JP5332275B2 - シリコン製ノズル基板の製造方法、液滴吐出ヘッドの製造方法、及び液滴吐出装置の製造方法 - Google Patents

シリコン製ノズル基板の製造方法、液滴吐出ヘッドの製造方法、及び液滴吐出装置の製造方法 Download PDF

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本発明は、シリコン製ノズル基板、シリコン製ノズル基板を備えた液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドを搭載した液滴吐出装置、シリコン製ノズル基板の製造方法、シリコン製ノズル基板の製造方法を適用した液滴吐出ヘッドの製造方法、及び液滴吐出ヘッドの製造方法を適用した液滴吐出装置の製造方法に関する。
液滴を吐出するための液滴吐出ヘッドとして、例えばインクジェット記録装置に搭載されるインクジェットヘッドが知られている。インクジェットヘッドは、一般に、インク滴を吐出するための複数のノズル孔が形成されたノズル基板と、このノズル基板に接合されノズル基板との間で上記ノズル孔に連通する吐出室、リザーバ等のインク流路が形成されたキャビティ基板とを備え、駆動部により吐出室に圧力を加えることによって、インク液を選択されたノズル孔から吐出するように構成されている。駆動手段としては、静電気力を利用する方式や、圧電素子による圧電方式、発熱素子を利用するバブルジェット(登録商標)方式等がある。
近年、インクジェットヘッドに対して、印刷速度の高速化及びカラー化を目的としてノズル列を複数有する構造が求められており、さらに加えて、ノズルは高密度化するとともに1列あたりのノズル数が増加して長尺化しており、インクジェットヘッド内のアクチュエータ数は益々増加している。このため、ノズル密度が高く、長尺かつ多数のノズル列を有する、小型で耐久性、吐出特性に優れたインクジェットヘッドが要求され、従来から様々な工夫、提案がなされている。
従来のノズル基板は、ノズル孔の内壁にインク保護膜をスパッタで形成し、液滴吐出面に中間膜をスパッタで形成して、その上に撥水膜をスプレー塗布で形成していた(例えば、特許文献1参照)。
特開2006−341506号公報(第4頁、図1A−図1B)
特許文献1記載の技術では、ノズル孔の内壁におけるインク保護膜の被覆性が不十分であるため、ノズル孔内壁のインク保護膜が浸食され、シリコン基板側まで浸食されるおそれがあった。また、吐出特性にも問題があった。
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、被覆性がよく、ノズル孔の内壁等が吐出液によって浸食されず、耐久性、吐出特性に優れたシリコン製ノズル基板、シリコン製ノズル基板を備えた液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドを搭載した液滴吐出装置、シリコン製ノズル基板の製造方法、シリコン製ノズル基板の製造方法を適用した液滴吐出ヘッドの製造方法、及び液滴吐出ヘッドの製造方法を適用した液滴吐出装置の製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係るシリコン製ノズル基板は、液滴を吐出するためのノズル孔を有し、ノズル孔近傍の液滴吐出側にノズル孔の吐出口と連通し液滴吐出側に開口する吐出凹部を備え、吐出凹部の内壁からノズル孔の内壁を経て液滴吐出側の面と反対側の面まで連続する耐吐出液保護膜を形成したものである。
耐吐出液保護膜が吐出凹部の内壁からノズル孔の内壁を経て液滴吐出側の面と反対側の面まで連続して形成され、被覆性がよいので、吐出凹部やノズル孔の内壁が液滴に浸食されることがなく、耐久性に優れる。
本発明に係るシリコン製ノズル基板に形成された耐吐出液保護膜は、熱酸化保護膜である。
耐吐出液保護膜が熱酸化によって連続形成されているので、均一性を確保することができる。
本発明に係るシリコン製ノズル基板は、耐吐出液保護膜の液滴吐出側の面を撥水性にし、ノズル孔の吐出口縁部より内壁側を親水性にした。
