JP7183250B2 - 移動焼入れ装置及び移動焼入れ方法 - Google Patents
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Description
本願は、2018年3月22日に、日本に出願された特願2018-055216号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
誘導加熱では、環状に形成された1次コイル部材内に軸状体を挿入し、1次コイル部材に高周波電流を流して誘導加熱により軸状体を加熱する。誘導加熱では、軸状体と1次コイル部材との距離(エアーギャップ)が短いほど軸状体が効率よく加熱される。このため、軸状体が、本体部と、本体部に設けられ本体部よりも径が小さい小径部と、を備える場合には、本体部に比べて小径部が加熱されにくいという課題がある。
この理由は、2次コイル部材の内径を第2小径部の外径に合わせると、2次コイル部材内に第1小径部が挿入できなくなり、2次コイル部材の内径を第1小径部の外径に合わせると、2次コイル部材内に第2小径部を挿入したときに、2次コイル部材と第2小径部とのエアーギャップが大きくなり、効率的に移動焼入れできなくなるためである。
(1)本発明の一態様に係る移動焼入れ装置は、本体部と、前記本体部の軸線方向の一方側の端部に設けられて前記本体部よりも外径が小さい第1小径部と、前記第1小径部の前記軸線方向の一方側の端部に設けられて前記第1小径部よりも外径が小さい第2小径部と、を備える軸状体に、移動焼入れを行う装置であって、環状に形成されて高周波電流が流され、前記本体部に外挿される1次コイル部材と;環状に形成され、前記軸状体の前記第1小径部に外挿され前記1次コイル部材内に配置可能な2次コイル部材と;環状に形成され、前記軸状体の前記第2小径部に外挿され前記2次コイル部材内に配置可能な3次コイル部材と;を備える。
第1小径部を移動焼入れするときには、第1小径部に2次コイル部材及び1次コイル部材を外挿し、軸線方向に移動する1次コイル部材に高周波電流を流す。1次コイル部材と2次コイル部材とが電磁誘導して2次コイル部材に渦電流が流れる。すると、2次コイル部材と第1小径部とが電磁誘導することにより第1小径部に渦電流が流れて、第1小径部が加熱され、移動焼入れされる。このように、1次コイル部材と第1小径部との間に2次コイル部材が配置されることにより、第1小径部の外周と1次コイル部材の内周との間のエアーギャップが、第1小径部の外周と2次コイル部材の内周との間のエアーギャップへと小さくなり、移動焼入れが効率的に行われる。
以上のように、本体部だけでなく、第1小径部及び第2小径部も効率的に移動焼入れすることができる。
なお、本願明細書において言う「環状」とは、「全体としての形状が円い」ことを意味するものであり、本願発明で用いられる各種コイルのようにその環状の周方向に沿った一部に欠損部があるものを含めて「環状」と呼ぶ。
この場合、2次コイル部材と3次コイル部材とが周方向で互いに重なる範囲を広くとることができる。その結果、電磁誘導に寄与しない範囲を小さく抑えることができる。
まず、第2小径部の軸線方向の一方側の端部に3次コイル部材、2次コイル部材、及び1次コイル部材を外挿し、3次コイル部材、2次コイル部材、及び1次コイル部材を一体にして軸線方向の他方側に向かって移動させる。高周波電流が流れる1次コイル部材と2次コイル部材とが電磁誘導して2次コイル部材に渦電流が流れる。すると、2次コイル部材と3次コイル部材とが電磁誘導して3次コイル部材に渦電流が流れる。すると、3次コイル部材と第2小径部とが電磁誘導することにより第2小径部に渦電流が流れて、第2小径部が加熱される。このように、1次コイル部材と第2小径部との間に2次コイル部材及び3次コイル部材が配置されることにより、第2小径部の外周と1次コイル部材の内周との間のエアーギャップが、第2小径部の外周と3次コイル部材の内周との間のエアーギャップへと小さくなり、第2小径部の加熱が効率的に行われる。この後で、例えば、1次コイル部材の後を追って軸線方向の他方側に向かって移動する冷却部により第2小径部を冷却して、第2小径部を移動焼入れする。
