JP5331344B2 - ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子 - Google Patents

ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子 Download PDF

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Description

本発明は、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子に関する。さらに詳しくは、広い温度範囲で優れた型内発泡成形体を製造することができるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子に関する。
ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を金型内に充填し、水蒸気で加熱成形して得られる型内発泡成形体は、型内発泡成形体の長所である形状の任意性、軽量性、断熱性などの特徴を持つ。この型内発泡成形体はポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を用いて得られる型内発泡成形体に比べて、耐薬品性、耐熱性、圧縮後の歪回復率に優れている。また、ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子を用いる型内発泡成形体と比べて、寸法精度、耐熱性、圧縮強度が優れている。これらの特徴により、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて得られる型内発泡成形体は、断熱材、緩衝包装材、自動車内装部材、自動車バンパー用芯材など様々な用途に用いられている。
特許文献1には、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子のDSC曲線に該ポリプロピレン樹脂固有の固有ピークと、該固有ピークの温度より高温側の高温ピークとが現れる結晶構造を有し、更にその固有ピークと高温ピークの温度差が5℃以上、好ましくは10℃以上、のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて型内発泡成形をすると良好な型内発泡成形体が得られると記載されている。
しかし、このポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子で通常の型内発泡成形をしても、広い成形条件範囲(特に成形温度範囲)において、必ずしも良好な型内発泡成形体が得られるとは限らないことが判った。通常の工業生産の場合には、加圧水蒸気により加熱して型内発泡成形がなされている。しかし、成形金型の形状や大きさにより、金型内に温度分布が生じる場合がある。また、ボイラーにかかる負荷や蒸気配管の圧力損失の変動によって蒸気圧力が変動する場合がある。従って金型温度(成形温度)を常に一定に調整することは困難である。このため広い成形温度範囲において優れた型内発泡成形体を与える予備発泡粒子が望まれる。
特に、予備発泡粒子に内圧を付与し高発泡倍率の型内発泡成形体を製造する場合、低発泡倍率の型内発泡成形体を製造する場合より型内発泡成形体を安定的に生産することが容易ではなく、成形温度範囲が広いことが望まれる。
特許文献2には無架橋ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子と架橋ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を混合することにより成形温度範囲が広い予備発泡粒子が得られることが開示されている。しかしこの方法は架橋ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を製造することを必要とする。また、特許文献3にはポリプロピレン、ポリスチレン及びスチレン−ジエンブロック共重合体等の混合樹脂からなる予備発泡粒子を用いるとポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子に比較し低い温度で成形できることが開示されている。しかしこの方法はポリスチレン及びスチレン−ジエンブロック共重合体を必要とする。さらにこの予備発泡粒子を使用した場合、成形温度範囲が広がるかどうか不明である。
なお、特許文献4には、1回目のDSC曲線において低温側と高温側に2つの吸熱ピークを有し、2回目のDSC曲線において、単一の吸熱ピークを有するポリプロピレン系予備発泡粒子が開示されており、2回目のDSC曲線において、吸熱ピークの高温側にショルダーピークがあるように見える。
しかしながら、特許文献4にはショルダーピークについての明示的な開示は全くなく、実際にショルダーピークが存在するのかどうか定かではない。また、特許文献4にはショルダー比が0.5%以上であれば幅広い成形条件下で、安定した型内発泡成形体が得られることについては全く開示がない。
特開昭59−176336号公報 特開昭58−168633号公報 特開2000−129027号公報 特開平8−259724号公報
本発明の課題は幅広い成形温度において良好な型内発泡成形体を得ることができる新規なポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を提供することである。
