図1及び図2に示すように、内視鏡洗浄消毒装置(以下、洗浄消毒装置と呼ぶ)10は、箱状の装置本体11を備えている。装置本体11の上部には、使用後の内視鏡12を収容し、洗浄液や消毒液が供給される洗浄槽13が設けられている。洗浄槽13は、上部が開放された水槽であり、例えばステンレス等の耐熱性、耐蝕性等に優れた金属材料で形成されている。装置本体11には、洗浄槽13の開口部13aを覆う蓋として機能するトップカバー16が設けられている。
装置本体11は、シャーシ(図示せず)を有しており、シャーシには、洗浄槽13やトップカバー16の他、洗浄液や消毒液の供給、排出等の洗浄消毒処理に係る各種機構が設けられている。シャーシの外周は、前面パネル17、側面パネル18、上部パネル19からなる外装部材によって覆われている。
装置本体11内には、前面パネル17の下部に配されたフットスイッチ20とトップカバー16を連動させる連動機構(図示せず)が組み込まれている。トップカバー16は、フットスイッチ20が踏み込まれたときに開放され、さらにフットスイッチ20がもう一度踏み込まれたときに閉じられる。装置本体11には、図示は省略するが、内視鏡12の洗浄消毒処理の間、トップカバー16を閉じた位置でロックするロック機構、及びトップカバー16の開閉を検出する開閉センサが設けられている。
前面パネル17内には、図示しない収納トレイが設けられている。収納トレイには、洗剤タンク及びアルコールタンクが収納されている。洗剤タンクには、内視鏡12の洗浄に使用される洗剤が貯えられている。アルコールタンクには、内視鏡12の洗浄、消毒後に、鉗子チャンネル等の各チャンネル内に流されるアルコールが貯えられている。前面パネル17には、各タンク内の液体の残量視認用の透明窓22が取り付けられている。
また、収納トレイには、消毒液を濃縮した濃縮液を貯えた供給ボトルが交換可能に収納される。供給ボトルは、シャーシに備え付けられた消毒液タンクに接続され、濃縮液を消毒液タンク内に供給する。濃縮液は、消毒液タンク内において水によって希釈されて使用される。
前面パネル17には、排紙口23が設けられている。排紙口23は、洗浄履歴情報が印字されたプリントを排出する。洗浄履歴情報は、例えば、洗浄を実施した日時、洗浄担当者名、洗浄した内視鏡12のIDなどの情報である。洗浄履歴情報が印字されたプリントは、内視鏡12の洗浄消毒結果の確認、管理等に用いられる。
上部パネル19の前端部には、操作部24が設けられている。操作部24には、各種の操作指示を入力するための操作ボタン25、各種表示を行うディスプレイ26、及び読み取り部27が設けられている。操作ボタン25は、例えば、洗浄、消毒の開始を指示するスタートボタン、緊急停止を指示するためのストップボタン、ディスプレイ26に表示される操作画面を操作するための操作キーからなる。ディスプレイ26は、洗浄・消毒処理のメニューを選択する選択画面や各種設定を行うための設定画面を含む操作画面を表示する他、洗浄・消毒処理の進捗状況や残り時間、トラブル発生時の警告メッセージ等を表示する。
読み取り部27は、その内部にタグリーダ(図示せず)が配置されている。タグリーダは、内視鏡12に設けられたRFIDタグや、洗浄担当者のネームプレートに設けられたRFIDタグと非接触で通信してRFIDタグ内の情報(内視鏡12のIDや洗浄担当者名など)を読み取る。
洗浄槽13の後方部分の底面には、廃液口28が設けられており、側面には、液面センサ29が設けられている。廃液口28は、洗浄槽13から使用済みの水、洗浄液、消毒液を排出する。液面センサ29は、例えば、アース電極及び検出電極に被測定物(導電性液体)が接触した場合に、両電極間に流れる電流を検知する電極式レベルセンサであり、洗浄槽13内に貯えられた液体の液面位置を検出する。
洗浄槽13の後方部分には、洗浄槽13の底面よりも一段高いテラス部13b、13cが設けられている。各テラス部13b、13cは、後方部分の2つの角にそれぞれ設けられている。一方のテラス部13bには、気密試験ポート30が設けられている。気密試験ポート30は、内視鏡12の挿入部及びユニバーサルコードの外皮と内蔵物の隙間に圧縮エアを送り込み、外皮に液体が進入する小さな孔や亀裂が生じていないかを試験するためのポートである。
また、テラス部13bには、内視鏡12の洗浄、消毒に用いる液体を洗浄槽13内に供給する供給ポートが設けられている。供給ポートには、洗浄槽13内に向けて屈曲された給水ノズル31a、消毒液供給ノズル31b、洗剤供給ノズル31cが設けられている。これらのノズル31a〜31cは、洗浄槽13内に貯えられる液体の液面よりも高い位置に配置されている。
