JP4101379B2 - ゴム変性スチレン系樹脂発泡成形体 - Google Patents

ゴム変性スチレン系樹脂発泡成形体 Download PDF

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は,耐衝撃性や柔軟性に優れた高い発泡倍率を有するゴム変性スチレン系樹脂発泡成形体に関する。
【0002】
【従来技術】
ポリスチレン樹脂からなる発泡成形体は,優れた緩衝性,断熱性を有し,成形も容易であるため,包装材,断熱材として多く用いられている。しかし,耐衝撃性や柔軟性が不十分であるため,割れや欠けが発生しやすく,例えば精密機器製品の包装などには適さないという問題がある。
【0003】
一方,ポリプロピレン樹脂からなる発泡成形体は,耐衝撃性や柔軟性に優れた発泡成形体ではあるが,発泡成形体の成形時に大がかりな設備を必要とする。また,樹脂の性質上,発泡粒子の形態で原料メーカーから成形加工メーカーに輸送しなければならず,嵩高いものを輸送することになるため,製造コストが上昇するという問題があった。
近年,成形が容易で,ポリスチレン系発泡体よりも耐衝撃性及び柔軟性を改良したものとして,ゴム変性スチレン系樹脂発泡成形体が,特開平3−182529号,特開平5−116227号,特開平7−11043号,及び特開平7−90105号などに提案されている。
【0004】
【解決しようとする課題】
しかし,従来の発泡成形体は,耐衝撃性及び柔軟性の改良の程度が不十分であったり,発泡倍率の高い発泡成形体を得ようとする場合,収縮などによる発泡成形品外観の悪化や,発泡成形体の強度低下が起きる。そのため,高い発泡倍率で発泡成形体を使用することができず,包装材料の省資源化に限界があった。
【0005】
また,ゴム変性スチレン系樹脂発泡成形体は,その気泡膜断面を電子顕微鏡で観察すると,ゴム粒子が気泡膜に複数,層状に存在している。しかし,高い発泡倍率では,発泡成形体の気泡膜の厚みが薄くなるため,気泡膜中にうまく配向されないゴム粒子(=アスペクト比が20以下)が生じていることが分かった。そして,これに起因して,高い発泡倍率では強度低下が生ずると考えられる。
【0006】
本発明は,高発泡倍率でも,耐衝撃性や柔軟性に優れ,外観も良好な発泡成形体を提供しようとするものである。
【0007】
【課題の解決手段】
請求項1の発明は,スチレン系樹脂の連続相中にジエン系重合体のゴム粒子が分散してなり,該ゴム粒子の平均粒子径が2μm〜10μmであるゴム変性スチレン系樹脂の発泡粒子を成形してなる発泡成形体であって,
(1)連続相を形成するスチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)が180,000〜300,000であり,かつ重量平均分子量に対するZ平均分子量の比(Mz/Mw)が2〜4であり,
(2)25℃トルエン中における上記ジエン系重合体のゲル分の膨潤度が12〜25であり,
(3)ジエン系重合体へのスチレン系樹脂のグラフト率が70%〜135%であり,
発泡成形体の気泡膜中におけるアスペクト比が20以下であるジエン系重合体のゴム粒子の割合が30%以下であることを特徴とするゴム変性スチレン系樹脂発泡成形体である。
【0008】
本発明においては,連続相を形成するスチレン系樹脂及びジエン系重合体として上記特定のものを用い,また,上記ゴム粒子の平均粒子径,ジエン系重合体へのスチレン系樹脂のグラフト率などが特定範囲のものを用いている。
そのため,高発泡倍率でも,耐衝撃性や柔軟性に優れ,外観も良好な発泡成形体を提供することができる。
なお,上記高発泡倍率とは,50倍(発泡成形体密度20kg/m3)〜70倍(同14kg/m3)をいう。
【0009】
