JP5352254B2 - 電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置 - Google Patents
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Description
一方、有機光導電性材料は、無機光導電性材料に比べて、感度、耐久性および環境に対する安定性などの点で若干劣るものの、毒性、製造コスト、材料設計の自由度などの観点から、近年では広く用いられている。
現在では、導電性支持体上に、中間層と、電荷発生層と電荷輸送層とがこの順で積層された積層型(機能分離型)感光層とがこの順で積層された構成が主流となっている。
中間層は、導電性支持体上の欠陥被覆などによる感光層の接着性向上や成膜性(塗工性)改善、導電性支持体からの不要な電荷注入の阻止、それに伴う帯電性改善などの機能を有する。
中間層に用いられる樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、カゼインなどの水溶性樹脂、共重合ナイロン樹脂などのアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シロキサン樹脂など三次元網目構造を形成する熱硬化型樹脂などが挙げられる。
そこで、耐溶剤性、環境安定性に優れた三次元網目構造を形成する熱硬化型樹脂が採用された。
そこで、イソシアネート基がオキシムなどのブロック剤で保護されたブロックイソシアネート化合物を用いる方法が報告され、有機溶剤を用いた塗工液のポットライフはかなり改善されている(例えば、特開2005-115351号公報(特許文献4)参照)。
ブロックイソシアネート化合物と、その化合物中のイソシアネート基と反応可能な活性水素含有基を2つ以上含有する樹脂を、主溶剤が水である水性媒体に溶解または分散させた感光体の中間層用塗工液が、従来の感光体製造プロセスよりも環境負荷が小さく、かつ生産においても液物性の経時安定性が優れていること、
上記の中間層用塗工液から熱硬化を経て形成された中間層が、湿度による体積抵抗の変化が小さいため、環境の変動による感度変化が小さく安定性に優れていること、
分子構造の対称性を崩した特定のエナミン構造を有する化合物が、成膜時に部分的な結晶化などの弊害を起こすことがなく、電荷輸送物質として電荷移動度が高く、高感度で、充分な光応答性を示し、また耐久性に優れること、および
上記の中間層と、上記の特定のエナミン構造を有する化合物を含有する電荷輸送層を備えた感光体が、上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに到った。
前記中間層が、ブロックイソシアネート化合物と、前記ブロックイソシアネート化合物中のイソシアネート基と反応可能な活性水素含有基を2つ以上有する樹脂と、水性媒体とを含む中間層用塗工液から熱硬化を経て形成された層であり、
前記感光層が、電荷発生物質と電荷輸送物質とを含有する単層型感光層、または電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とがこの順もしくは逆順で積層された積層型感光層であり、かつ
前記電荷輸送物質が、一般式(1):
Ar1およびAr2は、同一または異なって、置換基を有してもよいアリール基または1価の複素環基であり;
Ar3およびAr6は、同一または異なって、置換基を有してもよいアリレン基または2価の複素環基であり、
Ar4およびAr5は、同一または異なって、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アリール基、1価の複素環基またはアラルキル基であり、但し、Ar4およびAr5が共に水素原子になることはなく、Ar4およびAr5は、それらが結合している炭素原子と一緒になって原子または原子団を含む環構造を形成してもよく;
R1は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基であり;
R2、R3およびR4は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アリール基、1価の複素環基またはアラルキル基であり;
nは、0〜3の整数であり、nが2または3のとき、複数のR2およびR3は同一でも異なっていてもよく、nが0のとき、Ar3は置換基を有してもよい複素環基である)
で示されるエナミン化合物であることを特徴とする電子写真感光体が提供される。
また、水酸基やアミド基などのイソシアネート基と反応可能な活性水素含有基を2つ以上有する樹脂を用いることにより、イソシアネート化合物と容易に熱硬化反応させることができる。
さらに、本発明では、イソシアネート基が、樹脂中の活性水素含有基に対して0.5以上1.5以下のモル比でブロックイソシアネート化合物中に存在することにより、緻密な硬化膜を形成することができ、感光体として優れた環境特性を実現することができる。
前記電荷輸送物質が、一般式(1)で示されるエナミン化合物であることを特徴とする。
本発明の特徴である中間層用塗工液および電荷輸送物質について説明する。
本発明の感光体の中間層用塗工液は、ブロックイソシアネート化合物と、前記ブロックイソシアネート化合物中のイソシアネート基と反応可能な活性水素含有基を2つ以上有する樹脂と、水性媒体とを含む。
水性媒体を水とすることにより、製造過程におけるVOCによる大気汚染をなくすことができ、従来使用していた石油系溶剤のようなCO2の排出には関係なく、地地球温暖化の防止にも寄与することができる。また、火災の危険性がなく、製造システムを簡略化でき、製造コストを低減できる。
また、中間層を、バインダー樹脂としてイソシアネート化合物とこれに反応するポリオールやポリアミドのような活性水素含有基を有する樹脂による硬化膜とすることにより、親水性の官能基を減少させ、かつ硬化膜を緻密化できるので、耐湿性も改善され、感光体として優れた環境安定性が得られる。さらにイソシアネート化合物は水と容易に反応してしまうが、水中でも安定な保護基がついたブロックイソシアネート化合物を用いることにより、塗工液のポットライフも十分に長くすることができる。よって、水を溶媒としても、長期間安定な塗工液を調製でき、かつ優れた耐湿性を有する中間層も形成できる。
ブロックイソシアネート化合物は、水に溶解あるいは分散可能な水性イソシアネート化合物のイソシアネート基が、例えばオキシムなどのブロック剤で保護された化合物で、加熱により水酸基やアミド基などのイソシアネート基と反応可能な活性水素含有基を有する樹脂と付加反応を開始し、ブロック剤が外れて架橋反応が進む。すなわち、ブロックイソシアネート化合物は、樹脂の架橋剤となる。
これらの有機ポリイソシアネートの中でも、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートベースの有機ポリイソシアネートは、水との親和性を持たせやすく、そのため水への溶解・分散が容易で、また架橋密度を高めることも容易なことから特に好ましい。
これらのブロック剤の中でも、汎用性、製造の簡易さ、作業性の点から、メチルエチルケトオキシムなどのオキシム系化合物およびε−カプロラクタムなどのラクタム系化合物は特に好ましい。
したがって、ブロックイソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネートをオキシム系またはラクタム系のブロック剤でブロック化した構造を有するものが好ましい。
住化バイエルウレタン株式会社製、製品名:バイヒジュールBL5140、BL5235およびVPLS2310;
三井化学ポリウレタン株式会社製、製品名:タケネートWB−700WB−820およびWB−920;
日本ポリウレタン工業株式会社製、開発品名:BWD−102
旭化成ケミカルズ株式会社製、開発品名:X1238、X1248およびX1258
などが挙げられる。
すなわち、硬化剤であるブロックイソシアネートと架橋構造を形成するために2つ以上の水酸基またはアミド基を有する(1つの官能基しか有さない場合には架橋構造とはならず、高分子量となる)ポリオール樹脂やポリアミド樹脂が好適である。また、これらポリオール樹脂やポリアミド樹脂の構造を制御することにより、良好に水に分散および溶解させることができ、さらにこれらの樹脂は基板との接着性が高く、感光体とした時の基板との接触不良による画像欠陥も効果的に防止できる。