DSC曲線において低温側と高温側に2つの吸熱ピークを持つ特許文献1に記載されているポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を、一旦40℃以下の温度まで冷却した後、再度、室温〜220℃まで昇温した場合、DSC曲線において先の高温側の吸熱ピークは殆ど消滅し、基材樹脂固有の低温側の吸熱ピークが残る。このDSC曲線のピーク温度を過ぎたところに僅かに小さい、ショルダー状の吸熱ピークの存在が認められる場合がある。本発明者は、このショルダーの吸熱エネルギーの全吸熱エネルギーに占める割合が0.5%以上あれば、幅広い成形条件下で、安定した型内発泡成形体が得られる事を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、次のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子および型内発泡成形体に関する。(1)融点が132℃以上152℃以下、メルトフローレートが5g/10分以上20g/10分以下であるエチレン−プロピレンランダムコポリマーあるいはエチレン−プロピレン−ブテンランダムターポリマーからなるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子であって、
40℃から220℃まで昇温する示差走査熱量測定(DSC)により得られるDSC曲線において、低温側と高温側に2つの吸熱ピークを持ち、220℃から一旦40℃まで温度を下げた後再度、220℃まで昇温したときの示差走査熱量測定により得られるDSC曲線において、
吸熱ピークの高温側にショルダーピークを有し、該ショルダーピークに相当する吸熱量が該吸熱ピークに相当する吸熱量の0.5%以上1.2%以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
(2) (1)に記載の予備発泡粒子に内圧を付与したポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
(3) (1)または(2)のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子から得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体。
以下、予備発泡粒子を室温から220℃まで昇温する最初の示差走査熱量測定により得られるDSC曲線を「1回目のDSC曲線」、一旦40℃まで温度を下げた後再度、220℃まで昇温したときの示差走査熱量測定により得られるDSC曲線を「2回目のDSC曲線」ともいう。
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて型内発泡成形を行うと、成形時の加熱圧(加熱温度)の変動が大きくても、予備発泡粒子の融着性に優れ、外観表面性に優れた、安定した品質の型内発泡成形体が得られる。
本発明において、ポリプロピレン系樹脂とは、モノマーとしてプロピレンを80重量%以上含む樹脂をいう。ポリプロピレン系樹脂の例としてプロピレンの単独重合体や、プロピレンと他の単量体との共重合体があげられる。共重合体に用いる他の単量体としては、エチレン;1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどの炭素数4〜12のα−オレフィン;シクロペンテン、ノルボルネン、テトラシクロ[6,2,11,8,13,6]−4−ドデセンなどの環状オレフィン;5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンなどのジエン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどのビニル単量体などが挙げられ、これらを一種または二種以上使用することが出来る。
これらのうち、エチレン、1−ブテンを使用することが、耐寒脆性向上、安価という点で好ましい。本発明で使用する共重合体は、単量体がエチレン−プロピレン、プロピレン−ブテンなどである二元共重合体でも、エチレン−プロピレン−ブテンなどである三元共重合体でも良い。また、これらの共重合体はランダム共重合体、ブロック共重合体のどちらでも用いることができる。特に汎用性の高い、エチレン−プロピレンランダムコポリマーあるいはエチレン−プロピレン−ブテンランダムターポリマーを用いる事が好ましい。
これらのポリプロピレン系樹脂は無架橋の状態が好ましいが、有機過酸化物や放射線等で処理することにより架橋を行っても良い。また、有機過酸化物や放射線等で処理することにより減成されたポリプロピレン系樹脂を用いてもよい。
本発明においては2以上のポリプロピレン系樹脂を混合しても良い。また、ポリプロピレン系樹脂の以外に、他の熱可塑性樹脂、例えば低密度ポリエチレン、直鎖状密度ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブテン、アイオノマー等をポリプロプレン系樹脂の特性が失われない範囲で混合使用しても良い。