本発明においては,上記従来の問題点に鑑み,鋭意研究を続けた結果,ゴム粒子が気泡膜に複数,層状に存在し,ゴム粒子のアスペクト比が20以下であるゴム粒子の個数の割合が30%以下であるゴム変性スチレン系樹脂の発泡成形体が,高発泡倍率でも,外観を悪化させることなく,耐衝撃性や柔軟性に優れることを見出した。なお,ここで言うアスペクト比とは,気泡膜中に層状に存在するゴム粒子の厚さ(気泡膜厚み方向の寸法)に対するゴム粒子の長さ(気泡膜面方向の寸法)の比である。
【0010】
そして,鋭意研究を続けた結果,アスペクト比が20以下であるゴム粒子は,気泡膜中にうまく配向されないため発生するのであって,このようなゴム粒子を少なくするためには,特定の分子量と分子量分布を持つスチレン系樹脂と特定の柔らかさのゴム粒子からなるゴム変性スチレン系樹脂を用いれば良いことを見出し,本発明を完成するに至ったのである。
【0011】
上記スチレン系樹脂は,ブタジエン重合体などのジエン系重合体をスチレン,p−メチルスチレン,α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物に溶解させ,アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物あるいは,過酸化ベンゾイル,t−ブチルパーオキシベンゾエートなどの過酸化物の存在下で,ラジカル重合させ,バルク重合,溶液重合,懸濁重合,バルク−懸濁重合法などを用いて得られるものである。
【0012】
上記スチレン系樹脂のMwは,180,000〜300,000である。Mwが180,000未満の場合には,気泡膜中のゴム粒子が配向され難くなるため発泡成形体とした場合に強度が低下し,一方300,000を超える場合には発泡性が悪化し高発泡倍率の発泡成形体の製造が困難になる。
なお,好ましくは200,000〜280,000である。
【0013】
さらに,上記スチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)に対するZ平均分子量の比(Mz/Mw)は,2〜4である。Mz/Mwが2未満の場合には,気泡膜中のゴム粒子が配向され難くなるため発泡成形体とした場合に強度が低下し,一方Mz/Mwが4を超える場合には,発泡性が悪化し発泡成形体の製造が困難になる。
なお,好ましくは2〜3である。
【0014】
上記ジエン系重合体は,ブタジエン,イソプレンなどのジエン系化合物の重合体や,ジエン系化合物と共重合の可能な,例えばスチレンなどの芳香族ビニル化合物との共重合体を用いることができる。なお,好ましくは,ブタジエン重合体である。なお,ブタジエン重合体は,ハイシスタイプ,ローシスタイプのいずれを用いても良い。
【0015】
上記ゴム変性スチレン系樹脂中におけるジエン系重合体の含有量は,5〜20重量%とすることが好ましい。5重量%未満の場合では,十分な耐衝撃性や柔軟性を有する発泡成形体が得られないおそれがある。一方20重量%を超える場合には使用量に見合う強度の向上が見られない上に,発泡成形体の表面が溶融するなど,成形性が著しく悪化するおそれがある。なお,更に好ましくは7〜15重量%である。
【0016】
次に,ゴム変性スチレン系樹脂中のジエン系重合体のゲル分は,25℃トルエン中での膨潤度が12〜25である。ゲル分の膨潤度が12未満の場合には,気泡膜中にゴム粒子が配向できないために気泡成形がうまく行われず,高い発泡倍率の発泡成形体としたときに収縮や変形が起きる恐れがある。一方,25を超える場合には,十分な耐衝撃性や柔軟性を有する発泡成形体が得られない。なお,好ましくは15〜20である。
【0017】
ジエン系重合体の上記ゲル分の膨潤度は,例えば,次のように求める。