給水ノズル31aは、洗浄槽13内に水を供給し、洗剤供給ノズル31cは、洗剤タンク内に貯えられている洗剤を洗浄槽13内に供給する。消毒液供給ノズル31bは、消毒液タンク内に貯えられている消毒液を洗浄槽13内に供給する。
テラス部13bの側面には、洗浄槽13内の液体に水流を生じさせるために、洗浄槽13に貯えられた液体を吸引して、循環させるための吸引口32が設けられている。給水ノズル31aは、循環用のノズルとしても使用され、吸引口32から吸引された液体は、配管を通って給水ノズル31aから再び洗浄槽13に供給される。
テラス部13cには、内視鏡12の送気・送水チャンネル、吸引チャンネル及び鉗子チャンネル内の洗浄、消毒に用いられるチャンネル洗浄ポート33が設けられている。チャンネル洗浄ポート33には、送気・送水チャンネル用カプラ、吸引チャンネル用カプラが設けられている。各カプラは、図示しない接続チューブを介して、内視鏡12に設けられた送気・送水ボタン及び吸引ボタンのそれぞれの装着口と接続される。チャンネル洗浄ポート33は、水、洗浄液、消毒液、アルコール、及び圧縮エア等の液体及び気体を、送気・送水チャンネル、鉗子チャンネル及び吸引チャンネル内に供給する。
図3に示すように、洗浄槽13の前方部分の底面には、洗浄槽13の形状に合わせて円板状の振動板35が配置されている。振動板35は、例えばステンレスなどの耐エロージョン性の高い材料で形成されている。この振動板35上には、内視鏡12が載置される略円形のネット36が配置されている。ネット36は、内視鏡12と底面との間に液体が流れ込む隙間を作り、洗浄槽13に供給される液体が、内視鏡12の外表面に接触する面積を増加させる。
ネット36の中央には、内視鏡12から取り外された、送気・送水ボタンや吸引ボタンなどの小物部品を収容する小物洗浄かご37が配置されている。小物洗浄かご37の近傍には、噴射ノズル38や温度センサ(図示せず)が配置されている。噴射ノズル38は、上方に位置するトップカバー16に向けて水を噴射する。温度センサは、洗浄槽13内に貯えられた液体の温度を測定する。洗浄槽13の下部には、洗浄槽13内の液体を加熱するヒータ(図示せず)が設けられており、ヒータは、温度センサが測定する温度によって制御される。
内視鏡12は、被検体内に挿入される挿入部及びユニバーサルコードが巻き回された状態で、小物洗浄かご37の周囲を取り囲むようにして、ネット36上に載置される。
図4に示すように、振動板35は、洗浄槽13の底面から僅かに上方に離れた位置で固定されている。振動板35の周縁部と底面との間には、防振及び液漏れ防止のためにリング状のパッキン39が設けられている。また、振動板35の周縁部には、鉛直下方に長く延びた複数のスタッド40が設けられている。各スタッド40は、パッキン39及び洗浄槽13の底部を貫通して、この底部の下面から下方に突出している。
各スタッド40の先端部はネジ切りされており、この先端部にはナット41が締結されている。ナット41は、スタッド40を介して、振動板35を洗浄槽13に固定する。なお、ナット41と洗浄槽13の底部との間には、ワッシャ42及びスプリングワッシャ43が設けられている。
洗浄槽13の底部には、パッキン39よりも内側で開口した開口部44が形成されている。振動板35の下面には、開口部44により空いたスペースに複数のボルト締めランジュバン型超音波振動子(Bolt-clamped Langevin type Transducer:以下、BLTと略す)45が設けられている。各BLT45は、接着剤46と、振動板35を上面側から下面側に貫通するBLT固定用ボルト47とで、振動板35に固定されている。各BLT45は、交流駆動電圧(以下、駆動電圧と略す)の印加により振動して、振動板35を振動させる。
図5に示すように、洗浄消毒装置10は、CPU(中心周波数調整手段)50によって、装置の各部が統括的に制御される。CPU50には、操作部24、ディスプレイ26の他に、メモリ51、洗浄消毒機構52、BLT駆動回路53等が接続している。CPU50は、操作部24からの操作指示の入力によって、制御プログラムを実行し、洗浄消毒機構52やBLT駆動回路53を制御する。なお、図中では、CPU50と装置の各部との間で遣り取りされる信号、及びCPU50の内部で遣り取りされる信号を点線で表示している。
