JP2007217759A - 高周波焼入方法、高周波焼入設備および高周波焼入品 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱処理の条件出しが容易で、かつ被処理物の所望の部位、たとえば表面から所望の深さにおける硬度を制御することが可能な高周波焼入方法および高周波焼入設備を提供する。
【解決手段】高周波焼入方法10は、温度制御工程20と、焼入制御工程30とを備えている。温度制御工程20は、温度制御用測温工程23と、温度調節工程24と、加熱工程22とを含む。焼入制御工程30は、焼入用測温工程35と、冷却タイミング調節工程36と、冷却工程37とを含む。そして、焼入用測温工程35においては、測定される温度の情報、測温部位と硬度制御部位との位置関係、および被処理物を構成する材料の熱伝導率、比熱、密度に基づき算出される硬度制御部位の温度に基づいて加熱時間が調節されて、冷却開始信号が出力される。
【選択図】図3
【解決手段】高周波焼入方法10は、温度制御工程20と、焼入制御工程30とを備えている。温度制御工程20は、温度制御用測温工程23と、温度調節工程24と、加熱工程22とを含む。焼入制御工程30は、焼入用測温工程35と、冷却タイミング調節工程36と、冷却工程37とを含む。そして、焼入用測温工程35においては、測定される温度の情報、測温部位と硬度制御部位との位置関係、および被処理物を構成する材料の熱伝導率、比熱、密度に基づき算出される硬度制御部位の温度に基づいて加熱時間が調節されて、冷却開始信号が出力される。
【選択図】図3
Description
本発明は高周波焼入方法、高周波焼入設備および高周波焼入品に関し、より特定的には、高周波加熱により被処理物を加熱して焼入を行なう高周波焼入方法、高周波焼入設備および高周波焼入品に関するものである。
高周波焼入は、誘導コイルに高周波電流を流すことにより、誘導コイルに隣接してセットされた被処理物を誘導加熱し、当該被処理物をA1点以上の温度域からMS点以下の温度域に冷却することにより被処理物を焼入硬化する焼入方法である。ここで、上記誘導加熱は被処理物の内部に発生するうず電流によるジュール熱とヒステリシス損失による仕事量に相当する熱の発生により実現されるため、誘導コイルに流される高周波電流の周波数、電源の出力、加熱時間などを制御することにより、被処理物のうち所望部分のみを局所的に加熱することができる。
また、高周波焼入は、一般的な浸炭焼入や光輝熱処理などに比べて、作業環境がクリーンであり、少量ロットの製品を短時間で効率よく処理できるといった点でも有利である。そのため、高周波焼入方法や高周波焼入設備に関しては、被処理物の硬度分布の制御や、焼入処理の効率向上を目的として多くの検討がなされ、種々の提案がなされている(たとえば特許文献1および2参照)。
特開2004−315851号公報
特開2004−225081号公報
高周波焼入の被処理物となる機械部品などの部品においては、その使用条件に応じて表面だけでなく表面から所定深さにおける硬度など、部品内における硬度分布が重要になる場合も多い。しかし、一般に、高周波焼入においては、電力と時間との熱処理条件を変化させながら、被処理物のサンプルが実際に焼入され、当該サンプルの硬度分布、ミクロ組織などの焼入品質が確認されて、実験的に焼入条件が設定されている。そのため、所望の硬度分布を被処理物に付与するためには、被処理物の種類が変更されるたびに、硬度分布を確認しながらの焼入の試行錯誤を繰り返して熱処理条件を設定する必要がある。その結果、焼入の条件出しに手間がかかるという点が高周波焼入の問題点となっている。
そこで、本発明の一の目的は熱処理の条件出しが容易で、かつ被処理物の所望の部位、たとえば表面から所望の深さにおける硬度を制御することが可能な高周波焼入方法および高周波焼入設備を提供することである。さらに、他の目的は、低価格であり、かつ被処理物の所望の部位、たとえば表面から所望の深さにおける硬度が制御された高周波焼入品を提供することである。
本発明の一の局面における高周波焼入方法は、高周波加熱により被処理物を加熱して焼入硬化する高周波焼入方法であって、被処理物の温度が調節される温度制御工程と、加熱された被処理物が冷却されるべきタイミングが決定されて、被処理物が冷却される焼入制御工程とを備えている。温度制御工程は、被処理物の温度が測定される温度制御用測温工程と、温度制御用測温工程において測定された温度の情報に基づき被処理物の加熱状態を制御するための温度制御信号が出力される温度調節工程と、温度制御信号に基づいて、高周波加熱により被処理物が加熱される加熱工程とを含んでいる。焼入制御工程は、被処理物の温度が測定される焼入用測温工程と、焼入用測温工程において測定された温度の情報に基づき加熱時間が調節され、被処理物が冷却されるべきタイミングが決定されて冷却開始信号が出力される冷却タイミング調節工程と、冷却開始信号に基づいて、被処理物が冷却されることにより被処理物が焼入硬化される冷却工程とを含んでいる。
そして、冷却タイミング調節工程においては、焼入用測温工程において測定される温度の情報、焼入用測温工程において温度が測定される被処理物の部位である測温部位と硬度が制御されるべき部位である硬度制御部位との位置関係、および被処理物を構成する材料の熱伝導率、比熱、密度に基づき算出される硬度制御部位の温度に基づいて加熱時間が調節されて、冷却開始信号が出力される。
より具体的には、上記高周波焼入方法においては、たとえば焼入用測温工程において測温部位としての被処理物の表面における温度が測定され、当該温度の情報、表面から所望の深さの領域である硬度制御部位の表面からの深さ、被処理物を構成する材料の熱伝導率、比熱、密度に基づき算出される硬度制御部位の温度に基づいて加熱時間が調節されて、冷却開始信号が出力される。
一般に高周波焼入においては、まず加熱条件として電力と時間とのパラメータからなる電源出力の推移(電源出力パターン)が決定される(電力制御)。加熱条件は、被処理物の形状、材質等を考慮しつつ電力と時間とを変化させて被処理物のサンプルを実際に熱処理して決定される。ここで、鋼製品の焼入においては、被処理物を所定温度に所定時間以上保持した後、急冷する必要がある。しかし、上記方法(電力制御)では被処理物の加熱履歴を正確に把握することは困難である。そのため、実際に焼入を実施して得られた被処理物内の硬度分布、ミクロ組織等の品質を調査することにより熱処理条件が実験的に決定されている。このように、被処理物の加熱履歴が正確に把握できない点および熱処理条件の決定に経験と手間を要する点が高周波焼入の問題点の1つであった。
これに対し本発明の一の局面における高周波焼入方法では、被処理物の実際の温度と加熱時間とをパラメータとして被処理物の加熱状態が制御される(温度制御)。そのため、被処理物の加熱履歴を正確に把握することが可能であり、被処理物に必要な加熱履歴を与えた後、急冷することで焼入を行なうことができる。その結果、実際に熱処理を実施して得られた被処理物内の硬度分布、ミクロ組織等の品質の調査を行なう必要がなく、前述の高周波焼入の問題点が解消される。
