JP2002194425A - 高周波誘導加熱コイル - Google Patents
高周波誘導加熱コイルInfo
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Abstract
材)を加熱導体に取付けなくても、段付き軸状部材の小
径軸部から第1及び第2の段部に連なる表面上に均一な
焼入硬化層パターンを形成し得るように均一加熱を行う
ことができるような高周波誘導加熱コイルを提供する。 【解決手段】 直線形状の第1の小径軸部加熱導体37
を、小径軸部の軸線方向における円弧形状の第2小径軸
部加熱導体38と円弧形状の第3の小径軸部加熱導体4
0との間の隙間部分に対応する箇所を通るように配置す
ると共に、相対的に大径の軸部分に設けられる第1の段
部1aに対応配置される円弧形状の第1の段部加熱導体
33の円弧の長さ(周長)αと、相対的に小径の軸部分
に設けられる第2の段部1bに対応配置される円弧形状
の第2の段部加熱導体36の円弧の長さ(周長)βとの
関係を、α≧βとなるように設定する。
Description
部を有する段付き軸状部材(多段付き軸状部材)を焼入
処理等のために高周波誘導加熱するための高周波誘導加
熱コイルに関するものである。
ボードジョイント等の部品として、段付き軸状部材が用
いられている。この種の段付き軸状部材はエンジンの回
転を車輪に伝達する重要保安部品であるため、強度につ
いての要求が厳しく、特に段部における隅部(隅R部と
も称される)はねじり疲労強度破壊の起点になる箇所で
あることから、隅部における焼入硬化層の焼入深さが重
要視されている。
a,1bを有する段付き軸状部材2を示すものである。
この種の段付き軸状部材2は、図5示すように、相対的
に大きな直径を有する大径軸部3と、この大径軸部3と
同軸状に設けられた相対的に小さな直径を有する小径軸
部4とをそれぞれ備え、大径軸部3と小径軸部4との境
界箇所に第1及び第2の段部1a,1bが設けられてい
る。なお、第2の段部1bは、相対的に小径の軸部分に
設けられており、前記小径軸部4の付け根部分の隅部
(隅R部)5bと、この隅部5bに連なる座面部6b
と、この座面部6bに連なる肩部7bにて構成されてい
る。また、第1の段部1aは、相対的に大径の軸部分に
設けられており、前記肩部7bに連なる隅部(隅R部)
5aと、この隅部5aに連なる座面部6aと、この座面
部6aに連なる肩部7aにて構成されている。このよう
な段付き軸状部材2については、小径軸部4の表面から
第1及び第2の段部1a,1bの表面に連続する均一な
焼入硬化層パターン(焼入深さは、例えば2.0〜5.
5mm程度)を要求される。
焼入するために従来より用いられている高周波誘導加熱
コイル10を示すものである。この高周波誘導加熱コイ
ル10は、図6に示すように、段付き軸状部材2(小径
軸部4)の軸線Pを中心に180゜隔てた位置で段付き
軸状部材2の小径軸部4の周面に平行に対向配置される
直線形状の2本の小径軸部加熱導体11,12と、これ
らの小径軸部加熱導体11,12にそれぞれ接続され、
かつ、段付き軸状部材2の軸線Pに対して直角に配置さ
れると共に第2の段部1bの座面部6bに平行に対応配
置される直線形状の2本の段部加熱導体(第1の段部加
熱導体)13,14と、これらの段部加熱導体13,1
4にそれぞれ接続され、かつ、段付き軸状部材2の軸線
Pを中心に180゜隔てた位置で前記軸線Pに対して平
行な状態で第1の段部1aの肩部7aと第2の段部1b
の隅部5bとの間の軸部部分に対応配置される直線形状
の2本の周面加熱導体15,16と、これらの周面加熱
導体15,16の間に接続され、かつ、第2の段部1b
の座面部6bに対して平行な状態でこの座面部6bの半
円弧部分に沿って対応配置される半円弧形状の段部加熱
導体(第2の段部加熱導体)17とから構成されてい
