JP3548523B2 - 高周波誘導加熱コイル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、段付き軸状部材を焼入処理等のために高周波誘導加熱する高周波誘導加熱コイルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
等速ジョイントのアウターレースやインボードジョイント等の部品として、段付き軸状部材が用いられている。この種の段付き軸状部材は、エンジンの回転を車輪に伝達する重要保安部品であるため、強度についての要求が厳しく、特に段部における隅部(隅R部とも称される)はねじり疲労強度破壊の起点になる箇所であることから、隅部における焼入硬化層の焼入深さが重要視されている。
【0003】
図7は、段部1を有する段付き軸状部材2を示すものである。この段付き軸状部材2は、図7に示すように、相対的に小さな直径を有する小径軸部3と、相対的に大きな直径を有する大径軸部4とから成り、小径軸部3と大径軸部4との境界箇所が段部1となされている。なお、この段部1は、小径軸部3の立ち上がり部分(付け根部分)に形成された隅部(断面円弧状の隅R部)5と、この隅部5に連なりかつ段付き軸状部材2の軸線Pに直交する平面上にリング状に形成された座面部6と、この座面部6から大径軸部4に連なる箇所に形成された肩部7とにより構成されている。このような段付き軸状部材2については、小径軸部3,隅部5,座面部6及び肩部7にわたって連続する均一な焼入硬化層パターン(焼入硬化層Sの深さは、2.0〜5.5mm程度)を要求される。
【0004】
また、図8は、上述の段付き軸状部材2を焼入するために従来より用いられている高周波誘導加熱コイル10を示すものである。この高周波誘導加熱コイル10は、図8に示すように、段付き軸状部材2の軸線Pを中心に180゜隔てた位置で段付き軸状部材2の軸線Pに平行に配置されて小径軸部3に対応配置される直線形状の2本の小径軸部加熱導体11,12と、これらの小径軸部加熱導体11,12にそれぞれ接続され、かつ、段付き軸状部材2の軸線Pに対して直角に配置されると共に段付き軸状部材2の座面部6に平行に対応配置される直線形状の2本の座面部加熱導体13,14と、これらの座面部加熱導体13,14にそれぞれ接続されると共に、段付き軸状部材2の軸線Pを中心に180゜隔てた位置で段付き軸状部材2の肩部7の周囲において段付き軸状部材2の軸線Pに平行に配置される直線形状の2本の肩部加熱導体15,16と、これらの肩部加熱導体15,16の間に接続され、かつ、段付き軸状部材2の肩部7の付近において大径軸部4の周面の半円部分を取り囲むように対応配置される半円弧形状の大径軸部加熱導体17とから構成されている。なお、図8において、18,19は図外の高周波電源から電流を供給するためのリード導体であり、これらのリード導体18,19間には図9に示す如く絶縁板20が介在されるようになっている。
【0005】
また、図9及び図10に示すように、上述の高周波誘導加熱コイル10の特定部分、すなわち、小径軸部加熱導体11,12と座面部加熱導体13,14との接続部分(図8及び図10において符号M,Nで示す屈曲部分)及びその近傍領域に珪素鋼板やダストコア等の磁性材(磁束集中材)21が取付けられ、これにより、段付き軸状部材2の隅部5(磁束密度の関係で最も加熱されにくい部分)の加熱効率の増大が図られるように構成されている。
【0006】
