JP3722400B2 - ポリエステル系写真印画紙用支持体の製造方法 - Google Patents

ポリエステル系写真印画紙用支持体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はポリエステル系写真印画紙用支持体の製造方法に関するものであり、詳細には、支持体上に設けられる写真画像形成層との接着性に優れた下塗り層を有する白色ポリエステルフィルムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
写真印画紙として写真画像形成層を設ける支持体としては古くから多く紙が使われている。当該用途において、紙は外観、感触、機械的性質、価格などの点で優れた特性を有する材質である。
一方で、紙は水を吸収、含浸しやすい特徴も持っており、様々な耐水処理が施されて使用されるが、エッジ部からの吸収を完全に防止することは困難であり、写真現像処理後も残存する現像液成分によって、経時で画像の黄ばみが出てくるといった問題が残る。また、耐水性以外にも紙にはない機械的特性や、高級感、画像品質を得るために、いわゆる合成紙と呼ばれる白色プラスチックフィルムが使用される。
【0003】
合成紙の一つの例として白色ポリエステルフィルムが挙げることができる。ポリエステルフィルムは、各種バランスのとれた特性から広く用いられ、写真印画紙用途にも使用することができる。ところが、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレートに代表されるポリエステルフィルムは、表面活性が乏しく、主にゼラチンをバインダーの主成分とする写真乳剤を上塗りして設けられる写真画像形成層との接着性において著しく劣るという欠点も持ち合わせている。
【0004】
写真画像形成層との接着性は、できあがった写真が乾燥している場合はもちろんのこと、現像処理に代表される写真処理時における湿潤状態でも発揮されなければならない。そのため、通常ポリエステルフィルムを支持体とした場合、フィルム上に写真画像形成層を設ける前にある種のポリマー層を設けて、易接着層とするといった手法が多く採られている。
【0005】
具体的には、ポリエステル共重合体、塩化ビニリデン共重合体、ゼラチンと親水性ビニルないしはアクリル共重合体の混合物、カルボキシ変成ポリエチレンなどの層を設けることなどが知られている。また、これらポリマー層を設ける前にポリエステルフィルムにコロナ放電処理等の前処理がなされることもある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、写真画像形成層と優れた接着性を有するポリエステル系写真印画紙用支持体を提供することにある。具体的には写真画像形成層と乾燥時および湿潤時において優れた接着性を発揮する下塗り層を設けた白色ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の方法を採用することにより、優れた特性を有する写真印画紙用支持体が容易に提供できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、水性ポリウレタンおよび水性エポキシ基含有化合物を乾燥重量割合として10/90〜80/20の比率で含有する塗布液を、隠蔽度(OD)が0.3以上でかつb値が2.0未満の白色ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布し、乾燥することを特徴とするポリエステル系写真印画紙用支持体の製造方法に存する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で言うポリエステルフィルムのポリエステルとしては、代表的には、例えば、構成単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートであるポリエチレンテレフタレート(PET)、構成単位80モル%以上がエチレン−2,6−ナフタレートであるポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)、構成単位の80モル%以上が1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートであるポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等のほか、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート等も用いることができる。
【0009】
上記に優位構成成分以外の共重合成分としては、例えばジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール成分、イソフタル酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸およびオキシモノカルボン酸などのエステル形成性誘導体を使用することができる。また、ポリエステルとしては、単独重合体または共重合体の他に、他の樹脂との小割合のブレンドも使用することができる。
【0010】
また、かかるポリエステルの極限粘度[η]は、通常0.45以上、好ましくは0.50〜1.0、さらに好ましくは0.52〜0.90の範囲である。極限粘度が0.45未満では、フィルム製造時の生産性が低下したり、フィルムの機械的強度が低下するという問題が生じることがある。一方、ポリマーの溶融押し出し安定性の点から、極限粘度は1.0を超えないことが好ましい。
【0011】
本発明で用いるポリエステルフィルムとしては、写真印画紙用支持体の要求特性から2軸延伸されたポリエステルフィルムが特に好ましい。ポリエステルフィルムの製造方法は通常公知の方法を採用し得るが、その延伸方法は同時2軸延伸、逐次2軸延伸のいずれかで実施される。が、特に逐次二軸延伸が多く行われている。
【0012】