ノズル孔の内壁はノズル孔の吐出口縁部まで親水性であるため、液滴吐出側の面への液滴残留がなく、飛行曲がりのない良好な吐出特性を得ることができる。
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、上記のシリコン製ノズル基板を備えたものである。
耐久性に優れ、良好な吐出特性を有する液滴吐出ヘッドを得ることができる。
本発明に係る液滴吐出装置は、上記の液滴吐出ヘッドを搭載したものである。
耐久性に優れ、良好な吐出特性を有する液滴吐出ヘッドを搭載した液滴吐出装置を得ることができる。
本発明に係るシリコン製ノズル基板の製造方法は、シリコン基材をドライエッチングして第1の凹部を形成する工程と、第1の凹部を形成した側の面と反対側の面からシリコン基材をウェットエッチングして第2の凹部を形成し、第1の凹部を開口してノズル孔とする工程と、シリコン基材の表面に耐吐出液保護膜を形成する工程と、ノズル孔を形成した側の面に支持基板を貼り合わせ、第2の凹部を形成した側の面を薄板化し、第2の凹部を吐出凹部とする工程と、吐出凹部を形成した側の面に撥水膜を形成する工程と、吐出凹部を形成した側の面をサポート部材によって保護して支持基板を剥離し、剥離した側の面から親水化処理し、サポート部材を剥離する工程とを有するものである。
ウェットエッチングで第1の凹部を開口するので、ノズル孔を研削により開口する場合と比較して、チッピング、ディッシング等のノズル孔の形状崩れが発生しない。
また、シリコン基材の薄板化工程が研削加工のみで済み、ポリッシュが必要ない。
本発明に係るシリコン製ノズル基板の製造方法は、耐吐出液保護膜をシリコン基材の熱酸化によって形成するものである。
耐吐出液保護膜がシリコン基材の熱酸化によって一度に連続形成されるので、耐吐出液保護膜の均一性を確保することができる。
本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、上記のシリコン製ノズル基板の製造方法を適用して液滴吐出ヘッドのノズル基板部分を形成するものである。
耐久性に優れ、吐出特性の良い液滴吐出ヘッドを得ることができる。
本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、上記の液滴吐出ヘッドの製造方法を適用して液滴吐出装置を製造するものである。
耐久性に優れ、吐出特性の良い液滴吐出ヘッドを搭載した液滴吐出装置を得ることができる。
実施の形態1.
図1は本実施の形態1に係るインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッドの一例)の一部を断面で示した分解斜視図、図2は図1を組立てた状態の要部を示す縦断面図、図3は図2のノズル孔の近傍を拡大して示した縦断面図である。
インクジェットヘッド10は、図1および図2に示すように、複数のノズル孔11が所定のピッチで設けられたノズル基板1と、各ノズル孔11に対して独立にインク供給路が設けられたキャビティ基板2と、キャビティ基板2の振動板22に対峙して個別電極31が配設された電極基板3とを貼り合わせることにより構成されている。
ノズル基板1は、シリコン単結晶基材(以下、単にシリコン基材ともいう)から作製され、液滴(インク滴)を吐出するためのノズル孔11が開口されている。各ノズル孔11は、図3に示すように、例えば、径の異なる2段の円筒状に形成されたノズル孔部分、すなわち、吐出凹部(後述)側に開口する径の小さい吐出部(第1のノズル孔部)11aと、キャビティ基板2と接合する接合面1e側に位置して後端が接合面1eに開口する径の大きい導入部(第2のノズル孔部)11bとから構成され、基板面に対して垂直にかつ同心状に形成されている。
液滴吐出面(液滴吐出側の面)1aは、図3に示すように、吐出平面1bと吐出凹面(吐出凹部の内壁)1cとからなり、吐出凹面1cは液滴吐出側に拡径して開口する逆円錐台形状の吐出凹部12を形成する。そして、吐出凹部12は、その底面1dにおいてノズル孔11の径の小さい吐出部11aの先端と連通しており、ノズル孔11と同心状に形成されている。
