JP5346368B2 - 高周波誘導加熱コイル - Google Patents
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Description
高周波焼入処理に用いられる高周波誘導加熱コイルにおいて、
環状に形成された1つの主加熱導体及び2つの補助加熱導体を備え、
前記補助加熱導体の内径が前記主加熱導体の内径より大きく形成され、
前記補助加熱導体が前記主加熱導体の厚さ方向両端側のそれぞれに並んで配置され、
前記2つの補助加熱導体が互いに並列に接続され、かつ前記主加熱導体と前記2つの補助加熱導体の組合せとが直列に接続されて、前記主加熱導体の電流と前記2つの補助加熱導体の電流とが同一の周方向に流れるように構成されている。
本発明の一態様における高周波誘導加熱コイルは、
高周波焼入処理に用いられる高周波誘導加熱コイルにおいて、
環状に形成された1つの主加熱導体及び2つの補助加熱導体を備え、
前記補助加熱導体の内径が前記主加熱導体の内径より大きく形成され、
前記補助加熱導体が前記主加熱導体の厚さ方向両端側のそれぞれに並んで配置され、
前記2つの補助加熱導体が互いに並列に接続され、かつ前記主加熱導体と前記2つの補助加熱導体の組合せとが直列に接続されて、前記主加熱導体の電流と前記2つの補助加熱導体の電流とが同一の周方向に流れるように構成されている。
そのため、高周波誘導加熱コイルにより焼入対象物の表面に形成される焼入硬化層の形状が、高周波加熱コイルの厚さ方向両側で同じように形成されることとなる。よって、このような高周波誘導加熱コイルを用いて焼入対象物に高周波焼入処理を施した場合、焼入開始部分及び焼入終了部分の両方において、焼入硬化層の領域と未焼入領域との境界(以下、「焼境」という)の位置及び焼入硬化層の深さを最適に調節することができる。また、主加熱導体の厚さ方向両側に補助導体が接続されるため、主加熱導体に高周波電流が局所的に流れることを防止できる。よって、主加熱導体の耐久性を高めることができ、高周波誘導加熱コイルの耐久性を高めることができる。さらに、主加熱導体に高周波電流が局所的に流れることが防止されることに伴って、主加熱導体の厚さを薄くして加熱幅を狭くすることができるので、このことによってもまた、焼入開始部分及び焼入終了部分における焼境の位置及び焼入硬化層の深さを最適に調節することができる。
図1に示すように、焼入装置1は、焼入対象物である鉄鋼部材Sの表面を加熱する加熱コイル2と、従来におけるソレノイドコイル方式の焼入装置10と同様の冷却器Cとを備えている。加熱コイル2と冷却器Cとは、加熱コイル2の厚さ方向(矢印Aに沿った方向)に互いに間隔を空けて配置されている。加熱コイル2は環状に形成された1つの主加熱導体3を備えており、主加熱導体3は内径d1を有している。さらに、加熱コイル2は、環状に形成される2つの補助加熱導体4を備えており、補助加熱導体4は内径d2を有している。
図1を参照すると、補助加熱導体4は、主加熱導体3の厚さ方向両端側のそれぞれに並んで配置されている。環状の主加熱導体3の中心と、環状の補助加熱導体4の中心と、冷却器Cの中心とは同一軸線上に配置されている。主加熱導体3の断面は、この主加熱導体3の厚さ方向中心を基準として対称に形成されている。より詳細には、主加熱導体3の断面外形は略四角形状に形成され、加熱コイル2の内周側に位置する主加熱導体3の断面外形の両角部にはテーパ3aが形成されている。主加熱導体3の断面内部には四角形状の冷却水経路5が形成され、この冷却水経路5に、主加熱導体3を冷却する冷却水を通すことができるように構成されている。2つの補助加熱導体4の断面は、互いに対して加熱コイル2の厚さ方向に対称に形成されている。より詳細には、補助加熱導体4の内周面4aと加熱コイル2の厚さ方向外側における補助加熱導体4の端面4bとの間には傾斜面4cが形成されている一方で、補助加熱導体4の内周面4aと加熱コイル2の厚さ方向中央側における補助加熱導体4の端面4dとの間における角部4eは、略直角に形成されている。補助加熱導体4の断面内部には補助加熱導体4の外形に対応して冷却水経路6が形成され、この冷却水経路6に、補助加熱導体4を冷却する冷却水を通すことができるように構成されている。補助加熱導体4の内径d2は主加熱導体3の内径d1より大きく形成されており、補助加熱導体4は主加熱導体3に対して外周側にシフトして配置されている。
