JP5331849B2 - 車体前部構造 - Google Patents

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Description

本発明は、フードスキン及びフードフレームからエンジンフードが構成され、フードフレーム前方下面からグリルサポート下方に延出され、グリルサポート前面にフロントグリルが設けられた車体前部構造に関する。
車体前部構造には、自動車の車体前部におけるフード補強構造がある。この技術は、フードがアウタパネル及びインナパネルから構成され、車体の中央部で、インナパネルの前端部に補強板を取付け、この補強板に被係止具を取付け、フードを支持する支持パネルをアウタパネルの前端部から一体的に延出し、支持パネルに車体の中央部に位置する中央フレームを設け、支持パネルの表面側にグリルを取付け、補強板を中央フレームの裏面に沿って下方に一体的に延出し、補強板の延出部と中央フレームとをその平面視断面が箱形状となるように接合する。
この車体前部構造によれば、補強板の延出部と中央フレームとをその平面視断面が箱形状となるように接合したので、フードの中央部の強度を向上することが可能である(例えば、特許文献1参照。)。
また、車体前部構造には、フードにラジエータグリルを取付けるラジエータグリルの取付構造がある。この技術は、ラジエータグリルの上側の中央部裏面に、クリップ用のブラケットを設け、ラジエータグリルの周囲の4隅の裏面に、後方へ向けてボルトをセットするボルト用ブラケットを設け、ラジエータグリルのクリップ用のブラケットを仮止めした状態で、フード前面部の4隅にねじ止めする。
この車体前部構造によれば、ラジエータグリルのクリップ用のブラケットを仮止めした状態で、フード前面部の4隅にねじ止めするので、ラジエータグリルの取付性を向上することが可能である(例えば、特許文献2参照。)。
フードにラジエータグリルを取付ける別の車体前部構造がある。この技術は、ラジエータグリルが、枠体部及びグリル部から構成され、これらの枠体部及びグリル部を組合わせてラジエータグリルが形成され、アウタパネル及びインナパネルで構成されたフードのかしめ部に取付孔を形成し、この取付孔にボルトを挿通し、ボルトにナットを螺合してラジエータグリルを取付けている。さらに、ラジエータグリルは、グリル部の下部に対応する枠体部の下部まで延長して中空部を形成している。
この車体前部構造によれば、ラジエータグリルに中空部を形成したので、ラジエータグリルの強度を向上することが可能である(例えば、特許文献3参照。)。
特開平11−29070号公報 特開平7−304409号公報 特開平9−58384号公報
特許文献1の車体前部構造では、インナパネルの延出部及び支持パネルで構成されるフードフレームへの取付けが車幅中央のみであるため、グリルが大きな車種であるとフード閉時必要強度(特に強閉時)及び耐走行風圧強度を確保できないとともに、フードロックが上方にあるため衝突ストロークが確保できず、適切な歩行者保護(上方からの衝撃荷重吸収)が行われない可能性が高い。
特許文献2,3の車体前部構造では、特に軽自動車のようなエンジンルームのスペースが確保できない車種等で、歩行者保護(上方からの衝撃荷重吸収)及び耐走行風圧の向上を少ないスペースで実現することができない。また、フードフレームへの取付けがボルト固定であるため、上方からの衝撃荷重吸収が適切に行われない可能性が高い。
本発明は、特に軽自動車のようなエンジンルームのスペースが確保できない車種等であっても、衝突ストロークを確保して上方からの衝撃荷重吸収を適切に行なうことができ、歩行者保護(上方からの衝撃荷重吸収)及び耐走行風圧の向上を少ないスペースで実現することができる車体前部構造を提供することを課題とする
請求項1に係る発明は、エンジンルームを閉塞するフードスキン及びフードスキンの裏面に設けられるフードフレームからなるエンジンフードと、フードフレーム前方下面から下方に延出するグリルサポートと、グリルサポート前面に設けられるフロントグリルと、を備えた車体前部構造であって、グリルサポートに、フードフレームに溶接固定され、車体後方に折り曲げられたサポート接合部と、エンジンフードを両側部で支持するフードストッパが当接するフードストッパ当て面と、を有し、フードフレームは、サポート接合部に対峙する部分がフードフレーム前端より後方に位置するとともに、サポート接合部に対峙する部分が後傾している(後傾斜に形成した)ことを特徴とする。