液滴吐出面1aの吐出凹面1cからノズル孔11の内壁11cを経て、液滴吐出面1aと反対側の面である接合面1eまでは、連続して熱酸化膜が形成されており、耐吐出液保護膜Aを構成している。
液滴吐出面1aの吐出平面1bと吐出凹面1cには、シロキサンを原料とするプラズマ重合膜13が形成され、その上にはフッ素原子を含むシリコン化合物を主成分とする撥水膜(撥インク膜)14が形成されている。そして、ノズル孔11の吐出口縁部11dを境にして、ノズル孔11の内壁11cから接合面1eには、親水膜(親インク膜)15が形成されている。
キャビティ基板2は、シリコン単結晶基材(この基材も以下、単にシリコン基材ともいう)から作製されている。そして、シリコン基材に異方性ウェットエッチングを施し、インク流路の吐出室24、リザーバ25をそれぞれ構成するための凹部240、250、及びオリフィス23を構成するための凹部230が形成される。
凹部240はノズル孔11に対応する位置に独立に複数形成される。したがって、ノズル基板1とキャビティ基板2を接合した際、各凹部240は吐出室24を構成し、それぞれがノズル孔11に連通し、またインク供給口であるオリフィス23ともそれぞれ連通している。そして、吐出室24(凹部240)の底壁が振動板22となっている。
他方の凹部250は、液状のインクを貯留するためのものであり、各吐出室24に共通のリザーバ(共通インク室)25を構成する。そして、リザーバ25(凹部250)はそれぞれオリフィス23を介して全ての吐出室24に連通している。また、リザーバ25の底部には後述する電極基板3を貫通する孔が設けられており、この孔で形成されたインク供給孔34を通じて図示しないインクカートリッジからインクが供給されるようになっている。
また、キャビティ基板2の全面、もしくは少なくとも電極基板3との対向面には、シリコン酸化膜等からなる絶縁膜26が形成されており、この絶縁膜26は、インクジェットヘッドを駆動させたときに、絶縁破壊や短絡を防止する。
電極基板3は、ガラス基材から作製されている。このガラス基材は、キャビティ基板2のシリコン基材と熱膨張係数の近い硼珪酸系の耐熱硬質ガラスを用いるのが好ましい。これは、電極基板3とキャビティ基板2とを陽極接合する際、両基板3、2の熱膨張係数が近いため、電極基板3とキャビティ基板2との間に生じる応力を低減することができ、その結果、剥離等の問題を生じることなく電極基板3とキャビティ基板2とを強固に接合することができるからである。
電極基板3のキャビティ基板2と対向する面には、キャビティ基板2の各振動板22に対向する位置にそれぞれ凹部32が設けられている。そして、各凹部32内には、一般に、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)からなる個別電極31が形成されており、振動板22と個別電極31との間に形成されるギャップ(空隙)Gは、インクジェットヘッドの吐出特性に大きく影響する。なお、個別電極31の材料にはクロム等の金属等を用いてもよいが、ITOは透明であるので放電したかどうかの確認が行いやすいため、一般にITOが用いられている。
個別電極31は、リード部31aと、フレキシブル配線基板(図示せず)に接続される端子部31bとを有する。端子部31bは、図2に示すように、配線のためにキャビティ基板2の末端部が開口された電極取り出し部29内に露出している。
上述したノズル基板1、キャビティ基板2、及び電極基板3は、一般に個別に作製され、これらを図2に示すように貼り合わせることにより、インクジェットヘッド10の本体部が作製される。すなわち、キャビティ基板2と電極基板3は例えば陽極接合により接合され、そのキャビティ基板2の上面(図2の上面)にはノズル基板1が接着剤等により接合される。さらに、振動板22と個別電極31との間に形成されるギャップGの開放端部は、エポキシ等の樹脂による封止材27で封止されている。これにより、湿気や塵埃等がギャップG内へ侵入するのを防止することができる。
