JP4477989B2 - クランクシャフトの高周波焼入装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ガソリンエンジン又はジーゼルエンジン用のクランクシャフトのピン部又はジャーナル部を高周波焼入れする高周波焼入装置に関する。
図5に示すように、この種の4気筒(4L)のクランクシャフト100は、鍛造加工によりピン部120,140,160,180とジャーナル部110,130,150,170,190とが一体成型されている。
従来、前記クランクシャフト100のピン部120,140,160,180とジャーナル部110,130,150,170,190の高周波焼入れは、該クランクシャフト100を、その中心軸Xのまわりに回転させながら、該ピン部120,140,160,180とジャーナル部110,130,150,170,190に、それぞれ高周波誘導加熱コイル(以下、単に高周波加熱コイルという)を載置し、前記回転に追従して誘導加熱後、冷却を行い高周波焼入れを施工している。
前記ピン部120,140,160,180の形状は、該ピン部同士は同じのため、前記ピン部180を例に説明する。図6に前記クランクシャフト100の一部断面を示すように、該ピン部180の形状は、円柱部181と、該円柱部181に続くR部182と、該R部182に続き前記クランクシャフト100の軸方向に直角に形成されたスラスト部183から成る。
図6(a)に示す硬化層187は、前記円柱部181のみの焼入れによって得られたものである。このような焼入れの仕方を平焼入れと称している。他方、図6(b)に示す硬化層187は、前記円柱部181とR部182とスラスト部183が連続して焼入れによって得られたものである。このような焼入れの仕方をフィレットR焼入れと称している。
通常、前記クランクシャフト100は、エンジンの排気量により多種のクランクシャフトがあり、そのピン部及びジャーナル部の形状も多種異なっている。
前記クランクシャフト100に高周波焼入れを行い、図6(a)及び図6(b)に示す硬化層187を得るためには、ピン径及びピンスラスト幅に対応した高周波加熱コイルを使用する必要があり、該ピン径及びジャーナル径が異なるクランクシャフトには、該ピン径及びジャーナル径に対応した数の高周波加熱コイルが必要であった。このため、焼入作業においては、予め異なる焼入部位ごとに高周波加熱コイルを製作し、それぞれ高周波加熱コイルを交換することで対処していた。
ところで、図7に、追従ユニット30ヘの高周波加熱コイル2の取付を示す。図7に示すように、薄型変成器31は、追従ユニット30内のべース板32に固定されている。前記薄型変成器31は、前記べース板32を介して、追従アーム33a,33bにより吊り下げられている。該べース板32には、前記薄型変成器31と高周波加熱コイル2との接続操作が容易に行えるように、該高周波加熱コイル2を固定するための固定アーム34が取り付られている。前記高周波加熱コイル2の取り外しは、前記アーム固定ピン35を緩めてD方向に倒し、前記固定アーム34をE方向に下げ、該高周波加熱コイル2をF方向に前記固定アーム34上で引き出して、該高周波加熱コイル2を前記追従ユニット30から外すことができる構造になっている。前記追従ユニット30は、1台の薄型変成器31に前記高周波加熱コイル2を1台を取り付ける構造になっている。
しかしながら、前記クランクシャフト100が多種となると、高周波焼入装置として、以下のような問題点があった。
1)高周波加熱コイル2の台数が増えることにより、コストが増大する。
2)クランクシャフト100の機種切り替えに伴う高周波加熱コイル2の交換時間及び品質確認のための時間が増大する。
3)自動段取りの場合は、前記高周波加熱コイル2の台数に合わせた、追従機構及び電源系統の増加により、高周波焼入装置のスペースが拡大するとともに、コストが増大する。
次いで、前記ピン部120,140,160,180及び前記ジャーナル部110,130,150,170,190の円柱部と前記高周波加熱コイル2との関係について述べる。