このようなポリエステルフィルムのより具体的な製造方法を説明する。
ポリエステル原料を押し出し装置に供給し、当該原料の融点以上の温度で溶融押し出ししてスリット状のダイから溶融シートとして押し出す。次に溶融シートを回転冷却ドラム上でガラス転移点以下の温度になるよう急冷固化し、実質的に非晶状態の未延伸シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムの密着性を高めることが好ましい。
【0013】
このようにして得られた未延伸シートを2軸延伸するが、ここでは縦横逐次2軸延伸を例に挙げる。一般的に未延伸シートを周速差のある一群のロールでシートの長手方向に延伸(縦延伸)するが、まずシートをガラス転移点以上、融点以下の温度に余熱、保持する。PETの場合この温度は70〜150℃、PENの場合115〜170℃の範囲が好ましい。その後ロールの周速差を利用してトータルで2〜10倍の倍率となるよう延伸する。このとき延伸は一段階または二段階以上で行うことができる。次に横方向、すなわち先の長手方向と垂直な方向に延伸(横延伸)する。すなわち、得られた一軸配向フィルムを一旦ガラス転移点以下に冷却するか、または冷却することなく、同じくガラス転移点以上、融点以下の温度、PETであれば80〜150℃、PENであれば120℃〜180℃の範囲が好ましい、で通常クリップでフィルム端部を把持しつつ2〜10倍に延伸する。
【0014】
ここでは縦延伸、横延伸の順番での例を示したが、この順番が逆になっても構わないし、またそれぞれの延伸を何回かに分割しても実施してもよい。また分割し、その一部づつを交互に実施してもよい。例えば、高強度フィルムを再延伸法で製造する方法がこれに相当する。
このようにして得られた2軸配向フィルムは、通常、30%以内の伸長、制限収縮、または定長化で熱処理される。熱処理時間は、1秒〜5分の範囲が好ましい。この際、熱処理工程内または熱処理後に10%以内、好ましくは5%以内の弛緩処理する等の手法も、特に縦方向の熱収縮率を好適な範囲とするために採用することができる。熱処理温度は延伸条件にもよるが、やはりガラス転移点以上、融点以下で、例えばPETならば170℃〜250℃、PENならば170〜270℃の範囲が好ましい。
【0015】
処理時間が長い、ないしは処理温度が高いなど、熱処理が多いとポリエステルの結晶化が進みすぎ、また後述するインラインコーティングで塗布層を設けた際、塗布層を形成する樹脂の熱分解を生じる場合もある。また、熱処理が少なすぎる場合には、フィルムの収縮率が大きくなってしまう。
いずれにしても最終的に得られるフィルムの特性が、写真印画紙用支持体としての要求に合う条件が選ばれる。
【0016】
また得られる写真印画紙用支持体としての厚みは、それぞれの印画紙としての用途によって適宜選ばれるが、15〜350μmの範囲にあることが好ましい。厚みが15μm未満では、支持体としての剛度が不足する傾向があり、350μmより厚いと、印画紙としての材料の重量が増して取り扱いが悪くなる傾向があり、コスト的にも不利な方向である。
【0017】
また、かかるフィルムを紙等の基材と貼り合わせて、所望の厚みとして使用することもできる。
ところで、粒子および微細気泡等を含まない配向結晶化された二軸延伸ポリエステルフィルムは一般的に透明性の良いものである。しかしながら、写真印画紙用支持体として鮮明な画像を得るために、フィルムは白色である必要がある。
【0018】
このような白色ポリエステルフィルムは、製膜前のポリエステルに非相溶な有機ポリマー、または無機、有機の粒子を混合分散させることによって得ることができる。また、粒子を含有させることによって、フィルムに適度な突起を形成させ、滑り性を付与することができ、フィルムへのキズ入り防止、生産性の向上にも寄与することができる。
【0019】
このような粒子の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン、架橋有機高分子粒子、シュウ酸カルシウム、およびポリエステル重合時に生成させる析出粒子を挙げることができる。
【0020】
これらの粒子は複数種使用することができるが、なかでもフィルムの白色度、隠蔽性の点からいわゆる白色顔料と呼ばれるものを少なくとも一種用いることが好ましい。
白色顔料の中でも炭酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタンは特に好ましく、使用する粒子の一種として、これらの粒子を用いることが好ましい。
【0021】
二酸化チタンの場合その結晶形態はアナターゼ、ルチル型のいずれでもよいが、白色度および耐候性の点からアナターゼ型の二酸化チタンであることがより好ましい。さらに二酸化チタン粒子のポリエステルへの分散性および耐候性の向上を目的に粒子の表面をアルミニウム、ケイ素、亜鉛等の酸化物および/または有機化合物で処理したものを用いることもできる。
【0022】
通常、これら粒子の平均粒径は、好ましくは0.005〜5.0μm、さらに好ましくは0.01〜3.0μmの範囲である。平均粒径が5.0μmを超えるとフィルム表面が粗面化しすぎて写真画像の品質が低下したり、粒子が表面から脱落しやすくなる等の問題が生ずるようになる恐れがある。平均粒径が0.005μm未満では、この粒子による突起形成が不十分なため、フィルムの表面にキズが発生したり、フィルムの取り扱い性が低下してしまう傾向がある。
【0023】
また、粒子含有量はポリエステルに対し、通常0.3〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%、さらに好ましくは1.0〜20.0重量%である。粒子含有量が0.3重量%未満では、フィルム表面の白色度が不足し、写真画像の品質、特にコントラストや鮮明さにおいて不十分となる傾向がある。一方、粒子含有量が30.0重量%を超えると、粒子の脱落が起こりやすくなったり、粒子が凝集して粗大突起を形成する等の問題が生ずるようになる恐れがある。
【0024】