かくして、段付き軸状部材2を焼入処理するに際しては、高周波誘導加熱コイル10にて取り囲まれた領域内に被焼入体である段付き軸状部材2の半分部分を配置し、高周波誘導加熱コイル10と段付き軸状部材2との間に所定の間隔を保った状態の下で段付き軸状部材2をその軸線Pを中心に回転させながら高周波誘導加熱コイル10に高周波電流を流すことにより、段付き軸状部材2の小径軸部3,隅部5,座面部6及び肩部7の表面を高周波誘導加熱する。次いで、高周波誘導加熱された段付き軸状部材2の小径軸部3,隅部5,座面部6及び肩部7を冷却液にて急冷することにより、これらの部分の表面に連続する焼入硬化層を形成するようにしている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図11に示すように段付き軸状部材2の半径方向における座面部6の幅Lが広い場合には、座面部6の面積が大きくなることに起因して小径軸部3と座面部6とにおける加熱バランスが崩れ、座面部6に形成される焼入硬化層Sの深さ(焼入硬化層深さ)が前記小径軸部3に形成される焼入硬化層Sの深さよりも相対的に浅くなる。そして、これに伴い、最も加熱されにくい箇所である隅部5の焼入硬化層Sの深さが、前記小径軸部3に形成される焼入硬化層Sの深さよりも相対的に浅くなる。
【0008】
このような現象を生じるのは、次のような理由からである。まず、段付き軸状部材2の隅部5は、図12に示すように、高周波誘導加熱コイル10のコイル導体を構成する柱状の小径軸部加熱導体11,12と、棒状の座面部加熱導体13,14とによって高周波誘導加熱される。座面部6の幅Lが広い段付き軸状部材2の場合、焼入硬化層Sを各部において均一な深さにするためには、座面部6の幅L(ひいては、面積)が広くなるのに対応して小径軸部3に対する座面部6の加熱容量を増やすことが必要となる。しかし、座面部6は小径軸部3に比べて加熱効率が悪く、従って座面部6における焼入硬化層Sの深さを小径軸部3の焼入硬化層Sの深さと同等にするのは難しいのが実状である。また、隅部5は、高周波誘導加熱されにくく、座面部6及び小径軸部3からの熱伝導にて加熱される割合が高いので、座面部6の加熱が充分でないと隅部5に形成される焼入硬化層Sの深さが浅くなる。そのため、座面部6の幅Lが広い段付き軸状部材2の場合には、座面部6における焼入硬化層S、並びに、隅部5における焼入硬化層Sの深さが、小径軸部3における焼入硬化層Sの深さよりも浅くなり、焼入硬化層パターンが不均一な深さのパターンとなってしまうのである。
【0009】
なお、焼入硬化層パターンが隅部5において浅くなるような不具合を解消するための手段としては、図13に示すように座面部6を高周波誘導加熱する棒状の座面部加熱導体13,14に珪素鋼板やダストコア等の磁性材21を配設したり、座面部加熱導体13,14と座面部6との間の間隔G(図13参照)を狭くすることによって、座面部6の加熱効率を増大させることが考えられるが、このような手段を採用したとしても座面部6についての加熱効率の向上の程度に限界があり、座面部6における焼入硬化層Sの深さを小径軸部3における焼入硬化層Sの深さほどに深くすることができないのが実状である。
【0010】
以上のようなことから、幅Lが広くて面積の大きな座面部6を有する段付き軸状部材2を従来の高周波誘導加熱コイル10にて高周波誘導加熱して焼入冷却(焼入処理)しても、特に高い強度が要求される隅部5部分における焼入硬化層Sの深さが相対的に浅くなり、段付き軸状部材2に充分な強度を付与することができない場合がある。
【0011】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、段付き軸状部材の隅部における焼入硬化層の深さをより深くすることができると共に小径軸部の立ち上がり部の焼入硬化層の深さを相対的に浅くすることができ、ひいては、小径軸部,隅部及び座面部に連続して形成される焼入硬化層の深さの均一化を図ることができるような構成の高周波誘導加熱コイルを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明では、相対的に小さな直径を有する小径軸部と、相対的に大きな直径を有する大径軸部と、前記小径軸部と大径軸部との間に形成される段部とをそれぞれ備えた段付き軸状部材を高周波誘導加熱するための高周波誘導加熱コイルにおいて、
(a) 軸回転する段付き軸状部材の軸線を中心に180°隔てた位置で前記軸線に対して平行に配置され、かつ、前記小径軸部に対応配置される直線形状の第1及び第2の小径軸部加熱導体と、