本発明におけるポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、5g/10分以上20g/10分以下であることが好ましく、さらに好ましくは7g/10分以上15g/10分以下である。MFRが当該範囲内であると型内発泡成形時の成形温度、成形時間のバランスが良く、良好な表面美麗性、特に金型形状に薄肉部位がある場合の当該部位が良好な表面美麗性を得やすい傾向にある。
またポリプロピレン系樹脂の融点は、130℃以上155℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは132℃以上152℃以下である。融点が当該範囲内であると、よく用いられている0.4MPa耐圧仕様の成形機でも良好な型内発泡成形体が得られる傾向にある。
なお、本発明において樹脂の融点とは、示差走査熱量測定(DSC)において、試料4〜10mgを40℃から220℃まで10℃/分の速度で昇温し、1分間温度を保持し、10℃/分の速度で、40℃まで冷却し、再度220℃まで10℃/分の速度で昇温した際のスペクトルに現れるピーク温度により示される値を樹脂融点とした。
上記のポリプロピレン系樹脂は、通常、予備発泡に利用されやすいようにあらかじめ押出機、ニーダー、バンバリミキサー、ロール等を用いて溶融し、円柱状、楕円状、球状、立方体状、直方体状等のような所望の形状に成形加工される。粒子の平均重量は0.5〜3.0mgが好ましく、更に好ましくは0.5〜2.0mg、特に好ましくは0.5〜1.5mgである。ポリプロピレン系樹脂粒子には必要により添加剤を加えてもよい。添加剤を加える場合、ポリプロピレン系樹脂粒子の製造過程において溶融した樹脂中に添加することが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂粒子の製造の際にセル造核剤を添加することが、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子とした時のセル径を所望の値に調整することが出来るため好ましい。セル造核剤としては、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、カオリン、酸化チタン、ベントナイト、硫酸バリウム等の無機系造核剤が一般に使用される。セル造核剤の添加量は、使用するポリプロピレン系樹脂の種類、セル造核剤の種類により異なり一概には規定できないが、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、概ね0.001重量部以上2重量部以下であることが好ましい。
更に、ポリプロピレン系樹脂粒子の製造の際、必要により着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、リン系加工安定剤、ラクトン系加工安定剤、金属不活性剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系光安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤、難燃剤、難燃助剤、酸中和剤、結晶核剤、アミド系添加剤等の添加剤を、ポリオレフィン系樹脂の特性を損なわない範囲内で添加することができる。
水を発泡剤として使用する場合には、国際公開特許WO97/38048号公報に記載されているように、親水性ポリマーや特開2004−67768号公報に記載のトリアジン骨格単位あたりの分子量が300以下の化合物などの化合物を添加することが好ましい。また、これらの化合物と共に無機又は有機充填剤を使用するのが好ましい。親水性ポリマーの例としては、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体のアルカリ金属塩、ブタジエン(メタ)アクリル酸共重合体のアルカリ金属塩、カルボキシル化ニトリルゴムのアルカリ金属塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩、ポリ(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリプロピレン共重合体等のポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールの誘導体が挙げられる。
トリアジン骨格あたりの分子量が300以下の化合物としては、メラミン、イソシアヌル酸、メラミン・イソシアヌル酸縮合物、アンメリン、アンメリリド等が挙げられる。
無機充填剤の例としてはタルク、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。有機充填剤は使用するポリプロピレン系樹脂の軟化温度以上の温度で固体状であれば特に限定は無く、例えばフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末等を用いる。これらの添加剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記ポリプロピレン系樹脂粒子は、従来から知られている方法を利用してポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子とすることが出来る。例えば、ポリプロピレン系樹脂粒子を耐圧容器内で分散媒に分散させ、発泡剤を添加した後、ポリプロピレン系樹脂粒子が軟化する温度以上、好ましくはポリプロピレン系樹脂粒子の融点−25℃以上ポリプロピレン系樹脂粒子の融点+25℃以下、更に好ましくはポリプロピレン系樹脂粒子の融点−15℃以上ポリプロピレン系樹脂粒子の融点+15℃以下の範囲の温度に加熱し、加圧して、ポリプロピレン系樹脂粒子内に発泡剤を含浸させたのち、耐圧容器の一端を開放してポリプロピレン系樹脂粒子を耐圧容器内よりも低圧の雰囲気中に放出することによりポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を製造する。