高周波電流が流れる1次コイル部材と2次コイル部材とが電磁誘導して2次コイル部材に渦電流が流れる。すると、2次コイル部材と第1小径部とが電磁誘導することにより第1小径部に渦電流が流れて、第1小径部が加熱される。このように、1次コイル部材と第1小径部との間に2次コイル部材が配置されることにより、第1小径部の外周と1次コイル部材の内周との間のエアーギャップが、第1小径部の外周と2次コイル部材の内周との間のエアーギャップへと小さくなり、第1小径部の移動焼入れが効率的に行われる。
高周波電流が流れる1次コイル部材と本体部とが電磁誘導することにより、本体部が加熱される。
なお、第2小径部と同様に、第1小径部及び本体部は、加熱された後で冷却部により冷却される。
以上のように、軸状体に対して1次コイル部材を軸線方向の他方側に相対的に移動して軸状体を移動焼入れする場合に、本体部だけでなく、第1小径部及び第2小径部も効率的に移動焼入れすることができる。
まず、1次コイル部材を本体部に外挿し、軸線方向の一方側に向かって移動させる。高周波電流が流れる1次コイル部材と本体部とが電磁誘導することにより、本体部が加熱される。この後で、例えば、1次コイル部材の後を追って軸線方向の一方側に向かって移動する冷却部により冷却して、本体部を移動焼入れする。
次に、第1小径部の軸線方向の他方側の端部に外挿した2次コイル部材の少なくとも一部を1次コイル部材が外挿したら、1次コイル部材及び2次コイル部材を一体にして軸線方向の一方側に向かって移動させる。高周波電流が流れる1次コイル部材と2次コイル部材とが電磁誘導して2次コイル部材に渦電流が流れる。すると、2次コイル部材と第1小径部とが電磁誘導することにより第1小径部に渦電流が流れて、第1小径部が加熱される。このように、1次コイル部材と第1小径部との間に2次コイル部材が配置されることにより、第1小径部の外周と1次コイル部材の内周との間のエアーギャップが、第1小径部の外周と2次コイル部材の内周との間のエアーギャップへと小さくなり、第1小径部の移動焼入れが効率的に行われる。
なお、本体部と同様に、第1小径部及び第2小径部は、加熱された後で冷却部により冷却される。
以上のように、軸状体に対して相対的に1次コイル部材を軸線方向の一方側に向かって移動させて軸状体を移動焼入れする場合に、本体部だけでなく、第1小径部及び第2小径部も効率的に移動焼入れすることができる。
図1及び図2に示すように、本実施形態の移動焼入れ装置1は、鉄道車両用の車軸等の軸状体101に、高周波電流を用いて移動焼入れ(traverse hardening)を行うための装置である。
まず、軸状体101について説明する。軸状体101は、本体部102と、本体部102の軸線C方向の一方側(他方側)D1の端部に設けられた第1小径部103A及び第2小径部104Aと、本体部102の軸線C方向の他方側(一方側)D2の端部に設けられた第1小径部103B及び第2小径部104Bと、を備えている。
第2小径部104Aは、第1小径部103Aの下端部に設けられ、その下端面が軸状体101の下端に達している。第2小径部104Bは、第1小径部103Bの上端部に設けられ、その上端面が軸状体101の上端に達している。
軸状体101は、フェライト相である、炭素鋼、鉄(Fe)を95重量%以上含有する低合金鋼等の導電性を有する材料で形成されている。
本実施形態では、2次コイル部材16Aの構成と2次コイル部材16Bの構成とが、上下方向に直交する基準面に対して面対称である。このため、2次コイル部材16Aの構成を、数字、又は数字及び英小文字に英大文字「A」を付加することで示す。2次コイル部材16Bのうち2次コイル部材16Aに対応する構成を、2次コイル部材16Aと同一の数字、又は数字及び英小文字に英大文字「B」を付加することで示す。これにより、重複する説明を省略する。3次コイル部材26A,26B、及び後述する第2支持部18A,18B等についても同様である。例えば、第2支持部18Aの第2支持片19Aと第2支持部18Bの第2支持片19Bとは、基準面に対して面対称の構成である。
