JP4132888B2 - クランクシャフト焼入用コイル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、クランクシャフトのピン部又はジャーナル部を加熱するクランクシャフト焼入用コイルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種のクランクシャフト焼入用コイルKは、図5に示すように、加熱すべき部分であるクランクシャフトWのピン部WPに上方から載置されるものである。かかるクランクシャフト焼入用コイルKは、クランクシャフトWの軸方向に沿った3つの第1〜第3の軸加熱部511、512、513と、クランクシャフトWのピン部WPの周面に沿った4つの略1/4円弧状の円弧状加熱部521、522、523、524と、2つの給電導体部531、532とが連結されて構成されている。
【0003】
かかるクランクシャフト焼入用コイルKは平面視略S字形状に形成されている。すなわち、このクランクシャフト焼入用コイルKは、中央の第2の軸加熱部512の一端と一方の第1の軸加熱部511の一端とを連結する第1の円弧状加熱部521と、中央の第2の軸加熱部512の他端と他方の第3の軸加熱部513の一端とを連結する第2の円弧状加熱部522と、第1の軸加熱部511の他端と一方の給電導体部531の一端とを連結する第3の円弧状加熱部523と、第3の軸加熱部513の他端と他方の給電導体部532の一端とを連結する第4の円弧状加熱部524とを有しているのである。
【0004】
かかるクランクシャフト焼入用コイルKは、絶縁板等からなる図示しない取付部材に取り付けられる。かかる取付部材には、クランクシャフト焼入用コイルKの各加熱部511〜513、521〜524とクランクシャフトWとの間のギャップを一定に維持するための3つのスペーサ(図示省略)が約90°間隔で設けられている。また、このクランクシャフト焼入用コイルKの近傍には、このクランクシャフト焼入用コイルKによって加熱されたピン部WP等に冷却液を噴射するための図示しない冷却ジャケットが設けられている。
【0005】
クランクシャフト焼入用コイルKをピン部WP等に載置した状態で、クランクシャフトWを軸を中心として回転させつつ、クランクシャフト焼入用コイルKに図外の電源から高周波電流を供給することで、ピン部WP等が誘導加熱される。一定の加熱が完了したならば、冷却ジャケットから冷却液を噴射してピン部WP等に誘導焼入を施す。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のクランクシャフト焼入用コイルKには以下のような問題点がある。
すなわち、例えばピン部WPの直径が70〜80mmで、ピン部WPの軸方向の幅が16mmというようないわゆる大径幅狭のクランクシャフトWであると、図6に示すように、軸加熱部511〜513に対向する部分に形成される硬化層WAより、円弧状加熱部521〜524に対向する部分に形成される硬化層WAの方が深くなる。すなわち、ピン部WPに形成される硬化層WAの深さが不均一となるのである。かかる硬化層WAの深さの不均一は、大径幅狭のクランクシャフトWであると、クランクシャフト焼入用コイルKの軸加熱部511〜513の長さに比較して、円弧状加熱部521〜524が長くなるので円弧状加熱部521〜524に対向する部分がより加熱されることに起因する。
【0007】