メモリ51は、制御プログラムや各種設定情報が格納されるROMと、ROMからロードしたプログラムをCPU50が実行する際の作業領域となるRAMとからなる。洗浄消毒機構52は、洗浄液や消毒液を洗浄槽13に供給するための配管、洗浄槽13の給排液を行うためのポンプ、配管の経路を切り換えるための電動弁、液面センサ、温度センサ、及びCPU50の制御の下、これらを駆動するための各種のドライバからなり、内視鏡12の洗浄消毒処理を実行する。この洗浄消毒処理は、大別して、超音波洗浄工程、洗浄工程、消毒工程の3つの工程からなる。
BLT駆動回路53は、CPU50の制御の下、各BLT45に駆動電圧を印加して振動させるとともに、この駆動電圧及び駆動周波数を調整する。BLT駆動回路53は、周波数サーチモードと、通常モードとからなる2つの動作モードで作動される。
周波数サーチモードは、ドライブ回路61から印加される駆動電圧と、この駆動電圧によって生じる電流との位相差がほぼゼロとなるような各BLT45の共振周波数をサーチするモードである。通常モードは、周波数サーチモードで決定した共振周波数を基準にして各BLT45を駆動して、内視鏡12を超音波洗浄するモードである。
電源55は、洗浄消毒装置10の各部に電力を供給する。この電源55には、絶縁トランス56が接続している。絶縁トランス56は、電源55から供給される交流電力の電圧を、予め設定された電圧(例えば50V)に変換してBLT駆動回路53へ出力する。
BLT駆動回路53には、電源回路58、セレクタ回路59、スイッチ回路60、ドライブ回路(駆動手段)61、電流検出回路62、出力トランス63、及びPLL回路(駆動周波数制御手段)64が設けられている。
電源回路58は、CPU50の制御の下、絶縁トランス56から入力される交流電力を直流電力に変換してドライブ回路61へ供給する。また、電源回路58は、ドライブ回路61へ供給する直流電力の電圧をCPU50が指定した大きさに調整する。
セレクタ回路59は、CPU50、スイッチ回路60、及びPLL回路64にそれぞれ接続している。セレクタ回路59は、CPU50の制御の下、CPU50及びPLL回路64からそれぞれ入力される周波数信号のいずれか一方をスイッチ回路60へ出力する。以下、CPU50からの周波数信号をスイッチ回路60へ出力する状態を「CPU接続状態」といい、PLL回路64からの周波数信号をスイッチ回路60へ出力する状態を「PLL接続状態」という。
スイッチ回路60は、CPU50の制御の下、ドライブ回路61のON/OFFを切り替える。例えばスイッチ回路60は、ドライブ回路61をONする場合、セレクタ回路59から入力される周波数信号をそのままドライブ回路61へ出力する。逆に、ドライブ回路61をOFFする場合、スイッチ回路60は、セレクタ回路59から入力される周波数信号を遮断する。
ドライブ回路61は、スイッチ回路60から入力される周波数信号に基づき、周波数信号58から入力される直流電力を、周波数信号と同じ周波数の交流電力に変換する。これにより、ドライブ回路61から出力トランス63に、周波数信号と同じ周波数の駆動電圧が印加される。
ドライブ回路61と出力トランス63とを接続する信号線路上には、コンデンサ66と、電流検出回路62とが直列に並べて設けられている。電流検出回路62は、例えばカレントトランスなどが用いられ、ドライブ回路61から印加される駆動電圧により生じる電流を検出して電圧信号に変換する。この電圧信号は、電流の位相を示す電流位相信号となる。
出力トランス63は、ドライブ回路61から入力される駆動電圧を所定の大きさに昇圧した後、この駆動電圧を各BLT45に印加する。各BLT45は、互いに並列接続されている。また、各BLT45には、1つの位相補正インダクタ67が直列接続し、さらに位相補正インダクタ67は出力トランス63に接続している。
位相補正インダクタ67は、コイルであり、駆動電圧と電流の位相が小さくなるように位相を補正する。位相補正インダクタ67のリアクタンスは、BLT45の固有インピーダンスに応じて決められる。
PLL回路64は、CPU50の制御の下、ドライブ回路61に向けて周波数信号を出力し、このドライブ回路61から出力される駆動電圧の駆動周波数を制御する。PLL回路64は、セレクタ回路59と、電流検出回路62と、電流検出回路62と出力トランス63の間の信号線路とに接続している。これにより、PLL回路64には、電流検出回路62からの電流位相信号と、ドライブ回路61からの駆動電圧とが入力される。この駆動電圧は、電流との位相の比較に用いられるものであり、以下、電圧位相信号という。