日本ポリウレタン工業株式会社製、製品名:AQD−457およびAQD−473、旭硝子株式会社製、製品名:エクセノール420および720、三洋化成工業株式会社製、製品名:サンニックスGP−400、GP−700およびSP−750などのポリエーテルポリオール系樹脂;
日立化成工業株式会社製、製品名:フタルキッドW2343、DIC株式会社製、製品名:ウォーターゾールS−118、CD−520およびBCD−3040、ハリマ化成株式会社製、製品名:ハリディップWH−1188などのポリエステルポリオール系樹脂;
DIC株式会社製、製品名:バーノックWE−300、WE−304およびWE−306、亜細亜工業株式会社製、製品名:WAP−473−FDおよびWAP−548などのポリアクリルポリオール系樹脂;
積水化学工業株式会社製、製品名:エスレックK KW−1およびKW−3などのポリビニルアセタール系樹脂;
信越化学工業株式会社製、製品名:メトローズ65SH−50および65SH−400などの水溶性セルロースエーテルのようなセルロース;
ナガセケムテックス株式会社製、製品名:トレジンFS−350およびFS−500などの水溶性ナイロン(ポリアミド化合物系樹脂)
などが挙げられる。
このモル比(H/B)が0.5未満の場合または1.5を超える場合には、未反応の官能基が多く残存して、架橋密度が低くなり、形成された中間層を有する感光体の環境安定性が低下するおそれがある。
本発明の中間層用塗工液は、無機酸化物微粒子を含んでいるのが好ましい。
無機酸化物微粒子は、感光体としたときの中間層の体積抵抗値を調節し、導電性支持体から感光層へのキャリアの注入を防止すると共に、各種環境下での感光体の電気特性を維持する機能を有する。
無機酸化物微粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化ケイ素、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウムなどが挙げられ、これらの中でも酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウムが好ましく、酸化チタンおよび酸化亜鉛が特に好ましい。
重量比率P/Rが5/5未満の場合には、中間層の特性が結着樹脂の特性に左右され、特に温湿度の変化および繰り返し使用で感光体特性が大きく変化してしまうことがある。また、重量比率P/R比が9/1を越える場合には、無機酸化物微粒子の分散性が低下し、凝集体が生じる可能性が高くなると共に、導電性支持体との接着性が低下するため、黒ポチなどの画像欠陥が発生してしまうことがある。
消泡剤は、中間層用塗工液にごく微量添加することによって泡を抑えることを目的としている。
本発明の中間層用塗工液のように溶剤として水を使用し、また特に水溶性の樹脂を添加する場合には、調製時の分散や攪拌により発泡して分散や攪拌効率を低下させるだけでなく、塗布時に発泡して塗膜欠陥を引き起こすことがある。消泡剤はこれらの問題を抑制する。
消泡剤としては、例えば、サンノプコ株式会社製、製品名:SNデフォーマー444、470、485、PC(ポリエーテル系)、SNデフォーマー1311、1316(シリコーン系)、SNデフォーマー777、328、480、Hー2(オイルコンパウンド系)、日硝産業株式会社製、製品名:TSA750(オイルコンパウンド系)、TSA770(エマルション系)、東レ・ダウコーニング株式会社製:製品名:DK Q1−1247のようなシリコーン・エマルションなどが挙げられる。
消泡剤が0.05重量部を超える場合、感光体の電気特性を悪化させるおそれがあり、0.0005重量部未満の場合、有効な破泡効果が得られないおそれがある。
電子輸送物質としては、例えば、ペリレン系色素類、ジフェノキノンやナフトキノンの誘導体などのキノン類、テトラシアノエチレンやテレフタルマロンジニトリルなどのシアノ化合物、4−ニトロベンズアルデヒドなどのアルデヒド類、アントラキノンやアリザリンなどのアントラキノン類が挙げられる。
水性媒体は、水、水と低級アルコールなどの親水性有機溶剤との混合媒体を意味するが、本発明においては水のみが好ましい。
分散安定剤としては、例えば、株式会社三洋化成製、製品名:キャリボンL−400、エレスタットAP−130、サンスパールPS−8、PDN−173、イオネットS−85およびニューポールPE−61、サンノプコ株式会社製、製品名:ローマPWA−40、ノブコサントRFA、SNディスパーサント2060、5020、5029、5468、7347CおよびSNウェットP、日信化学工業株式会社製、製品名:サーフィノール104EおよびオルフィンPD−003、花王株式会社製、製品名:ポイズ520、530、ホモゲノールL 100、第一工業製薬株式会社製、シャロールAN−103P、AH−144P、ディスコートN−14、東邦化学工業株式会社製、製品名:ディブロジンA−100、ネオスコープ30などが挙げられる。
本発明の電荷輸送物質としての、分子構造の対称性を崩した特定のエナミン化合物は、一般式(1):
Ar1およびAr2は、同一または異なって、置換基を有してもよいアリール基または1価の複素環基であり;
Ar3およびAr6は、同一または異なって、置換基を有してもよいアリレン基または2価の複素環基であり、
Ar4およびAr5は、同一または異なって、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アリール基、1価の複素環基またはアラルキル基であり、但し、Ar4およびAr5が共に水素原子になることはなく、Ar4およびAr5は、それらが結合している炭素原子と一緒になって原子または原子団を含む環構造を形成してもよく;
R1は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基であり;
R2、R3およびR4は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アリール基、1価の複素環基またはアラルキル基であり;
nは、0〜3の整数であり、nが2または3のとき、複数のR2およびR3は同一でも異なっていてもよく、nが0のとき、Ar3は置換基を有してもよい複素環基である)
で示される。
a、bおよびdは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基またはアリール基であり;
jおよびlは、同一または異なって、1〜5の整数であり、mは、1〜6の整数であり、i、kまたはjが2以上のとき、対応する複数のa、bまたはdはそれぞれ同一でも異なってもよくかつそれらに結合する原子または原子団を介して互いに結合して環構造を形成してもよく;
Ar3、Ar4およびAr5は、一般式(1)と同義である)
で示されるエナミン化合物が特に好ましい。
Ar1およびAr2の置換基を有してもよいアリール基としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子などで置換されていてもよいアリール基が挙げられる。具体的には、フェニル基、トリル基、キシリル基、メトキシフェニル基、メチルメトキシフェニル基、4−クロロフェニル基、4−フルオロフェニル基、ナフチル基、メトキシナフチル基、ビフェニリル基などが挙げられる。
Ar1およびAr2の置換基を有してもよい複素環基としては、フリル基、チエニル基、チアゾリル基、ベンゾフリル基およびN−メチルインドリル基などが挙げられる。
Ar3およびAr6の置換基を有してもよい2価複素環基としては、1,4−フリル基、1,4−チエニル基、1,4−チアゾリル基、2,5−ベンゾフリル基、2,5−ベンゾチオフェニル基、2,5−N−メチルインドリル基、2,5−ベンゾチアゾリル基、2,5−、ベンゾオキサゾリル基、3,6−N−エチルカルバゾリル基などが挙げられる。
Ar4およびAr5の置換基を有してもよいアリール基としては、フェニル基、トリル基、メトキシフェニル基、ナフチル基、ピレニル基、ビフェニリル基、フェノキシフェニル基、p−(フェニルチオ)フェニル基、p−スチリルフェニル基などが挙げられる。
Ar4およびAr5の置換基を有してもよい1価の複素環基としては、フリル基、チエニル基、チアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチオフェニル基、N−メチルインドリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、N−エチルカルバゾリル基などが挙げられる。
Ar4およびAr5の置換基を有してもよいアラルキル基としては、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、1−ナフチルメチル基などが挙げられる。
