JP2006124791A - 高周波熱処理方法、高周波熱処理装置および高周波熱処理品 - Google Patents
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Abstract
【課題】 急速加熱時のオーステナイト化温度の変化を考慮してCの拡散長を正確に計算することで製品の品質を安定化できる高周波熱処理方法を提供する。
【解決手段】 高周波熱処理方法は、加熱する被処理物1の温度を調節する温度制御工程と、焼入時期を調節する焼入制御工程とを備えている。被処理物1の組成における昇温速度の変化に対する加熱変態点の変化の関係を予め調べ、その関係に基づいて被処理物1の加熱時における昇温速度から加熱変態点を求めて、被処理物1の焼入れタイミングを決定するためのCの拡散長の計算開始温度をその加熱変態点に基づいて決定する。
【選択図】 図5
【解決手段】 高周波熱処理方法は、加熱する被処理物1の温度を調節する温度制御工程と、焼入時期を調節する焼入制御工程とを備えている。被処理物1の組成における昇温速度の変化に対する加熱変態点の変化の関係を予め調べ、その関係に基づいて被処理物1の加熱時における昇温速度から加熱変態点を求めて、被処理物1の焼入れタイミングを決定するためのCの拡散長の計算開始温度をその加熱変態点に基づいて決定する。
【選択図】 図5
Description
本発明は、鋼の熱処理方法に関し、より特定的には、鋼の高周波熱処理方法、高周波熱処理装置および高周波熱処理品に関するものである。
高周波焼入炉は、雰囲気加熱炉と異なり、炉の作業環境がクリーンであり、少量ロットの製品を短時間で効率よく処理できるといった点で有利な処理炉である。一般に、鋼の高周波焼入では、電力と時間の熱処理条件を変化させながら、焼入品質を確認し、実験的に焼入条件を設定している。この場合、被処理物の種類によって、随時、熱処理条件を設定する必要があり、条件出しに手間がかかるという問題がある。この問題は、高周波焼入では、温度制御による熱処理が難しいということに起因している。
熱処理品質は、温度と時間により制御する方法が組織制御という観点から最も望ましい。しかし、高周波焼入では、測温方法と温度の高速制御という点で技術的に困難があり、温度制御による焼入は採用されていないのが現状である。高周波熱処理において測温が困難である理由は、雰囲気加熱とは異なり、被処理物が直接加熱されるので、測温は被処理物に対して直接行なわなければならないという点、また、高周波加熱設備には、均一加熱のため、被処理物に駆動機構が設けられている場合が多く、接触式の温度計の設置がレイアウト上、困難であるという点にある。
そこで、たとえば、放射温度計などの非接触式の温度計を用いればよいということになるが、従来の放射温度計は、応答速度が遅く、金属の測温には向かないという問題があり、高周波焼入の温度制御において適切なものはなかった。昨今、放射温度計の信号出力速度の高速化と、温度計の放射率設定による測温精度の向上により、放射温度計による金属の高速温度制御に可能性が見出される。
仮に、温度制御による高周波焼入が可能になった場合でも、基本的に部分加熱である高周波焼入では、材質内に温度ムラが生じるため、場所によって熱処理品質が変化する可能性があり、ずぶ焼入処理への適用では問題となる。特に肉厚の大きな被処理物では、温度ムラが大きくなるので、この問題が発生しやすくなる。被処理物を均質に加熱できない場合、加熱が十分な部分では、所定の熱処理品質を満たしているが、加熱が不十分な部分では、所定の熱処理品質を満たしていないという状況が発生する。
このような問題を解消するには、加熱時間を十分にとり、熱伝導により被処理物内の温度を均一にする方法がある。また、比較的低周波の高周波電源を用いて、被処理物の内部にまで磁束を進入させて均一に加熱する方法がある。しかし、これらの方法には、十分な加熱時間をどのようにして決定するのかという共通の課題がある。すなわち、温度制御により高周波ずぶ焼入を行なう場合、所定の熱処理品質を得るための熱処理方法を考案する必要がある。