PLL回路64は、位相検出回路(Position Sensitive Detector:以下、PSD回路と略す)69、電圧制御発振回路(Voltage Controlled Oscillator:以下、VCO回路と略す)70、及び図示しないループフィルタと分周器から構成されている。PSD回路69は、PLL回路64に入力された電圧位相信号及び電流位相信号に基づき、駆動電圧と電流の位相差を検出する。
図6に示すように、PSD回路69は、電圧位相信号及び電流位相信号の立ち上がりを比較して、一方の信号が立ち上がってから他方の信号が立ち上がるまでの間、位相差信号を出力する。位相差の大きさは、例えば、電圧位相信号及び電流位相信号の周期をT(sec)とし、一方の信号の立ち上がりに対する他方の信号の立ち上がりの遅れをΔt(sec)としたときに、Δt/T×100(%)で表される。
図5に戻って、VCO回路70は、PSD回路69から入力される位相差検出信号に基づき、駆動電圧と電流の位相差がゼロとなるように、ドライブ回路61へ出力する周波数信号の周波数を制御する。この周波数信号の周波数は、CPU50により設定された中心周波数と周波数幅とで定まる制御範囲内で制御される。例えば、CPU50により設定された中心周波数が36.0kHzで、周波数幅が±1.0kHzの場合、VCO回路70は、出力する周波数信号の周波数を35.0kHz〜37.0kHzの範囲内で制御することができる。なお、上述の中心周波数は、周波数サーチモードでサーチされた共振周波数である。
CPU50は、メモリ51から読み出したプログラムを逐次実行することで、モード切替制御部72、駆動電圧制御部73、BLT駆動制御部74、PLL駆動制御部75、周波数信号発生部76、周波数サーチ制御部77、周波数決定部78として機能する。
モード切替制御部72は、セレクタ回路59を制御して、BLT駆動回路53の動作モードの切替制御を行う。モード切替制御部72は、BLT駆動回路53を周波数サーチモードに切り替える場合、セレクタ回路59をCPU接続状態(図7参照)に切り替える。これにより、周波数信号発生部76からの周波数信号に基づき、BLT45の駆動周波数が制御される。周波数サーチモードへの切り替えは、超音波洗浄工程において超音波洗浄が実行可能になったとき、例えば、洗浄槽13に洗浄液が貯留されたときに実行される。
また、モード切替制御部72は、BLT駆動回路53を通常モードに切り替える場合、セレクタ回路59をPLL接続状態に切り替える。これにより、PLL回路64からの周波数信号に基づき、BLT45の駆動周波数が制御される。通常モードへの切り替えは、周波数サーチモードの終了後に行われる。
駆動電圧制御部73は、BLT駆動回路53の動作モードに応じて、電源回路58を制御し、ドライブ回路61から各BLT45に印加される駆動電圧の大きさを調整する。駆動電圧制御部73は、駆動電圧を、通常モード時よりも周波数サーチモード時の方を低く調整する。例えば、通常モード時には、駆動電圧が通常電圧(例えば50V)に調整され、周波数サーチモード時には、駆動電圧が低電圧(例えば10V)に調整される。
BLT駆動制御部74は、スイッチ回路60を制御して、ドライブ回路61のON/OFFを切り替える。PLL駆動制御部75は、PLL回路64からの周波数信号の出力のON/OFFの切り替え、及び周波数サーチモードでの結果に基づき、PLL回路64による周波数の制御範囲(中心周波数、周波数幅)を設定する。また、PLL駆動制御部75は、周波数サーチモード時に、PSD回路69を作動させて上述の位相差信号の出力を実行させる。
周波数信号発生部76は、周波数サーチモード時に作動して、セレクタ回路59に向けて周波数信号を出力する。
周波数サーチ制御部77は、周波数サーチモード時に作動して、周波数信号発生部76が出力する周波数信号の周波数を所定の周波数範囲内で段階的に可変させる、いわゆる周波数スイープを行う。具体的に、周波数信号の周波数は、35.0kHzから40kHzまで0.1kHz刻みで可変される。この際、周波数サーチ制御部77は、次の周波数の周波数信号の出力と、その一つ前の周波数の周波数信号の出力との間に、0.01秒以上で0.5秒以内の間隔があくように周波数信号発生部76を制御する。
また、周波数サーチ制御部77は、周波数信号発生部76からの周波数信号の出力に応じてPSD回路69から出力される位相差信号を受信して、この位相差信号に基づき、上述の図6で説明した駆動電圧と電流の位相差の大きさを示す位相差値[Δt/T×100(%)]を求める。この位相差値は、可変される周波数信号の周波数毎に求められ、それぞれ周波数信号の周波数の値に関連付けてメモリ51内の位相差情報データ80に登録される。
