JP5364289B2 - ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法 - Google Patents

ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明はポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法に関する。さらに詳しくは、たとえば型内発泡成形体の原料として好適に使用し得るポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法に関する。
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を金型内に充填し、水蒸気等で加熱成形して得られる型内発泡成形体は、型内発泡成形体の長所である形状の任意性、軽量性、断熱性などの特徴を持つ。この型内発泡成形体はポリスチレン系樹脂発泡粒子を用いて得られる型内発泡成形体に比べて、耐薬品性、耐熱性、圧縮後の歪回復率に優れている。また、ポリエチレン系樹脂発泡粒子を用いる型内発泡成形体と比べて、寸法精度、耐熱性、圧縮強度が優れている。これらの特徴により、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いて得られる型内発泡成形体は、断熱材、緩衝包装材、自動車内装部材、自動車バンパー用芯材など様々な用途に用いられている。ポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、耐圧容器内で水中にポリプロピレン系樹脂粒子を分散させ、ついで発泡剤を添加し、高圧下にポリプロピレン系樹脂の融点付近の一定温度に保って発泡剤を含浸させたのち、低圧雰囲気下に放出する方法により製造できる。この方法は除圧発泡法あるいはオートクレーブ法と呼ばれている。
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子から得られる型内発泡成形体の重要な特性として(1)型内発泡成形体の表面の平滑性が優れていること、(2)型内発泡成形体における個々の発泡粒子間の融着性が良好であること、及び(3)型内発泡成形体の寸法の金型寸法に対する収縮率が小さいことがあげられる。
このうち、発泡成形体の表面の平滑性(以下、表面性ともいう)は、型内発泡成形体表面において発泡粒子の輪郭全てが隣り合った粒子と融着しているかどうかを一つの指標に評価される。型内発泡成形体の表面の平滑性に影響する要因の一つは発泡粒子の成形時における発泡性(二次発泡能力)であるといわれている。
また、融着性は成形体内部において隣り合う発泡粒子が互いに表面において融着している程度である。型内発泡成形体を破断したとき破断面において破壊している発泡粒子が多いほど融着性が優れる。融着性が優れると成形体の強度が大きくなる傾向がある。
さらに、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子から得られる型内発泡成形体は成形後、金型から取り出したとき収縮するのが通常である。収縮した型内発泡成形体は時間の経過と共に大きさを回復するが金型の大きさに回復しない。特に、高発泡倍率の型内発泡成形体は気泡膜が薄いため、大きい収縮を生じる。そのため、型内発泡成形体を加温雰囲気下に一定時間保持する、いわゆる養生工程が必要になる。従って、養生時間を短縮させるためにも、収縮率が小さい(以下、低収縮性ともいう)発泡成形体を製造できる発泡粒子が求められる。
特許文献1には重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が小さいポリプロピレン系樹脂を原料樹脂として用いた発泡粒子は二次発泡能力に優れ、得られる型内発泡成形体は表面や内部の粒子間間隙が少なく(発泡粒子の輪郭全てが隣り合った粒子と融着している粒子が多い)優れた外観を有することが開示されている。また、特許文献1にはMw/Mnが小さいポリプロピレン系樹脂を原料樹脂として用いた発泡粒子から得られる発泡成形体は収縮率が小さいことも開示されている。
一方、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造においては、発泡剤としてフッ素系ガスやブタンガスが使用されていた。しかし、環境保護や製造時の安全性確保の観点から発泡剤として水を使用する方法が提案されている。例えば特許文献2には水を発泡剤として使用して発泡粒子を製造する際に、エチレンが共重合されたポリプロピレン系樹脂を原料樹脂として用いれば、高発泡倍率の発泡粒子を得る方法が開示されている。また、特許文献3〜6には水を発泡剤として使用して発泡粒子を製造する際に、樹脂中の含浸水分量を増加させるため親水性重合体や親水性低分子化合物などの親水性物質が添加されたポリプロピレン樹脂を原料樹脂として使用する方法が開示されている。
以上のことから、エチレンが共重合されたポリプロピレン系樹脂であり重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が小さいポリプロピレン系樹脂であって親水性物質が添加された樹脂を原料樹脂として使用し、水を発泡剤として発泡粒子を製造する場合、高発泡倍率の発泡粒子を得ることができる。しかしながら、Mw/Mnが小さいポリプロピレン系樹脂を使用しているにもかかわらず、親水性物質の種類によっては、表面の平滑性が劣り、融着性が劣り収縮率が大きい発泡成形体を与える発泡粒子が生成する場合があることが判明した。
特開平3−152136号公報 特開昭60−221440号公報 国際公開WO97/38048号公報 特開平10−306179号公報 特開平11−92599号公報 特開2004−67768号公報
本発明の課題は、二次発泡能力に優れる発泡粒子を与えるMw/Mnが小さいポリプロピレン系樹脂であって親水性物質が添加された樹脂を原料樹脂として使用し、水を発泡剤として製造された発泡粒子であって、表面性、融着性及び低収縮性を兼ね備えた型内発泡成形体を与える発泡粒子の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、親水性物質として分子量600以下の物質を使用すると前記課題が解決することを見いだした。すなわち本発明は次のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子およびポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体に関する。
(1)耐圧容器内に重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が5.0以下であるポリプロピレン系樹脂粒子を水系分散媒に分散させ、ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化温度以上の温度まで加熱、加圧した後、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に放出する、水を発泡剤とする発泡倍率が20倍以上のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法において、前記ポリプロピレン系樹脂粒子が分子量600以下の親水性物質を含んでなり、発泡直後のポリプロピレン系樹脂発泡粒子中の含水率が0.7重量%以上10重量%以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