前記ピン部と前記ジャーナル部は、共に円柱形状であるから、以下については、前記ピン部を例にとり説明する。
図8(a)に、Aワーク(クランクシャフト)用高周波加熱コイル頭部4とAワークのピン径の位置関係を示し、図8(b)に、Aワーク用高周波加熱コイル頭部4とBワーク(クランクシャフト)のピン径の位置関係を示す。(この場合、Aワークピン径>Bワークピン径)
図8(a)は、従来の位置関係である。前記Aワークと前記Bワークの装置のピン径に共用して、1台の高周波加熱コイル2で焼入れするには、ピン径が大きいAワーク用高周波誘導加熱コイル2で、ピン径の小さいBワークを焼入れすることになる。ここで、接触子10a,10b,10cは、前記ワークA又はBの誘導加熱される円柱部と前記高周波加熱コイル頭部4との間を、僅かな隙間で保つための3箇所(3箇所とは、クランクシャフトのピン部又はジャーナル部の円柱部の上部部分と、その上部部分の両側の両端部分)に対応配置される、セラミック製又は超硬製の部材である。
図8(a)に示すように、Aワークが図で時計方向に回転することにより該Aワーク(円柱部)は、接触子10bと接触子10cとで接触することになる。
その理由は、前記高周波加熱コイル2を前記ピン部円柱部に載置させて前記ワークAを、その中心軸を中心に回転させた場合、前記追従ユニット30全体の荷重が前記接触子10bからピン部円柱部にかかるので、該接触子10bと該ピン部円柱部に摩擦抵抗が生じる。前記ピン部の、時計方向の回転に伴い前記接触子10bは、摩擦抵抗力によりY方向へ移動する。前記接触子10a,10b,10cは前記高周波加熱コイル2内で固定されていることから、3個の前記接触子10a,10b,10cがY方向に移動する。
したがって、前記ピン部円柱部と前記高周波誘熱コイル2との接触は、2個の接触子10b,10cとなる。つまり、前記高周波加熱コイル2からみて、前記Aワークの回転方向のIN側(すなわち、Aワークが回転する際に接触子10bとAワークとの摩擦抵抗力によりAワークが近づく側)の前記接触子10cと中央部分接触子10bとで、該ピン部円柱部と接触する。このため、前記一方のIN側のクリアランス(G1)が他方のOUT側(Aワークが回転する際に接触子10bとAワークとの摩擦抵抗力によりAワークから遠ざかる側)のクリアランス(G2)より小さくなる。
図8(b)に示すように、前記Bワークの場合、従来のAワーク用高周波加熱コイル2では、高周波加熱コイル頭部4の2個の加熱導体の中で、前記一方のIN側の1個の加熱導体とピン径のクリアランス(G3)が、前記他方のOUT側のクリアランス(G4)より狭くなりすぎて、高周波焼入れに使用できる範囲ではない。該クリアランスが狭くなりすぎると、該Bワークと加熱導体の接触及び該ワークBに溶解を引き起こすという問題点があった。
また、別の方法として、高周波加熱コイル頭部4について、2個の加熱導体のワーク対向面の曲率を大きくし、ピン径とのクリアランスを広くすることで、ピン径と加熱導体の接触及び焼入ワークの溶解を防ぐことが可能であるが、クリアランスが広くなることによる加熱効率の低下、及び加熱バランスの崩れによる焼入れパターン(焼入幅と硬化深さ)の変形等の問題点があった。
本発明はかかる点を鑑みなされたもので、その目的は前記問題点を解消し、ピン径の異なるクランクシャフトを1台のピン用高周波誘導加熱コイルで加熱後冷却し、また、ジャーナル径の異なるクランクシャフトを1台のジャーナル用高周波誘導加熱コイルで加熱後冷却することにより、ピン部及びジャーナル部の高周波誘導加熱コイルの段取り交換をなくして、サイクルタイムの短縮及び設備コストの削減を図るクランクシャフトの高周波焼入装置を提供することにある。