ピン部WPの硬化層WAの深さの不均一は、ピン部WPの強度不足の原因にもなるので、かかる不均一は極力避けなければならない。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みて創案されたものであって、大径幅狭のクランクシャフトであっても、ピン部やジャーナル部に形成される硬化層の深さが均一になるクランクシャフト焼入用コイルを提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るクランクシャフト焼入用コイルは、クランクシャフトのピン部又はジャーナル部を加熱するクランクシャフト焼入用コイルであって、前記ピン部又はジャーナル部に対向する第1の加熱導体群及び第2の加熱導体群と、この第1の加熱導体群及び第2の加熱導体群を連結する連結導体部と、前記第1の加熱導体群及び第2の加熱導体群と電源とを接続する2つの給電導体部とを備えており、前記第1の加熱導体群及び第2の加熱導体群は、それぞれ平面視略S字形状に形成されている。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施の形態に係るクランクシャフト焼入用コイルの概略的斜視図、図2は本発明の実施の形態に係るクランクシャフト焼入用コイルの概略的正面図、図3は本発明の実施の形態に係るクランクシャフト焼入用コイルの概略的側面図、図4は本発明の実施の形態に係るクランクシャフト焼入用コイルによってクランクシャフトのピン部に形成された硬化層を示す概略的断面図である。
【0011】
本発明の実施の形態に係るクランクシャフト焼入用コイルCは、クランクシャフトWのピン部WPを加熱するクランクシャフト焼入用コイルであって、前記ピン部WPに対向する第1の加熱導体群100A及び第2の加熱導体群100Bと、この第1の加熱導体群100A及び第2の加熱導体群100Bを連結する連結導体部200と、前記第1の加熱導体群100A及び第2の加熱導体群100Bと図示しない電源とを接続する2つの給電導体部300A、300Bとを備えており、前記第1の加熱導体群100A及び第2の加熱導体群100Bは、それぞれ平面視略S字形状に形成されている。
【0012】
なお、本明細書中においては、図面左側を第1の加熱導体群100A、図面右側を第2の加熱導体群100Bとして説明する。
【0013】
かかるクランクシャフト焼入用コイルCの各導体群100A、100B、連結導体部200、2つの給電導体部300A、300Bは、例えば銅製の角パイプを連結して構成されており、内部に自身の過熱を防止するための冷却液が循環されるようになっている。なお、冷却液の導入口は連結導体部200に取り付けられ、第2の加熱導体群100Bに導かれている。また、冷却液の排出口は第1の加熱導体群100Aの第4の円弧状加熱部124Aにそれぞれ取り付けられている。
【0014】
前記第1の加熱導体群100Aは、クランクシャフトWの軸方向に沿った3つの第1〜第3の軸加熱部111A、112A、113Aと、中央の第2の軸加熱部112Aの一端と外側の第1の軸加熱部111Aの一端とを連結する第1の円弧状加熱部121Aと、中央の第2の軸加熱部112Aの他端と内側の第3の軸加熱部113Aの一端とを連結する第2の円弧状加熱部122Aと、第1の軸加熱部111Aの他端と一方の給電導体部300Aの一端とを連結する第3の円弧状加熱部123Aと、第3の軸加熱部113Aの他端と連結導体部200の一端とを連結する第4の円弧状加熱部124Aとを有している。
【0015】
前記第1の軸加熱部111Aは、クランクシャフト焼入用コイルCがピン部WPに載置可能なように、ピン部WPの幅寸法より短く設定されている。かかる第1の軸加熱部111Aは、第1の加熱導体群100Aの左端側、すなわち外側に位置している。
【0016】
また、前記第3の軸加熱部113Aは、クランクシャフト焼入用コイルCがピン部WPに載置可能なように、ピン部WPの幅寸法より短く設定されている。かかる第3の軸加熱部113Aは、第1の加熱導体群100Aの右端側、すなわち内側に位置している。
【0017】
さらに、前記第2の軸加熱部112Aは、クランクシャフト焼入用コイルCがピン部WPに載置可能なように、ピン部WPの幅寸法より短く設定されている。かかる第2の軸加熱部112Aは、第1の軸加熱部111Aと第3の軸加熱部113Aとの間、すなわち3つの各軸加熱部111A、112A、113Aの中央に位置している。
【0018】
これらの3つの軸加熱部111A、112A、113Aは、互いに平行になっている。
【0019】
