JP2005325179A - ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法 - Google Patents

ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、高剛性のポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする発泡粒子を用いて短い成形サイクルで成形でき、得られるEPP成形体に膨れやひけを発生させることがない発泡粒子成形体の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
引張弾性率が1200MPa以上且つ融点が158℃以上のポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする発泡粒子を、金型の成形空間部に充填し、加熱により該発泡粒子相互を融着せしめ、冷却した成形体を金型から取り出して発泡粒子成形体を得る製造方法であって、成形体内部の温度が80℃〜(基材樹脂の結晶化温度−5℃)の範囲内で冷却した成形体を金型から取り出すことを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法に関し、高剛性のポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする発泡粒子を用いて発泡粒子成形体を製造する方法に関する。
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体(以下、「EPP成形体」ともいう)は、プロピレンの持つ優れた機械強度、耐熱性、耐薬品性、易リサイクル性等の特性を損なうことなく、さらに、緩衝性、断熱性等の発泡体特有の特性を有することから、包装材料、建築材料等の幅広い産業分野で利用されている。
特に、ポリプロピレン系樹脂より発泡粒子を作製し、これを開閉可能な金型内に充填してスチームにより加熱融着せしめた、いわゆるビーズ法型内発泡成形体は、その優れた緩衝特性から、自動車バンパー芯材、ドアパッド等の自動車分野に使用されている。そして、近年この自動車分野については、衝突安全基準の厳格化や、燃費向上の観点から、より軽量且つ高剛性のEPP成形体が求められている。
かかる高剛性のEPP成形体を得るには、高剛性のポリプロピレン系樹脂からなる発泡粒子を用いて金型内で加熱成形しなければならない。ところが、一般的に、ポリプロピレン系樹脂の剛性が高くなると同時に融点も高くなることが知られている。従って、高剛性の発泡粒子を成形するには、高温のスチームを必要とするので、高いスチーム圧力に対応可能な特殊な成形機が必要となり、消費するスチーム量も増大する。このような状況下、低温のスチームで成形可能な高剛性のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の開発が期待されてきた。
本出願人は、かかる期待に応えて、低温のスチームで加熱融着可能な発泡粒子を提供することを可能とし、更にその製造方法、及び該発泡粒子からなる発泡粒子成形体も提案した(特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1に記載された発泡粒子を用いた場合、低温のスチームで加熱成形し、高剛性の成形体を得ることはできるものの、成形に要する時間が長く、その為自動車用衝撃吸収材等として使用する場合の製品コストが高くなるという問題があった。更に近年、この自動車用衝撃吸収材等に対するコストダウン要求は厳しさを増している。従って、成形サイクルを短縮し、このコストダウンの要求に応えることが強く要望されている。
特開2002−167460号公報
本発明は、高剛性のポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする発泡粒子を用いて短い成形サイクルで成形でき、得られるEPP成形体に膨れやひけを発生させることがない発泡粒子成形体の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、高剛性のポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする発泡粒子を用いて、EPP成形体の内部温度をもとに金型から取り出しても膨れやひけのない状態で良好なEPP成形体を取り出すことができ、それにより、冷却時間を短縮できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、以下に示すポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法が提供される。
〔1〕引張弾性率が1200MPa以上且つ融点が158℃以上のポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする発泡粒子を、金型の成形空間部に充填し、加熱により該発泡粒子相互を融着せしめ、冷却した成形体を取り出して発泡粒子成形体を得る製造方法であって、成形体内部の温度が80℃〜(基材樹脂の結晶化温度−5℃)の範囲内で冷却した成形体を金型から取り出すことを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法。
〔2〕該発泡粒子の見掛け密度D(g/L)と、該発泡粒子の高温ピーク熱量E(g/J)との関係が下記(1)式及び(2)式を満足する発泡粒子を用いることを特徴とする前記〔1〕に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法。
20−0.014×D≦E≦65−0.072×D (1)
10≦D≦700 (2)
〔3〕該発泡粒子が低温成形可能な表面を有することを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法。
本発明の製造方法によれば、特定のポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする高剛性の発泡粒子を用いて発泡粒子成形体を製造する方法であって、成形体内部の温度を従来より高温で金型から取り出しても得られる成形体に膨れやひけを発生させることがなく、短い成形サイクルで成形でき生産性に優れた発泡粒子成形体の製造方法を提供することができる。
以下、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法について詳細に説明する。
本発明のEPP成形体の製造方法においては、以下に説明する基材樹脂からなる発泡粒子を金型の成形空間部に充填し、加熱し冷却してから成形体を取出すことによりEPP成形体を得る。
本発明で用いられる発泡粒子を構成する基材樹脂は、ポリプロピレン系樹脂である。該ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン単独重合体、またはプロピレン成分単位を70モル%以上含有する(好ましくはプロピレン成分単位を80モル%以上含有する)プロピレンと他のコモノマーとの共重合体のいずれか、あるいはこれらの樹脂の中から選ばれる2種以上の混合物が用いられる。発泡粒子を構成する基材樹脂が、後述する通り特定の引張弾性率、特定の融点を有することから、冷却したEPP成形体を比較的高い温度で取り出しても膨れやヒケが発生しない。
上記プロピレン成分単位を70モル%以上含有するプロピレンと他のコモノマーとの共重合体としては、例えば、エチレン−プロピレンランダムコポリマー、エチレン−プロピレンブロックコポリマー、プロピレン−ブテンランダムコポリマー、エチレン−プロピレン−ブテンランダムコポリマーなどが例示される。
本発明においては、引張弾性率が1200MPa以上且つ融点が158℃以上のポリプロピレン系樹脂が用いられる。かかるポリプロピレン系樹脂からなる発泡粒子を用いて成形されたEPP成形体は、成形サイクルを早くするために、後述する高い温度範囲で取り出しても膨れやひけが発生しない。かかる観点から引張弾性率は、1200MPa以上が好ましく、1300MPa以上がより好ましい。その上限値は特に制限はないが2500MPa程度である。引張弾性率が1200MPa未満のポリプロピレン系樹脂を用いた場合、高温で成形体を取り出すと、膨れやひけが発生する虞がある。