(b) 前記第1の小径軸部加熱導体に接続されると共に、前記第1の小径軸部加熱導体に対して屈曲されて前記小径軸部の立ち上がり部から離れる方向に傾斜された第3の小径軸部加熱導体と、
(c) 前記第3の小径軸部加熱導体に接続されると共に、前記段部を構成する座面部に対応配置される円弧形状の座面部加熱導体と、
(d) 前記座面部加熱導体と前記第2の小径軸部加熱導体との間に接続されると共に、前記段部を構成する肩部の周囲に対応配置される円弧形状の肩部加熱導体と、
をそれぞれ設け、
前記座面部加熱導体の円弧の長さαと前記肩部加熱導体の円弧の長さβとの関係を、α≧βとなるように設定すると共に、
前記小径軸部の立ち上がり部分における前記第2の小径軸部加熱導体と前記第3の小径軸部加熱導体との間の間隔を、前記第1の小径軸部加熱導体及び前記第3の小径軸部加熱導体の接続部における前記第2の小径軸部加熱導体と前記第3の小径軸部加熱導体との間の間隔よりも広くなるように設定し、
前記第1及び第2の小径軸部加熱導体を前記小径軸部の180°隔てた位置において前記小径軸部に対して平行に配置し、かつ、前記第3の小径軸部加熱導体を前記小径軸部の立ち上がり部に近づくにつれて徐々に前記小径軸部から遠ざかるように配置することにより、前記第3の小径軸部加熱導体を前記小径軸部の立ち上がり部から遠ざけた位置に配置するようにしている。
また、本発明では、前記条件式α≧βを満たすことを前提として、前記座面部加熱導体の円弧の中心角θ1を90°≦θ1≦270°の範囲で設定し、前記肩部加熱導体の円弧の中心角θ2を40°≦θ2≦180°の範囲で設定するようにしている。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について図1〜図6を参照して説明する。なお、図1〜図6において、図7〜図13と同様の部分には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る高周波誘導加熱コイル30を示している。この高周波誘導加熱コイル30は、段付き軸状部材2の焼入処理時に段付き軸状部材2の小径軸部3及び段部1を高周波誘導加熱するために使用されるものである。図1に示すように、高周波誘導加熱コイル30は、一続きのコイル構成体から成る導電性の部品であって、高周波電源31に接続された第1のリード導体32a,32b及び第2のリード導体33a,33bと、リード導体32b,33bにそれぞれ接続されると共に、軸回転する段付き軸状部材2の軸線(小径軸部3及び大径軸部4の軸線)Pを中心に180゜隔てた位置で前記軸線Pに対して平行に配置され、かつ、小径軸部3に対応配置される直線形状の第1及び第2の小径軸部加熱導体34,35と、第1の小径軸部加熱導体34に接続されると共に、この第1の小径軸部加熱導体34に対して屈曲されて小径軸部3の立ち上がり部から離れる方向に傾斜される第3の小径軸部加熱導体36と、この第3の小径軸部加熱導体36に連結導体37,38を介して接続されると共に、段部1を構成する座面部6に対応配置される円弧形状の第1の座面部加熱導体39と、この座面部加熱導体39に連結導体40,41を介して接続されると共に、段部1を構成する肩部7の周囲に対応配置される円弧形状の肩部加熱導体42と、この肩部加熱導体42と前記第2の小径軸部加熱導体35との間に連結導体43を介して接続されると共に、前記座面部6に半径方向に沿って対応配置される直線形状の第2の座面部加熱導体44とから構成されている。なお、図2,図3及び図4に示すように、上述の第1及び第2のリード導体32a,33a間には絶縁板20が配設されている。
【0015】
図1における矢印は、ある瞬間に高周波誘導加熱コイル30に流れる電流の通電方向を示しており、この際には、高周波電流が高周波電源31からリード導体32a,32b、第1の小径軸部加熱導体34、傾斜状の第3の小径軸部加熱導体36、連結導体37,38、円弧形状の第1の座面部加熱導体39、連結導体40,41、肩部加熱導体42、連結導体43、直線形状の第2の座面部加熱導体44、第2の小径軸部加熱導体35、及びリード導体33b,33aを順次に流れ、次の瞬間にはこれとは逆の方向に高周波電流が交互に流れるようになっている。
