JP4315355B2 - プロピレン系樹脂発泡粒子成型体 - Google Patents

プロピレン系樹脂発泡粒子成型体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は機械的強度に優れる低い発泡倍率のプロピレン系樹脂発泡粒子成型体に関する。
【0002】
【従来の技術】
プロピレン系樹脂発泡粒子を金型内で加熱成型して得られるプロピレン系樹脂発泡粒子成型体は、種々の分野で広く利用されている。特に近年、2〜8倍程度の比較的低発泡の発泡粒子成型体は、薄肉で高剛性及び高エネルギー吸収性能を要求される分野において需要が期待されている。例えば自動車ドアパネル、ピラー、インストルメントパネル等の表皮付き一体成型品の芯材、ジャッキや工具の収納ボックス等の用途に広く利用される可能性がある。
【0003】
従来より、比較的低い発泡倍率のプロピレン系樹脂粒子やその発泡粒子を用いて得た成型体は知られている。例えば特公昭59−43493号公報の実施例1には、見掛けの発泡倍率5倍(見掛け密度約0.18g/cm3)のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を金型内で成型して融着状態、外観が良好で収縮のない成型体を得たことが記載されている。また特公昭62−33253号公報の実施例2には、発泡倍率5倍のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を金型に充填して成型し、機械的強度の大きい成型体を得たことが記載されている。また、特開昭61−4738号公報には発泡成型用として用いられるポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法が記載され、同公報の表3の実験No.1には嵩倍率5倍(見掛け密度約0.270g/cm3)、実験No.5には嵩倍率3倍(見掛け密度約0.450g/cm3)、実験No.6には嵩倍率7倍(見掛け密度約0.193g/cm3)のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造した例がそれぞれ示されている。尚、嵩倍率とは、複数個の発泡粒子を空のメスシリンダーに入れた時にメスシリンダーの目盛りが示す体積で該発泡粒子の重量を割って求められる嵩密度(g/cm3)を求め、そして該発泡粒子の基材樹脂の密度(g/cm3)を、先に求めた発泡粒子の嵩密度で割って求められる値である。
【0004】
更に、特開平4−372630号公報の実施例5には、プロピレン系樹脂を用いて発泡倍率2.6cm3/g(見掛け密度約0.385g/cm3)の発泡粒子を得たことが記載されている。更にまた、特開平10−176077号公報の実施例番号1には平均発泡倍率3.6倍(見掛け密度約0.250g/cm3)のプロピレン系樹脂の低い発泡倍率の発泡粒子を得たことが記載されている。
【0005】
しかしながら、特公昭59−43493号公報、特公昭62−33253号公報、特開昭61−4738号公報等には、JIS K7221により求められる成型体の最大曲げ強さ(kgf/cm2)を、成型体の密度(g/cm3)で除した値(以下、単に“曲げ強度と密度との比”と呼ぶことがある。)が155(kgf/cm2)/(g/cm3)以上の成型体が得られたことは記載されていないとともに、これらの公報に記載されているような低い発泡倍率の発泡粒子を成型したものを、前記したような表皮付き一体成型品の芯材、ジャッキや工具の収納ボックス等として用いた場合の強度や外観は充分とは言い難かった。また特開平4−372630号の実施例5に記載されている発泡倍率2.6cm3/gの発泡粒子は、その後、更に発泡して発泡倍率13.56cm3/g(見掛け密度約0.074g/cm3)の発泡粒子としており、低い発泡倍率の発泡粒子成型体を得るものではない。更に、特開平10−176077号公報に記載されている平均発泡倍率1.5〜4.7倍の比較的低い発泡倍率の発泡粒子も、更に発泡させて見掛け密度0.025g/cm3の発泡粒子としてから成型しているから、特開平10−176077号に記載されている発泡粒子成型体も、本願発明が目的とする低い発泡倍率のプロピレン系樹脂発泡粒子成型体とは異なるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
樹脂粒子を容器内で分散媒に分散させて、この容器内に発泡剤を供給して樹脂粒子に発泡剤を含浸させた後、加熱保持した樹脂粒子を容器内から放出して発泡させる場合、容器内に供給する発泡剤の圧力が低い程(発泡剤の量が少ない程)、得られる発泡粒子の発泡倍率も低くなる。しかしながら、このようにして得た低い発泡倍率のプロピレン系樹脂発泡粒子は、発泡倍率が低いもの程、該発泡粒子を成型する際の発泡性、融着性が低下するという問題があり、この結果、成型体の外観低下をきたすとともに、低い発泡倍率の発泡体の有する剛性等の物性を充分引き出した、優れた発泡粒子成型体が得られなくなる。
【0007】