る。なお、図6において、18,19は図外の高周波電
源から電流を供給するためのリード導体であり、これら
のリード導体18,19間には図7及び図8に示す如く
絶縁板20が介在されるようになっている。
るに際しては、高周波誘導加熱コイル10にて取り囲ま
れた領域内に被焼入体である段付き軸状部材2の半分部
分を配置し、図9に示す如く高周波誘導加熱コイル10
と段付き軸状部材2との間に所定の間隔を保った状態の
下で段付き軸状部材2をその軸線Pを中心に回転させな
がら高周波誘導加熱コイル10に高周波電流を流すこと
により、段付き軸状部材2の小径軸部4、第2の段部1
bの隅部5b,座面部6b及び肩部7b、並びに第1の
段部1aの隅部5a,座面部6ab及び肩部7aの表面
を高周波誘導加熱する。次いで、高周波誘導加熱された
段付き軸状部材2の加熱部分を冷却液にて急冷すること
により、これらの部分の表面に連続する焼入硬化層を形
成するようにしている。
の焼入深さが最も重要視される段付き軸状部材の第2の
段部1bの隅部5bの誘導加熱は、柱状の小径軸部加熱
導体11,12及び棒状の段部加熱導体13,14に流
される高周波電流の誘導作用により段付き軸状部材2の
軸線Pに対して直角な方向に誘導電流が発生することに
よりなされると共に、段付き軸状部材の第1の段部1a
の隅部5aの誘導加熱は、半円弧形状の段部加熱導体1
7に流れる高周波電流の誘導作用により段付き軸状部材
2の軸線Pに対して直角な方向に誘導電流が発生するこ
とによりなされる。なお、段付き軸状部材2の小径軸部
4、隅部5a,5b、及び座面部6a,6bのうちで隅
部5a,5bは特に誘導加熱されずらく、小径軸部4と
座面部6a,6bが誘導加熱されるのに伴って小径軸部
4と座面部6a,6bとからの熱伝導により昇温する割
合が多い。因みに、座面部6a,6bは、小径軸部4に
対して加熱効率が約70%と低いので、前記隅部5a,
5bにおける焼入硬化層パターンを深くして強度の向上
を図るためには、座面部6a,6bに誘導加熱を集中さ
せる必要がある。
部5a,5bの部分は磁束の関係から特に誘導加熱され
にくい箇所であるため、高周波誘導加熱コイル10の特
定部分、すなわち第1の段部加熱導体13,14及び第
2の段部加熱導体17にダストコアや珪素鋼板等の磁性
材(磁束集中材)21をそれぞれ取付けて隅部5a,5
bに磁束を集中させて隅部5a,5bの加熱効率を向上
させるようにしているのが実状である。
21は、誘導加熱すべき段付き軸状部材2に対して数m
m程度の間隔をもって離れた位置に配置された状態で高
周波誘導加熱が行われるため、高周波誘導加熱された段
付き軸状部材2からの輻射熱を強く受ける。その結果、
段付き軸状部材2の加熱処理本数が増すのに伴い磁性材
21が輻射熱の影響により熱変形すると共に、焦げ付き
等の不具合を生じる場合がある。また、磁性材21の劣
化により焼入硬化層パターンが不良になるおそれがあ
る。
り、コ字形状の磁性材21のうち被加熱体である段付き
軸状部材2に最も接近した部分M,Nが過熱による劣化
(熱影響)を最も顕著に生じる。熱影響を大きく受けた
磁性材21では磁束を集中させる効果が弱くなり、これ
に伴い、磁性材21に対応する段付き軸状部材2の近傍
箇所における焼入硬化層パターンが不良となる。すなわ
ち、図5及び図9に示すように、隅部5a,5bの焼入
硬化層S1 ,S2 の深さが小径軸部4の焼入硬化層S3
の深さに対して浅くなり、小径軸部4から第2の段部1
bを介して第1の段部1aに連なる表面上に均一な焼入
硬化層パターンSを形成することができず、これに起因
して強度(特に、ねじり疲労強度)を充分に満足できな
いような不具合を生じる。
5bにおいて浅くなるような不具合を解消するための手
段としては、既述の如く座面部6aを高周波誘導加熱す
る棒状の段部加熱導体13,14に珪素鋼板やダストコ
ア等の磁性材21をより多く取付けたり、段部加熱導体