ゴム変性スチレン系樹脂発泡成形体,約1gにメチルエチルケトン30mlを加え,25℃で24時間浸漬後,5時間振とうし,5℃,18,000rpmで1時間遠心分離する。上澄みをデカンテーションして除いた後,新たにトルエン30mlを加え,25℃で1時間振とうし,5℃,18,000rpmで2時間遠心分離する。
上澄み液を除き,重量を秤量する(25℃トルエン中で膨潤したゲルの重量)。その後,60℃,8時間,真空乾燥し,残留物の重量を秤量し(乾燥ゲルの重量),次式により,ゲル分の膨潤度を求める。
[膨潤度]=[25℃トルエン中で膨潤したゲルの重量]/[乾燥ゲルの重量]…(式1)
【0018】
次に,上記ジエン系重合体(100%)へのスチレン系樹脂のグラフト率は,70%〜135%である。グラフト率が70%未満の場合には,十分な耐衝撃性や柔軟性を有する発泡成形体が得られない。一方,135%を超える場合には,気泡膜中にゴム粒子が配向できないために気泡成形がうまく行われず,高い発泡倍率の発泡成形体としたときに収縮や変形が起きる恐れがある。なお,好ましくは,80%〜120%である。
【0019】
グラフト率は,例えば次式により求める。
[グラフト率]={[ゲル含有量,重量%]−[ジエン系重合体含有量,重量%]}×100/[ジエン系重合体含有量,重量%]…(式2)
ここで,ゲル含有量は,ゲルの膨潤度の測定に用いたサンプル重量に対するゲルの乾燥重量の割合である。ジエン系重合体含有量は,一塩化ヨウ素法で二重結合を定量して求める(新版 高分子分析ハンドブック 日本分析化学会・高分子分析研究懇談会編集 P.639参照)。
【0020】
次に,ゴム変性スチレン系樹脂中には,発泡成形体の柔軟性調整の目的で,フタル酸ジオクチル,アジピン酸ジオクチルなどのエステル類,またトルエン,キシレン,シクロヘキサンなどの炭化水素類,あるいは鉱油,流動パラフィン等が含有されていても良い。
【0021】
また,ゴム変性スチレン系樹脂には,タルク,クレイ,炭酸カルシウム,酸化チタン等の無機充填剤,またステアリン酸アルミニウム,ステアリン酸亜鉛,p−t−ブチル安息香酸アルミニウム,エチレンビスステアリルアミド等の滑剤,またトリス(ジブロモプロピル)ホスフェート,ペンタブロモジフェニルエーテル,テトラブロモブタン,ジブロモエチルベンゾール,1,2,5,6,9,10−ヘキサブロモシクロデカン等の難燃剤,あるいは酸化防止剤,帯電防止剤,紫外吸収剤,カーボンブラック等が含有されていても良い。
【0022】
次に,スチレン系樹脂の連続相中に分散しているジエン系重合体のゴム粒子の平均粒子径は,2μm〜10μmである。
ジエン系重合体ゴム粒子の粒子径が2μm未満の場合には,十分な耐衝撃性や柔軟性を有する発泡成形体を得られないおそれがある。一方,10μmを超える場合には,ゴム粒子が大きすぎて気泡成形がうまく行われず,発泡成形体としたときに収縮や変形が起きるおそれがある。なお,好ましくは3μm〜7μmである。
【0023】
ジエン系重合体ゴム粒子の粒子径は,例えば,DMF溶媒中に分散させたゴム粒子を(株)堀場製作所製のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置 LA−700を用いて測定し,得られた体積基準粒度分布から次式により求める。
[粒子径]=[ΣDi×Ni]/[ΣDi×Ni]
Ni=Pi/[Di×π/6]…(式3)
ここに,Di:i番目の粒子径,Pi:i番目の体積頻度,π:円周率である。
【0024】
次に,請求項の発明のように,上記ジエン系重合体中の1,4−シス構造の割合は,80%以上であることが好ましい。
1,4−シス構造の割合が80%未満であるジエン系重合体を用いた場合は,発泡成形体の柔軟性や耐衝撃性が不十分になるおそれがある。なお,さらに好ましくは90%以上である。
