JP2002167620A - カムシャフトの高周波焼入方法とその装置 - Google Patents

カムシャフトの高周波焼入方法とその装置

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JP2002167620A
JP2002167620A JP2000360390A JP2000360390A JP2002167620A JP 2002167620 A JP2002167620 A JP 2002167620A JP 2000360390 A JP2000360390 A JP 2000360390A JP 2000360390 A JP2000360390 A JP 2000360390A JP 2002167620 A JP2002167620 A JP 2002167620A
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Japan
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cam
camshaft
heating coil
rotation
annular heating
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JP2000360390A
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Atsuro Suzuki
鈴木  惇郎
Hideaki Katanuma
秀明 片沼
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DKK Co Ltd
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Denki Kogyo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 カムシャフトの焼入硬化層を必要とするカム
部に、その形状に沿って焼入硬化層を形成する。 【解決手段】 本発明の高周波焼入方法は、1つのカム
ブロックに複数個のカム部を有し、ジャーナル部を介し
て、複数のカムブロックよりなるカムシャフト1につい
て、1つのカムブロックごとのカム部数と同数で、同巻
数の環状加熱コイル21a,21b,21cを配置し、
カムシャフト1の軸心を中心とする回転に同期させて、
カム部のカムトップ部分11dとカムベース部分11e
のそれぞれと、前記加熱コイルの内周面とのクリアラン
スTG,BGを等しく一定に保ちながら、前記加熱コイ
ルを、追従機構33により追従させ、該加熱コイルに高
周波電流を供給して、カム部を高周波加熱し、加熱後、
空冷してから、冷却装置34により、カム部を冷却し
て、該カム部に焼入硬化層を形成する方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、エンジン
の気筒ごとに、複数個のカム部を有する1つのブロック
が、ジャーナル部を間に介して複数の前記ブロックから
構成されるカムシャフトの高周波焼入方法とその装置に
関し、特に、高周波加熱時に、該カムシャフトの回転に
同期して、前記カム部のカムトップ部分とカムベース部
分のそれぞれと、環状加熱コイルの内周面とのクリアラ
ンス(または、すきま)の距離を等しくするように追従
させる高周波焼入方法とその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の4気筒エンジン用のカム
シャフトは、ジャーナルと隣接するジャーナルとの間
に、複数個のカムが1ブロックごとに配置され、4ブロ
ックから構成される。前記1ブロックのカムの数は、エ
ンジンのシリンダに付随するバルブの数に対応してい
る。図5は、1ブロックに3カムを有する4気筒エンジ
ン用の12カムのカムシャフト1の正面図である。該カ
ムシャフト1は、ジャーナル2,3〜6のそれぞれ隣接
するジャーナルの間に、それぞれ3個のカム部11a,
11b,11c,12a,12b,12c,13a,1
3b,13c,14a,14b,14cが、それぞれの
カムブロック11,12,13,14ごとに配置され、
全体で4カムブロックから構成される。
【0003】1本の前記カムシャフト1の全カム部11
