接着樹脂層用の塗布液の組成を次の表6に示す様に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録シートを得た。
【0094】
【表6】
【0095】
なお、全ての実施例および比較例の易接着樹脂層は、上記表5及び表6に記載の成分以外に5重量部のコロイダルシリカを含有している。支持体フイルム及びインクジェット記録シートの評価果をまとめて以下の表7及び表8に示す。
【0096】
【表7】
【0097】
【表8】
【0098】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、インク受像層などの水系機能層に対する接着性に優れ、しかも、帯電防止性および固着防止性が優れた易接着樹脂層を有する積層フイルムが提供され、また、上記の積層フイルの水系機能層にインク受像層を使用して構成されるインクジェット記録シートが提供される。
Claims (6)
- バインダー樹脂(B)が水溶性または水分散性のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂およびアクリル樹脂の群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の積層フイルム。
- 易接着樹脂層を形成する塗布剤が樹脂(A)のアミノ基または水酸基と反応する官能基を2個以上含有する架橋剤を含有している請求項1又は2に記載の積層フイルム。
- 易接着樹脂層が塗布延伸法によって形成されたものである請求項1〜3の何れかに記載の積層フイルム。
- 易接着樹脂層中の樹脂(A)の含有量が0.01g/m2以上であり、且つ、易接着樹脂層の厚さが0.3μm以下である請求項1〜4の何れかに記載の積層フイルム。
- 請求項1〜5の何れかに記載の積層フイルムの水系機能層にインク受像層を使用したことを特徴とするインクジェット記録シート。
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