周波数決定部78は、周波数スイープが終了したときに、メモリ51内の位相差情報データ80を参照して、周波数毎の位相差値を比較することにより、その時点におけるBLT45の共振周波数をPLL回路64の中心周波数として決定する。この中心周波数の値は、PLL駆動制御部75に入力された後、PLL回路64に設定される。
次に、図7を用いて、PLL回路64の中心周波数の自動調整処理の流れについて説明する。周波数サーチモードへの移行条件が満たされたときに、括弧付き数字(1)に示すように、BLT駆動制御部74は、スイッチ回路60に対してドライブ回路ON指令を発して、ドライブ回路61をONさせる。
次いで、括弧付き数字(2)に示すように、モード切替制御部72は、セレクタ回路59に対して周波数サーチモード切替指令を発する。セレクタ回路59は、周波数サーチモード切替指令を受けてCPU接続状態に切り替わる。これにより、BLT駆動回路53の動作モードが周波数サーチモードに切り替えられて、周波数信号発生部76、周波数サーチ制御部77、PSD回路69が作動して、周波数スイープが開始される。
括弧付き数字(3)に示すように、周波数サーチ制御部77は、周波数信号発生部76に対して、周波数f=35.0kHzの周波数信号を出力する信号出力指令を発する。周波数信号発生部76は、信号出力指令を受けて、括弧付き数字(4)に示すように、f=35.0kHzの周波数信号を所定時間出力する。この周波数信号は、セレクタ回路59、スイッチ回路60を経由してドライブ回路61に入力する。
括弧付き数字(5)に示すように、ドライブ回路61は、CPU50から入力される周波数信号に基づき、35.0kHzの駆動電圧を出力トランス63に印加する。これにより、出力トランス63により昇圧された駆動電圧が各BLT45に印加され、各BLT45が振動を開始する。
このとき括弧付き数字(6)に示すように、電流検出回路62は、駆動電圧の印加により生じる電流を検出して電圧信号に変換し、この電圧信号を電流位相信号としてPSD回路69へ出力する。また、括弧付き数字(7)に示すように、PSD回路69には、駆動電圧が電圧位相信号として入力される。
括弧付き数字(8)に示すように、PSD回路69は、入力された電圧位相信号及び電流位相信号の位相差信号を周波数サーチ制御部77へ出力する。
周波数サーチ制御部77は、PSD回路69から入力される位相差信号に基づき、電圧と電流の位相差値[Δt/T×100(%)]を求める。なお、Δtは、所定時間内の平均値を使用してもよいし、あるいは周波数信号の出力が開始されてから所定時間経過後の値を使用してもよい。次いで、周波数サーチ制御部77は、括弧付き数字(9)に示すように、求めた35.0kHz時の位相差値を、メモリ51の位相差情報データ80に登録する。
次いで、周波数サーチ制御部77は、周波数信号発生部76による35.0kHzの周波数信号の出力停止後、CPU50の内蔵タイマ(図示せず)等を使用して計時を開始する。そして、周波数サーチ制御部77は、0.01秒以上で0.5秒以内の所定時間が経過した後、括弧付き数字(10)に示すように、周波数信号発生部76に対して、35.1kHzの周波数信号の出力を指令する周波数増加信号出力指令を発する。
周波数信号発生部76は、周波数増加信号出力指令を受けて、再び括弧付き数字(4)に示すように、f=35.1kHzの周波数信号を所定時間出力する。これにより、上述の駆動電圧印加、電流位相信号出力、電圧位相信号出力、位相差信号出力、位相差値格納が順番に実行されて、f=35.1kHz時の位相差値が位相差情報データ80に登録される。
この際、35.0kHzの周波数信号の出力が終了してから、35.1kHzの周波数信号の出力を開始するまでの間に、0.01秒以上の時間間隔をあけるようにしたので、BLT駆動回路53やBLT45に35.0kHzの信号の影響が残ることが防止される。その結果、35.1kHz駆動時の正確な位相差値が得られる。また、時間間隔の上限を0.5秒とすることで、周波数スイープに要する時間が著しく長くなることが防止される。この時間間隔は、0.01秒〜0.5秒の範囲内で、1つ前の周波数の影響が残らない最も短い時間を適宜決定すればよい。
以下同様にして、上述の括弧付き数字(10)、(4)〜(9)の処理が繰り返し実行されて、0.1kHz刻みでf=35.2kHzから40kHzまでの位相差値が位相差情報データ80に順次登録される。