(2)分子量600以下の親水性物質がポリエチレングリコールである(1)に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
(3)ポリエチレングリコールの分子量が200以上600以下である(2)に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
(4)発泡剤として炭酸ガスを併用する(1)〜(3)何れかに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
(5)ポリプロピレン系樹脂が、エチレンを共重合成分として含有するポリプロピレン系樹脂である(1)〜(4)何れかに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
(6)(1)〜(5)何れかに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法によって得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子であって、平均気泡径が50〜800μm、示差走査熱量測定において、2つ以上の融点を示す結晶構造を有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
(7)(6)記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を、型内発泡成形してなる型内発泡成形体。
本発明の製造方法によって得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、表面性、融着性及び低収縮性を兼ね備えた型内発泡成形体を与えることができる。
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂粒子を構成するポリプロピレン系樹脂としては、単量体成分として、プロピレンを含んでいれば特に限定はなく、たとえば、プロピレンホモポリマー、α−オレフィン−プロピレンランダム共重合体、α−オレフィン−プロピレンブロック共重合体などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。特に、α−オレフィンがエチレンである、エチレンを共重合単量体成分として含有するポリプロピレン系樹脂が好ましい。好ましいエチレン含量は1重量%以上10重量%以下、さらには1重量%以上7重量%以下、さらには2重量%以上7重量%以下、さらには3重量%以上7重量%以下、さらには3.5重量%以上6重量%以下、特には3.5重量%以上5重量%以下である。なお、ポリプロピレン系樹脂中のエチレンに基づく共重合単量体成分の含有量は13C−NMRを用いて測定することができる。
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂はエチレン以外の単量体を共重合成分として含んでいてもよい。また、エチレンを共重合単量体成分として含有するポリプロピレン系樹脂がエチレン以外の単量体を共重合単量体成分として含んでいてもよい。エチレン以外の共重合単量体成分としては、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどの炭素数4〜12のα−オレフィン;シクロペンテン、ノルボルネン、テトラシクロ[6,2,11,8,13,6]−4−ドデセンなどの環状オレフィン;5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンなどのジエン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどのビニル単量体などが挙げられ、これらを一種または二種以上使用することが出来る。
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂は、ランダム共重合体、ブロック共重合体のどちらでも用いることができる。特に汎用性の高い、エチレン−プロピレンランダムコポリマーあるいはエチレン−プロピレン−ブテンランダムターポリマーを用いることが好ましい。エチレン含量が1重量%以上7重量%以下、さらには、3重量%以上7重量%以下、さらには3.5重量%以上6重量%以下、特には3.5重量%以上5重量%以下であるエチレン−プロピレンランダムコポリマー、あるいは、エチレン−プロピレン−ブテンランダムターポリマーが好ましい。
また、ポリプロピレン系樹脂の以外に、他の熱可塑性樹脂、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状密度ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブテン、アイオノマー等をポリプロプレン系樹脂の特性が失われない範囲で混合使用してポリプロピレン系樹脂粒子としても良い。
本発明で使用するポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量(以下、Mwと表記する場合がある)と数平均分子量(以下、Mnと表記する場合がある)の比(Mw/Mn)は5.0以下である。Mw/Mnは4.5以下が好ましく、4.0以下がさらに好ましく、特には1.5以上4.0以下が好ましい。Mw/Mnが5.0を越える場合、型内発泡成形体の表面性や低収縮性が低下する。
Mn及びMwは以下の条件において測定される。
測定機器:
Waters社製Alliance GPC 2000型 ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)
カラム:
TSKgel GMH6−HT 2本、
TSKgel GMH6−HTL 2本(それぞれ、内径7.5mm×長さ300mm、東ソー社製)
移動相:o−ジクロロベンゼン(0.025%BHT含有)
カラム温度:140℃
流速:1.0mL/min
試料濃度:0.15%(W/V)−o−ジクロロベンゼン
注入量:500μL
分子量較正:ポリスチレン換算(標準ポリスチレンによる較正)
本発明に使用するポリプロピレン系樹脂は、例えば、ポリプロピレン樹脂を有機過酸化物で酸化分解(減成処理)して製造することができる。所望のMw/Mnを有するポリプロピレン系樹脂は、元になるポリプロピレン系樹脂の種類、有機過酸化物の種類や量及び酸化分解温度や時間を調整して得ることができる。有機過酸化物の使用量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.001重量部以上0.1重量部以下であることが好ましい。ポリプロピレン樹脂を酸化分解するには、例えば、有機過酸化物を添加したポリプロピレン系樹脂を押出機内で加熱溶融により行うことができる。