そこで本発明者等は、前記特公昭59−43493号公報、特公昭62−33253号公報、特開昭61−4738号公報等に記載されているような低い発泡倍率のプロピレン系樹脂発泡粒子から、本発明者等が目的としているような強度に優れた発泡粒子成型体が得られ難い理由を検討した。その結果、従来の低い発泡倍率のプロピレン系樹脂発泡粒子を得る場合は、ジクロロジフロロメタン等の揮発性発泡剤を用いており、そのような揮発性発泡剤を用いた場合、低い発泡倍率のプロピレン系樹脂発泡粒子を得ようとするほど、益々得られた発泡粒子群(発泡粒子の集合を、以下、発泡粒子群と呼ぶことがある。)中の、個々の発泡粒子の発泡倍率バラツキは大きくなり、特に見掛け密度が約0.16〜0.64g/cm3の発泡粒子を得ることを目的とした場合、得られた発泡粒子群内には実質的に発泡していない粒子も混在する等の問題が発生する。そしてこのような発泡粒子群の発泡粒子を成型に供した場合、成型時の二次発泡性や融着性が不充分となり、低い発泡倍率の発泡粒子を用いて成型しているにもかかわらず、剛性等の物性に優れた発泡粒子成型体が得られ難いという問題が発生する。そこで本発明者等は、個々の発泡粒子間の見掛け密度のバラツキが少ない発泡粒子群の発泡粒子を成型することを検討した。そして本発明者等は更に鋭意研究した結果、見掛け密度のバラツキが小さいとともに、発泡粒子断面の平均気泡数が特定の範囲にある発泡粒子群の発泡粒子を用いて得た、“曲げ強度と密度との比”が特定の値以上を有し、且つ断面の平均気泡数が特定の範囲にあるプロピレン系樹脂発泡粒子成型体が、上記課題を解決し得ることを見出し本発明を完成するに至った。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明のプロピレン系樹脂発泡粒子成型体は、プロピレン系樹脂発泡粒子を加熱成型して得られる発泡粒子成型体であって、該成型体の密度が0.11〜0.45g/cm、JIS K7221により求められる該成型体の最大曲げ強さ(kgf/cm2)を、該成型体の密度(g/cm)で除した値が155〜250(kgf/cm)/(g/cm )であり、成型体断面の平均気泡数が5〜100個/mmであり、該成型体の示差走査熱量測定によって得られるDSC曲線における高温側吸熱ピークの熱量が3〜20J/gであることを特徴とする。
【0009】
本発明の成型体は、JIS K7110により求められる成型体のアイゾット衝撃値が1(kgf・cm/cm2)以上であることが好ましい。
【0010】
本発明の成型体は、無機又は有機の気泡調整剤を0.002〜0.5重量%含むプロピレン系樹脂を基材樹脂とするものが好ましく、気泡調整剤としては、ホウ酸金属塩、リン酸−2,2−メチレンビス(4,6−tert−ブチルフェニル)ナトリウムの少なくとも一種が好ましい。更に成型体断面の平均気泡数が10〜70個/mm であることが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の発泡粒子成型体の製造に用いるプロピレン系樹脂発泡粒子の基材樹脂としては、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレンランダムコポリマー、エチレン−プロピレンブロックコポリマー、プロピレン−ブテンランダムコポリマー、エチレン−プロピレン−ブテンランダムターポリマー等のプロピレン系樹脂が挙げられる。プロピレン系コポリマー、ターポリマーとしては、プロピレン成分含有量70重量%以上のものが好ましい。上記プロピレン系樹脂は1種又は2種以上を混合して用いることができる。これらのうち、発泡倍率の制御が容易な、エチレン−プロピレンランダムコポリマー、プロピレン−ブテンランダムコポリマー、エチレン−プロピレン−ブテンランダムターポリマーが好ましい。
【0014】
上記発泡粒子の基材樹脂として、本発明の所期の目的を阻害しない範囲において、上記プロピレン系樹脂に他の重合体を混合して用いても良い。このような重合体としては、例えばポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−オクテンゴム、プロピレン−ブテンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体等が挙げられる。これらは2種以上をプロピレン系樹脂に混合して用いることもできる。
【0015】
本発明の成型体を得るための発泡粒子群としては、好ましくは見掛け密度が0.16〜0.64g/cmの範囲から選択される特定の平均密度のもので、発泡粒子群を構成する発泡粒子の見掛け密度のバラツキが小さく、粒子断面の平均気泡数が5〜100個/mmであって、見掛けの密度の標準偏差が0.07(g/cm)未満のものを用いるが、より好ましくは平均気泡数が10〜70個/mmのものを使用する。
【0016】