さらに、上記一の局面における高周波焼入方法では、測定された被処理物の温度の情報、測温部位と硬度制御部位との位置関係、および被処理物を構成する材料の熱伝導率、比熱、密度に基づき算出される硬度制御部位の温度に基づいて加熱時間が調節されて、冷却開始信号が出力される。その結果、硬度制御部位と測温部位とが異なる場合であっても、たとえば測温部位が被処理物の表面であり、硬度制御部位が被処理物の内部である場合であっても、硬度制御部位の硬度を所望の硬度に制御することができる。なお、測温部位の温度から硬度制御部位の温度を算出するためには、差分法、有限要素法などの方法を用いることができる。
以上のように、本発明の高周波焼入方法によれば、熱処理の条件出しが容易で、かつ被処理物の所望の部位、たとえば表面から所望の深さにおける硬度を制御することが可能となる。
本発明の一の局面における高周波焼入方法において好ましくは、冷却タイミング調節工程においては、以下の式(1)により算出される被処理物中の固溶炭素濃度の分布に基づいて、加熱時間が調節される。
∂C/(∂t)=D∂2C/(∂x2)・・・・(1)
D:鉄中における炭素の拡散定数、C:固溶炭素濃度(質量%)、t:加熱時間(秒)、x:鉄炭化物(Fe3C)からの距離
D=D0exp(−Q/RT)
D0:拡散定数のエントロピー項、Q:活性化エネルギー、R:気体定数、T:絶対温度(K)
より詳細には、本発明の一の局面における高周波焼入方法においては、たとえば被処理物を構成する鋼の高周波加熱中のミクロ組織において、式(1)を用いて算出されるFe3Cから最も離れた位置における固溶炭素濃度が、複数の硬度制御部位の各々において所望の固溶炭素濃度となった時点で、冷却開始信号が出力される。
D:鉄中における炭素の拡散定数、C:固溶炭素濃度(質量%)、t:加熱時間(秒)、x:鉄炭化物(Fe3C)からの距離
D=D0exp(−Q/RT)
D0:拡散定数のエントロピー項、Q:活性化エネルギー、R:気体定数、T:絶対温度(K)
より詳細には、本発明の一の局面における高周波焼入方法においては、たとえば被処理物を構成する鋼の高周波加熱中のミクロ組織において、式(1)を用いて算出されるFe3Cから最も離れた位置における固溶炭素濃度が、複数の硬度制御部位の各々において所望の固溶炭素濃度となった時点で、冷却開始信号が出力される。
これにより、焼入後の硬度に対応する固溶炭素濃度の分布に基づいて加熱時間が調節されて焼入が実施されるため、優れた熱処理品質を容易に被処理物に付与することが可能となる。
上記高周波焼入方法において好ましくは、冷却タイミング調節工程においては、以下の式(2)により算出される被処理物中の硬度制御部位の温度に基づいて、加熱時間が調節される。
∂T/(∂t)=(κ/cρ){∂2T/(∂X2)}・・・・(2)
κ:被処理物を構成する材料の熱伝導率、c:被処理物を構成する材料の比熱、ρ:被処理物を構成する材料の密度、T:温度、t:加熱時間(秒)、X:測温部位から硬度制御部位までの距離
これにより、測定された測温部位の温度の情報から、硬度制御部位の温度が容易に算出されるため、加熱時間の調節が容易になる。
κ:被処理物を構成する材料の熱伝導率、c:被処理物を構成する材料の比熱、ρ:被処理物を構成する材料の密度、T:温度、t:加熱時間(秒)、X:測温部位から硬度制御部位までの距離
これにより、測定された測温部位の温度の情報から、硬度制御部位の温度が容易に算出されるため、加熱時間の調節が容易になる。
本発明の他の局面における高周波焼入方法は、高周波加熱により被処理物を加熱して焼入硬化する高周波焼入方法であって、データ取得工程と、記憶工程と、確認工程と、量産工程とを備えている。データ取得工程では、被処理物のサンプルが加熱されて焼入硬化されることによりプロセスデータが取得される。記憶工程では、データ取得工程において被処理物のサンプルを加熱するために高周波加熱用の電源から誘導コイルに出力された電源出力の推移データと、被処理物のサンプルの温度推移データと、被処理物のサンプルの冷却タイミングを特定するための冷却タイミングデータとがプロセスデータとして記憶される。
確認工程では、記憶工程で記憶された温度推移データに基づいて電源出力の推移データおよび冷却タイミングデータの妥当性が確認される。量産工程では、記憶工程で記憶され、かつ確認工程で妥当性が確認された電源出力の推移データおよび冷却タイミングデータに従って被処理物の高周波焼入が行なわれる。そして、データ取得工程における焼入硬化は、上述の本発明の一の局面における高周波焼入方法により実施される。
上記本発明の一の局面における高周波焼入方法においては、温度制御による熱処理を行なうために測温装置による被処理物の測温が行なわれる。被処理物が目的の品質になるように熱処理を行なうためには測温の正確性は極めて重要である。そのため、測温に誤差を生じさせる外乱の影響を排除することが好ましい。また、測温装置としては熱電対などの接触式温度計を用いることができるが、焼入設備のレイアウト上接触式温度計により被処理物の温度を測定することが困難な場合も多い。このような場合、放射温度計のような非接触式温度計を使用することができる。しかし、たとえば放射温度計のレンズに汚れや水滴が付着した場合、測定された温度には大きな誤差が含まれるおそれがある(外乱の影響)。このように特に非接触式の温度計を用いる場合、外乱への対策を講じることが好ましい。
これに対し、上記他の局面における高周波焼入方法では、データ取得工程として上記本発明の一の局面における高周波焼入方法による高周波焼入を被処理物のサンプルに対して行なった後、測温データ等のプロセスデータを記憶する記憶工程を設け、さらに記憶されたプロセスデータの妥当性を確認する確認工程を経た上で、妥当性が担保されたプロセスデータに基づいて量産工程の熱処理が行なわれる。これにより、熱処理の条件出しが容易で、かつ被処理物の所望の部位、たとえば表面から所望の深さにおける硬度を制御することが可能なだけでなく、プロセスデータへの外乱の影響が排除され、被処理物の品質が安定する。
本発明の一の局面における高周波焼入設備は、高周波加熱により被処理物を加熱して焼入硬化する上記一の局面または他の局面における高周波焼入方法に使用される高周波焼入設備であって、被処理物の温度を調節するための温度制御装置と、加熱された被処理物が冷却されるべきタイミングを調節するための焼入制御装置とを備えている。温度制御装置は、被処理物の温度データを取得し、当該被処理物の温度データに基づく温度の情報を出力する温度制御用測温装置と、温度制御用測温装置に接続され、温度制御用測温装置からの温度の情報に基づき被処理物の加熱状態を制御するための温度制御信号を出力する温度調節装置と、温度調節装置に接続され、温度調節装置からの温度制御信号に基づき、高周波加熱により被処理物を加熱する加熱装置とを含んでいる。