前記目的を達成するための本発明の構成は、クランクシャフトのピン部又はジャーナル部の円柱部の上部部分に配設された接触子(10b)と、前記円柱部の両側配置された接触子(10a,10c)を介して、半円状の高周波誘導加熱コイルの頭部(4)を前記クランクシャフトのピン部又はジャーナル部の円柱部の外周上に載置して前記円柱部と前記高周波加熱コイルの頭部(4)との間に隙間を保った状態に設定し、この状態の下で前記クランクシャフトをその中心軸を中心に回転せしめて前記高周波誘導加熱コイルを前記円柱部外周に追従させつつ、前記ピン部又はジャーナル部の表面を高周波誘導加熱し、しかる後に前記ピン部又はジャーナル部の表面を冷却して、前記ピン部又はジャーナル部の表面を焼入れするクランクシャフトの高周波焼入装置において、前記高周波誘導加熱コイルの頭部(4)を、2組の加熱導体から形成すると共に、前記円柱部が回転する際に前記円柱部の上部部分に接触する接触子(10b)と前記円柱部との摩擦抵抗力により前記円柱部に近づく側であるクランクシャフトの回転方向のIN側に配置される1組の加熱導体の、前記円柱部の外周面に対向する面曲率を、前記円柱部の上部部分に接触する接触子(10b)と前記円柱部との摩擦抵抗力により前記円柱部から遠ざかる側であるクランクシャフトの回転方向のOUT側に配置される1組の加熱導体の、前記円柱部の外周面に対向する面曲率より大きく設定し、かつ前記円柱部が回転する際に、前記IN側に位置する1組の加熱導体とピン部又はジャーナル部の径が異なる機種のクランクシャフトのうち最大径のピン部又はジャーナル部を有するクランクシャフトのピン部又はジャーナル部の円柱部との間の第1のクリアランス(G5)を、前記OUT側に位置する1組の加熱導体と、前記ピン部又はジャーナル部の円柱部との間の第2のクリアランス(G6)より大きくなるように加熱導体と接触子(10a,10b,10c)の位置を設定することにより、
ピン部又はジャーナル部の径が異なる機種のクランクシャフトを1台のピン用又はジャーナル用高周波加熱コイルで高周波誘導加熱して焼入れすることにある。
ピン径又はジャーナル部の径が異なる機種のクランクシャフトのピン部又はジャーナル部をそれぞれ平焼入れする装置であり、ピン用の高周波誘導加熱コイルは、適用できる許容範囲がピン最大径から該最大径の70%までのピン径でジャーナル用の高周波誘導加熱コイルは、適用できる許容範囲がジャーナル最大径から該最大径の70%までのジャーナル径であることである。
ピン径又はジャーナル部の径が異なる機種のクランクシャフトのピン部又は前記ジャーナル部をそれぞれフィレットR焼入れする装置であり、ピン用の高周波誘導加熱コイルは、適用できる許容範囲がピン最大径から該最大径の85%までのピン径で前記ジャーナル用高周波誘導加熱コイルは、適用できる許容範囲がジャーナル最大径から該最大径の85%までのジャーナル径であることである。
本発明のクランクシャフトの高周波焼入装置によれば、クランクシャフトのピン部又はジャーナル部の円柱部の上部部分に配設された接触子(10b)と、前記円柱部の両側配置された接触子(10a,10c)を介して、半円状の高周波誘導加熱コイルの頭部(4)を前記クランクシャフトのピン部又はジャーナル部の円柱部の外周上に載置して前記円柱部と前記高周波加熱コイルの頭部(4)との間に隙間を保った状態に設定し、この状態の下で前記クランクシャフトをその中心軸を中心に回転せしめて前記高周波誘導加熱コイルを前記円柱部外周に追従させつつ、前記ピン部又はジャーナル部の表面を高周波誘導加熱し、しかる後に前記ピン部又はジャーナル部の表面を冷却して、前記ピン部又はジャーナル部の表面を焼入れするクランクシャフトの高周波焼入装置において、前記高周波誘導加熱コイルの頭部(4)を、2組の加熱導体から形成すると共に、前記円柱部が回転する際に前記円柱部の上部部分に接触する接触子(10b)と前記円柱部との摩擦抵抗力により前記円柱部に近づく側であるクランクシャフトの回転方向のIN側に配置される1組の加熱導体の、前記円柱部の外周面に対向する面曲率を、前記円柱部の上部部分に接触する接触子(10b)と前記円柱部との摩擦抵抗力により前記円柱部から遠ざかる側であるクランクシャフトの回転方向のOUT側に配置される1組の加熱導体の、