a,11b,11c,‥‥‥,14a,14b,14c
のみを焼入れする場合、従来の技術では、図6に示すよ
うに、1カムブロック11のカム部11a,11b,1
1cに対応する、3個の環状加熱コイル10a,10
b,10cからなる1個の高周波環状加熱コイルブロッ
ク10を配置し、該カムシャフト1の軸心と前記加熱コ
イルブロック10の中心を同一にし、該カムシャフト1
を回転し、かつ1カムブロック11,12,13,14
ごとに順次移動させながら、それぞれ高周波電流を供給
して誘導加熱し、冷却し、焼入れを4回繰り返して行っ
ていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図6に
示すような、従来の高周波加熱焼入方法およびその装置
では、図7に、例えばカム部11bと前記高周波環状加
熱コイルブロック10の加熱コイル10bの位置関係を
示すように、前記カムシャフト1の軸心と該加熱コイル
10bの中心を同一にし、該カムシャフト1の軸心を中
心として該カムシャフト1を回転した場合、カム部のカ
ムトップ部分11d側と前記加熱コイル10b内周面と
のクリアランスの距離TGと、カムベース部分11e側
と該加熱コイル10b内周面とのクリアランスの距離B
Gとが異なり、該クリアランスの距離が小さいカムトッ
プ部分11d側がカムべース部分11e側より加熱効率
がよく焼入の硬化層が深くなる。
【0005】従って、カムトップ部分11d側とカムべ
ース部分11e側とでの焼入硬化層の深さに違いを生
じ、図8に示すように、カム部に近接して前記ジャーナ
ル部が配置されているカムシャフト1では、前記カムベ
ース部分11eよりもジャーナル部の方が加熱コイル内
周面とのクリアランスが狭くなり、該ジャーナル部の先
端が加熱され硬化してしまうという問題点があった。
【0006】さらに、図9に示すように、複数のカム部
が近接する前記カムシャフト1では、カムベース部分側
の該加熱コイル内周面とのクリアランスの距離BGが広
いので、通常、硬化層はA>Bであるが、近接効果を利
用した誘導加熱よりも熱伝導による効果が増えるため、
該カムベース部分側の硬化層を深くすると前記カム部そ
れぞれの間の軸部分まで硬化されていた。このため、焼
入後の曲がり取り工程で油圧プレスなどにより、曲がり
を矯正する場合、前記カムシャフト1のカム部それぞれ
の間が硬化されたものは、該カムシャフト1全体が硬く
なっているので、曲がり矯正が難しく、プレス圧の加減
によっては硬化部に割れを生じるという問題点があっ
た。
【0007】本発明はかかる点を鑑みなされたもので、
その目的は前記問題点を解消し、焼入硬化層を必要とし
ないカム部それぞれの間の軸部分やジャーナル部に硬化
層を形成せずに、焼入硬化層を必要とするカム部に、そ
の形状に沿って焼入硬化層を形成し得るカムシャフトの
高周波焼入方法とその装置を提供することにある。
【0008】本発明の他の目的は、焼入処理工程後の曲
がり取りに際し、カムシャフトに割れを生じることな
く、容易に曲がり取りができ、作業性のよいカムシャフ
トの高周波焼入方法とその装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
の本発明の構成は、複数個のカム部を有する1つのカム
ブロックが、ジャーナル部を間に介して複数の前記カム
ブロックからなるカムシャフトを高周波焼入するに際
し、a)1つの前記カムブロックの前記複数個のカム部
に対応して、ほぼ直線上に配置される環状加熱コイル
の、コイル環内を貫通して前記カムシャフトを配置する
とともに、そのカムトップ部分をある一定方向に位置決
めする搬入および位置決め工程と、b)前記カムシャフ
トを配置後、該カムシャフトを、その中心軸を中心に、
ある一定回転で駆動させる回転駆動工程と、c)前記1
つのカムブロックのカム部に対応して配置される前記環
状加熱コイルを、前記カムシャフトの回転に同期して、
前記カム部のカムトップ部分とカムベース部分のそれぞ
れと、該環状加熱コイルの内周面とのクリアランスの距
離を等しくするように追従させながら、高周波電源か
ら、高周波電流を該環状加熱コイルに供給して、前記1
つのブロックの全カム部を、ある一定時間、同時に誘導
加熱する加熱工程と、d)前記加熱工程終了後、加熱さ