前記した例示のポリプロピレン系樹脂の中でも、引張弾性率が1200MPa以上のものとしては、ポリプロピレン単独重合体またはプロピレンと他のコモノマーとの共重合体においてコモノマーの成分が少ないものが挙げられる。
上記引張弾性率は、基材樹脂をJIS K7161(1994年)に従って以下の条件にて測定して求められた値である。
・試験片:JIS K 7162(1994年)記載の試験片1A形(射出成形で直接成形)
・引張速度 1mm/min
本発明において用いられるポリプロピレン系樹脂の融点は158℃以上である。該融点が158℃未満の場合、後述する温度範囲で成形体を取り出すことが困難となり、あえて取り出すと成形体に膨れやひけが発生する。更に得られるEPP成形体も耐熱性が低いものとなる。より高温で取り出すことができ、好ましい耐熱性を有するEPP成形体を得るためには、ポリプロピレン系樹脂の融点は160℃以上が好ましい。尚、その上限は通常170℃である。
本発明で用いる上記した特性を併せ持つポリプロピレン系樹脂は、ポリプロピレン樹脂として販売されているものの一種なので、市場で容易に入手可能である。上記した特性を併せ持つポリプロピレン系樹脂は、種々の方法で製造可能であるが、特に、スラリー重合プロセス又はバルク重合プロセスを採用して、或いは、スラリー重合プロセス又はバルク重合プロセスを含む多段重合プロセス(例えば気相重合とバルク重合との多段重合プロセス)を採用して、アイソタクチック指数(沸騰ノルマルヘプタン抽出後の不溶成分の割合)が85重量%以上、13C−NMR分析によるmmmmペンタッド%が85〜97.5%、重量平均分子量が200000以上(好ましくは200000〜550000)、数平均分子量が20000以上(好ましくは20000〜53000)となるように製造(アタクチック分の除去等の後処理も含む)すれば容易に得られ、この際、得られるポリプロピレン系樹脂中のプロピレン成分含有割合が99重量%となるように、重合条件や共重合条件を選定すればいっそう容易にその製造が可能となる。また、スラリー重合プロセス又はバルク重合プロセス、或いは、スラリー重合プロセス又はバルク重合プロセスを含む多段重合プロセスを経て得られたポリプロピレン系樹脂は、他の重合プロセスを経て得られたポリプロピレン系樹脂よりも、本発明で用いる基材樹脂として好適である。使用可能な重合触媒としては、メタロセン触媒等の均一系触媒又はチーグラー・ナッタ型触媒等の不均一系触媒が例示されるが、スラリー重合プロセス又はバルク重合プロセス、或いはスラリー重合プロセス又はバルク重合プロセスを含む多段重合プロセスでは、チーグラー・ナッタ型触媒の方が好適である。
最終的なEPP成形体の圧縮強度を大きいものとする上で、発泡粒子を構成する基材樹脂の引張降伏強さは31MPa以上が好ましいが、32MPa以上であることがより好ましい。引張降伏強さの上限は特に規定はないが、通常は、大きくても45MPaである。
上記引張降伏強さは、JIS K 6758(1981年)記載の測定方法に基づくものである。
本発明においては、所期の効果を損なわない範囲内において、基材樹脂にポリプロピレン系樹脂以外の他の合成樹脂又は/及びエラストマーを添加することができる。該他の合成樹脂又は/及びエラストマーの添加量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部当り、多くても35重量部であることが好ましく、多くても20重量部であることがより好ましく、多くても10重量部であることが更に好ましく、多くても5重量部であることが最も好ましい。
上記ポリプロピレン系樹脂以外の他の合成樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等のエチレン系樹脂、或いはポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体等のスチレン系樹脂等が例示される。
また上記エラストマーとしては、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−1−ブテンゴム、プロピレン−1−ブテンゴム、スチレン−ブタジエンゴムやその水添物、イソプレンゴム、ネオプレンゴム、ニトリルゴム、或いはスチレン−ブタジエンブロック共重合体エラストマーやその水添物等のエラストマーが例示される。
なお、基材樹脂には、所望に応じて各種添加剤を含有させることができる。このような添加剤としては、たとえば、酸化防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、難燃剤、金属不活性剤、顔料、染料、核剤、あるいは気泡調整剤等を挙げることができる。気泡調整剤としては、たとえばホウ酸亜鉛、タルク、炭酸カルシウム、ホウ砂、水酸化アルミニウムなどの無機粉体が例示される。これらの添加剤は、合計で基材樹脂100重量部当り20重量部以下で使用されることが好ましく、5重量部以下で使用されることがより好ましい。これらの添加剤は、通常、必要最小限の量で使用される。またこれらの添加剤は例えば、押出機により押出したストランドを切断する等して本発明で使用されるポリプロピレン系樹脂粒子(以下「本樹脂粒子」ということがある。本樹脂粒子については後述する。)を製造する際に、押出機内で溶融した本基材樹脂に添加、混練することによって樹脂粒子中に含有させることができる。
尚、本基材樹脂中に、上記したポリプロピレン系樹脂以外の他の合成樹脂、各種添加剤等が含有された混合樹脂組成物の場合、それら添加物の種類や添加量によっては、混合樹脂組成物の引張弾性率が低下する虞がある。本発明では、本発明の初期の効果を損なわないようにする上で、該混合樹脂組成物の引張弾性率(本基材樹脂の引張弾性率と同じ測定方法)が1200MPaを下回らないように、好ましくは1250MPaを下回らないように、最も好ましくは1300MPaを下回らないように、上記添加物が添加される。
また、発泡粒子の製造に際しての気泡形成時における気泡の破泡を防止する上で、更には型内成形に際しての加熱時における発泡粒子の気泡の破泡を防止する上で、発泡粒子を構成する基材樹脂の引張破壊伸びは20%以上であることが好ましいが、100%以上であることがより好ましく、200〜1000%であることが更に好ましい。
上記引張破壊伸びは、JIS K 6758(1981年)記載の測定方法に基づくものである。
更に、発泡粒子を構成する基材樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、型内成形時の成形スチーム温度をより低くする上で、4.4以上であることが好ましく、4.5〜10であることがより好ましい。この分子量分布は、GPC法により、下記の装置及び条件で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnより算出した値である。
〈GPC測定装置〉
装置:WATERS 150C
カラム:TOSO GMHHR−H(S)HT
検出器:液体クロマトグラム用RI検出器
〈測定条件〉
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン
測定温度:145℃
流速:1.0ミリリットル/分
試料濃度:2.2mg/ミリリットル
注入量:160マイクロリットル
検量線:Universal Calibration
解析プログラム:HT−GPC(Ver.1.0)
また、発泡粒子を構成する基材樹脂は、MFRと略記されるメルトフローレート(JIS K 6758(1981年))が1〜100g/10分であることが好ましい。そのMFRが1g/10分未満であると、型内成形時の成形スチーム温度をより低くする効果が不充分となる虞がある。また、そのMFRが100g/10分を越えると、得られたEPP成形体が脆くなってしまう虞がある。このような観点から、本基材樹脂のMFRは10〜70g/10分であることがより好ましい。