使用しうる有機過酸化物としては、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等が挙げられる。
本発明で使用するポリプロピレン系樹脂は、メタロセン触媒、ポストメタロセン触媒等の触媒を用いて、重合条件を調整することで得ることもできる。汎用のポリプロピレン系樹脂を有機過酸化物で酸化分解する方法を用いると所望の分子量やメルトインデックス等の特性を有するポリプロピレン系樹脂を容易に得ることができるため好ましい。メタロセン触媒、ポストメタロセン触媒等の触媒を用いて得られたポリプロピレン系樹脂をさらに有機過酸化物で酸化分解する方法を用いることもできる。
本発明で使用するポリプロピレン系樹脂は無架橋の状態が好ましいが、有機過酸化物や放射線等で処理することにより架橋を行っても良い。また、2以上のポリプロピレン系樹脂を混合しても良い。
本発明で用いるポリプロピレン系樹脂粒子の融点は、130℃以上165℃以下であることが好ましく、更には135℃以上155℃以下のものが好ましい。融点が130℃未満の場合、耐熱性、機械的強度が十分でない傾向がある。また、融点が165℃を超える場合、型内発泡成形時の融着を確保することが難しくなる傾向がある。ここで、前記融点とは、示差走査熱量計によってポリプロピレン系樹脂1〜10mgを40℃から220℃まで10℃/分の速度で昇温し、その後40℃まで10℃/分の速度で冷却し、再度220℃まで10℃/分の速度で昇温した時に得られるDSC曲線における吸熱ピークのピーク温度をいう。
本発明で用いることが出来るポリプロピレン系樹脂粒子のメルトインデックス(以下、MI値)は、0.5g/10分以上30g/10分以下であることが好ましく、更には2g/10分以上20g/10分以下のものが好ましい。MI値が0.5g/10分未満の場合、高発泡倍率のポリプロピレン系樹脂発泡粒子が得られにくい場合があり、30g/10分を超える場合、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の気泡が破泡し易く、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の連泡率が高くなる傾向にある。なお、MI値はJIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgで測定する。
本発明の製造方法においては、分子量600以下の親水性物質を含んでなるポリプロピレン系樹脂粒子を使用する。なお、親水性物質が無機塩などの場合は分子量に代えて式量を使用する。親水性物質の具体例としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硼砂、硼酸亜鉛等の水溶性無機物、メラミン、イソシアヌル酸、メラミン・イソシアヌル酸縮合物等の吸水性有機物、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド等のポリエーテル、ポリエーテルのポリプロピレン等への付加物やこれらのアロイ、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体のアルカリ金属塩、ブタジエン(メタ)アクリル酸共重合体のアルカリ金属塩、カルボキシル化ニトリルゴムのアルカリ金属塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩及びポリ(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩等の親水性重合体が挙げられる。国際公開WO97/38048号公報、特開平10−306179号公報、特開平11−92599号公報、特開2004−67768号公報には親水性物質が詳細に記載されている。これら、水溶性無機物、吸水性有機物や親水性重合体を2種以上併用してもよい。
親水性物質の分子量が600を越えると、分子量が600以下の親水性物質を使用する場合に比較し、同じ発泡倍率の発泡粒子を得るためには多量の親水性物質が必要になり、さらに、得られる発泡成形体の表面性、融着性あるいは低収縮性が低下する。親水性物質が重合体の場合、その平均分子量は、たとえば、サーモフィッシャーサイエンティフィック製LCQアドバンテージなどの液体クロマトグラフ質量分析装置を使用し測定できる。これらの親水性物質のなかでは、ポリエチレングリコール、メラミンあるいは硼酸亜鉛が好ましい。
親水性物質の添加量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.005重量部以上2重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.005重量部以上1重量部以下、更に好ましくは0.01重量部以上0.5重量部以下である。ここで親水性物質の添加量とは、吸水していない状態での親水性物質の重量を指す。親水性物質の添加量が0.005重量部より少ないと、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の発泡倍率を向上させることができなかったり、気泡の均一化効果が低減する傾向がある。添加量が2重量部を超えると、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の収縮が生じ易くなったり、ポリプロピレン系樹脂中への親水性物質の分散が不十分となる傾向がある。なお、親水性物質が親水性重合体の場合、100重量部に対して0.1重量部以上0.5重量部以下使用するのが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂には親水性物質の他に発泡核剤(セル造核剤)を添加してもよい。発泡核剤は、発泡の時に気泡核の形成を促す物質である。発泡核剤の例としては、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、カオリン、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機物質が挙げられる。また、親水性物質、特に無機物質、のなかには発泡核剤として作用する物質がある。これらの中でも、タルク、炭酸カルシウムがポリプロピレン系樹脂中への分散性が良好で均一な気泡を有する発泡粒子を得易くなるため好ましい。発泡核剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。
発泡核剤の添加量は使用する発泡核剤によって異なり、一概には決めることが出来ないが、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.005重量部以上2重量部以下であることが好ましく、0.01重量部以上1重量部以下であることがより好ましい。発泡核剤の添加量が0.005重量部より少ない場合は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の発泡倍率を大きくすることができなかったり、気泡の均一性が低下してしまう場合がある。発泡核剤の添加量が2重量部より多い場合はポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均気泡径が小さくなり過ぎ、型内発泡成形性が不良となる傾向にある。