そして、図2に示すように、ICドライバ等の駆動制御回路4が、各個別電極31の端子部31bと、キャビティ基板2上に設けられた共通電極28とに、フレキシブル配線基板(図示せず)を介して接続されている。
上記のように構成されたインクジェットヘッド10において、駆動制御回路4によりキャビティ基板2と個別電極31との間にパルス電圧が印加されると、振動板22と個別電極31との間に静電気力が発生し、その吸引作用により振動板22が個別電極31側に引き寄せられて撓み、吐出室24の容積が拡大する。これにより、リザーバ25の内部に溜まっていたインクがオリフィス23を通じて吐出室24に流れ込む。次に、個別電極31への電圧の印加を停止すると、静電吸引力が消滅して振動板22が復元し、吐出室24の容積が急激に収縮する。これにより、吐出室24内の圧力が急激に上昇し、この吐出室24に連通しているノズル孔11からインク液滴が吐出される。
次に、インクジェットヘッド10の製造方法について、図4〜図9を用いて説明する。図4は本発明の実施の形態1に係るノズル基板1を示す上面図、図5〜図9はノズル基板1の製造工程を示す断面図(図4をイ−イ線で切断した断面図)である。図10、図11はキャビティ基板2と電極基板3との接合工程を示す断面図であり、ここでは、主に、電極基板3にシリコン基材200を接合した後に、キャビティ基板2を製造する方法を示す。
まず、最初に、図5〜図9により、ノズル基板1の製造方法を説明する。なお、以下に記載の数値はその一例を示すもので、これに限定するものではない。
(a) 図5(a)に示すように、シリコン基材100(ノズル基板1)を用意して熱酸化装置にセットする。
(b) 酸化温度1075℃、酸素と水蒸気の混合雰囲気中の条件で熱酸化処理を行い、図5(b)に示すように、シリコン基材100の表面、すなわち接合面100e(1e)と液滴吐出面100aに、厚みが例えば1.0μmのシリコン酸化膜(SiO2 膜)101を均一に形成する。
(c) 図5(c)に示すように、フォトリソグラフィー技術により、シリコン酸化膜101に、第2のノズル孔部11b(図6(f)参照)に対応する第2のパターニング部101bと、これと同心状に第1のノズル孔部11a(図6(f)参照)に対応する第1のパターニング部101aとを形成する。この場合、まず、第2のパターニング部101bをBHF(Buffered HF)によりハーフエッチングして形成し、次に、第1のパターニング部101aをその残し厚さが零になるようにBHFによりエッチングして形成する。こうして、2段のノズルパターニングを行う。
(d) 図6(d)に示すように、シリコン基材100をICPドライエッチングによって垂直に異方性ドライエッチングして、第1のノズル孔部11aを形成する。
(e) 図6(e)に示すように、シリコン酸化膜101をBHFによりエッチングして、第2のパターニング部101bの残し厚さが零になるようにする。
(f) 図6(f)に示すように、シリコン基材100をICPドライエッチングにより垂直に異方性ドライエッチングして、第2のノズル孔部11bを形成する。このとき、同時に第1のノズル孔部11aも同じ深さだけ垂直に異方性ドライエッチングされる。こうして、液滴吐出側が閉じられたノズル孔(第1の凹部)110が形成される。
(g) 図7(g)に示すように(図7(g)より図8(n)に至るまでは図6(f)のシリコン基材100の上下を逆転した図を示す)、液滴吐出面100aの酸化膜101をパターニングして、開口孔101cを形成する。
(h) 図7(h)に示すように、接合面100eをテフロン(登録商標)治具400によって保護し、シリコン基材100を25%水酸化カリウム水溶液に浸漬して異方性エッチングを行う。そして、逆円錐台形状の吐出凹部となる部分(第2の凹部)120を形成し、その底面100dにおいて、閉じられたノズル孔110の第1のノズル孔部11a側を開口して、ノズル孔11とする。