前記第2の軸加熱部112Aと第1の軸加熱部111Aとを連結する第1の円弧状加熱部121Aは、ピン部WPの周面に沿うように約1/8円弧状に形成されている。この第1の円弧状加熱部121Aは、第2の軸加熱部112A及び第1の軸加熱部111Aに対して直角となっている。
【0020】
また、前記第2の軸加熱部112Aと第3の軸加熱部113Aとを連結する第2の円弧状加熱部122Aは、ピン部WPの周面に沿うように約1/8円弧状に形成されている。この第2の円弧状加熱部122Aは、第2の軸加熱部112A及び第3の軸加熱部113Aに対して直角となっている。
【0021】
第1の円弧状加熱部121Aは第2の軸加熱部112Aの一端に、第2の円弧状加熱部122Aは第2の軸加熱部112Aの他端、すなわち反対側にそれぞれ連結されている。従って、第1の円弧状加熱部121Aと第2の円弧状加熱部122Aと第2の軸加熱部112Aとのみを抽出してみると、略クランク状に形成されていることになる。
【0022】
前記第1の軸加熱部111Aの他端に連結される第3の円弧状加熱部123Aは、ピン部WPの周面に沿うように約1/8円弧状に形成されている。この第3の円弧状加熱部123Aは、第1の軸加熱部111Aに対して直角となっている。従って、この第3の円弧状加熱部123Aは、前記第1の軸加熱部111A及び第2の軸加熱部112Aを挟んで第1の円弧状加熱部121Aと平行に設置されていることになる。また、この第3の円弧状加熱部123Aは、前記第2の円弧状加熱部122Aと同一円周線上に位置することになる。
【0023】
かかる第3の円弧状加熱部123Aに連結される一方の給電導体部300Aは、第3の円弧状加熱部123Aの他端から上方に延びており右側に略直角に折曲された後、再び上方に向かって略直角に折曲されている。
【0024】
一方、第4の円弧状加熱部124Aは、前記第3の軸加熱部113Aの他端に連結されるものであり、ピン部WPの周面に沿うように約1/8円弧状に形成されている。この第4の円弧状加熱部124Aは、第3の軸加熱部113Aに対して直角となっている。従って、この第4の円弧状加熱部124Aは、前記第2の軸加熱部112A及び第3の軸加熱部113Aを挟んで第2の円弧状加熱部122Aと平行に設置されていることになる。また、この第4の円弧状加熱部124Aは、前記第1の円弧状加熱部121Aと同一円周線上に位置することになる。
【0025】
また、前記第4の円弧状加熱部124Aの他端は、上方に向かった連結導体部200の一端に接続されている。
【0026】
このため、この第1の加熱導体群100Aにおいては、一方の給電導体部300A→第3の円弧状加熱部123A→第1の軸加熱部111A→第1の円弧状加熱部121A→第2の軸加熱部112A→第2の円弧状加熱部122A→第3の軸加熱部112A→第4の円弧状加熱部124A→連結導体部200の方向又はこの逆方向に電流が流れることになる。
【0027】
一方、第2の加熱導体群100Bは、上述した第1の加熱導体群100Aとほぼ同様の構成であるが、第3の円弧状加熱部123B及び第4の円弧状加熱部124Bの位置が異なる。
【0028】
すなわち、第2の加熱導体群200Bは、クランクシャフトWの軸方向に沿った3つの第1〜第3の軸加熱部111B、112B、113Bと、中央の第2の軸加熱部112Bの一端と外側の第1の軸加熱部111Bの一端とを連結する第1の円弧状加熱部121Bと、中央の第2の軸加熱部112Bの他端と内側の第3の軸加熱部113Bの一端とを連結する第2の円弧状加熱部122Bと、第1の軸加熱部111Bの他端と連結導体部200の他端とを連結する第4の円弧状加熱部124Bと、第3の軸加熱部113Bの他端と他方の給電導体部300Bとを連結する第3の円弧状加熱部123Bとを有している。
【0029】
前記第1の軸加熱部111Bは、クランクシャフト焼入用コイルCがピン部WPに載置可能なように、ピン部WPの幅寸法より短く設定されている。かかる第1の軸加熱部111Bは、第2の加熱導体群100Bの右端側、すなわち外側に位置している。