尚、本樹脂粒子としては、本基材樹脂を押出機内で溶融して押出したストランドを切断して本樹脂粒子を製造する際に、押出直後のストランドを急冷することによって得られたものが好ましい。そのように急冷された本樹脂粒子であると、後述する表面改質を効率よく行なうことができる。その押出直後のストランドの急冷は、そのストランドを押出し直後に、好ましくは50℃以下に調節された水中に、より好ましくは40℃以下に調節された水中に、最も好ましくは30℃以下に調節された水中に入れることにより行なうことができる。そして充分に冷却されたストランドは水中から引き上げられ、適宜長さに切断することにより、所望の大きさの本樹脂粒子となる。本樹脂粒子は、通常、長さ/直径比が0.5〜2.0、好ましくは0.8〜1.3となるように調節され、また1個当たりの平均重量(無作為に選んだ200個の重量を同時に測定した1個当たりの平均値)は、0.1〜20mgとなるように、好ましくは0.2〜10mgとなるように調節される。
本発明で用いる発泡粒子(以下「本発泡粒子」という)は、本樹脂粒子に発泡剤を含浸させた後、粒子状に発泡させることにより製造される。
上記本発泡粒子は、発泡粒子の示差走査熱量測定(熱流束示差走査熱量測定、以下同じ)によるDSC曲線における基材樹脂の融解熱に由来する固有の吸熱曲線ピーク(固有ピーク)の頂点よりも高温側に吸熱曲線ピーク(高温ピーク)の頂点が存在する発泡粒子であることが好ましい。しかも、該発泡粒子においては、その見掛け密度D(g/L)と、該発泡粒子の高温ピーク熱量E(J/g)との関係が次式を満足することが好ましい。
20−0.014×D≦E≦65−0.072×D (1)
10≦D≦700 (2)
尚、式(1)中、Dはg/L単位で表示される発泡粒子の見掛け密度の数値であり、EはJ/g単位で表示される成形に使用された発泡粒子の高温ピーク熱量の数値である。
見掛け密度Dと高温ピーク熱量Eが、上記(1)式と(2)式で定まる関係を満たす場合、高剛性であると共に発泡粒子間の空隙が埋まる等の二次発泡性に優れたEPP成形体を得ることができる。
見掛け密度Dが10g/L未満であると、得られる発泡粒子の連続気泡の割合が多くなり、成形が困難になる虞がある。また、見掛け密度Dが700g/Lを越えると成形時に発泡粒子間の空隙を埋める発泡力が劣り、得られるEPP成形体の圧縮強度の低下等の物性に劣る発泡粒子となる虞がある。なお、見掛け密度Dの範囲は、得られる型内成形体をより軽量で高剛性とする上で、好ましくは20≦D≦200であり、より好ましくは30≦D≦150である。
本発泡粒子の見掛け密度(g/L)は、発泡粒子の重量(g)を発泡粒子の見掛け体積(L)で除すことにより算出される。発泡粒子の見掛け体積は、23℃、大気圧下に24時間以上放置された発泡粒子約5gを23℃の水100cmが収容されたメスシリンダー内の水に水没させたときの排除体積から、発泡粒子の見掛け体積(cm)を読み取り、これをリットル単位に換算することにより求まる。この測定には発泡粒子重量が0.5000〜10.0000g、かつ発泡粒子の見掛け体積が50〜90cmとなる量の複数個の発泡粒子が使用される。
また、本発明に用いる本発泡粒子においては、高温ピーク熱量Eが〔20−0.014×D〕未満であるとEPP成形体の金型を基準とする収縮率が過度に大きくなる虞れがある。また得られたEPP成形体の圧縮強度も弱くなる。かかる観点から〔22.5−0.014×D〕≦Eであることが好ましく、〔25−0.014×D≦E〕であることがより好ましい。
高温ピーク熱量Eが〔65−0.072×D〕を超えると、成形圧が上昇して成形サイクルが長くなる虞れがある。また成形品表面にボイド(発泡粒子相互の隙間)が生じ易くなる。かかる観点からE≦〔60−0.072×D〕であることが好ましく、E≦〔55−0.072×D〕であることがより好ましい。
なお、ポリプロピレン系樹脂の本発泡粒子は、基材樹脂が同じ場合、高発泡倍率になるほど得られるEPP成形体の収縮が大きい傾向にある。これは、低発泡倍率のものに比べ単位体積当りの樹脂量が少ないことに起因する。また、発泡粒子の高温ピーク熱量(E)が小さいほど得られるEPP成形体の収縮が大きくなる傾向にある。逆に発泡粒子の高温ピーク熱量が大きくなるほど得られるEPP成形体の収縮は小さくなる傾向がある。しかし、発泡粒子の高温ピーク熱量が大きくなるほど成形時の加熱で溶融しにくくなる傾向(成形時の加熱に際して発泡粒子相互が融着しにくくなる傾向)及び発泡粒子の膨張力に劣る傾向がある。上記式(1)のEが発泡粒子の見かけ密度の関係式で表現されているのは以上の観点に基づいている。上記式(1)はそれらの観点の下に且つ本基材樹脂の引張弾性率との関係の下に実験的に定められたものである。
また、上記高温ピーク熱量Eは、該Eと固有ピーク熱量の総和に対して10〜60%であることが好ましく、20〜50%であることがより好ましい。尚、本明細書において言う高温ピーク熱量Eと固有ピーク熱量は、いずれも吸熱量を意味し、その数値は絶対値で表現される。
本発泡粒子の高温ピークは、JIS K7122(1987年)に準拠する測定方法により次のように行なう。まず、発泡粒子2〜10mgを、窒素雰囲気下で、熱流束示差走査熱量計によって室温(10〜40℃)から220℃まで10℃/分で昇温した時に得られる第1回目のDSC曲線(図1に示す)に認められるピークであって、基材樹脂の融解熱に由来する固有の吸熱曲線ピーク(固有ピーク)aの頂点が現れる温度よりも、高温側にその頂点が現れる吸熱曲線ピーク(高温ピーク)bの熱量(吸熱量)である。該高温ピークEの熱量は、この高温ピークbの面積に相当するものであり、具体的には次のようにして求めることができる。
まずDSC曲線上の80℃に相当する点αと、発泡粒子の融解終了温度Tに相当するDSC曲線上の点βとを結ぶ直線(α−β)を引く。次に上記の固有ピークaと高温ピークbとの間の谷部に当たるDSC曲線上の点γからグラフの縦軸と平行な直線を引き、前記直線(α−β)と交わる点をσとする。高温ピークbの面積は、DSC曲線の高温ピークb部分の曲線と、線分(σ−β)と、線分(γ−σ)とによって囲まれる部分(図1において斜線を付した部分)の面積であり、これが高温ピークの熱量に相当する。尚、上記融解終了温度Tとは、高温ピークbの高温側におけるDSC曲線と高温側ベースラインとの交点をいう。
また、高温ピークの熱量と固有ピークの熱量の総和は、前記直線(α−β)とDSC曲線とで囲まれる部分の面積に相当する。
尚、発泡粒子の固有ピークと高温ピークを上記の通り示差走査熱量計によって測定するに際しては、発泡粒子1個当たりの重量が2mg未満の場合は、総重量が2mg〜10mgとなる複数個の発泡粒子をそのまま測定に使用すればよく、また、発泡粒子1個当たりの重量が2mg〜10mgの場合には、発泡粒子1個をそのまま測定に使用すればよく、また、発泡粒子1個当たりの重量が10mg超の場合には、1個の発泡粒子を、複数個に切断して得た重量が2〜10mgとなる切断試料1個を測定に使用すればよい。ただし、この切断試料は、1個の発泡粒子をカッター等を使用して切断されたものであり、切断に際しては、当初から有する発泡粒子の表面は切除せずにそのまま残すと共に、各切断試料の形状ができる限り同じ形状となるように均等に且つ各切断試料においては切除せずに残された上記発泡粒子表面の面積ができる限り同じ面積となるように切断されることが好ましい。例えば発泡粒子1個当たりの重量が18mgの場合には、任意の方向に向けた発泡粒子を垂直方向の真中より水平に切断すれば2個のほぼ同じ形状の約9mgの切断試料が得られ、各切断試料は、当初から有する発泡粒子の表面はそのまま残されていると共にその表面の面積は各切断試料でほぼ同じ面積となる。このようにして得られた2個の切断試料の内の1個を上記の通り固有ピークと高温ピークの測定に使用すればよい。
尚、本明細書では、断り無く単に「発泡粒子の高温ピーク熱量」と表現している場合には、以上の測定で得られた高温ピークbの熱量、即ち高温ピーク熱量(E)のことをいう。
上記高温ピークbは、上記のようにして測定した第1回目のDSC曲線には認められるが、第1回目のDSC曲線を得た後、220℃から10℃/分で一旦40℃付近(40〜50℃)まで降温し、再び10℃/分で220℃まで昇温した時に得られる第2回目のDSC曲線には認められず、図2に示されるような基材樹脂の融解時の吸熱に相当する固有ピークaのみが認められる。