前記円柱部の外周面に対向する面曲率より大きく設定し、かつ前記円柱部が回転する際に、前記IN側に位置する1組の加熱導体とピン部又はジャーナル部の径が異なる機種のクランクシャフトのうち最大径のピン部又はジャーナル部を有するクランクシャフトのピン部又はジャーナル部の円柱部との間の第1のクリアランス(G5)を、前記OUT側に位置する1組の加熱導体と、前記ピン部又はジャーナル部の円柱部との間の第2のクリアランス(G6)より大きくなるように加熱導体と接触子(10a,10b,10c)の位置を設定することにより、ピン部又はジャーナル部の径が異なる機種のクランクシャフトを1台のピン用又はジャーナル用高周波加熱コイルで高周波誘導加熱して焼入れするので、ピン径が異なるクランクシャフトのピン部を、1台のピン用高周波誘導加熱コイルにより加熱、冷却して焼入処理することができ、ジャーナル径が異なるクランクシャフトのジャーナル部を、1台のジャーナル用高周波誘導加熱コイルにより加熱、冷却して焼入処理することができ、従ってピン部又はジャーナル部の高周波誘導加熱コイルの段取り交換をなくして、サイクルタイムの短縮及び設備コストの削減を図ることができる。
そして、本発明によれば、クランクシャフのピン部及びジャーナル部に対して品質の優れた高周波焼入を行うことができ、全体の作業性を向上させることができるという優れた効果を奏する。
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
図1は、本発明のクランクシャフトの高周波焼入方法とその装置の一実施の形態を示す、高周波焼入装置の構成外観図、図2は、前記クランクシャフトのピン部又はジャーナル部の円柱部を平焼入れするために使用される半開放鞍形の高周波誘導加熱コイル(以下、単に高周波加熱コイルという)の構成図、図3は、前記クランクシャフトのピン部又はジャーナル部の円柱部をフィレットR焼入れするために使用される半開放鞍形の高周波加熱コイルの構成図であり、図5ないし図7に記載された構成要素と同一要素には、同一符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態に示す高周波焼入装置1により、4気筒エンジンのクランクシャフト(被加工物としてのワーク)100の全ピン部及びジャーナル部の高周波焼入処理を行う。
図1において、前記高周波焼入装置1は、被加工物である、材質が鋼材または炭素鋼材からなる前記ワーク100を、高周波誘導加熱、冷却の工程の内で、前記ワーク100の前記ピン部及び前記ジャーナル部のそれぞれの円柱部を、図2に示す1台の前記高周波加熱コイル2を使用して、順次、平焼入れするとともに、前記それぞれの円柱部を、図3に示す1台の前記高周波加熱コイル200を使用して、順次、フィレットR焼入れする装置である。
ここでは、主として、前記ピン部の平焼入れする場合について説明する。前記ワーク100の前記ジャーナル部の円柱部の平焼入れや、前記ピン部及び前記ジャーナル部のそれぞれの円柱部のフィレットR焼入れについては、前記ピン部の平焼入れする場合と同様であるので、その説明を省略する。
該高周波焼入装置1は、前記ワーク100の全ピン部120,140,160,180のそれぞれを平焼入するため、図2に示す1台の高周波加熱コイル2と、高周波電源6として、1kHz〜40kHzの高周波電力を前記高周波加熱コイル2に供給する1台の高周波発振機と、制御装置11と、前記高周波加熱コイル2を位置決めする位置決め機構12と、該ワーク100を支持するチャック機構13と、前記チャック機構13のチャック13a,13bを保持するとともに、該ワーク100の中心軸Xを中心にある一定回転で回転駆動させる回転駆動装置14と、その回転検出器15と、該ワーク100を搬入し、所定位置に配置するとともに、焼入後、外部に搬出する搬送装置16とから構成される。なお、17は、該ワーク100の取付時などに使用される往復動機構である。