(i) シリコン基材100をフッ酸水溶液に浸漬し、図7(i)に示すように、熱酸化膜101を除去する。
(j) シリコン基材100を熱酸化装置にセットし、例えば、酸化温度1075℃、酸素と水蒸気の混合雰囲気中の条件で熱酸化処理し、図7(j)に示すように、例えば厚み0.1μmのシリコン酸化膜(SiO2 膜)102を均一に形成する。このシリコン酸化膜102は、液滴吐出面100aの吐出平面100bから吐出凹面100cを経て、ノズル孔11の内壁11cを通り、液滴吐出面100aと反対側の面である接合面100eまで連続する。
(k) 図8(k)に示すように、ガラス等の支持基板500に両面接着シート501を貼り付けて、両面接着シート501をシリコン基材100の接合面100eと向かい合わせ、これらを真空中で貼り合わせる。
次に、シリコン基材100の液滴吐出面100aをグラインダーによって研削し、薄板化する。このとき、吐出凹部となる部分120であって研削されずに残った部分はこの部分の酸化膜100が除去されず、吐出凹部12となって、研削後の液滴吐出面100a(1a)に対して段差を形成する。こうして、液滴吐出面100aの吐出凹面100cからノズル孔11の内壁11cを経て、液滴吐出面100aと反対側の面である接合面100eまで連続して形成された熱酸化膜102が、耐吐出液保護膜Aを構成する。
(l) 図8(l)に示すように、液滴吐出面100a(吐出平面100bと吐出凹面100c)に、シロキサンを原材料とするプラズマ重合膜13を形成する。
(m) 図8(m)に示すように、プラズマ重合膜13の上に、ディッピングによりフッ素原子を含むシリコン化合物を主成分とする撥水膜14を形成する。
(n) 図8(n)に示すように、液滴吐出面100a(吐出平面100bと吐出凹面100c)にダイシングテープ600をサポートテープとして貼り付け、支持基板500を取り外す。
(o) 図9(o)に示すように(図9(o)より図9(p)に至るまでは図8(n)のシリコン基材100の上下を逆転した図を示す)、接合面100e側からアルゴン(Ar)プラズマを当て、ノズル孔11の内壁11cの撥水膜14を除去して親水化処理し、親水膜15を形成する。
(p) 図9(p)に示すように、シリコン基材100からダイシングテープ600を剥がす。
こうして、シリコン基材100からノズル基板1が完成する。
実施の形態1に係るノズル基板1およびその製造方法によれば、耐吐出液保護膜Aが、液滴吐出面1aの吐出凹面1c(吐出凹部12の内壁)からノズル孔11の内壁11cを経て、液滴吐出面1aと反対側の面である接合面1eまで連続形成されているので、吐出凹部12の吐出凹面1cおよびノズル孔11の内壁11cが吐出液に侵食されず、吐出液に対する耐久性に優れる。
また、ノズル孔11の内壁11cは親水性であり、液滴吐出面1aはノズル孔11の吐出口縁部11dまで撥水性であるため、液滴吐出面1aへの液滴残留がなく、飛行曲がりのない良好な吐出特性を得ることができる。
さらに、ノズル基板1の薄板化工程が研削加工のみで済み、ポリッシュが必要ない。
また、ウェットエッチングにより吐出凹部12を形成してノズル孔11を開口するので、研削による開口と比較して、チッピング、ディッシング等のノズル孔11の形状崩れが発生しない。
次に、キャビティ基板2および電極基板3の製造方法について説明する。
ここでは、電極基板3にシリコン基材200を接合した後、そのシリコン基材200からキャビティ基板2を製造する方法について、図10、図11を用いて説明する。
(a) 図10(a)に示すように、硼珪酸ガラス等からなるガラス基材300(電極基板3)に、例えば金・クロムのエッチングマスクを使用してフッ酸によってエッチングして、凹部32を形成する。この凹部32は個別電極31の形状より少し大きめの溝状であり、個別電極31ごとに複数形成される。
そして、凹部32の底部に、例えばスパッタによりITO(Indium Tin Oxide)からなる個別電極31を形成する。