R1の置換基を有してもよいアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。
R2、R3およびR4の置換基を有してもよいアリール基としては、フェニル基、トリル基、メトキシフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
R2、R3およびR4の置換基を有してもよい1価の複素環基としては、フリル基、チエニル基、チアゾリル基などが挙げられる。
R2、R3およびR4の置換基を有してもよいアラルキル基としては、ベンジル基、p−メトキシベンジル基などが挙げられる。
a、bおよびdの置換基を有してもよいアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、トリフルオロメチル基、フルオロメチル基、1−メトキシエチル基などが挙げられる。
a、bおよびdの置換基を有してもよいアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基などが挙げられる。
a、bおよびdの置換基を有してもよいジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基などが挙げられる。
a、bおよびdの置換基を有してもよいアリール基としては、フェニル基、トリル基、メトキシフェニル基、ナフチルなどが挙げられる。
これらの化合物の中でも、例示化合物1、5、28、30、36、46、60、61および72が特に好ましい。
但し、Ar3およびAr6はそれらが結合する窒素原子と共に、R2およびR3はそれらが結合する炭素原子と共に示す。また、Ar4およびAr5が互いに結合して環構造を形成する場合には、Ar4からAr5の欄に渡って、Ar4およびAr5が結合する炭素−炭素二重結合の炭素原子と共にAr4およびAr5が形成する環構造を示す。
まず、下記一般式(3)で示されるアルデヒド化合物またはケトン化合物と、下記一般式(4)で示される2級アミン化合物との脱水縮合反応により、下記一般式(5)で示されるエナミン中間体を得る。
溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼンなどの芳香族系溶剤、ブタノールなどのアルコール類、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類などが挙げられる。
触媒の添加量は、一般式(3)で示されるアルデヒド化合物またはケトン化合物に対して、10分の1(1/10)〜1000分の1(1/1000)モル当量、好ましくは25分の1(1/25)〜500分の1(1/500)モル当量、より好ましくは50分の1(1/50)〜200分の1(1/200)モル当量である。
脱水縮合反応において水が副成して反応を妨げるので、生成した水を溶剤と共沸させ系外に取り除くのが好ましい。これにより、一般式(5)で示されるエナミン中間体を高収率で得ることができる。
ビルスマイヤー反応によるフォルミル化では、一般式(6)で示されるエナミン−ビスカルボニル中間体のうち、R5が水素原子であるエナミン−アルデヒド中間体を得ることができる。
また、フリーデル−クラフト反応によるアシル化では、一般式(6)で示されるエナミン−カルボニル中間体のうち、R5が水素原子以外の基であるエナミン−ビスケト中間体を得ることができる。
次いで、調製したビルスマイヤー試薬2.0当量〜2.3当量に、一般式(5)で示されるエナミン中間体1.0当量を加え、60〜110℃の加熱下で、2〜8時間撹拌する。その後、1〜8規定の水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液で加水分解を行い、一般式(6)で示されるエナミン−ビスカルボニル中間体のうち、R2が水素原子であるエナミン−アルデヒド中間体を高収率で得る。
ここで、R6の置換基を有してもよいアルキル基および置換基を有してもよいアリール基は、例えば、一般式(1)のAr4およびAr5に例示のものが挙げられる。
ここで、R6の置換基を有してもよいアルキル基および置換基を有してもよいアリール基は、例えば、一般式(1)のAr4およびAr5に例示のものが挙げられる。
図1〜3は、本発明の感光体の要部の構成を示す模式断面図である。
図1は、感光層が電荷発生層と電荷輸送層とがこの順で積層された積層型感光層(「機能分離型感光層」ともいう)である積層型感光体の要部の構成を示す模式断面図である。
図2は、感光層が電荷輸送層と電荷発生層とがこの順で積層された逆二層型の積層型感光層である積層型感光体の要部の構成を示す模式断面図である。
図3は、感光層が一層からなる単層型感光層である単層型感光体の要部の構成を示す模式断面図である。
図1および2の積層型感光層はいずれであってもよいが、図1の積層型感光層が好ましい。
図2の感光体は、導電性支持体1の表面に、中間層2と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層4と電荷発生物質を含有する電荷発生層3とがこの順で積層された逆二層型の積層型感光層5がこの順で形成されている。図1および2の積層型感光層はいずれであってもよいが、図1の積層型感光層が好ましい
図3の感光体は、導電性支持体1の表面に、中間層2と、電荷発生物質と電荷輸送物質とを含有する単層型感光層5’が形成されている。
導電性支持体は、感光体の電極としての役割を果たすとともに、他の各層の支持部材としても機能する。
導電性支持体の構成材料は、当該分野で用いられる材料であれば特に限定されない。
具体的には、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、真鍮、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、モリブデン、バナジウム、インジウム、チタン、金、白金などの金属および合金材料:ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリオキシメチレン、ポリスチレン、セルロース、ポリ乳酸などの高分子材料、硬質紙、ガラスなどからなる基体表面に金属箔をラミネートしたもの、金属材料または合金材料を蒸着したもの、導電性高分子、酸化スズ、酸化インジウム、カーボンブラックなどの導電性化合物の層を蒸着もしくは塗布したものなどが挙げられる。
導電性支持体の表面には、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、陽極酸化皮膜処理、薬品、熱水などによる表面処理、着色処理、表面を粗面化するなどの乱反射処理が施されていてもよい。
中間層は、導電性支持体から単層型感光層または積層型感光層への電荷の注入を防止する機能を有する。すなわち、単層型感光層または積層型感光層の帯電性の低下が抑制され、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷の減少が抑えられ、かぶりなどの画像欠陥の発生が防止される。特に、反転現像プロセスによる画像形成の際に、白地部分にトナーからなる微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像かぶりが発生するのが防止される。
中間層用塗工液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、カーテンコーティング法などが挙げられる。これらの塗布方法のうち、塗工液の物性や生産性などを考慮して最適な方法を選択すればよく、浸漬コーティング法、ブレードコーティング法やスプレーコーティング法が特に好ましい。
熱硬化は、熱風乾燥炉および遠赤外線乾燥炉などの公知の装置を用いて行うことができ、その条件は、用いるブロックイソシアネート化合物や樹脂の種類、配合割合などにより適宜設定すればよく、通常、温度110〜150℃、好ましくは130〜150℃で、時間10分間〜1時間程度である。
例えば、導電性の無機酸化物微粒子を含有する膜厚2〜20μmの第1中間層(導電層)と無機酸化物微粒子を含有しない膜厚0.2〜1μmの第2中間層(絶縁層)との組み合わせ、無機酸化物微粒子を含有しない膜厚0.2〜1μmの第1中間層(絶縁層またはブロックング層)と電性の無機酸化物微粒子を含有する膜厚3〜10μmの第2中間層(モアレ防止層)と組み合わせなどが挙げられる。
