JP5344695B2 - めっき基板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、Zn化合物基板にめっきを形成する、めっき基板の製造方法に関する。
ZnSのようなZn(亜鉛)を含む化合物は半導体装置を用いた光学部品の封止材、窓材として用いられる。例えば、光学素子としての半導体装置を形成した第1の基板にZnSからなる第2の基板を接合することで半導体装置を封止した光学部品がある。
ZnSよりなる基板の表面上にめっき処理により金属膜を形成する場合には、このZnSが良導体ではないため、電解めっきを適用することができない。したがって、電解めっきの代わりに、又は電解めっきの下地として、無電解めっきを施すことが考えられる。
プラスチックスのような不導体に無電解めっきを行って、金属膜を不導体の表面上に形成する一般的な工程は、主に脱脂、エッチング、プレディップ、触媒化(キャタリスト、アクセレータ)、無電解めっきの工程から成り立つ(非特許文献1)。より詳細には、まず、被めっき材をめっき治具に取り付け、次に指紋、油などの汚れを除去するために脱脂し、洗浄する。次に行うエッチング工程は密着性を上げるために被めっき材にアンカー効果を付与するものであって、被めっき材の表面を酸で荒らすことで、被めっき材の表面を化学的に粗化する。中和した後に触媒化工程を行う。この触媒化工程は一般的にキャタリストとアクセレータとから成り立つ。キャタリストでは被めっき材の表面に対して、Sn2+−Pd2+の錯体の吸着を行い、アクセレータでは硫酸又は塩酸等によりSnイオンを溶解させ、金属パラジウムを析出させる(Sn2++Pd2+→Sn4++Pd)。この触媒化工程で金属触媒核が被めっき材の表面に形成され、後工程の無電解めっきで金属層を形成可能になる。無電解めっき工程は、無電解銅めっきや無電解ニッケルめっきが、それぞれの製品の要求に応じて使い分けられて用いられ、無電解めっき浴に触媒化工程後の被めっき材を浸漬して金属層を被めっき材の表面に形成していた。
上述のように、無電解めっき工程の前には、被めっき材の表面にパラジウムなどの触媒金属核を付着させておく必要がある。そのための触媒化工程では、今日では一般的にキャタリストと呼ばれる錫−パラジウム混合溶液と酸との処理液が多く用いられている。
電気鍍金研究会編、「無電解めっき 基礎と応用」、日刊工業新聞社、1994年5月30日、p132
上述した一般的な無電解めっき方法をZnS基板に適用して、実際にめっきを行ったところ、めっき膜の密着性が非常に弱く、テープ試験で剥がれるレベルの密着性であった。これでは常用上で必要とされるめっき密着性を具備していない。
上記課題を解決するために、本発明は、Cu薄膜が形成された基板上に無電解めっき膜を形成する前に、Znを含む化合物よりなる基板を硫酸銅溶液に浸漬してこの基板上にCu薄膜を形成することを要旨とする。
本発明によれば、Znを含む化合物よりなる基板を硫酸銅溶液に浸漬する事で、基板のZn+が溶解して、残りの元素がCuと結合し置換めっきが行われる。このことで亜鉛化合物の表面にCuの非常に薄い膜が形成される。このことにより、ZnSのような自己触媒性を持たない化合物でも無電解めっきで密着性の高い被膜を形成することができるようになる。
本発明のめっき基板の製造方法の概念を時系列的に説明する断面図である。 本発明の方法により得られるめっき基板の断面図である。 基板を保持する治具の一例の概略図である。 図3の治具の概略図である。 実施例のX線光電子分光法による測定結果を示すチャートである。 基板を保持する治具の一例の概略図である 図6の治具の動作を示す概略図である。 図6の治具の断面図である。 めっき液中で揺動しない治具の一例の概略図である。 光学部品の説明図である。 光学部品の製造方法を時系列的に説明する断面図である。 光学部品の別の製造方法を時系列的に説明する断面図である。 実施例1の密着性測定試料の断面及び破壊界面の概略図である。 実施例における膜厚均一性の評価箇所を示す断面図である。 実施例における孔部の顕微鏡写真である。 実施例における孔部の顕微鏡写真である。
(第1実施形態:無電解めっき基板の製造方法)
以下、本発明のめっき基板の製造方法の実施形態を、図面を用いつつ具体的に説明する。
図1は、本発明のめっき基板の製造方法の概念を時系列的に説明する断面図である。図示した本実施形態では、無電解めっきがNiめっきである例について説明する。
まず被めっき材である基板11を用意する(図1(a))。本実施形態では、基板11は、例えばZnSよりなるものとすることができる。この基板11を硫酸銅溶液に浸漬して、基板11上にCu薄膜12を形成する(図1(b))。図示した例ではCu薄膜12は、基板11上で島状に点在している。次に、無電解めっきの一例として無電解Niめっき膜13を、このCu薄膜12が形成された基板11上に形成する(図1(c))。図示した本実施形態では、この無電解Niめっき膜13の上に更に電解めっきにより電解Cuめっき膜14を形成している(図1(d))。
以上のような工程を経て、図2に断面図で示すように、基板11上にCu薄膜12が形成され、そのCu薄膜12を覆って無電解Niめっき膜13が形成され、そして、この無電解Niめっき膜13上に電解Cuめっき膜14が形成されためっき基板が得られている。
