JP4518473B2 - ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法 - Google Patents

ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明はポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法に関し、特に表面が改質されたポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法に関する。
近年、ポリプロピレン系樹脂の利用分野の一つとして、無架橋ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の型内発泡成形体(以下、単に「発泡粒子成形体」と称することがある)は、上記ポリプロピレン系樹脂の優れた性質を失うことなく、更に、緩衝性、断熱性等の特性を付加できるため、包装材料、建築材料、断熱材料等として広く利用されている。
ところが、最近は自動車用途等において、これまでより高機能化されたポリプロピレン系樹脂を所望される機会が多くなっている。具体的には、発泡粒子成形体の高剛性化が所望されるようになった。高剛性の発泡粒子成形体は、高剛性のポリプロピレン系樹脂を原料として使用すれば製造することはできるが、成形温度が上昇するので、高い成形温度(即ち高圧のスチーム)に耐えうる特殊な成形機が必要である。しかし、このような高圧での成形が可能な成形機は高価な上に、現在利用できる台数は制限されているため、従来の発泡粒子成形体製造用の成形機の耐圧内のスチーム圧で成形が可能なポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法が開発された(特許文献1)。
一方、本出願人は、特定の電気伝導率の水性媒体を用いると発泡粒子の製造時に分散剤の量を増やさないでも融着しない発泡粒子の製造方法を提案した(特許文献2)。この製造方法で得られた発泡粒子は、成形する際の発泡粒子相互の融着性に優れているので、成形によって得られる発泡粒子成形体は機械的強度等に優れるものである。
本発明者等は、特許文献2に記載された電気伝導率をもつ水性媒体を用いて、特許文献1の方法で発泡粒子を製造したところ、発泡剤を含浸した樹脂粒子が発泡する際、相互に融着してしまうブロッキングと呼ばれる現象が発生した。従って、特許文献2記載の水性媒体を用いることにより、特許文献1に記載の発泡粒子をブロッキングを起すことなく製造する方法の開発が望まれている。
特開2002−167460号公報 国際公開公報WO02/100929
本発明は、表面が改質された発泡粒子であって、低温のスチームで成形可能な発泡粒子の製造に際し、分散剤の使用量を少なくしてもブロッキングが発生しないようにすることにより、発泡粒子表面の分散剤付着量を減らし、成形時の発泡粒子の相互融着性に優れるポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意研究した結果、電気伝導率を特定の範囲にすると共に、水中における鉄の濃度を少なくすることにより、発泡時のブロッキングを防止することができることを見出し、本発明に到達した。
本発明によれば、以下に示す発明が提供される。
[1]水性媒体中でポリプロピレン系樹脂粒子の表面を有機過酸化物により改質する表面改質工程と、該ポリプロピレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程と、発泡剤を含浸している表面改質された該ポリプロピレン系樹脂粒子を発泡させる発泡工程とを含む発泡粒子の製造方法であって、前記水性媒体の電気伝導率が1mS/m〜20mS/mであると共に、該水性媒体の鉄の濃度が0.01mg/Lを超えて0.7mg/L以下であり、該水性媒体中に分散剤としてシリカ−アルミナを主成分とするアルミノ珪酸塩からなる鉱物系無機質物質を、水性媒体100重量部あたり0.004重量部〜1重量部添加することを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
[2]該発泡剤が無機発泡剤を主成分とする発泡剤であることを特徴とする上記[1]に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
[3]該水性媒体中に分散強化剤として、40℃の水100ccに対して少なくとも1mg以上溶解し得る無機化合物であって、該化合物の陰イオン又は陽イオンの少なくとも一方が2価又は3価である無機物質を添加することを特徴とする上記[1]または[2]に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
本発明は表面改質されたポリプロピレン系樹脂粒子の製造方法であり、製造に用いる水性媒体の電気伝導率を1mS/m〜20mS/mとすると共に、該水性媒体の鉄の濃度が0.01mg/Lを超えて0.7mg/L以下とすることにより、分散剤の使用量が少なくても、発泡剤を含浸した樹脂粒子が発泡する際に発泡粒子相互が融着してしまうブロッキングの発生を防止し、発泡粒子表面の分散剤付着量を減らして、成形時の発泡粒子相互の融着性に優れる発泡粒子を得ることができる。このようにして得られた発泡粒子は表面が改質されているので、低温のスチームで成形することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法は、水性媒体中でポリプロピレン系樹脂粒子の表面を有機過酸化物により改質する表面改質工程と、該ポリプロピレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程と、発泡剤を含浸している表面改質された該ポリプロピレン系樹脂粒子を発泡させる発泡工程とを含む。本発明における表面改質工程、発泡剤含浸工程、発泡工程については従来から公知であり、その詳細は、例えば前記特許文献1に記載されている。
本発明方法において用いる発泡粒子の基材樹脂は、ポリプロピレン系樹脂であり、該ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、またはプロピレン成分単位を70モル%以上含有する(好ましくはプロピレン成分単位を80モル%以上含有する)プロピレンと他のコモノマーとの共重合体のいずれか、あるいはこれらの樹脂の中から選ばれる2種以上の混合物が用いられる。
上記プロピレン成分単位を70モル%以上含有するプロピレンと他のコモノマーとの共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレンランダムコポリマー、プロピレン−エチレンブロックコポリマー、プロピレン−ブテンランダムコポリマー、プロピレン−エチレン−ブテンランダムコポリマーなどが例示される。
本発明で用いるポリプロピレン系樹脂としては、引張弾性率が1200MPa以上のポリプロピレン系樹脂が好ましい。かかるポリプロピレン系樹脂を用いると、得られる発泡粒子成形体は剛性に優れたものとなり、自動車分野で要求される高剛性を満足するものである。かかる観点から、1250MPa以上であることが好ましく、1300MPa以上であることがより好ましく、1360MPa〜2500MPaが更に好ましい。