発泡粒子の見掛け密度が0.16g/cm未満の場合、該粒子から得られる成型体の剛性が不充分となる虞がある。また見掛け密度が0.64g/cmを超える場合、発泡粒子そして該発泡粒子から得られる成型体の平均気泡数を5〜100個/mmの範囲に制御し難くなる。また、見掛け密度のバラツキが大きくなると成型体の“曲げ強度と密度との比”が小さくなり、成型体ごとの密度バラツキ、一つの成型体の部分部分での密度バラツキが生じる虞や成型体の外観、物性において劣ったものとなる可能性がある。本発明の発泡粒子成型体は、JIS K7221により求められる該成型体の最大曲げ強さ(kgf/cm )を、該成型体の密度(g/cm )で除した値(“曲げ強度と密度との比”)が155〜250(kgf/cm )/(g/cm )であるが、収納ボックス等の用途においては“曲げ強度と密度との比”が、好ましくは180(kgf/cm)/(g/cm)以上であ。また成型体厚みの薄い発泡粒子成型体等は、特に“曲げ強度と密度との比”が200(kgf/cm)/(g/cm)以上のものが好ましく、見掛け密度の標準偏差が0.07(g/cm)未満となるような見掛け密度のバラツキの少ない発泡粒子を成型に用いる場合、得られる発泡粒子成型体の“曲げ強度と密度との比”が200(kgf/cm)/(g/cm)以上とすることができる。
【0017】
本発明において用いる発泡粒子を製造するための樹脂粒子は、押出機内で溶融した樹脂を、押出機内からストランド状に押出し、このストランドをカットして得ることができる(押出ストランドカット方式と呼ぶ。)。樹脂粒子の重量は、0.1〜40mg程度とすれば良いが、樹脂粒子を発泡させて得た発泡粒子を成型する際に、発泡粒子の金型への充填性を考慮すると、上記樹脂粒子の重量を0.1〜6mgとすることが好ましい。樹脂粒子を上記の方法で製造する場合、粒子の重量バラツキをできるだけ無くすことが望まれる。
【0018】
また、本発明において用いる発泡粒子の平均気泡径は100〜230μm、更に130〜200μmのものが好ましい。発泡粒子を2分割した断面における気泡構造は、均一な気泡径の気泡が分布している構造か、または粒子表面から50〜250μmまでの範囲内において平均気泡径が15〜130μmの微細気泡からなる表層部が存在し、該表層部より内層部側では平均気泡径150〜400μmの気泡が存在する構造のものが好ましい。上記のような気泡構造の発泡粒子は、型内で発泡粒子を加熱成型する際に発泡粒子の発泡能力、融着能力が高く、特に上記したような内層部側に比べて表層部付近の気泡が微細な気泡構造を有する発泡粒子は、成型時の融着能力が更に高い。
【0019】
発泡粒子の平均気泡径を求めるには、発泡粒子を2分割した断面において、断面の中心を通り、且つ、発泡粒子の前記断面を横断する直線を引き、この直線上にある気泡数を数える。そして、直線の長さを当該直線上の気泡数にて除することにより求められる値を平均気泡径とする。なお、表層部及びその内層部側の平均気泡径は、上記の通り直線を引き、表層部又は表層部より内層部側に対応するそれぞれの直線の長さ及び気泡数を測定し、それらの直線の長さを当該直線上の気泡数にて除することにより求められる。
【0020】
発泡に用いる樹脂粒子の重量のバラツキは、この樹脂粒子から得られる発泡粒子の見掛け密度のバラツキの原因となる。従って、発泡粒子の見掛け密度のバラツキを小さくするための一つの条件として、発泡に用いる樹脂粒子として重量のバラツキの小さいものを選択することが挙げられる。樹脂粒子の重量バラツキを小さくするには、押出ストランドカット方式によって樹脂粒子を造粒する際、ダイスの各樹脂押出孔に溶融樹脂が均一に流れるようなダイスを選択して、ダイス圧力が一定となるように押出条件をコントロールし、ダイスより押出された各ストランドを均一なテンション及びスピードで引き取り、充分冷却した後、カットする等の方法を採用して樹脂粒子を得れば良い。この際、ストランドの切断不良等が原因で生じた不良樹脂粒子は、発泡に供する前に篩分け等を行って除去しておくことが好ましい。また得られる発泡粒子の形状ができるだけ球形に近い形状となるようなダイス設計、押出条件及び引取条件にして樹脂粒子を得ることが好ましい。また見掛け密度のバラツキの大きな発泡粒子群に、篩分け等の処理を施して見掛け密度のバラツキの小さな発泡粒子群を得ても良い。しかしながら篩分けを行って、見掛け密度のバラツキが小さい発泡粒子群を得ても、この発泡粒子群の発泡粒子が、粒子断面の平均気泡数が5〜100個/mm2でないと成型体において所期の効果は得られない。
【0021】
発泡に用いる樹脂粒子中には、通常の発泡用樹脂粒子中に添加されていると同様の酸化防止剤、帯電防止剤、導電性付与剤、耐候性付与剤、顔料、滑剤等の各種添加剤を添加することができる。これらの添加剤は、例えば押出ストランドカット方式によって樹脂粒子を造粒する場合、押出機内で溶融した樹脂に添加して混練することによって樹脂粒子中に含有せしめれば良い。
【0022】
本発明の成型体を得るために用いる、見掛け密度のバラツキが小さく特定の気泡数を有するプロピレン系樹脂発泡粒子は、例えば上記のようにして造粒した重量バラツキの小さな樹脂粒子を用い、この樹脂粒子を密閉容器(以下、オートクレーブとも言う)内で水等の分散媒に分散させ、発泡剤の存在下で加熱攪拌しながら樹脂粒子中に発泡剤を含浸させた後、樹脂粒子の軟化温度以上で樹脂粒子と分散媒とを容器内より低圧下に放出して発泡させる等の方法によって得ることができる。
【0023】