発明者らは、ZnSよりなる基板に従来の方法で無電解めっきを実施した場合に、めっき密着性が劣っていた理由について研究を進めた。その結果、以下の原因によるもの考えられる。
まず、ZnS基板は酸に可溶しやすく、特に塩酸には激しく溶解する。これについては、実際に0.5Mの塩酸にてZnS基板を5分間浸漬させたところ、表面がエッチングされ、表面の粗面化が確認できた。ZnSは硫酸には溶解しないが、塩酸には溶解される。このことにより、ZnS基板には、H+が溶解する作用よりもむしろ、塩化物イオン(Clイオン)がZn2+と結合して錯イオンを形成する作用が優先し、ZnS基板の溶解を促していると考えられる。ZnS基板が溶解すると、無電解めっきの下地となる金属触媒が密着していないために、その後の無電解めっきを行っても密着性が確保できない結果になる。
もっとも、従来の無電解めっき法には塩酸は不可欠である。すなわち、触媒化工程のキャタリストにおいては、一般的に混合触媒液は塩化第一スズ及び塩化パラジウムと、塩酸との混合溶液であり、通常は市販されている塩化第一スズ及び塩化パラジウムの濃縮液を多量の塩酸溶液で薄めて使用する。この時、塩酸は、Clイオンを基板表面に吸着させて、その後のキャタリストが形成され易くする役割を担っている。
また、キャタリストの前工程であるプレディップ工程でも、基板を粗化又は清浄化するためにClイオンを添加した液を用いることがあり、さらには浴を作る際に製品溶液と塩酸を混ぜて作製しなければならないケースが多い。
更に、無電解めっき液では、Clイオンを含む界面活性剤が、添加剤として用いられるケースもある。
これらのことから、従来法ではClイオンレスで触媒化を行うことは難しいと考えられてきた。
この点につき、本実施形態では、ZnS基板を硫酸銅溶液に浸漬する。この浸漬により、基板のZn+が溶解して、残りの元素がCuと結合し置換めっきが行われる。ZnS基板表面に、Cu薄膜が数原子程度の厚さで堆積される。そのことで、自己触媒性を持たないZnS表面にCuという触媒層が形成されることになり、後工程の無電解めっきによってめっき膜をZnS基板上に形成されることが可能となる。
また、ZnS基板を浸漬する硫酸銅溶液には塩酸は加えられず、硫酸が加えられる。この溶液ではZnS基板が溶解しないので、ZnS基板表面に付着形成したCu薄膜は高い密着性を有する。そのため、このCu薄膜上に形成した無電解めっき膜も密着性が高い。
Znを含む化合物よりなる基板は、ZnS基板に限られず、ZnSe基板、ZnO基板及びZnTe基板を用いることができる。ZnSe基板、ZnO基板及びZnTe基板は、ZnS基板と似た特性を有する化合物である。
また、無電解めっきは無電解Niめっきに限られず、無電解Cuめっきでもよく、特に限定はしない。
[密着性向上について]
Znを含む化合物よりなる基板実際を硫酸銅溶液に浸漬してこの基板上にCu薄膜を形成することにより得られる密着性向上について、実際にZnS基板を硫酸銅処理後、表面にNiめっきを4μm厚、形成させた後、Niめっき膜の厚み方向に対して引張試験を行ったところ、6.6MPa以上の引張強度が得られた。この数値は引張試験に使用した接着剤の引張強度によるものであり、実際のZnS界面とめっき膜との密着強度は、この数値よりも高いと考えられる。一方、従来法をZnS基板に適用してNiめっきを形成した場合、すなわち、触媒化工程にHClベースのキャタリストを用いた場合には、めっき膜がテープ試験で剥がれた。この場合のZnS界面とめっき膜との密着強度は、テープの規格から0.1MPa以下である。したがって、本実施形態のめっき基板の製造方法は、従来法に比べて160倍以上の強度向上が確認できた。
[コストについて]
従来法では、Niめっき膜形成工程前に行う触媒層の形成工程は、中和、キャタリスト、アクセレータの3工程からなり、それらの工程間のそれぞれに水洗工程が入るのに比べて、本実施形態の方法では、硫酸銅溶液に浸漬して水洗するだけで済み、大幅に工程数が減る。また、従来法におけるPd触媒はμmサイズでの厚みで形成する必要があり、キャタリストを含む液を繰り返し使用していると、液中でのPdの濃度が下がってくる。そのため、液の可能処理枚数はある程度制限される。一方、本実施形態の方法では、基板上に形成されるCu触媒の厚さは1nm以下であり、硫酸銅溶液液を繰り返し使用しても、Cu消費量が少ないために液成分の変化は極めて少ないと考えられる。また、従来法の触媒であるPdと本実施形態の方法の触媒であるCuの原価、液の構成を比較しても本実施形態のほうが単純な構成になっており、大幅な低コスト化が可能と考えられる。
硫酸銅溶液は、硫酸:0.1〜2.0モル/リットル、硫酸銅:0.1〜1.0モル/リットルの濃度で含有することが好ましい。触媒原料の金属塩として硫酸銅を、溶液として硫酸銅水溶液を用いることで、ZnS等の亜鉛を含む化合物よりなる基板の溶解を抑制しながら、基板表面に触媒層を形成することができる。ここに、硫酸銅は、0.1モル/リットル以上とすることにより、異常析出が起こらず、また、1.0モル/リットル以下とすることにより、常温での保管で硫酸銅の結晶が溶液中に析出しないため、0.1〜2.0モル/リットルの範囲とするのが好ましい。硫酸は、基材の過度な溶解を抑制する作用を有しており、その効果を十分に発揮させ他の弊害を生じない範囲として0.1〜2.0モル/リットルの範囲とするのが好ましい。