13,14と座面部6bとの間の間隔G(図10参照)
を狭くすることによって、座面部6bの加熱効率(ひい
ては隅部5bの加熱効率)を増大させることが考えられ
るが、このような手段を採用したとしても座面部6bに
ついての加熱効率の向上の程度に限界があり、第2の段
部1bの隅部5b付近における焼入硬化層S2 の深さを
小径軸部4における焼入硬化層S3 の深さほどに深くす
ることができないのが実状である。また、段部加熱導体
17に珪素鋼板やダストコア等の磁性材22を配設して
も第1の段部1aの隅部5aに関しては充分に深い焼入
硬化層S1 (図10参照)を得ることができないのが実
状である。
部1bにも一連の(一続きの)焼入硬化層パターンSを
形成する場合には、特に、第1の段部1aの隅部5aと
第2の段部1bの隅部5bの熱容量を考慮してこれらの
加熱バランスを良好に保ちながら、小径軸部4と段差
(幅)が相対的に広い座面部6bとの間にある第2の段
部1bの隅部5bにおける焼入硬化層S2 の深さ、並び
に、第1の段部1aの隅部5bにおける焼入硬化層S1
の深さを充分に確保する必要がある。
なされたものであって、その目的は、ダストコアや珪素
鋼板等の磁性材(磁束集中材)を加熱導体に取付けなく
ても、段付き軸状部材の小径軸部から第1及び第2の段
部に連なる表面上に均一な焼入硬化層パターンを形成し
得るように均一加熱を行うことができるような高周波誘
導加熱コイルを提供することにある。
めに、本発明では、相対的に大きな直径を有する大径軸
部と、相対的に小さな直径を有する小径軸部と、前記大
径軸部と小径軸部との間にそれぞれ形成される第1及び
第2の段部とをそれぞれ備えた段付き軸状部材を高周波
誘導加熱するための高周波誘導加熱コイルにおいて、
(a) 相対的に大径の軸部分に設けられる前記第1の
段部に対応配置される円弧形状の第1の段部加熱導体
と、(b) 前記第1の段部加熱導体に接続されると共
に、相対的に小径の軸部分に設けられる前記第2の段部
に対応配置される円弧形状の第2の段部加熱導体と、
(c) 前記第2の段部加熱導体に接続されると共に、
前記小径軸部の軸線に対して平行な状態で前記小径軸部
に対応配置される直線形状の第1の小径軸部加熱導体
と、(d) 前記第1の小径軸部加熱導体に接続される
と共に、加熱されるべき前記小径軸部の周面のうちで前
記大径軸部から最も離れた第1の周面部分に対応配置さ
れる円弧形状の第2の小径軸部加熱導体と、(e) 前
記第2の小径軸部加熱導体に接続されると共に、加熱さ
れるべき前記小径軸部の周面のうちで前記第1の周面部
分を除く第2の周面部分に対応配置される円弧形状の第
3の小径軸部加熱導体と、をそれぞれ備え、前記第1の
小径軸部加熱導体を、前記小径軸部の軸線方向における
前記第2及び第3の小径軸部加熱導体間の隙間部分に対
応する箇所を通るように配置すると共に、前記第1の段
部加熱導体の円弧の長さαと前記第2の段部加熱導体の
円弧の長さβとの関係を、α≧βとなるように設定する
ようにしている。また、本発明では、前記条件α≧βを
満足することを前提として、前記第1の段部加熱導体の
円弧の中心角θ1 を60゜≦θ1 ≦300゜の範囲で設
定し、かつ、第2の段部加熱導体の円弧の中心角θ2 を
60゜≦θ2 ≦200゜の範囲で設定するようにしてい
る。また、本発明では、コイル構成体である加熱導体の
何れの部分にもダストコアや珪素鋼板等の磁性材を取付
けないようにしている。また、本発明では、前記第1及
び第2の段部加熱導体を含む1巻きの巻線部分と、前記
第1,第2及び第3の小径部加熱導体を含む1巻きの巻
線部分とを構成し、全体としては一続きの2巻きの巻線
構造として構成するようにしている。
コイルによれば、相対的に小径の軸部分に設けられる第
2の段部を直接加熱する加熱導体として円弧形状の第2
の段部加熱導体を使用することにより、小径軸部よりも