粒子を含むポリエステルの製造に際して、粒子はポリエステルの合成反応中に添加してもポリエステルに直接添加してもよい。合成反応中に添加する場合は、粒子をエチレングリコール等に分散させたスラリーとして、ポリエステル合成の任意の段階で添加する方法が好ましい。一方、ポリエステルに直接添加する場合は、乾燥した粒子として、または、水あるいは沸点が200℃以下の有機溶剤中に分散したスラリーとして、2軸混練押出機を用いてポリエステルに添加混合する方法が好ましい。なお、添加する粒子は、必要に応じ、こと前に解砕、分散、分級、濾過等の処理を施しておいてもよい。
【0025】
粒子の含有量を調節する方法としては、上記した方法で高濃度に粒子を含有するマスター原料を作っておき、それを製膜時に、実質的に粒子を含有しない原料で希釈して粒子含有量を調節する方法が有効である。
本発明のフィルムは、写真画像の品質の点から高い白色度が要求される。そのため上記粒子、特に白色顔料のほかに蛍光増白剤を含有することが好ましい。蛍光増白剤としては、波長が400〜700nmに蛍光ピークを有するものであれば種類を問わないが、好適なものとしては、商品名「ユピテックOB、MD」(チバガイギー社製)、「OB−1」(イーストマン社製)、および「ミカホワイト」(日本化薬−三菱化学)等の市販品が挙げられる。蛍光増白剤のポリエステルフィルム中の含有量は、通常50〜5000ppm、好ましくは100〜3000ppmである。蛍光増白剤の含有量が50ppm未満では、白色度が不十分となる傾向がある。また、蛍光増白剤の含有量が5000ppmを超えると、増白剤をポリエステルに配合する際の押し出し機等の練り混み工程で熱劣化を起こす恐れがある。
【0026】
また、フィルムの白色化以外にフィルムの低密度化、クッション性の付与を目的としてフィルム中に微細気泡を含有させることもできる。
微細気泡を含有するポリエステルフィルムの製造方法としては特に限定されるものではないが、コスト、生産性の点からも特開昭63−168441号公報や特開昭63−193938号公報等に記載の方法またはそれに準じた方法で行うことが好ましい。すなわち、ポリエステルに、それとは非相溶のポリマーを配合してシート状に押し出し、次いで得られたシートを少なくとも一軸方向に延伸してフィルムとする方法である。
【0027】
ポリエステルに非相溶のポリマーの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリメチルブテン等のポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリエステル等が挙げられるが、これらの中でもコストや生産性の点からポリプロピレンが好ましい。かかる非相溶ポリマーの配合量は、フィルムを構成するポリマーに対して通常5〜40重量%、好ましくは5〜30重量%の範囲である。非相溶ポリマーの含有量が5重量%未満では、気泡の含有量が少なくなる傾向があり、軽量化、クッション性の付与が不十分となる恐れがある。一方、非相溶ポリマーの含有量が40重量%を超えると、延伸時のフィルム破断が頻発し、生産性が劣るようになる傾向がある。このようにポリエステルに非相溶のポリマーを配合するが、この方法ではさらに少なくとも一軸方向に延伸することが必要である。これは先にものべたようにフィルムの機械的強度を付与するためだけでなく、延伸工程を経て初めて十分な独立気泡を含有することができるのである。この延伸方法自体は、特殊な操作を必要とせず、通常のポリエステルフィルムを製造する条件の範囲内で行われる。
【0028】
非相溶ポリマーとしてポリプロピレンを使用する場合は、少なくとも95モル%以上、さらには98モル%以上がプロピレン単位を有する結晶性ポリプロピレンホモポリマーであることが好ましい。このポリプロピレンが非晶性である場合、無定型ポリエステルシートにしたとき、シート表面にポリプロピレンがブリードアウトし、冷却ドラムや延伸ロールなどの表面を汚染するため好ましくない。また、プロピレン単位が5モル%を超えて共重合されていると、独立気泡の形成が不足する傾向がある。
【0029】
かかるポリプロピレンのメルトフローインデックス(MFI)は通常0.5〜30g/10分の範囲である。MFIが0.5g/10分未満であると、生成する気泡が大きくなり、延伸時の破断がおこるようになり、一方、30g/10分を超えるとテンターにおけるクリップ外れを起こしたり、密度の経時的均一性が悪く、密度コントロールが難しくなって生産性の悪化をもたらすことがある。
【0030】
上記したように非相溶のポリマーを配合して微細気泡を生成させる方法を用いる場合、気泡の大きさをコントロールして、フィルムの密度およびクッション性を所望の範囲とするため、原料中に界面活性剤を含有させることが好ましい。界面活性剤の例としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤が挙げられ、中でも非イオン性界面活性剤、特にシリコーン系界面活性剤が好ましい。シリコーン系界面活性剤としては、オルガノポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体や、ポリオキシアルキレン側鎖を有するアルケニルシロキサン等が挙げられる。界面活性剤の含有量は、原料に対して好ましくは0.001〜1.0重量%、さらに好ましくは0.01〜0.5重量である。界面活性剤の含有量が1.0重量%を超えると、もはやその効果は向上しないのに加え、押出機でのトラブルやポリマーの劣化を引き起こすことがある。
【0031】
このような微細気泡を含有させることのみによってフィルムのある程度の白色度、隠蔽度を得ることもできるが、十分な画像の鮮明さを得ることは難しい。したがって、前述のような粒子、特に白色顔料および蛍光増白剤を含有させることが好ましい。
また上記以外の添加剤として必要に応じて、要求される用途の写真印画紙用支持体としての性能を損なわなければ、帯電防止剤、安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、着色剤(染料、顔料)、光線遮断剤、紫外線吸収剤などを含有していてもよい。