1次コイル部材11の各端部は、カーレントトランス12に電気的及び機械的に連結されている。カーレントトランス12は、1次コイル部材11に高周波電流を流す。
第2連結片20Aには、第2移動部21Aが接続されている。第2移動部21Aは、例えば、図示しない3軸ステージ及び駆動モータを備えていて、第2支持部18Aを介して2次コイル部材16Aを、上下方向及び水平面に沿う方向に移動させることができる。
2次コイル部材16Aと同様に、2次コイル部材16Bには第2支持部18B及び第2移動部21Bが接続されている。
3次コイル部材26Aの内径は、軸状体101の第2小径部104Aの外径よりも大きい。3次コイル部材26Aの外径は、2次コイル部材16Aの内径よりも小さい。3次コイル部材26Aは、軸状体101の第2小径部104Aに外挿され、2次コイル部材16A内に、第2小径部104A及び2次コイル部材16Aから互いに離間した状態で配置可能である。
3次コイル部材26Bは、3次コイル部材26Aと同様に構成されている。3次コイル部材26Aと同様に、3次コイル部材26Bには第3支持部28B及び第3移動部31Bが接続されている。1次コイル部材11、2次コイル部材16A,16B、3次コイル部材26A,26Bは、銅等の導電性を有する材料で形成されている。
冷却環36には、ポンプ37が連結されている。ポンプ37は、水等の冷却液Lを冷却環36の内部空間36a内に供給する。内部空間36aに供給された冷却液Lは、複数のノズル36bを通して軸状体101に向かって噴出し、軸状体101を冷却する。
支え板39は、図示されないガイドレールを介してラック42に連結されている。支え板39は、前記ガイドレールにより、ラック42に対して相対的に上下方向に移動自在となっている。そして、ピニオンギヤ39aは、ラック42の歯に対して噛合している。そのため、制御部46がモータ40を駆動させると、ピニオンギヤ39aが回転し、ラック42に対して支え板39が上方又は下方に移動する。
制御部46は、カーレントトランス12、第2移動部21A,21B、第3移動部31A,31B、ポンプ37、及びモータ40に接続され、これらを制御する。
図3は、本実施形態における移動焼入れ方法Sを示すフローチャートである。
予め、軸状体101は、支持部材6により軸線Cが上下方向に沿うように支持されている。1次コイル部材11、2次コイル部材16A,16B、及び3次コイル部材26A,26Bは、軸状体101から取外されている。
カーレントトランス12を駆動して1次コイル部材11に高周波電流を流す。ポンプ37を駆動して、冷却環36の複数のノズル36bから冷却液Lを噴出させる。
配置工程S1が終了すると、ステップS3に移行する。
図2に示すように、1次コイル部材11に方向E1に電流が流れると、電磁誘導により2次コイル部材16Aの外表面に方向E2の渦電流が流れる。2次コイル部材16Aの外表面に方向E2の渦電流が流れると、3次コイル部材26Aの外表面に方向E3の渦電流が流れる。さらに、3次コイル部材26Aの外表面に方向E3の渦電流が流れると、第2小径部104Aの外表面に方向E4の渦電流が流れる。こうして第2小径部104Aの外表面に方向E4に流れる渦電流により、第2小径部104Aが加熱される。
第2小径部第1焼入れ工程S3が終了すると、ステップS5に移行する。
なお、3次コイル部材26Aを第2小径部104Aの上端部に外挿した状態で停止させるのに代えて、第2小径部104Aを加熱した後であって第2小径部104Aを冷却する前に、3次コイル部材26Aを下方に退避させる方が望ましい。この理由は、(1)第2小径部104Aを加熱する際に温度が高くなった3次コイル部材26Aを第2小径部104Aから退避させてさらなる加熱を防ぐこと、及び、(2)冷却環36から噴出した冷却液Lが第2小径部104Aの上端部に当たりやすくなること、の2点により、第2小径部104Aの端部の冷却効率が高まるためである。