第2の段部への加熱効率が増大される。また、小径軸部
に対応して直線形状(柱形状)の第1の小径軸部加熱導
体及び円弧形状の第2及び第3の小径軸部加熱導体を使
用することにより、小径軸部の軸線方向における第2及
び第3の小径軸部加熱導体間の隙間部分(継ぎ目部分)
においても直線形状の第1の小径軸部加熱導体により誘
導加熱が行われるため、小径軸部の表面に形成される焼
入硬化層パターンは均一な深さの滑らかなものとなる。
また、第1の段部加熱導体の円弧の長さαを第2の段部
加熱導体の円弧の長さβよりも長く設定することにより
(α≧β)、熱容量が互いに異なる第1及び第2の段部
における加熱バランスが良好となり、第1及び第2の段
部をそれぞれ構成する隅部,座面部及び肩部に連続した
均一深さの焼入硬化層パターンが形成される。かくし
て、第1及び第2の隅部における焼入硬化層は従来の場
合よりも深く形成され、これにより、第1の段部から第
2の段部を介して小径軸部のまで繋がる段付き軸状部材
の表面に連続した均一な硬化層パターンが形成される。
さらに、高周波誘導加熱コイルの巻き数を2巻き(第1
及び第2の段部加熱導体で1巻き、第1,第2及び第3
の小径軸部加熱導体で1巻き)とし、第1及び第2の段
部加熱導体の円弧の長さを第2及び第3の小径軸部加熱
導体の円弧の長さよりも長くすることにより、熱容量が
相対的大きい第1及び第2の段部に加熱が集中される。
また、高周波誘導加熱コイルの巻き数を2巻きにしたこ
とにより、従来の1巻きコイルよりも加熱効率が上げら
れることとなり、従ってダストコアや珪素鋼板等の磁性
材を使用しなくても第1及び第2の隅部における焼入硬
化層の深さが充分に確保される。
て図1〜図4を参照して説明する。なお、図1〜図4に
おいて、図5〜図11と同様の部分には同一の符号を付
して重複する説明を省略する。
誘導加熱コイル30を示している。この高周波誘導加熱
コイル30は、段付き軸状部材2の焼入処理時に段付き
軸状部材2の小径軸部4、第1の段部1a及び第2の段
部1bを高周波誘導加熱するために使用されるものであ
る。図1に示すように、高周波誘導加熱コイル30は、
一続きのコイル構成体から成る導電性の部品であって、
高周波電源31に接続された一対のリード導体32a,
32bと、これらのうちの一方のリード導体32aに接
続されると共に、段付き軸状部材2のうちの相対的に大
径の軸部分に設けられる第1の段部1aに対応配置され
る円弧形状の第1の段部加熱導体33と、この第1の段
部加熱導体33に連結導体34,35を順次に介して接
続されると共に、段付き軸状部材2のうちの相対的に小
径の軸部分に設けられる第2の段部1bに対応配置され
る円弧形状の第2の段部加熱導体36と、この第2の段
部加熱導体36に接続されると共に、段付き軸状部材2
(小径軸部4)の軸線Pに対して平行な状態で小径軸部
4に対応配置される直線形状の第1の小径軸部加熱導体
37と、この第1の小径軸部加熱導体37に接続される
と共に、加熱されるべき小径軸部4の周面のうちで大径
軸部3から最も離れた第1の周面部分R1 (図3参照)
に対応配置される円弧形状の第2の小径軸部加熱導体3
8と、この第2の小径軸部加熱導体38に接続された連
結導体39と前記リード導体32bとの間に接続される
と共に、加熱されるべき小径軸部4の周面のうちで前記
第1の周面部分R1 をよりも下方の第2の周面部分R2
(図3参照)に対応配置される円弧形状の第3の小径軸
部加熱導体40とから構成されている。
36と連結導体34,35とで1巻きの巻線が構成され
ると共に、第1,第2及び第3の小径部加熱導体37,
38,40と連結導体39とで1巻きの巻線が構成さ
れ、全体としては一続きの2巻きの巻線構造(互いに直
列接続されたシリイスな2巻きの巻線構造)として構成
されている。すなわち、高周波誘導加熱コイル30の巻
き数は、第1及び第2の段部加熱導体33,36を含む
