JP2011021242A - 高周波誘導加熱方法及び高周波誘導加熱装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ワーク10を所定の焼入温度まで昇温した後に急冷する焼入工程と、その後に焼入温度よりも低い温度まで昇温した後に徐冷する再加熱工程を有し、ワークの焼入する部位の長さ及び再加熱する部位の長さに応じた全長を有し、且つ、軸方向の部位によって発生する磁力線密度が異なる部位を有する誘導加熱コイル2を使用して、焼入工程においては、発生する磁界の磁力線密度が高い部位をワーク10の昇温困難な部位10aに近接して焼入し、再加熱工程においては、焼入工程と同一の誘導加熱コイル2で熱処理すると共に、ワーク昇温の際に誘導加熱コイル2とワーク10の軸方向の相対位置を変更する。
【選択図】図12
Description
しかしながら焼き入れによって生じたマルテンサイトは硬くて脆く、また内部応力を内包する。そこでワークを再度昇温し、その後に除冷することによって、硬さ調整と、内部応力の除去及び靱性の付与を行う。
一方、新たに誘導加熱コイルが移動された部位では、誘導加熱コイルによって新たに昇温される。また当該部位についても、一定温度まで昇温された後に、除冷が行われる。
ここでワークの形状が、単純な円筒形等の形状である場合には、焼入用の加熱コイルを使用して焼戻しを行っても、特に不具合は生じない。
例えば特許文献1に開示した方策では、本来焼き入れを行う部位は、図13のF領域であり、表面は単純な円筒形状である。
そのため、焼き入れの際の温度上昇カーブと焼戻しの際の温度上昇カーブは同一であり、目標の焼戻し温度に図13のF領域を昇温することができる。
すなわち焼き入れ時においては、昇温困難な部位Aと昇温容易な部位Bの温度差に大きな相違は無かったが、焼戻しの際における昇温時には、昇温容易な部位Bの温度と昇温困難な部位Aの温度に相当の温度差があった。
より具体的には、昇温困難な部位Aの温度が昇温容易な部位Bの温度に比べて著しく高いものとなっていた。
すなわち焼戻しの際には、断面積等が大きくて昇温し難い部位Aの方が温度が高く、昇温容易であるはずの部位Bの温度が低くなる傾向にある。
本発明者らの実測によると、両者の間の温度差は、摂氏200度程度であり、無視できない温度差であった。
そのため摂氏200度もの温度ばらつきが生じると、焼戻し後の表面硬度が目標値から外れてしまう懸念がある。
その結果、高周波誘導加熱を行う場合、常温からA1変態点を越える温度まで昇温すると、全体の温度ばらつきが小さくなり、かつ昇温時間のばらつきも小さいが、常温からA1変態点未満の昇温カーブだけに注目すると、昇温容易な部位Bと昇温し難い部位Aとの間に僅かに差異があり、この昇温カーブの相違が焼戻しの際に大きな温度ばらつきが生じてしまう原因であることが判明した。
以下、この理由について説明する。
すなわちワークの温度が均一になる様に、昇温容易な部位Bを通過する磁力線密度が低く、昇温困難な部位Aを通過する磁力線密度が高い特性を有する誘導加熱コイル120が使用される。
すなわち図3に示す焼き入れ用誘導加熱コイル120は、半開放鞍形コイルであり、直線部102,103と、大径曲線部105及び小径曲線部106を有した形状であり、これらが直列形状に接続された構造をしている。
さらに大径曲線部105と段部110、111には、複数のコア121が設けられている。
従って誘導加熱コイル120は、大径曲線部105及び段部110、111たる軸方向a領域で発生する磁力線の強度が高く、直線部102,103たる軸方向b領域で発生する磁力線の強度が弱い。
そして図3に示す焼き入れ用誘導加熱コイル120は、図5に示す位置関係となる様に、ワーク100に近接される。すなわち発生する磁力線の強度が高いa領域は、ワーク100の昇温困難な部位Aを覆い、発生する磁力線の強度が弱いb領域は、ワーク100の昇温容易な部位Bを覆う。
ここで図6は、軸方向に相当の長さを有し、且つ、軸方向の位置によって外形形状及び断面形状が異なり昇温容易な部位と昇温困難な部位を有するワークに対し、焼入を希望する部位の長さ及び再加熱を希望する部位の長さに応じた全長を有し、且つ、軸方向の部位によって発生する磁力線密度が異なる部位を有する誘導加熱コイルを使用して焼き入れした場合のワークの温度変化を模式的に表したグラフである。
ところが、先に昇温したA部が変態点A1の温度を越えると、ワーク中のフェライト組織がオーステナイトに変態し、透磁率が著しく低下する。その結果、ワーク100のA部を流れる誘導電流が急激に低下し、温度上昇カーブが鈍化する。