樹脂粒子を発泡させるために用いる発泡剤の種類、添加量は、得られる発泡粒子の密度、密度のバラツキに影響する。発泡剤として発泡力の高い揮発性発泡剤や揮発性発泡剤を主体とする発泡剤を使用した場合、発泡剤量を減らしても密度バラツキ、気泡径バラツキのある発泡粒子しか得られず、このような発泡粒子からは良好な成型体は得られない。よって、見掛け密度が約0.16〜0.64g/cm3の範囲から選択される特定の平均密度のもので(発泡粒子の加熱成型時に発泡粒子を圧縮する場合は、発泡粒子群の見掛け密度の平均は0.16g/cm3を下回るものであってもかまわない。)、発泡粒子各々の見掛け密度のバラツキの小さな発泡粒子群を得るには、無機ガス又は無機ガスと水等の混合物のごとき無機ガス系発泡剤を用いる。無機ガスとしては、空気、窒素、二酸化炭素、アルゴン、水素、ヘリウム等が挙げられるが、発泡粒子の密度の安定性、環境負荷、コスト等を考慮すると、空気や窒素が好ましい。また、発泡剤として使用される水は、例えば樹脂粒子を発泡させる際に、樹脂粒子を分散させるための分散媒として使用される水を利用すればよく、更に積極的に水を発泡剤として利用するために吸水性樹脂等を含む樹脂粒子を使用することもできる。
【0024】
尚、無機ガス系発泡剤は、容器内空間部分の圧力が、1〜30kgf/cm2(G)、更に好ましくは3〜15kgf/cm2(G)となるように容器内に供給することが好ましい。無機ガス系発泡剤は容器内、例えば樹脂粒子を水に分散させた密閉容器内に供給した後、攪拌しながら加熱下に保持することで樹脂粒子中に含浸させることができるが、発泡粒子の密度のバラツキを防止するためには、樹脂粒子の発泡工程において樹脂粒子を容器内から放出する間、容器内温度や容器内圧力等を、樹脂粒子の放出開始時と同じに保持することが好ましい。
【0025】
発泡粒子の気泡径のバラツキを小さくするためには、樹脂粒子中に気泡調整剤を添加することも有効な手段である。気泡調整剤としては有機系のもの、無機系のもののいずれも使用することができる。無機系気泡調整剤としては、ホウ酸亜鉛、ホウ酸マグネシウム、硼砂等のホウ酸金属塩、塩化ナトリウム、水酸化アルミニウム、タルク、ゼオライト、シリカ、その他80℃の水100gに対し0.1g以上の水溶性を示す無機物等が挙げられる。また有機系気泡調整剤としては、リン酸−2,2−メチレンビス(4,6−tert−ブチルフェニル)ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸アルミニウム、ステアリン酸ナトリウム等が挙げられる。これらの気泡調整剤は2種以上を混合して用いることができる。
【0026】
上記ホウ酸亜鉛としては、メタホウ酸亜鉛[Zn(BO22 ]、塩基性ホウ酸亜鉛[ZnB47 ・2ZnO]等や、2ZnO・3B23 ・3.5H2 O、3ZnO・2B23 ・5H2 O等の化学式で表されるものが挙げられる。
またホウ酸マグネシウムとしては、オルトホウ酸マグネシウム〔Mg3 (BO32 〕、二ホウ酸マグネシウム、ピロホウ酸マグネシウム〔Mg225 又は2MgO・B23 〕、メタホウ酸マグネシウム〔MgO・B23 〕、四ホウ酸三マグネシウム〔Mg349 又は3MgO・2B23 〕、四ホウ酸五マグネシウム〔Mg5411〕、六ホウ酸マグネシウム〔MgB610〕等、或いは2MgO・3B23 ・nH2 O(ここで、nは正の整数)、MgO・4B23 ・3H2 O、MgO・6B23 ・18H2 O等の化学式で表されるものが挙げられる。
【0027】
その他の発泡粒子の気泡径調整法としては、発泡性の樹脂粒子を密閉容器から放出する際の放出バルブ構造を工夫する方法等がある。
【0028】
上記気泡調整剤のうち、ホウ酸金属塩、特にホウ酸亜鉛や、リン酸−2,2−メチレンビス(4,6−tert−ブチルフェニル)ナトリウムが好ましい。
本発明の成型体を得るために使用される発泡粒子において、気泡の粗大化やバラツキを防止する上で、気泡調整剤の添加量は重要な要因となる。本発明において、気泡調整剤は0.002〜0.5重量%の範囲で添加することが好ましい。
上記気泡調整剤は、前記した押出ストランドカット方式によって樹脂粒子を造粒する際に、押出機内で溶融した樹脂中に他の添加剤とともに添加しておけば良い。尚、気泡調整剤や前記した各種添加剤を樹脂粒子中に添加するに際し、これらの添加剤が均一に分散されるようにするため、これらの添加剤を高濃度で添加したマスターバッチを造り、このマスターバッチを押出機内で樹脂粒子の基材樹脂とともに溶融混練するマスターバッチ法を採用することが好ましい。
【0029】
樹脂粒子を発泡させる際に、樹脂粒子を密閉容器内で分散媒に分散させるに当たり、加熱によって樹脂粒子相互が融着するのを防止するために、融着防止剤を分散媒中に添加することができる。融着防止剤としては、分散媒に溶解せず、加熱により溶融しないものであれば有機物質、無機物質を問わずいずれも使用できるが、一般的には無機系の融着防止剤が使用される。無機系の融着防止剤としては、マイカ、カオリン、タルク、リン酸三カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化アルミニウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム等が挙げられる。融着防止剤は、分散媒に分散させる樹脂粒子100重量部当たりに対して、0.1〜2重量部の割合で分散媒中に添加することが好ましい。