Cu薄膜を形成した後は、無電解めっき膜を形成する前に、基板にCuよりもイオン化傾向の大きい金属を接触させ、接触させたまま無電解めっき膜の形成を開始することが好ましい。ZnSなどのZnを含む化合物よりなる基板の表面に付着したCu薄膜に、Cuよりもイオン化傾向の大きい金属(卑金属)を一時的に接触させ、被めっき材を卑金属にすることにより、微小電流を通じ、めっき反応を開始させることができる。したがって、上述したようなZnを含む化合物よりなる基板に無電解めっきで密着性の高い被膜を形成することができるという効果に加えて、また、平滑な基板についても無電解めっきを始動することができ、よって無電解めっきを容易に実施することができるという効果がある。
このようなCuよりもイオン化傾向の大きい金属(卑金属)は、例えばNiがある。Ni以外にも用いることができる材料としては、Fe、Co、Cr等がある。なお、Cuよりも卑な金属であっても、後工程のめっき液中で簡単に溶解する金属は使用できない。したがって、めっき液中で簡単に溶解する金属は、基板に接触させる金属からは除かれる。
基板にCuよりもイオン化傾向の大きい金属を接触させる具体的な方法は、Cuよりもイオン化傾向の大きい金属を備える治具で基板を保持することがある。無電解めっき工程時にめっき液中に浸漬させた基板を保持する治具そのものに、めっき反応を開始させる効果を付与することにより、卑金属を接触させるためのプロセスを省略することができ、よって、低コスト化が可能となる。
図3に、無電解めっき工程時に基板21を保持する治具31の一例を概略図で示す。図3(a)は平面図であり、図3(b)は斜視図、図3(c)は断面図である。図示した治具31は、概略コの字断面形状を有しており、Cu薄膜が形成された基板21の両面を挟持する。この治具31の少なくとも基板21と接する部分がCuよりもイオン化傾向の大きい金属よりなる。このような治具を用いることにより、別途に卑金属を接触させるための材料を用意したり、接触させるプロセスを行ったりしなくても、基板21の表面に形成されているCu薄膜に、Cuよりもイオン化傾向の大きい金属(卑金属)を一時的に接触させることができる。
無電解めっき時においては、図4に斜視図で示すように、治具31にワイヤ32を固着し、このワイヤ32により、治具31及び基板21をめっき浴中に吊り下げるようにする。ワイヤは、例えば鉄線に絶縁テープで保護したものとすることができる。
無電解めっきとしてNiめっきを形成する場合の無電解Niめっき浴は、コハク酸ナトリウムとDLりんご酸及びニッケルの塩化物又は硫化物、又はスルファミン酸化物をそれぞれ0.1から1.0モル/リットル、ホスフィン酸ナトリウムを0.1〜1.0モル/リットルの濃度で含有されているものとすることができる。これらの成分の濃度の上限値、下限値については、いずれも正常に無電解めっきを析出できる(めっき液の分解が起こらず、かつ、試薬の酸化還元反応により無電解めっきが起こる)範囲の濃度として定められた。これらの成分を含むめっき浴とすることにより、ZnS基板上に形成されたCuの触媒を活性化し、密着性に優れた無電解Niめっき膜を形成することが可能となる。したがって、上述したようなZnを含む化合物よりなる基板に無電解めっきで密着性の高い被膜を形成することができるという効果を一層高めることができる。
無電解めっきとしてNiめっきを形成する場合の無電解Niめっき浴は、上述した成分に加えて、サッカリンナトリウムを0.001〜0.010モル/リットルを添加してなるめっき浴とすることもできる。上記したサッカリンナトリウムの濃度の上限値、下限値については、正常に無電解めっきを析出でき(めっき液の分解が起こらず、かつ、試薬の酸化還元反応により無電解めっきが起こる)範囲の濃度として定められた。無電解Niめっき浴にサッカリンを加えることで、めっき膜の内部応力が抑制される効果がある。したがって、上述したようなZnを含む化合物よりなる基板に無電解めっきで密着性の高い被膜を形成することができるという効果を一層向上させることができる。
図5(a)〜(d)は、後で詳しく述べる実施例1による無電解Niめっき後の基板表面のX線光電子分光法(XPS)での分析の結果を示すチャートである。縦軸がそれぞれの結合エネルギーにおけるX線光電子の強度、横軸が原子の結合エネルギーを示す。これらの図から分かるように、分析の結果、亜鉛はZnSの化学状態で、銅はCu2Oの化学状態で、ニッケルは酸化ニッケル(III)Ni2O3及び硫化ニッケルNiSの化学状態で、存在している。
基材表面に銅触媒が形成される反応は、以下の式に示すものと考えられる。
硫酸銅溶液に浸漬することにより以下の反応が起こる。
ZnS+Cu2+ →CuS+Zn2+
ZnS+2Cu2+ →Cu2S+Zn2+
次に、浸漬後の基材を水洗・乾燥する過程で以下の反応が起こる。
2CuS+7/2O2 →Cu2O+2SO3 (固)
2Cu2S+4O2 →2Cu2O+2SO3 (固)
2CuS+5/2O2 →Cu2O+2SO2 (気)
Cu2S+3/2 O2 →Cu2O+SO2 (気)
銅触媒が形成された基材の上に無電解Ni−Pめっき膜が形成される反応は、以下の式に示すものと考えられる。
無電解Ni−Pめっき液に浸漬することにより以下の反応が起こる。
まず、還元剤の作用により、
Cu2O+2H+ →2Cu+H2O (Cu2Oが還元されCuとなる。)
上記の反応により金属Cuが形成ざれることで、以下の反応が起こる。
H2PO2 - +H2O→H2PO3 -+2H++2e-