上記引張弾性率が1200MPa以上の高剛性のポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体の大半がそのような高剛性を示し、プロピレンと他のコモノマーとの共重合体であってもそのコモノマー成分含有割合が極端に少ないものはそのような高剛性を示す傾向にある。
尚、本明細書における引張弾性率は、JIS K 7161(1994年)にしたがって以下の条件にて測定して求められた値である。
試験片 JIS K 7162(1994年)記載の試験片1A形(射出成形で直接成形)
引張速度 1mm/分
また、発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂は、最終的な発泡粒子成形体の圧縮強度を大きいものとする上で、引張降伏強さが31MPa以上であることが好ましいが、32MPa以上であることがより好ましい。引張降伏強さの上限は特に限定されないが、通常は、45MPaである。
また、該ポリプロピレン系樹脂は、発泡粒子の製造に際しての気泡形成時における気泡の破泡を防止する上で、更には型内成形に際しての加熱時における発泡粒子の気泡の破泡を防止する上で、引張破壊伸びが20%以上であることが好ましいが、100%以上であることがより好ましく、200〜1000%であることが更に好ましい。
上記引張降伏強さ及び引張破壊伸びは、いずれも、JIS K 6758(1981年)記載の測定方法に基づくものである。
また、該ポリプロピレン系樹脂の融点は、最終的な発泡粒子成形体の耐熱性を高いものとする上で、145℃以上であることが好ましく、155℃以上であることがより好ましく、158℃以上であることが更に好ましく、160℃以上であることが最も好ましい。該融点の上限値は、通常、170℃程度である。
また、該ポリプロピレン系樹脂は、MFRと略記されるメルトフローレートが3g/10分以上100g/10分以下であることが好ましい。そのMFRが3g/10分未満であると、型内成形時の成形スチーム温度をより低くする効果が不充分となる虞がある。また、そのMFRが100g/10分を越えると、得られた発泡粒子成形体が脆くなる虞がある。このような観点から、ポリプロピレン系樹脂のMFRは10g/10分以上70g/10分以下であることがより好ましい。
なお、本明細書でいうMFRの測定方法は、マスターバッチのMFR以外はJIS K7210(1976年)試験条件14で行なった値を採用することする。
本発明においては、得られる発泡粒子成形体が高剛性となる効果を損なわない範囲内で、基材樹脂にポリプロピレン系樹脂以外の他の合成樹脂を添加することができる。ポリプロピレン系樹脂以外の他の合成樹脂の添加量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部当り、多くても35重量部以下であることが好ましく、多くても20重量部以下であることがより好ましく、多くても10重量部以下であることが更に好ましく、多くても5重量部以下であることが特に好ましい。
上記ポリプロピレン系樹脂以外の他の合成樹脂としては、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等のエチレン系樹脂、或いはポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体等のスチレン系樹脂等が例示される。
なお、発泡粒子を構成する基材樹脂には、所望に応じて各種添加剤を含有させることができる。このような添加剤としては、たとえば、酸化防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、難燃剤、金属不活性剤、核剤、あるいは気泡調整剤等を挙げることができる。気泡調整剤としては、たとえばホウ酸亜鉛、タルク、炭酸カルシウム、ホウ砂、水酸化アルミニウムなどの無機粉体が例示される。これらの添加剤は、合計で基材樹脂100重量部当り20重量部以下で使用されることが好ましく、5重量部以下で使用されることがより好ましい。これらの添加剤は、通常、必要最小限の量で使用される。またこれらの添加剤は例えば、押出機により押出したストランドを切断する等して本発明で使用される樹脂粒子を製造する際に、押出機内で溶融した基材樹脂に添加、混練することによって樹脂粒子中に含有させることができる。
尚、基材樹脂中に、上記したポリプロピレン系樹脂以外の他の合成樹脂、各種添加剤等が含有された混合樹脂組成物の場合、それら添加物の種類や添加量によっては、混合樹脂組成物の引張弾性率が低下する虞がある。このため、得られる発泡粒子成形体が高剛性となる効果を損なわないようにする上で、該混合樹脂組成物の引張弾性率(基材樹脂の引張弾性率と同じ測定方法)が1200MPaを下回らないように、好ましくは1250MPaを下回らないように、最も好ましくは1300MPaを下回らないように、上記添加物が添加される。
本発明で用いる有機過酸化物を含む水性媒体においては、電気伝導率が1mS/m〜20mS/mであると共に、鉄の濃度が0.01mg/Lを超えて0.7mg/L以下である。かかる水性媒体を用いると、少ない分散剤の量であっても発泡粒子同士の融着のない良好な発泡粒子が得られる。また分散剤使用量を少なくできるため、発泡粒子表面の分散剤付着量が減り、成形時の発泡粒子の相互融着性が優れたものとなる。そのメカニズムは、樹脂粒子と分散剤は水性媒体中ではプラスに帯電しており、その周りには電荷を打ち消し合うようにマイナスイオンの分布(以下、「電気二重層」という)が形成され、この電気二重層の反発力によって樹脂粒子は分散しているものと考えられる。電気伝導率が20mS/mを超えるような純度の低い水性媒体を用いた場合、この電気二重層の反発力が弱くなり樹脂粒子の分散が悪くなっていると考える。特に、水性媒体中の鉄の濃度が0.7mg/Lを超える場合、水性媒体中の鉄イオンにより電気二重層の反発力を弱くしていると考えられる。
本発明の製造方法で用いる水性媒体としては、樹脂粒子を溶解せず且つ樹脂粒子の分散が可能な溶媒又は液体であれば使用することができる。例えば、水、アルコール、エーテル、ケトン、アルデヒド、ケトン等の液体及びそれらの混合液等が挙げられる。中でも入手がし易い観点から水であることが好ましい。かかる構成であると分散剤としてシリカ−アルミナを主成分とするアルミノ珪酸塩からなる鉱物系無機物質、発泡剤として無機発泡剤を主成分とする発泡剤とした場合に、水への分散剤の添加量を少なくして得られる発泡粒子の表面に付着する分散剤の量を少なくすることができ、表面改質工程での樹脂粒子の表面改質を阻害することがないという利点がある。
本発明で用いられる水性媒体の電気伝導率は1mS/m〜20mS/mであり、電気伝導率が20mS/mを超える水性媒体を用いた場合、樹脂粒子を発泡する際、発泡粒子相互の融着を防止するために分散剤を多量に添加しなければならず、得られた発泡粒子の表面への分散剤の付着量が多くなる。その結果、得られた発泡粒子を用いて成形された発泡粒子成形体は、発泡粒子相互間の融着性が悪く、機械的強度等に劣ったものとなる。かかる観点からその上限値は17mS/m以下が好ましく、13mS/m以下がより好ましい。一方、分散剤の使用量が少なくてすみ、発泡粒子を成形する際の粒子相互の融着性に優れているという観点からは、電気伝導率が1mS/mに近いほど好ましが、電気伝導率が1mS/m未満にすることは著しくコストが高くなるほか、電気伝導率を調整するための時間が多くかかり生産性が悪い。上記観点から2mS/m以上が好ましく、3mS/m以上がより好ましい。