【0030】
上記融着防止剤を使用した場合、分散助剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤や、硫酸、塩酸、硝酸等の強酸や、硫酸アルミニウム、塩化マグネシウム、硫酸カルシウム等の強酸塩又は強酸塩水和物を分散媒に添加することが好ましい。分散助剤は樹脂粒子100重量部当たり、0.0001〜0.2重量部程度の量を分散媒に添加することが好ましい。
【0031】
尚、融着防止剤が得られた発泡粒子の表面に付着していると、発泡粒子を成型する際に発泡粒子相互の融着性が阻害されるため、融着防止剤としてタルク、マイカ、カオリン等の珪酸塩鉱物を用いた場合、融着防止剤の付着量を発泡粒子100g当たり0.2g未満、好ましくは0.1g未満、より好ましくは0.05g未満に調整する。
【0032】
融着防止剤及び分散助剤の好ましい組み合わせは、融着防止剤が珪酸塩鉱物であり、分散助剤が強酸塩又は強酸塩水和物とアニオン系界面活性剤との混合物である場合である。この場合、珪酸塩鉱物と強酸塩又は強酸塩水和物との比は、重量比で50:1〜15:1とすることが好ましい。この組合せにより発泡粒子表面への融着防止剤付着量を低減させることができ、酸性溶液、アルカリ性溶液、温水、界面活性剤水溶液等で洗浄する等の、発泡粒子表面に附着した融着防止剤を除去するための工程を省略することができる。
【0033】
上記の如くして得た発泡粒子は、該粒子の示差走査熱量測定によって得られるDSC曲線における高温側吸熱ピークの熱量が3〜20J/gであることが好ましい。発泡粒子を得る工程において、昇温速度の調整又は発泡前の保持時間、保持温度の調整により、高温側吸熱ピークの熱量が3〜20J/gの範囲にある発泡粒子を得ることができる。発泡粒子の高温側吸熱ピークの熱量を調整することにより、発泡粒子を金型で成型する際の発泡性、融着性等の程度を調整することができる。このことより発泡粒子断面の平均気泡数を調整した低い発泡倍率の発泡粒子の発泡性、融着性を更に向上させることができ、発泡粒子相互の融着性及び外観の特に優れた低い発泡倍率の発泡粒子成型体を得ることができる。
【0034】
上記のようにして得た発泡粒子は、大気圧下で熟成した後、金型等の型内に充填して水蒸気等で加熱成型することにより、発泡粒子成型体を得ることができるが、必要に応じて発泡粒子を型内に充填する前に、発泡粒子を加圧処理して粒子内の圧力を高める操作を行う。加圧処理は、通常、加圧用タンク内で発泡粒子を空気によって加圧することにより行う。しかしながら、前記したDSC曲線における高温側吸熱ピークの熱量が3〜15J/gである発泡粒子は、上記加圧処理を施さずに成型しても優れた物性を有する本発明の発泡粒子成型体を得ることができる。特に見掛け密度が0.16g/cm3、好ましくは0.24g/cm3以上の発泡粒子が加圧処理せずに成型可能であるためには、上記高温側吸熱ピークの熱量が3〜13J/gであることが好ましく、更に好ましくは3〜11J/gであることである。尚、発泡粒子を加熱成型手段より成型し成型体を得るに当たり、高温側吸熱ピークの熱量はほとんど変化しない。従って、高温側吸熱ピークの熱量が3〜20J/gの発泡粒子から得られる発泡粒子成型体も、高温側吸熱ピークの熱量は3〜20J/gとなる。
【0035】
尚、発泡粒子や発泡粒子成型体の高温側吸熱ピークの熱量は、発泡粒子又は発泡粒子成型体のサンプル1〜8mgを、示差走査熱量計によって10℃/min.の昇温速度で220℃まで昇温して得た、図1に示すDSC曲線における高温側吸熱ピークbの面積に相当し、次のようにして求めることができる。まず図1に示すようにDSC曲線上の80℃の点Iと、DSC曲線上の該樹脂の融解終了温度を示す点IIとを結ぶ直線を引く。次に基材樹脂の融解時の吸熱に相当する固有吸熱ピークaと、高温側吸熱ピークbとの間の谷部にあたるDSC曲線上の点IIIを通り、グラフ横軸(温度軸)に対して垂直な直線を、点Iと点IIとを結んだ前記直線へ引き、その交点を点IVとする。このようにして求めた点IVと点IIとを結ぶ直線、点IIIと点IVとを結ぶ直線、及び点IIIと点IIの間のDSC曲線とによって囲まれる部分(斜線部分)の面積が高温側吸熱ピークの熱量に相当する。
【0036】
発泡粒子を金型を用いて成型する場合、発泡粒子を金型に充填する方法として、金型に僅かな隙間を設けた状態で発泡粒子を充填した後、金型を完全に閉じる、いわゆるクラッキング充填法が知られている。しかしながら、低い発泡倍率の発泡粒子を金型に充填する際に、通常のクラッキング充填法を採用すると、発泡粒子の圧縮剛性により金型の寿命が短くなる虞れがある。このため、発泡粒子を金型内で成型する場合は、隙間を設けた金型内に発泡粒子を充填した後、スチームを供給して排気処理を行ってから型締めを行うようにすることが好ましい。
【0037】
尚、本発明の発泡粒子成型体は、凸型と凹型とを組み合わせた金型や、特開平9−104026号公報に示されているようなコンベア型を利用した連続成形装置を使用する等、公知の加熱成型手段を使用して発泡粒子を成型することにより得ることができる。