積層型感光層5は、電荷発生層3と電荷輸送層4とからなる。このように電荷発生機能と電荷輸送機能とを別々の層に担わせることにより、各層を構成する最適な材料を独立して選択することができる。
以下の説明では、電荷発生層と電荷輸送層とがこの順で積層された積層型感光層(図1)について説明するが、逆二層型の積層型感光層(図2)の場合には積層順が異なるだけで基本的に同様である。
電荷発生層は、照射された光を吸収することにより電荷を発生する電荷発生能を有する電荷発生物質を主成分とし、任意に公知の添加剤およびバインダ樹脂(結合剤)を含有する。
具体的には、アゾ系顔料(カルバゾール骨格、スチリルスチルベン骨格、トリフェニルアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、オキサジアゾール骨格、フルオレノン骨格、ビススチルベン骨格、ジスチリルオキサジアゾール骨格またはジスチリルカルバゾール骨格を有する、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料など)、ペリレン系顔料(ペリレンイミド、ペリレン酸無水物など)、多環キノン系顔料(キナクリドン、アントラキノン、ピレンキノンなど)、フタロシアニン系顔料(金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン、ハロゲン化無金属フタロシアニンなど)、インジゴ系顔料(インジゴ、チオインジゴなど)、スクアリリウム色素、アズレニウム色素、チオピリリウム色素、ピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素などの有機顔料または染料、さらにセレン、非晶質シリコンなどの無機材料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は1種を単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
これらの電荷発生物質の中でも、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、ぺリレン系顔料は高感度を有することから特に好ましい。
化学増感剤としては、例えば無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、4−クロルナフタル酸無水物などの酸無水物;テトラシアノエチレン、テレフタルマロンジニトリルなどのシアノ化合物、4−ニトロベンズアルデヒドなどのアルデヒド類;アントラキノン、1−ニトロアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノンなどの多環もしくは複素環ニトロ化合物;ジフェノキノン化合物などの電子吸引性材料およびこれらの電子吸引性材料を高分子化したものなどが挙げられる。
酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)のようなヒンダードフェノールなどのフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミンなどのアミン系酸化防止剤、ビタミンE、ハイドロキノン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカンおよびそれらの誘導体、有機硫黄系化合物、有機燐系化合物などが挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
酸化防止剤の添加量が0.1重量部未満であると、塗布液の安定性の向上および感光体の耐久性の向上に充分な効果が得られないおそれがある。また、酸化防止剤の添加量が40重量部を超えると、感光体特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
レベリング剤としては、例えばシリコーン系レベリング剤などが挙げられる。
可塑剤としては、例えばフタル酸エステルなどの二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、塩素化パラフィンおよびエポキシ型可塑剤などが挙げられる。
乾式法としては、例えば、電荷発生物質を導電性支持体の表面に真空蒸着する方法が挙げられる。
湿式法としては、例えば、電荷発生物質、必要に応じて添加剤およびバインダー樹脂を適当な有機溶剤に溶解または分散して電荷発生層形成用塗布液を調製し、この塗布液を導電性基上に形成された中間層表面に塗布し、次いで乾燥して有機溶剤を除去する方法が挙げられる。
具体的には、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリアミド、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル、ポリアクリルアミド、ポリフェニレンオキサイドなどの熱可塑性樹脂;フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマールなどの熱硬化性樹脂、これらの樹脂の部分架橋物、これらの樹脂に含まれる構成単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂などの絶縁性樹脂)などが挙げられる。これらのバインダ樹脂は1種を単独でまたは2種以上を組み合せて使用することができる。
電荷発生物質が10重量%未満であると、感光体の感度が低下するおそれがある。
一方、電荷発生物質が99重量%を超えると、電荷発生層の膜強度が低下するだけでなく、電荷発生物質の分散性が低下して粗大粒子が増大することがある。そのため、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷が減少し、画像欠陥、特に白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される黒ぽちと呼ばれる画像のかぶりが多くなるおそれがある。
予備粉砕は、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル、超音波分散機などの一般的な粉砕機を用いて行うことができる。
構成物質の樹脂溶液への溶解または分散は、例えば、ペイントシェーカ、ボールミル、サンドミルなどの一般的な分散機を用いて行うことができる。このとき、容器および分散機を構成する部材から摩耗などによって不純物が発生し、塗布液中に混入しないように、分散条件を適宜設定するのが好ましい。
乾燥温度が50℃未満では、乾燥時間が長くなることがある。また、乾燥温度が140℃を超えると、感光体の繰返し使用時の電気的特性が悪化して、得られる画像が劣化するおそれがある。
電荷輸送層は、電荷発生物質で発生した電荷を受け入れ、それを輸送する能力を有する電荷輸送物質と、バインダ樹脂(結合剤)とを主成分として含有する。
これらの樹脂の中でも、ポリカーボネートを主成分とする樹脂、ポリアリレート樹脂およびポリスチレン樹脂は、光化学的に安定で、電荷輸送物質との相溶性に優れ、さらに体積抵抗値が1013Ω以上であって電気絶縁性に優れ、かつ成膜性、電位特性などにも優れるので好ましい。
重量比率E/Bが10/25未満であると、電荷輸送物質に対するバインダ樹脂の相対量比が高くなり、十分な感度が得られないおそれがある。
一方、重量比率E/Bが10/12を超えると、電荷輸送層の耐刷性や感光体の耐久性が低下するおそれがある。
その他の工程およびその条件は、電荷発生層の形成に準ずる。
単層型感光層は、電荷発生物質と、電荷輸送物質と、バインダ樹脂(結合剤)とを主成分として含有する。
単層型感光層は、本発明の効果を阻害しない範囲内で必要に応じて、電荷発生層に含まれるものと同様の添加剤を適量含有していてもよい。
その他の工程およびその条件は、電荷発生層の形成に準ずる。
本発明の感光体は、積層型感光層5および単層型感光層5’の表面に保護層(図示せず)を有していてもよい。
保護層は、感光層の摩耗性の改善やオゾン、窒素酸化物などによる化学的悪影響の防止の機能を有する。
その他の工程およびその条件は、電荷発生層の形成に準ずる。
図4は、本発明の画像形成装置の構成を示す模式側面図である。
図4の画像形成装置20は、本発明の感光体21(例えば、図1〜3の感光体のいずれか1つ)と、帯電手段(帯電器)24と、露光手段28と、現像手段(現像器)25と、転写手段(転写器)26と、クリーニング手段(クリーナ)27と、定着手段(定着器)31と、除電手段(図示せず、クリーニング手段27に併設される)を含んで構成される。図番30は転写紙を示す。