請求項2に係る発明は、グリルサポートに、複数のサポート接合部間に切り欠きを有することを特徴とする。
請求項3に係る発明は、グリルサポートが、フードストッパ当て面上方に、フードフレーム下面とグリルサポートとに跨って備えられるサポート補強部材を備え、サポート補強部材が、断面視コ字状かつ上下端が開放形状であることを特徴とする。
請求項4に係る発明は、グリルサポートに、エンジンフードを支えるバルクヘッド上部に備えられるフードロックに係合するストライカを車幅中央に備え、ストライカが、フードロックと係合するループと、ループを支持するループブラケットと、からなり、ループブラケットは、フードフレーム下面とグリルサポートとに跨って備えられ、ループが、グリルサポートの下方に設置されたことを特徴とする。
請求項5に係る発明は、ループブラケットに、車体上下方向中央近傍に脆弱部を設けたことを特徴とする。
請求項6に係る発明は、グリルサポートに、下端に沿って取付けられる耐熱シールを設けたことを特徴とする。
本発明は以下の効果を奏する。
請求項1に係る発明では、車体前部構造に、エンジンルームを閉塞するフードスキン及びフードスキンの裏面に設けられるフードフレームからなるエンジンフードと、フードフレーム前方下面から下方に延出するグリルサポートと、グリルサポート前面に設けられるフロントグリルと、を備えた。
例えば、特にデザイン上大きなフロントグリルを有する軽自動車において、フロントグリルとこれを支持するグリルサポートを車体側に固定すると、上方からの荷重入力時に剛体であるこれらの部材が荷重吸収に悪影響を与えるため、車体前部構造では、グリルサポート及びフロントグリルをエンジンフードのフードフレーム前方下面に設けた。
グリルサポートに、フードフレームに溶接固定され、車体後方に折り曲げられたサポート接合部と、エンジンフードを両側部で支持するフードストッパが当接するフードストッパ当て面と、を有し、フードフレームのサポート接合部に対峙する部分がフードフレーム前端より後方に位置するとともに、サポート接合部に対峙する部分が後傾している(後傾斜に形成している)。
例えば、グリルサポートをフードフレームにボルト固定すると固定部分の強度が高すぎて悪影響を与えるため、スポット溶接として固定箇所を複数に分散させた。
荷重入力時にフードストッパ当て面に、例えばバルクヘッド上部に設けられるフードストッパが当接すると荷重吸収に悪影響を与えるため、サポート接合部を車体後方に折り曲げるとともに、フードフレームのサポート接合部に対峙する部分がフードフレーム前端より後方に位置し、かつ後傾させることで、グリルサポート上方を後方に移動させるとともに、グリルサポート下方を前方に滑らせて(フードストッパ当て面近傍を軸として後方に回転させて)荷重を逃がし、フードスキン−フードフレームによる荷重吸収を阻害させないようにしている。
すなわち、サポート接合部を、例えばスポット溶接として固定箇所を複数に分散させること、フードスキン及びフードフレームによる荷重吸収を阻害させないようにすることで、特に軽自動車のようなエンジンルームのスペースが確保できない車種等であっても、衝突ストロークを確保して上方からの衝撃荷重吸収を適切に行なうことができる。この結果、歩行者保護(上方からの衝撃荷重吸収)及び耐走行風圧の向上を少ないスペースで実現することができる。
請求項2に係る発明では、グリルサポートに、複数のサポート接合部間に切り欠きを有するので、フードフレーム前方の荷重入力点からグリルサポートを浮かせてストロークを確保し、上方からの荷重入力時にエンジンフードの変形を妨げないようにした。これにより、より良好に、フード閉時や歩行者当接時の衝撃荷重を吸収することができる。
請求項3に係る発明では、グリルサポートは、フードストッパ当て面上方に、フードフレーム下面とグリルサポートとに跨って備えられるサポート補強部材を備える。
サポート補強部材は、上方からの荷重入力時に荷重が立ち上がる部分であるフードストッパ当て面上方に位置し、サポート補強部材を、断面視コ字状かつ上下端が開放形状に構成したので、同部分に必要な補強をしつつ、荷重吸収に悪影響を与えないようグリルサポート左右端近傍の強度を調整することができる。
請求項4に係る発明では、グリルサポートに、エンジンフードを支えるバルクヘッド上部に備えられるフードロックに係合するストライカを車幅中央に備える。