焼入制御装置は、被処理物の温度データを取得し、当該被処理物の温度データに基づく温度の情報を出力する焼入用測温装置と、焼入用測温装置に接続され、焼入用測温装置からの温度の情報に基づき加熱時間を調節し、被処理物が冷却されるべきタイミングを決定して冷却開始信号を出力する冷却タイミング調節装置と、冷却タイミング調節装置に接続され、冷却開始信号に基づいて、被処理物を冷却することにより被処理物を焼入硬化する冷却装置とを含んでいる。
本発明の一の局面における高周波焼入設備を用いて本発明の高周波焼入方法により被処理物を熱処理することにより、熱処理の条件出しが容易となり、かつ被処理物の所望の部位、たとえば表面から所望の深さにおける硬度を制御することが可能となる。
本発明の他の局面における高周波焼入設備は、高周波加熱により被処理物を加熱して焼入硬化する上記他の局面における高周波焼入方法に使用される高周波焼入設備であって、被処理物の温度を調節するための温度制御装置と、加熱された被処理物が冷却されるべきタイミングを調節するための焼入制御装置と、電源出力の推移データ、被処理物のサンプルの温度推移のデータおよび冷却タイミングデータをプロセスデータとして記憶する記憶装置とを備えている。
温度制御装置は、被処理物の温度データを取得し、当該被処理物の温度データに基づく温度の情報を出力する温度制御用測温装置と、温度制御用測温装置に接続され、温度制御用測温装置からの温度の情報に基づき温度制御信号を出力する温度調節装置と、温度調節装置に接続され、温度調節装置からの温度制御信号に基づき、高周波加熱により被処理物を加熱する加熱装置とを含んでいる。
焼入制御装置は、被処理物の温度データを取得し、当該被処理物の温度データに基づく温度の情報を出力する焼入用測温装置と、焼入用測温装置に接続され、焼入用測温装置からの温度の情報に基づき加熱時間を調節し、被処理物が冷却されるべきタイミングを決定して冷却開始信号を出力する冷却タイミング調節装置と、冷却タイミング調節装置に接続され、冷却開始信号に基づいて、被処理物を冷却することにより被処理物を焼入硬化する冷却装置とを含んでいる。
本発明の他の局面における高周波焼入設備を用いて本発明の他の局面における高周波焼入方法により被処理物を熱処理することにより、熱処理の条件出しが容易となり、かつ被処理物の所望の部位、たとえば表面から所望の深さにおける硬度を制御することが可能となるだけでなく、プロセスデータへの外乱の影響が排除され、被処理物の品質が安定する。
本発明に従った高周波焼入品は、上記一の局面または他の局面のいずれかの高周波焼入方法で熱処理されて作製されている。本発明の高周波焼入品によれば、熱処理の条件出しが容易であるため低価格化が可能であり、かつ被処理物の所望の部位、たとえば表面から所望の深さにおける硬度が制御された高周波焼入品を提供することができる。
なお、本発明の高周波焼入品は、たとえば、ころ軸受用円筒ころ、スフェリカル軸受の円筒ころ、等速ジョイントのシャフト部などの鋼からなる機械部品に適用することができる。
以上の説明から明らかなように、本発明の高周波焼入方法および高周波焼入設備によれば、熱処理の条件出しが容易で、かつ被処理物の所望の部位、たとえば表面から所望の深さにおける硬度を制御することが可能な高周波焼入方法および高周波焼入設備を提供することができる。さらに、本発明の高周波焼入品によれば低価格であり、かつ被処理物の所望の部位、たとえば表面から所望の深さにおける硬度が制御された高周波焼入品を提供することができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施の形態である実施の形態1における高周波焼入品としてのころ軸受用円筒ころの構成を示す概略断面図である。図1を参照して、実施の形態1におけるころ軸受用円筒ころの構成を説明する。
図1は、本発明の一実施の形態である実施の形態1における高周波焼入品としてのころ軸受用円筒ころの構成を示す概略断面図である。図1を参照して、実施の形態1におけるころ軸受用円筒ころの構成を説明する。
図1を参照して、実施の形態1における高周波焼入品としてのころ軸受用円筒ころ1は、円筒状の形状を有している。そして、ころ軸受用円筒ころ1は、外周面である転走面1Aが軌道輪などの軌道部材(図示しない)と接触しつつ軌道部材上を転走する転動体として使用される。そのため、ころ軸受用円筒ころ1の転走面直下表層部は、転動疲労を受ける。この転動疲労に対する耐久性を確保するため、ころ軸受用円筒ころ1の転走面1A直下の表層部には、硬度が500HV以上の硬化層1Bが所定の厚み、たとえば0.5mmの厚みで形成されている(つまり有効硬化層深さ0.5mm;JIS G0559)。この硬化層1Bの底部である硬化層底部1Cが、所定の硬度である500HVの硬度が要求される硬度制御部位である。
そして、ころ軸受用円筒ころ1は、以下に説明する本発明の一実施の形態における高周波焼入方法で熱処理されて作製されているため、低価格化され、かつ被処理物の所望の部位、たとえば表面から所望の深さにおける硬度が制御されている。
次に、本発明の一実施の形態である実施の形態1における高周波焼入設備について説明する。図2は、実施の形態1における高周波焼入設備の構成を示す概略図である。図2を参照して、実施の形態1における高周波焼入設備の構成を説明する。
図2を参照して、実施の形態1における高周波焼入設備80は、高周波加熱により被処理物(たとえばころ軸受用円筒ころ1)を加熱して焼入硬化する本発明の高周波焼入方法に使用される高周波焼入設備であって、被処理物としてのころ軸受用円筒ころ1の温度を調節するための温度制御装置50と、加熱されたころ軸受用円筒ころ1が冷却されるべきタイミングを調節するための焼入制御装置60とを備えている。
温度制御装置50は、ころ軸受用円筒ころ1の温度データを取得し、ころ軸受用円筒ころ1の温度データに基づく温度の情報を出力する温度制御用測温装置としての放射温度計3と、放射温度計3に接続され、放射温度計3からの温度の情報に基づき被処理物の加熱状態を制御するための温度制御信号を出力する温度調節装置4と、温度調節装置4に接続され、温度調節装置4からの温度制御信号に基づき、高周波加熱によりころ軸受用円筒ころ1を加熱する加熱装置2とを含んでいる。加熱装置2は、たとえば高周波電流を流すための誘導コイルと、誘導コイルに接続され高周波電流を発生させる電源とを有している。
焼入制御装置60は、ころ軸受用円筒ころ1の温度データを取得し、ころ軸受用円筒ころ1の温度データに基づく温度の情報を出力する焼入用測温装置としての放射温度計3と、放射温度計3に接続され、放射温度計3からの温度の情報に基づき加熱時間を調節し、ころ軸受用円筒ころ1が冷却されるべきタイミングを決定して冷却開始信号を出力する冷却タイミング調節装置6と、冷却タイミング調節装置6に接続され、冷却開始信号に基づいて、ころ軸受用円筒ころ1を冷却することにより焼入硬化する冷却装置としての冷却水噴射装置7とを含んでいる。冷却水噴射装置7は、ころ軸受用円筒ころ1の転走面1Aを取り囲むように配置され、かつころ軸受用円筒ころ1の軸方向に配列された複数の冷却水噴出口7Aを有している。