Ni2+ +ZnS→NiS+Zn2+ (界面における結合)
Ni2+ +2e- →Ni (Ni膜の堆積)
次に、浸漬後の基材を水洗・乾燥する過程でめっき膜表面では以下の反応が起こる。
4Ni+3O2 →2Ni2O3 (表面の自然酸化)
一般に、CuやNiの大気中での酸化反応は、表面の数原子層から数十原子層程度で起こると考えられる。本分析で用いた測定試料のめっき膜の膜厚はいずれも数nmであった。それらの事実から、CuやNiの酸化物が観察されたと考えられる。
上記の反応・測定結果から、基材上に無電解めっき膜が形成される過程は以下に示すものと考えられる。
基材を硫酸銅水溶液に浸漬することで、基材上にCuSまたはCu2Sが形成され、水洗・乾燥過程でそれらはCu2Oに変化する。
次に、Cu2Oが形成された基材を無電解めっき浴に浸漬することで、Cu2Oがめっき液に含有される還元剤により還元され金属Cuに変化する。
次に、金属Cuを触媒として、めっき治具の接触により、微小電流が流れ、無電解めっきが始動し、無電解めっき膜が基材上に形成される。
次に、それらを水洗・乾燥する過程で、無電解めっき膜表面には数nm程度の酸化膜が、形成される。
無電解Ni−Pめっきの過程で、NiSが形成されたことは、基材と強い密着力を持つ化学的な結合を持つ層がめっき膜に形成されたことを示す。それにより、本発明により形成した無電解Ni−Pめっき膜と基材との間には強い密着力が得られたと考えられる。
(第2実施形態:電解めっき基板の製造方法)
Znを含む化合物よりなる無電解めっき膜を形成する工程の後、この無電解めっき膜上に電解Cuめっき膜を形成する工程を行うことができる。Znを含む化合物よりなる基板に無電解めっきを施したものを製品としてのめっき基板とすることができるが、この無電解めっき上に電解めっきを施したものを製品としてのめっき基板とすることもできる。
無電解めっき膜上に電解Cuめっき膜を形成することで、めっき全体の膜厚を増やすことができる。また、めっき全体の膜厚を増やすことができることから、ZnS基板内で貫通孔を設けて、その貫通孔を無電解めっき電解Cuめっきで充填させることにより、気密性を確保した貫通電極を形成することが可能となる。
電解Cuめっき液は、硫酸0.1から2.0モル/リットル、硫酸銅0.1〜1.0モル/リットル、塩化物イオン0.001〜0.1モル/リットルの濃度で含有されているものとすることができる。硫酸銅は、0.1モル/リットル以上とすることにより、異常析出が起こらず、また、1.0モル/リットル以下とすることにより、常温での保管で硫酸銅の結晶が溶液中に析出しないため、0.1〜2.0モル/リットルの範囲とするのが好ましい。硫酸は、過度な溶解を抑制する作用を有しているため、十分な効果を発揮させ他の弊害を生じない範囲として0.1〜2.0モル/リットルの範囲とするのが好ましい。塩化物イオンの濃度の上限は塩化物イオンによる結晶粒の粗大化が起こらない限界濃度、下限は塩化物イオンによるめっき析出の促進効果が得られる最低の濃度として0.001〜0.1モル/リットルの範囲とするのが好ましい。
電解Cuめっき液を上記の各成分濃度に調整することにより、被めっき材に対し、空隙や空孔の欠陥を抑制して、めっき膜を形成することが可能となる。このめっき液には、表面形態や膜厚の制御のためにポリエチレングリコールやジスルフィド結合を持つ種々の有機化合物を添加することもできる。
電解Cuめっきを形成する工程においては、電解Cuめっき液中に浸漬した基板を、めっき液の流動により揺動させることが好ましい。被めっき物を揺動させることで、被めっき材周りのめっき液に不規則的な流れを発生させ、それにより金属イオンの拡散が促進する効果がある。その効果により、めっき膜に生じる膜厚不均一性や空隙や欠陥の発生を抑制する効果がある。また、めっき液の流れを利用するため、一般的に揺動に用いられるような動力装置を必要としないため、コストを低下させることができる。
なお、このようにめっき液中に浸漬した基板を、めっき液の流動により揺動させることは、電解Cuめっき工程の時ばかりでなく、その前工程の無電解めっき工程の時に行うこともできる。無電解めっき工程の時に行う場合であっても被めっき物を揺動させることで、被めっき材周りのめっき液に不規則的な流れを発生させ、それにより金属イオンの拡散が促進する効果がある。その効果により、めっき膜に生じる膜厚不均一性や空隙や欠陥の発生を抑制する効果がある。また、めっき液の流れを利用するため、一般的に揺動に用いられるような動力装置を必要としないため、コストを低下させることができる。
(第3実施形態:めっき用治具)
めっき液中に浸漬した基板を、めっき液の流動により揺動させるのに適した治具の一例を図6〜8に示す。なお、図6〜8では同一部材については同一符号を付している。図6(a)は治具50の上面図、図6(b)は治具50の正面図、図6(c)は治具50の斜視図である。治具50は、無電解めっきが形成された基板41を保持する治具であって、絶縁性素材からなり基板41に当接する基板担持部51と、めっき液の流動による可撓性を有する筒状部52と、この筒状部52内に挿通され基板担持部51を通じて基板41と電気的に接続するとともに電源(図示せず)と接続する導体53とを備えている。基板担持部51及び導体53は、図8に断面を示すように、基板41の一部を挟み込む形状を有していて、基板41の両面がめっき液と接触可能になっている。このような治具50を用いることによって、基板41の揺動を発現させる効果がある。