高周波焼入では、測温と温度制御が困難であるため、温度制御による焼入が難しく、温度制御による高周波ずぶ焼入を行なうとしても、所定の熱処理品質を得るための熱処理方法を考案する必要がある。かかる方法として、高周波焼入による鋼のずぶ焼入を温度制御しながら行う以下の方法が考えられる。
この方法は、昇温が最も速くなる位置(磁束が最も侵入しやすい位置)における材質が所定の品質(主に硬度、残留オーステナイト量)を満たすように温度制御し、その他の位置が所定の品質(主に硬度)を得るために十分な加熱が行われたかどうかを見極めて焼入タイミングを図るというものである。このとき、焼入タイミングの見極めを、C(炭素)の拡散長が一定の値に達しているかどうかによって行なう方法が考えられる。これは、炭素を鉄中へ均質に固溶させる時間がCの拡散距離に対応しているという考えに基づいている。
この拡散長の計算を、平衡状態における鉄のオーステナイト化温度である727℃から開始することが考えられる。しかし、高周波加熱のように昇温速度が速い場合には、加熱変態点(急速加熱時のオーステナイト化温度)が変化するので(例えば、非特許文献1参照)、このことを考慮すると、拡散長の計算開始温度を適宜変更する必要がある。
井口、外2名、「鋼の非平衡加熱状態図」、日本金属学会誌、日本金属学会、1975年、第39巻、第3号、p.255−260
井口、外2名、「鋼の非平衡加熱状態図」、日本金属学会誌、日本金属学会、1975年、第39巻、第3号、p.255−260
上述したように、Cの拡散長の計算において、急速加熱時のオーステナイト化温度の変化を考慮しない場合には、正確なCの拡散長を計算することができない。
そこで、本発明の目的は、急速加熱時のオーステナイト化温度の変化を考慮してCの拡散長を正確に計算することで製品の品質を安定化させることができる高周波熱処理方法、高周波熱処理装置および高周波熱処理品を提供することである。
本発明の高周波熱処理方法は、高周波により被処理物の表層を加熱して焼入硬化する高周波熱処理方法であって、加熱する前記被処理物の温度を調節する温度制御工程と、焼入時期を調節する焼入制御工程とを備えている。温度制御工程は、高周波により被処理物を加熱する加熱工程と、被処理物の加熱される部位の温度を測定する温度制御用測温工程と、測定した温度情報に基づき温度制御信号を出力して被処理物への加熱を制御する温度調節工程とを有している。焼入制御工程は、被処理物の加熱される部位から離れた部位の温度を測定する焼入用測温工程と、測定した温度情報に基づき熱処理時間を調節し焼入開始信号を出力する熱処理調節工程とを有している。被処理物の組成における昇温速度の変化に対する加熱変態点の変化の関係を予め調べ、その関係に基づいて被処理物の加熱時における昇温速度から加熱変態点を求めて、被処理物の焼入タイミングを決定するためのCの拡散長の計算開始温度をその加熱変態点に基づいて決定する。
本発明の高周波熱処理方法によれば、予め求めた昇温速度と加熱変態点との関係に基づいて昇温速度から加熱変態点を求め、その加熱変態点に基づいてCの拡散長の計算開始温度を決定するため、急速加熱時のオーステナイト化温度の変化に対応することができる。このため、Cの拡散長をより正確に求めることができるので、より適切な焼入タイミングで焼入を開始することができ、それより製品の品質を安定化させることができる。
本発明の高周波熱処理装置は、上記の高周波熱処理方法で焼入を行なうことを特徴とするものであって、加熱する被処理物の温度を調節するための温度制御手段と、被処理物を焼入れるための焼入手段とを備えている。温度制御手段は、高周波により被処理物を加熱する加熱手段と、加熱手段により加熱される部位の温度を測定する温度制御用測温手段と、温度制御用測温手段に接続して温度制御用測温手段からの温度情報に基づき温度制御信号を前記加熱手段に出力する温度調節手段とを有している。焼入手段は、加熱手段により加熱される部位から離れた部位の温度を測定する焼入用測温手段と、焼入用測温手段に接続して焼入用測温手段からの温度情報に基づき熱処理時間を調節し焼入開始信号を出力する熱処理調節手段とを有している。