水性媒体の電気伝導率が20mS/mを超えた場合、上記電気伝導率となるように調整することが本発明の所期の目的を達成する点で必要である。水の電気伝導率を上記範囲に調整するには、例えば、イオン交換法、蒸留、逆浸透法及びそれらの組み合わせ等の精製法を採用することができる。また上記方法で精製された少なくとも1種類以上の水と、地下水とを混ぜて前記した範囲に調整することもできる。
尚、水性媒体の電気伝導率とは、電気の水性媒体への通りやすさを示す数値である。溶解している電解質(不純物)が多いほど電気は通りやすくなり、数値が小さいほど純度は高いことになる。
本明細書における電気伝導率とは、JIS K 0101(1979年)の電気伝導率の項目に準拠して測定するものとする。
本発明で用いられる水性媒体の鉄の濃度は、0.01mg/Lを超えて0.7mg/L以下である。鉄の濃度が0.01mg/L以下の水性媒体は、処理にかかるコストが高くなる上に、鉄の濃度を調整するための時間が多くかかるので生産性が悪い。かかる観点から0.02mg/L以上が好ましく、0.03mg/L以上がより好ましい。一方、0.7mg/Lを超えると、発泡する際に発泡粒子同士の融着が起こるので良好な発泡粒子が得られない。かかる観点から0.6mg/L以下が好ましく、0.5mg/L以下がより好ましい。
水性媒体の鉄の濃度が0.7mg/Lを超えた場合、上記鉄の濃度となるように調整することが本発明の所期の目的を達成する点で必要である。水の鉄の濃度を上記範囲に調整するには、例えば、イオン交換法、逆浸透法、水酸化第二鉄として酸化させる塩素酸化法や空気酸化法等が挙げられる。
これらの中でも、塩素酸化法や空気酸化法が好ましく、迅速かつ確実に鉄の濃度を調整することができることから塩素酸化法がより好ましい。
イオン交換法の場合、処理量が多くなると空気中の酸素によって水中の鉄イオンが酸化され析出して水酸化第二鉄がイオン交換樹脂の中に沈着したり、表面を被覆したりしてイオン交換樹脂の能力が低下するため、イオン交換樹脂の交換回数が多くなり処理能力の維持コストが高くなる或いは水酸化第二鉄の微粒子となって処理した水に漏洩する虞れがある。逆浸透法もイオン交換法と同じように浸透膜に水酸化第二鉄が沈着するため、浸透膜の交換や洗浄などの処理能力の維持コストが高くなる。
また上記方法で鉄の濃度が調整された少なくとも1種類以上の水と、地下水とを混ぜて前記鉄の濃度範囲に調整することもできる。
水性媒体の鉄の濃度は、JIS K 0102(2003年)に準拠して測定するものとする。具体的には、ICP発光分光分析法によって測定される。
本発明における水性媒体の電気伝導率と鉄の濃度を前記範囲に調整する方法としては、例えば、I)前記方法により調整された電気伝導率の水と、前記方法により調整された鉄の濃度の水とを混ぜる方法、II)塩素酸化法や空気酸化法により鉄の濃度を調整した水をさらにイオン交換法、逆浸透法により電気伝導率を調整する方法、III)イオン交換法により一度に電気伝導率と鉄の濃度とを調整する方法が挙げられる。これらの中でも処理効率と処理能力を維持するコストとのバランスから、I)またはII)の調整方法が好ましい。
本発明においては、水性媒体中にシリカ−アルミナを主成分とするアルミノ珪酸塩(以下、単にアルミノ珪酸塩ともいう。)からなる鉱物系無機物質を分散剤として添加することが好ましい。該アルミノ珪酸塩を分散剤として用いると、より分散剤の使用量を少なくすることができるので、発泡粒子の表面に付着する分散剤の量を少なくすることができる。該アルミノ珪酸塩からなる鉱物系無機物質としては、例えばカオリン、クレー等の天然または合成粘土鉱物が挙げられる。
特に、発泡剤として無機発泡剤や、無機発泡剤を主成分とするものを用いた場合、分散剤としてシリカ−アルミナを主成分とするアルミノ珪酸塩からなる鉱物系無機物質を用いることにより、分散剤の使用量を少なくすることができる。例えば、該アルミノ珪酸からなる鉱物系無機物質は、塩基性炭酸マグネシウムの1/3の使用量で同等以上の分散性を示す。
シリカ−アルミナを主成分とするアルミノ珪酸塩の平均粒子径は、0.01μm〜50μmが好ましく、凝集せずに発泡粒子をより分散できることから0.05μm〜30μmがより好ましく、0.1μm〜10μmが更に好ましい。平均粒子径が50μmを超えると発泡粒子の表面に傷をつける虞がある。
本明細書における平均粒子径は、遠心沈降式粒度分布測定装置により個数基準で得られた粒度分布より粒子径と個数で算出される値を採用する。
本発明におけるアルミノ珪酸塩からなる鉱物系無機物質の使用量は水性媒体100重量部あたり0.004重量部〜1重量部が好ましい。この範囲のアルミノ珪酸塩からなる鉱物系無機物質を用いると、融着性に優れた発泡粒子を得ることができる。該使用量が0.004重量部未満では、と樹脂粒子の軟化点温度以上で樹脂粒子の分散性が低下する。かかる観点より0.01重量部以上がより好ましく、0.03重量部以上が更に好ましい。一方、1重量部を超えると発泡粒子の表面に分散剤が多く付着する虞れがある。かかる観点より0.25重量部以下がより好ましく、0.2重量部以下が更に好ましい。
尚、本発明においては、酸化チタン、酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、塩基性炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、酸化鉄等の分散剤を上記アルミノ珪酸塩と混合して用いてもよい。この場合、混合量は分散剤の全使用量に対して30重量%以下となる範囲が好ましい。
表面改質工程における樹脂粒子の表面改質に用いられる前記有機過酸化物としては、従来公知の各種のもの、例えば、イソブチルパーオキシド、クミルパーオキシネオデカノエート、α,α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド、オクタノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ステアロイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、サクシニックパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、m−トルオイルベンゾイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジ−t−ブチルパーオキシ−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等が例示される。これらの有機過酸化物は、単独でまたは2種以上を併用することができ、樹脂粒子100重量部当り、通常、0.01〜10重量部添加することが好ましい。0.01重量部未満であると十分に表面改質できない虞れがある。一方、10重量部を超えると、基材樹脂であるポリプロピレン系樹脂が分解し、連続気泡化して成形する際の二次発泡が低下する虞れがある。かかる観点から、0.05〜5重量部を分散媒体中に添加することが好ましく、より好ましくは0.1〜3重量部である。