第1小径部第1焼入れ工程S5が終了すると、ステップS7に移行する。
なお、2次コイル部材16Aを第1小径部103Aの上端部に外挿した状態で停止させるのに代えて、本体部102を加熱した後であって本体部102を冷却する前に、2次コイル部材16Aを下方に退避させる方が望ましい。この理由は、(1)本体部102を加熱する際に温度が高くなった2次コイル部材16Aを本体部102から退避させてさらなる加熱を防ぐこと、及び、(2)冷却環36から噴出した冷却液Lが第1小径部103Aの上端部に当たりやすくなること、の2点により、第1小径部103Aの端部の冷却効率が高まるためである。
本体部焼入れ工程S7が終了すると、ステップS9に移行する。
第1小径部第2焼入れ工程S9が終了すると、ステップS11に移行する。
なお、第1小径部第1焼入れ工程S5、本体部焼入れ工程S7、第1小径部第2焼入れ工程S9、及び第2小径部第2焼入れ工程S11において、第1小径部103A、本体部102、第1小径部103B、及び第2小径部104Bが加熱された後で、冷却環36によりこれらの部分が冷却される。
第2小径部第2焼入れ工程S11が終了すると、移動焼入れ方法Sの全工程が終了し、軸状体101全体が移動焼入れされる。移動焼入れされた軸状体101は、硬度が向上する。
第1小径部103Aを移動焼入れするときには、第1小径部103Aに2次コイル部材16A及び1次コイル部材11を外挿し、上方に移動する1次コイル部材11に高周波電流を流す。1次コイル部材11と2次コイル部材16Aとが電磁誘導して2次コイル部材16Aに渦電流が流れる。すると、2次コイル部材16Aと第1小径部103Aとが電磁誘導することにより第1小径部103Aに渦電流が流れて、第1小径部103Aが加熱され、移動焼入れされる。このように、1次コイル部材11と第1小径部103Aとの間に2次コイル部材16Aが配置されることにより、第1小径部103Aの外周面と1次コイル部材11の内周面との間のエアーギャップが、第1小径部103Aの外周面と2次コイル部材16Aの内周面との間のエアーギャップへと小さくなり、移動焼入れが効率的に行われる。
以上のように、本体部102だけでなく、第1小径部103A及び第2小径部104Aも効率的に移動焼入れすることができる。
まず、第2小径部104Aの下端部に3次コイル部材26A、2次コイル部材16A、及び1次コイル部材11を外挿し、3次コイル部材26A、2次コイル部材16A、及び1次コイル部材11を一体にして上方に移動させる。高周波電流が流れる1次コイル部材11と2次コイル部材16Aとが電磁誘導して2次コイル部材16Aに渦電流が流れる。すると、2次コイル部材16Aと3次コイル部材26Aとが電磁誘導することにより、3次コイル部材26Aに渦電流が流れる。すると、3次コイル部材26Aと第2小径部104Aとが電磁誘導することにより、第2小径部104Aに渦電流が流れて、第2小径部104Aが加熱される。このように、1次コイル部材11と第2小径部104Aとの間に2次コイル部材16A及び3次コイル部材26Aが配置されることにより、1次コイル部材11の内周面と第2小径部104Aの外周面との間のエアーギャップが、第2小径部104Aの外周面と3次コイル部材26Aの内周面との間のエアーギャップへと小さくなり、第2小径部104Aの加熱が効率的に行われる。この後で、1次コイル部材11の後を追って上方に移動する冷却環36により第2小径部104Aを冷却して、第2小径部104Aを移動焼入れする。
次に、2次コイル部材16Aを第1小径部103Aの上端部又は下端部に残して、1次コイル部材11を本体部102に外挿し、上方に移動させる。高周波電流が流れる1次コイル部材11と本体部102とが電磁誘導することにより、本体部102が加熱される。
以上のように、軸状体101に対して1次コイル部材11を上方に移動させて軸状体101を移動焼入れする場合に、本体部102だけでなく、第1小径部103A及び第2小径部104Aも効率的に移動焼入れすることができる。