ポリプロピレン系樹脂粒子を分散させる耐圧容器には特に制限はなく、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子製造時における容器内圧力、容器内温度に耐えられるものであればよいが、例えばオートクレーブ型の耐圧容器があげられる。
前記分散媒としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン、水等が使用できるが、中でも水を使用することが好ましい。分散媒中、ポリプロピレン系樹脂粒子同士の合着を防止するために、分散剤を使用することが好ましい。分散剤として、例えば、第三リン酸カルシウム、第三リン酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、タルク、クレー等の無機系分散剤が挙げられる。
また、分散剤と共に分散助剤を使用することが好ましい。分散助剤の例としては、N−アシルアミノ酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド等のカルボン酸塩型;アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩等のスルホン酸塩型;硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩等の硫酸エステル型;アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンリン酸塩、アルキルアリルエーテル硫酸塩等のリン酸エステル型等の陰イオン界面活性剤をあげることができる。また、マレイン酸共重合体塩、ポリアクリル酸塩等のポリカルボン酸型高分子界面活性剤、ポリスチレンスルホン酸塩、ナフタルスルホン酸ホルマリン縮合物塩などの多価陰イオン高分子界面活性剤も使用することができる。
分散助剤として、スルホン酸塩型の陰イオン界面活性剤を使用することがより好ましく、さらにはアルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩から選ばれた1種もしくは2種以上の混合物を用いるのが好ましく、アルキルスルホン酸塩を使用することがより好ましく、疎水基として炭素数10〜18の直鎖状の炭素鎖を持つアルキルスルホン酸塩を使用することが、付着分散剤の低減効果がより高いため特に好ましい。これらの中でも、第三リン酸カルシウムとn−パラフィンスルホン酸ソーダの併用が好ましい。
分散剤や分散助剤の使用量は、その種類や、用いるポリプロピレン系樹脂の種類と使用量によって異なるが、通常、分散媒100重量部に対して分散剤0.2〜3重量部を配合することが好ましく、分散助剤0.001〜0.1重量部を配合することが好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂粒子は、分散媒中での分散性を良好なものにするために、通常、分散媒100重量部に対して、20〜100重量部使用するのが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を製造するに当たり、発泡剤の種類に特に制限はない。発泡剤の例として、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン等の脂肪族炭化水素;空気、窒素、二酸化炭素等の無機ガス;水等およびそれらの混合物をあげることができる。
また、一旦得られた予備発泡粒子を更に発泡させてもよい。発泡倍率が35倍以上、さらには37倍以上、特には40倍以上、の高発泡倍率の型内発泡成形体を得るには二段発泡することが好ましい。一段目の発泡に発泡剤として無機ガスを使用する場合、二段発泡することが好ましい。二段発泡後のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子は発泡倍率として35倍以上、さらには37倍以上、特には40倍以上、が好ましい。
本発明においてポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率は、円筒状容器に発泡粒子を充填し、容器の開口部を越えた発泡粒子を取り除いて容器内の発泡粒子の重量を測定し、発泡粒子の重量を容器体積で除して嵩密度を得る。発泡倍率は原料ポリプロピレン系樹脂の密度を上記嵩密度で除して得られた値である。
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子は、金型寸法に対し収縮が大きい高発泡倍率の型内発泡成形体を製造するのに特に適している。本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を使用すれば、収縮が小さい高発泡倍率の型内発泡成形体を得ることができる。
ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の発泡倍率は、型内発泡成形体の重量wおよび水没体積vを求め、発泡前のポリプロピレン系樹脂粒子の密度dから次式により求めたものである。
発泡倍率=d×v/w
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子は1回目のDSC曲線において低温側と高温側の吸熱ピークを有している。低温側の吸熱ピーク熱量Qと高温側の吸熱ピーク熱量Qの合計量に対する、高温側の吸熱ピーク熱量Qの比率(以下、DSC比と略す)
/(Q+Q)×100
が13%以上50%以下であることが好ましく、18%以上40%以下の範囲がより好ましい。DSC比が当該範囲であると、表面美麗性の高い型内発泡成形体が得られやすい。
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子は2回目のDSC曲線において、吸熱ピークの高温側にショルダーピークを有し、該ショルダーピークに相当する吸熱量が該吸熱ピークに相当する吸熱量の0.5%以上である。好ましくは、0.5%以上、10.0%以下である。以下、2回目に得られるDSC曲線において全吸熱ピークに相当する吸熱量に対するショルダーピークに相当する吸熱量をショルダー比とも言う。
ショルダー比が0.5%以上あると、成形時のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子への成形加熱圧の変動が大きくても、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の融着性に優れ、外観表面性に優れた、安定した品質のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体が得られる。ショルダー比が大きいということは、高融点の結晶が多く含まれていることを意味しているのではないかと考えられる。本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が優れた型内発泡成形体を与える理由は明らかではないが、高融点の結晶に起因して、成形時に成形加熱圧が大きく変動したり、大きい金型内で温度や圧力に部分的なむらがあったりしても、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の形状が安定的に保たれていると考えられる。
ショルダー比が0.5%以上のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子は、例えば、異なる融点を有する2種以上のポリプロピレン系樹脂を混合することによって得られたポリプロピレン系樹脂を使用することにより得ることができる。また、プロピレン単量体を重合してポリプロピレン系樹脂を製造する際の重合触媒の種類や量を調整したり、重合時の温度や圧力を調整して製造したポリプロピレン系樹脂を使用することにより得ることができる。
なお、DSC曲線およびこれから得られる熱特性は以下に記載の方法により得ることができる。
<DSC曲線>
ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子4〜10mgを40℃〜220℃まで10℃/分の速度で昇温して1回目の示差走査熱量測定を行い、図1に示すような1回目DSC曲線を得る。次に、10℃/分の速度で40℃まで降温した後、再び10℃/分の速度で220℃まで昇温して2回目の示差走査熱量測定を行い、図2に示すような2回目DSC曲線を得る。
<低温側ピーク融解熱Q、高温側ピーク融解熱Q、DSC比>
図1に示すように、1回目DSC曲線において、低温側ピークと高温側ピークの間にある極大点をAとする。Aを通る直線とDSC曲線の低温側曲線との接点をB、高温側曲線との接点をCとする。低温側吸熱ピーク熱量Qは線分ABとDSC曲線で囲まれた面積から計算される吸熱量(J/g)であり、高温側吸熱ピーク熱量Qは線分ACとDSC曲線で囲まれた面積から計算される吸熱量(J/g)である。
DSC比は次に式により計算される。
DSC比(%)=Q×100/(Q+Q
<ショルダー比>
2回目DSC曲線において得られる、吸熱ピークの低温側と高温側に接する接線の接点をD、Eとする。また、ショルダー部分において低温側と高温側に接する接線の接点をF、Gとする。吸熱ピークの吸熱量Qは線分DEとDSC曲線で囲まれた面積から計算される吸熱量(J/g)であり、ショルダーピークの吸熱量Qは線分FGとDSC曲線で囲まれた面積から計算される吸熱量(J/g)である。ショルダー比は次に式により計算される。
ショルダー比(%)=Q/Q×100
上記のようにして得たポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子は、次のような成形方法により型内発泡成形体にすることができる。
(イ)予備発泡粒子を無機ガスで加圧処理して予備発泡粒子内に無機ガスを含浸させ所定の予備発泡粒子内圧を付与した後、金型に充填し、水蒸気で加熱融着させる方法。
(ロ)予備発泡粒子をガス圧力で圧縮して金型に充填し、予備発泡粒子の回復力を利用して、水蒸気で加熱融着させる方法。
(ハ)特に前処理することなく予備発泡粒子を金型に充填し、水蒸気で加熱融着させる方法。