その後、ドリル等によってインク供給孔34となる孔部34aを形成することにより、電極基板3が作製される。
(b) 図10(b)に示すように、シリコン基材200(キャビティ基板2)の両面を鏡面研磨した後、シリコン基材200の片面に、プラズマCVDによってTEOS(TetraEthyl Ortho Silicate)からなるシリコン酸化膜(絶縁膜)26を形成する。なお、シリコン基材200を形成する前に、エッチングストップ技術を利用し、振動板22の厚みを高精度に形成するためのボロンドープ層を形成するようにしてもよい。エッチングストップとはエッチング面から発生する気泡が停止した状態と定義し、実際のウェットエッチングにおいては、気泡の発生の停止をもってエッチングがストップしたものと判断する。
(c) このシリコン基材200と、図10(a)のようにして作製された電極基板3とを、図10(c)に示すように、例えば360℃に加熱して、シリコン基材200に陽極を、電極基板3に陰極を接続し、800V程度の電圧を印加して陽極接合により接合する。
(d) シリコン基材200と電極基板3とを陽極接合した後に、水酸化カリウム水溶液等で接合状態のシリコン基材200をエッチングし、図10(d)に示すように、シリコン基材200を薄板化する。
(e) 次に、シリコン基材200の上面(電極基板3が接合されている面と反対側の面)の全面にプラズマCVDによって、シリコン酸化膜201(図11(e)参照)を形成する。そして、このシリコン酸化膜201に、吐出室24となる凹部240、オリフィス23となる凹部230、及びリザーバ25となる凹部250等を形成するためのレジストをパターニングし、これらの部分のシリコン酸化膜201をエッチング除去する。
その後、シリコン基材200を水酸化カリウム水溶液等でエッチングして、図11(e)に示すように、吐出室24となる凹部240、オリフィス23となる凹部230、及びリザーバ25となる凹部250を形成する。このとき、配線のための電極取り出し部となる部分29aもエッチングして薄板化しておく。なお、図11(e)のウェットエッチングの工程では、例えば初めに35重量%の水酸化カリウム水溶液を使用し、その後、3重量%の水酸化カリウム水溶液を使用することができる。これにより、振動板22の面荒れを抑制することができる。
(f) シリコン基材200のエッチングが終了した後に、図11(f)に示すように、フッ酸水溶液でエッチングして、シリコン基材200の上面に形成されているシリコン酸化膜201を除去する。
(g) シリコン基材200の吐出室24となる凹部240等が形成された面に、図11(g)に示すように、プラズマCVDによりシリコン酸化膜(絶縁膜)26を形成する。
(h) 図11(h)に示すように、RIE等によって電極取り出し部29を開放する。また、電極基板3のインク供給孔34となる孔部34aからレーザ加工を施して、シリコン基材200のリザーバ25となる凹部250の底部を貫通させ、インク供給孔34を形成する。また、振動板22と個別電極31との間のギャップGの開放端部にエポキシ樹脂等の封止材27を充填して封止を行う。また、図2に示した共通電極28を、スパッタにより、シリコン基材200の上面(ノズル基板1との接合側の面)の端部に形成する。
以上により、電極基板3に接合した状態のシリコン基材200からキャビティ基板2が作製される。
そして最後に、このキャビティ基板2に、前述のようにして作製されたノズル基板1を接着剤等により接合することにより、図2に示したインクジェットヘッド10の本体部が作製される。
本実施の形態1に係るキャビティ基板2および電極基板3の製造方法によれば、キャビティ基板2を、予め作製された電極基板3に接合した状態のシリコン基材200から作製するので、電極基板3によりシリコン基材200を支持した状態となり、シリコン基材200を薄板化しても割れたり欠けたりすることがなく、ハンドリングが容易となる。したがって、キャビティ基板2を単独で製造する場合よりも歩留まりが向上する。
実施の形態2.