まず、1次コイル部材11を本体部102に外挿し、上方に移動させる。高周波電流が流れる1次コイル部材11と本体部102とが電磁誘導することにより、本体部102に渦電流が流れて、本体部102が加熱される。この後で、1次コイル部材11の後を追って上方に移動する冷却環36により冷却して、本体部102を移動焼入れする。
次に、第1小径部103Bの下端部に外挿した2次コイル部材16Bの少なくとも一部を1次コイル部材11が外挿したら、1次コイル部材11及び2次コイル部材16Bを一体にして上方に移動させる。高周波電流が流れる1次コイル部材11と2次コイル部材16Bとが電磁誘導して2次コイル部材16Bに渦電流が流れる。すると、2次コイル部材16Bと第1小径部103Bとが電磁誘導することにより、第1小径部103Bに渦電流が流れて、第1小径部103Bが加熱される。このように、1次コイル部材11と第1小径部103Bとの間に2次コイル部材16Bが配置されることにより、1次コイル部材11の内周面と第1小径部103Bの外周面との間のエアーギャップが、第1小径部103Bの外周面と2次コイル部材16Bの内周面との間のエアーギャップへと小さくなり、第1小径部103Bの移動焼入れが効率的に行われる。
なお、本体部102と同様に、第1小径部103B及び第2小径部104Bは、加熱された後で冷却環36により冷却される。
以上のように、軸状体101に対して相対的に1次コイル部材11を上方に移動させて軸状体101を移動焼入れする場合に、本体部102だけでなく、第1小径部103B及び第2小径部104Bも効率的に移動焼入れすることができる。
例えば、前記実施形態では、2次コイル部材16Aの第2欠損部16aA及び3次コイル部材26Aの第3欠損部26aAは、周方向において互いに異なる位置に形成されていてもよい。
軸状体101が、第2小径部104Aの下端部に設けられ、第2小径部104Aよりも径が小さい第3小径部、第4小径部、・・を備える場合等には、移動焼入れ装置は4次コイル部材、5次コイル部材、・・を備えてもよい。
同様に、軸状体101が第1小径部103A及び第2小径部104Aを備えない場合には、移動焼入れ装置1は2次コイル部材16A及び3次コイル部材26Aを備えなくてよい。この場合、移動焼入れ方法Sでは、第2小径部第1焼入れ工程S3及び第1小径部第1焼入れ工程S5は行われなくてよい。
移動焼入れ装置1は、支持部材6及び制御部46を備えなくてもよい。
軸状体101は、鉄道車両用の車軸であるとしたが、ボールネジ等の軸であってもよい。
以下では、実施形態に基づく実施例の移動焼入れ装置1と、比較例の移動焼入れ装置とのそれぞれをシミュレーションした結果について説明する。
図8に、シミュレーションに用いた解析モデルを示す。
本体部102の外径は195mmであり、第1小径部103Aの外径(最小径)は161mmであり、第2小径部104Aの外径(最小径)は131mmであるとした。軸状体101の材質は、炭素鋼であるとした。1次コイル部材11に流す高周波電流の周波数を1kHzとした。移動焼入れにより軸状体101に対して一定の深さの焼入れをするために必要な加熱をする際に、軸状体101の温度の最高値を求めた。
実施例の移動焼入れ装置1により軸状体101を移動焼入れすると、第2小径部104Aで770℃以上に加熱できる深さを少なくとも5.0mm以上確保した場合には、図9中に示す1次コイル部材11、2次コイル部材16A、及び3次コイル部材26Aの位置の時に、領域R1の温度が約1280℃になることが分かった。
図10に、比較例の移動焼入れ装置1Aによるシミュレーション結果を示す。比較例の移動焼入れ装置1Aは、実施例の移動焼入れ装置1の各構成に対して3次コイル部材26Aを備えていない。比較例の移動焼入れ装置1Aにより軸状体101を移動焼入れすると、第2小径部104Aで770℃以上に加熱できる深さを少なくとも5.0mm以上確保した場合には、領域R2の温度が約1491℃になることが分かった。
実施例の移動焼入れ装置1は、比較例の移動焼入れ装置1Aに比べて、移動焼入れ時における軸状体101の温度の最高値を、約211℃低減できることが分かった。