ストライカが、フードロックと係合するループと、ループを支持するループブラケットと、からなり、ループブラケットが、フードフレーム下面とグリルサポートとに跨って備えられることで、ループをグリルサポートの下方に配置することができる。すなわち、ループをグリルサポートの下方に配置することで、フードフレームによる上方からの荷重吸収を良好にすることができる。フードフレーム下面とグリルサポートに跨ることで、グリルサポートに必要な強度を確保することができるとともに、フード手付き時のフードスキンへの荷重補強をするリーンフォースメントの補強機能を持たせることができる。
請求項5に係る発明では、ループブラケットに、車体上下方向中央近傍に脆弱部を設けたので、請求項4に記載の効果に加え、上方からの荷重入力時に脆弱部が折れることができる。この結果、荷重吸収に悪影響を与えない。
請求項6に係る発明では、グリルサポートに、下端に沿って取付けられる耐熱シールを設けたので、ラジエータの熱を遮断することができる。本発明に係る車体前部構造では、フードロックが通常より下方に配置されているため、フード開閉時を配慮してラジエータの熱によって高熱にならないように、グリルサポートの下端に沿って耐熱シールを設けている。
本発明に係る車体前部構造が採用された車体の前部を示す斜視図である。 図1に示された車体前部構造のエンジンフードを裏面から見た斜視図である。 図2に示された車体前部構造のフードフレーム及びグリルサポートの斜視図である。 図1の4−4線断面図である。 図4の5部拡大図である。 図4の6部拡大図である。 図2に示された車体前部構造のグリルサポートの斜視図である。 図7の8−8線断面図である。 図2の9部拡大図である。 図2の10部拡大図である。 図1の11−11線断面図である。 図1に示された車体前部構造の灯体の斜視図である。 図2の13部拡大図である。 図1に示された車体前部構造のエンジンフードのフードシールを外した状態を示す斜視図である。 図2に示された車体前部構造のフードシールを斜め上方から見た斜視図である。 図1に示された車体前部構造のフード強閉持の動作説明図である。 図1に示された車体前部構造の上方衝突解析結果を示す解析図である。
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1〜図4に示されたように、車両10は、車体11の前部に、エンジンルーム13を閉塞するフードスキン15及びフードスキン15の裏面に設けられるフードフレーム16からなるエンジンフード17と、フードフレーム16前方下面から下方に延出するグリルサポート18と、グリルサポート18前面に設けられるフロントグリル19と、エンジンフード17下方且つフロントグリル19の左右に備えられる灯体21,21と、フロントグリル19及び灯体21,21の下方に設けられたフロントバンパフェイス22と、灯体21及びフロントバンパフェイス22の側方に車体側方を覆うフロントフェンダ23と、グリルサポート18及びフロントバンパフェイス22の後方に設けられるバルクヘッド24(図4参照)と、を備える。
なお、図4は図1の4−4線断面図であり、フロントグリル19を除く。
フロントグリル(グリル)19は、グリルサポート18前面に設けられる意匠部品であるとともに、エンジンルーム13に走行風を導入する導入口でもある。
バルクヘッド(フロントバルクヘッド)24は、上部に、フード閉時にエンジンフード17が支持される左右のフードストッパ26,26(一方不図示)と、エンジンフード17を係止するフードロック27と、が設けられている。さらに、エンジン冷却のためのラジエータ25が支持される。
なお、フードストッパ26は、車幅中央から300mm程度外方に設定されている。
車体前部構造は、図1及び図2に示されたように、エンジンフード17、グリルサポート18、フロントグリル19及び左右の灯体21,21で構成されるエンジンフード17廻りの構造である。エンジンフード17のフードフレーム16にグリルサポート18をボルト固定ではなく、スポット溶接とすることで、歩行者保護性能に有利な車体前部構造(フード構造)が実現されている。
また、車体前部構造では、図2に示されたように、車体前方から見えない位置に配置されたフードシール(フードシールラバー)34をフードフレーム16前端(エンジンフード前端17a)の左右に配置し、フード強閉時の入力荷重の吸収と外観性向上とを両立した。