上記有機過酸化物と樹脂粒子と分散媒体からなる分散体において、樹脂粒子/分散媒体の重量比が大きくなりすぎると樹脂粒子に対して均一な表面改質が行なえなくなる虞がある。そうなると、表面改質粒子の中に改質が極度に進みすぎたものが混じり、それが原因で、次の発泡工程において、密閉容器内で改質樹脂粒子同士の多数個が融着して大きな塊になり、密閉容器外へ放出することができなくなる虞がある。そのような観点から、表面改質工程においては上記樹脂粒子/分散媒体の重量比は1.3以下であることが好ましく、1.2以下がより好ましく、1.1以下が更に好ましく、1.0以下が最も好ましい。ただし、この重量比があまりにも小さくなりすぎると、樹脂粒子に対する有機過酸化物の使用量を増やさなければ得られる発泡粒子に効果的な低温成形性を付与できない虞がある。有機過酸化物の使用量が増えすぎると、基材樹脂を構成するポリプロピレン系樹脂を分解させてしまい、得られる発泡粒子が連続気泡化して二次発泡の低下が起こる虞がある。有機過酸化物の使用量をより少なくする上で、樹脂粒子/分散媒体の重量比は0.6以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましい。
有機過酸化物は、発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂(以下、単に「本基材樹脂」ともいう)の融点よりも低温で実質的に分解する。従って、該有機過酸化物の1時間半減期温度(一定温度で有機化酸化物を分解させた際、活性酸素量が1時間で当初の半分になるときのその一定温度)は、本基材樹脂のビカット軟化点(JIS K 6747(1981年)、以下同じ)以下であることが好ましい。使用する有機過酸化物の1時間半減期温度が本基材樹脂のビカット軟化点を超える場合には、その過酸化物の分解を迅速に行なうには本基材樹脂の融点以上の高温が必要となるので好ましくない。場合によっては、本基材樹脂の融点よりも低温で実質的に分解させることができないので好ましくない。そして該過酸化物を本基材樹脂の融点以上の高温で実質的に分解させると、該過酸化物が本樹脂粒子の奥深くまで浸透した状態で分解するため、本樹脂粒子を構成する本基材樹脂が表面、内部を問わず全体的に大きく分解してしまうので、場合によっては、成形に使用できない発泡粒子しか得ることができなくなる虞がある。また成形できたとしても最終的に得られる発泡粒子成形体の機械的物性が大きく低下してしまう虞がある。
以上のことを考慮すると、使用される有機過酸化物は、1時間半減期温度が本基材樹脂のビカット軟化点よりも20℃以上低温であることが好ましく、本基材樹脂のビカット軟化点よりも30℃以上低温であることがより好ましい。尚、該1時間半減期温度は、本基材樹脂のガラス転移温度以上であることが好ましく、取り扱い性等を考慮すると、40〜100℃であることがより好ましく、50〜90℃であることが更に好ましい。上記ガラス転移温度は、JIS K 7121(1987年)に従って、熱流束DSCにより求めた中間点ガラス転移温度を意味する(この際の試験片の状態調節については「一定の熱処理を行なった後、ガラス転移温度を測定する場合」を採用する)。また、該過酸化物は、本樹脂粒子が存在する分散媒体中で、本基材樹脂のビカット軟化点以下で実質的に分解させることが好ましく、本基材樹脂のビカット軟化点よりも20℃以上低温で実質的に分解させることがより好ましく、本基材樹脂のビカット軟化点よりも30℃以上低温で実質的に分解させることが更に好ましい。該有機過酸化物は、該有機過酸化物の1分間半減期温度(一定温度で有機化酸化物を分解させた際、活性酸素量が1分間で当初の半分になるときのその温度)±30℃の温度範囲に10分以上保持して実質的に分解させることが特に好ましい。〔1分間半減期温度−30℃〕よりも低温度で分解させようとする場合、分解させるのに長時間を要してしまうので効率が悪くなってしまう。逆に〔1分間半減期温度+30℃〕よりも高温度で分解させようとする場合、分解が急激となってしまう虞があり、表面改質の効率を悪くする虞がある。また、1分間半減期温度±30℃の範囲に10分以上保持すれば、有機過酸化物を実質的に分解させることが容易となる。1分間半減期温度±30℃の範囲での保持時間は、長くとるほどより確実に有機過酸化物を分解させることができるが、ある時間以上はもはや必要ない。必要以上の長時間は生産効率の低下をまねく。上記温度範囲での保持時間は通常は長くても60分にとどめるべきである。有機過酸化物を分解させるには、最初に有機過酸化物が分解しにくい温度に調整された上記分散体を用意し、次にその分散体を上記有機過酸化物の分解温度に加熱すればよい。この際、1分間半減期温度±30℃の範囲に10分以上保持されるように昇温速度を選択すればよいが、1分間半減期温度±30℃の範囲内の任意の温度で止めてその温度を5分以上保持することがより好ましい。その際の任意の温度としては、1分間半減期温度±5℃内の温度が最も好ましい。また、実質的に分解させるとは、使用した過酸化物の活性酸素量が当初の50%以下になるまで分解させることを意味するが、その活性酸素量が当初の30%以下になるまで分解させることが好ましく、その活性酸素量が当初の20%以下になるまで分解させることがより好ましく、その活性酸素量が当初の5%以下になるまで分解させることが更に好ましい。
尚、有機過酸化物の上記半減期温度は、ラジカルに対して比較的不活性な溶液(例えばベンゼンやミネラルスピリット等)を使用して、0.1mol/L濃度の有機過酸化物溶液を調整し、窒素置換を行なったガラス管内に密封し、所定温度にセットした恒温槽に浸し、熱分解することにより測定される。
樹脂粒子、表面改質粒子、低温成形可能な改質表面を有する発泡粒子及びそれから得られる発泡粒子成形体は、いずれも、実質的に無架橋であることが好ましい。上記表面改質粒子を製造するに際しては、架橋助剤等を併用しないので実質的に架橋は進行しない。尚、実質的に無架橋であるとは、次のとおり定義される。即ち、本基材樹脂、樹脂粒子、表面改質粒子、発泡粒子、発泡粒子成形体を問わず、それぞれを試料とし(キシレン100g当たり試料1g使用)、これを沸騰キシレン中に8時間浸漬後、標準網ふるいを規定しているJIS Z 8801(1966年)に定められている網目74μmの金網で速やかに濾過し、該金網上に残った沸騰キシレン不溶分の重量を測定する。この不溶分の割合が試料の10重量%以下の場合を実質的に無架橋というが、その不溶分の割合は、試料の5重量%以下であることが好ましく、3重量%以下であることがより好ましく、1重量%以下であることが最も好ましい。その不溶分の割合が少ないほど再生原料として再利用し易い。不溶分の含有率P(%)を式で表すと下式の通りである。
P(%)=(M÷L)×100 (1)
ただし、Mは不溶分の重量(g)、Lは試料の重量(g)である。
本発明において用いる発泡剤としては、環境適合性、安全性の点から窒素、酸素、空気、二酸化炭素、水等の無機発泡剤や、これらを主成分とする物理発泡剤が好ましい。これらの中でも、環境適合性があり、見掛け密度が100g/L〜500g/Lの低発泡倍率の発泡粒子を容易に得られることから空気が好ましい。
一方、見掛け密度が30g/L以上、100g/L未満の高発泡倍率の発泡粒子が得られることから、二酸化炭素が好ましい。また水を発泡剤として用いる場合、水性媒体が水であれば、これを発泡剤として利用することができる。