電気Cuめっきは、マグネチックスターラやプロペラミキサーなどの攪拌器によってめっき液が攪拌されているか、又は送液ポンプを使っためっき液の流動化が行われているか、又は、空気ポンプを用いた気泡によるめっき液の攪拌を伴って行われる。
攪拌されている液中に、図6に示した治具50に取り付けた基板41を浸漬すると、筒状部52が可撓性を有する材料からなり、また、筒状部52内に挿通されている部分の導体53も可撓性を有することから、図7に示すように攪拌により生じためっき液の流れにより筒状部52が撓み、基板41及び基板担持部51が揺動する。このように基板41が揺動されている状態で、電流を加え、電気めっきを行う。このことにより、めっき液の攪拌に加えて、基板41が揺動することにより、基板41表面及び内部にめっき液の流れが形成され、金属イオンの拡散が促進されると考えられる。この効果は、無電解めっきに治具50を適用した場合にも同様の効果が得られると考えられる。
このように、めっき液中に浸漬した基板を保持する治具の可撓性によって、基板を揺動させることができるように、めっき治具の形状によりめっき膜の膜厚、形状、膜厚均一性を制御することができる。治具の形状を変化させることで、めっき液の流れの状態やイオンの拡散、微小電流の流れ方を制御し、被めっき物の局部的なめっき速度を変化させることで、めっき膜の膜厚、形状、膜厚均一性を制御する効果がある。
比較のために図9に、めっき液中で揺動しない治具の一例を正面図(図9(a))、側面図(図9(b))及び上面図(図9(c))で示す。図9に示した治具は、剛性を有する絶縁性素材からなる基板担持部61と、基板担持部61の内部に設けられるとともに、基板担持部の一端で露出して図示しない電源と接続する導体62とを有している。この図9に示した治具では、材料の断面を示している。基板担持部61が剛性を有しているため電解めっき中に攪拌により生じためっき液の流れによっても撓まない。
(第4実施形態:半導体装置の製造方法)
次に、本発明のめっき基板製造方法を適用した半導体装置の製造方法について説明する。
光学素子としての半導体装置を形成した第1の基板にZnSからなる第2の基板を接合することで半導体装置を封止した光学部品に関して、低コストで製造するために、光学部品の製造過程においてウエハレベルパッケージングの適用を考えると、ZnSからなる第2の基板に貫通電極を形成し、この貫通電極を通して光学素子と接続することが望ましい。そのため、第2の基板に形成した貫通孔内に貫通電極用として導電性金属を充填することが求められる。また、半導体装置を形成した第1の基板とZnSからなる第2の基板とを表面活性化接合やはんだ接合の方法で接合するには、第2の基板の接合部に金属膜を形成しておくことが求められる。しかし、ZnSは良導体ではないため、第2の基板の貫通孔への金属の充填や接合部の金属膜の形成を、直接に電気めっきにより行うことはできない。
そこで、貫通電極の形成や第2の基板の接合部に金属膜を形成に、本発明のめっき基板製造方法を適用して半導体装置を製造する。より具体的には、素子領域を有する第1基板に、Znを含む化合物よりなる第2基板を接合してなる半導体装置を製造するときに、第2基板に貫通孔を形成した後、この第2基板を硫酸銅溶液に浸漬して貫通孔を含む基板の表面上にCu薄膜を形成し、その後にCu薄膜が形成された基板表面上に無電解めっき膜を形成した後、電解Cuめっきを行って第2基板の貫通孔にCuを充填する。
この製造方法を図10〜12を用いて説明する。
図10は本発明の半導体装置の製造方法を適用して得られた半導体装置の一例としての光学部品の模式的な断面図(図10(a))及び上面図(図10(b))である。図示した光学部品は、窓基板110と素子基板100とで構成され、それぞれメタル層180を介して図10(b)の上面図のように素子基板100外枠を周回させるように接合されており、窓基板110と素子基板100との間には空間領域150を有している。
また、窓基板110には素子からの信号を取り出すために、貫通電極120が複数個、図10(b)の上面図に示されるように平面的に配列されている。また、貫通電極120の周囲は少なくとも他の接合用のメタル層180とは窓基板110により絶縁されている。窓基板110の表面には、貫通電極120と接続する表面電極140が形成されている。また、貫通電極120と素子基板100の電極とは、電極130を介して接続されている。なお、窓基板110と素子基板100とを接合するために、両者の対向する表面にそれぞれ形成されるメタル層180は、窓基板110に形成されたものと素子基板100に形成されものとが、Au、Cu、Al等の金属であって、かつ、同じ材料であることが望ましい。また、窓基板110の貫通電極120と素子基板100の電極とを接続する電極130もまた、窓基板110に形成されたものと素子基板100に形成されものとが、Au、Cu、Al等の金属であって、かつ、同じ材料であることが望ましい。
図10に示した光学部品の製造プロセスの一例を、図11に示す時系列的な模式的断面図を用いて説明する。
まず、窓基板210を用意する。この窓基板210は裏面側の中央部において、後で接合する素子基板の素子エリアに対応する位置に、空間領域となる凹部を有しており、その凹部を予めマスク材してのレジスト215や保護樹脂等で埋めておく(図11(a))。なお、図示した本実施例では光学部品として光学センサを製造するために窓基板210は裏面側の中央部に凹部を設けた例を示しているが、光学センサの種類によって、また、他の半導体装置の構成によって、この凹部は無くても構わない。