【0032】
一般的に写真印画紙用支持体としての白色ポリエステルフィルムは白色度、隠蔽度は高いほど、画像形成層側の表面粗さは小さいほど、できあがった画像の鮮明さに優れ、好ましい。これらの特性は、印画紙として要求されるレベルに合わせて上記白色顔料、蛍光増白剤、微細気泡等を設計することができる。
また、最終的に得られる特性が写真印画紙用支持体としての用件を満足する限り、多層構造となっていても構わない。例えば、共押し出し積層フィルムであってもよい。このような多層構造によっても、白色度、隠蔽度、さらには表面粗さを任意の値に設計することができる。
【0033】
本発明で用いる白色ポリエステルフィルムの白色度は、黄味を示す指標であるb値が2.0以下、好ましくは1.0以下、さらに好ましくは0.5以下である。b値が2.0を超えると黄味が強くなり、白色度が不十分となるので好ましくない。
さらに、本発明で用いる白色ポリエステルフィルムの隠蔽性を表す指標である隠蔽度(OD)は、0.3以上、好ましくは0.4以上である。ODが0.3未満では、光線透過の防止が不十分となり、写真画像が不鮮明となるので好ましくない。
【0034】
また、微細気泡を白色ポリエステルフィルムに含有させる場合、その見かけ密度(ρ)は、通常0.6〜1.2g/cm3 、好ましくは0.7〜1.1g/cm3 である。ρが0.6g/cm3 未満では、製膜時に破断が頻発し、生産性が劣る傾向がある。ρが1.2g/cm3 を超えると、微細気泡含有ポリエステルとしての特徴であるクッション性が乏しくなる傾向がある。
【0035】
次に、本発明における白色ポリエステルフィルム上に設けられる塗布層についての説明をする。
本発明において、塗布層は塗布液をフィルム上に塗布後、乾燥して形成されるが、塗布は上記白色ポリエステルフィルムの製造後に行ってもよいし、白色ポリエステルフィルム製造工程内で行ってもよい。後者の方法は、いわゆるインラインコーティングと呼ばれる方法である。インラインコーティングを行うには、塗布液はいくつかの要件を満たすことが望ましく、本発明で設けられる塗布層はインラインコーティングによって設けられることが好ましい。かかる要件としては、例えば塗布後の延伸に伴う塗布層の極端なひび割れがないこと、塗布性が良好であること、薄膜でも性能が十分発揮されること、塗布液が水系であること等の条件を満たすことである。
【0036】
ここで言うインラインコーティングは、ポリエステルを始めとする諸原料を溶融押し出ししてから二軸延伸後熱固定して巻き上げるまでの任意の場所で塗布する方法であるが、通常は、溶融・急冷してできる実質的に非晶状態の未延伸シート、またはその後長手方向(縦方向ともいう)に延伸された後(横方向に延伸される前)の一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルムのいずれかに塗布される。中でも縦方向に一軸延伸されたポリエステルフィルムに塗布し、乾燥または未乾燥の状態でさらに横方向に延伸する方法が優れている。その理由は、製膜および塗布乾燥を同時に行うことができるので製造コスト上のメリットがあること、塗布後延伸されるので薄膜塗布ができること、塗布後に施される熱処理が他の方法では達成されない高温であり、このため塗膜とポリエステルフィルムが強固に密着すること等である。
【0037】
インラインコーティングを行うには、安全、作業環境の点から塗布液は水系であることが好ましく、本発明で用いられる塗布液は水系である水性ポリエステルおよび水性エポキシ基含有化合物を含有する塗布液を必須とする。
しかしながら、塗布液の安定性、分散性、塗布性などを改良するために必要に応じて少量の有機溶剤を併用することもできる。このことは後述の水性ポリエステル、水性エポキシ基含有化合物についても同様である。またこれら原材料に含まれる有機溶剤によって、結果的に塗布配合液中に有機溶剤を含むということもあり得る。
【0038】
上記有機溶剤としては、比較的親水性のものが好ましく用いられ、具体的には脂肪族、脂環族、のアルコール類、グリコール類、エステル類、エーテル類、アミド化合物などが挙げられ、より具体的にはアルコール類としてメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールなど、グリコール類としてエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールなど、エステル類として酢酸エチル、酢酸アミルなど、エーテル類としてメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n−ブチルセロソルブ、t−ブチルセロソルブ、ジオキサン、テトラヒドロフランなど、ケトン類としてアセトン、メチルエチルケトンなど、その他アセトニトリル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。これら有機溶剤は、単独または必要に応じて2種類以上併用してもよい。
【0039】
また、使用する塗布液および各塗布剤が水だけを主な媒体とする場合、化合物を界面活性剤などによって強制分散化したものであってもよいが、自己分散型の塗布剤であることが塗布液の分散安定性の点からは好ましい。自己分散型塗布剤とは、化合物に化学結合により各種親水性基を導入した塗布剤である。例えば、ノニオン性としては水酸基、ポリエーテル、アニオン性としてはスルホン酸、カルボン酸、リン酸およびそれらの塩、カチオン性としては四級アンモニウム塩に代表されるオニウム塩のような親水性成分が挙げられるが、これらの化学種を共重合やグラフト処理により導入し、自己分散型の塗布剤とすることができる。
【0040】