11 1次コイル部材
16A,16B 2次コイル部材
26A,26B 3次コイル部材
101 軸状体
102 本体部
103A,103B 第1小径部
104A,104B 第2小径部
C 軸線
D1 一方側(他方側)
D2 他方側(一方側)
S 移動焼入れ方法
Claims (4)
- 本体部と、前記本体部の軸線方向の一方側の端部に設けられて前記本体部よりも外径が小さい第1小径部と、前記第1小径部の前記軸線方向の一方側の端部に設けられて前記第1小径部よりも外径が小さい第2小径部と、を備える軸状体に、移動焼入れを行う装置であって、
環状に形成されて高周波電流が流され、前記本体部に外挿される1次コイル部材と;
環状に形成され、前記軸状体の前記第1小径部に外挿され前記1次コイル部材内に配置可能な2次コイル部材と;
環状に形成され、前記軸状体の前記第2小径部に外挿され前記2次コイル部材内に配置可能な3次コイル部材と;
を備える移動焼入れ装置。 - 前記2次コイル部材の周方向の一部に、第2欠損部が形成され;
前記3次コイル部材の周方向の一部に、第3欠損部が形成され;
前記第2欠損部の周方向の位置と、前記第3欠損部の周方向の位置とが、少なくとも一部において互いに重なっている;
請求項1に記載の移動焼入れ装置。 - 本体部と、前記本体部の軸線方向の一方側の端部に設けられ前記本体部よりも外径が小さい第1小径部と、前記第1小径部の前記軸線方向の一方側の端部に設けられ前記第1小径部よりも外径が小さい第2小径部と、を備える軸状体に、移動焼入れを行う方法であって、
前記第2小径部の前記軸線方向の一方側の端部に、環状に形成された3次コイル部材を外挿し、前記3次コイル部材に、環状に形成された2次コイル部材の少なくとも一部を外挿し、前記2次コイル部材に、環状に形成されて高周波電流が流される1次コイル部材の少なくとも一部を外挿し、前記3次コイル部材、前記2次コイル部材、及び前記1次コイル部材を一体にして前記軸線方向の他方側に移動させて、誘導加熱により前記第2小径部を加熱する工程と;
前記3次コイル部材を前記第2小径部の前記軸線方向の他方側の端部に外挿する、又は、前記3次コイル部材を前記軸線方向の一方側に退避させた状態で、前記2次コイル部材及び前記1次コイル部材を一体にして前記軸線方向の他方側に移動させて、誘導加熱により前記第1小径部を加熱する工程と;
前記2次コイル部材を前記第1小径部の前記軸線方向の他方側の端部に外挿する、又は、前記2次コイル部材を前記軸線方向の一方側に退避させた状態で、前記1次コイル部材を前記軸線方向の他方側に移動させて、誘導加熱により前記本体部を加熱する工程と;
を有する移動焼入れ方法。 - 本体部と、前記本体部の軸線方向の一方側の端部に設けられ前記本体部よりも外径が小さい第1小径部と、前記第1小径部の前記軸線方向の一方側の端部に設けられ前記第1小径部よりも外径が小さい第2小径部と、を備える軸状体に、移動焼入れを行う方法であって、
前記第1小径部の前記軸線方向の他方側の端部に、環状に形成された2次コイル部材を外挿し、
前記第2小径部の前記軸線方向の他方側の端部に、環状に形成された3次コイル部材を外挿し、
環状に形成されて高周波電流が流される1次コイル部材を前記本体部に外挿しつつ、前記1次コイル部材を前記軸線方向の一方側に移動させて、誘導加熱により前記本体部を加熱する工程と;
前記1次コイル部材内に前記2次コイル部材の少なくとも一部が配置されたときに、前記1次コイル部材及び前記2次コイル部材を一体にして前記軸線方向の一方側に移動させて、誘導加熱により前記第1小径部を加熱する工程と;
前記2次コイル部材内に前記3次コイル部材の少なくとも一部が配置されたときに、前記1次コイル部材、前記2次コイル部材、及び前記3次コイル部材を一体にして前記軸線方向の一方側に移動させて、誘導加熱により前記第2小径部を加熱する工程と;
を有する移動焼入れ方法。
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