ここで、図2において、放射温度計3は、温度制御用測温装置と焼入用測温装置とを兼ねているが、放射温度計3を温度制御用測温装置としてのみ使用し、焼入用測温装置としての第2放射温度計を別途設けてもよい。また、温度調節装置4および冷却タイミング調節装置6は、たとえばそれぞれパーソナルコンピュータであり、1台のパーソナルコンピュータで温度調節装置4と冷却タイミング調節装置6とを兼ねる構成であってもよい。
次に、上述の実施の形態1における高周波焼入設備を用いた本発明の一実施の形態である実施の形態1における高周波焼入方法について説明する。図3は、本発明の一実施の形態である実施の形態1における高周波焼入方法の概略を示す図である。
図2および図3を参照して、実施の形態1の高周波焼入方法10は、高周波加熱により被処理物(たとえばころ軸受用円筒ころ1)を加熱して焼入硬化する高周波焼入方法であって、ころ軸受用円筒ころ1の温度が調節される温度制御工程20と、加熱されたころ軸受用円筒ころ1が冷却されるべきタイミングが決定されて、ころ軸受用円筒ころ1が冷却される焼入制御工程30とを備えている。
温度制御工程20は、放射温度計3によりころ軸受用円筒ころ1の温度が測定される温度制御用測温工程23と、温度制御用測温工程23において測定された温度の情報に基づき温度調節装置4によりころ軸受用円筒ころ1の加熱状態を制御するための温度制御信号が出力される温度調節工程24と、温度制御信号に基づいて、加熱装置2を用いて高周波加熱によりころ軸受用円筒ころ1が加熱される加熱工程22とを含んでいる。
焼入制御工程30は、ころ軸受用円筒ころ1の温度が放射温度計3により測定される焼入用測温工程35と、焼入用測温工程35において測定された温度の情報に基づき冷却タイミング調節装置6により加熱時間が調節され、ころ軸受用円筒ころ1が冷却されるべきタイミングが決定されて冷却開始信号が出力される冷却タイミング調節工程36と、冷却開始信号に基づいて、冷却水噴射装置7の冷却水噴出口7Aから噴出された冷却水によってころ軸受用円筒ころ1がA1点以上の温度からMS点以下の温度に冷却されることにより、ころ軸受用円筒ころ1が焼入硬化される冷却工程37とを含んでいる。
そして、冷却タイミング調節工程36においては、焼入用測温工程35において測定される温度の情報、焼入用測温工程35において温度が測定されるころ軸受用円筒ころ1の部位である測温部位としての転走面1Aと硬度が制御されるべき部位である硬度制御部位としての硬化層底部1Cとの位置関係、およびころ軸受用円筒ころ1を構成する材料の熱伝導率、比熱、密度に基づき算出される硬化層底部1Cの温度に基づいて加熱時間が調節されて、冷却開始信号が出力される。
実施の形態1における高周波焼入設備80を用いて実施の形態1における高周波焼入方法10によって被処理物としてのころ軸受用円筒ころ1を焼入硬化することにより、熱処理の条件出しが容易となり、かつころ軸受用円筒ころ1の所望の部位、たとえば表面から所望の深さにおける硬度を制御することができる。
なお、A1点とは鋼を加熱した場合に、鋼の組織がフェライトからオーステナイトに変態を開始する温度に相当する点をいう。また、MS点とはオーステナイト化した鋼が冷却される際に、マルテンサイト化を開始する温度に相当する点をいう。
次に、上述の実施の形態1における高周波焼入設備80を用いた実施の形態1における高周波焼入方法10、特に冷却タイミング調節工程36の具体的手順について詳細に説明する。
冷却タイミング調節工程36においては、たとえば以下の式(1)により算出されるころ軸受用円筒ころ1中の固溶炭素濃度の分布に基づいて、加熱時間を調節することができる。
∂C/(∂t)=D∂2C/(∂x2)・・・・(1)
D:鉄中における炭素の拡散定数、C:固溶炭素濃度(質量%)、t:加熱時間(秒)、x:鉄炭化物(Fe3C)からの距離
D=D0exp(−Q/RT)
D0:拡散定数のエントロピー項、Q:活性化エネルギー、R:気体定数、T:絶対温度(K)
以下、これを具体的に説明する。図4は、軸受鋼JIS SUJ2からなる部材における固溶炭素濃度と当該部材の硬度との関係を示す図である。図4において、横軸は鋼中に固溶している炭素の濃度(固溶炭素濃度)を示しており、縦軸は焼入後の硬度を示している。図4を参照して、実施の形態1における焼入条件(冷却タイミング調節工程において冷却開始信号が出力されるための条件)の決定方法の一例について説明する。
D:鉄中における炭素の拡散定数、C:固溶炭素濃度(質量%)、t:加熱時間(秒)、x:鉄炭化物(Fe3C)からの距離
D=D0exp(−Q/RT)
D0:拡散定数のエントロピー項、Q:活性化エネルギー、R:気体定数、T:絶対温度(K)
以下、これを具体的に説明する。図4は、軸受鋼JIS SUJ2からなる部材における固溶炭素濃度と当該部材の硬度との関係を示す図である。図4において、横軸は鋼中に固溶している炭素の濃度(固溶炭素濃度)を示しており、縦軸は焼入後の硬度を示している。図4を参照して、実施の形態1における焼入条件(冷却タイミング調節工程において冷却開始信号が出力されるための条件)の決定方法の一例について説明する。
図4を参照して、たとえば被処理物としてのJIS SUJ2製ころ軸受用円筒ころ1において、有効硬化層深さ0.5mm(表面からの深さが0.5mmの領域である硬化層底部1Cにおける硬度が500HV)が目標の焼入品質である場合、硬化層底部1Cにおける固溶炭素濃度は、0.292質量%とすることが必要である。したがって、これを冷却タイミング調節工程36における焼入条件として決定する。
なお、焼入条件の決定に際しては、被処理物を構成する鋼の成分ごとに図4と同様の関係図を作成しておくことが好ましいが、焼入後の鋼の硬度は、固溶炭素濃度の影響が大きく、他の合金元素の影響は炭素に比べて非常に小さいため、鋼の成分系が大きく異ならない限り、共通の関係図に基づいて焼入条件を決定することができる。
一方、温度制御工程において採用する加熱条件は、たとえばころ軸受用円筒ころ1の形状から加熱時に最も温度が高くなると予測される部位(誘導コイルに近い突起部など)の温度が高くなりすぎて、焼入後の残留オーステナイト量が多くなりすぎないようにすること等を考慮して決定することができる。その際、たとえばころ軸受用円筒ころ1を構成するJIS SUJ2のTTA(Time Temperature Austinitization)線図を作成し、温度と残留オーステナイト量が多くなりすぎないために許容される加熱時間との関係に基づいて加熱条件を決定することが好ましい。本実施の形態においては、加熱条件は昇温速度400度/秒、保持温度1100℃を採用している。