【0030】
また、前記第3の軸加熱部113Bは、クランクシャフト焼入用コイルCがピン部WPに載置可能なように、ピン部WPの幅寸法より短く設定されている。かかる第3の軸加熱部113Bは、第2の加熱導体群100Bの左端側、すなわち内側に位置している。
【0031】
さらに、前記第2の軸加熱部112Bは、クランクシャフト焼入用コイルCがピン部WPに載置可能なように、ピン部WPの幅寸法より短く設定されている。かかる第2の軸加熱部112Bは、第1の軸加熱部111Bと第3の軸加熱部113Bとの間、すなわち3つの各軸加熱部111B、112B、113Bの中央に位置している。
【0032】
これらの3つの軸加熱部111B、112B、113Bは、互いに平行になっている。
【0033】
前記第2の軸加熱部112Bと第1の軸加熱部111Bとを連結する第1の円弧状加熱部121Bは、ピン部WPの周面に沿うように約1/8円弧状に形成されている。この第1の円弧状加熱部121Bは、第2の軸加熱部112B及び第1の軸加熱部111Bに対して直角となっている。
【0034】
また、前記第2の軸加熱部112Bと第3の軸加熱部113Bとを連結する第2の円弧状加熱部122Bは、ピン部WPの周面に沿うように約1/8円弧状に形成されている。この第2の円弧状加熱部122Bは、第2の軸加熱部112B及び第3の軸加熱部113Bに対して直角となっている。
【0035】
第1の円弧状加熱部121Bは第2の軸加熱部112Bの一端に、第2の円弧状加熱部121Bは第2の軸加熱部112Bの他端、すなわち反対側にそれぞれ連結されている。従って、第1の円弧状加熱部121Bと第2の円弧状加熱部122Bと第2の軸加熱部112Bとのみを抽出してみると、略クランク状に形成されていることになる。
【0036】
前記第1の軸加熱部111Bの他端に連結される第4の円弧状加熱部124Bは、ピン部WPの周面に沿うように約1/8円弧状に形成されている。この第4の円弧状加熱部124Bは、第1の軸加熱部111Bに対して直角となっている。従って、この第4の円弧状加熱部124Bは、前記第1の軸加熱部111B及び第2の軸加熱部112Bを挟んで第1の円弧状加熱部121Bと平行に設置されていることになる。また、この第4の円弧状加熱部124Bは、前記第2の円弧状加熱部122Bと同一円周線上に位置することになる。
【0037】
かかる第4の円弧状加熱部124Bに連結される連結導体部200は、第4の円弧状加熱部124Bの他端から上方に延びており左側に略直角に折曲されている。
【0038】
なお、連結導体部200は、略逆凹字形状に形成されている。従って、一方(図面上左側)は第1の加熱導体群100Aの第4の円弧状導体部124Aと、他方(図面上右側)は第2の加熱導体群200Bの第4の円弧状導体部124Bとそれぞれ接続されていることになる。
【0039】
一方、第3の円弧状加熱部123Bは、前記第3の軸加熱部113Bの他端に連結されるものであり、ピン部WPの周面に沿うように約1/8円弧状に形成されている。この第3の円弧状加熱部123Bは、第3の軸加熱部113Bに対して直角となっている。従って、この第3の円弧状加熱部123Bは、前記第2の軸加熱部112B及び第3の軸加熱部113Bを挟んで第2の円弧状加熱部122Bと平行に設置されていることになる。また、この第3の円弧状加熱部123Bは、前記第1の円弧状加熱部121Bと同一円周線上に位置することになる。
【0040】
また、前記第4の円弧状加熱部124Bの他端は、他方の給電導体部300Bが接続される。この他方の給電導体部300Bは、第4の円弧状加熱部124Bの他端から上方に延びており左側に略直角に折曲された後、再び上方に向かって略直角に折曲されている。
【0041】
このため、この第2の加熱導体群100Bにおいては、他方の給電導体部300B→第3の円弧状加熱部123B→第3の軸加熱部113B→第3の円弧状加熱部123B→第2の軸加熱部112B→第1の円弧状加熱部121B→第1の軸加熱部111B→第4の円弧状加熱部124B→連結導体部200の方向又はこの逆方向に電流が流れることになる。