尚、発泡粒子の第1回目のDSC曲線に現れる固有ピークaの頂点の温度は、基材樹脂の融点(Tm)を基準とすると、通常、[Tm−5℃]〜[Tm+5℃]の範囲に現れる(最も一般的には[Tm−4℃]〜[Tm+4℃]の範囲に現れる)。また、発泡粒子の第1回目のDSC曲線に現れる高温ピークbの頂点の温度は、基材樹脂の融点(Tm)を基準とすると、通常、[Tm+5℃]〜[Tm+15℃]の範囲に現れる(最も一般的には[Tm+6℃]〜[Tm+14℃]の範囲に現れる)。また、発泡粒子の第2回目のDSC曲線に認められる固有ピークaの頂点の温度(基材樹脂の融点に対応する温度)は、基材樹脂の融点(Tm)を基準とすると、通常、[Tm−2℃]〜[Tm+2℃]の範囲に現れる。
DSC曲線において高温ピークが現れる発泡粒子を得るためには、密閉容器内で分散媒体に樹脂粒子を分散させて加熱する際に、本基材樹脂の融解終了温度(Te)以上に昇温することなく、本基材樹脂の融点(Tm)より20℃低い温度以上、融解終了温度(Te)未満の範囲内の任意の温度(Ta)で止めてその温度(Ta)で十分な時間、好ましくは10〜60分程度保持し、その後、融点(Tm)より15℃低い温度から融解終了温度(Te)+10℃の範囲の任意の温度(Tb)に調節し、その温度で止め、必要により当該温度でさらに十分な時間、好ましくは10〜60分程度、保持してから樹脂粒子を密閉容器内から低圧下に放出して発泡させる方法により得ることができる。
尚、上記融点(Tm)とは、発泡粒子の総重量が2〜10mgを試料として用いて前述した示差走査熱量測定を行った際に得られた2回目のDSC曲線(その一例を図2に示す)に認められる基材樹脂固有の吸熱曲線ピークaの頂点の温度であり、融解終了温度(Te)とは、該固有の吸熱曲線ピークaの高温側におけるDSC曲線と高温側ベースライン(BL)との交点(β)を言う。
発泡粒子に対する2回目のDSC曲線に現れる吸熱曲線ピークは、それがポリプロピレン系樹脂の融解に基づくピークであることを前提として、通常は1つの吸熱曲線ピークとなって現れる。ただし、2以上のポリプロピレン系樹脂の混合物からなる場合等には、まれに2以上の吸熱ピークが認められることがある。その場合には、各ピークの頂点を通ると共にグラフの縦軸と平行な(横軸と直交する)直線をそれぞれ引き、各直線においてピークの頂点からベースラインBLまでの長さを測定し、その長さが最も長い直線上のピークの頂点を上記Tmとする。ただし、最も長い直線が2以上存在する場合には、その中で最も高温側のピークの頂点を上記Tmとする。
また、発泡粒子における上記高温ピークの熱量の大小は、主として、発泡粒子を製造する際の樹脂粒子に対する上記温度Taと該温度における保持時間および上記温度Tbと該温度における保持時間ならびに昇温速度に依存する。発泡粒子の上記高温ピークの熱量は、温度TaまたはTbが上記温度範囲内において低い程、保持時間が長い程、大きくなる傾向を示す。通常、加熱時の昇温速度(加熱開始から温度保持を開始するまでの間の平均昇温速度)は0.5〜5℃/分が採用される。これらの点を考慮して予備実験を繰り返すことにより、所望の高温ピーク熱量を示す発泡粒子の製造条件を容易に知ることができる。
尚、以上で説明した温度範囲は、発泡剤として無機系物理発泡剤を使用した場合の適切な温度範囲である。有機系物理発泡剤が併用された場合には、その種類や使用量に応じてその適切な温度範囲は上記温度範囲よりもそれぞれ低温側にシフトする。
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、低温成形可能な表面を有することが好ましい。かかる構成であると低温のスチームで発泡粒子相互を融着させることができるので、冷却時間を短縮することができる。また、スチームの量が少なくてすむのでエネルギー効率に優れている。
本明細書でいう発泡粒子が低温成形可能な表面を有するものとは、発泡粒子の表面をなんらかの処理をして処理前の発泡粒子の成形温度よりも低温で融着できる発泡粒子をいう。
該処理としては、例えば、樹脂粒子を作製する際、芯層と外層からなる多層の押出ダイを用いて前記したポリプロピレン系樹脂の芯層に熱融着可能なポリオレフィン系樹脂で被覆してなる多層の樹脂粒子とし、それを発泡させて多層発泡粒子とする方法、発泡粒子をミキサーに入れ、高速で攪拌して発泡粒子の表面を溶融させ、発泡粒子を構成する前記したポリプロピレン系樹脂に熱融着可能でかつ該ポリプロピレン系樹脂の融点よりも低いポリオレフィン系樹脂の微粉末を均一にまぶして被覆してなる発泡粒子とする方法、水性媒体中で過酸化物を用いて表面を改質した樹脂粒子とし、それを発泡させて表面改質発泡粒子とする方法が挙げられる(特許文献1)。
具体的には、低温成形可能な表面を有する発泡粒子としては、(i)発泡粒子の内部の融解熱量よりも表面の融解熱量が低いもの、(ii)μTA測定装置により測定される発泡粒子の内部の補外融解開始温度よりも表面の補外融解開始温度が低いもの等が挙げられる。
次に、上記(i)内部の融解熱量よりも表面の融解熱量が低い発泡粒子について説明する。
発泡粒子の表面及び内部の融解熱量は、以下の手順により測定される。
発泡粒子の表面は、発泡粒子の表層部分をカッターナイフ、ミクロトーム等を用いてスライスして表層部分を集めて測定に供すればよい。但し、スライスされた発泡粒子の表層部分の表面においては、その全面に発泡粒子の表面を必ず存在させるが、スライスされた発泡粒子の表層部分の裏面においては、発泡粒子の表面から発泡粒子の重心に向って200μmを越える部分が含まれないように、発泡粒子表面の無作為に選んだ1箇所又は複数箇所からスライスされる。スライスされた発泡粒子の表層部分の裏面において、発泡粒子の表面から発泡粒子の重心に向って200μmを越える部分が含まれるようになると、内部の発泡層部分を多量に含有することとなり表層部分の融点及び高温ピーク熱量を正確に測定できない虞がある。尚、1個の発泡粒子から得られる表層部分が2〜4mgに満たない場合は複数個の発泡粒子を使用して上記操作を繰り返して必要量の表層部分を集めればよい。
一方、発泡粒子の表層部分を含まない内部発泡層部分は、発泡粒子の表面と、発泡粒子の表面から発泡粒子の重心部に向かって200μmとの間の部分が含まれないように発泡粒子の全面から表層部分を切除したものを使用して融点及び高温ピーク熱量の測定に供すればよい。ただし、発泡粒子が小さすぎて上記の表面から200μmの部分を切除すると内部発泡層部分がなくなってしまう場合には、発泡粒子の表面と、発泡粒子の表面から発泡粒子の重心部に向かって100μmとの間の部分が含まれないように発泡粒子の全面から表層部分を切除したものが内部発泡層部分として使用される。更にそれでも内部発泡層部分がなくなってしまう場合には、発泡粒子の表面と、発泡粒子の表面から発泡粒子の重心部に向かって50μmとの間の部分が含まれないように発泡粒子の全面から表層部分を切除したものが内部発泡層部分として使用される。尚、1個の発泡粒子から得られる内部発泡層部分が2〜4mgに満たない場合は複数個の発泡粒子を使用して上記操作を繰り返して必要量の内部発泡層部分を集めればよい。
本発明者等が、発泡粒子の表層部分と表層部分を含まない内部発泡層部分に分割して高温ピーク熱量を測定したところ、従来の発泡粒子は発泡粒子の表層部分の高温ピーク熱量(ΔHs)と内部発泡層部分の高温ピークの熱量(ΔHi)との関係が、ΔHs≧ΔHi×0.87となる性質があったのに対して、本発明の方法で得られた発泡粒子では、ΔHs<ΔHi×0.86であることが観察された。低温のスチームで成形可能な発泡粒子では、ΔHs<ΔHi×0.86であることが好ましく、ΔHs<ΔHi×0.80であることがより好ましく、ΔHs<ΔHi×0.75であることが更に好ましく、ΔHs<ΔHi×0.70であることが特に好ましく、ΔHs<ΔHi×0.60であることが最も好ましい。また、ΔHsは、ΔHs≧ΔHi×0.25であることが好ましい。ΔHs<ΔHi×0.86であることにより、表面改質されていない発泡粒子よりも低温で型内成形が可能となり、ΔHs値が小さくなるほどその効果は大きい。尚、ΔHsは、1.7J/g〜60J/gであることが好ましく、2J/g〜50J/gであることがより好ましく、3J/g〜45J/gであることが更に好ましく、4J/g〜40J/gであることが最も好ましい。