図2を参照すると、2つの補助加熱導体4が互いに並列に接続され、電源Pと、主加熱導体3と、2つの補助加熱導体4の組合せとが直列に接続されており、主加熱導体3の電流I1と2つの補助加熱導体4の電流I2とが同一の周方向に流れるように構成されている。補助加熱導体3の電流I2の大きさは主加熱導体3の電流の大きさに対して約半分となっており、2つの補助加熱導体3にそれぞれ流れる電流I2の大きさは略等しくなっている。
図1に示すように、鉄鋼部材Sを加熱コイル2から冷却器Cに向かうように矢印Aの方向に挿通する。このとき、鉄鋼部材Sの表面と主加熱導体3の内周との間隔は距離l1に維持され、鉄鋼部材Sの表面と補助加熱導体4の内周との間隔は距離l2に維持される。このような状態で、鉄鋼部材Sの表面は加熱コイル2によって加熱されて、鉄鋼部材Sの表面に焼入硬化層t(図1で斜線部により示す)が形成される。この焼入硬化層tは、加熱コイル2の厚さ方向中心を基準として加熱コイル2の厚さ方向に対称に形成される。ここで、補助加熱導体4は、その傾斜面4cによって鉄鋼部材Sの表面から離れているので、鉄鋼部材Sの表面の予備加熱のために主に用いられることとなる。そのため、焼入硬化層tにおける加熱コイル2の厚さ方向両側部分の深さが急激に減少して、焼入硬化層tの領域と未焼入領域との境界(以下、「焼境」という)の位置、及び焼境周辺における焼入硬化層の深さを最適に調節することができる。
図3(a)に示すように、鉄鋼部材Sを加熱コイル2から冷却器Cに向かうように矢印Aの方向に挿通する。図3(a)に示すような鉄鋼部材Sの焼入開始部分から図3(b)に示すような焼入終了部分に向かって、鉄鋼部材Sの表面が連続的に加熱された後に、この加熱された表面が、冷却器Cによって鉄鋼部材Sの焼入開始部分から焼入終了部分に向かって連続的に冷却される。これによって、焼入硬化層tが鉄鋼部材Sの焼入開始部分から焼入終了部分に向かって延びるように形成される。なお、図3(a)及び図3(b)の焼入硬化層tでは、加熱コイル2によって加熱されただけの領域を斜線部によって示し、加熱コイル2によって加熱された後に冷却器Cによって冷却された領域を網掛部によって示している。
本発明の実施例として、本発明の実施形態に係る加熱コイル2を有する焼入装置1を用いて焼入対象物に焼入処理を施した。ここで、焼入対象物は、直径32mmかつ長さ200mmの円柱形状に形成された鉄鋼部材とし、焼入条件は、周波数3.3kHz、加熱出力288kW、及び焼入対象物の相対移動速度45mm/secとする。熱処理規格については、焼境範囲Bを、鉄鋼部材の長手方向端から6.5mmから14mmまでの範囲に定めた。また、端部近傍の所要深さの閾値h0を5mmに定め、鉄鋼部材の長手方向端から18.5mmまでの間でこの閾値h0以上となることを条件とした。このような条件で鉄鋼部材の表面に焼入処理を施した結果、加熱コイル2内を流れる冷却水の温度は13.8度となった。なお、鉄鋼部材の表面に形成された焼入硬化層の深さは6mmとなった。また、焼入開始部分の焼境周辺における焼入硬化層の形状と、焼入終了部分の焼境周辺における焼入硬化層の形状とはほぼ同等となっていた。さらに、焼境は、鉄鋼部材の長手方向端から10.2mmに位置しており、焼境範囲B内に位置することとなった。端部近傍の所要深さは、鉄鋼部材の長手方向端から16.5mmの位置で、5mmに定めた閾値h0以上の値を確保した。よって、熱処理規格は満たされていた。
本発明の比較例として、従来における第1の二巻型コイル方式の焼入装置20及び第2の二巻型コイル方式の焼入装置30をそれぞれ用いて、上述の実施例と同様の条件で、焼入対象物に焼入処理を施した。その結果、焼入処理の際、加熱コイル21,31内を流れる冷却水の温度は24.2度となった。
2 高周波誘導加熱コイル(加熱コイル)
3 主加熱導体
4 補助加熱導体
S 鉄鋼部材
C 冷却器
c 冷却液
c1 傾斜面
c2 貫通孔
P 電源
I1,I2 電流
d1,d2 内径
l1,l2 距離
t 焼入硬化層
B 焼境範囲
b,b’ 焼境
h,h’ 深さ
A 矢印
Claims (1)
- 高周波焼入処理に用いられる高周波誘導加熱コイルにおいて、
環状に形成された1つの主加熱導体及び2つの補助加熱導体を備え、
前記補助加熱導体の内径が前記主加熱導体の内径より大きく形成され、
前記補助加熱導体が前記主加熱導体の厚さ方向両端側のそれぞれに並んで配置され、
前記2つの補助加熱導体が互いに並列に接続され、かつ前記主加熱導体と前記2つの補助加熱導体の組合せとが直列に接続されて、前記主加熱導体の電流と前記2つの補助加熱導体の電流とが同一の周方向に流れるように構成されていることを特徴とする、高周波誘導加熱コイル。
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