【0042】
なお、このクランクシャフト焼入用コイルCは、図1、図2等に示すように、下方に向かって開いており、クランクシャフトWのピン部WPの上方からピン部WPに向かってセットすることができるようになっている。このため、第1の加熱導体群100Aの第3の軸加熱部113Aと、第2の加熱導体群100Bの第1の軸加熱部111Bとの間の距離は、誘導焼入が施されるクランクシャフトWのピン部WPの直径より、ギャップ分だけ大きく設定されている。
【0043】
かかるクランクシャフト焼入用コイルCは、第1の加熱導体群100Aの第1の軸加熱部111Aに設けられた取付ボルト510A及び第3の軸加熱部113Aに設けられた取付ボルト520Aと、第2の加熱導体群100Bの第1の軸加熱部111Bに設けられた取付ボルト510B及び第3の軸加熱部113Bに設けられた取付ボルト520Bとによって絶縁板等からなる図示しない取付部材に取り付けられる。
【0044】
また、前記取付部材には、クランクシャフト焼入用コイルCの各加熱部111A等とクランクシャフトWとの間のギャップを一定に維持するための3つのスペーサ400A、400B、400Cが約90°間隔で設けられている。すなわち、このスペーサ400Bは第1の加熱導体群100Aの第3の軸加熱部113Aと、第2の加熱導体群100Bの第3の軸加熱部113Bとの間に、スペーサ400Aは第1の加熱導体群100Aの第3の軸加熱部113Aより左側に、スペーサ400Cは第2の加熱導体群100Bの第1の軸加熱部111Bより右側にそれぞれずつ配置されている。
【0045】
また、このクランクシャフト焼入用コイルCの近傍には、このクランクシャフト焼入用コイルCによって加熱されたピン部WP等に冷却液を噴射するための図示しない冷却ジャケットが設けられている。
【0046】
かかるクランクシャフト焼入用コイルCによるクランクシャフトWのピン部WPの誘導焼入は次のようにして行われる。
まず、ピン部WPに対して上方からクランクシャフト焼入用コイルCをセットする。すると、各スペーサ400A、400B、400Cがピン部WPの周面に接触する。この状態で、クランクシャフトWを軸を中心として回転させつつ、図外の電源から高周波電流をクランクシャフト焼入用コイルCに供給する。
【0047】
クランクシャフト焼入用コイルCにおける高周波電流は、一方の給電導体部300A→第1の加熱導体群100Aの第3の円弧状加熱部123A→第1の加熱導体群100Aの第1の軸加熱部111A→第1の加熱導体群100Aの第1の円弧状加熱部121A→第1の加熱導体群100Aの第2の軸加熱部112A→第1の加熱導体群100Aの第2の円弧状加熱部122A→第1の加熱導体群100Aの第3の軸加熱部113A→第1の加熱導体群100Aの第4の円弧状加熱部124A→連結導体部200→第2の加熱導体群100Bの第4の円弧状加熱部124B→第2の加熱導体群100Bの第1の軸加熱部111B→第2の加熱導体群100Bの第1の円弧状加熱部121B→第2の加熱導体群100Bの第2の軸加熱部112B→第2の加熱導体群100Bの第2の円弧状加熱部122B→第2の加熱導体群100Bの第3の軸加熱部113B→第2の加熱導体群100Bの第3の円弧状加熱導体部123B→他方の給電導体部300Bの方向又はこの逆方向に流れることになる。
【0048】
次に、クランクシャフト焼入用コイルCによる加熱が完了したならば、クランクシャフトWの回転を継続させたまま、冷却ジャケットから冷却液を噴射して誘導焼入による硬化層WA(図4参照)を形成する。
【0049】