エンジンフード組立体31は、エンジンルーム13を閉塞するフードスキン15と、フードスキン15の裏面に設けられるフードフレーム16と、フードフレーム16前方下面から下方に延出するグリルサポート18と、グリルサポート18前面に設けられるフロントグリル(グリル)19と、フードフレーム16下面とグリルサポート18とに跨って設けられたストライカ32と、フードフレーム16下面とグリルサポート18とに跨って設けられた左右のサポート補強部材(グリルサポートスチフナ)33,33と、フードフレーム16前端の左右に設けられ衝撃荷重を吸収するフードシール34,34と、からなる。
なお、左右のサポート補強部材33,33は、左右対称の部材である。
エンジンフード組立体31は、通常車体側に備えられるフロントグリル19とその背面にあるグリルサポート18が、フードフレーム16の下方に備えられる特異な形状を有する。
エンジンフード17は、エンジンルーム13を閉塞するフードスキン15及びフードスキン15の裏面に設けられるフードフレーム16からなる。
図3〜図7に示されたように、フードフレーム16は、板厚0.5tの冷間圧延材(JSC270D鋼材)で形成される。さらに、フードフレーム16は、グリルサポート18が接合されるフードフレーム側接合部36と、フードフレーム16の左右前方に設けられフードシール34を取付けるシール取付部37,37(図14参照も参照)と、シール取付部37の前方に上方からの荷重入力時にフードシール34を圧潰するシール押圧部38と、フード手付き時のフードスキン15への荷重補強をするリーンフォースメント39と、を備える。
シール取付部37(図14参照)には、フードシール34をクリップ止めする複数のクリップ孔37aが設けられている。
なお、フードフレーム16は、前方下面(車体前方下面)から下方に延出するグリルサポート18と、グリルサポート18前面に設けられるフロントグリル19と、を備えたものともいうことができる。
フードフレーム16(フードフレーム側接合部36)は、サポート接合部45a〜45e(図7参照)に対峙する部分(接合対峙部)44がフードフレーム16前端より後方に位置するとともに、サポート接合部45a〜45eに対峙する部分(接合対峙部44)が後傾している(後傾斜に形成した)。
すなわち、フードフレーム側接合部36は、フードフレーム16前端から後方に位置し、フードフレーム側接合部36自体も後傾させることで、グリルサポート18の回転を容易にし、上方からの荷重入力時に受け面となる平面部分を確保するとともに、グリルサポート18前面にフロントグリル(グリル)19の取付スペースを確保する。
リーンフォースメント39は、フードフレーム16に接合される前脚接合部41及び後脚接合部42を備える。
グリルサポート18(図1、図2参照)は、フードフレーム16且つ灯体21,21の間に位置するとともに、フードフレーム16前方下面から下方に延出する部材である。板厚0.8tの冷間圧延材(JSC270D鋼材)で形成される。
グリルサポート18は、フードフレーム16に溶接固定され、車体後方に折り曲げられた複数のサポート接合部45a〜45eと、複数のサポート接合部45a〜45e間に設けられた切り欠き46a〜46dと、エンジンフード17を両側部で支持するフードストッパ26が当接するフードストッパ当て面47と、外気をエンジンルーム13に流入させる左右の吸気口部48,48と、左右の吸気口部48,48に挟まれるように形成された中央補強部49と、が形成されている。
なお、フードストッパ26は、バルクヘッド24上部に形成されている(図4参照)。
さらに、グリルサポート18には、グリルサポート18の下端18aに沿って取付けられる耐熱シール51と、フードストッパ当て面47上方に、フードフレーム16下面とグリルサポート18とに跨って備えられる左右のサポート補強部材33,33と、グリルサポート18の車幅中央に設けられ、バルクヘッド24上部に備えられるフードロック27に係合するストライカ32と、が設けられる。
複数のサポート接合部45a〜45eは、フードフレーム16下面に、8点のスポット溶接で接合される。これは、ボルト止めにすると強度が高すぎて上方からの荷重吸収が悪化するからである。
サポート接合部45a〜45eを後傾(後傾斜)にすることで上方からの荷重入力時にグリルサポート18自体が回転することで適切な荷重吸収を実現できる。
切り欠き46a〜46dは、上方からの衝撃荷重に悪影響を与えないようにするためのものであり、グリルサポート18は、サポート接合部45a〜45e以外の部分を切り欠いた。すなわち、フードフレーム16から浮いた形になることで、フードフレーム16の変形を許容し、荷重入力点からのストロークを確保することができる。