【0016】
また、本実施形態の高周波誘導加熱コイル30にあっては、図2及び図3に示すように、円弧形状の第1の座面部加熱導体39に磁性材50が取付けられると共に、円弧形状の肩部加熱導体42に磁性材51が取付けられている。さらに、第1の小径軸部加熱導体35と座面部加熱導体44との間に形成された直角屈曲部分に磁性材52が取付けられている。かくして、磁性材50,51,52が取付けられた加熱導体部分にて高周波誘導加熱される段付き軸状部材2の段部1の加熱効率(特に、座面部6の加熱効率)が増大されるようになっている。
【0017】
さらに、本実施形態の高周波誘導加熱コイル30では、図2に示すように、段付き軸状部材2の座面部6に対応配置されてこの座面部6を高周波誘導加熱する第1の座面部加熱導体39の円弧の長さ(周長)αと、段付き軸状部材2の肩部7に対応配置されてこの肩部7を高周波誘導加熱する肩部加熱導体42の円弧の長さ(周長)βとの関係は、α≧βとなるように設定されている。なお、図2におけるθ 及びθは、第1の座面部加熱導体39及び肩部加熱導体42の円弧の中心角である。
【0018】
また、第1の小径軸部加熱導体34は第2の小径軸部加熱導体35よりも短く設定されており、図4に具体的に示すように、第3の小径軸部加熱導体36が、第1の小径軸部加熱導体34の下端位置(第1の小径軸部加熱導体34と第3の小径軸部加熱導体36との接続部)から第2の小径軸部加熱導体35の下端位置(第1の段部1aに対応配置される、第2の小径軸部加熱導体35の端部)までの垂直距離Yの領域において、第1の小径軸部加熱導体34に対して傾斜された状態で配置されている。すなわち、段付き軸状部材2の小径軸部3の立ち上がり部(付け根部)に対応する柱形状の第3の小径軸部加熱導体36が座面部6から垂直距離Yだけ離れた(逃げた)箇所で段付き軸状部材2の小径軸部3の周面から遠ざかる方向に屈曲されて傾斜状態で配置されており、第1の小径軸部加熱導体34及び前記第3の小径軸部加熱導体36の接続部と、段付き軸状部材2の第1の段部1aに対応配置される、第2の小径軸部加熱導体35の端部(下端部)との間の軸方向領域(軸線Pに沿った領域すなわち垂直領域Y)において、第3の小径軸部加熱導体36が段付き軸状部材2の小径軸部3の立ち上がり部に対して逃げた状態で配置されるようになっている。従って、第3の小径軸部加熱導体36は、第2の小径軸部加熱導体35に対向する片側の加熱導体部の一部分において逃げ部となされており、これにより第3の小径軸部加熱導体36による加熱効率が相対的に低くなる(加熱が弱くなる)ように構成されている。なお、隅部5の加熱は、主に、第1の座面部加熱導体39、及び、第2の小径軸部加熱導体35と第2の座面部加熱導体44との間に形成されたコイル角部の加熱導体部分によってなされるようになっている。
また、小径軸部3の立ち上がり部分における第2の小径軸部加熱導体35と第3の小径軸部加熱導体36との間の間隔は、第1の小径軸部加熱導体34及び第3の小径軸部加熱導体36の接続部における第2の小径軸部加熱導体35と第3の小径軸部加熱導体36との間の間隔よりも広くなるように設定されている。そして、加熱時には、第1及び第2の小径軸部加熱導体34,35が小径軸部の180°隔てた位置において小径軸部3に対して平行に配置され、かつ、第3の小径軸部加熱導体36が小径軸部3の立ち上がり部に近づくにつれて徐々に小径軸部3から遠ざかるように配置され、これにより、第3の小径軸部加熱導体36が小径軸部3の立ち上がり部から遠ざけられた位置に配置されるようになっている。
【0019】