ここで、クランクシャフトWの軸に沿った加熱部には、合計6個の軸加熱部111A、112A、113A、111B、112B、113Bがある。従来の図5に示すクランクシャフト焼入用コイルKであれば、3つの軸加熱部511〜513によって加熱されていた部分が2倍の6個の軸加熱部111A、112A、113A、111B、112B、113Bで加熱されることになる。すなわち、各軸加熱部111A、112A、113A、111B、112B、113Bで加熱される部分は、従来の場合より加熱されることになる。
【0050】
また、クランクシャフトWのピン部WPの周面に沿った加熱部には、合計8個の円弧状加熱部121A、122A、123A、124A、121B、122B、123B、124Bがある。従来の図5に示すクランクシャフト焼入用コイルKであれば、4つの円弧状加熱導体部521〜524があったのであるが、2個に分割されているため、このクランクシャフト焼入用コイルCにおける円弧状加熱部121A、122A、123A、124A、121B、122B、123B、124Bに対向する部分の面積が減少していることになるので、各円弧状加熱部121A、122A、123A、124A、121B、122B、123B、124Bによって加熱される部分は、実質的に減少していることになる。
【0051】
このように、各軸加熱部111A、112A、113A、111B、112B、113Bによる加熱量は増加し、各円弧状加熱部121A、122A、123A、124A、121B、122B、123B、124Bによる加熱量は減少しているので、従来のクランクシャフト焼入用コイルKより、ピン部WPに形成される硬化層WAの不均一は解消していることになる。よって、図4に示すように、ピン部WPに形成される硬化層WAの深さはより均一になっている。
【0052】
なお、上述した説明では、クランクシャフトWのピン部WPに誘導焼入を施すとして説明したが、ジャーナル部にであってもよいことは勿論である。また、図面等からは省略したが、各軸加熱部111A等、各円弧状加熱部121A等には、例えば珪素鋼板等からなるコアが適宜嵌め込まれるものとする
【0053】
【発明の効果】
本発明に係るクランクシャフト焼入用コイルは、クランクシャフトのピン部又はジャーナル部を加熱するクランクシャフト焼入用コイルであって、前記ピン部又はジャーナル部に対向する第1及び第2の加熱導体群と、この第1及び第2の加熱導体群を連結する連結導体部と、前記第1及び第2の加熱導体群と電源とを接続する2つの給電導体部とを備えており、前記第1及び第2の加熱導体群は、それぞれ平面視略S字形状に形成されている。
【0054】
かかるクランクシャフト焼入用コイルであると、従来のクランクシャフト焼入用コイルより、ピン部に形成される硬化層の不均一は解消することが確認された。よって、ピン部の強度不足の原因にもなるピン部の硬化層の深さの不均一が解消されることになる。
【0055】
また、前記第1の加熱導体群は、クランクシャフトの軸方向に沿った3つの第1〜第3の軸加熱部と、中央の第2の軸加熱部の一端と外側の第1の軸加熱部の一端とを連結する第1の円弧状加熱部と、中央の第2の軸加熱部の他端と内側の第3の軸加熱部の一端とを連結する第2の円弧状加熱部と、第1の軸加熱部の他端と一方の給電導体部の一端とを連結する第3の円弧状加熱部と、第3の軸加熱部の他端と連結導体部の一端とを連結する第4の円弧状加熱部とを有しており、前記第2の加熱導体群は、クランクシャフトの軸方向に沿った3つの第1〜第3の軸加熱部と、中央の第2の軸加熱部の一端と外側の第1の軸加熱部の一端とを連結する第1の円弧状加熱部と、中央の第2の軸加熱部の他端と内側の第3の軸加熱部の一端とを連結する第2の円弧状加熱部と、第1の軸加熱部の他端と連結導体部の他端とを連結する第4の円弧状加熱部と、第3の軸加熱部の他端と他方の給電導体部とを連結する第3の円弧状加熱部とを有している。
【0056】
第1の加熱導体群と第2の加熱導体群をこのように構成することによって、各軸加熱部による加熱量は従来のものより増加し、各円弧状加熱部による加熱量は従来のものより減少しているので、従来のクランクシャフト焼入用コイルより、ピン部に形成される硬化層の不均一は解消していることになる。
【0057】