れた前記カム部を、ある一定時間同時に空冷して、加熱
温度を均一にする空冷工程と、e)前記空冷後、直ちに
該カム部を、ある一定時間、同時に冷却して焼入処理す
る冷却工程とを、前記複数のカムブロックについて順
次、繰り返して行い、次いで、f)前記焼入処理された
該カムシャフトを、外部に搬出する搬出工程とを行う方
法である。
【0010】前記回転駆動工程における、前記カムシャ
フトの回転数が、20ないし60rpmである方法であ
る。
【0011】前記環状加熱コイルに供給する前記高周波
電流を調整して、高周波焼入後、前記全カム部の硬化層
が、該カム部の円周方向に均一に形成される方法であ
る。
【0012】また、複数個のカム部を有する1つのカム
ブロックが、ジャーナル部を間に介して複数の前記カム
ブロックからなるカムシャフトを高周波焼入する装置で
あって、a)高周波電源と、b)1つの前記カムブロッ
クの前記複数個のカム部に対応して、ほぼ直線上に配置
されるとともに、直列に接続される環状加熱コイルで、
前記1つのカムブロックの全カム部を誘導加熱する前記
環状加熱コイルと、c)前記1つのカムブロックに対応
して、配置される前記環状加熱コイルの、コイル環内を
貫通して前記カムシャフトを配置するとともに、そのカ
ムトップ部分をある一定方向に位置決めし、かつ高周波
焼入終了後、該カムシャフトを外部に搬出する搬送およ
び位置決め手段と、d)前記カムシャフトを、その中心
軸を中心に、ある一定回転で駆動させる回転駆動手段
と、e)前記1つのカムブロックのカム部に対応して配
置される前記環状加熱コイルを、前記カムシャフトの回
転に同期して、前記カム部のカムトップ部分とカムベー
ス部分のそれぞれと、該環状加熱コイルの内周面とのク
リアランスの距離を等しくするように追従させる追従機
構と、f)加熱された前記カム部を、ある一定時間冷却
して焼入処理する冷却手段とをそれぞれ備える装置であ
る。
【0013】前記追従機構に、該追従機構を前記カムシ
ャフトの軸方向に対して直角な、上下および前後方向に
それぞれ移動させるサーボモータを配設するとともに、
回転検出器により前記カムシャフトの回転を検出し、該
回転に同期して前記サーボモータを駆動する制御装置が
備えられる装置である。
【0014】本発明のカムシャフトの高周波焼入方法と
その方法を行う装置は、以上のように構成されているの
で、前記カム部のカムトップ部分とカムベース部分のそ
れぞれと、前記環状加熱コイルの内周面とのクリアラン
ス(または、すきま)の距離TG,BGを等しく、かつ
一定にするためと、該環状加熱コイルが取付られている
追従機構を、該カムシャフト1の軸方向に対して直角
な、上下および前後方向に移動可能とするため、サーボ
モータ2個を該追従機構に取り付ける。
【0015】そして、前記カムシャフトを前記環状加熱
コイル内に挿入し、前記追従機構を前記サーボモータに
より駆動し、前記両クリアランスの距離TG,BGを常
に等しく、かつ一定になるように、該追従機構に備えら
れる制御装置を介して、カムシャフトの回転に同期させ
ながら、前記サーボモータを前記上下および前後方向に
駆動して、該追従機構を円運動させている。
【0016】このように両クリアランスの距離TG,B
Gを等しく、かつ一定にして、1つのカムブロック内の
全カム部を、ある一定時間、同時に誘導加熱し、該カム
部表面が所定の焼入温度に到達した後、いったん空冷し
て各カム部の焼入温度を均一化するとともに、冷却手段
を移動させ、移動後、該冷却手段(例えば、冷却ジャケ
ット)から冷却液を噴射して前記1つのカムブロック内
の全カム部を同時に冷却、焼入するようにしている。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の好
適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。図1は、本
発明のカムシャフトの高周波焼入方法を行う装置の一実
施の形態を示す構成図、図2は、12カムシャフトの各
回転角度に対する、カム部と環状加熱コイルとのクリア
ランスを示す図、図3は、カムシャフトの1つのカムブ
ロックにあるカム部と環状加熱コイルと位置関係を示す
図、図4は、図3のカム部に形成された焼入硬化層のパ
ターンを示す図で、図5に記載された構成要素と同一要