次に、窓基板210に、貫通孔225を設ける(図11(b))。この貫通孔225を形成するための孔あけ方法はドリル、ブラスト、レーザ、エッチング等の加工方法を用いればよい。
次に、窓基板210を、本発明のめっき基板の方法に従い、硫酸銅溶液に浸漬することで、実施例1で示した、置換めっきが行われ、窓基板210の表面全体及び貫通孔の内面にCu薄膜226が付着する(図11(c))。この時、レジスト215にはCu薄膜226が付着しない。
次に、第1実施形態で述べたようなNi無電解めっきを行うことで、Cu薄膜226が付着したエリア全てに無電解Ni膜227が生成される(図11(d))。この時もレジスト215には無電解Ni膜227は生成されない。
無電解Ni膜227が生成されたことにより、めっき後の窓基板210は導電体となり、電解めっきが可能となる。そこで、次に、めっき後の窓基板210に対して、第2実施形態で示したような、Cuの電解めっきを行うことで、窓基板210の表面に電解Cu膜228が形成されるともに、貫通孔225の内部がCuで充填される(図11(e))。
貫通孔225の内部へのCuの充填後、窓基板210の上面下面をラッピング及びポリッシングすることで、上面下面に形成されている余分なCuめっき膜を除去して、ZnSよりなる窓基板210の表面を露出させる(図11(f))。
さらに、窓基板210の下面側(素子基板260との接合側)に電極用パッド230及び封止用メタル層280を成膜する。また、窓基板210の上面側も同様に、電極パッド231をパターニングする(図11(g))。この時、電極用パッド230、封止用メタル層280及び電極パッド231の成膜方法はスパッタ、蒸着、めっき等を用い、マスクにより選択的に形成すればよい。
次に、窓基板210の光透過部に該当する凹部250のレジストを除去する(図11(h))。
最後に、窓基板210と素子基板260と接合する((図11(i))。これにより、素子基板260のパッケージングが可能となる。この時、窓基板210と素子基板260との接合方法は、表面活性化接合、半田接合、抵抗加熱、拡散接合等の接合方法を用いればよい。
本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、ZnS基板を窓材とした光学センサの貫通電極として、本発明のめっき方法を適用することができる。このため、高耐久性、また高気密性が得られ、センサの信頼性を向上させることができる。
そして本実施形態の半導体装置の製造方法により製造された半導体装置は、不導体のZnS基板に無電解めっきでNiの層を設けることにより、このNiの層を配線として利用できる。また、Niの層を電解めっき用の導通層として利用でき、後工程の電解Cuめっきにより光学部材となるZnS基板に対して貫通電極を形成できる。また、基板のZnSとNiとはNiSという化合物ができ、ZnS基板と強い結合力を持つので、密着性の高いめっき膜となる。
さらに、ZnS基板を光学用デバイスの窓基板に適用することを考えると、硫酸銅溶液への浸漬により形成されるCu薄膜は、非常に薄いことから、成膜後の工程で除去しきれなくても基板自体の透過率にほとんど影響しないと推定できる。
図12に、光学部品の製造プロセスの別の例を、時系列的な模式的断面図を用いて説明する。なお、図12において、図11と同一部材については同一符号を付しており、以下の説明では重複する説明を省略する。
図12に示した製造プロセスの、図11に示した製造プロセスとの相違点は、封止用メタルを電解Cuめっき膜228で生成する点である。
図12(b)に示すように、窓基板210の裏面の端部近傍に、予め、切り欠き部240を設けておく。その後は、図11を用いて先に説明したのと同じ製造プロセスを経ることで、切り欠き部240にも無電解Ni膜227と電解Cuめっき膜228が形成される(図12(e))。
これを、図11で示したのと同様にラッピング、ポリッシングすることで、ZnSよりなる窓基板210の表面を露出させても、封止エリアには電解Cuめっき膜228が残存する。これにより、図11で示した製造プロセスのように、別途、封止用メタル層280をスパッタ等の成膜方法で作成するプロセスを設けなくても、窓基板210の切り欠き部240に形成された電解Cuめっき膜228が直接、封止用メタル層となるために、素子基板260側と接合できる。これにより、プロセス数が削減できるので、低コスト化に繋がる。
このように、図12に示す製造プロセスでは、貫通電極ばかりでなく、素子基板との接合部にも本発明のめっき方法を適用することで、封止用メタル層を金属等のスパッタ工程で形成することが不用となり、低コスト化に繋がる。更に、封止用メタル層としての電解Cuめっき膜は、高密着性を有していることから、接合部の信頼性向上にも繋がる。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(実施例1)
実施例1では、ZnS基板を硫酸銅溶液に浸漬してこの基板上にCu薄膜を形成し、その後にCu薄膜が形成された基板上に無電解めっき膜を形成した。
硫酸銅(CuSO4・5H2O)及び硫酸(H2SO4)を主成分として、次に示す組成になる硫酸銅水溶液を調製した。なお、硫酸は、基板の過度な溶解を抑制する作用を示すものである。