また、たとえば発泡核剤としてタルクを使用する場合、添加量はポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.005重量部以上1重量部以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.01受領部以上0.5重量部以下、より好ましくは0.02重量部以上0.2重量部以下である。
更に、ポリプロピレン系樹脂粒子の製造の際、必要により着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、リン系加工安定剤、ラクトン系加工安定剤、金属不活性剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系光安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤、難燃剤、難燃助剤、酸中和剤、結晶核剤、アミド系添加剤等の添加剤を、ポリプロピレン系樹脂の特性を損なわない範囲内で添加することができる。樹脂に添加剤を加える場合、上記ポリプロピレン系樹脂粒子の製造前にブレンダー等を用いポリプロピレン系樹脂と混合することが好ましい。また、溶融したポリプロピレン系樹脂中に添加剤を添加してもよい。
ポリプロピレン系樹脂は通常、発泡粒子を製造するために、押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等を用いて溶融し、円柱状、楕円状、球状、立方体状、直方体状等の樹脂粒子形状に加工する。必要に応じて添加される他の樹脂や添加剤もこの工程で添加することができる。ポリプロピレン系樹脂粒子の大きさは、一粒の重量が0.1mg以上30mg以下であることが好ましく、0.3mg以上10mg以下がより好ましい。ポリプロピレン系樹脂粒子の一粒の重量は、ポリプロピレン系樹脂粒子をランダム選んだ100粒から得られる平均樹脂粒子重量であり、以下、mg/粒で表示する。
前記ポリプロピレン系樹脂粒子は、耐圧容器内に水系分散媒に分散させ、ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化温度以上の温度まで加熱、加圧した後、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に放出することで、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子とすることが出来る。
本発明においては、発泡剤として水を使用する。発泡剤として水が作用しているかどうかは後述する含水率を測定することにより判別することが出来る。また他の方法として、発泡直後の発泡粒子をポリマー用水分計、あるいはカールフィッシャー水分計などで測定することも可能である。
水を発泡剤として使用していれば、他の物理発泡剤を併用してもよい。他の物理発泡剤としては、プロパン、ブタン、ペンタン等の飽和炭化水素類、ジメチルエーテル等のエーテル類、メタノール、エタノール等のアルコール類、空気、窒素、炭酸ガス等の無機ガスが挙げられる。中でも特に環境負荷が小さく、燃焼危険性も無いことから、炭酸ガスを併用することが望ましい。水と炭酸ガスを併用することで、発泡力を大きくし易いことから、高発泡倍率を得る際においても、発泡核剤の添加量を少なくすることができ、結果として平均気泡径が大きい発泡粒子が得られ、2次発泡性も良好なものとなる傾向がある。
更に具体的には以下の方法で、ポリプロピレン系樹脂粒子をポリプロピレン系樹脂発泡粒子とすることができる。
ポリプロピレン系樹脂粒子を耐圧容器内で水系分散媒に分散させ、必要に応じ他の物理発泡剤を添加する。次にポリプロピレン系樹脂粒子が軟化温度以上、好ましくはポリプロピレン系樹脂粒子の融点−25℃以上でポリプロピレン系樹脂粒子の融点+25℃以下、更に好ましくはポリプロピレン系樹脂粒子の融点−15℃以上でポリプロピレン系樹脂粒子の融点+15℃以下の範囲の温度に加熱し、加圧して、ポリプロピレン系樹脂粒子内に発泡剤である水、必要に応じ他の発泡剤、を含浸させる。この後、耐圧容器の一端を開放してポリプロピレン系樹脂粒子を耐圧容器内よりも低圧の雰囲気中に放出することによりポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造する。
ポリプロピレン系樹脂粒子を分散させる耐圧容器には特に制限はなく、発泡粒子製造時における容器内圧力、容器内温度に耐えられるものであればよいが、例えばオートクレーブ型の耐圧容器があげられる。
前記水系分散媒としては水が好ましい。メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等を水に添加した分散媒も使用できる。
水系分散媒中、ポリプロピレン系樹脂粒子同士の合着を防止するために、分散剤を使用することが好ましい。分散剤として、第三リン酸カルシウム、第三リン酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、タルク、クレー等の無機系分散剤が例示できる。
また、分散剤と共に分散助剤を使用することが好ましい。分散助剤の例としては、N−アシルアミノ酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド等のカルボン酸塩型、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩等のスルホン酸塩型、硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩等の硫酸エステル型、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンリン酸塩、アルキルアリルエーテル硫酸塩等のリン酸エステル型等の陰イオン界面活性剤をあげることができる。また、マレイン酸共重合体塩、ポリアクリル酸塩等のポリカルボン酸型高分子界面活性剤、ポリスチレンスルホン酸塩、ナフタルスルホン酸ホルマリン縮合物塩などの多価陰イオン高分子界面活性剤も使用することができる。
分散助剤として、スルホン酸塩型の陰イオン界面活性剤を使用することが好ましく、さらには、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩から選ばれた1種もしくは2種以上の混合物を用いるのが好ましく、アルキルスルホン酸塩を使用することがより好ましく、疎水基として炭素数10〜18の直鎖状の炭素鎖を持つアルキルスルホン酸塩を使用することが、発泡粒子に付着する分散剤を低減できるため特に好ましい。
これらの中でも、分散剤として第三リン酸カルシウム、第三リン酸マグネシウム、硫酸バリウムまたはカオリンから選ばれる一種以上と、分散助剤としてn−パラフィンスルホン酸ソーダを併用することが好ましい。