素には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0018】本実施の形態に示す高周波焼入装置20に
より、4気筒エンジンのカムシャフト1の12箇所のカ
ム部11a,11b,11c;‥‥‥;14a,14
b,14cについて、高周波誘導加熱焼入処理を順次行
う。
【0019】図1において、被加工物である、材質が鉄
系材または鋳鉄材(例えば、球状黒鉛鋳鉄材)からなる
前記カムシャフト1を、高周波誘導加熱して焼入処理を
行う前記高周波焼入装置20は、1kHz〜30kHz
の高周波電源装置30と、1つの環状加熱コイルブロッ
ク21と、前記カムシャフト1の搬送および位置決め装
置31と、回転駆動装置32と、追従機構33と、冷却
装置34とから構成される。
【0020】前記環状加熱コイルブロック21は、図3
に示すように、3個の環状加熱コイル21a,21b,
21cからなり、該カムシャフト1の各カムブロック1
1,〜14のカム部11a,11b,11c;12a,
12b,12c;13a,13b,13c;14a,1
4b,14cを、順次、誘導加熱するものである。
【0021】図1において、前記搬送および位置決め装
置31は、該カムシャフト1を搬入し、該装置31のワ
ーク保持機構40を構成するヘッドセンタユニット41
とテールセンタユニット42間に水平に保持、配置する
とともに、前記カム部(例えば、11a,11b,11
c;‥‥‥)のカムトップ部分(例えば、11d、加熱
するカムブロックにより、12d,または13d,また
は14d)をある一定方向、例えば上方向に位置決め
し、焼入後、前記カムシャフト1を外部に搬出する装置
である。前記回転駆動装置32は、搬入された前記カム
シャフト1を、その中心軸を中心に、ある一定回転で回
転駆動させる装置である。
【0022】前記追従機構33は、保持板43により、
前記1つのカムブロック(例えば、11)のカム部(例
えば、11a,11b,11c)に対応して配置される
前記環状加熱コイルブロック21と前記冷却装置34を
保持するとともに、前記高周波電源装置30から前記環
状加熱コイル21a,21b,21cに高周波電流を供
給する変成器30aを載置しながら、前記カムシャフト
1の軸方向に移動可能になっている。また、前記追従機
構33には、該追従機構33を、ガイド44,44の案
内により、該カムシャフト1の軸方向に対して直角な上
下および前後方向に、それぞれ駆動する2個のサーボモ
ータ51,52が配設され、該サーボモータ51,52
に接続される制御装置53により、駆動制御される。
【0023】そして、該追従機構33は、前記制御装置
53と2個のサーボモータ51,52と回転検出器54
を介して、前記回転駆動装置32による前記カムシャフ
ト1の回転に同期して(該回転検出器54により、前記
カムシャフト1の回転を検出し、前記制御装置53によ
り、前記それぞれのサーボモータ51,52の駆動を制
御するために該カムシャフト1の回転との同期をと
る)、前記カム部のカムトップ部分11dとカムベース
部分11eのそれぞれと、該環状加熱コイルブロック2
1の加熱コイル21a,21b,21cの内周面とのク
リアランスの距離TGとBGとを等しく、かつ一定にす
るように追従させる装置である。
【0024】前記冷却装置34は、全体が環状のもの
で、前記加熱コイル21a,21b,21cにより、加
熱された前記カムシャフト1の前記カム部を冷却して、
これを焼入処理する装置であり、前記追従機構33に固
定された前記保持板43に保持され、該追従機構33と
ともに移動する。
【0025】さらに、図1および図3において、前記環
状加熱コイルブロック21は、前記冷却装置34と同様
に、前記追従機構33に固定された保持板43に保持さ
れ、該追従機構33により、前記カムシャフト1の前記
各カム部11a,11b,11c;‥‥‥;14a,1
4b,14cにわたって、順次、移動できるようになっ
ている。該環状加熱コイルブロック21のそれぞれの環
状加熱コイル21a,21b,21cは、内部に冷却水
が循環する銅管22から形成され、該カムシャフト1の
前記各カム部11a,11b,11c(12a,12
b,12c;‥‥‥;14a,14b,14c)に対応
して、環状に巻回数が1回、巻回され、かつ前記各カム
ブロック11,12,13,14に対応して、環状コイ