なお、製造例および比較製造例で得られた化合物の化学構造および純度を、以下の装置および条件により測定した。
核磁気共鳴装置:NMR(ブルカー・バイオスピン社製、型式:DPX−200)
サンプル調整 約4mg試料/0.4m(CDCl3)
測定モード 1H(通常)、13C(通常、DPET−135)
液体クロマトグラフィー−質量分析計:LC−MS(サーモフィッシャーサイエンスティフィック社製、フィネガン LCQ Deca マススペクトロメーターシステム)
LCカラム GL-Sciences Inertsil ODS-3 2.1×100mm
カラム温度 40℃
溶離液 メタノール:水=90:10
サンプル注入量 5μl
検出器 UV254nmおよびMS ESI
(製造例1−1)エナミン中間体の製造
トルエン100mlに、下記構造式(8)で示されるN−(p−トリル)−α−ナフチルアミン(N−フェニル−α−ナフチルアミン)21.9g(1.0当量)と、下記構造式(9)で示されるジフェニルアセトアルデヒド20.6g(1.05当量)と、DL−10−カンファースルホン酸0.23g(0.01当量)とを加えて加熱し、副生した水をトルエンと共沸させて系外に取り除きながら、6時間反応を行った。反応終了後、反応溶液を10分の1(1/10)程度に濃縮し、激しく撹拌されているヘキサン100ml中に徐々に滴下し、結晶を生成させた。生成した結晶を濾別し、冷エタノールで洗浄することにより、淡黄色粉末状化合物34.9gを得た。
無水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)100ml中に、氷冷下、オキシ塩化リン18.4g(2.4当量)を徐々に加え、約30分間攪拌し、ビルスマイヤー試薬を調製した。得られた溶液中に、氷冷下、製造例1−1で得られた前記構造式(10)で示されるエナミン中間体19.9g(1.0当量)を徐々に加えた。その後、徐々に加熱して反応温度を110℃まで上げ、110℃を保つように加熱しながら3時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を放冷し、冷却した4規定(4N)水酸化ナトリウム水溶液800ml中に徐々に加え、沈殿を生じさせた。生じた沈殿を濾別し、充分に水洗した後、エタノールと酢酸エチルとの混合溶剤で再結晶を行うことによって、黄色粉末状化合物19.2gを得た。
製造例1−2で得られた前記構造式(11)で示されるエナミン−ビスアルデヒド中間体9.08g(1.0当量)と、下記構造式(12)で示されるジエチルシンナミルホスホネート12.2g(2.4当量)とを、無水DMF80mlに溶解させ、その溶液中にカリウムt−ブトキシド5.6g(2.5当量)を0℃で徐々に加えた。その後、室温で1時間放置し、さらに50℃まで加熱し、50℃を保つように加熱しながら5時間撹拌した。反応混合物を放冷した後、過剰のメタノール中に注いだ。析出物を回収し、トルエンに溶解させてトルエン溶液とした。このトルエン溶液を分液ロートに移し、水洗した後、有機層を取出し、取出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥後、固形物を取り除いた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことによって、黄色結晶11.7gを得た。
また、得られた結晶の重クロロホルム(化学式:CDCl3)中におけるNMRスペクトルを測定したところ、例示化合物No.28のエナミン化合物の構造を支持するスペクトルが得られた(図5〜9参照)。また、LC−MSの分析結果から、得られた例示化合物No.28のエナミン化合物の純度は99.7%であることが判った。
なお、図5〜9における横軸は化学シフト値δ(ppm)を示し、図5におけるシグナルと横軸との間に記載されている値は、各シグナルの相対的な積分値を示す。
前記構造式(8)で示されるN−(p−トリル)−α−ナフチルアミン23.3g(1.0当量)に代えて、N−(m−トリル)−α−ナフチルアミン4.59g(1.0当量)を用いたこと以外は、製造例1と同様にして、脱水縮合反応を行うことによってエナミン中間体を得(収率:89%)、次いでビルスマイヤー反応を行うことによってエナミン−ビスアルデヒド中間体を得(収率:82%)、さらにウィッティッヒ−ホルナー反応を行うことによって、黄色粉末状化合物7.67gを得た。なお、各反応において使用した試薬と基質との当量関係は、製造例1で使用した試薬と基質との当量関係と同様である。
製造例1−2で得られた前記構造式(11)で示されるエナミン−ビスアルデヒド中間体2.06g(1.0当量)と、下記構造式(13)で示されるウィッティッヒ試薬3.06g(2.4当量)とを、無水DMF15mlに溶解させ、その溶液中にカリウムt−ブトキシド1.42g(2.5当量)を0℃で徐々に加えた。その後、室温で1時間放置し、さらに50℃まで加熱し、50℃を保つように加熱しながら5時間撹拌した。反応混合物を放冷した後、過剰のメタノール中に注いだ。析出物を回収し、トルエンに溶解させてトルエン溶液とした。このトルエン溶液を分液ロートに移し、水洗した後、有機層を取出し、取出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥後、固形物を取り除いた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことによって、黄色結晶2.69gを得た。
また、LC−MSの分析結果から、得られた例示化合物No.46のエナミン化合物の純度は99.8%であることが判った。
以上のように、前記構造式(11)で示されるエナミン−ビスアルデヒド中間体と前記構造式(13)で示されるウィッティッヒ試薬とのウィッティッヒ−ホルナー反応を行うことによって、表1−10に示される例示化合物No.46のエナミン化合物を得ることができた。
製造例1−2で得られた前記構造式(11)で示されるエナミン−ビスアルデヒド中間体2.0g(1.0当量)を無水THF15mlに溶解させ、その溶液中に、アリルブロマイドと金属マグネシウムとから調製したグリニャール試薬であるアリルマグネシウムブロマイドのTHF溶液(モル濃度:1.0mol/l)10.5ml(2.3当量)を0℃で徐々に加えた。その後、0℃で0.5時間撹拌した後、薄層クロマトグラフィーによって反応の進行状況を確認したところ、明確な反応生成物は確認できず、複数の生成物が確認された。常法により、後処理、抽出、濃縮を行った後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことによって、反応混合物の分離、精製を行った。
しかしながら、目的とする下記構造式(14)で示される化合物を得ることはできなかった。
電荷輸送層中における電荷輸送物質の電荷移動度を測定するために、以下のようにして試料および比較試料を作製し、評価した。
<試料および比較試料の作製>
導電性支持体として、表面にアルミニウムを蒸着した膜厚80μmのポリエステルフィルムを用い、その蒸着面上に電荷発生層および電荷輸送層を順次形成して試料および比較試料とした。
電荷発生物質としての下記構造式(15)で示されるアゾ化合物1重量部を、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、製品名:PKHH)1重量部をTHF99重量部に溶解させた樹脂溶液に加えた後、ペイントシェーカを用いて2時間分散処理して電荷発生層用塗布液を調製した。
得られた電荷発生層用塗布液をベーカアプリケータ法で導電性支持体上に塗布し、得られた塗膜を自然乾燥させ、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
得られた電荷輸送層用塗布液を、先に形成した電荷発生層上にベーカアプリケータ法で塗布し、得られた塗膜を自然乾燥させ、膜厚10μmの電荷輸送層を形成し、電荷移動度測定用試料を得た。
電荷輸送物質としての例示化合物No.1に代えて、それぞれ表1−1に示される例示化合物No.3、表1−9に示される例示化合物No.61、表1−16に示される例示化合物No.106、表1−21に示される例示化合物No.146および表1−26に示される例示化合物No.177を用いたこと以外は、試料1と同様にして、5種類の電荷移動度測定用試料を得た。
電荷輸送物質としての例示化合物No.1に代えて、下記構造式(16)で示される比較化合物Aを用いたこと以外は、試料1と同様にして、電荷移動度測定用試料を得た。