塗布液をポリエステルフィルムに塗布する方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示される様な、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーターあるいはこれら以外の塗布装置を用いることができる。
最終的にできあがった塗布層の厚さは、通常0.001〜10μm、好ましくは0.010〜5μm、さらに好ましくは0.015〜2μmである。塗布層が薄いと、塗布層に期待される写真感光層との接着性が充分に発揮されない場合がある。他方、塗布層が厚いと、塗布層が粘着剤の様な働きをしてロールに巻き上げたフィルム同士が相互に接着してしまい、いわゆるブロッキングを生じてしまったりする。またいたずらに塗布層を厚くすることは製造原価、生産性の点からも好ましくない。
【0041】
本発明で用いる水性ポリウレタンとは、水を主な塗布媒体とした水溶性あるいは水分散性のポリウレタン系樹脂塗布剤という意味である。本発明においては、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタンから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
本発明におけるポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタンとは、ポリウレタンの主要な構成成分であるポリオールの一つとして、それぞれポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類を使用したものである。他にアクリルポリオール類などもよく用いられる。
【0042】
かかるポリウレタン系樹脂を構成する成分として以下のようなポリオール、ポリイソシアネート、鎖長延長剤、架橋剤などを例示することができる。
上記ポリエステルポリオール類は、例えばジカルボン酸とグリコールとを常法に従って反応させることにより得ることができる。ジカルボン酸成分の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、などの脂肪族ジカルボン酸、オキシ安息香酸などのオキシカルボン酸およびそれらのエステル形成性誘導体などを挙げることができ、グリコール成分の例としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどの脂肪族グリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール、p−キシレンジオールなどの芳香族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコールなどを挙げることができる。これらによるポリエステルは線状構造であるが、3価以上のエステル形成成分を用いて分枝状ポリエステルとすることもできる。
【0043】
また、ポリエーテルポリオール類の例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、およびびそれらの共重合体など、ポリアルキレングリコールなどを挙げることができる。
ポリカーボネートポリオール類は、例えば炭酸エステルとジオールとを反応させることにより得ることができる。炭酸エステルの例としては、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどを挙げることができ、ジオールの例としては、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリカプロラクトンジオール、トリメチルヘキサンジオール、1,4−ブタンジオールなどが挙げられる。また、ポリカーボネートジオールとジカルボン酸あるいはポリエステルとの反応で得られるポリエステルポリカーボネートであってもよい。
【0044】
ポリイソシアネートの例としては、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートのような芳香族系ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートのような脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0045】
本発明における芳香族ポリウレタンとは、上述のポリイソシアネート成分が芳香族であるポリウレタンであり、同様に脂肪族ポリウレタンとは、ポリイソシアネート成分が脂肪族であるポリウレタンを指す。ポリウレタンの合成時に、芳香族ポリイソシアネートと脂肪族ポリウレタンの併用はしばしば行われるが、1分子内に芳香族ポリイソシアネートと脂肪族ポリイソシアネートの2種類以上のポリイソシアネートを有するポリウレタンも特に好ましく用いられ得る。もちろん、芳香族ポリウレタン、脂肪族ポリウレタン、前2者の共重合体、以上3種から2種以上を選択して混合使用してもよい。
【0046】
鎖延長剤あるいは架橋剤の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヒドラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、水などが挙げられる。
【0047】
このようにして生成されるポリウレタンは、イソシアネートと水またはアミン化合物等との反応によって尿素結合を含有する場合がある。すなわち本発明におけるポリウレタンには、ポリウレタンウレアも含まれる。
本発明における水性エポキシ基含有化合物とは、水を主な塗布媒体とした水溶性あるいは水分散性のエポキシ基を含有する化合物の塗布剤であり、当該化合物は分子内にエポキシ基を少なくとも一つ以上、好ましくは二つ以上含有するものである。
【0048】