【0038】
このようにして得られる本発明のプロピレン系樹脂発泡粒子成型体は、密度が0.11〜0.45g/cm 、好ましくは0.125〜0.3g/cm、更に好ましくは0.15〜0.3g/cm、JIS K7221により求められる成型体の最大曲げ強さ(kgf/cm)を、成型体の密度(g/cm)で除した値(“曲げ強度と密度との比”)が155〜250(kgf/cm)/(g/cm )であり、発泡成型体断面の平均気泡数が5〜100個/mm、好ましくは該平均気泡数が10〜70個/mmであるという性状を有する。
【0039】
また、JIS K7110により求められる成型体のアイゾット衝撃値が1(kgf・cm/cm2)以上である耐衝撃性に優れたものが特に好ましい。
上記成型体の“曲げ強度と密度との比”が155(kgf/cm2)/(g/cm3)以上を有していないと、成型体の強度が充分とは言えず、特に薄肉成型体としての利用は困難となる。本発明において“曲げ強度と密度との比”は180(kgf/cm2)/(g/cm3)以上であることがより好まく、特に“曲げ強度と密度との比”が200(kgf/cm2)/(g/cm3)以上であることが好ましい。本発明の成型体において、“曲げ強度と密度との比”が155(kgf/cm2)/(g/cm3)以上であることが成型体を構成する発泡粒子相互の融着性が良好であることの目安となり、低い発泡倍率の成型体の剛性等の物性面で従来のものよりも優れているものといえる。
【0040】
発泡粒子成形体断面の平均気泡数が5個/mm2未満であると、曲げ強さ等の物性に劣った成型体となる。このことは発泡粒子成型時の発泡粒子の発泡不良や融着不良が原因と考えられる。また、成型体断面の平均気泡数が100個/mm2を超える場合には、寸法安定性に劣った成型体となる。このことは発泡粒子の発泡性が高過ぎることと、発泡粒子の気泡を形成している気泡膜の厚みが薄いことによる発泡粒子の構造上の強度不足が原因と考えられる。
【0041】
また、アイゾット衝撃値と成型体表面の外観の良否、発泡粒子の融着性の良否とは相関する。アイゾット衝撃値が1(kgf・cm/cm2)以上、更に好ましくは1.2(kgf・cm/cm2)以上という高い衝撃強度を有する発泡粒子成型体は、成型体表面の凹凸が少なく外観が良好であり、発泡粒子相互の融着性も良好である。
【0042】
また、本発明の成型体は圧縮強度で表される剛性も優れ、5%及び10%歪時の圧縮強度測定試験において亀裂が発生しない良好なものである。好ましくは5%歪時の圧縮強度は8kgf/cm2以上、より好ましくは15kgf/cm2以上、更に好ましくは20kgf/cm2以上であり、10%歪時の圧縮強度は10kgf/cm2以上、より好ましくは20kgf/cm2以上、更に好ましくは25kgf/cm2以上のものである。
【0043】
以下、本明細書における発泡粒子及びその成型体の諸物性の測定方法について述べる。
【0044】
成型体の最大曲げ強さは、JIS K7221に準拠して測定される値である。尚、最大曲げ強さの測定サンプルは、発泡成型体の表面(スキン層)を有さない、幅25mm、高さ20mm、長さ120mm以上のものとする。また曲げ強さと密度との比を求める際の密度としては、最大曲げ強さを求めようとする成型体サンプルの密度を用いる。更に、この“曲げ強度と密度との比”の値は、10個のサンプルについて測定を行い、その算術平均値を採用することとする。
【0045】
また、発泡粒子の見掛け密度は、発泡粒子群から約5000個の発泡粒子をサンプリングし、温度23℃、相対湿度50%の条件下で24時間放置した後、このサンプルの重量:W(g)を測定し、次いでサンプルをメスシリンダー内の23℃のエタノール中に沈め、エタノールの水位上昇分よりサンプルの真の体積:L(cm3 )を測定し、下記(1)式より求める。
【0046】
【数1】
サンプルの発泡粒子群の見掛け密度(g/cm3)=W÷L (1)
【0047】
発泡粒子成型体の密度は、体積50cm3以上の発泡成型体サンプルを、温度23℃、相対湿度50%の条件下で24時間放置した後、成型体サンプルの外形寸法より算出される体積(cm3)で、その発泡成型体サンプルの重量(g)を割ることにより求めることができる。
【0048】
発泡粒子の見掛け密度の標準偏差を求めるには、まず温度23℃、相対湿度50%の条件下で24時間放置した発泡粒子群をJIS Z8801(1994)の付表2に規定される篩により篩い分けし、各篩上の発泡粒子群の見掛け密度(g/cm3)をそれぞれ測定する。一方、各篩上の発泡粒子数を数え、各篩上の発泡粒子群の見掛け密度と、各篩上の発泡粒子数から、発泡粒子の見掛け密度の標準偏差を求める。
【0049】