図8に示すように、位相差値は、周波数信号の周波数fがBLT45の共振周波数に近づくのに従って0%に近づき、共振周波数に一致したときに0%となる。また、位相差値は、周波数fが共振周波数から遠ざかるのに従って位相差値は増加する。なお、上述の図14に示したように、周波数fが反共振周波数に近づく場合も位相差値は0%に近づき、反共振周波数に一致したときに0%となる。
図7に戻って、周波数サーチ制御部77は、周波数fが40kHz時の位相差値を位相差情報データ80に登録した後、括弧付き数字(11)に示すように、周波数決定部78に対して終了通知を送る。この終了通知を受けて、周波数決定部78は、中心周波数決定処理を開始する。
図9に示すように、周波数決定部78は、メモリ51内の位相差情報データ80を確認して、周波数毎の位相差値を比較する。周波数決定部78は、位相差値が最小となる周波数が1つしかない場合、この周波数を中心周波数として決定する。
また、上述の図14に示したように、周波数スイープ時における周波数の可変範囲内に反共振周波数が含まれている場合、位相差値が最小(約0%)となる周波数は複数存在する。この場合、周波数決定部78は、各周波数の大きさを比較して、これらの中で最小周波数を中心周波数として決定する。これにより、共振周波数を中心周波数として決定することができる。
図7に戻って、括弧付き数字(12)に示すように、周波数決定部78は、PLL駆動制御部75に対して、先に決定した中心周波数の値と、上述の予め設定された周波数幅の値(例えば±1.0kHz)とを入力する。
PLL駆動制御部75は、括弧付き数字(13)に示すように、PLL回路64に対して中心周波数及び周波数幅を設定する。以上で、PLL回路64の中心周波数の調整が完了する。
次に、図10を用いて上記構成の洗浄消毒装置10の作用について説明を行う。洗浄消毒装置10は、起動中に操作指示の入力を待機する。フットスイッチ20が踏み込み操作されると、連動機構によりトップカバー16が開放される。次いで、内視鏡12が洗浄槽13内のネット36上にセットされ、内視鏡12の送気・送水ボタン及び吸引ボタンのそれぞれの装着口が、チューブによってチャンネル洗浄ポート33の各カプラに接続される。内視鏡12のセットが完了した後、フットスイッチ20がもう一度踏み込まれると、トップカバー16が閉じる。
操作部24のスタートボタンが操作されると、CPU50は、ロック機構によりトップカバー16をロックする。次いで、CPU50は、洗浄消毒機構52及びBLT駆動回路53を制御して、超音波洗浄工程を開始させる。
洗浄消毒機構52は、洗浄槽13に水と洗剤(水だけでも可)を供給する。液面センサ29により、水と洗剤とが混合されてなる洗浄液の液面位置が規定値に達したことが検知されたときに、CPU50のBLT駆動制御部74によりスイッチ回路60がONされる。また、モード切替制御部72により、セレクタ回路59がCPU接続状態に切り替えられて、BLT駆動回路53が周波数サーチモードに切り替えられる。
周波数サーチモードへの切替後、駆動電圧制御部73は、電源回路58を制御して、各BLT45に印加する駆動電圧の大きさを低電圧に切り替える。この電圧切替後、上述の図7で説明した周波数スイープが実行されて、PLL回路64の中心周波数及び周波数幅が自動調整される。これにより、洗浄消毒装置10の出荷時やメンテナンス時において、LCRメータ等を用いた手動による中心周波数の調整が不要となり、さらに短時間で調整を行うことができる。特に洗浄消毒装置10が多数設置されている医療施設では、自動調整を行うことで、調整にかかる時間とコストが大幅に削減される。
また、周波数スイープを行う際に、各BLT45に印加される駆動電圧と電流の位相がずれている場合、各BLT45やBLT駆動回路53のインピーダンスが増加するが、駆動電圧が低電圧に設定されているため、これらの発熱は最小限に抑えられる。その結果、発熱等によるBLT45やBLT駆動回路53の故障や不具合の発生を防止することができる。なお、BLT45は、その特性上、駆動電圧の大きさがインピーダンスや共振周波数の値に影響を与えないので、駆動電圧を低くしても問題はない。
さらに、洗浄消毒装置10では、超音波洗浄の準備ができた時点で毎回、PLL回路64の中心周波数及び周波数幅の自動調整を行う。これにより、洗浄槽13内の洗浄液の液面位置、洗浄槽13内の内視鏡12のセット位置、内視鏡12のセット本数、内視鏡12の材質などの各種条件の変化によりBLT45のインピーダンスが変化し、この変化に伴いBLT45の共振周波数が変わった場合でも、これに対応した最適な中心周波数をPLL回路64に設定することができる。特に、内視鏡12のセット本数が増加した場合、BLT45の共振周波数の大幅な変動もありえるので、このような状況にも対応することができる。