次に、前記(ii)μTA測定装置により測定される発泡粒子の内部の補外融解開始温度よりも表面の補外融解開始温度が低い発泡粒子について説明する。
発泡粒子の表面及び内部の補外融解開始温度は、ティ・エイ・インスツルメント・ジャパン社のマイクロ熱分析システム「2990型マイクロサーマルアナライザー」を使用し、25℃から250℃まで昇温速度10℃/秒の条件にて、マイクロ示差熱分析(μDTA)を行う事により測定される。
図3及び図4は発泡粒子の表面に対するμDTA曲線の一例を示すものであり、これらの図を使用して発泡粒子の表層部の補外融解開始温度の求め方を説明する。図3は、低温成形可能な発泡粒子の表層部と低温成形が難しい発泡粒子の表層部のそれぞれに対するμDTA曲線の一例を示す。図3において、曲線Cmが低温成形可能な発泡粒子の表層部に対するμDTA曲線の一例であり、曲線Cm上のPm点が融解開始温度であり、Pme点が前記ベースライン(BL)と前記接線(TL)との交点として求められる補外融解開始温度である。一方、曲線Cnmが低温成形が難しい発泡粒子の表層部に対するμDTA曲線の一例であり、曲線Cnm上のPnm点が融解開始温度であり、Pnme点が前記ベースライン(BL)と前記接線(TL)との交点として求められる補外融解開始温度である。また図4は、低温成形可能な発泡粒子(図3のものよりも多少表層部の補外融解開始温度が高いもの)の表面に対するμDTA曲線の一例を示す。図4において、曲線CmがμDTA曲線であり、曲線Cm上のPm点がその融解開始温度であり、Pme点が前記ベースライン(BL)と前記接線(TL)との交点として求められる補外融解開始温度である。
尚、ここでいう融解開始温度とは、マイクロ示差熱分析によって得られるμDTA曲線におけるベースライン(BL)からμDTA曲線が下方に変化し始めた(時間当りの比熱が変化し始めた)温度を意味し、補外融解開始温度とは、上記μDTA曲線の前記ベースライン(BL)を高温側に延長した直線と、融解開始温度より高温側のμDTA曲線上における各点から引いた接線の内、該接線と上記ベースライン(BL)を高温側に延長した直線との間の角度が最大となる接線(TL)との交点として求められる温度をいう。
上記マイクロ示差熱分析は、発泡粒子を装置のサンプルステージに固定し(1個の発泡粒子がそのままでは大きすぎる場合は例えば半分に切断する等して適当な大きさにして固定する)、次いで、発泡粒子の表面において無作為に選択した箇所に向けて、プローブチップ(発泡粒子表面に接触させる部分は縦横各0.2μmの先端部を持つ)を下降させて発泡粒子表面に接触させた状態で測定される。
本発明者等が、種々の発泡粒子について補外融解開始温度を測定したところ、前記低温成形可能な発泡粒子の表面の補外融解開始温度は、基材樹脂の〔融点+4℃〕以下の温度であるのに対し、該発泡粒子の内部の補外融解開始温度は、基材樹脂の融点よりも8℃以上高い温度であることが判明した。尚、ここでいう補外融解開始温度とは、上記μDTA曲線の前記ベースライン(BL)を高温側に延長した直線と、前記融解開始温度より高温側のμDTA曲線上における各点から引いた接線の内、該接線と上記ベースライン(BL)を高温側に延長した直線との間の角度が最大となる接線(TL)との交点として求められる温度をいう。以上のμDTAによる結果は、発泡粒子表面の融解開始温度の低下が、成形時に必要な最低融着温度の低下に寄与していることを示している。このことから、低温のスチームで成形可能な発泡粒子は、上記測定に基づく発泡粒子表面の補外融解開始温度が[Tm+4℃]以下であることが好ましく、[Tm−1℃]以下であることがより好ましく、[Tm−6℃]以下であることが更に好ましく、[Tm−17℃]〜[Tm−50℃]であることが特に好ましく、[Tm−18℃]〜[Tm−35℃]であることが最も好ましい。
発泡粒子表面の補外融解開始温度としては、異なる測定点10点の測定結果より、最大値と最小値を除く8点の相加平均値が採用される。尚、最大値と最小値がそれぞれ複数ある場合はそれらを除く数点の相加平均値が採用される。また、平均10点の測定値が全て同じ場合や、最大値と最小値の値しか得られなかった場合であって最大値と最小値の差が10℃以内の場合には、10点の相加平均値が採用される。尚、最大値と最小値の値しか得られなかった場合であって最大値と最小値の差が10℃を超える場合には更に異なる表面の10点に対し測定し、上記したと同じ要領で相加平均値を求め、それを採用すればよい。それでも条件に合わない場合には更に同じ操作を繰り返す。
以上のμDTAによる結果は、発泡粒子の表層部の補外融解開始温度の低下が、成形時に必要な最低融着温度の低下に寄与していることを示している。
発泡粒子の型内成形においては、発泡粒子相互の融着は発泡粒子表面同士で行なわれるため、発泡粒子の表面のみを熱分析する意義は大きい。発泡粒子の表面のみの融解開始の傾向をDSC法で知ることは不可能と思われる。それを可能にするのがμDTAである。また、μDTAで昇温速度を1秒あたり10℃としているが、この速度は、実際の型内成形に際して発泡粒子を加熱する際の昇温速度に近いものである(このような速い昇温速度はDSC法では困難である)。従って、このような実際の型内成形に近似した昇温速度で分析する意義は大きい。このような理由から本発明では、発泡粒子の表層部に対するマイクロ示差熱分析(μDTA)を採用した。この測定に基づく補外融解開始温度は、厳密な意味での融解開始の温度を示していないかもしれないが、補外融解開始温度の温度の高低の傾向と成形温度の高低の傾向とはよく一致している。また、補外融解開始温度は誤差が少ないのでより再現性に優れる。
次に、前述した発泡粒子を用いて行なうEPP成形体の成形方法について説明する。
本発明によるEPP成形体は、発泡粒子を加熱及び冷却が可能であってかつ開閉及び密閉できる型内に充填し、飽和スチームを供給して型内で発泡粒子を加熱して膨張させて相互に融着させ、次いで冷却して型内から取り出すバッチ式成形法を採用して製造することができる。当該バッチ式成形法で使用される成形機としては、既に数多くの成形機が世界中に存在し、国によって多少異なるものの、その耐圧は、0.41MPa(G)又は0.45MPa(G)のものが多い。従って、発泡粒子同士を膨張させて融着させる際の飽和スチームの圧力は、0.45MPa(G)以下であることが好ましく、0.41MPa(G)以下であることがより好ましい。
本発明で用いる発泡粒子は、大気圧下で熟成した後、必要に応じて気泡内圧を高めてから、水蒸気や熱風を用いて加熱することによって、より高発泡倍率の発泡粒子とすることが好ましい。
発泡粒子の気泡内の上記内圧は、0〜0.98MPa(G)が好ましく、0〜0.69MPa(G)がさらに好ましく、0〜0.49MPa(G)が特に好ましく、0〜0.1MPa(G)が最も好ましい。
気泡内圧が高くなりすぎると成形時の二次発泡力が過剰となり、成形体内部へ飽和スチームの浸透を阻害し、結果的に成形体中央部の加熱が不足し、発泡粒子の相互融着が不良となりやすい。
発泡粒子の気泡内圧を高めるには、密閉容器に発泡粒子を入れ、該容器内に加圧空気を供給した状態で適当な時間放置して発泡粒子内に加圧空気を浸透させればよい。加圧供給される気体は必要とされる圧力下で液化、固化しない無機ガスが主成分であれば問題なく使用できるが、さらに窒素、酸素、空気、二酸化炭素、アルゴンの群から選択される1又は2以上の無機ガスを主成分とするものが好適に使用され、さらにその中でも環境負荷やコストなどを考慮すると、窒素や空気が好ましい。
内圧が高められた発泡粒子の内圧P(MPa(G))は、次の操作により測定される。尚、ここでは、空気を使用して発泡粒子の内圧を高めた例を示す。
まず、成形に使用される発泡粒子は、密閉容器に入れられ、該容器内に加圧空気を(通常は容器内の空気圧がゲージ圧で0.98〜9.8MPaの範囲を維持するように)供給した状態で適当な時間放置して発泡粒子内に空気を浸透させることにより発泡粒子の内圧が高められる。充分に内圧が高められた発泡粒子は、成形機の金型内に供給される。発泡粒子の内圧は型内成形直前の発泡粒子の一部(以下、発泡粒子群という。)を使用して、次の操作を行うことによって求められる。