分散剤や分散助剤の使用量は、その種類や、用いるポリプロピレン系樹脂の種類と使用量によって異なるが、通常、水系分散媒100重量部に対して、分散剤0.2重量部以上3重量部以下を配合することが好ましく、分散助剤0.001重量部以上0.1重量部以下を配合することが好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂粒子は、水系分散媒中での分散性を良好なものにするために、通常、水系分散媒100重量部に対して、20重量部以上100重量部以下使用するのが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法の例は次のとおりである。ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、分子量600以下の親水性物質0.05重量部以上2重量部以下、および発泡核剤を含有させたポリプロピレン系樹脂粒子を、耐圧容器内の水系分散媒に分散させ、ポリプロピレン系樹脂の軟化温度以上の温度まで加熱、加圧して発泡剤である水をポリプロピレン系樹脂粒子内に含浸させる。さらに窒素もしくは空気を圧入することで耐圧容器内の内圧を高めた後、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に放出してポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造する。低圧域に放出する前に窒素もしくは空気を圧入して、耐圧容器内の内圧を高めることにより、発泡時の圧力開放速度を調節し、発泡倍率や平均気泡径の調整を行うことができる。
また炭酸ガスなどの常温で気体の物理発泡剤を併用する場合は、ポリプロピレン系樹脂粒子と水系分散媒を耐圧容器に投入したのち、炭酸ガスなどの物理発泡剤を耐圧容器内に導入すれば良い。具体的には、例えば以下の手順で行うことが出来る。
耐圧容器にポリプロピレン系樹脂粒子、水系分散媒、分散剤等を仕込んだ後、耐圧容器内を真空引きした後、1〜2MPa程度の炭酸ガスを導入し、ポリプロピレン系樹脂の軟化温度以上の温度まで加熱する。加熱することによって耐圧容器内の圧力が約1.5MPa〜3MPa程度まで上がる。発泡させる温度付近にてさらに炭酸ガスを追加して所望の発泡させる圧力に調整、さらに温度調整を行った後、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に放出してポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得る。或いは、耐圧容器にポリプロピレン系樹脂粒子、水系分散媒、必要に応じて分散剤等を仕込んだ後、必要に応じて耐圧容器内を真空引きした後、ポリプロピレン系樹脂の軟化温度以上の温度まで加熱しながら炭酸ガスを導入してもよい。
本発明においてポリプロピレン系樹脂粒子を水系分散媒に分散させ、ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化温度以上の温度まで加熱、加圧した後、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に放出した直後のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の含水率は0.7重量%以上10重量%以下である。好ましい含水率は1重量%以上8重量%以下、より好ましい含水率は1重量%以上5重量%以下である。含水率が0.7重量%未満の場合、発泡倍率が低いものしか得られず、10重量%を越える場合においては発泡後の発泡粒子内が低内圧となるために発泡粒子が収縮し易く、発泡後にオーブン養生させても収縮が残ってしまうことがある。
含水率は、以下のようにして測定する。得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子の表面に付着した水を、空気気流で脱水させたのち、その重量(W1)を測定する。さらにその発泡粒子を80℃のオーブン中で12時間乾燥させた時の重量(W2)を測定する。含水率は次式により算出する。
含水率(%)=(W1−W2)/W2×100
また、水及び窒素以外の発泡剤を併用した場合は、水及び窒素のみを発泡剤とし発泡温度や発泡圧力などの条件は水及び窒素以外の発泡剤を使用した場合と同一になるようにして発泡粒子を製造し、同様に測定する。
上述の方法によって得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子を耐圧容器内にて空気等の無機ガスにて加圧し、内圧を付与させたのち、加熱することでさらに発泡させ、さらに高発泡倍率化してもよい。なお、ポリプロピレン系樹脂粒子を耐圧容器内の水系分散媒に分散させ、高温、高圧下にて発泡剤を含浸させ、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に放出させて発泡させることを「一段発泡」と称し、一段発泡により得られる発泡粒子を「一段発泡粒子」と呼ぶ場合がある。さらに、一段発泡粒子を耐圧容器内にて空気等の無機ガスにて加圧し、内圧を付与させたのち、加熱することでさらに発泡させることを「二段発泡」と称し、二段発泡によって得られた発泡粒子を「二段発泡粒子」と呼ぶ場合がある。
本発明においては、最終的に得られる発泡粒子の発泡倍率は20倍、好ましくは30倍以上、さらに好ましくは32倍以上である。最終的に得られる発泡粒子の発泡倍率は45倍以下が好ましい。発泡倍率が20倍未満の場合は、軽量化のメリットが得られず、また得られる型内発泡成形体の柔軟性、緩衝特性などが不充分となる傾向があり、45倍を越える場合は得られる型内発泡成形体の寸法精度、機械的強度、耐熱性などが不充分となる傾向がある。発泡倍率20倍以上のポリプロピレン系樹脂発泡粒子とするためには、二段発泡により得ることが好ましい。ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の発泡倍率の測定法は後記する。
本発明によって得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均気泡径は50μm以上800μm以下であることが好ましく、より好ましくは100μm以上600μm以下、さらに好ましくは200μm以上500μm以下である。平均気泡径が50μm未満の場合、得られる型内発泡成形体の形状が歪む、表面にしわが発生するなどの問題が生じる場合があり、800μmを越える場合、得られる型内発泡成形体の緩衝特性が低下する場合がある。平均気泡径は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の切断面について、表層部を除く部分についてASTM D3576に従い測定する。
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の連泡率は0〜12%であることが好ましく、より好ましくは0〜8%、さらに好ましくは0〜5%である。連泡率が12%を超えると、型内成形時に蒸気加熱による発泡性に劣り、得られた型内発泡成形体が収縮してしまう傾向にある。