焼入条件および加熱条件が上述のように決定された後、図2を参照して、加熱条件が温度調節装置4に、焼入条件が冷却タイミング調節装置6に、それぞれ入力される。温度調節装置4は、放射温度計3と、加熱装置2とに接続されており、放射温度計3からの温度情報に基づき、たとえばPID(Proportional Integral Differential)制御により温度制御信号を加熱装置2に出力し、ころ軸受用円筒ころ1の加熱状態を制御する。
一方、冷却タイミング調節装置6は、放射温度計3と、冷却水噴射装置7とに接続されており、放射温度計3からの温度情報に基づき、上記式(1)により算出される硬化層底部1Cにおけるの固溶炭素濃度の分布に基づいて、すなわち固溶炭素濃度が硬化層底部1Cにおける上述の焼入条件を満たすように加熱時間を調節し、当該条件が満足された時点で冷却開始信号を出力する。
ここで式(1)を差分方程式で表すと、以下の式になる。
Cm,n+1=rCm+1,n+(1−2r)Cm,n+rCm-1,n・・・(3)
r=D×Δt/(Δx)2・・・(4)
冷却タイミングは、式(3)を所定の境界条件で解き、ころ軸受用円筒ころ1を構成する鋼中の固溶炭素濃度が硬化層底部1Cにおいて、上述の焼入条件を満たしているか否かで決定することができる。ここで、境界条件は、たとえば加熱中のころ軸受用円筒ころ1を構成する鋼中における鉄炭化物(セメンタイト;Fe3C)と素地との界面において、ある温度での炭素固溶濃度が当該温度での炭素の固溶限度に等しくなっているとの仮定の下に与えることができる。
Cm,n+1=rCm+1,n+(1−2r)Cm,n+rCm-1,n・・・(3)
r=D×Δt/(Δx)2・・・(4)
冷却タイミングは、式(3)を所定の境界条件で解き、ころ軸受用円筒ころ1を構成する鋼中の固溶炭素濃度が硬化層底部1Cにおいて、上述の焼入条件を満たしているか否かで決定することができる。ここで、境界条件は、たとえば加熱中のころ軸受用円筒ころ1を構成する鋼中における鉄炭化物(セメンタイト;Fe3C)と素地との界面において、ある温度での炭素固溶濃度が当該温度での炭素の固溶限度に等しくなっているとの仮定の下に与えることができる。
以下、硬化層底部1Cにおける鋼中の固溶炭素濃度の計算例を示す。図5は、加熱中のころ軸受用円筒ころの転走面における温度推移を示す図である。また、図6は、加熱中のころ軸受用円筒ころの硬化層底部(表面からの深さ0.5mm)における温度推移を示す図である。また、図7〜図9は、炭素の固溶開始からの各時間後(0.4秒後、0.8秒後、1.2秒後)における、2つのFe3C間の各位置における固溶炭素濃度の分布を示す図である。図5および図6において、横軸は炭素の固溶開始からの時間(秒)、縦軸は温度(℃)を示している。また、図7〜図9において、横軸は隣り合うFe3Cを結ぶ線分上における、基準となるFe3Cと素地との界面からの距離(位置)(mm)、縦軸は固溶炭素濃度(質量%)を示している。この炭素の固溶状態の計算においては、隣り合うFe3C間の距離を0.012mmとし、Fe3Cと素地との界面における固溶炭素量の値をJIS SUJ2の固溶限度曲線から得られる値(熱力学平衡計算ソフトで計算)とした。この固溶限度曲線の式は、実験的もしくは熱力学平衡計算によって、材料別にあらかじめ求めておくことができる。
まず、放射温度計3により測定された転走面1Aの温度の情報である図5の温度情報(ヒートパターン)、測温部位である転走面1Aと硬度制御部位である硬化層底部1Cとの位置関係としての距離(ここでは0.5mm)、ころ軸受用円筒ころ1を構成する材料(たとえば鋼)の熱伝導率、比熱、密度に基づき、硬化層底部1Cにおける温度(温度推移)を算出する。転走面1Aからの深さ方向の温度分布は、たとえば1次元の熱拡散の挙動を表す以下の式(2)により計算することができる。
∂T/(∂t)=(κ/cρ){∂2T/(∂X2)}・・・・(2)
κ:被処理物を構成する材料の熱伝導率、c:被処理物を構成する材料の比熱、ρ:被処理物を構成する材料の密度、T:温度、t:加熱時間(秒)、X:測温部位から硬度制御部位までの距離
すなわち、硬化層底部1Cにおける温度は、上記式(2)を上述の式(1)と同様に所定の境界条件で解くことで、算出することができる。ここで境界条件は、たとえば、転走面1Aが放射温度計3により測定された温度に加熱されており、かつころ軸受用円筒ころ1の内部において転走面1Aから十分に離れた領域であるころ軸受用円筒ころ1の芯部が室温を保っているとの仮定の下に与えることができる。なお、冷却タイミングを正確に判断するため、硬化層底部1Cの温度は、計算速度の速い方法、たとえば陽的差分解法により計算することが好ましい。
κ:被処理物を構成する材料の熱伝導率、c:被処理物を構成する材料の比熱、ρ:被処理物を構成する材料の密度、T:温度、t:加熱時間(秒)、X:測温部位から硬度制御部位までの距離
すなわち、硬化層底部1Cにおける温度は、上記式(2)を上述の式(1)と同様に所定の境界条件で解くことで、算出することができる。ここで境界条件は、たとえば、転走面1Aが放射温度計3により測定された温度に加熱されており、かつころ軸受用円筒ころ1の内部において転走面1Aから十分に離れた領域であるころ軸受用円筒ころ1の芯部が室温を保っているとの仮定の下に与えることができる。なお、冷却タイミングを正確に判断するため、硬化層底部1Cの温度は、計算速度の速い方法、たとえば陽的差分解法により計算することが好ましい。
図5および図6を参照して、たとえば図5に示すように転走面1Aが加熱された場合、上述のようにして算出される硬化層底部1C(表面からの深さ0.5mm)における温度は図6に示すように推移する。図6に示す硬化層底部1Cでの温度に基づいて算出される、硬化層底部1Cにおける鋼中のミクロ組織での固溶炭素濃度の分布は、図7〜図9に示すように中央位置(2つのFe3C間の距離を0.012mmとした場合には0.006mmの位置)において固溶炭素濃度が最も低くなっており、時間が経過するにつれて固溶炭素濃度が全体として増加するとともに、中央位置と両端(Fe3Cと素地との界面)との差が小さくなる傾向にある。
冷却タイミング調節工程36における冷却開始信号は、たとえば硬化層底部1Cにおいて上述の焼入条件である固溶炭素濃度の条件(固溶炭素濃度0.292質量%)が上記中央位置において満たされた時点で出力することができる。
なお、Fe3C間の距離は、被処理物を構成する鋼の焼入前の組織や鋼種の違いによって適宜変更することができる。
つまり本実施の形態1の加熱時間の調節はたとえば以下のように行なわれる。まず、放射温度計3により転走面1Aの温度を測定して式(2)により硬化層底部1Cの温度を算出し(ステップA)、その算出された温度からFe3Cと素地との界面における固溶限度を計算する(ステップB)。Fe3Cと素地との界面における固溶限度の値を式(3)の境界条件に与えて式(3)を計算する(ステップC)。以上の工程により、図7〜図9に示すような固溶炭素濃度の分布を計算することができる(ステップD)。得られた固溶炭素濃度の分布から、固溶炭素濃度の分布の中央位置における固溶炭素濃度が目標の硬度に基づいて予め決定した所定の濃度になったかどうかの確認を行なう(ステップE)。もし中央位置における固溶炭素濃度が所定の固溶炭素濃度に達していたら冷却を開始し(ステップF)、達していなければ冷却は開始されずに加熱が継続されて再度ステップAに戻る。