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子に対しては、上記の成形方法の中でも、予備発泡粒子を無機ガスで加圧処理して予備発泡粒子内に無機ガスを含浸させ所定の予備発泡粒子内圧を付与した後、金型に充填し、水蒸気で加熱融着させる方法が好ましい。
予備発泡粒子に付与される内圧は0.19〜0.23MPa、好ましくは0.196〜0.228MPaである。内圧が0.19MPaよりも低い場合、型内発泡成形体の収縮や変形の原因となる傾向にあり、また0.23MPaをこえる場合、融着不良を生じやすくなる。
本発明において、内圧付与処理後のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の内圧は、内圧付与処理後のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を150℃の温度で30分間保持して、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子中から内圧付与処理によって拡散滲透した気体をすべて追出したのち、前記ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の重量変化を測定し、この重量変化量から理想気体の状態方程式に基づいて得た圧力に大気圧を加えた圧力である。
前記ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子に内圧を付与する時間は、内圧付与温度等によって決定されるので一概には限定することができないが、通常、0.4〜8時間、好ましくは0.4〜2時間程度である。加える圧力は通常0.34〜0.59MPaGである。前記ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子に内圧を付与する温度は70〜100℃、さらには80〜90℃、が好ましい。
上記無機ガスとしては、空気、窒素、酸素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、炭酸ガスなどが使用できる。これらは単独で用いても、2種以上混合使用してもよい。これらの中でも、汎用性の高い空気、窒素が好ましい。
内圧が付与されたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を水蒸気により加熱、融着させて、型内発泡成形体を得ることができる。この際の水蒸気温度が低すぎると融着が不十分となり、型内発泡成形体としての形状を保持できない。逆に、水蒸気温度が高すぎると型内発泡成形体が収縮する場合がある。
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて得られる型内発泡成形体の密度は、10kg/m以上300kg/m以下であることが好ましく、より好ましくは15kg/m以上250kg/m以下である。特に15kg/m以上30kg/m以下が好ましい。また、内圧を付与されたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を使用し15〜30kg/mの型内発泡成形体を製造することが好ましい。
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて得られる型内発泡成形体は、断熱材、緩衝包装材、自動車内装部材、自動車バンパー用芯材などの用途に用いることができる。
次に本発明を実施例、比較例で説明するが、本発明はこれに限定されるものでは無い。
(ポリプロピレン樹脂)
ポリプロピレン系樹脂として表1に示すエチレン−プロピレンランダム共重合体を用いた。なお、MFRは、JIS−K7210記載のMFR測定器を用い、オリフィス2.0959±0.005mmφ、オリフィス長さ8.000±0.025mm、荷重2160g、230±0.2℃の条件下で測定したときの値である。
Figure 0005331344
(実施例1〜4)
100重量部のポリプロピレン系樹脂1〜2に対し、セル造核剤としてタルク0.3重量部を添加しドライブレンドした。ドライブレンドした混合物を押出機内で溶融混練し、円形ダイよりストランド状に押出した。水冷後、カッターで切断し、1.3mg/粒のポリプロピレン系樹脂粒子(ミニペレット)を得た。
作製したミニペレット100重量部(670g)、水300重量部、分散剤として第三リン酸カルシウム(太平化学産業社製)2.0重量部、分散助剤としてアルキルスルホン酸ナトリウム0.04重量部を容量4.5Lの耐圧オートクレーブ中に仕込み、攪拌下、発泡剤としてイソブタンを15〜25重量部添加した。オートクレーブ内容物を昇温し、125〜135℃の発泡温度まで加熱した。その後、30分間保持した後、オートクレーブ下部のバルブを開き、4.0mmφの開口オリフィスを通して、オートクレーブ内容物を大気圧下に放出してポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を得た。イソブタン量を調整することにより、発泡倍率を調整した。