【0025】
また,請求項1の発明において,発泡成形体の気泡膜中における,アスペクト比が20以下であるジエン系重合体のゴム粒子の割合は,30%以下である。この場合には,高発泡倍率でも,一層耐衝撃性や柔軟性に優れ,外観も良好な発泡成形体を提供することができる。
アスペクト比が20%以下のジエン系重合体のゴム粒子の割合が30%を越えると高発泡倍率において,発泡成形体の耐衝撃性が低下する問題がある。
なお,アスペクト比が20以下のゴム粒子の割合の下限は,発泡成形体の耐衝撃性の点より,できるだけ少ない方が好ましく0%でも良い。
【0026】
次に,上記のゴム変性スチレン系樹脂の発泡成形体を製造する方法としては,例えば,押出機中でゴム変性スチレン系樹脂と揮発性発泡剤とを溶融混練し,押出機先端のダイの細孔より押出し,直ちに水中へ導入し急冷し,未発泡の状態で粒子化し,発泡性ゴム変性スチレン系樹脂組成物を製造する方法がある。
【0027】
また,他の製造方法としては,押出機中でゴム変性スチレン系樹脂を溶融混練し,押出機先端のダイの細孔より押出し,ストランドカット,ホットカット,水中カットなどの方法により0.5mg/ヶ〜5mg/ヶの大きさの粒子とし,得られたゴム変性スチレン系樹脂の樹脂粒子を密閉容器中,懸濁剤の存在下で水性媒体に分散させ,揮発性発泡剤を樹脂粒子に含浸させて,発泡性ゴム変性スチレン系樹脂組成物を製造する方法がある。
【0028】
なお,押出機中でゴム変性スチレン系樹脂を溶融混練する際に,スチレン系樹脂連続相の重量平均分子量(Mw)や重量平均分子量に対するZ平均分子量の比(Mz/Mw)を調整するため,あるいは,ジエン系重合体のゴム変性スチレン系樹脂中の含有量を調整するために,スチレン系樹脂を混合しても良い。
【0029】
発泡方法としては,例えば,ポリスチレンビーズ用の発泡機を用いて,スチームにより,ゴム変性スチレン系樹脂のガラス転移温度付近(約100℃)まで加熱し,発泡させ,ゴム変性スチレン系樹脂の発泡粒子とする。
得られたゴム変性スチレン系樹脂の発泡粒子は,例えば,ポリスチレン発泡成形体の製造に用いられる成形機を用いて成形することができる。すなわち,所望の形の金型内に発泡粒子を充填し,スチーム加熱により発泡粒子同士を融着させ,所定時間冷却後,金型より取り出して本発明のゴム変性スチレン系樹脂の発泡成形体とする。
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態例にかかるゴム変性スチレン系樹脂発泡成形体,及びその製造方法につき,その具体例を説明する。
実施例1〜5及び比較例1〜3
(ゴム変性スチレン系樹脂の製造方法)
本例で用いるゴム変性スチレン系樹脂は,以下に示す塊状重合により得たものである。
【0031】
スチレンモノマー100重量部に対して,ブタジエン重合体10重量部と,重合開始剤としてのターシャリーブチルパーオキシベンゾエート0.03重量部,溶媒としてのエチルベンゼン12重量部を混合溶解したものを,内容積30リットルの撹拌槽型反応器に,平均滞留時間が2.5時間になるように連続的に供給し,110〜130℃で重合を行った。
【0032】
続いて,得られた反応液を2基のプラグフロー型反応器へ連続的に供給し,それぞれ120〜130℃,150〜180℃で最終重合率が80〜90%になるまで重合反応を行った。その後,未反応スチレンモノマーおよび溶媒を加熱下で減圧脱気して取り除き,ペレット化して,目的とするゴム変性スチレン系樹脂を得た。
【0033】
なお,上記重合例を標準として,各反応器および脱気槽の温度条件を変化させることにより,グラフト率,ゲル膨潤度,ゴム粒径の異なるゴム変性スチレン系樹脂を得た。さらに,重合系に供給するブタジエン重合体の濃度を変化させることにより,得られるゴム変性スチレン系樹脂のジエン系重合体の含有量を調整した。これにより,表1,表2の実施例,比較例に示す,各種のゴム変性スチレン系樹脂を得た。