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、示差走査熱量測定によって得られるDSC曲線において、2つ以上の融点を示す結晶構造を有することが好ましい。2つ以上の融点を示す結晶構造を有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子の場合、型内発泡成形性が良く、機械的強度や耐熱性の良好な型内発泡成形体が得られる傾向にある。ここで、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量測定によって得られるDSC曲線とは、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子1〜10mgを示差走査熱量計によって10℃/分の昇温速度で40℃から220℃まで昇温したときに得られるDSC曲線のことである。このDSC曲線において、現れる融解ピークの示す温度が融点である。
前記のごとく2つ以上の融点を示す結晶構造を有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、発泡時の耐圧容器内温度を適切な値に設定することにより容易に得られる。基材となるポリプロピレン系樹脂の融点以上、好ましくは融点+3℃以上、融解終了温度未満、好ましくは融解終了温度−2℃以下の温度から選定される。ここで、前記融解終了温度とは、示差走査熱量計によってポリオレフィン系樹脂1〜10mgを40℃から220℃まで10℃/分の速度で昇温し、その後40℃まで10℃/分の速度で冷却し、再度220℃まで10℃/分の速度で昇温した時に得られる融解ピーク曲線が高温側でベースラインの位置に戻ったときの温度である。
本発明で得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を型内発泡成形に用いる場合には次のような従来既知の方法が使用しうる。イ)そのまま用いる方法、ロ)あらかじめポリプロピレン系樹脂発泡粒子中に空気等の無機ガスを圧入し、発泡能を付与する方法、ハ)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を圧縮状態で金型内に充填し成形する方法。
これらの中でも、あらかじめポリプロピレン系樹脂発泡粒子中に空気等の無機ガスを圧入し、発泡能を付与するロ)の方法が好適である。具体的には次の型内発泡成形法によって型内発泡成形体を得ることが出来る。
1)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を耐圧容器内で空気加圧し、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子中に空気を圧入することにより発泡能を付与する。
2)得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子を2つの金型からなる、閉鎖しうるが密閉し得ない成形空間内に充填する。
3)水蒸気などを加熱媒体として0.2〜0.4MPa(G)程度のスチーム圧で3〜30秒程度の加熱時間で成形し、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子同士を融着させる。
4)金型を水冷する
5)金型を開いて、型内発泡成形体を取り出す。
得られる型内発泡成形体の発泡倍率は、特に限定されないが、30倍以上60倍以下、さらに35倍以上55倍以下、さらに35倍以上50倍以下、さらに40倍以上50倍以下の発泡倍率を有する場合、有用である。
本発明で得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いた型内発泡成形体は、断熱材、緩衝包装材、自動車内装部材、自動車バンパー用芯材などの用途に用いることができる。高発泡倍率の型内発泡成形体が使用されることが多い緩衝包装材に、本発明で得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いた型内発泡発泡体を使用することは、特に望ましい使用法である。
以下、実施例および比較例をあげて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例および比較例における評価は、つぎの方法により行なった。
(発泡倍率)
3〜10gの発泡粒子を60℃で6時間乾燥したのち重量w(g)を測定後、水没法にて体積v(cm3)を測定し、発泡粒子の真比重ρb=w/vを求め、発泡前のポリプロピレン系樹脂粒子の密度ρrとの比から発泡倍率K=ρr/ρbを求めた。
(連泡率)
空気比較式比重計(東京サイエンス(株)製、1000型)を用い、えられた発泡粒子の独立気泡体積を求め、これを別途水没法により求めた見かけの体積で除してえられた独立気泡率(%)を、100から引くことにより求めた。
(気泡の均一性、平均気泡径)
気泡膜が破壊されないように充分注意して発泡粒子をほぼ中央で切断し、その切断面をマイクロスコープで拡大し、発泡粒子の表面から発泡粒子の直径の5%に相当する厚さの表層部を除く部分(A)に関して次の測定をおこなった。ある任意の方向をx方向とし、それに直交する方向をy方向とした時に、ある1個のセルのx、y方向のフェレ径dx、dyを測定し、次式によりその1個の気泡径diを求める。
i=(dx+dy)/(2×0.785)
部分(A)内で半径方向に偏りのない様に、連続して隣り合う40個以上の気泡についてdiを測定する。1個の発泡粒子の平均気泡径d、及び気泡径の変動係数uを次式により算出する。但し、nはdiを測定した気泡の個数、σは気泡径の標準偏差である。
d=Σ(di)/n
u=σ/d×100
3個以上の発泡粒子についてuを求め、その平均をUとする。気泡の均一性を次の基準により評価した。
◎:Uが30以下
〇:Uが30を越えて35以下
×:Uが35超
(含水率)
水及び窒素以外の発泡剤を使用した場合は、水及び窒素のみを発泡剤とし発泡温度や発泡圧力などの条件は水及び窒素以外の発泡剤を使用した場合と同一になるようにして発泡粒子を製造する。得られた粒子の表面に付着した水を、空気気流で脱水させたのち、その重量(W1)を測定する。さらにその発泡粒子を80℃のオーブン中で12時間乾燥させた時の重量(W2)を測定する。含水率は次式により算出する。
含水率(%)=(W1−W2)/W2×100
(成形体の表面性)
設計外形寸法が400mm×300mm×20mmである直方体成形用金型を用いて得られた型内発泡成形体を用い表面性の評価を行った。成形後、23℃で2時間静置し、つぎに65℃で6時間養生したのち、23℃の室内に4時間放置して得られた型内発泡成形体の表面について以下の基準で評価した。融着性及び低収縮性の評価もこの型内発泡成形体を用いて行った。
◎:しわ、粒間少なく、美麗
〇:僅かなしわ、粒間あるが良好
×:しわ、ヒケがあり外観不良
(成形体の低収縮性)
成形後、23℃で2時間静置し、つぎに65℃で6時間養生したのち、23℃の室内に4時間放置して得られた型内発泡成形体の長手寸法を測定し、対応する金型寸法に対する、金型寸法と型内発泡成形体の寸法との差の割合を対金型寸法収縮率とし、以下の基準で評価した。
◎:対金型寸法収縮率が4%以下
〇:対金型寸法収縮率が4%を超えて7%以下
×:対金型寸法収縮率が7%より大きい