得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子をセイコーインスツルメンツ(株)製のDSC6200型示差走査熱量計を用いて、40℃から220℃まで昇温して1回目の示差走査熱量測定を行った。得られたDSC曲線は低温側と高温側に2つの吸熱ピークを有していた。220℃から一旦40℃まで温度を下げた後再度、220℃まで昇温して2回目の示差走査熱量測定を行った。得られた1回目のDSC曲線から、低温側の吸熱ピーク熱量と高温側の吸熱ピーク熱量の和に対する高温側の吸熱ピーク熱量の比(DSC比)、2回目の示差走査熱量測定における吸熱ピーク熱量およびショルダー比が計算した。結果を表2に示す。
次に、オートクレーブから大気圧下に放出させて得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を耐圧容器内に入れて空気で加圧処理し、約0.1〜0.12MPaG(23℃)の内圧をポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子に付与した。内圧を付与されたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を長さ400mm、幅300mm、厚さ60mmの板状金型に導入し、0.20〜0.34MPaGの蒸気圧で型内発泡成形を行った。冷却後、型内発泡成形体を金型から取り出し、75℃で12時間養生し、さらに、室温で24時間放置した。得られた型内発泡成形体の融着性、表面性を評価した。結果を表3に示す。なお、融着性、表面性、成形性、成形可能温度幅は次の方法により評価された。
<融着性>
成形された板状成形体の長さ方向端面から約100mmの位置および約200mmの位置において表面にカッターナイフで幅方向に横断する1mm深さの切れ目を入れた。切れ目において型内発泡成形体を折り曲げて3分割した。破断面における各ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子において粒子自体が破断されているかどうかを観察した。粒子自体が破断されていない場合、もとの粒子表面が残っており、融着性が低いことを意味する。観察した粒子中、粒子自体が破断されている割合を融着率とする。融着性は次の基準により評価した。
○:融着率90%以上
△:融着率80%以上90%未満
×:融着率80%未満
<表面性>
表面性は型内発泡成形体の表面状態を目視観察し、次の基準により評価した。
○:表面に「シワ」がほとんど無い
△:表面に僅かな「シワ」があるが表面全体がフラット
×:表面全体が波打っている
<成形性>
表3の評価結果において、型内発泡成形体の融着性と表面性の評価結果の悪い結果の方を「成形性」として評価した。
<成形可能温度幅>
実施例では0.5kg/cm刻みの加熱圧力での成形性を評価している。いずれの温度でも優れた成形性を示す予備発泡粒子は広い成形可能温度幅を有している。成形可能温度幅は次の基準により評価した。
○:任意の連続した2つの加熱圧において成形性評価が○−○又は○−△
△:任意の連続した2つの加熱圧において成形性評価が△−△の場合がある
×:任意の連続した2つの加熱圧において成形性評価が×−×の場合がある
Figure 0005331344
Figure 0005331344
(比較例1〜2)
樹脂1〜2に代えて樹脂3を使用した以外は実施例1〜4と同様にポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子および型内発泡成形体を作製し、評価した。結果を表3に示す。表3から明らかなように実施例1〜4の予備発泡粒子は広い成形可能温度幅を有している。
ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の1回目のDSC曲線の一例である。 ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の2回目のDSC曲線の一例である。

Claims (3)

  1. 融点が132℃以上152℃以下、メルトフローレートが5g/10分以上20g/10分以下であるエチレン−プロピレンランダムコポリマーあるいはエチレン−プロピレン−ブテンランダムターポリマーからなるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子であって、
    40℃から220℃まで昇温する示差走査熱量測定(DSC)により得られるDSC曲線において、低温側と高温側に2つの吸熱ピークを持ち、220℃から一旦40℃まで温度を下げた後再度、220℃まで昇温したときの示差走査熱量測定により得られるDSC曲線において、
    吸熱ピークの高温側にショルダーピークを有し、該ショルダーピークに相当する吸熱量が該吸熱ピークに相当する吸熱量の0.5%以上1.2%以下であることを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
  2. 請求項1に記載の予備発泡粒子に内圧を付与したポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
  3. 請求項1または請求項2のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子から得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体。
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