【0034】
(発泡剤の含浸および発泡成形)
次に,表1,表2に示すゴム変性スチレン系樹脂を,65mm単軸押出機で溶融後,水中カットにより約1.3mg/ヶの大きさの樹脂粒子とした。
次いで,撹拌装置付きの3リットル反応器に上記樹脂粒子100重量部,脱イオン水150重量部,懸濁剤としてのピロリン酸ナトリウム0.7重量部と,硫酸マグネシウム1.4重量部,樹脂粒子中の水分量を調整するため電解質としての硫酸ナトリウム3重量部,界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウム0.075重量部を投入し,反応器を密閉した。
【0035】
次いで,撹拌しつつ100℃まで加熱した後,揮発性発泡剤としてペンタン4重量部およびブタン8重量部を反応器に圧入し,100℃で5時間保持した。次いで30℃に冷却後,発泡剤の含浸された樹脂粒子を取り出し,水洗および脱水を行った。
【0036】
次いで,上下に目開き0.1mmの金網を取り付けた金属製の円筒形容器に樹脂粒子を入れ,毎分500リットルの流量で室温の乾燥窒素を円筒形容器下部より10分間吹き込み乾燥させた。
得られた発泡性ゴム変性スチレン系樹脂組成物の樹脂粒子100重量部当たり,帯電防止剤0.04重量部,ブロッキング防止剤0.06重量部を混合してコーティングした後,0℃で24時間保管した。
【0037】
次に,発泡性ポリスチレン用の撹拌機付きバッチ式発泡機で,約55倍に発泡させ,ゴム変性スチレン系樹脂の発泡粒子を得た。
この発泡粒子を,1日室温で放置後,ポリスチレン発泡成形用の成形機(ダイセン工業(株)製,VS−500)を用いて,ゴム変性スチレン系樹脂の発泡成形体を得た。
【0038】
上記のゴム変性スチレン系樹脂発泡成形体の評価方法は以下の通りである。
(ゴム変性スチレン系樹脂発泡体の評価)
1)スチレン系樹脂連続相の重量平均分子量
THFにゴム変性スチレン樹脂を溶解し,メンブランフィルターにて不溶分を除去した後,ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0039】
2)ゲル分の膨潤度
上記の測定方法及び(式1)により求めた。
3)グラフト率
上記の測定方法及び(式2)により求めた。
【0040】
4)ジエン系重合体ゴム粒子の粒子径
上記の測定方法及び(式3)により求めた。
5)発泡成形品の密度
発泡成形体の重量(kg)と,金型寸法から計算した発泡成形体の体積(m3)より,発泡成形体の密度(kg/m3)を求めた。
【0041】
6)表面外観
発泡成形体の表面外観を目視により,下記の基準にて評価した。
○;収縮,メルト,間隙がほとんどない。
△;収縮,メルト,間隙が見られる。
×;著しい収縮,メルト,間隙が見られる。
なお,ここで言うメルトとは,発泡成形体の表面が成形時の加熱により,溶融してしまった状態である。
【0042】
7)50%破壊高さ
得られた発泡成形体を縦200mm,横40mm,厚さ25mmの大きさに切断し試験片とし,重さ255gの鋼球を落下させ,JIS K 7211に準拠して,50%破壊高さ(cm)を求めた。これにより,耐衝撃強度を評価した。
【0043】
8)柔軟性
得られた発泡成形体を縦200mm,横30mm,厚さ20mmの大きさに切断し試験片とした。軸径が100mmから10mmまでの10本の金属製円筒軸を準備し,試験片の中央部を円筒軸に押し当て,等速度で,約5秒間で円筒軸に沿って試験片を折り曲げて試験を行う。