内圧が高められた型内成形直前の発泡粒子群を加圧タンク内から取り出してから60秒以内に、発泡粒子は通過させないが空気は自由に通過させるサイズの針穴を多数穿設した70mm×100mm程度のポリエチレン製袋の中に収容して気温23℃、相対湿度50%の大気圧下の恒温室に移動する。続いてその恒温室内の秤に載せて重量を読み取る。その重量の測定は、上記した発泡粒子群を加圧タンク内から取出してから120秒後とする。このときの重量をQ(g)とする。続いてその袋を同恒温室に48時間放置する。発泡粒子内の加圧空気は時間の経過と共に気泡膜を透過して外部に抜け出すため発泡粒子群の重量はそれに伴って減少し、48時間後では平衡に達しているため実質的にその重量は安定する。上記48時間後に再度その袋の重量を測定し、このときの重量をU(g)とする。続いて直ちに同恒温室内にて袋から発泡粒子群の全てを取り出して袋のみの重量を読み取る。その重量をZ(g)とする。上記のいずれの重量も0.0001gまで読み取るものとする。Q(g)とU(g)の差を増加空気量W(g)とし、次式より発泡粒子の内圧P(MPa)が計算される。尚、この内圧Pはゲージ圧に相当する。
P=(W÷M)×R×T÷V
ただし、上式中、Mは空気の分子量であり、ここでは28.8(g/モル)の定数を採用する。Rは気体定数であり、ここでは0.0083(MPa・L/(K・mol))の定数を採用する。Tは絶対温度を意味し、23℃の雰囲気が採用されているので、ここでは296(K)の定数である。Vは発泡粒子群の見掛け体積から発泡粒子群中に占める基材樹脂の体積を差し引いた体積(L)を意味する。
尚、発泡粒子群の見掛け体積(L)は、48時間後に袋から取り出された発泡粒子群の全量を直ちに同恒温室内にて23℃の水100cmが収容されたメスシリンダー内の水に水没させたときの目盛りから、発泡粒子群の体積Y(cm)を算出し、これをリットル(L)単位に換算することによって求められる。発泡粒子群の見掛け発泡倍率は、基材樹脂密度(g/cm)を発泡粒子群の見掛け密度(g/cm)で除すことにより求められる。また発泡粒子群の見掛け密度(g/cm)は、上記発泡粒子群重量(U(g)とZ(g)との差)を体積Y(cm)で除すことにより求められる。
尚、以上の測定においては、上記発泡粒子群重量(U(g)とZ(g)との差)が0.5000〜10.0000gで、かつ体積Yが50〜90cmとなる量の複数個の発泡粒子群が使用される。
本発明の製造方法は、前記発泡粒子を金型の成形空間部に充填し加熱し冷却してから成形体を取出すことにより、EPP成形体を製造する型内成形方法である。該方法は、一般的に、発泡粒子を開閉可能な金型内に充填してスチームにより加熱して発泡、融着せしめた後に冷却して取り出す工程からなる。この冷却工程は、加熱により発泡、融着した成型品を冷却する事で、成型品の内部圧力を減少させるとともに成型品の強度を発現させて、金型より取り出した成型品に膨れ等の変形が起こることを防ぐものであり、通常、水冷、空冷、バキューム冷却のいずれか若しくは複数を組み合わせて行う。
本発明の冷却工程では、成形体内部の温度が80℃〜(基材樹脂の結晶化温度−5℃)の範囲内で冷却した該成形体を取り出す。本発明においては前記の発泡粒子を用いているので、成形体内部が80℃〜(基材樹脂の結晶化温度−5℃)という高温の状態で成形体を取り出しても、成形体が十分な強度を発現し、金型より取り出した成型品に膨れ等の変形が起こることはない。しかも、本発明によれば、成形体の内部温度が低くなるまで冷却する必要がないので、冷却時間を短縮することができる。前記した本発明の引張弾性率及び融点を満足しない従来のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の場合、内部温度が低くならないと取り出した際には、金型形状とほぼ同様な形状を保つがその後、収縮が発生し最終的にヒケのある成形体となってしまう。本発明のポリプロピレン系樹脂を用いるとそのようなことが少ない。
成形体内部の温度が80℃未満の場合、冷却時間の短縮ができない虞がある。かかる観点から成形体内部温度は90℃以上であることが好ましく、100℃以上がより好ましい。一方、(基材樹脂の結晶化温度−5℃)を超えて取り出すと膨れ等の変形が発生する虞がある。かかる観点から(基材樹脂の結晶化温度−10℃)以下が好ましく、(基材樹脂の結晶化温度−15℃)以下がより好ましい。
本発明においては、上述したように成形体内部が80℃〜(基材樹脂の結晶化温度−5℃)の温度範囲という高温の状態で成形体を取り出す。即ち、成形体内部の温度を基準として成形体を取り出す。これに対し従来は、発泡力を面圧として捉え、該面圧が一定の圧力まで下がった否かを基準に成形体を取り出していた。しかし、面圧を基準にする方法では、高剛性のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を成形するには、成形に要する時間が長すぎて、製品コストの低減には限界があった。この問題は、表面が改質された発泡粒子であっても同様である。しかし、本発明では、前記特定の基材樹脂からなる発泡粒子を用いているので、成形体の内部温度が高く面圧が大きい状態で取り出しても、得られるEPP成形体に膨れやひけが発生することがない。従って、製品コストを大幅に低減することができる。
尚、従来の方法の場合、成形体を取り出す際の成形体内部の温度は成形機の性能やEPP成形体の密度、大きさにもよるが30〜50℃、面圧0.01〜0.08MPa(G)、冷却時間60〜300秒であった。これに対し、本発明においては、成形体を取り出す際の成形体内部の温度は80〜115℃であり、面圧0.01〜0.08MPa(G)、冷却時間30〜240秒である。
本発明における結晶化温度とは、前記した第1回目のDSC曲線を得た後、220℃から10℃/分の冷却速度で40℃付近(40〜50℃)まで降温した際に得られる結晶化ピークの頂点をいう。ただし、2以上のポリプロピレン系樹脂の混合物からなる場合等には、2以上のピークが認められることがある。その場合には、各ピークの頂点を通ると共にグラフの縦軸と平行な(横軸と直交する)直線をそれぞれ引き、各直線においてピークの頂点からベースラインまでの長さを測定し、その長さが最も長い直線上のピークの頂点を採用することとする。ただし、同程度に長い直線が2以上存在する場合には、その中で最も高温側のピークの頂点を採用することとする。
本発明においては、冷却時間が短縮される共に得られる成形体の耐熱性が優れたものとなることから結晶化温度と融点とのに好ましい関係がある。即ち、発泡粒子の融点から結晶化温度を引いた値が、50℃以下であることが好ましく、47℃以下がより好ましく、45℃以下がさらに好ましい。一方、その下限は20℃以上が好ましく、25℃以上がより好ましく、30℃以上がさらに好ましい。
本発明では、冷却工程において、水冷、空冷、バキューム冷却のいずれか若しくは複数を組み合わせて、これらの冷却を順次行う。また複数回繰り返しても差し支えない。とはいえ、成型品表層から内部まで均一に冷却して過度の金型冷却を抑え、次の成形時の加熱工程で金型を暖める熱量をできる限り少なくして、蒸気量を削減するために、数秒〜十数秒の水冷の後バキューム冷却を行う方法が好ましい。
次に、本発明のEPP成形体の内部を測定するために用いる測定器、測定方法、制御方式の一例について説明する。但し、本発明はこれらに限定するものではない。
<内部温度測定器>
EPP成形体の内部温度を測定する方法は、EPP成形体の内部温度を測定できる温度測定器であれば構わないが、耐久性に優れる点と成形機と連動して冷却を制御できる観点から熱電対が好ましい。
なお、熱電対は、金型成形空間部の一番厚みが厚い部分について、表面から内部へその厚みの20%以上の長さの中心部を測定することが好ましく、30%以上がより好ましく、中心である50%が特に好ましい。具体的には金型の中央部のフィーダー孔に、治具を用いて金型内に先端部が突出する様に設置することが好ましい。但し、金型の貫通孔を設けて、金型内に設置してもよい。
<制御方式>
熱電対による入力と少なくとも1つ以上の出力接点を持った設定温度によりスチームを制御できる回路を用いることが好ましい。このような制御方式によれば、あらかじめ設定した温度で工程を歩進することができる。