■硫酸銅水溶液の組成:
CuSO4・5H2O: 0.6モル/リットル
H2SO4: 1.8モル/リットル
そして上記の水溶液に基板を浸漬し、水溶液温度25℃で80分間浸漬処理を行い、基板11上に銅触媒であるCu薄膜12を形成した(図1(b)参照)。
なお、この時、銅触媒は非常に薄い薄膜状で、その膜厚は原子数個分しか付着しておらず、外観上は銅触媒をつける前とほとんど変わらない。
次に、硫酸ニッケル(NiSO4・6H2O)及び次亜りん酸ナトリウム(H2NaO2P・H2O)、コハク酸ナトリウム(NaOOCCH2CH2COONa・6H2O)、DL-りんご酸(HOOCCHOHCH2COOH)、サッカリン(C7H4NNaO3S・2H2O)を含む無電解Ni−Pめっき浴に、水酸化ナトリウムによりpHを4.8に調整して、次の組成のめっき浴を調製した。
■無電解Ni-Pめっき浴の組成:
NiSO4・6H2O: 0.1モル/リットル
H2NaO2P・H2O: 0.3モル/リットル
NaOOCCH2CH2COONa・6H2O: 0.1モル/リットル
HOOCCHOHCH2COOH: 0.1モル/リットル
C7H4NNaO3S・2H2O: 0.006モル/リットル
pH: 4.8
図3に示すように、銅触媒を形成した基板21は、厚さ10μm以上のニッケル皮膜が表面に形成された治具31により保持される。図3に示した治具31は基板21の一部を両面から挟み込む形状を有しており、基板21に直接接触させ、基板21の担持と共にCuよりもイオン化傾向の大きい異種金属であるニッケルを銅触媒に接触させた。
図4に示すように治具31に絶縁テープで保護した鉄線よりなるワイヤ32を取り付け、めっき浴槽内で基板21を吊り下げ保持できるようにした。
そして上記のめっき浴に銅触媒を形成した基板21を治具31と共に浸漬し、浴温70℃で無電解めっきを210分間行い、平均膜厚が15μmの無電解Ni-Pめっき膜13を形成した(図1(c)参照)。
図5(a)〜(d)は、実施例1による無電解Niめっき後の基板表面のX線光電子分光法(XPS)での分析の結果を示すチャートである。縦軸がそれぞれの結合エネルギーにおけるX線光電子の強度、横軸が原子の結合エネルギーを示す。これらの図から分かるように、分析の結果、亜鉛はZnSの化学状態で、銅はCu2Oの化学状態で、ニッケルは酸化ニッケル(III)Ni2O3及び硫化ニッケルNiSの化学状態で、存在している。
無電解Ni−Pめっきの過程で、NiSが形成されたことは、基材と強い密着力を持つ化学的な結合を持つ層がめっき膜に形成されたことを示す。それにより、本発明により形成した無電解Ni−Pめっき膜と基材との間には強い密着力が得られたと考えられる。
(実施例2)
実施例2では、上記実施例1により無電解Ni-Pめっき膜13を形成したZnS基板に電気銅めっきを実施した。
硫酸鋼(CuSO4・5H2O)および硫酸(H2SO4)を主成分とする電気銅めっき浴に、塩酸(HCl)を添加して、次の組成のめっき浴を調製した。なお、ビスジスルフィド(SPS)はめっき促進剤として、ポリエチレングリコール(PEG)はめっき抑制剤として作用するものである。
■電気銅めっき浴の組成:
CuSO4・5H2O: 0.6モル/リットル
H2SO4: 1.8モル/リットル
HCl: 100ppm
ビス(3−スルフォプロピル)ジスルフィド(SPS): 5ppm
ポリエチレングリコール(PEG4000): 600ppm
図6に示すように、銅触媒及び無電解Ni−Pめっき膜を形成した基板41は、治具50により保持される。図6のように治具50は絶縁性素材である基板担持部51及び銅である導体53とを有し、この導体53により基板41に対する電気的導通を確保した。また、治具50の筒状部52はめっき液の流れにより変形させられる可撓性を持つ。図8に示すように治具50の基板担持部51及び導体53は基板41の一部を挟みこむ形状とし、基板41の両面がめっき液と触れるようにした。
そして上記のめっき浴に基板41を浸漬し、無電解Ni−Pめっき膜が形成された基板41を陰極、銅板を陽極として、めっき浴温度25℃、陰極電流密度5mA/cm2の条件で180分間電気めっきを行い、無電解Ni−Pめっき膜の上に、電気Cuめっき膜14を形成した(図1(d)参照)。
この電気めっき過程において攪拌器によってめっき液が攪拌されていて、この攪拌により生じためっき液の流れにより治具50が撓み、基板担持部51及び基板41が揺動する(図7参照))。このような基板41が揺動されている状態で、電流を加え、電気めっきを行う。
(実施例3)
実施例3は、実施例2の電気Cuめっきの条件を10mA/cm2、めっき時間を90分とした以外は実施例2と同様にして電気めっきを行った。
(比較例1)
比較例1は、基板をZnSからガラスに変えた他は、実施例1と同様な硫酸銅水溶液を用い、実施例1と同様に浸漬処理を行った。
(比較例2)
比較例2は、実施例1の無電解Ni−Pめっきで用いる治具を非金属であるプラスティック製に変えた他は、実施例1と同様な無電解めっき浴を用い、実施例1と同様に無電解Ni−Pめっきを行った。
(比較例3)
比較例3は、Ni膜により覆われた鉄線による接触を行った他は、実施例1と同様な無電解めっき浴を用い、比較例2と同様にプラスティック製の治具を用いて無電解Ni−Pめっきを行った。
(比較例4)