前記構成のうち、前記高周波加熱コイル2は、前記ワーク100の前記ピン部120,140,160,180のそれぞれに、順次、前記制御装置11の指令に基づく前記位置決め機構12により、前記追従ユニット30を介して選択的に載置されるとともに、ピン径の異なるそれぞれの円柱部を平焼入れする。
また、前記高周波加熱コイル200は、同様に前記ワーク100の前記ピン部120,140,160,180のそれぞれに、順次、前記制御装置11の指令に基づく前記位置決め機構12により、前記追従ユニット30を介して選択的に載置され、ピン径の異なるそれぞれの円柱部をフィレットR焼入れする。
図2に示す前記平焼入れ用高周波加熱コイル2及び図3に示す前記フィレットR焼入れ用高周波加熱コイル200は、ともに、黄銅製の一対の側板(コイル保持板)3a,3bと、この側板3a,3b間に取付けられた半開放殼形の高周波加熱コイル頭部4,4と、該高周波加熱コイル頭部4,4に給電線5,5を介して、高周波電力を供給する高周波電源(高周波発振機)6と、前記側板3a,3bの下端に取付られて前記高周波加熱コイル頭部4,4の下方位置に配置された焼入冷却用の一対の冷却液噴射ジャケット(噴射環)7,7と、前記高周波電源6と前記給電線5とを接続するための一対の接続端子8,8と、接続端子8,8および給電線5,5を保持するために前記側板3a,3bの上端側に取付けられた絶縁性材料からなるブロック9と、前記ワーク100の誘導加熱される円柱部(
例えば、前記ピン部180)と前記高周波加熱コイル頭部4,4との間を、僅かな隙間で保つための複数箇所(本実施の形態では、3箇所で、クランクシャフトのピン部180の円柱部の上部部分と、その上部部分の両側の両端部分)に対応配置される、セラミック製又は超硬製の接触子10a,10b,10cとをそれぞれ具備している。
ここで、前記高周波加熱コイル2又は200は、それぞれの上方で、前記追従ユニット30によって直下状態で保持されている。そして、前記ワーク100の中心軸Xを中心に回転されるのに伴い、前記追従ユニット30により、前記高周波加熱コイル頭部4,4が、前記ワーク100の誘導加熱される円柱部、例えば、前記ピン部180の円柱部上に載置された状態のまま、前記高周波加熱コイル2又は200が該ピン部180の円柱部に追従して移動し得るように構成されている。(以下、代表的に、前記ピン部180について説明する)
なお、前記ワーク100の回転時には、前記ピン部180の円柱部外周面に、例えば2個の接触子10b,10cが当接され、これにより前記高周波加熱コイル頭部4の半円状部と前記ピン部180の外周面とが、僅かな所定間隔を隔てて前記ピン部180上に載置された状態で、該ピン部180が高周波加熱コイル頭部にて高周波誘導加熱されるようになっている。
また、前記一対の冷却液噴射ジャケット7,7には、冷却液供給用パイプ20がそれぞれ接続されており、冷却液が、図示しない冷却液供給源から、これらのパイプ20を通して前記冷却液噴射ジャケット7,7に供給されるので、この冷却液噴射ジャケット7,7から所定のタイミングで冷却液が前記ピン部180に向けて噴射されるように構成されている。
なお、前記制御装置11は、前記ワーク100の前記ピン部120,140,160,180を、順次、選択して、前記位置決め機構12に指令する。
前記位置決め機構12は、前記制御装置11からの指令により、前記選択された前記ピン部に対応する位置に、前記追従ユニット30を介して前記高周波加熱コイル2又は200を位置決めして、選択された該ピン部上に載置する。
前記制御装置11は、さらに、内蔵される高周波加熱制御プログラムにしたがって、前記高周波電源6から、前記高周波加熱コイル2又は200に加熱電力を切替、制御する。なお、同時に、前記制御装置11には、前記回転検出器15から、前記ワーク100がその中心軸Xを中心として回転するとき、その回動角度位置信号または回転数信号が入力されている。