本発明の高周波熱処理装置を用いることにより、Cの拡散長をより正確に求めることができるので、より適切な焼入タイミングで焼入を開始することができ、それより製品の品質を安定化させることができる。
本発明の高周波熱処理品は、上記の高周波熱処理装置を用いて、上記の高周波熱処理方法で作製したことを特徴とするものである。
以上の説明から明らかなように、本発明のCの拡散長を計算する補正式を高周波焼入に適用すれば、Cの拡散長をより正確に求めることができるので、より適切な焼入タイミングで焼入を開始することができる。これにより、製品の品質を安定化させることができる。
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態における高周波熱処理装置の構成を示す概略図である。図1を参照して、本実施の形態の高周波熱処理装置は、加熱する被処理物(ワーク)1の温度を調節する温度制御手段と、被処理物(ワーク)1を焼入れするための焼入手段とを備えている。本実施の形態によれば、任意の形状の被処理物1に対して、所定の品質を有する焼入加工製品を最短の工数で製造することができる。また、コイルなどの加熱手段の形状、電源の周波数、試験片の形状によらず使用することができる。
温度制御手段は、典型的には、高周波により被処理物1を加熱するコイルなどの加熱手段2と、加熱手段2により加熱される部位1aの温度を測定する温度計(温度制御用温度計)などの温度制御用測温手段3と、温度制御用測温手段3に接続して測温手段からの温度情報に基づき温度制御信号を加熱手段2に出力する温度調節手段4とを備える態様が好ましい。
一方、焼入手段は、加熱手段2により加熱される部位1aから離れた部位1bの温度を測定する温度計(焼入タイミング決定用温度計)などの焼入用測温手段5と、焼入用測温手段5に接続して焼入用測温手段5からの温度情報に基づき熱処理時間を調節し、焼入液噴射手段7などに焼入開始信号を出力する熱処理調節手段6とを備える態様が好ましい。
本装置の特徴の1つは、加熱手段2により加熱される部位1aの温度を測定する温度制御用測温手段3と、加熱手段2により加熱される部位1aから離れた部位1bの温度を測定する焼入用測温手段5とを有することにある。高周波熱処理による温度制御をより正確にするため、温度制御用測温手段3は、磁束の進入量が最も多く、温度上昇が最も大きい位置を測温することが望ましい。
一方、高周波による加熱は、被処理物1の表層を加熱する部分加熱であるため、被処理物1内に温度分布が生じる。したがって、場所によって熱処理品質が変化する可能性があり、ずぶ焼入処理への適用では問題となる。特に肉厚の大きな被処理物1では、温度ムラが大きくなるので、この問題が発生しやすい。したがって、低温部分においても十分に熱処理を施し、所定の熱処理品質を満たすため、焼入用測温手段5は、磁束の進入量がより少なく、温度上昇が小さい部位、すなわち温度制御用測温手段3の測温部よりもできるだけ離れた部位を測温することが望ましい。
本実施の形態の焼入方法においては、温度制御用測温手段3と焼入用測温手段5との位置が前述の条件を満たしていれば、加熱コイルの形状及び電源の周波数は限定されない。また、焼入のタイミングを決定するための焼入用測温手段5は、被処理物1内における温度ムラの影響を小さくし、複数の位置で熱処理品質を確保するという観点から、複数設置する態様が好ましい。焼入用測温手段5に用いる温度計の種類は、放射温度計以外でも、装置のレイアウト上、可能であるならば、接触式温度計でも有効である。
次に、上記の高周波熱処理装置を用いた本実施の形態の高周波熱処理方法について、SUJ2製6206型番(JIS:Japanese Industrial Standard)の外輪を被処理物1として例示して具体的に説明する。