ル部分がほぼ直線上に移動可能に配置されている。そし
て、該環状加熱コイル21a,21b,21cは、それ
ぞれ直列に接続され、高周波電源装置30から前記変成
器30aを介して供給される高周波電流により、前記カ
ムシャフト1の前記各カム部11a,11b,11c;
‥‥‥;14a,14b,14cを順次、誘導加熱する
ようになっている。
【0026】そして、前記環状加熱コイルブロック21
の前記環状加熱コイル21a,21b,21cのうち、
その中央位置の加熱コイル21bは、巻回数が他と同様
に1回であるが、その鉄心(磁性材)23のサイズが、
他の加熱コイル21a,21cの鉄心23よりも大型に
形成されて、該加熱コイル21bから発生される磁束密
度を大きくし、対応する幅広の前記カム部11bの加熱
効果を高めている。
【0027】また、前記環状加熱コイル21a,21
b,21cは、前記追従機構33に配設された2個のサ
ーボモータ51,52の駆動により、前記カムシャフト
1の軸方向に対して直角な、上下および前後方向の複合
運動である円運動が可能になっている。図2の、前記カ
ムシャフト1の回転角度に対する、前記カム部11a,
11b,11cと前記環状加熱コイル21a,21b,
21c内周面とのクリアランスの距離TG,BGとの関
係を示す図は、便宜上カムトップ部分11dの上方向を
0度とし、回転角度として0度、45度、90度、13
5度および180度とした。
【0028】前記2個のサーボモータ51,52を使用
し、前記追従機構33を上下および前後方向に移動させ
て、該追従機構33に保持された前記環状加熱コイル2
1a,21b,21cを、前記制御装置53を介して前
記カムシャフト1の回転に同期させ、前記クリアランス
の距離TG,BGを一定に保つことができる。
【0029】図3に示すように、前記カムブロック11
(12,13,14)のカムベース部分11eと前記環
状加熱コイル21a,21b,21cの内周面とのクリ
アランスの距離BGを狭くすることで、該カムベース部
分11eが、近接効果により直接誘導加熱されやすくな
り、前記ジャーナル部3(4,5,6)への誘導加熱が
少なくなる。さらに、前記環状加熱コイル21a,21
b,21cの加熱銅管22を磁性材で覆うことで、前記
カムベース部分11eヘの誘導加熱を集中させ、ジャー
ナル部3(4,5,6)への誘導加熱も遮断され、図4
に示すように、該カムシャフト1のカム部の焼入硬化層
(ハッチングで示す)のパターンが、ほぼカム形状に近
く形成される。
【0030】次いで、前記高周波焼入装置20により、
前記カムシャフト1の全カム部の1つのカムブロックご
とに高周波焼入処理を行う際の操作手順と作用について
以下に説明する。 (1)まず、前記カムシャフト1を、その軸方向を水平
にして、図示しないガイドビームに載置する。 (2)次に、搬送および位置決め装置31により前記カ
ムシャフト1を上昇させ、前記高周波焼入装置20の所
定の前記環状加熱コイルブロック21付近まで前進さ
せ、ワーク保持機構40(ヘッドセンタユニット41、
テールセンタユニット42および受け治具)を介して、
該高周波焼入装置20の保持治具に水平に配置する。
【0031】(3)前記カムシャフト1を保持した状態
で、前記搬送および位置決め装置31により、カムトッ
プ部分11dを上方向に位置決めする。 (4)前記カムシャフト1を保持した状態で、前記追従
機構33を、図示しない往復動機構により、待機位置か
ら該カムシャフト1の軸方向に移動させ、該カムシャフ
ト1を、その第1カムブロックに対応して、前記環状加
熱コイルブロック21の環状加熱コイル21a,21
b,21c内に挿入、配置する。 (5)前記追従機構33の位置を調整して、前記カムト
ップ部分11dとカムベース部分11eのそれぞれと、
前記環状加熱コイル21a,21b,21c内周面との
クリアランスの距離TGとBGを等しくする(かつ、加
熱中は一定にする)。
【0032】(6)前記回転駆動装置32により、前記
カムシャフト1を、その中心軸を中心にある一定回転で
回転駆動させる。 (7)前記カムシャフト1の回転に同期して、前記クリ
アランスの距離TG,BGが一定に保つように前記追従
機構33を追従させる。 (8)加熱しようとする前記第1カムブロックに配置さ
れる前記環状加熱コイルブロック21の環状加熱コイル