前記チャック機構13は、チャック13a,13bからなり、前記ワーク100は、その長手方向の両端を、前記チャック13a,13bにより、固定、支持される。そして、前記一方のチャック13aは、回転駆動装置14のヘッドセンタユニット14aに、前記他方のチャック13bは、前記回転駆動装置14のテールセンタユニット14bにそれぞれ回転自在に保持される。
前記回転駆動装置14により、該ワーク100の中心軸Xを中心にある一定回転で回転駆動させるとき、前記回転検出器15により、その回動角度位置または回転数を検知して、その検出信号を前記制御装置11に出力する。
また、前記回転駆動装置14のヘッドセンタユニット14aとテールセンタユニット14bは、前記ワーク100の取付けのため、その長手方向に、往復動機構17のそれぞれの流体圧シリンダ装置(流体圧によりピストンを駆動させる)17a,17bにより駆動可能になっている。
図4(a)及び図4(b)に、本実施の形態に係るA,Bワーク共用の高周波加熱コイル頭部4,4とAワークのピン径、及びA,Bワーク共用の高周波加熱コイル頭部4,4とBワークのピン径の位置関係を示す。
図4(a)に示すように、A,Bワーク共用高周波加熱コイル2又は200は、両側の接触子間(10aと10cとの間)の距離を、ピン径が大きい前記Aワークのピン径より大きくし、該ピン部180の円柱部が中央部分接触子10bと接触する配置とする。さらに、ワーク回転方向のIN側に位置する1組の加熱導体と前記ピン部180の円柱部とのクリアランス(G5)を、ワーク回転方向のOUT側に位置する前記ピン部180の円柱部とのクリアランス(G6)より大きくする。
その理由は、図4(b)に示すように、前記ピン径が小さいBワークの場合、ワーク回転方向のIN側に位置する1組の加熱導体と、前記ピン部の円柱部とのクリアランス(G7)を所定の範囲とするためである。前記一方のIN側の1組の加熱導体のワーク対向面の曲率(曲率半径の逆数)を、前記他方のOUT側より大きくすることで、該加熱導体と前記ピン部の円柱部とのクリアランス(G7)を所定の範囲とすることができる。
前記他方のOUT側の1組の加熱導体のワーク対向面と、前記ピン部の円柱部とのクリアランス(G8)は、該ピン部の円柱部の外径が小さくなるほど大きくなる。前記クリアランス(G8)が大きくなりすぎると、高周波誘導加熱範囲を特定することが困難であり、所定の焼入硬化層パターンを満足できなくなるので、前記ピン部の円柱部の外径を限定することで、前記クリアランス(G8)を所定の範囲にすることができる。
これにより、前記Bワークとコイル加熱導体の接触及びワークに溶解がなく、前記高周波加熱コイル2又は200で、ピン径の異なるワークを焼入れすることが可能となる。
なお、前記ピン径及び前記ジャーナル径がそれぞれ異なる前記クランクシャフトの前記ピン部及び前記ジャーナル部をそれぞれ平焼入れする場合においては、前記ピン用高周波誘導加熱コイルの適用又は使用できる許容範囲は、ピン最大径から該最大径の70%までのピン径に、また、前記ジャーナル用高周波誘導加熱コイルの適用又は使用できる許容範囲は、ジャーナル最大径から該最大径の70%までのジャーナル径にするのがよい。
また、前記ピン径及び前記ジャーナル径がそれぞれ異なる前記クランクシャフトを前記ピン部及び前記ジャーナル部をそれぞれフィレットR焼入れする場合においては、前記ピン用高周波誘導加熱コイルの適用又は使用できる許容範囲は、ピン最大径から該最大径の85%までのピン径に、また、前記ジャーナル用高周波誘導加熱コイルの適用又は使用できる許容範囲は、ジャーナル最大径から該最大径の85%までのジャーナル径にするのがよい。
前記高周波加熱コイル2又は200を用いて、前記ピン部の円柱部の平焼入れ及びフィレットR焼入れを、下記実施例により実施したところ、表面硬さ及び硬化深さの熱処理品質は、従来と同程度であった。
[実施例] 以下に、本実施の形態に係わる具体的な実施例を示す。
I)平焼入れ
(1)ワーク:6気筒クランクシャフト
(a)材質S40C
(b)ピン部寸法:Aワークのピン径φ53mm、ピン幅21mm
Bワークのピン径φ50mm、ピン幅21mm