ここでは、SUJ2材の規格値として、強度の観点から180℃で焼戻した場合の焼戻硬度がHRC58以上(HV653以上)であり、寸法安定性の観点から残留オーステナイト量が12体積%以下であると設定する。この規格を満たすために必要な焼入温度と保持時間の関係を示したSUJ2材のTTA(Time Temperature Austinitization)線図を図2に示す。図2における領域Aは硬度規格を満足しない範囲であり、領域Bは残留オーステナイト量が規格を満足しない範囲であり、領域Cはいずれの熱処理品質規格をも満足する範囲である。硬度は焼入温度と保持時間とが大きくなるにつれて規格を満たしやすくなる。これに対して、オーステナイト量は焼入温度と保持時間とが大きくなるにつれて規格を満たさなくなる。
図2のTTA線図から明らかなように、熱処理品質規格(硬度規格および残留オーステナイト量の規格)を満たすためには、比較的低温で長時間の条件設定の方が熱処理品質を制御しやすい。たとえば、1050℃の比較的高温での処理では、熱処理品質規格を確保するための保持時間は15秒以上であるが、17秒以上保持してしまうと規格を満たすことができない。それに対し、950℃の処理では、熱処理品質を確保するための保持時間は20秒以上であり、60秒までは規格を満たすことができる。高周波熱処理の短時間処理という利点を生かすためには、できるだけ高温、短時間での処理が望ましい。
温度制御用測温手段3の測温位置におけるヒートパターンは、熱処理工数の低減と制御の容易さの兼ね合いから決定することができる。材料の種類に応じた熱処理品質に対する焼入温度と保持時間との関係図(TTA線図)を作成することができれば、その線図に応じて条件を決定すればいいので、本実施の形態の高周波熱処理装置は材料の種類を問わず利用することができる。
熱処理条件が決まると、図1に示すように、熱処理条件をパソコンなどの温度調節手段4に入力する。温度調節手段4は、温度制御用測温手段3と、加熱手段2とに接続されており、温度制御用測温手段3からの温度情報に基き、PID(Proportional Integral Differential)制御により温度制御信号を加熱手段2に出力し、温度制御用測温手段3の測温部1aのヒートパターンを制御することができる。このとき同時に、焼入用測温手段5の測温データをパソコンなどの熱処理調節手段6に取り込み、そのヒートパターンから加熱が十分であるかどうかを判断し、焼入のタイミングにより熱処理時間を調節する。焼入の時期の判断は、焼入用測温手段5の測温部1bのヒートパターンがTTA線図上で規格内におさまったかどうかで行なう。なお、温度調節手段4と熱処理調節手段6とを同一のパソコンで兼ねることもできる。
TTA線図上で規格内におさまったかどうかという判断には、下記の(1)および(2)の計算式が用いられる。
Dep=2(Dt)1/2・・・式(1)
D=D0exp(−Q/RT)・・・式(2)
D:拡散定数、t:保持時間(秒)、D0:拡散定数のエントロピー項、Q:活性化エネルギー、R:気体定数、T:絶対温度(K)
焼入は、式(1)中のDepの値がある値(D*ep)に達した時に行なうものとする。
D=D0exp(−Q/RT)・・・式(2)
D:拡散定数、t:保持時間(秒)、D0:拡散定数のエントロピー項、Q:活性化エネルギー、R:気体定数、T:絶対温度(K)
焼入は、式(1)中のDepの値がある値(D*ep)に達した時に行なうものとする。
焼入用測温手段5の測温部は、1箇所である必要は無い。焼入用測温手段5の測温部は、複数であるほうが複数の位置での熱処理品質を確保することができるので、品質管理という観点からは望ましい。
実際には、焼入のタイミングを決定する測温部位(つまり焼入用測温手段5の測温部位)のヒートパターンは刻一刻と変化するので、Depの値は図3に示すように、Dep1→Dep2→・・・→Depnと積算する必要がある。被処理物(ワーク)1の昇温を開始すると、焼入タイミング側の昇温パターンは、磁束の進入が温度制御側より少ないので、温度制御側に比べて遅れて温度が上昇する。