尚、本明細書において、無機発泡剤を主成分とする物理発泡剤とは、全発泡剤の50モル%以上が無機発泡剤であることを意味する。より好ましくは、物理発泡剤の70モル%以上が無機発泡剤であることが、環境負荷が低く、爆発の危険性が低い点で好ましい。
発泡剤の使用量は、目的とする発泡粒子の発泡倍率に応じ、また基材樹脂の種類、発泡剤の種類等を考慮して決定されるが、通常、樹脂粒子100重量部当たり、多くとも10重量部程度である。
本発明の製造方法において、水性媒体中に分散剤の分散力を強化する分散強化剤が添加されることが好ましい。このような分散強化剤は40℃の水100ccに対して少なくとも1mg以上溶解し得る無機化合物であって、該化合物の陰イオンまたは陽イオンの少なくとも一方が2価または3価である無機物質である。このような無機物質としては、たとえば、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄等が例示される。前記した分散強化剤は0.0001〜1重量部程度が使用される。特に発泡剤が空気や、空気を主成分とする発泡剤の場合に分散剤をより少なくする点で効果的である。
上記分散強化剤を更に水性媒体に添加すると、分散系へ電荷が付与され、あるいは分散系の電荷が一層高まり、それによって分散剤同士の電気的反発が高まるとともに分散剤とポリプロピレン系樹脂粒子との間の電気的反発力が高まり、その結果、樹脂粒子表面に付着しない距離をおいて樹脂粒子の周りを覆う分散剤が増加し樹脂粒子同士が互いに電気的に強く反発しあって密閉容器内で樹脂粒子同士が融着することを防止しているものと推察される。したがって、本発明の発泡粒子の製造方法において、分散系における水性媒体のpHが、分散剤の電荷が無くなる等電点およびその付近のときに最も効果的である。
本発明の発泡工程における表面改質粒子の発泡方法は、大きく2通りに分けられる。ひとつは、高温高圧下で発泡剤を樹脂粒子に含浸させ、温度を室温まで下げた後、除圧して発泡性樹脂粒子として取出し、該発泡性樹脂粒子をスチームや熱風等の加熱媒体を用いて発泡させる方法である。他のひとつは、表面改質粒子が発泡可能な温度で、表面改質粒子と分散媒体とを低圧帯域に放出することにより発泡粒子を得る方法(以下、「分散媒放出発泡方法」といい、該方法により表面改質粒子を発泡させる工程を「分散媒放出発泡工程」という)である。本発明方法においては、生産性に優れる分散媒放出発泡方法を採用することが好ましく、該方法によれば発泡粒子を短時間で効率よく生産できる。
発泡工程において上記分散媒放出発泡方法を採用した場合、前記表面改質工程と上記分散媒放出発泡工程を含む発泡工程とは、それぞれ別の装置で別な時期に実施することも可能であるが、同じ容器内で表面改質工程と分散媒放出発泡工程を含む発泡工程を続けて行なうことによって発泡粒子を得ることが、短時間で効率よく発泡粒子を生産できるので好ましい。
分散媒放出発泡方法における発泡剤の容器内への充填は、昇温と同時に充填しても、昇温の途中に充填しても、発泡開始直前の安定した状態に充填しても樹脂粒子に発泡剤が含浸すことさえできれば構わない。
分散媒放出発泡方法においては、発泡粒子の示差走査熱量測定によるDSC曲線における基材樹脂の融解熱に由来する吸熱曲線ピーク(固有ピーク)よりも高温側に吸熱曲線ピーク(高温ピーク)が存在する発泡粒子を製造することが好ましい。そのような発泡粒子は、独立気泡率の高い、成形に適切な発泡粒子である。高温ピークの熱量は2J/g〜70J/gであることが好ましい。高温ピークの熱量が2J/g未満の場合は得られる成形体の圧縮強度、エネルギー吸収量などが低下する虞がある。また70J/gを超える場合は、発泡粒子を成形するに先立ち発泡粒子内の空気圧を高める工程で必要となる空気圧が高くなりすぎたり、成形サイクルが長くなったりする虞れがあるので好ましくない。
また、上記高温ピークの熱量は、高温ピークの熱量と固有ピークの熱量の総和に対して15〜60%であることが好ましい。これにより前記した高温ピークの熱量が全ての吸熱曲線ピークの熱量の合計に対して15%未満の場合は、成型する際、低温のスチームで成形できるものの、得られるEPP成形体の圧縮強度、エネルギー吸収量などが低下する虞がある。また、60%を超える場合は、発泡粒子を成形するに先立ち発泡粒子内に付与しなければならない空気圧が高くなりすぎたり、成形サイクルが長くなる虞れがある。かかる観点から20〜50%であることがより好ましい。また、高温ピークの熱量と固有ピークの熱量の総和は40J/g〜150J/gであることが好ましい。
尚、本明細書における高温ピークの熱量と固有ピークの熱量は、いずれも吸熱量を意味し、そしてその数値は絶対値で表現されたものである。
発泡粒子の高温ピークの熱量は、JIS K7122(1987年)に準拠して、発泡粒子2〜10mgを、窒素雰囲気下で、示差走査熱量計によって室温(10〜40℃)から220℃まで10℃/分で昇温した時に得られる図1に示す第1回目のDSC曲線に認められる基材樹脂の融解熱に由来する固有の吸熱曲線ピーク(固有ピーク)aが現れる温度よりも高温側に現れる吸熱曲線ピーク(高温ピーク)bの熱量をいい、この高温ピークbの面積に相当するものであり、具体的には次のようにして求めることができる。
まずDSC曲線上の80℃に相当する点αと、発泡粒子の融解終了温度Tに相当するDSC曲線上の点βとを結ぶ直線(α−β)を引く。次に上記の固有ピークaと高温ピークbとの間の谷部に当たるDSC曲線上の点γからグラフの縦軸と平行な直線を引き、前記直線(α−β)と交わる点をσとする。高温ピークbの面積は、DSC曲線の高温ピークb部分の曲線と、線分(σ−β)と、線分(γ−σ)とによって囲まれる部分(図1において斜線を付した部分)の面積であり、これが高温ピークの熱量に相当する。尚、上記融解終了温度Tとは、高温ピークbの高温側におけるDSC曲線と高温側ベースラインとの交点をいう。
また、高温ピークの熱量と固有ピークの熱量の総和は、前記直線(α−β)とDSC曲線とで囲まれる部分の面積に相当する。
尚、発泡粒子の固有ピークと高温ピークを上記の通り示差走査熱量計によって測定するに際しては、発泡粒子1個当たりの重量が2mg未満の場合は、総重量が2mg〜10mgとなる複数個の発泡粒子をそのまま測定に使用すればよく、また、発泡粒子1個当たりの重量が2mg〜10mgの場合には、発泡粒子1個をそのまま測定に使用すればよく、また、発泡粒子1個当たりの重量が10mg超の場合には、1個の発泡粒子を、複数個に切断して得た重量が2〜10mgとなる切断試料1個を測定に使用すればよい。ただし、この切断試料は、1個の発泡粒子をカッター等を使用して切断されたものであるが、切断に際しては、当初から有する発泡粒子の表面は切除せずにそのまま残すと共に、各切断試料の形状ができる限り同じ形状となるように均等に且つ各切断試料においては切除せずに残された上記発泡粒子表面の面積ができる限り同じ面積となるように切断されることが好ましい。例えば発泡粒子1個当たりの重量が18mgの場合には、任意の方向に向けた発泡粒子を垂直方向の真中より水平に切断すれば2個のほぼ同じ形状の約9mgの切断試料が得られ、各切断試料は、当初から有する発泡粒子の表面はそのまま残されていると共にその表面の面積は各切断試料でほぼ同じ面積となる。このようにして得られた2個の切断試料の内の1個を上記の通り固有ピークと高温ピークの測定に使用すればよい。