21a,21b,21cに、所定周波数の高周波電流
を、高周波電源装置30から供給して、該第1カムブロ
ックの全カム部を、ある一定時間同時に誘導加熱し、該
全カム部の表面を所定の焼入温度まで加熱する。
【0033】(9)所要時間回転加熱後、前記環状加熱
コイルヘの通電を遮断し、高周波加熱を停止するととも
に、該カムシャフト1の回転も停止する。(このとき、
前記カムトップ部分11dを上方向に向ける) (10)前記追従機構33の位置を調整して、前記環状
加熱コイル21a,21b,21cの中心と前記カムシ
ャフト1の軸心を合わせる。
【0034】(11)前記カムシャフト1を保持した状
態で、前記追従機構33を該カムシャフト1の軸方向に
移動させ、前記冷却装置34を、加熱された前記第1カ
ムブロック位置に移動させる。 (12)前記カムシャフト1を保持した状態で、再び、
該カムシャフト1を回転して、該カムシャフト1をいっ
たん空冷させ、空冷後、前記冷却装置34により前記第
1ブロック内の全カム部を同時に噴射冷却する。
【0035】(13)該全カム部を、所定の冷却時間
後、噴射冷却および該カムシャフト1の回転を停止し、
該第1カムブロックの焼入れを完了する。 (14)同様に、前記(3)〜(13)を繰り返して、
第2、第3、第4のカムブロックを、順次、焼入れを行
う。
【0036】(15)前記全カムブロックの焼入処理終
了後、前記追従機構33を、該カムシャフト1の軸方向
の待機位置に移動させる。 (16)前記カムシャフト1をワーク保持機構40から
解除し、前記搬送および位置決め装置31により、該カ
ムシャフト1を下降させ、外部の所定位置に搬出する。
【0037】[実施例]以下に本発明に係わる具体的な
実施例を示す。 (1)焼入対象部材(ワーク):4気筒エンジン用12
カムシャフト (a)材質:FCD700 (b)カム部寸法:軸心からカムトップ間=20.2;
22.2;20.2mm 軸心からべース間=15.75mm カム幅=8mm、16mm、8mm(各ブロックについ
てのカム部の配列の順に従うカム幅)
【0038】(2)高周波誘導加熱条件 (a)電源周波数:7.2kHz (b)高周波電源出力:51kW (c)加熱時間:5.3秒 (d)回転数:30rpm (3)冷却条件 (a)冷却液:ユーコンクエンチャントA(19%) (b)液温度:30℃ (c)流量:50L/分 (d)空冷時間:4秒 (e)冷却時間:10秒
【0039】前記実施例に示す加工(焼入)条件によ
り、前記焼入操作手順に従って、前記環状加熱コイルブ
ロック21を使用して、前記1カムブロックごとのカム
部を焼入れしたときの前記各カム部の硬化層パターン
は、図4に示すように、カムトップ部分11dとカムベ
ース部分11eとの硬化層(ハッチングで示す)の深さ
に差がなく、1カムブロックの3個のカム部について
も、硬化層の深さにバラツキが少ないという結果を得
た。
【0040】以上、本発明の実施の形態につき述べた
が、本発明は、これらの実施の形態に限定されるもので
はなく、本発明の技術的思想に基づいて各種のワーク
(カムシャフト)に対応できる。例えば、4カム(1カ
ム部×4ブロック)、8カム(2カム部×4ブロッ
ク)、15カム(5カム部×3ブロック)、16カム
(4カム部×4ブロック)等の複数カムの複数ブロック
の組合せのワークが存在しても、本発明の焼入方法を適
応することができる。
【0041】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように本発明の
カムシャフトの高周波焼入方法によれば、複数個のカム
部を有する1つのカムブロックが、ジャーナル部を間に
介して複数の前記カムブロックからなるカムシャフトを
高周波焼入するに際し、a)環状加熱コイルの、コイル
環内を貫通して前記カムシャフトを配置し、そのカムト
ップ部分をある一定方向に位置決めする搬入および位置
決め工程と、b)該カムシャフトを、その中心軸を中心
に、ある一定回転で駆動させる回転駆動工程と、c)前
記環状加熱コイルを、前記カムシャフトの回転に同期し
て、前記カム部のカムトップ部分とカムベース部分のそ
れぞれと、該環状加熱コイルの内周面とのクリアランス
の距離を等しくするように追従させながら、高周波電源
から、高周波電流を該環状加熱コイルに供給して、前記