通常、温度が727℃を越えると、鉄のオーステナイト化が始まるが、昇温速度が速いと鉄の加熱変態温度は変化するので、Cの拡散長Depの計算を開始する温度は、昇温速度によって変化させなくてはならない。図4に1質量%Cの鋼における昇温速度による加熱変態点の変化を示す。図4から、昇温速度が変化すると、加熱変態点Tcは、727℃から950℃まで変化することが分かる。よって、被処理物1の組成における昇温速度の変化に対する加熱変態点Tcの変化を予め調べておき、被処理物1の加熱時における昇温速度から加熱変態点Tcを求めて、その加熱変態点Tcに基づいてCの拡散長Depの計算開始温度を決定する。
図5に、昇温速度を考慮した時のCの拡散長の計算開始温度を決定する方法を模式的に示す。図5中には、温度制御側(図1の温度制御用測温手段3の測温部1a)のヒートパターンと焼入タイミング側(図1の焼入用測温手段5の測温部1b)のヒートパターンと加熱変態点Tcとを示している。加熱初期では、温度制御側での加熱を急速に行うため、焼入タイミング側の昇温速度も速くなり、加熱変態点は高くなる。温度制御側の温度が所定の温度に近づくと、温度調節手段4により昇温速度が緩やかになるように加熱が制御されるため、焼入タイミング側の昇温速度も緩やかになり、加熱変態点Tcが低下していく。このため、時間が経過すると、加熱変態点Tcは、焼入タイミング側のヒートパターンと交わる。この交点がオーステナイト化の開始温度を示していることになるため、この交点の温度(つまりオーステナイト化の開始温度)からCの拡散長Depの計算を開始する。
そして、任意の時間におけるDepnがD*epを越えると、ただちに焼入を開始する。D*epの値は、所定の熱処理品質を維持できる範囲で、できるだけ小さな値である方が、熱処理工数低減という観点からは望ましい。しかし、品質安定という観点からは、ある程度安全をみた設定値とするのが望ましい。
このD*epの値に対する硬度と処理時間との変化を図6に示す。なお図6は、最高到達温度:900℃、降温速度:0℃/秒、焼入後の焼戻条件:180℃×120分の条件で行なった場合の関係を示している。図6を参照して、処理時間は、D*epを大きく設定するほど、必要な拡散距離が長くなるため増加することが分かる。また硬度は、D*epの値を大きく設定するほど、処理時間が増加するので、高くなっていくことが分かる。ただし、硬度は、加熱が長すぎると飽和する領域が存在し、D*epが約0.02mmで最高硬さに達していた。したがって、D*epの値は0.02mm以下が望ましいと言える。
なお昇温速度は、電源の能力、コイルと被処理物の形状などによって異なるので、装置と被処理物の種類によって適宜変更することが好ましい。
以下、本発明の実施例について説明する。
図1に示す熱処理装置を使用して、SUJ2製6206型番外輪を被処理材とし、高周波ずぶ焼入処理を行なった。焼入温度を900℃とし、焼入温度に達するまでの昇温速度を10℃/秒、100℃/秒、500℃/秒とした。決定した熱処理条件をパソコンに入力し、PID制御により温度制御用測温手段3の測温部位1aのヒートパターンを制御した。このとき同時に、焼入用測温手段5の測温データをパソコンに取込み、加熱処理を施した後、焼入開始信号を出力し、焼入を行なった。焼入後に180℃で120分間保持することにより焼戻を行なった。
この高周波ずぶ焼入処理において、式(1)および式(2)の計算式を用いた。また、式(1)のCの拡散長Depの計算開始温度の決定にあたって図4および図5で説明したように昇温速度の変化を考慮した本発明例の方法と、Cの拡散長Depの計算開始温度を727℃として昇温速度の変化を考慮しなかった比較例の方法との焼入後の焼入タイミング側の硬度(ビッカース硬度)を調べた。その結果を表1に示す。この時のD*epの値は、0.02mmであり、最高硬度(HV760程度)を得ることができる条件である。