電荷輸送物質としての例示化合物No.1に代えて、下記構造式(17)で示される比較化合物Bを用いたこと以外は、試料1と同様にして、電荷移動度測定用試料を得た。
電荷輸送物質としての例示化合物No.1に代えて、下記構造式(18)で示される比較化合物Cを用いたこと以外は、試料1と同様にして、電荷移動度測定用試料を得た。
電荷輸送物質としての例示化合物No.1に代えて、下記構造式(19)で示される比較化合物D(トリフェニルアミンダイマー、Triphenylamine dimer、略称:TPD)を用いたこと以外は、試料1と同様にして、電荷移動度測定用試料を得た。
得られた試料1〜6および比較試料1〜4の各電荷移動度測定用試料について、電荷輸送層の表面に金を蒸着し、室温(25℃)、減圧下(1×10-4〜1×10-3Pa)で、飛行時間(Time-of-Flight)法により、電界強度2.5×105V/cmのときの電荷輸送層中における電荷輸送物質の電荷移動度を測定した。
得られた結果を電荷輸送層に含まれる電荷輸送物質およびイオン化ポテンシャル(eV)と共に表2に示す。
(1)一般式(1)で示されるような分子構造の対称性を崩したエナミン化合物(試料1〜6)は、従来公知の電荷輸送物質である比較化合物DのようなTPD(比較試料4)に比べて、2桁以上高い電荷移動度を有する。
(2)一般式(1)で示されるような分子構造の対称性を崩したエナミン化合物(試料1〜6)は、従来公知のエナミン化合物(比較試料1〜3)に比べて、1桁以上高い電荷移動度を有する。
<感光体の作製>
厚さ0.8mm×直径30mm(φ)×長さ340mmのアルミニウム製の円筒型導電性支持体上に中間層および感光層をこの順で形成して感光体を作製し、その特性を評価した。
無機酸化物微粒子としての、酸化アルミニウム(Al2O3)と二酸化ジルコニウム(ZrO2)とで表面処理された樹枝状の酸化チタン微粒子(石原産業株式会社製、製品名:TTO−D−1)12重量部と、樹脂材料としての水性ポリアクリルポリオール(固形分:45%、OH価:80、DIC株式会社製、製品名:バーノックWE−300)8.4重量部と、ブロックイソシアネート化合物(固形分:40%、NCO含有率:5.4%、三井化学ポリウレタン株式会社製、製品名:タケネートWB−920)4.2重量部と、消泡剤(ポリエーテル系抑泡剤、サンノプコ株式会社製、製品名:SNデフォーマー470)0.5重量部と、分散安定剤(サンノプコ株式会社製、製品名:ローマPWA−40)0.5重量部とを、水69重量部に加え、ペイントシェーカを用いて6時間分散処理して中間層用塗布液を調製した。
ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基は、樹脂の活性水素含有基に対して1.0のモル比で、無機酸化物微粒子(P)は、架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂の合計:R)に対して6/4の重量比(P/R)であった。
得られた中間層用塗布液を浸漬塗布装置の塗布槽に満たし、導電性支持体を浸漬した後引き上げ、得られた塗膜を温度150℃で30分間乾燥・硬化させて、膜厚1.0μmの中間層を形成した。
以上のようにして、実施例1の電子写真感光体を作製した。
電荷輸送物質としての例示化合物No.1に代えて、それぞれ例示化合物No.5、例示化合物No.30、例示化合物No.36、例示化合物No.46、例示化合物No.61および例示化合物No.72を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜6の6種類の感光体を作製した。
中間層用塗工液を下記成分で調製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例8の感光体を作製した。
無機酸化物微粒子としての酸化チタン微粒子(石原産業株式会社製、製品名:TTO−D−1):12重量部
樹脂としてのポリエーテルポリオール(固形分:35%、OH価:60、日本ポリウレタン工業株式会社製、製品名:AQD−473):14.3重量部
ブロックイソシアネート化合物(固形分:42%、NCO含有率:7.5%、日本ポリウレタン工業株式会社製、開発品名:BWD−102):7.1重量部
消泡剤(ポリエーテル系抑泡剤、サンノプコ株式会社製、製品名:SNデフォーマー470):0.08重量部
水:67重量部
ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基は、樹脂の活性水素含有基に対して1.0のモル比で、無機酸化物微粒子(P)は、架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂の合計:R)に対して6/4の重量比(P/R)であった。
中間層用塗工液を下記成分で調製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例9の感光体を作製した。
無機酸化物微粒子としての酸化チタン微粒子(石原産業株式会社製、製品名:TTO−D−1):12重量部
樹脂としての水性ポリオールのポリビニルアセタール系樹脂(固形分:20%、OH価:570、積水化学工業株式会社製、製品名:エスレックK KW−3):3.2重量部
ブロックイソシアネート化合物(固形分:37.5%、NCO含有率:3.7%、住化バイエルウレタン株式会社製、製品名:バイヒジュールVPLS2310):19.6重量部
消泡剤(ポリエーテル系、サンノプコ株式会社製、製品名:SNデフォーマー470):0.5重量部
水:65重量部
ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基は、樹脂の活性水素含有基に対して1.0のモル比で、無機酸化物微粒子(P)は、架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂の合計:R)に対して6/4の重量比(P/R)であった。
中間層用塗工液を下記成分で調製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例10の感光体を作製した。
無機酸化物微粒子としての酸化亜鉛微粒子(堺化学工業株式会社製、製品名:STR−60):12重量部
樹脂としての水溶性セルロースエーテル(OH価:360、信越化学工業株式会社製、製品名:メトローズ65SH−400):3.2重量部
ブロックイソシアネート化合物(固形分:37.5%、NCO含有率:3.7%、住化バイエルウレタン株式会社製、製品名:バイヒジュールVPLS2310):19.6重量部
消泡剤(ポリエーテル系、サンノプコ株式会社製、製品名:SNデフォーマー470):0.5重量部
水:65重量部
ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基は、樹脂の活性水素含有基に対して1.0のモル比で、無機酸化物微粒子(P)は、架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂の合計:R)に対して6/4の重量比(P/R)であった。
中間層用塗工液を下記成分で調製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例11の感光体を作製した。
無機酸化物微粒子としての酸化亜鉛微粒子(堺化学工業株式会社製、製品名:STR−60):12重量部
樹脂としての水溶性ナイロン(固形分:20%、NH含有率:10%、ナガセケムテックス株式会社製、製品名:トレジンFS−350):8.8重量部
ブロックイソシアネート化合物(固形分:45%、水分散型、NCO含有率:7%、三井化学ポリウレタン株式会社製、製品名:タケネートWB−820):13.8重量部
消泡剤(ポリエーテル系、サンノプコ株式会社製、製品名:SNデフォーマー470):0.5重量部
分散安定剤分散安定剤(サンノプコ株式会社製、製品名:ローマPWA−40):0.5重量部
水:65重量部
ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基は、樹脂の活性水素含有基に対して1.0のモル比で、無機酸化物微粒子(P)は、架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂の合計:R)に対して6/4の重量比(P/R)であった。
中間層用塗工液を下記成分で調製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例12の感光体を作製した。