1巻き部分と、第1,第2及び第3の小径軸部加熱導体
38,40を含む1巻き部分とで2巻きの構造となされ
ている。また、上述の一対のリード導体32a,33a
間には、図2に示すように絶縁板41が介在されてい
る。なお、図2において、32a-1,32a-2はリード
導体32aを構成するリード導体部分であり、32
b-1,32b-2はリード導体32bを構成するリード導
体部分である。
導加熱コイル30に流れる電流の通電方向を示してお
り、この際には、高周波電流が高周波電源31からリー
ド導体32a、第1の段部加熱導体33、連結導体3
4,35、第2の段部加熱導体36、第1の小径軸部加
熱導体37、第2の小径軸部加熱導体38、連結導体3
9、第3の小径軸部加熱導体40、及びリード導体32
bを順次に流れ、次の瞬間にはこれとは逆の方向に高周
波電流が交互に流れるようになっている。
あっては、図2に示すように、段付き軸状部材2の第1
の段部1aに対応配置されてこの段部1aを高周波誘導
加熱する第1の段部加熱導体33の円弧の長さ(周長)
αと、段付き軸状部材2の第2の段部1bに対応配置さ
れてこの段部1bを高周波誘導加熱する第2の段部加熱
導体36の円弧の長さ(周長)βとの相互間の関係は、
α≧βとなるように設定されている。また、熱容量が小
径軸部4よりも相対的に大きい第1及び第2の段部1
a,1bに加熱を集中させるために、第1及び第2の段
部加熱導体33,36の全体としての円弧の長さは、第
2及び第3の小径軸部加熱導体38,40の全体として
の円弧の長さよりも長く設定されている。なお、図2に
おけるθ1及びθ2 は、第1の段部加熱導体33及び第
2の段部加熱導体36の円弧の中心角である。
30では、ダストコアや珪素鋼板等の磁性材(磁束集中
材)が何れの加熱導体部分(特に、第1及び第2の段部
加熱導体33,36並びに第1,第2及び第3の小径部
加熱導体37,38、40)にも取付けられておらず、
従って加熱導体(コイル構成体)のみにて構成されてい
る。
0を用いて段付き軸状部材2の2段の段部1a,1bの
表面を焼入処理すると、良好な焼入硬化層パターンを得
ることができる。具体的には、高周波誘導加熱コイル3
0の軸線と段付き軸状部材2の軸線Pとが互いに一致す
るように配置してこれらの間に所定の隙間を保った状態
の下で段付き軸状部材2をその軸線Pを中心に回転させ
ながら高周波誘導加熱を行ない、その直後に冷却液にて
急冷すると、小径軸部4から第2の段部1bを介して第
1の段部1aに至るまでの表面領域に一続きの均一な焼
入硬化層パターン(強度についての最重要部である第1
及び第2の隅部5a,5bにおいて充分な深さを有する
焼入硬化層パターン)Sを形成することができる。その
理由を述べると、次の通りである。
の座面部6aは第1の段部加熱導体33により直接に誘
導加熱されると共に、第2の段部1bの座両部6bは、
第2の段部加熱導体36により直接に誘導加熱される。
また、小径軸部4の立ち上がり部(付け根部)4aは、
第2の段部加熱導体36に流れる段付き軸状部材2の軸
線Pを中心とする円周方向の高周波電流、及び、第1の
小径軸部導体37に流れる前記軸線Pに平行な高周波電
流により誘導加熱される。そのため、小径軸部4の立ち
上がり部4aの加熱が促進されて第2の段部1bの隅部
5bが充分に加熱される。その結果、図4に示す如く、
前記隅部5bに充分な深さの焼入硬化層S2 を形成する
ことができ、ひいては小径軸部4の周面から前記隅部5
bを介して第2の段部1bの座面部6bに至るまでの表
面領域に均一で滑らかな焼入硬化層パターンSを得るこ
とができる。
第2及び第3の小径軸部加熱導体37,38,40に流
される高周波電流により行われると共に、軸線Pに平行
な方向(軸線方向)における第2及び第3の小径軸部加
熱導体38,40間の隙間部分(図3に示す継ぎ目部