図12は、実施の形態1に係るインクジェットヘッド10を搭載したインクジェット記録装置を示す斜視図である。図12に示すインクジェット記録装置700はインクジェットプリンタであり、実施の形態1のインクジェットヘッド10を搭載しているため、吐出液に対する耐久性に優れ、良好な吐出特性を有し、高品質の印字が可能である。
なお、実施の形態1に係るインクジェットヘッド10は、図12に示すインクジェットプリンタの他に、液滴を種々変更することで、液晶ディスプレイのカラーフィルタの製造、有機EL表示装置の発光部分の形成、遺伝子検査等に用いられる生体分子溶液のマイクロアレイの製造など様々な用途の液滴吐出装置として利用することができる。
本発明の実施の形態1に係る液滴吐出ヘッドの分解斜視図。 図1の液滴吐出ヘッドを組立てた状態の要部の縦断面図。 図2のノズル孔部分を拡大した縦断面図。 図1のノズル基板の上面図。 実施の形態1に係るノズル基板の製造方法を示す製造工程の断面図。 図5に続くノズル基板の製造工程の断面図。 図6に続くノズル基板の製造工程の断面図。 図7に続くノズル基板の製造工程の断面図。 図8に続くノズル基板の製造工程の断面図。 実施の形態1に係るキャビティ基板および電極基板の製造方法を示す製造工程の断面図。 図10に続く製造工程の断面図。 本発明の実施の形態2に係るインクジェット記録装置を示す斜視図。
符号の説明
1 ノズル基板、1a 液滴吐出面(液滴吐出側の面)、1b 吐出平面、1c 吐出凹面(吐出凹部の内壁)、1e 接合面、2 キャビティ基板、3 電極基板、10 インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)、11 ノズル孔、11a 径の小さい吐出部(第1のノズル孔部)、11b 径の大きい導入部(第2のノズル孔部)、11c ノズル孔の内壁、11d 吐出口縁部、12 吐出凹部、14 撥水膜、15 親水膜、22 振動板、23 オリフィス、24 吐出室、25 リザーバ、31 個別電極、34 インク供給孔、100 シリコン基材、100a 液滴吐出面、100e 接合面、102 シリコン酸化膜、110 閉じられたノズル孔(第1の凹部)、120 吐出凹部となる部分(第2の凹部)、500 支持基板、600 ダイシングテープ(サポート部材)、700 インクジェット記録装置、A 耐吐出液保護膜。

Claims (4)

  1. シリコン基材をドライエッチングして第1の凹部を形成する工程と、
    前記第1の凹部を形成した側の面と反対側の面から前記シリコン基材をウェットエッチ
    ングして第2の凹部を形成し、前記第1の凹部を開口してノズル孔とする工程と、
    前記シリコン基材の表面に耐吐出液保護膜を形成する工程と、
    前記ノズル孔を形成した側の面に支持基板を貼り合わせ、前記第2の凹部を形成した側
    の面を薄板化し、前記第2の凹部を吐出凹部とする工程と、
    前記吐出凹部を形成した側の面に撥水膜を形成する工程と、
    前記吐出凹部を形成した側の面をサポート部材によって保護して前記支持基板を剥離し
    、剥離した側の面から親水化処理し、前記サポート部材を剥離する工程と、
    を有することを特徴とするシリコン製ノズル基板の製造方法。
  2. 前記耐吐出液保護膜をシリコン基材の熱酸化によって形成することを特徴とする請求項
    1記載のシリコン製ノズル基板の製造方法。
  3. 請求項1または2記載のシリコン製ノズル基板の製造方法を適用して、液滴吐出ヘッド
    のノズル基板部分を形成することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
  4. 請求項3記載の液滴吐出ヘッドの製造方法を適用して液滴吐出装置を製造することを特
    徴とする液滴吐出装置の製造方法。
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