また、上記ステップCにおける式(3)は、たとえば以下ように差分法により解くことができる。まず、図7〜図9の固溶炭素濃度分布の両端における固溶炭素濃度は、Fe3Cと素地との界面における固溶炭素濃度である。したがって、この位置から炭素の固溶限度で炭素が素地へ供給される。たとえば図7〜図9のように隣り合うFe3Cの間に区切りを5点とると(境界点を入れると7点)、5個の連立方程式が得られるが、未知数は、C0,n、C1,n、C2,n、C3,n、C4,n、C5,n、C6,nの7つとなる。このうちC0,nおよびC6,nにおける固溶炭素濃度は炭素の固溶限度の値である。したがって、未知数が5個の5元連立方程式を解くことにより、C1,n、C2,n、C3,n、C4,n、C5,nの値を求めることができる。
さらに、上述固溶炭素濃度の計算の開始温度、すなわち炭素の素地への固溶の開始温度は、昇温速度を考慮して決定することが好ましい。以下、その決定方法について説明する。
鋼が平衡状態を保ちつつ727℃(A1点温度)以上に加熱されると、オーステナイト化が始まり、これに伴って炭素の固溶が始まる。しかし、昇温速度が速い場合、A1点温度は昇温速度に影響されて変化し、AC1点(加熱変態点)温度においてオーステナイト化を開始する。したがって、上記計算の開始温度は、昇温速度を考慮して変化させることが好ましい。
図10は、炭素を1質量%含有する鋼(JIS SUJ2)における昇温速度と加熱変態点との関係を示す図である。図10において、横軸は昇温速度(℃/秒)、縦軸は加熱変態点AC1(℃)を示している。図10を参照して、昇温速度と加熱変態点との関係を説明する。
図10を参照して、昇温速度が変化すると、加熱変態点AC1は、727℃から950℃まで変化することが分かる。このように、ころ軸受用円筒ころ1を構成する鋼の組成における昇温速度の変化に対する加熱変態点AC1の変化を予め調べておくことで、ころ軸受用円筒ころ1の加熱時における昇温速度から加熱変態点AC1を導出し、その加熱変態点AC1に基づいて上記固溶炭素濃度の計算開始温度(炭素の固溶開始温度)を決定することができる。
図11は、昇温速度を考慮して固溶炭素濃度の計算開始温度を決定する方法を説明するための模式図である。図11において、横軸は時間、縦軸は温度を示している。図11中には、転走面1Aにおける温度推移と、加熱変態点AC1とが示されている。図11を参照して、昇温速度を考慮した固溶炭素濃度の計算開始温度を決定する方法を説明する。
加熱初期においては、加熱が急速に行なわれるため加熱変態点は高くなっている。そして、被処理物の温度が所定の温度に近づくと、温度調節装置4により昇温速度が緩やかになるように加熱状態が制御されるため、加熱変態点AC1が低下していく。このため、時間の経過とともに加熱変態点AC1を表す直線(曲線となる場合もある)は、温度推移を表す曲線と交わる。この交点がオーステナイト化の開始温度を示しており、転走面1Aが当該温度に到達した時点から上記固溶炭素濃度の計算を開始することができる。そして、上述のように固溶炭素濃度分布の中央位置における固溶炭素濃度が所定の濃度になった時点で冷却を開始することにより、所望の硬化層を備えたころ軸受用円筒ころ1を得ることができる。
(実施の形態2)
図12は、本発明の一実施の形態である実施の形態2における高周波焼入設備の構成の概略を示す図である。また、図13は、本発明の一実施の形態である実施の形態2における高周波焼入方法の概略を示す図である。図12および図13を参照して、実施の形態2における高周波焼入設備および高周波焼入方法について説明する。
図12は、本発明の一実施の形態である実施の形態2における高周波焼入設備の構成の概略を示す図である。また、図13は、本発明の一実施の形態である実施の形態2における高周波焼入方法の概略を示す図である。図12および図13を参照して、実施の形態2における高周波焼入設備および高周波焼入方法について説明する。
図12を参照して、実施の形態2における高周波焼入設備は、基本的には実施の形態1における高周波焼入設備と同様の構成を有している。しかし、実施の形態2における高周波焼入設備は、加熱装置2、温度調節装置4および冷却タイミング調節装置6に接続され、電源出力の推移データと、被処理物の温度推移のデータと、冷却タイミングデータとをプロセスデータとして記憶する記憶装置を備えている点において、実施の形態1の高周波焼入設備とは異なっている。
また、図13を参照して、実施の形態2における高周波焼入方法は高周波加熱により被処理物(たとえばころ軸受用円筒ころ1)を加熱して焼入硬化する高周波焼入方法であって、データ取得工程と、記憶工程と、確認工程と、量産工程とを備えている。
データ取得工程では、ころ軸受用円筒ころ1のサンプルが加熱されて焼入硬化されることによりプロセスデータが取得される。記憶工程では、データ取得工程においてころ軸受用円筒ころ1のサンプルを加熱するために高周波加熱用の電源から誘導コイルに出力された電源出力の推移データと、ころ軸受用円筒ころ1のサンプルの温度推移データと、ころ軸受用円筒ころ1のサンプルの冷却タイミングを特定するための冷却タイミングデータとがプロセスデータとして記憶される。
確認工程では、記憶工程で記憶された温度推移データに基づいて電源出力の推移データおよび冷却タイミングデータの妥当性が確認される。すなわち、記憶工程において記憶されたプロセスデータのうち、温度推移データが分析されることで、外乱の影響の有無が判定され、記憶工程において記憶されたプロセスデータである電源出力の推移データおよび冷却タイミングデータの妥当性が確認される。
ここで、外乱の影響があった場合、温度推移データに異常な値が記録されるため、記憶された温度推移データから外乱の有無は判断可能である。たとえば、温度推移データに不連続な領域が存在する場合、外乱があったものと判断することができる。また、より正確な判断を行なうためには、同一の部位の温度を測定する接触式または非接触式の温度計を設け、双方のデータの整合性により外乱の有無を判断することもできる。具体的判断の手法としては、たとえば双方のデータから温度差が5%以上となった場合に外乱有りと判断することができる。また、外乱の判断は作業者が温度推移データを確認して行なうことができるが、自動化された他の装置により行なうこともできる。具体的にはたとえば記憶された温度推移データの温度推移の微分値が1000℃/秒以上または−1000℃/秒以下となった場合に外乱有りと判断する方法や、前述のように同一の部位の温度を測定する温度計を設け、両者のデータに5%以上の差が生じた場合に外乱有りと判断するような手段が挙げられる。
量産工程では、記憶工程で記憶され、かつ確認工程で妥当性が確認された電源出力の推移データおよび冷却タイミングデータに従ってころ軸受用円筒ころ1の高周波焼入が行なわれる。そして、データ取得工程における焼入硬化は、本発明の高周波焼入方法により実施される。