(2)高周波誘導加熱条件
Aワーク(ピン径φ53mm、ピン幅21mm)
(a)周波数:20kHz
(b)出力:45kW
(c)加熱時間:8秒
(d)回転数:30rpm
Bワーク(ピン径φ50mm、ピン幅21mm)
(a)周波数:20kHz
(b)出力:42kW
(c)加熱時間:8秒
(d)回転数:30rpm
(3)冷却条件
(a)冷却液:ユーコンクェンチャントA(8%)
(b)液温:30℃
(c)流量:各ピン部50L/min
(d)冷却時間:10秒
前記加工条件により前記ピン部の円柱部を平焼入れを行った。焼入部の硬化層パターンは、図6(a)に示す形状となり、円柱部中央の硬化層の深さは、ピントップ部及びボトム部で、2.0mmを確保し、表面硬度は、Hv650以上となり、熱処理品質を満足した。
II)フィレットR焼入れ
(1)ワーク:4気筒クランクシャフト
(a)材質S37C
(b)ピン部寸法:Aワークのピン径φ48mm、ピン幅20mm
Bワークのピン径φ45mm、ピン幅20mm
(2)高周波誘導加熱条件
Aワーク(ピン径φ48mm、ピン幅20mm)
(a)周波数:20kHz
(b)出力:81〜59kW
(c)加熱時間:14秒
(d)回転数:30rpm
Bワーク(ピン径φ45mm、ピン幅20mm)
(a)周波数:20kHz
(b)出力:76〜56kW
(c)加熱時間:14秒
(d)回転数:30rpm
(3)冷却条件
(a)冷却液:ユーコンクェンチャントA(8%)
(b)液温:30℃
(c)流量:各ピン部80L/min
(d)冷却時間:20秒
前記加工条件により前記ピン部にフィレットR焼入れを行った。焼入部の硬化層パターンは、図6(b)に示す形状となり、フィレットR部の硬化層の深さは、ピントップ部及びボトム部で、2.0mmを確保し、表面硬度は、Hv600以上となり、熱処理品質を満足した。
本実施例の方法により、ピン径の異なる部位を、それぞれ1台の高周波加熱コイルで、平焼入れ又はフィレットR焼入れにすることが可能となった。
本実施形態のクランクシャフトの高周波焼入装置は、以上のように構成されているので、前記高周波加熱コイル頭部のワーク回転方向のIN側である1組の加熱導体を、他方の1組であるワーク回転方向のOUT側の加熱導体よりワーク対向面の曲率を大きくすることで、ピン径とIN側の前記1組の加熱コイル導体のクリアランス(G3)を所定の隙間とし、1台の高周波加熱コイルでピン部の高周波誘導加熱を可能にする。また、前記ジャーナル部についても、同様にして、1台の高周波加熱コイルでジャーナル部の高周波誘導加熱を可能にしている。
本発明は、ピン径の異なるクランクシャフトを1台の高周波加熱コイルで、加熱後、冷却することにより、前記ピン部又は前記ジャーナル部のそれぞれの高周波誘導加熱コイルの段取り交換をなくして、サイクルタイムの短縮及び設備コストの削減を図ることができる。
なお、本発明の技術は前記実施の形態における技術に限定されるものではなく、同様な機能を果たす他の態様の手段によってもよく、また本発明の技術は、前記構成の範囲内において、種々の変更、付加が可能である。
本発明のクランクシャフトの高周波焼入方法とその装置の一実施の形態を示す、高周波焼入装置の構成外観図である。 前記クランクシャフトのピン部又はジャーナル部の円柱部を平焼入れするために使用される半開放殼形の高周波誘導加熱コイルの構成図である。 前記クランクシャフトのピン部又はジャーナル部の円柱部をフィレットR焼入れするために使用される半開放殼形の高周波誘導加熱コイルの構成図である。 本実施の形態を説明する高周波加熱コイル頭部とピン径が異なるワークとの位置関係を示す図で、図4(a)は、A,Bワーク共用の高周波加熱コイル頭部とピン径の大きいAワークとの位置関係を示す図、図4(b)は、A,Bワーク共用の高周波加熱コイル頭部とピン径の小さいBワークとの位置関係を示す図である。 4気筒エンジン用のクランクシャフトの正面図である。 図5のクランクシャフトの従来の焼入部の形状と硬化層パターンを示す部分断面図で、図6(a)は、平焼入れを示す断面図、図6(b)は、フィレット焼入れを示す断面図ある。 高周波誘導加熱コイルの、追従ユニットへの取付を示す部分側面図である。 従来の方法に基づく、高周波加熱コイル頭部とピン径が異なるワークとの位置関係を示す図で、図8(a)は、高周波加熱コイル頭部とピン径の大きいAワークとの位置関係を示す図、図8(b)は、高周波加熱コイル頭部とピン径の小さいBワークとの位置関係を示す図である。