かかるエポキシ基含有化合物としては、グリコール類、ポリエーテル類およびポリオール類等のグリシジルエーテル、カルボン酸類のグリシジルエステル、グリシジル置換されたアミン類等が挙げられるが、好ましくはグリシジルエーテル類である。これらのグリシジル化合物は、エピクロルヒドリンとの反応によって容易に得られるが、合成方法はもちろんこれに限られるものではない。具体的な例として、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグルシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエーテル、オルソフタル酸ジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、テレフタル酸グリシジルエステル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等が挙げられるがこれらに限られるものではない。また、各社からエポキシのエマルジョンが販売されており、例えばナガセ化成工業(株)製の「デナコール EM−125」「デナコール EX−1101」「デナコール EX−1102」「デナコール EX−1103」等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0049】
また、これらエポキシ基含有化合物は塗布液中に2種類以上用いられても構わないし、通常、化合物の合成過程で多少、複数種の混合物となるのが自然である。
本発明においては、上記水性ポリウレタンおよび水性エポキシ基含有化合物をある比率で含有する塗布液を用いてポリエステルフィルム上に塗布層を設けることが重要な要件であり、具体的には、水性ポリウレタンと水性エポキシ基含有化合物の乾燥重量割合(水性ポリウレタン/水性エポキシ基含有化合物)が10/90〜80/20の範囲にある必要があり、好ましくは10/90〜75/25、さらに好ましくは15/85〜70/30である。
【0050】
水性ポリウレタン/水性エポキシ基含有化合物が10/90未満である場合、設けられた塗布層は支持体であるポリエステルフィルムとの密着性に優れず、塗布層の耐水性も悪くなる。さらにできあがったフィルムのブロッキング性も悪くなる。一方、水性ポリエステル/水性エポキシ基含有化合物が80/20より大きい場合、得られた塗布層と上塗りされる写真感光層との接着性が悪くなり、好ましくない。
【0051】
本発明においては、このように特定の複数の化合物を特定の割合で含む塗布液を用いることに特徴があるが、本発明の要旨を損なわない限り、他の化合物を水性ポリウレタンおよび水性エポキシ基含有化合物の総和に対して乾燥重量で40重量%以下の量を配合しても構わない。例えば、ブロッキング性や滑り性改良を目的とする無機あるいは有機の微粒子、ワックス、帯電防止剤、界面活性剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料、等である。
【0052】
なお、塗布液のフィルムへの塗布性、接着性を改良するため、塗布前のフィルムに化学処理や放電処理を施してもよい。また、本発明のポリエステルフィルムと写真感光層との塗布性、接着性などを改良する目的で、塗布層形成後に放電処理を行ってもよい。
本発明の写真印画紙用支持体上には、少なくとも一層の写真画像形成層を設けて各種写真印画紙を作ることができる。例えばハロゲン化銀写真乳剤層を設けることができる。
【0053】
このような写真乳剤はゼラチンを主バインダーとすることが好ましい。またハロゲン化銀乳剤としては、通常の種々のハロゲン化銀乳剤を任意に用いることができる。乳剤は常法により化学増感することができ、増感色素を用いて所望の波長域に光学的に増感させることができる。また、上記ハロゲン化銀乳剤にはカブリ防止剤、安定剤、硬膜剤等を加えることができる。硬膜剤としては、アルデヒド系、アジリジン系、イソオキサゾール系、エポキシ系、ビニルスルホン系、アクリロイル系、カルボジイミド系、トリアジン系、高分子型、その他マレイミド系、アセチレン系、メタンスルホン酸エステル系の各硬膜剤を単独もしくは2種類以上組み合わせて使用できる。また可塑剤、水不溶性または難溶性合成ポリマーの分散物(ラテックス)、カプラー、塗布助剤、帯電防止剤、さらにはホルマリンスカベンジャー、蛍光増白剤、マット剤、滑剤、画像安定剤、界面活性剤、色カブリ防止剤、現像促進剤、現像遅延剤や漂白促進剤を含有させることもできる。
【0054】
写真感光材料には、上記ハロゲン化銀乳剤層以外に保護層、フィルター層、バックコーティング層、ハレーション防止層、イラジエーション防止層、中間層等の補助層等を設けることができる。このような写真感光層、およびその他の層は使用される用途によって適宜選ばれるものであり、またここに示した例に限られるものではない。
【0055】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例中の評価方法は以下のとおりである。
(1)塗布液(塗布剤)乾燥重量
JIS K 5407−4に準じて求めた。
(2)ポリエステルの極限粘度([η]) (dl/g)
ポリエステル1gをフェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlに溶解し、30℃で測定した。
(3)隠蔽度(OD)
マクベス濃度計(TD−904)を使用し、Gフィルター下の透過光濃度を測定した。
(4)b値
東京電色(株)製カラーアナライザーTC1800MKII型を用いて、JISZ−8722の方法に準じて、b値を測定した。
(5)フィルム見かけ密度(ρ) (g/cm3
フィルムの任意の部分から10cm×10cmの正方形のサンプルを切り出し、重量を測定した。次いでマイクロメーターで任意の点9点の厚みを測定し、その平均値と重量から単位体積当たりの重量を計算した。測定数は5点とし、その平均値をフィルム密度とした。
(6)画像形成層(ゼラチン層)接着性1[乾燥時]