上記高温ピークbは、上記のようにして測定した第1回目のDSC曲線には認められるが、第1回目のDSC曲線を得た後、220℃から10℃/分で一旦40℃付近(40〜50℃)まで降温し、再び10℃/分で220℃まで昇温した時に得られる第2回目のDSC曲線には認められず、図2に示されるような基材樹脂の融解時の吸熱に相当する固有ピークaのみが認められる。
尚、発泡粒子の第1回目のDSC曲線に現れる固有ピークaの頂点の温度は、基材樹脂の融点(Tm)を基準とすると、通常、[Tm−5℃]〜[Tm+5℃]の範囲に現れる(最も一般的には[Tm−4℃]〜[Tm+4℃]の範囲に現れる)。また、発泡粒子の第1回目のDSC曲線に現れる高温ピークbの頂点の温度は、基材樹脂の融点(Tm)を基準とすると、通常、[Tm+5℃]〜[Tm+15℃]の範囲に現れる(最も一般的には[Tm+6℃]〜[Tm+14℃]の範囲に現れる)。また、発泡粒子の第2回目のDSC曲線に認められる固有ピークaの頂点の温度(基材樹脂の融点に対応する温度)は、基材樹脂の融点(Tm)を基準とすると、通常、[Tm−2℃]〜[Tm+2℃]の範囲に現れる。
分散媒放出発泡方法によって得られる発泡粒子は、前記の通り、DSC測定において、1回目のDSC曲線に高温ピークが出現する結晶構造を有するものがあるが、この高温ピークの熱量は樹脂の融点と発泡温度の差に強く影響される。
発泡粒子の高温ピーク熱量は、特に発泡粒子相互の融着に関して最低融着温度を決定する因子として作用する。ここでいう最低融着温度とは、発泡粒子相互が型内で融着するために必要な最低の飽和スチーム圧力を与える温度を意味する。高温ピーク熱量は、この最低融着温度と密接な関係にあり、全く同一の基材樹脂を用いた場合、高温ピーク熱量値が小さい方が高温ピーク熱量値が大きいときよりも最低融着温度が低くなるといった傾向がある。この高温ピーク熱量の値には発泡粒子の製造段階で樹脂に与える発泡温度の高低が強く影響しており、同一の基材樹脂を用いた場合、発泡温度が高い方が低い場合より高温ピーク熱量値が小さくなる傾向がある。
ところが、高温ピーク熱量が小さい発泡粒子を用いて発泡粒子成形体を得る場合、最低融着温度は相対的に低い傾向があるものの、発泡粒子成形体の圧縮強度(剛性)等の強度物性等が相対的に低下する傾向がある。一方で、高温ピーク熱量が大きい発泡粒子を用いて発泡粒子成形体を得る場合、発泡粒子成形体の圧縮強度等の強度物性等が相対的に高い傾向があるものの最低融着温度が相対的に高くなり、前述のように発泡粒子成形体を製造する際に高い圧力のスチームを必要とする場合が生じるといった問題が発生する。即ち、最も好ましい発泡粒子は最低融着温度が低く且つ発泡粒子成形体の圧縮強度等の強度物性等が相対的に高いといった相反する性質を同時に有する発泡粒子である。本発明で用いる発泡粒子は、最低融着温度が効果的に低下されたものである。特に、表面改質された樹脂粒子(以下、単に「表面改質粒子」という)から得られた発泡粒子ではその最低融着温度の低下効果はより大きい。本発明の発泡粒子を用いて発泡粒子成形体を製造する場合には、圧縮強度等の機械的物性に優れた発泡粒子成形体を得ることができる。
DSC曲線における高温ピークを有する発泡粒子を得るためには、密閉容器内で分散媒体に表面改質粒子を分散させて加熱する際に、本基材樹脂の融解終了温度(Te)以上に昇温することなく、本基材樹脂の融点(Tm)より20℃低い温度以上、融解終了温度(Te)未満の範囲内の任意の温度(Ta)で止めてその温度(Ta)で十分な時間、好ましくは10〜60分程度保持し、その後、融点(Tm)より15℃低い温度から融解終了温度(Te)+10℃の範囲の任意の温度(Tb)に調節し、その温度で止め、必要により当該温度でさらに十分な時間、好ましくは10〜60分程度、保持してから表面改質粒子を密閉容器内から低圧下に放出して発泡させる方法により得ることができる。
尚、上記融点(Tm)とは、樹脂粒子2〜10mgを試料として用いて前述の如き発泡粒子のDSC曲線を得るのと同様の方法で本樹脂粒子に対して示差走査熱量測定を行い、これによって得られた2回目のDSC曲線(その一例を図2に示す)に認められる基材樹脂固有の吸熱曲線ピークaの頂点の温度であり、融解終了温度(Te)とは、該固有の吸熱曲線ピークaの高温側におけるDSC曲線と高温側ベースライン(BL)との交点(β)を言う。
樹脂粒子に対する2回目のDSC曲線に現れる吸熱曲線ピークは、それがポリプロピレン系樹脂の融解に基づくピークであることを前提として、通常は1つの吸熱曲線ピークとなって現れる。ただし、2以上のポリプロピレン系樹脂の混合物からなる場合等には、まれに2以上の吸熱ピークが認められることがある。その場合には、各ピークの頂点を通ると共にグラフの縦軸と平行な(横軸と直交する)直線をそれぞれ引き、各直線においてピークの頂点からベースラインBLまでの長さを測定し、その長さが最も長い直線上のピークの頂点を上記Tmとする。ただし、最も長い直線が2以上存在する場合には、その中で最も高温側のピークの頂点を上記Tmとする。
また、発泡粒子における上記高温ピークの熱量の大小は、主として、発泡粒子を製造する際の樹脂粒子に対する上記温度Taと該温度における保持時間および上記温度Tbと該温度における保持時間ならびに昇温速度に依存する。発泡粒子の上記高温ピークの熱量は、温度TaまたはTbが上記温度範囲内において低い程、保持時間が長い程、大きくなる傾向を示す。通常、加熱時の昇温速度(加熱開始から温度保持を開始するまでの間の平均昇温速度)は0.5〜5℃/分が採用される。これらの点を考慮して予備実験を繰り返すことにより、所望の高温ピーク熱量を示す発泡粒子の製造条件を容易に知ることができる。
尚、以上で説明した温度範囲は、発泡剤として無機系物理発泡剤を使用した場合の適切な温度範囲である。有機系物理発泡剤が併用された場合には、その種類や使用量に応じてその適切な温度範囲は上記温度範囲よりもそれぞれ低温側にシフトする。
尚、上記した表面改質粒子から得られた、低温成形可能な改質表面を有する発泡粒子(以下「表面改質発泡粒子」という)は、次のような構造的特異性を有していることが測定結果より判明している。
本発明の発泡粒子においてはマイクロ示差熱分析測定を行った場合、表層部の補外融解開始温度(Ts)と、内層部の補外融解開始温度(Ti)との関係が下式を満足する発泡粒子であることが発泡成形体の耐熱性を低下させることなく、より低いスチーム圧力で成型できる発泡粒子となる観点から好ましい。但し、式中のTi、Tsの単位はともに℃である。
3(℃)≦Ti−Ts≦40(℃)・・・(2)
低いスチーム圧でも加熱成型することができると共に、得られる発泡粒子成形体の耐熱性の低下を防ぐという観点からは、下記(3)式を満足することが好ましく、下記(4)式を満足することがより好ましい。但し、式中のTi、Tsの単位はともに℃である。
3(℃)≦Ti−Ts≦40(℃)・・・(3)
5(℃)≦Ti−Ts≦40(℃)・・・(4)
表層部の補外融解開始温度(Ts)と、内層部の補外融解開始温度(Ti)との関係が前述した式(2)等を満足するように構成するためには、前述したように表面改質を行なうことによってできる。
本明細書におけるマイクロ示差熱分析(μDTA)は、ティ・エイ・インスツルメント・ジャパン社のマイクロ熱分析システム「2990型マイクロサーマルアナライザー」を使用し、25℃から250℃まで昇温速度10℃/秒の条件にて測定することとする。