分)Lに対応する箇所を通るように直線形状の第1の小
径軸部加熱導体37が配置されるため、この第1の小径
軸部加熱導体37を流れる軸線方向の高周波電流にて前
記隙間部分Lに対応する小径軸部4の対応部分が誘導加
熱され、これにより前記対応部分の誘導加熱が促進され
るため滑らかに連続する均一な焼入硬化層を得ることが
できる。
の如く、軸径が相対的に大きい第1の段部1aを誘導加
熱する第1の段部加熱導体33の円弧の長さαを、軸径
が相対的に小さい第2の段部1bを誘導加熱する第2の
段部加熱導体36の円弧の長さβよりも長く設定するよ
うにしているので(α≧β)、第1の段部1a(大径
部)よりも第2の段部1b(小径部)への高周波誘導加
熱が相対的に増大される。そのため、熱容量が相対的に
大きい第1の段部1aと熱容量が相対的に小さい第2の
段部1bとにおける相対的な加熱バランスが良くなり、
従って均一に誘導加熱されて均一な焼入硬化層パターン
(特に、第1及び第2の段部1a,1bの隅部5a,5
bに充分な深さの焼入硬化層を有する焼入硬化層パター
ン)を得ることができる。
形態の高周波誘導加熱コイル30によれば、このコイル
30を構成する加熱導体(コイル導体)にダストコアや
珪素鋼板等の磁性材を取付けることなく、小径軸部4か
ら第2の段部1bを介して第1の段部1aへと繋がる均
一な深さの焼入硬化層パターンSを得ることができる。
特に、加熱すべき段付き軸状部材2の各部の加熱バラン
スが良好となることにより、強度についての最重要部で
ある第1及び第2の隅部5a,5bを充分に加熱できて
これらの隅部5a,5bに充分な深さの焼入硬化層 を
形成することができる。従って、第1及び第2の段部1
a,1bの隅部5a,5bにおける焼入硬化層が深くな
ることにより、段付き軸状部材2の耐久性(特に、ねじ
り疲労強度)に最も影響する最重要部である隅部5a,
5bの強度を上げることができ、ひいては段付き軸状部
材2の耐久性の向上を図ることができる。
施例を示す。 実施例 (1) ワーク : BJアウターレース (a) 材質 : S53C (b) 軸部寸法: φ28mm (c) 肩部寸法: φ56mm (2) 高周波誘導加熱コイル (a) 第1の段部加熱導体の円弧の長さα : 262mm (b) 第1の段部加熱導体の円弧の中心角θ1 : 270゜ (c) 第2の段部加熱導体の円弧の長さβ : 122mm (d) 第2の段部加熱導体の円弧の中心角θ2 : 180゜ (e) 第1の小径軸部加熱導体の長さ : 34mm (f) 第2の小径軸部加熱導体の円弧の長さγ: 94mm (g) 第2の小径軸部加熱導体の円弧の中心角θ3 : 135゜ (h) 第3の小径軸部加熱導体の円弧の長さδ: 107mm (g) 第3の小径軸部加熱導体の円弧の中心角θ4 : 135゜ (3) 高周波誘導加熱条件 (a) 周波数 : 8kHz (b) 出力 : 175kW (c) 加熱時間: 4.5sec (d) 回転数 : 120rpm (4) 冷却条件 (a) 冷却液 : ユーコンクエンチャントA(8%) (b) 液温 : 30℃ (c) 流量 : 150 l/min (e) 冷却時間: 15sec
処理を施した場合の焼入硬化層の深さは、小径軸部3
(スプライン付け根部)において4.2mm、第1及び第
2の隅部5a,5bにおいて3.2mmであった。な
お、従来の高周波誘導加熱コイル10を用いて段付き軸
部2の焼入処理を施した場合の焼入硬化層の深さは、小
径軸部4において5.5mm、第1及び第2の隅部5
a,5bにおいて1.8mmであった。従って、本発明
の高周波誘導加熱コイル30によれば、小径軸部3にお
ける焼入硬化層S3 の深さが相対的に浅くなると共に、
第1及び第2の隅部5a,5bにおける焼入硬化層
S1 ,S2 の深さが相対的に深くなるため、焼入硬化層
深さの全体としてのバランスが良くなって焼入硬化層パ
ターンの深さを均一化することができることが確認され