また、前記第1及び第2の加熱導体群の第1〜第4の円弧状加熱部は、略1/8円弧に形成されていると、クランクシャフト焼入用コイルはピン部等を180°の間にわたって対向することになるので、クランクシャフト焼入用コイルに対してクランクシャフトを容易に出し入れすることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るクランクシャフト焼入用コイルの概略的斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るクランクシャフト焼入用コイルの概略的正面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るクランクシャフト焼入用コイルの概略的側面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るクランクシャフト焼入用コイルによってクランクシャフトのピン部に形成された硬化層を示す概略的断面図である。
【図5】である。
【図6】である。
【符号の説明】
100A 第1の加熱導体群
111A (第1の加熱導体群の)第1の軸加熱部
112A (第1の加熱導体群の)第2の軸加熱部
113A (第1の加熱導体群の)第3の軸加熱部
121A (第1の加熱導体群の)第1の円弧状加熱部
122A (第1の加熱導体群の)第2の円弧状加熱部
123A (第1の加熱導体群の)第3の円弧状加熱部
124A (第1の加熱導体群の)第4の円弧状加熱部
100B 第2の加熱導体群
111B (第2の加熱導体群の)第1の軸加熱部
112B (第2の加熱導体群の)第2の軸加熱部
113B (第2の加熱導体群の)第3の軸加熱部
121B (第2の加熱導体群の)第1の円弧状加熱部
122B (第2の加熱導体群の)第2の円弧状加熱部
123B (第2の加熱導体群の)第3の円弧状加熱部
124B (第2の加熱導体群の)第4の円弧状加熱部
200 連結導体部
300A 一方の給電導体部
300B 他方の給電導体部
W クランクシャフト
WP ピン部

Claims (3)

  1. クランクシャフトのピン部又はジャーナル部を加熱するクランクシャフト焼入用コイルにおいて、前記ピン部又はジャーナル部に対向する第1の加熱導体群及び第2の加熱導体群と、この第1の加熱導体群及び第2の加熱導体群を連結する連結導体部と、前記第1の加熱導体群及び第2の加熱導体群と電源とを接続する2つの給電導体部とを具備しており、前記第1の加熱導体群及び第2の加熱導体群は、それぞれ平面視略S字形状に形成されていることを特徴とするクランクシャフト焼入用コイル。
  2. 前記第1の加熱導体群は、クランクシャフトの軸方向に沿った3つの第1〜第3の軸加熱部と、中央の第2の軸加熱部の一端と外側の第1の軸加熱部の一端とを連結する第1の円弧状加熱部と、中央の第2の軸加熱部の他端と内側の第3の軸加熱部の一端とを連結する第2の円弧状加熱部と、第1の軸加熱部の他端と一方の給電導体部の一端とを連結する第3の円弧状加熱部と、第3の軸加熱部の他端と連結導体部の一端とを連結する第4の円弧状加熱部とを有しており、前記第2の加熱導体群は、クランクシャフトの軸方向に沿った3つの第1〜第3の軸加熱部と、中央の第2の軸加熱部の一端と外側の第1の軸加熱部の一端とを連結する第1の円弧状加熱部と、中央の第2の軸加熱部の他端と内側の第3の軸加熱部の一端とを連結する第2の円弧状加熱部と、第1の軸加熱部の他端と連結導体部の他端とを連結する第4の円弧状加熱部と、第3の軸加熱部の他端と他方の給電導体部とを連結する第3の円弧状加熱部とを有していることを特徴とする請求項1記載のクランクシャフト焼入用コイル。
  3. 前記第1及び第2の加熱導体群の第1〜第4の円弧状加熱部は、略1/8円弧に形成されていることを特徴とする請求項2記載のクランクシャフト焼入用コイル。
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