図3及び図4は発泡粒子の表面に対するμDTA曲線の一例を示すものであり、これらの図を使用して発泡粒子の表層部の補外融解開始温度の求め方を説明する。図3は、発泡粒子の表層部に対するμDTA曲線の一例を示す。図3において、曲線Cmが発泡粒子の表層部に対するμDTA曲線の一例であり、曲線Cm上のPm点が融解開始温度であり、Pme点が前記ベースライン(BL)と前記接線(TL)との交点である補外融解開始温度である。一方、曲線Cnmが表面改質をしていない発泡粒子の表層部に対するμDTA曲線の一例であり、曲線Cnm上のPnm点が融解開始温度であり、Pnme点が前記ベースライン(BL)と前記接線(TL)との交点である補外融解開始温度である。また図4は、発泡粒子(図3のものよりも多少表層部の補外融解開始温度が高いもの)の表面に対するμDTA曲線の一例を示す。図4において、曲線CmがμDTA曲線であり、曲線Cm上のPm点がその融解開始温度であり、Pme点が前記ベースライン(BL)と前記接線(TL)との交点である補外融解開始温度である。
尚、ここでいう融解開始温度とは、マイクロ示差熱分析によって得られるμDTA曲線におけるベースライン(BL)からμDTA曲線が下方に変化し始めた(時間当りの比熱が変化し始めた)温度を意味し、補外融解開始温度とは、上記μDTA曲線の前記ベースライン(BL)を高温側に延長した直線と、融解開始温度より高温側のμDTA曲線上における各点から引いた接線の内、該接線と上記ベースライン(BL)を高温側に延長した直線との間の角度が最大となる接線(TL)との交点の温度をいう。
上記マイクロ示差熱分析は、発泡粒子を装置のサンプルステージに固定し(1個の発泡粒子がそのままでは大きすぎる場合は例えば半分に切断する等して適当な大きさにして固定する)、次いで、発泡粒子の表面において無作為に選択した箇所に向けて、プローブチップ(発泡粒子の表層部に接触させる部分は縦横各0.2μmの先端部を持つ)を下降させて発泡粒子の表層部に接触させた状態で実施される。
前記マイクロ示差熱分析による発泡粒子の表層部の補外融解開始温度は、異なる測定点10点の測定結果より、最大値と最小値を除く8点の相加平均値が採用される。尚、最大値と最小値がそれぞれ複数ある場合はそれらを除く数点の相加平均値が採用される。また、平均10点の測定値が全て同じ場合や、最大値と最小値の値しか得られなかった場合であって最大値と最小値の差が10℃以内の場合には、10点の相加平均値が採用される。 尚、最大値と最小値の値しか得られなかった場合であって最大値と最小値の差が10℃を超える場合には、更に異なる表面の10点に対し測定して上記したと同じ要領で相加平均値を求め、それを採用すればよい。それでも条件に合わない場合には更に同じ操作を繰り返す。
以上のμDTAによる結果は、発泡粒子の表層部の補外融解開始温度の低下が、成形時に必要な最低融着温度の低下に寄与していることを示している。
また、発泡粒子の表層部の補外融解開始温度が低下するメカニズムは定かではないが樹脂粒子を発泡する際、芯層を構成する樹脂の融点を基準に発泡させる。樹脂粒子の外層は、外層を構成する樹脂の融点よりも高い温度から急冷されることとなるから低融点結晶のスメチカ構造が多くなり、発泡粒子の表層部の補外融解開始温度が低下すると考えられる。
発泡粒子の型内成形においては、発泡粒子相互の融着は発泡粒子表面同士で行なわれるため、発泡粒子の表面のみを熱分析する意義は大きい。発泡粒子の表面のみの融解開始の傾向をDSC法で知ることは不可能と思われる。それを可能にするのがμDTAである。また、μDTAで昇温速度を1秒あたり10℃としているが、この速度は、実際の型内成形に際して発泡粒子を加熱する際の昇温速度に近いものである(このような速い昇温速度はDSC法では困難である)。従って、このような実際の型内成形に近似した昇温速度で分析する意義は大きい。このような理由から本発明では、発泡粒子の表層部に対するマイクロ示差熱分析(μDTA)を採用することする。この測定に基づく補外融解開始温度は、厳密な意味での融解開始の温度を示していないかもしれないが、補外融解開始温度の温度の高低の傾向と成形温度の高低の傾向とはよく一致している。また、補外融解開始温度は誤差が少ないのでより再現性に優れる。
以上のμDTAによる結果は、発泡粒子における表層部の補外融解開始温度が内層部の補外融解開始温度より低くなる。このことから、成型時に必要な最低融着温度の低下に寄与していることを示している。
また、本発明で得られた発泡粒子を用いて得られる発泡成形体にはその表面の少なくとも一部に、表面装飾材を積層一体化することができる。そのようなラミネート複合タイプの型内発泡成形体の製造方法は、米国特許第5928776号、米国特許第6096417号、米国特許第6033770号、米国特許第5474841号、ヨーロッパ特許477476号、WO98/34770号、WO98/00287号、日本特許第3092227号等の各公報に詳細に記載されている。
また、前記発泡成形体中には、インサート材の全部または一部が埋設されるようにして該インサート材を複合一体化することができる。そのようなインサート複合タイプの型内発泡成形体の製造方法は、米国特許第6033770号、米国特許第5474841号、日本公開特許昭59−127714号、日本特許第3092227号等の各公報に詳細に記載されている。
実施例1〜4、比較例1〜3
実施例では、以下に示す水A、水B及び水Cを組合わせたものを用い、比較例では水A、水Bを用いた。水A、水B及び水Cの組合せ、及び混合重量比を表1に示す。
水A:電気伝導率12mS/m、鉄の濃度0.9mg/Lの地下水
水B:電気伝導率12mS/m、鉄の濃度0.9mg/Lの地下水を逆浸透法により処理した浸透水をさらに塩素酸化法で処理した電気伝導率36mS/m、鉄の濃度0.02mg/Lの水
水C:電気伝導率12mS/m、鉄の濃度0.9mg/Lの地下水をイオン交換法により処理した電気伝導率0.05mS/m、鉄の濃度0.01mg/Lの水
(表1)
Figure 0004518473
<樹脂粒子の作製>
ポリプロピレン系樹脂(融点162℃、MFR=23g/10分)100重量部当り、ホウ酸亜鉛粉末(気泡調整剤)0.05重量部を添加して押出機内で溶融混練した後、押出機からストランド状に押出し、そのストランドを直ちに18℃に調節された水中に入れて急冷しながら引き取り、充分に冷却した後、水中から引き上げ、長さ/直径比が略1.0になるようにストランドを切断して、1粒子当りの平均重量が2mgの樹脂粒子を得た。
<発泡粒子の作製>
次いで5リットルのオートクレーブに、上記樹脂粒子100重量部、表1に示す水300重量部(鉄の濃度及び電気伝導率を表2に示す。)と、表2に示す量の界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、分散剤(カオリン)、分散強化剤(硫酸アルミニウム)と、有機過酸化物(ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート)1重量部及び表2に示す量の二酸化炭素(発泡剤)を仕込み、攪拌しながら表2に示す発泡温度よりも5℃低い温度まで昇温して(平均昇温速度3℃/分)からその温度で15分間保持した。次いで、発泡温度まで昇温して(平均昇温速度3℃/分)同温度で15分間保持した。次いで、オートクレーブの一端を開放してオートクレーブ内容物を大気圧下に放出して発泡粒子を得た。尚、樹脂粒子をオートクレーブから放出する間のオートクレーブ内の圧力が、放出直前のオートクレーブ内の圧力に保たれるように、オートクレーブ内に窒素ガスを供給しながら放出を行った。得られた発泡粒子を水洗し遠心分離機にかけたのち、24時間大気圧下に放置して養生した後、発泡粒子の見掛け密度、高温吸熱曲線ピーク熱量、発泡粒子の分散性等を測定した。その結果を表2に示した。