中心周波数の自動調整処理が終了した後、モード切替制御部72は、セレクタ回路59をPLL接続状態に切り替える。これにより、BLT駆動回路53が通常モードに切り替えられる。通常モードへの切替後、駆動電圧制御部73は、電源回路58を制御して、BLT45に印加される駆動電圧の大きさを通常電圧に切り替える。
通常電圧への切替後、PLL駆動制御部75は、PLL回路64をONにする。これにより、PLL回路64から先に自動調整された中心周波数の周波数信号が出力される。この周波数信号は、セレクタ回路59、スイッチ回路60を経由してドライブ回路61に入力する。
ドライブ回路61は、PLL回路64から入力される周波数信号に基づき、この周波数信号と同じ周波数の駆動電圧を出力トランス63に印加し、この出力トランス63で昇圧された駆動電圧を各BLT45に印加する。これにより、各BLT45が振動して、振動板35を介して洗浄液を振動させることにより、内視鏡12の超音波洗浄が実施される。
この際に、PLL回路64は、駆動電圧と電流の位相差に基づき、先に設定された中心周波数と周波数幅とで規定される制御範囲内で、電圧と電流の位相差がほぼゼロとなるようにBLT45の駆動周波数を制御する。これにより、超音波洗浄中に、洗浄液の水面の揺れ等の影響でBLT45のインピーダンスが変化し、これに伴い共振周波数が変動した場合でも、駆動周波数を、変動する共振周波数に追尾させることができる。
所定の超音波洗浄時間が経過後、BLT駆動制御部74及びPLL駆動制御部75は、それぞれドライブ回路61、PLL回路64をOFFさせる。また、洗浄消毒機構52は、洗浄液を洗浄槽13から排出させる。これにより、超音波洗浄工程が終了する。
超音波洗浄工程の終了後、CPU50は、洗浄消毒機構52を制御して、洗浄工程を開始させる。洗浄消毒機構52は、最初に洗浄槽13に水と洗剤を供給し、洗浄液の液面位置が規定値に達したときに、吸引口32から洗浄液を吸引させる。吸引された洗浄液は、配管により循環され、給水ノズル31aから内視鏡12に向けて噴射され、外表面に付着した汚物を洗い流す。また、内視鏡12の各チャネル内にも洗浄液を流して洗浄する。所定の洗浄時間が経過後、洗浄液は洗浄槽13から排出され、洗浄工程が終了する。
なお、洗浄消毒機構52は、洗浄工程終了後、洗浄槽13内に水を供給し、この水を循環させて、内視鏡12の外表面、各チャネル内に残っている洗浄液をすすぎ流す。すすぎに使用された水も洗浄槽13から排出される。
すすぎ終了後、CPU50は、洗浄消毒機構52を制御して、消毒工程を開始させる。洗浄消毒機構52は、洗浄槽13に消毒液を供給する。以下、洗浄工程と同様に、消毒液は、洗浄槽13及び内視鏡12の各チャネル内を循環され、超音波洗浄工程や洗浄工程で洗い流されなかった病原菌やウイルスを除去し、または病原性を消失させる。所定の消毒時間が経過後、消毒液は洗浄槽13から排出されて、消毒工程が終了する。
洗浄消毒機構52は、消毒工程終了後、洗浄工程終了後と同様に洗浄槽13内への水の供給と、水の循環とを順次実行して、内視鏡12の外表面、各チャネル内に残っている消毒液をすすぎ流す。なお、すすぎの終了後、内視鏡12の各チャネル内をアルコールにより乾燥させる乾燥工程を実施しても良い。
以上で洗浄消毒処理の全工程が終了する。CPU50は、トップカバー16のロックを解除する。次いで、トップカバー16が開放され、洗浄槽13から内視鏡12が取り出される。
次に、図11を用いて本発明の第2実施形態の洗浄消毒装置82について説明を行う。この洗浄消毒装置82は、上記第1実施形態の洗浄消毒装置10と基本的に同じ構成であり、上記第1実施形態と機能・構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
洗浄消毒装置82は、周波数サーチモード時に求められた中心周波数の履歴を記憶し、この履歴に基づき、BLT45の作動に不具合が生じるまでの時間(以下、寿命時間という)を予測する。ここで、BLT45の作動の不具合とは、BLT45の偶発故障、接着剤46の接着不良あるいは劣化、ナット41の締結不良あるいは緩みなどに起因する不具合である。
洗浄消毒装置82では、周波数決定部78が中心周波数を決定するたびに、この中心周波数の値を、メモリ51内の周波数履歴情報83に逐次登録する。また、このとき、中心周波数の値とともに、BLT45の累積駆動時間も同時に登録される。この周波数履歴情報83に、最初に登録された図中No1の中心周波数は、メーカにて行われた出荷検査で得られた中心周波数(以下、初期中心周波数という)である。