<発泡成形体の内部温度の測定方法>
内部温度の測定は、温度測定器をEPP成形体内部に入れたままであってもよい。また、基材樹脂が同じ、内圧が同じ等の一度成形条件を設定すれば、連続して同じ条件で成形できる同じロットの発泡粒子であれば、成形を繰り返してその温度を定め、その温度となる冷却時間が分かれば、その後、温度計を成形体内部に入れなくとも構わない。
<成形機及び金型>
成形機としては、前述したEPP成形体の製造に使用される一般的なものが使用できる。また、金型としては、例えば、コア型とキャビティ型とからなり、コア型とキャビティ型のいずれか一方、または両方にコアベント及びコアベントホール等の通気孔が存在しないものが挙げられる。具体的には、特開平11−277634号、特開平11−309735号、特開平11−342514号、特開2001−79869号、特開2001−79870号などが挙げられる。
上記コアベント及びコアベントホール等の通気孔が存在しない金型を用いた場合、コア型とキャビティ型の合わせ目或いはその付近に形成した開口部からスチームを入れて発泡粒子を加熱、融着する方法が挙げられる。具体的には、特開2001−79871号、特開2001−113552号、特開2000−141394号などが挙げられる。
また、金型の表面を凹凸にして、得られるEPP成形体の表面に凹凸状のシボ模様を形成することができる。シボ模様の形成方法としては、例えば、機械彫り、手彫り、精密鋳造、サンドブラスト、プレスによる刻印、エッチング、ポーラス電鋳や電鋳ロール等の電鋳等が挙げられる。具体的には、特開2002−307446号、特開2002−307448号などが挙げられる。なお、図5に、成形機の一例の概略図を示す。
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げて説明する。
<発泡粒子の製造例1>(低温成形可能な表面有り)
表1から選択されるポリプロピレン系樹脂(基材樹脂)100重量部当り、ホウ酸亜鉛粉末(気泡調整剤)0.05重量部を添加して押出機内で溶融混練した後、押出機からストランド状に押出し、そのストランドを直ちに25℃に調節された水中に入れて急冷しながら引き取り、充分に冷却した後、水中から引き上げ、長さ/直径比が略1.0になるようにストランドを切断して、1粒子当りの平均重量が2mgの樹脂粒子を得た。
なお、表1の樹脂3は、プロピレン−エチレンランダム共重合体であり、それ以外はプロピレン単独重合体である。
(表1)
Figure 2005325179
次いで400リットルのオートクレーブに、上記樹脂粒子100kg、分散媒体として25℃のイオン交換水120kg(樹脂粒子/分散媒体重量比0.83)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(界面活性剤)0.002kg及びカオリン(分散剤)0.4kg、粉末硫酸アルミニウム(分散助剤)0.013kg、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(有機化酸化物)0.32kgを仕込み、攪拌しながら90℃まで昇温(平均昇温速度5℃/分)してその90℃の温度で10分間保持した。
次いで、イオン交換水100kg、二酸化炭素(発泡剤)を平衡圧で0.49MPa(G)となるように圧入した後、攪拌しながら表2に示す発泡温度より5℃低い温度まで昇温した(平均昇温速度4℃/分)後、攪拌しながら表2に示す発泡温度より1℃低い温度まで昇温した(平均昇温速度0.16℃/分)。その後、二酸化炭素(発泡剤)を表2の圧力となるように圧入し、昇温速度を0.029℃/分として発泡温度まで昇温した。
次いで、オートクレーブの一端を開放してオートクレーブ内容物を大気圧下に放出して発泡粒子を得た。尚、樹脂粒子をオートクレーブから放出する間のオートクレーブ内圧力が、放出直前のオートクレーブ内圧力に保たれるように、オートクレーブ内に二酸化炭素を供給しながら放出を行った。得られた発泡粒子を水洗いし遠心分離機にかけたのち、室温23℃の大気圧下に24時間放置して養生した後、発泡粒子の見掛け密度、発泡粒子の高温ピーク熱量、発泡粒子の高温ピーク熱量(E)の範囲、表層(表層部分)の高温ピーク熱量、内部(内部発泡層)の高温ピーク熱量、発泡粒子の表面(表層部分)の補外融解開始温度、及び内部(内部発泡層)の補外融解開始温度等を測定した。その結果を表2に示した。
尚、本製造例で得られた発泡粒子は、いずれも実質的に無架橋であった(前記沸騰キシレン不溶分はいずれも0であった)。高温ピーク熱量Eと固有ピーク熱量との総和は、発泡粒子1が120J/g、発泡粒子2が115J/g、発泡粒子3が110J/g発泡粒子4が105J/g、発泡粒子5が125J/gであった。
Figure 2005325179
<発泡粒子の製造例2>(低温成形可能な表面無し)
発泡粒子6、7の場合は、樹脂粒子の長さ/直径比が略1.0になるようにストランドを切断した以外、発泡粒子の製造例1と同様に樹脂粒子を得た。発泡粒子8の場合は、樹脂粒子の長さ/直径比が略2.0になるようにストランドを切断した以外、発泡粒子の製造例1と同様に樹脂粒子を得た。
次いで400リットルのオートクレーブに、上記樹脂粒子100kg、イオン交換水220kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(界面活性剤)0.005kgとカオリン(分散剤)0.3kg粉末硫酸アルミニウム(分散助剤)0.01kgを仕込み、次いで、二酸化炭素(発泡剤)を平衡圧で0.49MPa(G)となる様に圧入した後、攪拌しながら表2に示す発泡温度より5℃低い温度まで昇温した(平均昇温速度4℃/分)後、攪拌しながら表2に示す発泡温度より1℃低い温度まで昇温した(平均昇温速度0.16℃/分)。その後、二酸化炭素(発泡剤)を表2に示す圧力となるように圧入し、昇温速度を0.029℃/分として発泡温度まで昇温した。次いで、オートクレーブの一端を開放してオートクレーブ内容物を大気圧下の空間に放出して発泡粒子を得た。尚、樹脂粒子をオートクレーブから放出する間のオートクレーブ内圧力が、放出直前のオートクレーブ内圧力に保たれるように、オートクレーブ内に二酸化炭素を供給しながら放出を行った。
次いで、得られた発泡粒子を水洗いし遠心分離機にかけたのち、24時間大気圧下に放置して養生した後、発泡粒子の見掛け密度、発泡粒子の全体の高温ピーク熱量、発泡粒子の高温ピーク熱量(E)の範囲、表層(表層部分)の高温ピーク熱量及び内部(内部発泡層)の高温ピーク熱量、発泡粒子の表面(表層部分)の補外融解開始温度、及び内部(内部発泡層)の補外融解開始温度を測定した。その結果を表2に示した。
尚、本製造例で得られた発泡粒子は、いずれも実質的に無架橋であった(前記沸騰キシレン不溶分はいずれも0であった)。高温ピーク熱量Eと固有ピーク熱量との総和は、発泡粒子6が110J/g、発泡粒子7が105J/g、発泡粒子8が95J/gであった。
<実施例1〜6>
面圧計を取り付けた成形装置を用いて、発泡粒子1〜6の成形を行なった。該成形装置の該略図を図5に示す(但し、面圧計は図示しない)。
発泡粒子を、長さ700mm×幅200mm×厚さ50mmの成形空間を持つ金型内に、金型を閉鎖せずに隙間(約10mm)を開けた状態で充填し、次いで完全に型締めした後に、スチームで金型内の空気を排気してから、圧力が表3に示す成形圧力より0.04MPa(G)低い圧力に達するまでスチームを導入し(一方加熱)、続いて圧力が表3に示す成形圧力より0.02MPa(G)低い圧力に達するまでスチームを導入し(逆一方加熱)た後、表3に示す成形圧にて20秒の保持加熱を行い(本加熱)成形した。尚、一方加熱の開始から表3に示すの成形圧力に至るまでの時間は15秒であった。成形後、10秒間の水冷を行った後、JIS C1602(1995年)Kタイプ熱電対を用いて成形体内部温度が表3に示す温度になるまでバキューム冷却を行った。その後、成形体を金型から取り出し、60℃で24時間養生し、さらに室温(23℃)まで冷却してEPP成形体を得た。この時の冷却に要した(水冷とバキューム冷却を含む)冷却時間、1成形当たりの所要時間、生産性、EPP成形体の形状安定性、外観、見掛け密度、測定用のカットサンプルの見掛け密度、圧縮強度及び総合評価を表3に示した。