硬膜剤、ラテックス、マット剤、および評価結果をわかりやすくするための黄色染料を含むゼラチン層を、乾燥後厚みが5μmになるよう設け、十分硬膜化させた後、23℃、50%RHで十分調湿させた。このままの雰囲気下でゼラチン層の表面から1mm間隔で100升目のクロスカットを入れ、その上に日東電工製「ポリエステル粘着テープをNo.31」を気泡の入らないように注意して貼りつけた。このテープの上で荷重2kgの金属ロールを20往復させた。この後基材ポリエステルフィルム側を180°に曲げて剥離試験を実施した。ポリエステルフィルムの一端を1kgの錘に接続し、この錘が45cmの距離自然落下した後に180°方向の剥離が開始するようにして剥離試験を行った。この際の状況を目視観察し、以下のような基準にて評価をした。
【0056】
【表1】
Figure 0003722400
評価結果は○以上が好ましく、◎がより好ましい。
(7)画像形成層(ゼラチン層)接着性2[湿潤時]
上の(6)と同様にゼラチン層を設けて調湿した後、同様にクロスカットを入れた。その上を水に浸して十分絞ったフェルトにて、太平理化「ラビングテスター」を用いて、500gの荷重がかかるようにして30往復させた。このときのゼラチン層の残存量を目視観察し、以下のような基準にて評価した。
【0057】
【表2】
Figure 0003722400
評価結果は○以上が好ましく、◎がより好ましい。
(8)印画紙としての実用特性
(6)、(7)において画像形成層と接着性の良好だったフィルムについてのみ次の評価を行った。フィルムの片側に感光体を含有するゼラチン乳剤を塗布して感光層を形成し、露光、現像して画像を形成させ、得られた画像の品質を以下の項目について評価した。
▲1▼解像度
ランクA:高度な解像度が得られ、高品質であった。
【0058】
ランクB:やや解像度が劣るが、実用上差し支えない。
ランクC:解像度が劣るため実用上問題がある。
▲2▼コントラスト
ランクA:コントラストが鮮明で、高品質な画像が得られた。
ランクB:コントラストの鮮明さがやや劣るが、実用可能。
【0059】
ランクC:コントラストが鈍く、画像品質が劣る。
▲3▼色調
ランクA:良好な色調を示した。
ランクB:黄色味が影響して色調が劣る。
次に、実施例において使用したポリエステルフィルムの製造方法を以下に記す。
(ポリエステルAの製造)
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・4水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去と共に徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了した。
この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04部、三酸化アンチモン0.04部を加えて、4時間30分重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温して280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、4時間30分を経た時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステルの極限粘度は0.65であった。次いで得られたポリマーを225℃で0.3mmHgの条件下、10時間古層重合を行った。得られたポリエステルの極限粘度は0.81であった。
(ポリエステルB〜Dの製造)
ポリエステルAを乾燥し、ベント式二軸押し出し機にて下記表1の配合でポリエステルB〜Dを得た。
【0060】
【表3】
Figure 0003722400
(1−1.白色ポリエステルフィルムの製造:ポリエステルフィルム1)
ポリエステルB 35重量部、ポリエステルC 10重量部、ポリエステルD5重量部、およびポリエステルA 50重量部を均一にブレンドし、180℃で4時間乾燥後、285℃に設定した押し出し機よりシート状に押し出し、表面温度を30℃に設定した回転冷却ドラムで静電印加冷却法を利用して急冷固化させ、厚み1690μmの実質的に非晶質のシートを得た。得られた非晶質シートを縦方向に83℃で3.0倍延伸した後、横方向に3.8倍延伸し、245℃で6秒間熱処理を行い、厚さ188μm、隠蔽度(OD)1.6、b値−0.6の二軸延伸白色ポリエステルフィルムを得た。
(1−2.白色ポリエステルフィルムの製造:ポリエステルフィルム2、3)
ポリエステルフィルム1の製造において、ポリエステルの配合量を下記表2のように変更した以外は、ポリエステルフィルム1と同様にして二軸延伸白色ポリエステルフィルムを得た。ポリエステルフィルム1〜3のフィルム特性を下記表3に示す。
【0061】
【表4】
Figure 0003722400
【0062】
【表5】
Figure 0003722400
(2.微細気泡含有白色ポリエステルフィルムの製造:ポリエステルフィルム2)
ポリエステルB 12.5重量部、ポリエステルD 5重量部、ポリエステルA 72.5重量部を配合し、180℃で4時間乾燥した。その後メルトフローインデックスが5.5の結晶性ポリプロピレンホモポリマーチップ10重量部、およびシリコーン系界面活性剤(商品名:BH193 東レシリコーン(株)製)を0.2重量部配合し、均一にブレンドした後、290℃に設定した押し出し機よりシート状に押し出し、表面温度を40℃に設定した回転冷却ドラムで静電印加冷却法を利用して急冷固化させ、厚み247μmの実質的に非晶質のシートを得た。得られた非晶質シートを縦方向に83℃で2.9倍延伸した後、横方向に3.2倍延伸し、245℃で6秒間熱処理を行い、厚さ38μm、隠蔽度(OD)0.5、b値−4.5、見かけ密度(ρ)1.0g/cm3 の二軸延伸微細気泡含有白色ポリエステルフィルム7を得た。
【0063】
以下にポリエステルフィルム上に塗布層を設けるための塗布方法を記す。
(塗布方法)
上記白色ポリエステルフィルム製造工程中、縦延伸後、横延伸前のフィルムにバーコーターを用いて後に記す組成の塗布液をそれぞれの例に合うような厚みになるよう塗布液の濃度、塗工厚みを調整して塗布した。表中の塗布厚みは乾燥、横延伸後のもの、すなわちち2軸延伸熱処理後のフィルム上における塗布層の厚みである。