無機酸化物微粒子としての酸化チタン微粒子(石原産業株式会社製、製品名:TTO−D−1):12重量部
樹脂としてのポリエーテルポリオール(固形分:35%、OH価:60、日本ポリウレタン工業株式会社製、製品名:AQD−473):18.4重量部
ブロックイソシアネート化合物(固形分:42%、NCO含有率:7.5%、日本ポリウレタン工業株式会社製、開発品名:BWD−102):3.7重量部
消泡剤(ポリエーテル系、サンノプコ株式会社製、製品名:SNデフォーマー470):0.5重量部
水:66重量部
ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基は、樹脂の活性水素含有基に対して0.4のモル比で、無機酸化物微粒子(P)は、架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂の合計:R)に対して6/4の重量比(P/R)であった。
中間層用塗工液を下記成分で調製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例13の感光体を作製した。
無機酸化物微粒子としての酸化チタン微粒子(石原産業株式会社製、製品名:TTO−D−1):12重量部
樹脂としてのポリエーテルポリオール(固形分:35%、OH価:60、日本ポリウレタン工業株式会社製、製品名:AQD−473):11.7重量部
ブロックイソシアネート化合物(固形分:42%、NCO含有率:7.5%、日本ポリウレタン工業株式会社製、開発品名:BWD−102):9.3重量部
消泡剤(ポリエーテル系、サンノプコ株式会社製、製品名:SNデフォーマー470):0.5重量部
水:67重量部
ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基は、樹脂の活性水素含有基に対して1.6のモル比で、無機酸化物微粒子(P)は、架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂の合計:R)に対して6/4の重量比(P/R)であった。
電荷輸送物質として例示化合物1に代えて前記構造式(19)で示される比較化合物Dを用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の感光体を作製した。
ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基は、樹脂の活性水素含有基に対して1.0のモル比で、無機酸化物微粒子(P)は、架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂の合計:R)に対して6/4の重量比(P/R)であった。
電荷輸送物質として例示化合物1に代えて下記構造式(20)で示される比較化合物Eを用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の感光体を作製した。
ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基は、樹脂の活性水素含有基に対して1.0のモル比で、無機酸化物微粒子(P)は、架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂の合計:R)に対して6/4の重量比(P/R)であった。
中間層用塗工液(有機溶剤系、硬化剤なし)を下記成分で調製したこと以外は、実施例1と同様にして比較例3の感光体を作製した。
無機酸化物微粒子としての酸化チタン微粒子(石原産業株式会社製、製品名:TTO−D−1):6重量部
樹脂としての共重合ナイロン(東レ株式会社製、製品名:アミランCM8000):4重量部
メタノール:50重量部
1,3−ジオキソラン:40重量部
電荷輸送物質として例示化合物1に代えて前記構造式(19)で示される比較化合物Dを用いたこと以外は、比較例3と同様にして比較例4の感光体を作製した(有機溶剤系、硬化なし)。
電荷輸送物質として例示化合物1に代えて前記構造式(20)で示される比較化合物Eを用いたこと以外は、比較例3と同様にして比較例5の感光体を作製した(有機溶剤系、硬化なし)。
中間層用塗工液(水系、硬化剤なし)を下記成分で調製したこと以外は、実施例1と同様にして比較例6の感光体を作製した。
無機酸化物微粒子としての酸化チタン微粒子(石原産業株式会社製、製品名:TTO−D−1):6重量部
樹脂としての水性ポリオールのポリビニルアセタール系樹脂(固形分:20%、OH価:570、積水化学工業株式会社製、製品名:エスレックK KW−3):20重量部
水:74重量部
電荷輸送物質として例示化合物1に代えて前記構造式(19)で示される比較化合物Dを用いたこと以外は、比較例6と同様にして比較例7の感光体を作製した(水系、硬化なし)。
電荷輸送物質として例示化合物1に代えて前記構造式(20)で示される比較化合物Eを用いたこと以外は、比較例6と同様にして比較例8の感光体を作製した(水系、硬化なし)。
中間層用塗工液を下記成分で調製したこと以外は、実施例1と同様にして比較例9の感光体を作製した(水系、ブロック型でないイソシアネート化合物(20℃、20時間でNCO基が完全に分解する)を使用)。
無機酸化物微粒子としての酸化チタン微粒子(石原産業株式会社製、製品名:TTO−D−1):12重量部
樹脂としての水性ポリオールのポリビニルアセタール系樹脂(固形分:20%、OH価:570、積水化学工業株式会社製、製品名:エスレックK KW−3):11.2重量部
水分散型イソシアネート(非ブロック型、NCO含有率:16.5%、旭化成ケミカルズ株式会社製、製品名:デュラネートWB40−100):5.8重量部
消泡剤(ポリエーテル系、サンノプコ株式会社製、製品名:SNデフォーマー470):0.5重量部
水:71重量部
ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基は、樹脂の活性水素含有基に対して1.0のモル比で、無機酸化物微粒子(P)は、架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂の合計:R)に対して6/4の重量比(P/R)であった。
電荷輸送物質として例示化合物1に代えて前記構造式(19)で示される比較化合物Dを用いたこと以外は、比較例9と同様にして比較例10の感光体を作製した(水系、ブロック型でないイソシアネート化合物(20℃、20時間でNCO基が完全に分解する)を使用)。
電荷輸送物質として例示化合物1に代えて前記構造式(20)で示される比較化合物Eを用いたこと以外は、比較例9と同様にして比較例11の感光体を作製した(水系、ブロック型でないイソシアネート化合物(20℃、20時間でNCO基が完全に分解する)を使用)。
中間層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較例12の感光体を作製した。
電荷輸送物質として例示化合物1に代えて前記構造式(19)で示される比較化合物Dを用いたこと以外は、比較例12と同様にして、比較例13の感光体を作製した。
電荷輸送物質として例示化合物1に代えて前記構造式(20)で示される比較化合物Eを用いたこと以外は、比較例12と同様にして、比較例14の感光体を作製した。
実施例1〜13および比較例1〜14で得られた各感光体を、以下のようにして評価した。
得られた結果を、中間層用塗工液の調製に用いた溶剤および用いた電荷輸送物質(電荷輸送材料)と共に表3−1および3−2に示す。
得られた感光体を、画像形成過程における感光体の表面電位を測定できるように表面電位計(ジェンテック社製、型式:CATE751)を設けた、市販のデジタル複写機(シャープ株式会社製、型式:MX−450)にそれぞれ搭載し、各感光体の電気特性を評価した。
まず、温度22℃、相対湿度65%のN/N環境下において、帯電器による帯電動作直後の感光体の表面電位を帯電電位V0[V]として測定した。
また、レーザ光(波長:780nm)によって露光を施した直後の感光体の表面電位をN/N環境下における残留電位VL[V]として測定した。
さらに、N/N環境下と同様にして、温度25℃、相対湿度85%のN/H環境下および温度25℃、相対湿度5%のN/L環境下における残留電位VL[V]を測定し、これらの差を電位変動ΔVL[V](環境特性)として求めた。すなわち、電位変動ΔVLが小さい程、環境安定性に優れると評価できる。