た。
心角θ1 及び第2の段部加熱導体36の円弧の中心角θ
2 (図2参照)を適宜に変えて焼入硬化層パターンのデ
ータをとったところ、既述の条件式α≧βを満たすこと
を前提として、第1の段部加熱導体33の円弧の中心角
θ1 については60゜≦θ1 ≦300゜の範囲で設定
し、かつ、第2の段部加熱導体36の円弧の中心角θ2
については60゜≦θ2≦200゜の範囲で設定した場
合に、上述の如き効果を最も顕著に得ることができるこ
とが判明した。
が、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、
本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可
能である。例えば、第1の段部加熱導体33と第2の段
部加熱導体36との間の接続部、及び、第2の小径軸部
加熱導体38と第3の小径軸部加熱導体40との間の接
続部の構成は任意に変更可能である。
部材の小径軸部の軸線に対して平行な状態でこの小径軸
部に対応配置される直線形状の第1の小径軸部加熱導体
を、加熱されるべき小径軸部の周面のうちで大径軸部か
ら最も離れた第1の周面部分に対応配置される円弧形状
の第2小径軸部加熱導体と、加熱されるべき小径軸部の
周面のうちで第1の周面部分を除く第2の周面部分に対
応配置される円弧形状の第3の小径軸部加熱導体との間
の前記小径軸部の軸線方向における隙間部分に対応する
箇所を通るように配置すると共に、相対的に大径の軸部
分に設けられる第1の段部に対応配置される円弧形状の
第1の段部加熱導体の円弧の長さ(周長)αと、相対的
に小径の軸部分に設けられる第2の段部に対応配置され
る円弧形状の第2の段部加熱導体の円弧の長さ(周長)
βとの関係を、α≧βとなるように設定するようにした
ものであるから、小径軸部のうちの前記隙間部分に対応
する部分が第1の小径軸部加熱導体にて誘導加熱される
ので小径軸部の表面にその軸線方向に沿って均一な深さ
の焼入硬化層を形成することができると共に、α≧βの
設定により、軸径が相対的に小さくて熱容量が相対的に
小さい部分である第2の段部よりも、軸径が相対的に大
きくて熱容量が相対的に大きい部分である第1の段部へ
の加熱を増大せしめることができ、ひいては第1の段部
から第2の段部を介して小径軸部に繋がる表面領域の各
部における加熱バランスを良好にすることができる。
の段部のそれぞれの隅部における加熱効率を増すことが
でき、第1及び第2の段部から小径軸部に繋がる表面部
分に連続して均一な焼入硬化層パターンを得ることがで
きる。そのため、本発明の高周波誘導加熱コイルによれ
ば、ダストコアや珪素鋼板等の磁性材(磁束集中材)を
使用する必要がなくなり、加熱導体のみで構成しただけ
の簡素な構成の安価な高周波誘導加熱コイルで済ますこ
とが可能となる。また、磁性材を加熱導体に使用しない
で済むことに伴い、磁性材の劣化により焼入硬化層パタ
ーンが不良となる等の問題の発生を回避することができ
る。
用いて段付き軸部を高周波焼入すると、第1及び第2の
段部の隅部における焼入硬化層深さを充分に深くするこ
とができるので、段付き軸状部材の強度(特に、ねじり
疲労強度)を上げることができる。
件式α≧βを満たすことを前提として、第1の段部加熱
導体の円弧の中心角θ1 を60゜≦θ1 ≦300゜の範
囲で設定し、かつ、第2の段部加熱導体の円弧の中心角
θ2 を60゜≦θ2 ≦200゜の範囲で設定したもので
あるから、これらの条件の下に前記長さα及びβを設定
して焼入処理することにより、実用上の要求強度を満足
する段付き軸状部材を提供することができる。
構成体である加熱導体の何れの部分にもダストコアや珪
素鋼板等の磁性材を取付けないようにしたものであるか
ら、均一な焼入硬化層パターンを得ることができるとい
う実用上の作用効果を奏し得るものでありながら、磁性