1つのブロックの全カム部を、同時に誘導加熱する加熱
工程と、d)前記加熱工程終了後、加熱された前記カム
部を空冷して、加熱温度を均一にする空冷工程と、e)
前記空冷後、該カム部を同時に冷却して焼入処理する冷
却工程とを、前記複数のカムブロックについて順次、繰
り返して行い、次いで、f)前記焼入処理された該カム
シャフトを、外部に搬出する搬出工程とを行うので、焼
入硬化層を必要としないカム部それぞれの間の軸部分や
ジャーナル部に硬化層を形成せずに、焼入硬化層を必要
とするカム部に、その形状に沿って焼入硬化層を形成す
ることができ、各カム部ごとの硬化層パターンが均一
で、焼入硬化層の深さにバラツキが少ない焼入ができ
る。
【0042】また、焼入処理工程後の曲がり取りに際
し、カムシャフトに割れを生じることなく、容易に曲が
り取りができ、作業性のをよくすることができるという
優れた効果を奏する。
【0043】また、本発明のカムシャフトの高周波焼入
装置によれば、前記カムシャフトを高周波焼入する装置
であって、a)高周波電源と、b)1つの前記カムブロ
ックに対応し、直列に接続される環状加熱コイルで、前
記1つのカムブロックの全カム部を誘導加熱する前記環
状加熱コイルと、c)前記環状加熱コイルの、コイル環
内を貫通して前記カムシャフトを配置するとともに、そ
のカムトップ部分をある一定方向に位置決めし、かつ高
周波焼入終了後、該カムシャフトを外部に搬出する搬送
および位置決め手段と、d)前記カムシャフトを、その
中心軸を中心に、ある一定回転で駆動させる回転駆動手
段と、e)前記環状加熱コイルを、前記カムシャフトの
回転に同期して、前記カム部のカムトップ部分とカムベ
ース部分のそれぞれと、該環状加熱コイルの内周面との
クリアランスの距離を等しくするように追従させる追従
機構と、f)加熱された前記カム部を、ある一定時間冷
却して焼入処理する冷却手段とをそれぞれ備えるので、
前記方法と同様に、焼入硬化層を必要としないカム部そ
れぞれの間の軸部分やジャーナル部に硬化層を形成せず
に、焼入硬化層を必要とするカム部に、その形状に沿っ
て焼入硬化層を形成することができ、各カム部ごとの硬
化層パターンが均一で、焼入硬化層の深さにバラツキが
少ない焼入ができる。
【0044】また、焼入処理工程後の曲がり取りに際
し、カムシャフトに割れを生じることなく、容易に曲が
り取りができ、作業性をよくすることができ、サイクル
タイムの短縮が可能となるという優れた効果があり、さ
らに、本発明は産業上有益でな装置であるということが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のカムシャフトの高周波焼入方法を行う
装置の一実施の形態を示す構成図である。
【図2】カムシャフトの各回転角度に対する、カム部の
カムトップ部分とカムベース部分のそれぞれと、環状加
熱コイルとのクリアランスを示す図である。
【図3】カムシャフトの1つのカムブロックにあるカム
部と環状加熱コイルと位置関係を示す図である。
【図4】図3のカム部に形成された焼入硬化層のパター
ンを示す図である。
【図5】4気筒エンジン用の12カムのカムシャフト1
の正面図である。
【図6】カムシャフトに対向する、従来の高周波焼入方
法に使用される高周波環状加熱コイルの配置図である。
【図7】従来における、カムシャフトの各回転角度に対
する、カム部のカムトップ部分とカムベース部分のそれ
ぞれと、環状加熱コイルとのクリアランスを示す図であ
る。
【図8】従来における、カムシャフトの1つのカムブロ
ックにあるカム部と環状加熱コイルと位置関係を示す図
である。
【図9】図8のカム部に形成された焼入硬化層のパター
ンを示す図である。
【符号の説明】
1 カムシャフト(被加工物) 2,3,〜6 ジャーナル 10,21 環状加熱コイルブロック 11,12,13,14 カムブロック 11a,11b,11c;‥‥‥;14a,14b,1
4c カム部 11d カムトップ部分 11e カムベース部分 20 高周波焼入装置 21a,21b,21c 環状加熱コイル 22 加熱銅管 23 鉄心(磁性材) 30 高周波電源装置 31 搬送および位置決め装置 32 回転駆動装置 33 追従機構 34 冷却装置 40 ワーク保持機構 43 保持板 44 ガイド 51,52 サーボモータ 53 制御装置 54 回転検出器