次いで、N/N環境下において、所定のパターンのテスト画像(ISO 19752に規定された文字テストチャート)を記録用紙10万枚に連続して複写させた後、初期と同様にして帯電動作直後の感光体の表面電位を帯電電位V0[V]と露光後の残留電位VL[V]を測定し、これらの差を電位変動ΔVLS[V]として求めた。すなわち、電位変動ΔVLSが小さい程、疲労特性に優れると評価できる。
実施例1〜13および比較例1〜11において調製した中間層用塗工液を常温常湿(温度20℃、湿度50%)下で3ヶ月間保存した後、同様にして感光体を作成し、得られた感光体について、N/N環境下で残留電位VL[V]を測定し、上記(1)の初期残留電位VL[V]との差を、ポットライフの評価指標となる電位変動ΔVLP[V]として求めた。
実施例1〜13および比較例1、2、9〜11において調製した中間層用塗工液0.5gを、それぞれ寸法50mm×50mmのガラス板の表面に、ワイヤーバー法により均一に塗布し、得られた塗膜を温度150℃で30分間乾燥・硬化させてサンプルを得た。
得られたサンプルを、それぞれ20℃のアセトン中に回転数30rpmで攪拌しながら1日間浸漬し、下式により浸漬前の初期重量と浸漬後重量との重量差から[%]硬化度を求めた。
硬化度(%)=(1−(初期重量−浸漬後重量)/(初期重量))×100
表面電位が600Vになるように感光体を正帯電させ、出力300Wのキセノンランプ光を干渉フィルターで分光し、波長400nm、NDフィルターで強度5μW/cm2に調整した光で、帯電された感光体の表面を露光し、静電紙試験装置(商品名:EPA−8200、株式会社川口電機製作所製)を用いて、感光体の表面電位を300Vまで半減させるのに要した露光量を半減露光量E1/2[μJ/cm2]として測定した。
得られた感光体を、正規現像ができ、かつ感光体への露光光量と感光体の回転周速とを変化させることができるように改造された、レーザを露光光源とする市販のデジタル複写機(シャープ株式会社製、型式:MX−450)にそれぞれ搭載し、各感光体の画像品質を評価した。
具体的には、温度25℃、相対湿度55%(55%RH)の常温常湿環境下および温度5℃、相対湿度20%(20%RH)の低温低湿環境下において、感光体の回転周速を変化させることにより感光体に対する露光の開始から現像の終了までの時間を50ミリ秒(50msec)、90ミリ秒(msec)および130ミリ秒(msec)に調整し、記録紙上に画像を形成し、得られた画像を目視観察し、その品質を評価した。
露光光量を増加させることにより地汚れが発生しなくなった場合には、画質が良好であると評価し、地汚れが発生しているがその程度が露光光量を増加させる前よりも改善された場合には、再度露光光量を増加させて画像を形成した。これを地汚れの程度が改善されなくなるまで繰返し、最終的に得られた画像の品質を評価結果とした。
実施例1〜8および比較例1、2において作製した感光体を、プロセススピード117mm/secに設定した、市販のデジタル複写機(シャープ株式会社製、型式:MX−450)にそれぞれ搭載し、各感光体の耐刷性を評価した。
N/N環境下において、所定のパターンのテスト画像(ISO 19752に規定された文字テストチャート)を記録用紙4万枚に連続して複写させた後、感光層の膜厚d1を測定し、予め測定しておいた作製時の感光体の膜厚d0との差を、耐刷性の評価指標となる膜減り量Δd(=d0−d1)として求めた。
(1)本発明の感光体(実施例1〜11)は、電荷移動度の低い電荷輸送物質を用いた感光体(比較例1、2)と比較して、半減露光量(E1/2)が小さく、感度に優れている。
(2)本発明の感光体(実施例1〜11)は、比較例2、3の感光体よりも、応答性に優れ、高速で画像を形成する場合や低温低湿環境下で画像を形成する場合にも、高品質の画像を提供することできる。
(4)比較例3と同様の系で、かつ電荷移動度の低い電荷輸送物質を用いた感光体(比較例4、5)は、比較例1、2の感光体と同様に感度が低く、本発明の感光体(実施例1〜11)と比較して、高速プロセスにおける画像品位が劣っている。
一方、樹脂に対するブロックイソシアネート化合物(硬化剤)の量が多い場合、すなわち樹脂中のOH基に対するNCO基が多い場合(実施例13)には、環境特性はそれほど低下しないが、疲労特性や塗液の保存性が低下する。これは、過剰に存在するイソシアネート基が水分と反応し電気特性に影響を及ぼすような不純物が生成したためと考えられる。
(7)比較例6と同様の系で、かつ電荷移動度の低い電荷輸送物質を用いた感光体(比較例7、8)は、比較例6の感光体と同様に環境特性が極めて低く、感度が低く、本発明の感光体(実施例1〜11)と比較して、高速プロセスにおける画像品位が劣っている。
(9)比較例9と同様の系で、かつ電荷移動度の低い電荷輸送物質を用いた感光体(比較例10、11)は、比較例9の感光体と同様に感度が低く、本発明の感光体(実施例1〜11)と比較して、高速プロセスにおける画像品位が劣っている。
(11)本発明の感光体(実施例1〜8)は、電荷移動度の低い電荷輸送物質を用いた感光体(比較例1、2)と比較して、膜減り量Δdが小さく、耐刷性に優れている。
2 中間層(下引き層)
3 電荷発生層
4 電荷輸送層
5 積層型感光層
5’ 単層型感光層
22 回転軸線
23、29 矢符
24 帯電手段(帯電器)
24a 帯電ローラ
24b バイアス電源
25 現像手段(現像器)
25a 現像ローラ
25b ケーシング
26 転写手段(転写器)
27 クリーニング手段(クリーナ)
27a クリーニングブレード
27b 回収用ケーシング
28 露光手段
28a 光
30 転写紙
31 定着手段(定着器)
31a 加熱ローラ
31b 加圧ローラ
Claims (8)
- 導電性支持体と感光層との間に中間層を備えてなり、
前記中間層が、ブロックイソシアネート化合物と、前記ブロックイソシアネート化合物中のイソシアネート基と反応可能な活性水素含有基を2つ以上有する樹脂と、水とを含む中間層用塗工液から熱硬化を経て形成された層であり、
前記感光層が、電荷発生物質と電荷輸送物質とを含有する単層型感光層、または電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とがこの順もしくは逆順で積層された積層型感光層であり、かつ
前記電荷輸送物質が、次式:
- 前記活性水素含有基が、水酸基またはアミド基である請求項1に記載の電子写真感光体。
- 前記イソシアネート基が、前記活性水素含有基に対して0.5以上1.5以下のモル比で前記ブロックイソシアネート化合物中に存在する請求項1または2に記載の電子写真感光体。
- 前記ブロックイソシアネート化合物が、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネートをオキシム系またはラクタム系のブロック剤でブロック化した構造を有する請求項1〜3のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
- 前記樹脂が、ポリエーテルポリオール系樹脂、ポリエステルポリオール系樹脂、ポリアクリルポリオール系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、セルロースおよびポリアミド系樹脂から選択される請求項1〜4のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
- 前記中間層用塗工液が、無機酸化物微粒子をさらに含む請求項1〜5のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
- 前記無機酸化物微粒子が、酸化チタンまたは酸化亜鉛の微粒子である請求項6に記載の電子写真感光体。
- 請求項1〜7のいずれか1つに記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、露光によって形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、現像によって形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、転写された前記トナー像を前記記録媒体上に定着して画像を形成する定着手段と、前記電子写真感光体に残留するトナーを除去し回収するクリーニング手段と、前記電子写真感光体に残留する表面電荷を除電する除電手段を少なくとも備えたことを特徴とする画像形成装置。
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