実施の形態2における高周波焼入設備80を用いて実施の形態2における高周波焼入方法により被処理物としてのころ軸受用円筒ころ1を焼入硬化することにより、熱処理の条件出しが容易となり、かつ被処理物(ころ軸受用円筒ころ1)の所望の部位、たとえば硬化層底部1Cにおける硬度を制御することができるだけでなく、プロセスデータへの外乱の影響が排除され、被処理物の品質が安定する。
そして、実施の形態2における高周波焼入設備80を用いて実施の形態2における高周波焼入方法により焼入硬化された実施の形態2における高周波焼入品としてのころ軸受用円筒ころ1は、低価格化され、かつ所望の部位、たとえば硬化層底部1Cにおける硬度が制御されているだけでなく、品質の安定した高周波焼入品となっている。
次に、実施の形態2における高周波焼入の詳細について説明する。図14は、実施の形態2に係る高周波焼入の各工程におけるデータおよび指令の流れを示す図である。図14において、データ取得工程におけるデータの流れは実線矢印、記憶工程におけるデータの流れは破線矢印、確認工程におけるデータの流れは二重破線矢印、量産工程におけるデータの流れは二重実線矢印で表示されている。図14を参照して、実施の形態2に係る高周波焼入の各工程におけるデータの流れを説明する。
図14を参照して、データ取得工程においては、温度制御用測温装置(放射温度計3)により測定された被処理物としてのころ軸受用円筒ころ1のサンプルの温度データは温度調節装置4に送られる。温度調節装置4は、ころ軸受用円筒ころ1の目標加熱温度および取得したころ軸受用円筒ころ1のサンプルの温度データから必要な電源出力を判断し、加熱装置2の電源に電源出力を指令する。指令を受けた電源は加熱装置2の誘導コイルに電力を出力し、ころ軸受用円筒ころ1のサンプルは目的の温度に加熱される。
一方、焼入用測温装置(放射温度計3;温度制御用測温装置を兼ねる)により測定されたころ軸受用円筒ころ1のサンプルの温度データは、冷却タイミング調節装置6に送られる。冷却タイミング調節装置6は、取得したころ軸受用円筒ころ1のサンプルの転走面1Aの温度から算出された硬化層底部1Cの温度および加熱時間から冷却タイミングを判断し、冷却開始を冷却水噴射装置7などの冷却装置に指令する。
これにより、ころ軸受用円筒ころ1のサンプルは急冷され、焼入硬化される。このとき、このデータ取得工程は温度制御により実施されるため、ころ軸受用円筒ころ1のサンプルの加熱履歴は明確である。そのため、温度データが正確である限り適切な熱処理が行なわれており、目的の品質を有するころ軸受用円筒ころ1のサンプルが得られている。その結果、被処理物の品質を確認しながら熱処理の条件出しが行なわれる必要がなく、条件出しが容易となる。
また、冷却タイミング調節工程においては、転走面1Aの温度等に基づいて算出された硬化層底部1Cの温度および加熱時間から冷却タイミングを判断しているため、ころ軸受用円筒ころ1のサンプルには所望の硬化層が形成されている。
記憶工程においては、データ取得工程において温度調節装置4および冷却タイミング調節装置6が取得した温度データが温度推移データとして記憶装置70に記憶される。また、加熱装置2の電源が誘導コイルに出力した電源出力が電源出力の推移データとして記憶装置70に記憶される。さらに、冷却タイミング調節装置6が冷却水噴射装置7などの冷却装置に出力した冷却開始指令のタイミングが冷却タイミングデータとして記憶装置70に記憶される。ここで、冷却タイミングはたとえば誘導加熱開始からの時間として記憶される。
確認工程においては、たとえば放射温度計3と同一部位を測定可能な温度計が設けられ、当該部位が測温される。この測温データと、放射温度計3により測定されて記憶装置70に記憶された温度推移データとが比較されることにより、外乱の有無が判断される。
量産工程においては、記憶工程で記憶され、かつ確認工程で妥当性が確認された電源出力の推移データおよび冷却タイミングデータに基づき、ころ軸受用円筒ころ1が加熱されて焼入が行なわれる。このとき、この量産工程は外乱のおそれのある放射温度計3からのリアルタイムの温度データに基づいて実施されるのではなく、妥当性が確認された電源出力の推移データおよび冷却タイミングデータに基づいて電力制御により実施される。そのため、安定した品質のころ軸受用円筒ころ1が得られる。
なお、記憶装置70は、独立の装置として設置されてもよいが、たとえばハードディスクなどの記憶部を有するパーソナルコンピュータにより、温度調節装置4、冷却タイミング調節装置6などの装置を兼用して設置されてもよい。また、本発明の高周波焼入方法の各工程は、たとえば制御装置としてパーソナルコンピュータを用い、各工程に対応した単数または複数のプログラムにより当該パーソナルコンピュータを動作させることにより実施することができる。
また、上記実施の形態においては、硬度制御部位が硬化層底部1Cのみである場合について説明したが、本発明における硬度制御部位は複数存在してもよい。この場合、当該複数の硬度制御部位において焼入条件が同時に満たされた時点で、冷却開始信号が出力されるように本発明の高周波焼入方法および高周波焼入装置を構成することにより、複数の部位において所望の硬度を有する硬化層が形成された被処理物を作製することができる。
また、複数の硬度制御部位をそれぞれ所望の温度に加熱し、焼入条件を満足させるためには、誘導コイルに流される高周波電流の周波数を適切に選択することが有効である。たとえば、高周波電流の周波数を高くすることで、より局所的な加熱が可能となり、被処理物の誘導コイルに近い場所と遠い場所との温度差を大きくすることができる。一方、高周波電流の周波数を低くすることで、上記温度差を小さくすることができる。すなわち、加熱装置に含まれる誘導コイルに流される電流の周波数は、複数の硬度制御部位の間における所望の温度の差または勾配などの被処理物中の温度分布、あるいはこれらにより制御可能な複数の硬度制御部位の間における所望の固溶炭素濃度の差、勾配などの被処理物中の固溶炭素濃度の分布に基づいて決定されてもよい。
また、温度制御用測温装置および焼入用測温装置に用いる測温装置の種類は、上述のように放射温度計でもよいが、装置のレイアウト上可能であるならば接触式温度計でもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の高周波焼入方法、高周波焼入設備、高周波焼入品は、高周波加熱により被処理物を加熱して焼入硬化する高周波焼入方法、高周波焼入設備、高周波焼入品に特に有利に適用され得る。
1 ころ軸受用円筒ころ、1A 転走面、1B 硬化層、1C 硬化層底部、2 加熱装置、3 放射温度計、4 温度調節装置、6 冷却タイミング調節装置、7 冷却水噴射装置、7A 冷却水噴出口、10 高周波焼入方法、20 温度制御工程、22 加熱工程、23 温度制御用測温工程、24 温度調節工程、30 焼入制御工程、35 焼入用測温工程、36 冷却タイミング調節工程、37 冷却工程、50 温度制御装置、60 焼入制御装置、70 記憶装置、80 高周波焼入設備。