なお表1中の熱処理条件のうち、最高到達温度とは、焼入用測温手段5により測定した測温部位1bにおける最高温度を示す。また降温速度とは、最高温度に到達した後に熱処理を所定時間施したときの降温速度を示す。本発明例の方法で行なったすべての熱処理品で、熱処理規格を満たしていた。
表1の結果から、昇温速度を考慮した本発明例における焼入タイミング側の硬度は、昇温速度を考慮しなかった比較例に比べて高くなっていることが分かる。これは、昇温速度を考慮した場合、Cの拡散長の計算が727℃よりも高い温度にならないと始まらないため、昇温速度を考慮しなかった場合に比べて、均熱時間が長くなったためである。
また昇温速度を考慮した本発明例では、焼入タイミング側の硬度は、昇温速度が変化してもほとんど変化していなかった。それに対して、昇温速度を考慮しなかった比較例では、焼入タイミング側の硬度に若干のばらつきがあった。これは、昇温速度を考慮しなかった場合には正確なCの拡散長を計算できないためである。
今回の実験では、昇温速度を考慮した本発明例と昇温速度を考慮しなかった比較例との双方において、焼入タイミング側の硬度として十分な値(HRC58以上)が得られたが、Cの拡散長の正確な計算という観点では、昇温速度を考慮することが望ましいといえる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
温度制御による高周波ずぶ焼入を行ない、所定の熱処理品質を満たす焼入製品を最短の工数で提供することができる。また、任意の形状の被処理物に対しても高周波ずぶ焼入処理が可能である。
1 被処理物、2 加熱手段、3 温度制御用測温手段、4 温度調節手段、5 焼入用測温手段、6 熱処理調節手段、7 焼入液噴射手段。
Claims (3)
- 高周波により被処理物の表層を加熱して焼入硬化する高周波熱処理方法であって、加熱する前記被処理物の温度を調節する温度制御工程と、焼入時期を調節する焼入制御工程とを備え、
前記温度制御工程は、高周波により前記被処理物を加熱する加熱工程と、前記被処理物の加熱される部位の温度を測定する温度制御用測温工程と、測定した温度情報に基づき温度制御信号を出力して前記被処理物への加熱を制御する温度調節工程とを有し、
前記焼入制御工程は、前記被処理物の加熱される部位から離れた部位の温度を測定する焼入用測温工程と、測定した温度情報に基づき熱処理時間を調節し焼入開始信号を出力する熱処理調節工程とを有し、
前記被処理物の組成における昇温速度の変化に対する加熱変態点の変化の関係を予め調べ、当該関係に基づいて前記被処理物の加熱時における昇温速度から加熱変態点を求めて、前記被処理物の焼入タイミングを決定するためのCの拡散長の計算開始温度を当該加熱変態点に基づいて決定することを特徴とする、高周波熱処理方法。 - 請求項1の高周波熱処理方法で焼入を行なう高周波熱処理装置であって、
加熱する前記被処理物の温度を調節するための温度制御手段と、前記被処理物を焼入れるための焼入手段とを備え、
前記温度制御手段は、高周波により前記被処理物を加熱する加熱手段と、前記加熱手段により加熱される部位の温度を測定する温度制御用測温手段と、前記温度制御用測温手段に接続して前記温度制御用測温手段からの温度情報に基づき温度制御信号を前記加熱手段に出力する温度調節手段とを有し、
前記焼入手段は、前記加熱手段により加熱される部位から離れた部位の温度を測定する焼入用測温手段と、前記焼入用測温手段に接続して前記焼入用測温手段からの温度情報に基づき熱処理時間を調節し焼入開始信号を出力する熱処理調節手段とを有することを特徴とする、高周波熱処理装置。 - 請求項2の高周波熱処理装置を用いて、請求項1の高周波熱処理方法で作製したことを特徴とする、高周波熱処理品。
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