Figure 0004518473
<型内成形>
次いで、この発泡粒子を、内圧付与処理を施すことなく、400mm×200mm×50mmの成形空間(雄型と雌型とを完全に型締めしたときの成形空間)を持つ金型内に、雄型と雌形を完全に型締めせずに両者の間に僅かな隙間(約1mm)を開けた状態で発泡粒子を充填した。次いで型内をスチームで排気した後、雄型と雌型とを完全に型締めし、表1に示す飽和蒸気圧力のスチームによって成形した。成形後、金型内の発泡圧が0.059MPa(G)となるまで水冷した後、発泡粒子成形体を型から取り出し、60℃で24時間養生した後、室温まで冷却した。得られた発泡粒子成形体における発泡粒子の融着性の評価を表2に示した。
実施例1〜4で得られた発泡粒子は、発泡粒子が融着した粒子間融着物がなく成形体における発泡粒子の融着性も良好であった。
比較例1及び2で得られた発泡粒子は、発泡した際、発泡粒子相互が融着した塊が多く発生し、配管に詰まりやすかった。また比較例1及び2で得られた発泡粒子は、発泡粒子相互が融着した塊が多かった。この塊があると発泡粒子を金型の成形空間内に充填する際、充填ホース内でつまり、充填不良となった。そのため、この塊を取り除くため篩で取り除く必要があり、工程が増えるので製造効率が低下した。
比較例3は、発泡粒子の分散性は良好であったが、成形体における発泡粒子の融着性が不良であった。
<電気伝導率の測定方法>
前記した測定方法にて得られた値を採用した。
<鉄の濃度の測定方法>
水性媒体中の鉄の濃度は、JIS K 0102(2003年)に準拠して測定した。具体的には、JobinYvon社製誘導結合プラズマ発光分析計(ICP発光分析計)型番TY38Sによって測定された値を採用した。
<発泡粒子の分散性の評価>
製造した発泡粒子群の中から無作為に100個の発泡体を取り出し、この発泡体100個を検査し発泡粒子の分散性を下記基準により評価した。
ここで言う発泡体とは、発泡粒子間に融着のない発泡粒子の場合にはそれぞれが1個の発泡体を意味し、複数個の発泡粒子が数珠繋ぎ状に融着していたり、複数個の発泡粒子がランダムに融着していたり、あるいは発泡粒子間で糸を引くような状態で繊維状樹脂を介して複数個の発泡粒子が連結していたりするいわゆる発泡粒子間が融着したもの(以下、粒子間融着物という)である場合には、この粒子間融着物1つが1個の発泡体を意味する。
a・・・100個の発泡体のうち2〜3個の発泡粒子が融着した粒子間融着物が5個以下、または4個以上の発泡粒子が融着した粒子間融着物がなく、発泡粒子の分散性が優れているもの。
b・・・100個の発泡体のうち2〜3個の発泡粒子が融着した粒子間融着物が5個を超え10個以下、または4個以上の発泡粒子が融着した粒子間融着物が3個以下であり、発泡粒子の分散性が良好なもの。
c・・・100個の発泡体のうち2〜3個の発泡粒子が融着した粒子間融着物が10個を超え15個以下、または4個以上の発泡粒子が融着した粒子間融着物が3個を超え5個以下であり、発泡粒子の分散性が不良なもの。
d・・・100個の発泡粒子のうち2〜3個の発泡粒子が融着した粒子間融着物が15個を超え、または4個以上の発泡粒子が融着した粒子間融着物が20個を超え、発泡粒子の分散性が不良なもの。
e・・・大きな粒子間融着物が容器内から放出されないで容器内に残った場合。
<高温ピーク熱量の測定方法>
前記した測定方法で得られた値を採用した。
<見掛け密度の測定方法>
発泡粒子の見掛け密度(g/L)は、まず約5g(4.500〜5.500g)の発泡粒子をとり、これを0.001gまで正確に秤量し(小数点以下4桁目を四捨五入)、これを発泡粒子の重量:S(g)とする。次いで秤量された重量既知の発泡粒子を23℃の水100cmが収容されたメスシリンダー内の水に水没させたときの上昇した目盛りから、発泡粒子の体積:Y(cm)を算出し、これをリットル単位に換算してこれを発泡粒子の見掛け体積:L(L)とする。このように求められた上記発泡粒子の重量:S(g)を体積:L(L)で除すことにより求められる。
<成形体における発泡粒子の融着性の評価>
得られた発泡粒子成形体を、カッターナイフで成形体の厚み方向に約10mmの切り込みを入れた後、手で切り込み部から成形体を破断するテストを行い、以下の基準で成形体の破断面の観察することにより、発泡粒子の融着性の良否を評価した。
○・・・発泡粒子の50%以上が材料破壊している。
△・・・発泡粒子の30%以上50%未満が材料破壊している。
×・・・発泡粒子の30%未満が材料破壊している。
<表層部及び内層部の融解開始温度の測定方法>
前記した測定方法で得られた値を採用した。
高温ピークを持つポリプロピレン系樹脂発泡粒子の、第1回目のDSC曲線のチャートの一例を示す図面である。 ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の第2回目のDSC曲線のチャートの一例を示す図面である。 発泡粒子の表層部に対するμDTA曲線のチャートの一例を示す図面である。 発泡粒子(図3のものよりも多少表層部の補外融解開始温度が高いもの)の表面に対するμDTA曲線のチャートの一例を示す図面である。
符号の説明
a 第1回目のDSC曲線に認められる基材樹脂の融解熱に由来する固有の吸熱曲線ピーク(固有ピーク)
b 固有ピークaが現れる温度よりも高温側に現れる吸熱曲線ピーク(高温ピーク)

Claims (3)

  1. 水性媒体中でポリプロピレン系樹脂粒子の表面を有機過酸化物により改質する表面改質工程と、該ポリプロピレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程と、発泡剤を含浸している表面改質された該ポリプロピレン系樹脂粒子を発泡させる発泡工程とを含む発泡粒子の製造方法であって、前記水性媒体の電気伝導率が1mS/m〜20mS/mであると共に、該水性媒体の鉄の濃度が0.01mg/Lを超えて0.7mg/L以下であり、該水性媒体中に分散剤としてシリカ−アルミナを主成分とするアルミノ珪酸塩からなる鉱物系無機質物質を、水性媒体100重量部あたり0.004重量部〜1重量部添加することを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
  2. 該発泡剤が無機発泡剤を主成分とする発泡剤であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
  3. 該水性媒体中に分散強化剤として、40℃の水100ccに対して少なくとも1mg以上溶解し得る無機化合物であって、該化合物の陰イオン又は陽イオンの少なくとも一方が2価又は3価である無機物質を添加することを特徴とする請求項1または2に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
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