Figure 2005325179
<比較例1〜4>
比較例1〜4では、実施例と同様に表4に示す成形圧力を基に加熱を行い、10秒間の水冷を行った後、EPP成形体の内部温度が表4に示す温度になるまでバキューム冷却を行って、EPP成形体を得た。また、比較例2では、実施例と同様に成形を行い、10秒間の水冷を行った後、EPP成形体の面圧が0.059MPa(G)となるまでバキューム冷却を行って、EPP成形体を得た。このときのEPP成形体の内部温度を表4に示す。この時の冷却に要した(水冷とバキューム冷却を含む)水冷時間、1成形当たりの所要時間、生産性、EPP成形体の形状安定性、外観、見掛け密度、測定用のカットサンプルの見掛け密度、圧縮強度及び総合評価を表4に示した。
Figure 2005325179
<比較例5、6>
比較例5では、実施例と同様に加熱後、EPP成形体内部温度が表4に示す温度になるまで水冷10秒を行なった後、バキューム冷却を行った。この時のEPP成形体の面圧は0.1MPa(G)であった。また比較例6では、EPP成形体の面圧が0.02MPa(G)になるまで水冷10秒を行なった後、バキューム冷却を行った。この時の冷却に要した(水冷とバキューム冷却を含む)水冷時間、1成形当たりの所要時間、生産性、EPP成形体の形状安定性、外観、見掛け密度、測定用のカットサンプルの見掛け密度、圧縮強度及び総合評価を表4に示した。
その後、EPP成形体を金型から取り出し、60℃で24時間養生し、さらに室温(23℃)まで冷却してEPP成形体を得た。
尚、比較例5で得られたEPP成形体は、膨れが発生していた。
尚、表3及び表4中の成形圧力とは、長さ700mm×幅200mm×厚さ50mmの金型で成形したEPP成形体の長さ700mm×幅200mm表面の一方の面に、カッターナイフで該成形体の長さを2分するようにEPP成形体の厚み方向に約10mmの切り込みを入れた後、切り込み部からEPP成形体を折り曲げて破断するテストにより、破断面に存在する発泡粒子の個数(n)と材料破壊した発泡粒子の個数(b)の比(b/n)の値が0.60以上となった時の、成形に要した飽和スチーム圧力を意味する。尚、上記発泡粒子の個数(n)は、発泡粒子間で剥離した発泡粒子の個数と、発泡粒子内で材料破壊した発泡粒子の個数(b)の総和である。尚、(b/n)の値が大きいほど成形体は曲げ強度や引張強度が大きくなるので好ましい。
表3及び表4に示したEPP成形体の性状に関する評価方法及び評価基準は以下の通りである。
<生産性>
1成形あたりの所要時間を以下の通り評価した。
120秒以下 ・・・◎
120秒を超えて140秒以下・・・○
140秒を超えて160秒以下・・・△
160秒を超える ・・・×
<形状安定性>
長さ700mm×幅200mm×厚さ50mmの金型から得られたEPP成形体の両端部における任意の3点の厚さを相加平均した値を(Tn)とし、EPP成形体の略中央部3点の厚さを相加平均した値を(T1)とした時、以下の式で得られる値が±2%以下であるか否かを評価した。
式 : (T1−Tn)/Tn×100
尚、厚さは株式会社尾崎製作所PERCOCKダイヤルキャリパーゲージ(品番O−150目盛り0.1mm)を用いて測定した。
○:±2%の範囲内
×:±2%を超える範囲
<外観>
EPP成形体の外観を目視により評価した。
◎・・・EPP成形体の表面において凹凸状となるような発泡粒子相互の隙間がなく、角の形状が金型の形状と同じ。
○・・・EPP成形体の表面において凹凸状となるような発泡粒子相互の隙間が少なく、角の形状が金型の形状より若干丸い。
△・・・EPP成形体の表面において凹凸状となるような発泡粒子相互の隙間が多く、角の形状が金型の形状より丸い。
<圧縮強度>
得られたEPP成形体から縦50mm、横50mm、厚み25mm、となるように切断して得られた試験片(全面の表皮がカットされたもの)を使用し、JIS Z0234(1976年)A法に従って試験片温度23℃、荷重速度10mm/分の条件で歪が55%に至るまで圧縮試験を行い、応力−歪線図を得る。得られたより50%歪時の応力を読みとり、これを圧縮強度とした。
<総合評価>
生産性、形状安定性及び外観について評価基準は以下の通りである。
◎:生産性、形状安定性、外観の評価において、全て○である
○:生産性、形状安定性、外観の評価において、△が1つあり、それ以外は全て○である
×:生産性、形状安定性、外観の評価において、△が2以上あるか、又は×がある
以上の結果より次のことが理解される。
引張弾性率が高く且つ融点の高い基材樹脂を使用した実施例1〜6の発泡粒子は、EPP成形体の内部温度に基づいて冷却を行うことにより、短い成形サイクルであっても膨れやひけの生じないEPP成形体が得られ、製品の製造コストが低下される。また、得られたEPP成形体は圧縮強度が高く、衝撃吸収材等に好適である。
比較例1は、引張弾性率が高く且つ融点の高い基材樹脂を使用した発泡粒子を、前述のEPP成形体の内部温度を超えて金型より取り出したものである。比較例1では短い成形サイクルでEPP成形体を得られたが、得られるEPP成形体は膨れたものである。また実施例1と比較例2とを比較すると、比較例2は、引張弾性率が高く且つ融点の高い基材樹脂を使用した発泡粒子を、EPP成形体の面圧に基づいて冷却を行ったものであるが、得られたEPP成形体に膨れやひけは生じないものの、成形に要する時間が長すぎて製品コストが増加する。
比較例3は、EPP成形体の面圧が0.059MPa(G)となるまでバキューム冷却を行って、EPP成形体を得たので、成形に要する時間が長すぎて製品コストが増加する。
比較例4は、EPP成形体に膨れが発生した。
比較例5、6は、引張弾性率が小さく且つ融点の低い基材樹脂を使用した発泡粒子である。その結果、比較例5のように、高いEPP成形体の内部温度で冷却を行った場合、得られるEPP成形体は膨れたものであった。また比較例6のように、成形体面圧に基づいて冷却を行った場合、成形に要する時間が長すぎて製品コストが増加する。更にいずれのEPP成形体も圧縮強度は低く、衝撃吸収材等の用途には適さない。
本発明で用いられる発泡粒子の、第1回目のDSC曲線のチャートの一例を示す図面である。 本発明で用いられる発泡粒子の、第2回目のDSC曲線のチャートの一例を示す図面である。 マイクロ示差熱分析測定によって得られる曲線のチャートの一例を示す図面である。 マイクロ示差熱分析測定によって得られる曲線のチャートの一例を示す図面である。 成形方法を説明する一例を示す図面である。
符号の説明
1 雄型
2 雌型
3 EPP成形体
4 スチームバルブ(メイン用)
5 スチームバルブ(メイン用)
6 スチームバルブ(補助用)
7 スチームバルブ(補助用)
8 ドレンバルブ
9 ドレンバルブ
10 EPP成形体の内部温度測定用温度検知ライン
11 圧力検知ライン
12 圧力検知ライン
13 制御及び表示器

Claims (3)

  1. 引張弾性率が1200MPa以上且つ融点が158℃以上のポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする発泡粒子を、金型の成形空間部に充填し、加熱により該発泡粒子相互を融着せしめ、冷却した成形体を金型から取り出して発泡粒子成形体を得る製造方法であって、成形体内部の温度が80℃〜(基材樹脂の結晶化温度−5℃)の範囲内で冷却した成形体を金型から取り出すことを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法。
  2. 該発泡粒子の見掛け密度D(g/L)と、該発泡粒子の高温ピーク熱量E(J/g)との関係が下記(1)式及び(2)式を満足する発泡粒子を用いることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法。
    20−0.014×D≦E≦65−0.072×D (1)
    10≦D≦700 (2)
  3. 該発泡粒子が低温成形可能な表面を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法。
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