これに対して、先に昇温したA部が変態点A1の温度を越えると、他の部位に流れる誘導電流が増大し、B部の温度上昇カーブが上向きとなり、短時間の内にB部についても、変態点A1の温度に達する。その後は、A部、B部共に同様の上昇カーブを描いて温度上昇する。そして急冷されて両者ともに温度降下する。
そのためワーク100のA部とB部の最終的な温度は略同一の温度となる。また所望の焼き入れ温度に達する時間についても大差は無い。そのため焼き入れの際にはワークの表面硬度にばらつきは生じない。
すなわち前記した様に、図3に示す様な誘導加熱コイル120を使用して図1に示すようなワークを昇温すると、当初、供給される磁力線密度が高いA部の温度上昇勾配が高く、供給される磁力線密度が高いB部の温度上昇勾配が低いものとなる。
例えば図6,7のグラフで、B部側の温度が摂氏300度の場合、昇温し難い部位Aの温度は、摂氏450度に達している。
そのためB部側の温度が摂氏300度となった状態で、誘導加熱コイル120に対する通電を停止しても、昇温し難い部位Aの温度は、既に摂氏450度となっており、加熱し過ぎの状態となっている。
すなわち、円形のワンターンコイルを使用し、ワンターンコイルを昇温困難な部位Aに近接させて当該部位Aを昇温した後に、ワンターンコイルを昇温容易な部位Bに移動させて当該B部位を昇温させた場合は、図8に示すような昇温カーブを描き、部位Aを昇温している間は部位Bの温度上昇がない。そのため昇温工程を実質的に2回くり返すこととなり、作業時間が著しく延びる。
また、再加熱工程においては、焼入工程と同一の誘導加熱コイルを使用するので、焼入工程と再加熱工程とで誘導加熱コイルを入れ代える必要がない。
また再加熱工程においては、焼入工程と同一の誘導加熱コイルを使用するので、前記した様に、ワークの昇温困難な部位Aが先行して昇温する。しかしながら、本発明では、昇温の最中に誘導加熱コイルとワークの軸方向の相対位置を変更して磁界の磁力線密度が高い部位を昇温困難な部位から離すので、昇温の途中で、昇温困難な部位Bの温度上昇カーブが鈍化する。その結果、図9のグラフに示すように、当初、ワークの昇温困難な部位Aの温度上昇勾配が高く、部位Aが急速に昇温するが、誘導加熱コイルとワークの軸方向の相対位置を変更して磁界の磁力線密度が高い部位を昇温困難な部位から離すと、昇温困難な部位のAの温度上昇カーブは急速に鈍化する。一方、誘導コイルは、焼入を希望する部位の長さ及び再加熱を希望する部位の長さに応じた全長を有しているから、誘導加熱コイルとワークの軸方向の相対位置を変更しても、昇温容易な部位のBの温度上昇カーブは変化しない。そのため昇温容易な部位のBの温度が、昇温困難な部位のAの温度に追いつき、両者の間の温度ばらつきが減少する。
この状態で、誘導加熱コイルに対する通電を停止すれば硬度ばらつきを起こさずにワークの熱処理を行うことができる。
である。
またワークを焼入温度又は焼入温度以上に加熱する第1加熱モードから、前記第1加熱モードよりも低い温度に加熱する第2加熱モードに自動的に移行するので、焼入と焼戻し等の再加熱を同じ誘導加熱コイルで実施することができる。
また、第2加熱モードによる加熱の際には、前記移動手段によってワークと誘導加熱コイルとを軸方向に相対的に所定距離だけ移動させて誘導加熱コイルとワークの軸方向の相対位置を変更して磁界の磁力線密度が高い部位を昇温困難な部位から離す離反動作を行う。そのため前述した理由により、ワークの温度が均一化し、ワークの偏った昇温を防止することができる。
また、再加熱工程においては、焼入工程と同一の誘導加熱コイルを使用するので、焼入工程と再加熱工程とで誘導加熱コイルを入れ代える必要がない。また、ワークの昇温の際に誘導加熱コイルとワークの軸方向の相対位置を変更するので、ワークが一様に昇温し易くなる。そのため望ましい状態で熱処理を行うことができる。
また、ワークを焼入温度又は焼入温度以上に加熱する第1加熱モードから、前記第1加熱モードよりも低い温度に加熱する第2加熱モードに自動的に移行するので、焼入と焼戻し等とを同じ誘導加熱コイルで実施することができる。
さらに、第2加熱モードにおいて、ワークと誘導加熱コイルとを軸方向に相対的に所定距離だけ移動させる移動手段を備えたので、誘導加熱コイルとワークの対向する部位が移動する。その結果、ワークの偏った昇温を防止することができ、良好に焼入と焼戻し等とを実施することができる。
以下の実施例では、ワーク10として自動車の車軸に使用されるアクスルチューブを例に挙げて、本発明の構成及び実施方法を説明する。
そのためワーク10を軸方向の領域に分けて観察したとき、図10(a)のA領域は昇温困難な部位であり、B領域は、昇温容易な部位である。