比較例4は、硫酸銅溶液への基板の浸漬を行わず、よって銅触媒の形成を行わなかった他は、実施例1と同様な無電解めっき浴を用い、実施例1と同様に無電解Ni−Pめっきを行った。
(比較例5)
比較例5は、無電解Ni−Pめっきを行わなかった他は、実施例2と同様な電気めっき浴を用い、実施例2と同様に電気Cuめっきを行った。
(比較例6)
比較例6は、従来法(中和、キャタリスト、アクセレータの3工程でそれぞれの工程間に水洗が入る)により無電解めっき膜の形成を行った。
(実施例4)
実施例4は、図9に示す基材が揺動しない治具を用いて電気Cuめっきを行った他は、実施例3と同様なめっき浴を用い、実施例3と同様に電気Cuめっきを行った。
以上述べた実施例1及び実施例2と、比較例1〜4、6について、基板上への無電解Ni−Pめっきの可・不可及びめっき膜の均一性を目視にて観察した。結果を表1に示す。
表1から、実施例1が最も均一性に優れていることが明らかである。また、比較例5では電気Cuめっきを行うことができなかったことから、無電解Ni−Pめっき膜は、電気Cuめっきを行うために必要であることは明らかである。
次に、実施例1と比較例6とのめっき基板の密着性の評価を行った。密着性試験は、JIS-H8504に規定された方法でJIS-Z1522に準拠する粘着テープを用いて行った。その結果、実施例1ではめっき膜が剥離しなかったが、比較例6では無電解めっき膜が剥離した。このことから、実施例1が密着性に優れていることが明らかである。
更に、実施例1の密着性を測定するため、次の密着性試験を行った。
この密着性試験は、以下の手順で行った(図13参照)。
(1) 治具74(□12mm)とZnS基板サンプル71(□12mm)とを接着剤73(3M Scotch-weld DP-460 オフホワイト)にて固定し、常温硬化させる。
(2) 治具74との接着後、ZnS基板サンプル71の側面(4面全て)をサンドペーパにて表面を磨き、側面の接着剤残りを落とす。
(3) 引張り試験を実施する(n=1)。引張速度は1.0 mm/min (ロードセル5kN)である。
その結果、接着剤73が破壊し、さらにZnS基板サンプル71が母材破壊したが、めっき膜72の剥離は起こらなかった。このことから、めっき膜72の密着性は16.6MPa以上であることが分かった。
次に、実施例3と実施例4とについて、電解Cuめっきして得られた電解Cuめっき膜14について、膜厚均一性及び形状を測定して評価した。
この膜厚均一性の評価は、図14に断面図で示すように電解Cuめっきを施したZnS基板81の孔部82近傍を厚み方向に切断し、切断断面を顕微鏡観察して、基板81に形成された電解Cuめっき膜の膜厚及び孔部82のめっき膜の膜厚を測定して評価した。
図15はそれらの顕微鏡写真であり、図15(a)は実施例3を、図15(b)は実施例4を示す。図15(a)に示した実施例3では、孔内部にCuめっき膜が厚く形成されている。これに対して図15(a)に示した実施例4では、孔内部のCuめっき膜は実施例3と比べて薄く、実施例3よりも不均一であることが観察された。
次に、実施例2と実施例3とについて、電解Cuめっきして得られた電解Cuめっき膜についても同様にして、膜厚均一性及び形状を測定して評価した。
図16は基板の孔部を厚み方向に切断した箇所の顕微鏡写真であり、図16(a)は実施例2、図16(b)は実施例3を示す。図16(a)の実施例2では、孔内部がほとんどCuめっき膜で充填されている。これに対して図16(b)の実施例3では、Cuめっき膜は実施例2ほどには十分に充填されていないことが観察された。
以上述べた各実施形態において、基板11、21、41は本発明のZnを含む化合物よりなる基板に対応する。素子基板100、260は本発明の第1基板に対応する。窓基板110、210は、本発明の第2基板に対応する。
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
11 基板
12 Cu薄膜
13 無電解Niめっき膜
14 電解Cuめっき膜
50 治具
52 筒状部52(可撓性部材)
100、260 素子基板(第1基板)
110、210 窓基板(第2基板)
225 貫通孔

Claims (3)

  1. ZnS、ZnSe、ZnO及びZnTeのいずれか一種の化合物よりなる基板を、硫酸:0.1〜2.0モル/リットル及び硫酸銅:0.1〜1.0モル/リットルの少なくとも一方を含有する硫酸銅溶液に浸漬してこの基板上にCu薄膜を形成する工程と、
    その後に、Cuよりもイオン化傾向の大きい金属を備える治具で基板を保持することにより、基板にCuよりもイオン化傾向の大きい金属を接触させ、接触させたまま無電解めっき膜の形成を開始し、Cu薄膜が形成された基板上に無電解めっき膜を形成する工程と
    を有することを特徴とするめっき基板の製造方法。
  2. 無電解めっき膜を形成する工程の後、この無電解めっき膜上に電解Cuめっき膜を形成する工程を有することを特徴とする請求項に記載のめっき基板の製造方法。
  3. 無電解めっき膜を形成する工程及び電解Cuめっき膜を形成する工程時の少なくとも一方の工程時に、めっき液中に浸漬した基板を、めっき液の流動により揺動させることを特徴とする請求項1又は2に記載のめっき基板の製造方法。
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