フードストッパ当て面47は、フード閉時にバルクヘッド24でフード全体(エンジンフード組立体31)を支えるとともに、上方からの荷重入力時に後方に回転する中心軸となる。フードストッパ当て面47は、水平ないし略後傾(略後傾斜)に形成される。
吸気口部48は、上部に潰し加工(スタンプ加工)が施され、搬送用の作業用治具固定用に端部が補強されている。すなわち、吸気口部48は、前方からの走行風をラジエータ25(図4参照)に当てるための吸気機能とともに、グリルサポート18の軽量化、作業用治具挿入孔の役割をなす。
中央補強部49は、断面視ハット形状に形成され、グリルサポート18の自重、前方からの走行風圧およびフード開閉時にかかる荷重に対する強度を向上している。
図7及び図8に示されたように、耐熱シール(シール材)51は、板厚2tのPP(ポリプロピレン)発泡材が用いられる。バルクヘッド24に支持されるラジエータ25(図4参照)の熱を受け、エンジンフード17が、フード開時に熱くならないように設けられた。さらに、耐熱シール51は、複数のクリップ54で上部が固定され、常時グリルサポート18の下端18aに沿って押圧可能に支持されている。これにより、荷重入力や振動でズレることなく、エンジンフード17を開閉する作業者を保護できる。
図9に示されたように、サポート補強部材(グリルサポートスチフナ)33は、断面視コ字状かつ上下端が開放形状である。さらに、板厚0.75tの冷間圧延材(JSC270C鋼材)が用いられ、半端な板厚は上方からの荷重吸収と必要強度のバランスの結果決定されている。
サポート補強部材33の上方は、フードフレーム16に2点でスポット溶接され、下方はグリルサポート18に3点でスポット溶接され、サポート補強部材33は、上方からの荷重入力時に荷重が立ち上がる部分であるフードストッパ26(図4参照)の上方に位置している。必要な補強をしつつ上方からの荷重吸収に悪影響を与えないようにする必要があり、板厚、形状及び溶接打点位置を調整することで、そのバランスをとっている。
サポート補強部材33では、上方の溶接点(溶接フランジ)58a,58bは、グリルサポート18同様に後傾としている。下方の溶接点(溶接フランジ)59a〜59cは、特に内方上部の溶接点位置(溶接点59c、図9参照)により、上方からの荷重吸収と必要強度のバランスを取っている。
上方の溶接点58a,58bの間及び下方の溶接点59a,59bの間はそれぞれ間隙S1,S2が設けられる。すなわち、サポート補強部材33の上部とフードフレーム16との間には間隙S1が形成され、サポート補強部材33の下部とグリルサポート18との間には間隙S2が形成されている。
また、サポート補強部材33は、フードフレーム16からグリルサポート18に向かって、概ね開放型断面視薄型ハット形状に形成される。これにより、グリルサポート18自重、前方からの走行風圧およびフード開時にかかる荷重に対する強度向上をする。さらに、上下端開放するとともに薄型ハット形状とすることで、上方からの荷重吸収と必要強度のバランスを取っている。
図10に示されたように、ストライカ32は、フードロック27と係合するループ56と、ループ56を支持するループブラケット57と、からなり、ループブラケット57は、板厚1.2tの冷間圧延材(JSC270C45−45鋼材)が用いられ、フードフレーム16下面とグリルサポート18とに跨って取付けられる。
ループ56は、グリルサポート18の下方に設置される。ループブラケット57は、側面断面では断面視略S字状とも見ることができる。
ループブラケット57は、フードフレーム16に接合される上部接合部61と、グリルサポート18に接合される下部接合部62と、車体上下方向中央近傍に設けた開口部63と、スタンプ加工により強度及び剛性の向上が図られる左スタンプ部64a、右スタンプ部64b及び中央スタンプ部64cと、開口部63の左右に設けられ、前方に突出したビード65,65と、開口部63からフードフレーム16に延ばした補強脚66と、ループ56の一端56aが取付けられるブラケット段部67と、を備える。なお、ループ56の他端56bは、下部接合部62のグリルサポート18側に取付けられている。
詳細には、ループ56の一端56aは、ブラケット段部67に挟み込まれ、ブラケット段部67にMIG溶接され、ループ56の他端56bは、下部接合部62に挟み込まれ、下部接合部62にMIG溶接される。