材の省略により構成が簡素でかつ安価な高周波誘導加熱
コイルを提供することができる。しかも、磁性材の熱変
形や焦げ付き等の不具合を生じることがなく、磁性材の
劣化に伴って焼入硬化層パターンが不良になるような不
具合の発生を回避することができる。
び第2の段部加熱導体を含む1巻きの巻線部分と、第
1,第2及び第3の小径部加熱導体を含む1巻きの巻線
部分とを構成し、全体としては一続きの(シリイスの)
2巻きの巻線構造として構成するようにしたものである
から、加熱導体の巻線構造は直列巻線の簡素な構成で済
み、製作が容易でしかも実用に適した高周波誘導加熱コ
イルを提供することができる。
ルを示す斜視図である。
る。
状部材を焼入処理のために高周波誘導加熱する際の状態
を示す断面図である。
処理した場合に段付き軸状部材の表面に形成される焼入
硬化層パターンを示す断面図である。
ある。
る。
る。
る。
状部材を焼入処理のために高周波誘導加熱する際の状態
を示す断面図である。
取付けて焼入処理した場合に段付き軸状部材の表面に形
成される焼入硬化層パターンを示す断面図である。
の斜視図である。
Claims (4)
- 【請求項1】 相対的に大きな直径を有する大径軸部
と、相対的に小さな直径を有する小径軸部と、前記大径
軸部と小径軸部との間にそれぞれ形成される第1及び第
2の段部とをそれぞれ備えた段付き軸状部材を高周波誘
導加熱するための高周波誘導加熱コイルにおいて、
(a) 相対的に大径の軸部分に設けられる前記第1の
段部に対応配置される円弧形状の第1の段部加熱導体
と、(b) 前記第1の段部加熱導体に接続されると共
に、相対的に小径の軸部分に設けられる前記第2の段部
に対応配置される円弧形状の第2の段部加熱導体と、
(c) 前記第2の段部加熱導体に接続されると共に、
前記小径軸部の軸線に対して平行な状態で前記小径軸部
に対応配置される直線形状の第1の小径軸部加熱導体
と、(d) 前記第1の小径軸部加熱導体に接続される
と共に、加熱されるべき前記小径軸部の周面のうちで前
記大径軸部から最も離れた第1の周面部分に対応配置さ
れる円弧形状の第2の小径軸部加熱導体と、(e) 前
記第2の小径軸部加熱導体に接続されると共に、加熱さ
れるべき前記小径軸部の周面のうちで前記第1の周面部
分を除く第2の周面部分に対応配置される円弧形状の第
3の小径軸部加熱導体と、をそれぞれ備え、 前記第1の小径軸部加熱導体を、前記小径軸部の軸線方
向における前記第2及び第3の小径軸部加熱導体間の隙
間部分に対応する箇所を通るように配置すると共に、 前記第1の段部加熱導体の円弧の長さαと前記第2の段
部加熱導体の円弧の長さβとの関係を、α≧βとなるよ
うに設定したこと、を特徴とする高周波誘導加熱コイ
ル。 - 【請求項2】 前記条件α≧βを満足することを前提と
して、前記第1の段部加熱導体の円弧の中心角θ1 を6
0゜≦θ1 ≦300゜の範囲で設定し、かつ、第2の段
部加熱導体の円弧の中心角θ2 を60゜≦θ2 ≦200
゜の範囲で設定したことを特徴とする請求項1に記載の
高周波誘導加熱コイル。 - 【請求項3】 コイル構成体である加熱導体の何れの部
分にもダストコアや珪素鋼板等の磁性材を取付けないよ
うにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の高周
波誘導加熱コイル。 - 【請求項4】 前記第1及び第2の段部加熱導体を含む
1巻きの巻線部分と、前記第1,第2及び第3の小径部
加熱導体を含む1巻きの巻線部分とを構成し、全体とし
ては一続きの2巻きの巻線構造として構成したことを特
徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の高周波誘
導加熱コイル。
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