(成形体の融着性)
型内発泡成形体の表面にナイフで約5mmの深さのクラックを入れたのち、このクラックに沿って型内発泡成形体を割り、破断面を観察し、破断面の全粒子数に対する破壊粒子数の割合を求め、成形体融着率とした。
(実施例1)
ポリプロピレン系樹脂(プロピレン−エチレンランダム共重合体:エチレン含有率3.0重量%、Mw/Mn=4.7、MI=6g/10分、融点143℃、ダイスエル比1.087)100重量部に対し、ポリエチレングリコール(平均分子量300、ライオン(株)製)を0.5重量部プリブレンドし、次に発泡核剤としてタルク(林化成(株)製、タルカンパウダーPK−S)0.05重量部を加えブレンドした。50mm単軸押出機に供給し、溶融混練したのち、直径1.8mmの円筒ダイより押出し、水冷後、カッターで切断し、円柱状のポリプロピレン系樹脂粒子(1.2mg/粒)を得た。
得られたポリプロピレン系樹脂粒子100重量部を、水200重量部、第3リン酸カルシウム1.0重量部およびドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.05重量部とともに耐圧容器に投入したのち、脱気し、攪拌しながら炭酸ガス6重量部を耐圧容器内に入れ、148℃に加熱した。このときの圧力は3MPaであった。すぐに耐圧容器下部のバルブを開いて、ポリプロピレン系樹脂粒子および水系分散媒を含んでなる水分散物を直径4mmのオリフィスを通じて大気圧下に放出して発泡粒子(一段発泡粒子)を得た。この際、放出中は耐圧容器内の圧力が低下しないように、炭酸ガスで圧力を保持した。
得られた一段発泡粒子は示差走査熱量計測定において、138℃と157℃に2つの融点を示し、発泡倍率、連泡率、平均気泡径を測定した結果、発泡倍率19倍、連泡率0.6%、気泡の均一性に優れ、平均気泡径340μmであった。含水率は、耐圧容器内温度を上記と同じ148℃にし、耐圧容器内圧力を窒素にて3MPaとし水発泡させて測定したところ3.3重量%であった。
炭酸ガスを併用して発泡させた一段発泡粒子を60℃にて6時間乾燥させたのち、耐圧容器内にて、加圧空気を含浸させて、内圧を約0.4MPaにしたのち、約0.08MPaの蒸気と接触させることで二段発泡させ、発泡倍率30倍の二段発泡粒子を得た。二段発泡粒子は、示差走査熱量計測定において2つの融点を示し、連泡率1.3%、平均気泡径435μmで気泡の均一性に優れていた。二段発泡させた発泡粒子表面を電子顕微鏡にて観察した結果、表面部分の気泡径が均一で、かつ表面の粗れがなく、発泡粒子表面膜の厚みが薄い部分も少ない発泡粒子であった。次に、二段発泡させた発泡粒子を再度、耐圧容器内にて空気で加圧し、約0.19MPaの空気内圧とし、型内発泡成形を行った。得られた型内発泡成形体の表面は平滑性に優れ、しわの発生も無く、成形体の寸法収縮が小さく、成形体の歪が少なく、粒子どうしの融着に優れ、美麗な型内発泡成形体であった。
Figure 0005364289
(実施例2)
添加剤のポリエチレングリコール(平均分子量300)を0.2重量部、タルクを0.1重量部とした他は実施例1と同様に発泡、二段発泡、型内成形した。一段発泡粒子は2つの融点を示し、発泡倍率15倍、連泡率0.7%、気泡の均一性に優れ、平均気泡径270μmであった。含水率は2.0重量%であった。次に、実施例1と同様に発泡倍率30倍の2段発泡粒子を得た。2段発泡粒子は、示差走査熱量計測定において2つの融点を示し、連泡率0.8%、平均気泡径375μmで気泡の均一性に優れていた。型内成形評価の結果、得られた型内発泡成形体の表面は平滑性に優れ、しわの発生も無く、成形体の寸法収縮が小さく、成形体の歪が少なく、粒子どうしの融着に優れ、美麗な型内発泡成形体であった。
(実施例3)
添加剤のポリエチレングリコール(平均分子量300)を0.1重量部とした他は実施例1と同様に発泡、二段発泡、型内成形した。一段発泡にて得られた一段発泡粒子は2つの融点を示し、発泡倍率11倍、連泡率0.7%、気泡の均一性に優れ、平均気泡径275μmであった。含水率は1.3重量%であった。次に、実施例1と同様に発泡倍率30倍の二段発泡粒子を得た。二段発泡粒子は、示差走査熱量計測定において2つの融点を示し、連泡率0.8%、平均気泡径420μmで気泡の均一性に優れていた。型内成形評価の結果、得られた型内発泡成形体の表面は平滑性に優れ、しわの発生も無く、成形体の寸法収縮が小さく、成形体の歪が少なく、粒子どうしの融着に優れ、美麗な型内発泡成形体であった。
(実施例4)
添加剤のポリエチレングリコール(平均分子量300)を0.5重量部、タルク0.1重量部とし、発泡剤の炭酸ガスは使用せず、窒素ガスを導入し、151℃に加熱した。その他は実施例1と同様に一段発泡、二段発泡、型内成形評価した。一段発泡の耐圧容器内圧は3.0MPaとした。一段発泡にて得られた発泡粒子は2つの融点を示し、発泡倍率12倍、連泡率1.1%、平均気泡径235μmであった。気泡の均一性は実施例1〜3に比較するとやや劣るもののほぼ均一であった。含水率は3.3重量%であった。次に、実施例1と同様に発泡倍率30倍の二段発泡粒子を得た。二段発泡粒子は、示差走査熱量計測定において2つの融点を示し、連泡率2.3%、平均気泡径355μmで気泡の均一性に優れていた。型内成形評価の結果、得られた型内発泡成形体の表面は平滑性に優れ、しわの発生も無く、成形体の寸法収縮が小さく、成形体の歪が少なく、粒子どうしの融着に優れ、美麗な型内発泡成形体であった。
(実施例5)
添加剤のポリエチレングリコール(平均分子量600)を0.5重量部とした他は、実施例4と同様に一段発泡、二段発泡、型内成形評価した。一段発泡の耐圧容器内圧は3.0MPaとした。一段発泡にて得られた発泡粒子は2つの融点を示し、発泡倍率10倍、連泡率1.2%、平均気泡径225μmであった。気泡の均一性は実施例1〜3に比較するとやや劣るもののほぼ均一であった。含水率は3.0重量%であった。次に、実施例1と同様に発泡倍率30倍の2段発泡粒子を得た。2段発泡粒子は、示差走査熱量計測定において2つの融点を示し、連泡率2.5%、平均気泡径345μmで気泡の均一性に優れていた。型内成形した。型内成形評価の結果、得られた型内発泡成形体の表面は平滑性に優れ、しわの発生も無く、成形体の寸法収縮が小さく、成形体の歪が少なく、粒子どうしの融着に優れ、美麗な成形体であった。
(実施例6)
ポリエチレングリコール0.5重量部に代えて粉砕して微細化したメラミンを0.1重量部、タルク0.05重量部に代えて0.03重量部、使用した他は、実施例1と同様に1段発泡、2段発泡、型内成形評価した。一段発泡の耐圧容器内圧は3.0MPaとした。一段発泡にて得られた発泡粒子は2つの融点を示し、発泡倍率15倍、連泡率0.9%、平均気泡径240μmであった。気泡の均一性は実施例1〜3に比較するとやや劣るもののほぼ均一であった。含水率は2.4重量%であった。次に、実施例1と同様に発泡倍率30倍の二段発泡粒子を得た。2段発泡粒子は、示差走査熱量計測定において2つの融点を示し、連泡率1.0%、平均気泡径350μmで気泡の均一性に優れていた。型内成形評価の結果、得られた型内発泡成形体の表面は平滑性に優れ、しわの発生も無く、成形体の寸法収縮が小さく、成形体の歪が少なく、粒子どうしの融着に優れ、美麗な成形体であった。