一方、発泡粒子断面の平均気泡数は、走査型電子顕微鏡を用いて測定する。即ち、温度23℃、相対湿度50%の条件下で24時間放置した発泡粒子群から任意にサンプリングした10個以上の発泡粒子のそれぞれを2分割するように鋭利な刃物で切断し、そして金蒸着の前処理を行った試料の切断面全体を走査型電子顕微鏡で拡大撮影して、断面の中心部付近の縦1mmに相当する長さ、横1mmに相当する長さの正方形により囲まれる範囲内の気泡数をカウントすることにより、1mm2当たりの気泡数を求め、各サンプルについて求められる値の算術平均値をもって平均気泡数とする。尚、縦1mm×横1mmの正方形で囲まれる範囲の上辺及び右辺に横断される気泡はカウントしないこととする。また発泡粒子成型体の断面の平均気泡数は、温度23℃、相対湿度50%の条件下で24時間放置した成型体の断面の10カ所以上から縦5mm×横5mmのサンプルを切り出し、サンプル断面を構成している任意の発泡粒子断面の中心部付近の気泡数をカウントする以外は発泡粒子断面の平均気泡数の測定方法と同様の方法にて測定する。本発明において、上記のようにして測定したサンプルの平均気泡数が5〜100個/mm2であれば良く、発泡粒子成型体断面の一部の気泡や、発泡粒子群全体の数%の発泡粒子の気泡数が、5〜100個/mm2の範囲外のものであってもかまわない。
【0050】
発泡粒子成型体のアイゾット衝撃値(kg・cm/cm2)は試験片の寸法を長さ80mm、厚さ10mm、幅10mmとする(試験片には切り欠き部を設けない)。試験片をプロピレン系樹脂発泡粒子成型体から切り出す場合には、長さ80mm、幅10mmの面と成型体の表面とが一致するように、成型体表面を有する試験片を切り出すようにする。この試験片を使用してJIS K7110により、23℃、相対湿度50%の条件下でひょう量11J、衝撃速度3.5m/Sec.、ハンマーの質量0.784kg、ハンマーの回転軸中心線から重心までの距離6.85cm、ひょう量に対応するハンマーの持ち上げ角度150°、ハンマーの回転軸中心線から衝撃刃の刃縁までの距離30.7cmの基本性能を有する試験機を使用し試験片の成型体表面を有する面側にハンマで衝撃を加えることにより測定される。
【0051】
発泡粒子成型体の10%歪時の圧縮強さ(kgf/cm2)と5%歪時の圧縮強さ(kgf/cm2)の測定には、成型体表面を有さない長さ50mm、幅50mm、高さ25mmの試験片を、プロピレン系樹脂発泡粒子成型体から切り出すことにより作成する。この試験片を使用してJIS K7220により、23℃、相対湿度50%、圧縮速度10mm/min.の条件下で、試験片を高さ方向に圧縮することにより得られる値をもとに圧縮強さ(kgf/cm2)を算出する。
【0052】
【実施例】
次に、具体的実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
実施例1〜、比較例1、2
酸化防止剤0.12重量%、ステアリン酸カルシウム(滑剤)0.05重量%及びエルカ酸アミド(滑剤)0.05重量%、耐候性付与剤0.2重量%を含むエチレン−プロピレンランダムコポリマー(エチレン成分含有量2.4重量%、融点146℃、MI=10g/10分)に、表1に示す気泡調整剤を添加して押出機内で溶融混練した後、押出機先端に取付けられたダイスからストランド状に押出し、発泡粒子の直径と長さの比が略1.0になるようにストランドを切断して、表1に示す平均重量の樹脂粒子を得た。尚、気泡調整剤の添加量は、表1に示す量となるようにマスターバッチにて添加した。
【0053】
【表1】
Figure 0004315355
【0054】
次いで400リットルのオートクレーブに、上記樹脂粒子100重量部、水500重量部、リン酸三カルシウム1重量部、界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)0.08重量部を仕込み、攪拌しながら表1に示す発泡温度よりも5℃低い温度で15分間保持した。この間に、オートクレーブ内に窒素ガスを供給して、容器内圧力が表1に示す発泡時の目標容器内圧力よりも1kgf/cm2(G)低い圧力となるように調整した。次いで、発泡温度まで昇温して同温度で15分間保持し、この間に、容器内圧力が表1に示す発泡時の目標容器内圧力に達するように更に窒素ガスを容器内に供給した。この後、オートクレーブの一端を開放し、直径16mmφ、長さ50mmのオリフィスを経て大気圧下に放出し(実施例6及び実施例のみこのオリフィスを使用せず、ニードルバルブから直接放出した。)、発泡粒子を得た。尚、樹脂粒子をオートクレーブから放出する間の容器内圧力が、発泡時の目標容器内圧力に保たれるように、オートクレーブ内に窒素ガスを供給しながら発泡を行った
【0055】
得られた発泡粒子は、表面に付着している水を取り除いて24時間大気圧下に放置して養生した後、0.1N塩酸水溶液にて充分洗浄し、乾燥させた。この発泡粒子群の発泡粒子の見掛け密度、見掛け密度の標準偏差、平均気泡数を測定した。結果を表1に示した。次いで、この発泡粒子に加圧処理を施さずに(実施例4のみ、加圧処理して2.0kgf/cm2の内圧を付与した。尚、実施例4における加圧処理は、内部圧力2.0kgf/cm2(G)、内部温度30℃の加圧用タンク内で発泡粒子を12時間保持することにより行った。)、250mm×200mm×50mmの成型空間を持つ金型内に、金型を完全に閉鎖せずに僅かな隙間を開けた状態で発泡粒子を充填し、次いでスチームで金型内の排気を行った後、型締めし、表2に示す圧力の蒸気によって成型した。成型後、金型内の成型体の発泡圧(成型体が金型面を押す圧力)が0.6kgf/cm2(G)となるまで水冷した後、成型体を型から取り出し、60℃で24時間養生した後、室温まで冷却し、この成型体の諸物性を測定した。結果を表2にあわせて示した。