上部接合部61は、フードフレーム16に4点でスポット溶接され、グリルサポート18同様に後傾としている。上部接合部61は、リーンフォースメント39の後脚接合部42と同位置に接合され(図4、図6参照)、上方からの荷重入力時の補強の役割も果たす。下部接合部62は、グリルサポート18に3点でスポット溶接される。
左、右及び中央スタンプ部64a,64b,64cは、上方からの荷重入力時や強閉時にループブラケット57にかかる荷重に対する強度を向上する。
ビード65は、上方からの荷重入力時に折れることで適切に荷重吸収を促進する。
補強脚66は、フードフレーム16にグリルサポート18が組み付けれ、グリルサポート18付きのフードフレーム16の搬出時に、グリルサポート18がゆがんだりずれたりすることを防止するものである。
脆弱部68は、車体上下方向中央近傍に設けるものであり、開口部63及びビード65,65で構成されている。脆弱部68は、ループブラケット57の軽量化と上方からの荷重入力を適切に吸収する機能を有する。
図11〜図15に示されるように、灯体21は、エンジンフード17が閉じた状態でシール押圧部38に対峙する位置にシール当て面71を備える。シール当て面71は、エンジンフード17が閉じた状態でフードシール下端34aから離間させた。
フードシール34は、グリルサポート18左右に位置するとともに、フードフレーム16のシール取付部37に取付けられる部材である。さらに、フードシール34は、シール取付部37に取付けられる被取付部74と、この被取付部74から連続的に延ばされた一般部75と、この一般部75から延出され中空円筒状に形成された中空部76と、を備える。さらに、フードシール34は、PP(ポリプロピレン)発泡材が用いられる。
被取付部74は、クリップ77を貫通する複数の貫通孔74aが設けられ、複数のクリップ77にてフードフレーム16のシール取付部37に固定される。なお、シール取付部37には、クリップ77が係止される複数のクリップ孔37aが設けられている。
中空部76は、断面視で先端水滴状かつ中空に形成される。フードシール34の中空部76の根元76a近傍は、シール押圧部38に当接する。
すなわち、フードシール34の中空部76の根元76a近傍は、シール押圧部38に当接することで、中空部(水滴状部)76をシール押圧部38とシール当て面71とで挟み込んで潰すことができ、強閉時の上方からの荷重を適切に吸収する。
図11に示されたように、エンジンフード前端17aの寸法S3だけ後方にフードシール先端34bが位置している。さらに、フードシール34は、シール取付部37の前方でフードフレーム16下面に当接しているとともに、エンジンフード17が閉じた状態で側面視においてエンジンフード前端17aより、フードシール下端34aが寸法S4だけ上方に位置している。
これにより、フードシール34と灯体21上面の間に間隙S5があっても、車体前方からフードシール34が見えにくく外観が向上する。
図16(a),(b)に、車体前部構造のフード強閉時の動作説明図が示される。
(a)に示されたように、車体前部構造では、フードシール34は、フードフレーム16にシール押圧部38を形成し、灯体21上面にシール当て面71を形成し、これらのシール押圧部38及びシール当て面71が略平行になるように配置された。
(b)に示されたように、エンジンフード17が矢印a1の如く強い荷重で閉動作された場合にも、フードシール34の中空部(水滴状部)76をシール押圧部38及びシール当て面71で挟み込んで潰すことができ、強閉時の上方からの荷重を適切に吸収することができる。
フードシール34は、フードシール34の上部の被取付部74(図13参照)を固定したので、常時フードフレーム16下面に沿って上方に押圧荷重入力や振動でズレることなく想定したシール性能を発揮できる。
フードシール34と灯体21のシール当て面(上面)71との間に間隙S5(図11参照)を設定したので、フード閉時であってもフードシール34が灯体21に当接することはない。これにより、強閉時に灯体21にダメージを与えることによる灯体21内への雨水浸入、灯体21が持つ熱をフードシール34が直接受けることによる乾燥劣化、及びフードシール34と灯体21が接触していることによる騒音や振動を防止することができる。
図17(a)〜(d)に、車幅中央から300mm程度外方(略フードストッパ26位置断面)における上方衝突解析結果が示される。なお、tの単位は秒である。
(a)に初期状態の車体11が示される(t=0)。
エンジンフード17に、テスト球79を矢印b1の如く当てる。