このような構成の高周波誘導加熱コイル30を用いて段付き軸状部材2の小径軸部3及び段部1の表面を焼入処理すると、良好な焼入硬化層パターンを得ることができる。さらに具体的に述べると、図5に示す如く高周波誘導加熱コイル30によって囲まれた領域内に段付き軸状部材2を配置してこれらの間に所定の隙間を保った状態の下で段付き軸状部材2をその軸線を中心に回転させながら高周波誘導加熱を行ない、その直後に冷却液にて加熱部分を急冷すると、小径軸部3,隅部5及び座面部6の表面に一続きの均一な焼入硬化層(すなわち、強度についての最重要部である隅部5に充分な深さを有する焼入硬化層)Sを形成することができる。このように一続きの均一な焼入硬化層Sが得られる理由を述べると、次の通りである。
【0020】
まず、第1の座面部加熱導体39の円弧の長さαが肩部加熱導体42の円弧の長さβよりも長く設定されているので(α≧β)、誘導加熱され易い肩部7よりも誘導加熱されにくい座面部6への高周波誘導加熱作用が相対的に増大される。換言すれば、肩部加熱導体42は座面部加熱導体39よりも周長が相対的に短く設定されているので、最も誘導加熱され易い肩部7における加熱効率が相対的に低減される。
【0021】
また、誘導加熱され易い小径軸部3の一部分すなわち小径軸部3の立ち上がり部分(付け根部分;軸立ち上がり部分)を高周波誘導加熱するための加熱導体部分には小径軸部3の立ち上がり部から離れる方向に屈曲された傾斜状の第3の小径軸部加熱導体36が設けられているので、小径軸部3の立ち上がり部分の加熱効率が相対的に低減され、この第3の小径軸部加熱導体36の対応範囲すなわち小径軸部3の立ち上がり部分(第3の小径軸部加熱導体36が傾斜状でなく第1の小径軸部加熱導体34と直線をなすように配置される場合には焼入硬化層の深さが相対的に深くなる部分)における焼入硬化層が浅くなるように作用する。
【0022】
一方、誘導加熱されにくい座面部6及び隅部5を高周波誘導加熱するための第1及び第2の座面部加熱導体39,44には磁性材50,52が取付けられているので、座面部6及び隅部5の加熱効率が増大される。さらに、第1の座面部加熱導体39とは反対側にある肩部加熱導体42には磁性材51が取付けられているので、円弧形状の第1の座面部加熱導体39よりも加熱作用が相対的に弱い直線形状の第2の座面部加熱導体44による座面部6の加熱作用に加えて、肩部加熱導体42による座面部6の加熱作用が増大される。
【0023】
その結果、これらの効果が相俟って、図6に示すように隅部5における焼入硬化層Sの深さがより深くなり、小径軸部3,隅部5及び座面部6の一連の表面部分に形成される焼入硬化層Sの各部(S,S,S)における深さが均一化されることとなる。かくして、耐久性の最重要部である隅部5における焼入硬化層深さが相対的に増大されることとなり、これに応じて段付き軸状部材2の強度(特に、ねじり疲労強度)を上げることができる。
【0024】
以下に、本発明の一実施形態の具体的な実施例を示す。
実施例
(1) ワーク : BJアウターレース
(a) 材質 : S48C
(b) 軸部寸法: φ24mm
(c) 肩部寸法: φ59mm
(2) 高周波誘導加熱コイル
(a) 座面部加熱導体の円弧の長さα : 74mm
(b) 座面部加熱導体の円弧の中心角θ: 170゜
(c) 肩部加熱導体の円弧の長さβ : 66mm
(d) 肩部加熱導体の円弧の中心角θ: 90゜
(e) 第3の小径軸部加熱導体の逃げ距離Y : 24mm
(3) 高周波誘導加熱条件
(a) 周波数 : 8kHz
(b) 出力 : 120kW
(c) 加熱時間: 6.3sec
(d) 回転数 : 120rpm
(4) 冷却条件
(a) 冷却液 : ユーコンクエンチャントA(8%)
(b) 液温 : 30℃
(c) 流量 : 150 l/min
(e) 冷却時間: 13sec
【0025】