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数個のカム部を有する1つのカムブロ
    ックが、ジャーナル部を間に介して複数の前記カムブロ
    ックからなるカムシャフトを高周波焼入するに際し、 a)1つの前記カムブロックの前記複数個のカム部に対
    応して、ほぼ直線上に配置される環状加熱コイルの、コ
    イル環内を貫通して前記カムシャフトを配置するととも
    に、そのカムトップ部分をある一定方向に位置決めする
    搬入および位置決め工程と、 b)前記カムシャフトを配置後、該カムシャフトを、そ
    の中心軸を中心に、ある一定回転で駆動させる回転駆動
    工程と、 c)前記1つのカムブロックのカム部に対応して配置さ
    れる前記環状加熱コイルを、前記カムシャフトの回転に
    同期して、前記カム部のカムトップ部分とカムベース部
    分のそれぞれと、該環状加熱コイルの内周面とのクリア
    ランスの距離を等しくするように追従させながら、高周
    波電源から、高周波電流を該環状加熱コイルに供給し
    て、前記1つのブロックの全カム部を、ある一定時間、
    同時に誘導加熱する加熱工程と、 d)前記加熱工程終了後、加熱された前記カム部を、あ
    る一定時間同時に空冷して、加熱温度を均一にする空冷
    工程と、 e)前記空冷後、直ちに該カム部を、ある一定時間、同
    時に冷却して焼入処理する冷却工程とを、前記複数のカ
    ムブロックについて順次、繰り返して行い、次いで、 f)前記焼入処理された該カムシャフトを、外部に搬出
    する搬出工程とを行うことを特徴とするカムシャフトの
    高周波焼入方法。
  2. 【請求項2】 前記回転駆動工程における、前記カムシ
    ャフトの回転数が、20ないし60rpmであることを
    特徴とする請求項1に記載のカムシャフトの高周波焼入
    方法。
  3. 【請求項3】 前記環状加熱コイルに供給する前記高周
    波電流を調整して、高周波焼入後、前記全カム部の硬化
    層が、該カム部の円周方向に均一に形成されることを特
    徴とする請求項1または請求項2に記載のカムシャフト
    の高周波焼入方法。
  4. 【請求項4】 複数個のカム部を有する1つのカムブロ
    ックが、ジャーナル部を間に介して複数の前記カムブロ
    ックからなるカムシャフトを高周波焼入する装置であっ
    て、 a)高周波電源と、 b)1つの前記カムブロックの前記複数個のカム部に対
    応して、ほぼ直線上に配置されるとともに、直列に接続
    される環状加熱コイルで、前記1つのカムブロックの全
    カム部を誘導加熱する前記環状加熱コイルと、 c)前記1つのカムブロックに対応して、配置される前
    記環状加熱コイルの、コイル環内を貫通して前記カムシ
    ャフトを配置するとともに、そのカムトップ部分をある
    一定方向に位置決めし、かつ高周波焼入終了後、該カム
    シャフトを外部に搬出する搬送および位置決め手段と、 d)前記カムシャフトを、その中心軸を中心に、ある一
    定回転で駆動させる回転駆動手段と、 e)前記1つのカムブロックのカム部に対応して配置さ
    れる前記環状加熱コイルを、前記カムシャフトの回転に
    同期して、前記カム部のカムトップ部分とカムベース部
    分のそれぞれと、該環状加熱コイルの内周面とのクリア
    ランスの距離を等しくするように追従させる追従機構
    と、 f)加熱された前記カム部を、ある一定時間冷却して焼
    入処理する冷却手段と、をそれぞれ備えることを特徴と
    するカムシャフトの高周波焼入装置。
  5. 【請求項5】 前記追従機構に、該追従機構を前記カム
    シャフトの軸方向に対して直角な、上下および前後方向
    にそれぞれ移動させるサーボモータを配設するととも
    に、回転検出器により前記カムシャフトの回転を検出
    し、該回転に同期して前記サーボモータを駆動する制御
    装置が備えられることを特徴とする請求項4に記載のカ
    ムシャフトの高周波焼入装置。
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