符号の説明
1 高周波焼入装置
2,200 高周波加熱コイル
4 高周波加熱コイル頭部
6 高周波電源(高周波発振機)
7 冷却液噴射ジャケット(冷却液噴射環)
10a,10b,10c 接触子
11 制御装置
12 位置決め機構
14 回転駆動装置
30 追従ユニット

Claims (3)

  1. クランクシャフトのピン部又はジャーナル部の円柱部の上部部分に配設された接触子(10b)と、前記円柱部の両側配置された接触子(10a,10c)を介して、半円状の高周波誘導加熱コイルの頭部(4)を前記クランクシャフトのピン部又はジャーナル部の円柱部の外周上に載置して前記円柱部と前記高周波加熱コイルの頭部(4)との間に隙間を保った状態に設定し、この状態の下で前記クランクシャフトをその中心軸を中心に回転せしめて前記高周波誘導加熱コイルを前記円柱部外周に追従させつつ、前記ピン部又はジャーナル部の表面を高周波誘導加熱し、しかる後に前記ピン部又はジャーナル部の表面を冷却して、前記ピン部又はジャーナル部の表面を焼入れするクランクシャフトの高周波焼入装置において、
    前記高周波誘導加熱コイルの頭部(4)を、2組の加熱導体から形成すると共に、前記円柱部が回転する際に前記円柱部の上部部分に接触する接触子(10b)と前記円柱部との摩擦抵抗力により前記円柱部に近づく側であるクランクシャフトの回転方向のIN側に配置される1組の加熱導体の、前記円柱部の外周面に対向する面曲率を、前記円柱部の上部部分に接触する接触子(10b)と前記円柱部との摩擦抵抗力により前記円柱部から遠ざかる側であるクランクシャフトの回転方向のOUT側に配置される1組の加熱導体の、前記円柱部の外周面に対向する面曲率より大きく設定し、
    かつ前記円柱部が回転する際に、前記IN側に位置する1組の加熱導体とピン部又はジャーナル部の径が異なる機種のクランクシャフトのうち最大径のピン部又はジャーナル部を有するクランクシャフトのピン部又はジャーナル部の円柱部との間の第1のクリアランス(G5)を、前記OUT側に位置する1組の加熱導体と、前記ピン部又はジャーナル部の円柱部との間の第2のクリアランス(G6)より大きくなるように加熱導体と接触子(10a,10b,10c)の位置を設定することにより、
    ピン部又はジャーナル部の径が異なる機種のクランクシャフトを1台のピン用又はジャーナル用高周波加熱コイルで高周波誘導加熱して焼入れすること
    を特徴とするクランクシャフトの高周波焼入装置。
  2. ピン径又はジャーナル部の径異なる機種のクランクシャフトのピン部又はジャーナル部をそれぞれ平焼入れする装置であり、ピン用の高周波誘導加熱コイルは、適用できる許容範囲がピン最大径から該最大径の70%までのピン径でジャーナル用の高周波誘導加熱コイルは、適用できる許容範囲がジャーナル最大径から該最大径の70%までのジャーナル径であることを特徴とする請求項1に記載のクランクシャフトの高周波焼入装置。
  3. ピン径又はジャーナル部の径が異なる機種のクランクシャフトのピン部又は前記ジャーナル部をそれぞれフィレットR焼入れする装置であり、ピン用の高周波誘導加熱コイルは、適用できる許容範囲がピン最大径から該最大径の85%までのピン径で前記ジャーナル用高周波誘導加熱コイルは、適用できる許容範囲がジャーナル最大径から該最大径の85%までのジャーナル径であることを特徴とする請求項1に記載のクランクシャフトの高周波焼入装置。
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