洗浄消毒装置82のCPU84は、上述の図5に示した各部の他に、不具合予測部86、警告表示制御部87、累積時間カウンタ88として機能する。不具合予測部86は、周波数履歴情報83を参照して、寿命時間を予測する。警告表示制御部87は、不具合予測部86の予測結果に基づき、ディスプレイ26にメンテナンス等を促す警告を表示させる。
累積時間カウンタ88は、BLT45の累積駆動時間をカウントする。なお、累積時間カウンタ68は、不揮発メモリ等を備えており、洗浄消毒装置82の電源がOFFされた場合でも累積駆動時間の検出結果が消失しないように、この検出結果を不揮発メモリに逐次保存する。
図12を用いて、上記構成を有する洗浄消毒装置82の警告表示処理の流れを説明する。なお、警告表示処理以外の処理の流れは上記第1実施形態と同じであるため、説明は省略する。
周波数決定部78は、中心周波数の決定を行った後、累積時間カウンタ91から入力される累積駆動時間情報に基づき、中心周波数の値とBLT45の累積駆動時間とを対応付けて周波数履歴情報83に登録する。この登録が行われると、不具合予測部86が作動を開始する。不具合予測部86は、新たに登録された中心周波数の値と、初期中心周波数の値との差分を求め、この差分が予め定められたしきい値を超えるか否かを判定する。このしきい値は、初期中心周波数からのずれを許容できる許容周波数幅に基づき決定される。例えば、許容周波数幅が±1.5kHzである場合、しきい値は±1.0kHzに設定される。
不具合予測部86は、求めた差分の絶対値が1.0kHzを超えない場合、周波数履歴情報83に新たに登録される中心周波数の監視を継続する。逆に、差分の絶対値が1.0kHzを超えた場合、不具合予測部86は、周波数履歴情報83から、差分の絶対値が1.0kHzを超えるまでに要したBLT45の累積駆動時間を読み出す。
次いで、不具合予測部86は、読み出した累積駆動時間に基づき、差分の絶対値が1.5kHzを超える寿命時間を予測する。例えば、差分の絶対値が1.0kHzを超えるまでに要したBLT45の累積駆動時間が1000時間である場合、寿命時間は500時間と予測することができる。不具合予測部86は、この予測結果を警告表示制御部87へ送る。
警告表示制御部87は、不具合予測部86から入力された予測結果に基づき、ディスプレイ26に500時間以内にメンテナンス等を行う必要がある旨の警告を表示させる。これにより、メンテナンスを行う時期を容易に判断することができる。また、メンテナンスの実行を促すことができる。
以下、メンテナンスが施されるまで、周波数スイープが行われる度に、上述の寿命時間の予測と警告表示が繰り返し実行される。なお、メンテナンスでBLT45や振動板35等を交換した場合には、この交換後に最初に得られた中心周波数を初期中心周波数として設定する。
なお、寿命時間を予測する方法は、上述の方法に限定されず、例えば、初期中心周波数からの周波数のずれ量と、このずれ量に応じた寿命時間とを関連付けた寿命時間予測テーブルを作成しておき、この寿命時間予測テーブルを参照して、寿命時間の予測を行ってもよい。
上記各実施形態では、通常モード時及び周波数サーチモード時におけるBLT45の駆動電圧をそれぞれ50V、10Vに設定しているが、これらは適宜変えてもよい。特に、周波数サーチモード時における駆動電圧は、BLT45やBLT駆動回路53が故障しない電圧であればよく、この電圧は実験等で求められる。
上記第各実施形態では、超音波洗浄工程が開始されるたびに、中心周波数等の自動調整処理を行うが、例えば、この自動調整処理を所定期間ごとに定期的(例えば、1週間に1回など)に行ってもよい。また、操作部24からの操作指示により、任意のタイミングで設定処理を行えるようにしてもよい。
上記各実施形態では、超音波振動子としてBLTを例に挙げて説明したが、超音波振動子の種類は特に限定されない。また、上記実施形態では、周波数スイープを行う際に、周波数信号の周波数を35.0kHzから40kHzまで0.1kHz刻みで可変しているが、その周波数範囲、刻み幅は任意に設定してよい。
上記各実施形態では、内視鏡12に超音波洗浄を施す洗浄消毒装置を例に挙げて説明を行ったが、被洗浄物は内視鏡に限定されるものでなく、把持鉗子、高周波メスなど、内視鏡とともに使用される処置具などの各種医療器具の洗浄に用いられる各種の超音波洗浄装置に本発明を適用することができる。