(実施例7)
ポリエチレングリコール0.5重量部に代えて硼酸亜鉛を0.1重量部使用し、タルク使用しなかった他は、実施例1と同様に一段発泡、二段発泡、型内成形評価した。一段発泡の耐圧容器内圧は3.0MPaとした。一段発泡にて得られた発泡粒子は2つの融点を示し、発泡倍率13倍、連泡率1.1%、平均気泡径235μmであった。気泡はほぼ均一であった。含水率は2.0重量%であった。次に、実施例1と同様に発泡倍率30倍の2段発泡粒子を得た。2段発泡粒子は、示差走査熱量計測定において2つの融点を示し、連泡率1.0%、平均気泡径350μmで気泡の均一性に優れていた。型内成形評価の結果、得られた型内発泡成形体の表面は平滑性に優れ、しわの発生も無く、成形体の寸法収縮が小さく、成形体の歪が少なく、粒子どうしの融着に優れ、美麗な型内発泡成形体であった。
(比較例1)
ポリエチレングリコールを使用せず、表に示す条件にて実施例1と同様に発泡させた。発泡倍率6倍と低い倍率しか得られず、平均気泡径150μmと小さいものであった。二段発泡においては、発泡倍率30倍にするには高い蒸気圧が必要となり、発泡粒子どうしが付着した、いわゆるスティックの発生が多数見られた。その二段発泡粒子を使用し、型内発泡成形したところ得られた型内発泡成形体の寸法収縮率が大きく、しわの発生が見られ、外観の劣るものであった。
(比較例2)
ポリエチレングリコールの代わりに架橋ポリアルキレンオキサイドを1重量部使用した他は、実施例1と同様に1段発泡、2段発泡、型内成形を行った。得られた型内発泡成形体の寸法収縮が大きく、粒子どうしの融着が劣る特徴があった。
(比較例3)
添加剤のポリエチレングリコール(平均分子量6000)を1.0重量部、タルク0.1重量部とした他は実施例1と同様に発泡、2段発泡、型内成形した。一段発泡にて得られた一段発泡粒子は2つの融点を示し、発泡倍率12倍、連泡率1.3%、平均気泡径260μmであった。気泡の均一性は実施例1〜3に比較するとやや劣るもののほぼ均一であった。含水率は2.2重量%であった。次に、実施例1と同様に発泡倍率30倍の二段発泡粒子を得た。二段発泡粒子は、示差走査熱量計測定において2つの融点を示し、連泡率2.0%、平均気泡径390μmで気泡の均一性に優れていた。型内成形評価の結果、得られた型内発泡成形体の表面は平滑性に優れ、しわの発生も無く、成形体の寸法収縮が小さく、成形体の歪が少なく、美麗な成形体であった。粒子どうしの融着は実施例1から3と比較すると僅かに未融着部分が見られた。ポリエチレングリコールを多量に添加しているにもかかわらず、得得られた発泡粒子の発泡倍率は比較的小さかった。
(比較例4)
ポリエチレングリコールの代わりにポリアクリル酸ナトリウムを0.5重量部使用した他は、実施例1と同様に1段発泡、2段発泡、型内成形を行った。一段発泡粒子の気泡は大気泡と小気泡が混在しており、均一性に劣った。その二段発泡粒子を使用し、型内発泡成形体を得たところ、成形体の表面にしわの発生が見られ、寸法収縮が大きく、粒子どうしの融着に関しても劣るものであった。
(比較例5)
ポリエチレングリコールの代わりにカルボキシメチルセルロースナトリウム0.3重量部を使用し、タルクを0.1重量部とした他は、実施例1と同様に一段発泡、二段発泡、型内成形を行った。一段発泡粒子の気泡は大気泡と小気泡が混在しており、均一性に劣った。その二段発泡粒子を使用し、型内発泡成形体を得たところ、成形体の表面にしわの発生が見られ、寸法収縮が大きく、粒子どうしの融着に関しても劣るものであった。
(比較例6)
ポリエチレングリコールの代わりにゼオライトA型1.0重量部を使用し、タルクは使用しなかったこと以外は、実施例1と同様に一段発泡、二段発泡、型内成形を行った。一段発泡粒子の気泡は粗大な気泡と小気泡が混在するもので均一性に劣った。二段発泡においては、発泡倍率30倍にするには高い蒸気圧が必要となり、発泡粒子どうしの付着が少し見られた。その二段発泡粒子を使用し、型内発泡成形体を得たところ、成形体の表面にしわの発生が顕著であり、寸法収縮が大きいものであった。
(比較例7)
ポリエチレングリコールの代わりにポリプロピレングリコール(平均分子量2000)0.2重量部、タルク0.1重量部を使用した他は、実施例1と同様に一段発泡、二段発泡、型内成形を行った。発泡倍率9倍と低い倍率しか得られず、平均気泡径100μmと小さいものであった。二段発泡においては、発泡倍率30倍にするには高い蒸気圧が必要となり、発泡粒子どうしが付着するスティックの発生が多数見られた。その二段発泡粒子を使用し、型内発泡成形したところ、成形体の寸法収縮率が大きく、しわの発生が見られ、外観の劣るものであった。

Claims (5)

  1. 耐圧容器内に重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が5.0以下であるポリプロピレン系樹脂粒子を水系分散媒に分散させ、ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化温度以上の温度まで加熱、加圧した後、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に放出する、水および炭酸ガスを発泡剤とする発泡倍率が20倍以上のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法において、前記ポリプロピレン系樹脂粒子が分子量600以下の親水性物質を含んでなり、発泡直後のポリプロピレン系樹脂発泡粒子中の含水率が0.7重量%以上10重量%以下であり、分子量600以下の親水性物質がポリエチレングリコール、またはポリエチレングリコールと硼酸亜鉛との組合せであることを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
  2. ポリエチレングリコールの分子量が200以上600以下である請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
  3. ポリプロピレン系樹脂が、エチレンを共重合単量体成分として含有するポリプロピレン系樹脂である請求項1または2に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
  4. 請求項1〜の何れか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法によって得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子であって、平均気泡径が50μm以上800μm以下であり、示差走査熱量測定において、2つ以上の融点を示す結晶構造を有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
  5. 請求項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を、型内発泡成形してなる型内発泡成形体。
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