【0056】
【表2】
Figure 0004315355
【0057】
実施例
発泡粒子の直径と長さの比が略2.0あり、気泡調整剤の添加量、平均重量が表1に示す値である以外は実施例1で用いたと同様の樹脂粒子100重量部、水220重量部、融着防止剤としてカオリン0.5重量部、分散助剤として硫酸アルミニウム水和物0.015重量部及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.007重量部をオートクレーブに仕込み、表1に示す発泡温度、目標容器内圧力とした以外は実施例1と同様にして発泡粒子を得た。得られた発泡粒子を酸洗浄せずに使用して表2に示す成型条件とした以外は実施例1と同様にして発泡粒子成型体を得た。尚、実施例において得た発泡粒子は、該発泡粒子を2分割する断面において、表面から100μmの範囲の表層部では、それぞれ平均気泡径が20μm、15μmであり、該表層部より内層部側では、それぞれ平均気泡径が250μm、200μmであった。成型体の諸物性を測定した結果を表2にあわせて示した。
【0058】
上記実施例1〜において得られた発泡粒子成型体は、密度バラツキもなく、曲げ強度等の機械的強度に優れた良好なものであった。尚、表2に示す発泡粒子成型体の性状は、以下のようにして評価した。
【0059】
▲1▼発泡粒子成型体の外観
成型体外観を目視して観察して、以下の基準で評価した。
○・・・成型体表面の発泡粒子間の隙間がなく、表面が平滑である。
△・・・成型体表面の発泡粒子間の隙間が多少存在するが、表面は平滑である。
×・・・成型体表面の発泡粒子間の隙間による表面凹凸が存在する。
【0060】
▲2▼最大曲げ強さ/密度の値
150mm×20mm×25mmのサンプルを成型品から切り出し、JISK7221に従って、試験速度10mm/min.、支点間距離100mm、r=5mmのくさびを使用して最大曲げ強さを求め、その値をサンプルの見掛け密度で除して求めた。
【0061】
▲3▼成型体の密度
50mm×50mm×25mmのサンプルを切り出し、温度23℃、相対湿度50%の条件下で24時間放置したサンプルについて、サンプルの外形寸法をノギスを使用して測定し、体積(cm3)を算出した。また該サンプルの重量(g)をサンプル体積(cm3)で割ることにより成型体の密度を算出した。
【0062】
実施例10
発泡粒子を得る際の分散助剤を硫酸アルミニウム水和物0.015重量部に代えて、塩化マグネシウム水和物0.023重量部とした以外は実施例と同様にして発泡粒子成型体を得た。得られた発泡粒子及びその成型体は実施例で得られたものとほぼ同等の物性を有していた。
【0063】
実施例11
発泡粒子を得る際の分散助剤を硫酸アルミニウム水和物0.015重量部に代えて、塩化アルミニウム水和物0.011重量部とした以外は実施例と同様にして発泡粒子成型体を得た。得られた発泡粒子及びその成型体は実施例で得られたものとほぼ同等の物性を有していた。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のプロピレン系樹脂発泡粒子成型体は、従来の低発泡倍率のプロピレン系樹脂発泡粒子成型体の有する外観低下の問題や、低倍率化にともなう剛性向上効果が十分得られない等の問題を解消し得たものであり、外観及び剛性等の物性に優れた成型体である。
【図面の簡単な説明】
【図1】発泡粒子又は発泡粒子成型体の高温側吸熱ピークの熱量の測定法を示す説明図である。

Claims (5)

  1. プロピレン系樹脂発泡粒子を加熱成型して得られるプロピレン系樹脂発泡粒子成型体であって、該成型体の密度が0.11〜0.45g/cm、JIS K7221により求められる該成型体の最大曲げ強さ(kgf/cm2)を、該成型体の密度(g/cm)で除した値が155〜250(kgf/cm)/(g/cm )であり、成型体断面の平均気泡数が5〜100個/mmであり、該成型体の示差走査熱量測定によって得られるDSC曲線における高温側吸熱ピークの熱量が3〜20J/gであることを特徴とするプロピレン系樹脂発泡粒子成型体。
  2. JIS K7110により求められる成型体のアイゾット衝撃値が1(kgf・cm/cm)以上である請求項1記載のプロピレン系樹脂発泡粒子成型体。
  3. 無機又は有機の気泡調整剤を0.002〜0.5重量%含むプロピレン系樹脂を基材樹脂とする請求項1又は2記載のプロピレン系樹脂発泡粒子成型体。
  4. 気泡調整剤が、ホウ酸金属塩、リン酸−2,2−メチレンビス(4,6−tert−ブチルフェニル)ナトリウムの少なくとも一種である請求項3記載のプロピレン系樹脂発泡粒子成型体。
  5. 成型体断面の平均気泡数が10〜70個/mm である請求項1〜4のいずれかに記載のプロピレン系樹脂発泡粒子成型体。
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