本実施形態では、半円形部2aのコア3の間隔が直線部2cのコア4の間隔よりも狭く、半円形部2aの方がコア3が密に取り付けられている。またコア4よりもコア3の方が、透磁率が高くなるように設定されている。そのため誘導加熱コイル2を軸方向の領域に分けて観察したとき、図10(a)のa領域は発生する磁気の磁力線密度が大きく、b領域は発生する磁気の磁力線密度が小さい。
ここで、ワーク10を矢印Aで示す方向に移動させる代わりに、加熱コイル移動装置8で誘導加熱コイル2を矢印Aで示す方向と反対方向に移動させてもよい。
2 誘導加熱コイル
3 誘導加熱コイルの半円形部に設けられるコア
4 誘導加熱コイルの直線部に設けられるコア
7 ワーク移動装置
8 加熱コイル移動装置
9 高周波電力供給装置(高周波電源)
10 ワーク
11 ワーク温度検出装置
12 タイマー
Claims (9)
- 軸方向に相当の長さを有し、且つ、軸方向の位置によって外形形状及び断面形状が異なり昇温容易な部位と昇温困難な部位を有するワークに対し高周波誘導加熱を行う方法であって、
軸方向に相当の長さを有する領域を所定の焼入温度まで昇温した後に急冷する焼入工程と、その後に前記焼入温度よりも低い温度まで昇温した後に徐冷する再加熱工程を有する高周波誘導加熱を行う方法において、
焼入を希望する部位の長さ及び再加熱を希望する部位の長さに応じた全長を有し、且つ、軸方向の部位によって発生する磁力線密度が異なる部位を有する誘導加熱コイルを使用し、
前記焼入工程においては、誘導加熱コイルの発生する磁界の磁力線密度が高い部位を昇温困難な部位に近接して焼入を希望する部位を全体的に焼入温度以上に昇温して焼入し、
前記再加熱工程においては、前記焼入工程と同一の誘導加熱コイルを使用し、昇温の最中に誘導加熱コイルとワークの軸方向の相対位置を変更して磁界の磁力線密度が高い部位を昇温困難な部位から離すことを特徴とする高周波誘導加熱方法。 - 焼き入れ時におけるワークの温度上昇は、昇温困難な部位が昇温容易な部位よりも先行するものであることを特徴とする請求項1に記載の高周波誘導加熱方法。
- 焼入する領域と同一の領域を再加熱することを特徴とする請求項1又は2に記載の高周波誘導加熱方法。
- 再加熱工程の加熱を開始してから所定時間が経過した後に、誘導加熱コイルの発生する磁界の磁力線密度が高い部位を、昇温困難な部位から離すことを特徴とする請求項3に記載の高周波誘導加熱方法。
- 再加熱工程の加熱を開始し、昇温困難な部位の温度が所定温度に達すると、誘導加熱コイルの発生する磁界の磁力線密度が高い部位を、昇温困難な部位から離すことを特徴とする請求項3に記載の高周波誘導加熱方法。
- ワークとしてアクスルチューブを加熱することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の高周波誘導加熱方法。
- 軸方向に相当の長さを有し、且つ、軸方向の位置によって外形形状及び断面形状が異なり昇温容易な部位と昇温困難な部位を有するワークを誘導加熱する高周波誘導加熱装置であって、
焼入を希望する部位の長さ及び再加熱を希望する部位の長さに応じた全長を有し、且つ、軸方向の部位によって発生する磁力線密度が異なる部位を有する誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルに高周波交流電力を供給する高周波電源と、ワークと誘導加熱コイルとを軸方向に相対的に所定距離だけ移動させる移動手段を備え、
ワークを所定の焼入温度に加熱する第1加熱モードが実行され、それに続いて前記第1加熱モードよりも低い温度に加熱する第2加熱モードが自動的に実行され、
前記第1加熱モードによる加熱の際には、誘導加熱コイルの発生する磁界の磁力線密度が高い部位を昇温困難な部位に近接させ、
前記第2加熱モードによる加熱の最中に、前記移動手段によってワークと誘導加熱コイルとを軸方向に相対的に所定距離だけ移動させて誘導加熱コイルとワークの軸方向の相対位置を変更して磁界の磁力線密度が高い部位を昇温困難な部位から離す離反動作を行うことを特徴とする高周波誘導加熱装置。 - ワークの前記昇温困難な部位の温度を検出する温度検出手段を設け、第2加熱モードにおいて、前記温度検出手段が検出した温度が所定温度に達するか、又は加熱する時間が所定時間になると、前記離反動作を実行させる制御機構を設けたことを特徴とする請求項7に記載の高周波誘導加熱装置。
- 前記誘導加熱コイルは、半開放鞍型コイルであることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の高周波誘導加熱装置。
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