Claims (7)
- 高周波加熱により被処理物を加熱して焼入硬化する高周波焼入方法であって、
前記被処理物の温度が調節される温度制御工程と、
加熱された前記被処理物が冷却されるべきタイミングが決定されて、前記被処理物が冷却される焼入制御工程とを備え、
前記温度制御工程は、
前記被処理物の温度が測定される温度制御用測温工程と、
前記温度制御用測温工程において測定された温度の情報に基づき、前記被処理物の加熱状態を制御するための温度制御信号が出力される温度調節工程と、
前記温度制御信号に基づいて、前記高周波加熱により前記被処理物が加熱される加熱工程とを含み、
前記焼入制御工程は、
前記被処理物の温度が測定される焼入用測温工程と、
前記焼入用測温工程において測定された温度の情報に基づき加熱時間が調節され、前記被処理物が冷却されるべきタイミングが決定されて冷却開始信号が出力される冷却タイミング調節工程と、
前記冷却開始信号に基づいて、前記被処理物が冷却されることにより前記被処理物が焼入硬化される冷却工程とを含み、
前記冷却タイミング調節工程においては、前記焼入用測温工程において測定される前記温度の情報、前記焼入用測温工程において温度が測定される前記被処理物の部位である測温部位と硬度が制御されるべき部位である硬度制御部位との位置関係、および前記被処理物を構成する材料の熱伝導率、比熱、密度に基づき算出される前記硬度制御部位の温度に基づいて前記加熱時間が調節されて、前記冷却開始信号が出力される、高周波焼入方法。 - 前記冷却タイミング調節工程においては、以下の式(1)により算出される前記被処理物中の固溶炭素濃度の分布に基づいて、前記加熱時間が調節される、請求項1に記載の高周波焼入方法。
∂C/(∂t)=D∂2C/(∂x2)・・・・(1)
D:鉄中における炭素の拡散定数、C:固溶炭素濃度(質量%)、t:加熱時間(秒)、x:鉄炭化物(Fe3C)からの距離
D=D0exp(−Q/RT)
D0:拡散定数のエントロピー項、Q:活性化エネルギー、R:気体定数、T:絶対温度(K) - 前記冷却タイミング調節工程においては、以下の式(2)により算出される前記被処理物中の前記硬度制御部位の温度に基づいて、前記加熱時間が調節される、請求項1または2に記載の高周波焼入方法。
∂T/(∂t)=(κ/cρ){∂2T/(∂X2)}・・・・(2)
κ:被処理物を構成する材料の熱伝導率、c:被処理物を構成する材料の比熱、ρ:被処理物を構成する材料の密度、T:温度、t:加熱時間(秒)、X:測温部位から硬度制御部位までの距離 - 高周波加熱により被処理物を加熱して焼入硬化する高周波焼入方法であって、
前記被処理物のサンプルが加熱されて焼入硬化されることによりプロセスデータが取得されるデータ取得工程と、
前記データ取得工程において前記被処理物のサンプルを加熱するために高周波加熱用の電源から誘導コイルに出力された電源出力の推移データと、前記被処理物のサンプルの温度推移データと、前記被処理物のサンプルの冷却タイミングを特定するための冷却タイミングデータとが前記プロセスデータとして記憶される記憶工程と、
前記記憶工程で記憶された前記温度推移データに基づいて前記電源出力の推移データおよび前記冷却タイミングデータの妥当性が確認される確認工程と、
前記記憶工程で記憶され、かつ前記確認工程で妥当性が確認された前記電源出力の推移データおよび前記冷却タイミングデータに従って前記被処理物の前記高周波焼入が行なわれる量産工程とを備え、
前記データ取得工程における前記焼入硬化は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の高周波焼入方法により実施される、高周波焼入方法。 - 高周波加熱により被処理物を加熱して焼入硬化する請求項1〜4のいずれか1項に記載の高周波焼入方法に使用される高周波焼入設備であって、
前記被処理物の温度を調節するための温度制御装置と、
加熱された前記被処理物が冷却されるべきタイミングを調節するための焼入制御装置とを備え、
前記温度制御装置は、
前記被処理物の温度データを取得し、前記被処理物の温度データに基づく温度の情報を出力する温度制御用測温装置と、
前記温度制御用測温装置に接続され、前記温度制御用測温装置からの温度の情報に基づき前記被処理物の加熱状態を制御するための温度制御信号を出力する温度調節装置と、
前記温度調節装置に接続され、前記温度調節装置からの前記温度制御信号に基づき、高周波加熱により前記被処理物を加熱する加熱装置とを含み、
前記焼入制御装置は、
前記被処理物の温度データを取得し、前記被処理物の温度データに基づく温度の情報を出力する焼入用測温装置と、
前記焼入用測温装置に接続され、前記焼入用測温装置からの温度の情報に基づき加熱時間を調節し、前記被処理物が冷却されるべきタイミングを決定して冷却開始信号を出力する冷却タイミング調節装置と、
前記冷却タイミング調節装置に接続され、前記冷却開始信号に基づいて、前記被処理物を冷却することにより前記被処理物を焼入硬化する冷却装置とを含む、高周波焼入設備。 - 高周波加熱により被処理物を加熱して焼入硬化する請求項4に記載の高周波焼入方法に使用される高周波焼入設備であって、
前記被処理物の温度を調節するための温度制御装置と、
加熱された前記被処理物が冷却されるべきタイミングを調節するための焼入制御装置と、
前記電源出力の推移データと、前記被処理物の温度推移のデータと、前記冷却タイミングデータとを前記プロセスデータとして記憶する記憶装置とを備え、
前記温度制御装置は、
前記被処理物の温度データを取得し、前記被処理物の温度データに基づく温度の情報を出力する温度制御用測温装置と、
前記温度制御用測温装置に接続され、前記温度制御用測温装置からの温度の情報に基づき前記被処理物の加熱状態を制御するための温度制御信号を出力する温度調節装置と、
前記温度調節装置に接続され、前記温度調節装置からの前記温度制御信号に基づき、高周波加熱により前記被処理物を加熱する加熱装置とを含み、
前記焼入制御装置は、
前記被処理物の温度データを取得し、前記被処理物の温度データに基づく温度の情報を出力する焼入用測温装置と、
前記焼入用測温装置に接続され、前記焼入用測温装置からの温度の情報に基づき加熱時間を調節し、前記被処理物が冷却されるべきタイミングを決定して冷却開始信号を出力する冷却タイミング調節装置と、
前記冷却タイミング調節装置に接続され、前記冷却開始信号に基づいて、前記被処理物を冷却することにより前記被処理物を焼入硬化する冷却装置とを含む、高周波焼入設備。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の高周波焼入方法で熱処理されて作製されたことを特徴とする、高周波焼入品。
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