上記の加工条件により段付き軸状部材2の焼入処理を施した場合の焼入硬化層Sの深さは、小径軸部3(スプライン付け根部)において4.8mm、隅部5において2.4mmであった。なお、従来の高周波誘導加熱コイル10(図8参照)を用いて段付き軸状部材2の焼入処理を施した場合の焼入硬化層Sの深さは、小径軸部において5.7mm、隅部5において1.8mmであった。従って、本発明の高周波誘導加熱コイル30によれば、小径軸部3における焼入硬化層Sの深さが相対的に浅くなると共に、隅部5における焼入硬化層Sの深さが相対的に深くなるため、焼入硬化層深さの全体としてのバランスが良くなって焼入硬化層パターンの深さを均一化することができることが確認された。
【0026】
また、座面部加熱導体39の円弧の中心角θ及び肩部加熱導体42の円弧の中心角θ(図2参照)を適宜に変えて焼入硬化層パターンのデータをとったところ、前記条件式α≧βを満たすことを前提として、座面部加熱導体39の円弧の中心角θについては90゜≦θ≦270゜の範囲とし、肩部加熱導体42の円弧の中心角θについては40゜≦θ≦180゜の範囲とした場合に上述の如き効果を最も顕著に得ることができることが判明した。
【0027】
以上、本発明の一実施形態について述べたが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。例えば、第3の小径軸部加熱導体36の屈曲方向(傾斜方向)は、段付き軸状部材2の小径軸部3の立ち上がり部から離れる方向であれば、必要に応じてどのような方向に設定しても良い。
【0028】
【発明の効果】
請求項1に記載の本発明は、段付き軸状部材の小径軸部を高周波誘導加熱する小径軸部加熱導体部分に前記小径軸部の立ち上がり部から離れる方向に屈曲された傾斜状の第3の小径軸部加熱導体(すなわち、小径軸部の立ち上がり部分における第2の小径軸部加熱導体と第3の小径軸部加熱導体との間の間隔を、第1の小径軸部加熱導体及び第3の小径軸部加熱導体の接続部における第2の小径軸部加熱導体と第3の小径軸部加熱導体との間の間隔よりも広くなるように設定し、小径軸部の立ち上がり部に近づくにつれて徐々に小径軸部から遠ざかるように配置し、小径軸部の立ち上がり部から遠ざけた位置に配置するようにした第3の小径軸部加熱導体)を設けると共に、座面部加熱導体の円弧の長さ(周長)αと肩部加熱導体の円弧の長さ(周長)βとの関係をα≧βとなるように設定したものであるから、α≧βの設定により、段付き軸状部材の肩部よりも座面部への加熱が増大されると共に、傾斜状の第3の小径軸部加熱導体を設けて段付き軸状部材の小径軸部(軸立ち上がり部)に対応する小径軸部加熱導体の一部を段付き軸状部材から離すことにより、すなわち、小径軸部の立ち上がり部に対応配置される加熱導体の一部に逃げコイル部分を設けることにより、誘導加熱され易い小径軸部(すなわち、焼入硬化層の深さが相対的に深くなり易い)小径軸部の立ち上がり部分への加熱が相対的に低減されることとなる。その結果、全体の加熱バランスにおいて段付き軸状部材の座面部に加熱作用を集中させることができ、これにより隅部(座面部から熱が伝導されて加熱される部分)の焼入硬化層深さを従来の場合よりも深くすることができ、ひいては小径軸部から隅部を経て座面部に至る一連の(一続きの)焼入硬化層の深さを均一化し得て均一な焼入硬化層パターンを得ることができる。従って、耐久性についての最重要部である隅部の焼入硬化層の深さを従来よりも深くすることができるので、段付き軸状部材の強度(特に、ねじり疲労強度)を充分に確保することが可能となる。
【0029】
また、請求項2に記載の本発明は、前記条件式α≧βを満たすことを前提として、座面部加熱導体の円弧の長さαを90゜≦α≦270゜とし、肩部加熱導体の円弧の長さβを40゜≦β≦180゜としたものであるから、これらの条件の下に前記長さα及びβを設定して焼入処理することにより、実用上の要求強度を充分に満足する段付き軸状部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る高周波誘導加熱コイルを示す斜視図である。
【図2】図1に示す高周波誘導加熱コイルの平面図である。
【図3】図1に示す高周波誘導加熱コイルの正面図である。