【0064】
次に例に使用した塗布剤の内容について記す。
(水性ポリウレタン)
水性ポリウレタンA1〜A6を用いた。
樹脂は常法により合成され、必要に応じて中和、水に分散された。その組成は次の通りである。また以下の部数は全て重量部を表す。
【0065】
A1:ポリエステルポリオール(テレフタル酸664部、イソフタル酸631部、1,4−ブタンジオール472部、ネオペンチルグリコール447部からなるポリエステルポリオール、これにアジピン酸321部、ジメチロールプロピオン酸268部を加え、ペンダントカルボキシル基を含有させたポリエステルポリオール)1880部とトリレンジイソシアネート160部からなる芳香族ポリエステルポリウレタン
A2:上記A1と同じポリエステルポリオール1880部に4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート160部からなる脂肪族ポリエステルポリウレタン
A3:ポリテトラメチレングリコール(分子量2000)31.5部、ネオペンチルグリコール17.2部、ジメチロールプロピオン酸7.8部、トリメチロールプロパン1.5部、トリレンジイソシアネート42.0部からなる芳香族ポリエーテルポリウレタン
A4:ポリエチレングリコール31.5部、ネオペンチルグリコール17.2部、ジメチロールプロピオン酸7.8部、トリメチロールプロパン1.5部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート42.0部からなる脂肪族ポリエーテルポリウレタン
A5:ポリカーボネートポリオール(ジエチルカーボネート472部、1,5−ペンタンジオール416部、1,6−ヘキサンジオール472部)500部、トリレンジイソシアネート160部、ジメチロールプロピオン酸58.5部からなる芳香族ポリカーボネートポリウレタン
A6:水性ポリウレタンA5においてトリレンジイソシアネートの代わりに4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを用いてなる、脂肪族ポリカーボネートポリウレタン
(水性エポキシ基含有化合物)
水性エポキシ基含有化合物B1、B2を用いた。
【0066】
これらの内容(主成分)は次のとおり。
B1:テトラグリセロールテトラグリシジルエーテル
B2:ソルビトールトリグリシジルエーテル
(水性アクリル)
ポリアクリル系樹脂化合物水分散体C1を用いた。
【0067】
C1:メチルメタクリレート45モル%、n−ブチルアクリレート30モル%、スチレン20モル%、アクリル酸5モル%よりなる共重合体
(メラミン化合物)
メラミン化合物D1を用いた。
D1:ほぼ4官能のメチロールないしメトキシメトチロールメラミンの1核体、2核体、3核体を中心とする水溶性メラミン化合物
実施例1〜11、比較例1〜15
上記塗布方法に従って、下記表4に記されたポリエステルフィルムに、同じく表4に記された塗布層を設けた。ただし、表4中、塗布層中の水性ポリエステル、水性エポキシ基含有化合物の割合を示す数値は各々の塗布剤の乾燥重量による重量割合(重量%)を意味する。また塗布層の厚みは、最終的にできあがったフィルム上での厚みである。
【0068】
比較例16、17
表4のとおり塗布層を設けない各白色ポリエステルフィルムである。
【0069】
【表6】
Figure 0003722400
【0070】
【表7】
Figure 0003722400
次に各例の評価結果を下記表5に示す。なお、表中印画紙実用特性の評価で−は写真画像形成層との接着性が不足しているため評価を行わなかったことを意味する。
【0071】
【表8】
Figure 0003722400
【0072】
【表9】
Figure 0003722400
【0073】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、写真画像形成層と良好な接着性を有する塗布層が設けられたポリエステル系写真印画紙用支持体を容易に提供することができ、本発明の工業的価値は非常に大きい。

Claims (6)

  1. 水性ポリウレタンおよび水性エポキシ基含有化合物を乾燥重量割合として10/90〜80/20の比率で含有する塗布液を、隠蔽度(OD)が0.3以上でかつb値が2.0未満の白色ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布し、乾燥することを特徴とするポリエステル系写真印画紙用支持体の製造方法。
  2. 水性ポリウレタンおよび水性エポキシ基含有化合物の乾燥重量合計が塗布液の乾燥物重量に対して60%以上であることを特徴とする請求項1記載のポリエステル系写真用支持体の製造方法。
  3. 水性ポリウレタンが、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタンおよびポリカーボネート系ポリウレタンから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1または2記載のポリエステル系写真用支持体の製造方法。
  4. 白色ポリエステルフィルムが白色顔料を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のポリエステル系写真印画紙用支持体の製造方法。
  5. 白色ポリエステルフィルムの見かけ密度(ρ)が0.6〜1.2g/cm3 である微細な独立気泡を多数含有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のポリエステル系写真印画紙用支持体の製造方法。
  6. 塗布がポリエステルフィルムの製造工程内で施されることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のポリエステル系写真印画紙用支持体の製造方法。
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