始めに軸径が100mmの円筒軸で試験を行い,試験片が割れなかったら,軸径が10mm小さい円筒軸に変えて同様の試験を行う。割れるまで軸径が10mmずつ小さい円筒軸に変えながら試験を繰り返す。試験片が割れたら,割れたときの1つ前の試験に使った円筒軸の軸径の値を記録する。試験片10個の平均値(mm)から柔軟性を評価した。従って,値が小さいほど柔軟性に優れる。
【0044】
以上の各実施例および比較例の結果を表1,表2に示す。
なお,実施例3及び比較例3は,ゴム変性スチレン系樹脂100重量部に対して,重量平均分子量330,000のスチレン樹脂20重量部を押出機中で溶融混練して用いた。実施例3及び比較例3の表中の値は全て,スチレン樹脂を混合した後の数値である。
【0045】
表1,表2から次のことが分かる。
本発明の条件を満たしているすべての実施例は,高発泡倍率(55倍,密度約18kg/m3)においても,成形品の表面外観,耐衝撃性(50%破壊高さ),柔軟性に優れた発泡成形体が得られることが分かる。
【0046】
一方,Mz/Mwが小さく,膨潤度の小さいゴム変性スチレン系樹脂を用いた場合(比較例1),グラフト率が高く,膨潤度の小さいゴム変性スチレン系樹脂を用いた場合(比較例2),グラフト率が高く,ゴム粒子径の小さいゴム変性スチレン系樹脂を用いた場合(比較例3)では,いずれも気泡膜中のゴム粒子のアスペクト比が20以下のゴム粒子の割合が30%を超え,耐衝撃性や柔軟性に劣ることが分かる。
【0047】
【表1】
Figure 0004101379
【0048】
【表2】
Figure 0004101379
【0049】
また,上記実施例1の発泡成形体における気泡膜断面につき,透過型電子顕微鏡写真(1万倍)を撮影し,図1に示した。また,同様に比較例1の発泡成形体についても撮影した(図2)。
両図において,斜方向の帯状物が気泡膜である。気泡膜中に黒く筋状に見えるのが,ゴム粒子である。図1のゴム粒子はよく伸びて,非常に細長くなっている(アスペクト比が大きい)。一方,図2のゴム粒子は図1のゴム粒子に比較し,伸びが小さく,厚みが大きい(アスペクト比が小さい)ことが分る。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば,高発泡倍率でも,耐衝撃性や柔軟性に優れ,外観も良好な発泡成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の発泡成形体における,気泡膜断面の,図面代用透過型電子顕微鏡写真(10000倍)である。
【図2】比較例1の発泡成形体における,気泡膜断面の,図面代用透過型電子顕微鏡写真(10000倍)である。

Claims (2)

  1. スチレン系樹脂の連続相中にジエン系重合体のゴム粒子が分散してなり,該ゴム粒子の平均粒子径が2μm〜10μmであるゴム変性スチレン系樹脂の発泡粒子を成形してなる発泡成形体であって,
    (1)連続相を形成するスチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)が180,000〜300,000であり,かつ重量平均分子量に対するZ平均分子量の比(Mz/Mw)が2〜4であり,
    (2)25℃トルエン中における上記ジエン系重合体のゲル分の膨潤度が12〜25であり,
    (3)ジエン系重合体へのスチレン系樹脂のグラフト率が70%〜135%であり,
    発泡成形体の気泡膜中におけるアスペクト比が20以下であるジエン系重合体のゴム粒子の割合が30%以下であることを特徴とするゴム変性スチレン系樹脂発泡成形体。
  2. 請求項1において,上記ジエン系重合体中の1,4−シス構造の割合は,80%以上であることを特徴とするゴム変性スチレン系樹脂発泡成形体。
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