【図4】傾斜状の第3の小径軸部加熱導体の配設部分を示す斜視図である。
【図5】図1に示す高周波誘導加熱コイルにて段付き軸状部材を焼入処理のために高周波誘導加熱する際の状態を示す断面図である。
【図6】図1に示す高周波誘導加熱コイルを用いて焼入処理した場合に段付き軸状部材の表面に形成される焼入硬化層パターンを示す断面図である。
【図7】被加熱体である段付き軸状部材を示す断面図である。
【図8】従来の高周波誘導加熱コイルを示す斜視図である。
【図9】図8に示す高周波誘導加熱コイルの平面図である。
【図10】図8に示す高周波誘導加熱コイルの正面図である。
【図11】座面部の幅が広い段付き軸状部材を示す断面図である。
【図12】図8に示す高周波誘導加熱コイルにて図11に示す段付き軸状部材を焼入処理のために高周波誘導加熱する際の状態を示す断面図である。
【図13】図8に示す高周波誘導加熱コイルに磁性材を取付けて焼入処理した場合に段付き軸状部材の表面に形成される焼入硬化層パターンを示す断面図である。
【符号の説明】
1 段部
2 段付き軸状部材
3 小径軸部
4 大径軸部
5 隅部
6 座面部
7 肩部
30 高周波誘導加熱コイル
34 第1の小径軸部加熱導体
35 第2の小径軸部加熱導体
36 第3の小径軸部加熱導体
39 第1の座面部加熱導体
42 肩部加熱導体
44 第2の座面部加熱導体
P 段付き軸状部材の軸線
S 焼入硬化層
,S,S 焼入硬化層
α 座面部加熱導体の円弧の長さ(周長)
β 肩部加熱導体の円弧の長さ(周長)
θ 座面部加熱導体の円弧の中心角
θ 肩部加熱導体の円弧の中心角

Claims (2)

  1. 相対的に小さな直径を有する小径軸部と、相対的に大きな直径を有する大径軸部と、前記小径軸部と大径軸部との間に形成される段部とをそれぞれ備えた段付き軸状部材を高周波誘導加熱するための高周波誘導加熱コイルにおいて、
    (a) 軸回転する段付き軸状部材の軸線を中心に180°隔てた位置で前記軸線に対して平行に配置され、かつ、前記小径軸部に対応配置される直線形状の第1及び第2の小径軸部加熱導体と、
    (b) 前記第1の小径軸部加熱導体に接続されると共に、前記第1の小径軸部加熱導体に対して屈曲されて前記小径軸部の立ち上がり部から離れる方向に傾斜された第3の小径軸部加熱導体と、
    (c) 前記第3の小径軸部加熱導体に接続されると共に、前記段部を構成する座面部に対応配置される円弧形状の座面部加熱導体と、
    (d) 前記座面部加熱導体と前記第2の小径軸部加熱導体との間に接続されると共に、前記段部を構成する肩部の周囲に対応配置される円弧形状の肩部加熱導体と、
    をそれぞれ設け、
    前記座面部加熱導体の円弧の長さαと前記肩部加熱導体の円弧の長さβとの関係を、α≧βとなるように設定すると共に、
    前記小径軸部の立ち上がり部分における前記第2の小径軸部加熱導体と前記第3の小径軸部加熱導体との間の間隔を、前記第1の小径軸部加熱導体及び前記第3の小径軸部加熱導体の接続部における前記第2の小径軸部加熱導体と前記第3の小径軸部加熱導体との間の間隔よりも広くなるように設定し、
    前記第1及び第2の小径軸部加熱導体を前記小径軸部の180°隔てた位置において前記小径軸部に対して平行に配置し、かつ、前記第3の小径軸部加熱導体を前記小径軸部の立ち上がり部に近づくにつれて徐々に前記小径軸部から遠ざかるように配置することにより、前記第3の小径軸部加熱導体を前記小径軸部の立ち上がり部から遠ざけた位置に配置するようにしたこと、
    を特徴とする高周波誘導加熱コイル。
  2. 前記条件式α≧βを満たすことを前提として、前記座面部加熱導体の円弧の中心角θ1を90°≦θ1≦270°の範囲で設定し、前記肩部加熱導体の円弧の中心角θ2を40°≦θ2≦180°の範囲で設定したことを特徴とする請求項1に記載の高周波誘導加熱コイル。
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