(b)t=5経過後の車体11の状態が示される。t=5でフードスキン15とフードフレーム16が当接し、フードフレーム16は矢印b2の如く略平行に押され、フードフレーム16前端で入力荷重を吸収する。グリルサポート18上方が後方に押され、グリルサポート18はフードストッパ26を軸にして矢印b3の如く回転を始める。
(c)t=8経過後の車体11の状態が示される。t=8でグリルサポート18上方が後方に回転することにより、フードストッパ26からグリルサポート18が矢印b4の如く前方に滑る(図4に示されるループ56はロックされたままのためループ56前後長さ分だけ前方に移動する)。前方にフロントグリル19全体が押されることで荷重吸収に悪影響を与えない。
(d)t=15経過後の車体11の状態が示される。さらに、前方にフロントグリル19が矢印5bの如く前方に滑ることで、さらに、荷重吸収が促進される。
図1〜図7に示されたように、車体前部構造では、エンジンルーム13を閉塞するフードスキン15及びフードスキン15の裏面に設けられるフードフレーム16からなるエンジンフード17と、フードフレーム16前方下面から下方に延出するグリルサポート18と、グリルサポート18前面に設けられるフロントグリル19と、を備えた。
例えば、特にデザイン上大きなフロントグリルを有する軽自動車において、フロントグリルとこれを支持するグリルサポートを車体側に固定すると、上方からの荷重入力時に剛体であるこれらの部材が荷重吸収に悪影響を与えるため、車体前部構造では、グリルサポート18及びフロントグリル19をエンジンフード17のフードフレーム16前方下面に設けた。
グリルサポート18に、フードフレーム16に溶接固定され、車体後方に折り曲げられたサポート接合部45a〜45eと、エンジンフード17を両側部で支持するフードストッパ26が当接するフードストッパ当て面と、を有し、フードフレーム16のサポート接合部45a〜45eに対峙する部分(接合対峙部)44がフードフレーム16前端より後方に位置するとともに、サポート接合部45a〜45eに対峙する部分(接合対峙部)44が後傾している。
例えば、グリルサポート18をフードフレーム16にボルト固定すると固定部分の強度が高すぎて悪影響を与えるため、スポット溶接として固定箇所を複数に分散させた。
荷重入力時にフードストッパ当て面47に、例えばバルクヘッド24上部に設けられるフードストッパ26が当接すると荷重吸収に悪影響を与えるため、サポート接合部45a〜45eを車体後方に折り曲げるとともに、フードフレーム16のサポート接合部45a〜45eに対峙する部分(接合対峙部)44がフードフレーム16前端より後方に位置し、かつ後傾させる(後傾斜にする)ことで、グリルサポート18上方を後方に移動させるとともに、グリルサポート18下方を前方に滑らせて(フードストッパ当て面47近傍を軸として後方に回転させて)荷重を逃がし、フードスキン15及びフードフレーム16による荷重吸収を阻害させないようにしている。
すなわち、サポート接合部45a〜45eを、例えばスポット溶接として固定箇所を複数に分散させること、フードスキン15及びフードフレーム16による荷重吸収を阻害させないようにすることで、特に軽自動車のようなエンジンルーム13のスペースが確保できない車種等であっても、衝突ストロークを確保して上方からの衝撃荷重吸収を適切に行なうことができる。この結果、歩行者保護(上方からの衝撃荷重吸収)及び耐走行風圧の向上を少ないスペースで実現することができる。
図7に示されたように、車体前部構造では、グリルサポート18に、複数のサポート接合部45a〜45e間に切り欠き46a〜46dを有するので、フードフレーム16前方の荷重入力点からグリルサポート18を浮かせてストロークを確保し、上方からの荷重入力時にエンジンフード17(図4参照)の変形を妨げないようにした。これにより、より良好に、フード閉時や歩行者当接時の衝撃荷重を吸収することができる。
図4及び図9に示されたように、車体前部構造では、グリルサポート18は、フードストッパ当て面47上方に、フードフレーム16下面とグリルサポート18とに跨って備えられるサポート補強部材33を備える。
サポート補強部材33は、上方からの荷重入力時に荷重が立ち上がる部分であるフードストッパ当て面47上方に位置し、サポート補強部材33を、断面視コ字状かつ上下端が開放形状に構成したので、同部分に必要な補強をしつつ、荷重吸収に悪影響を与えないようグリルサポート18左右端近傍の強度を調整することができる。
図4、図6及び図10に示されたように、車体前部構造では、グリルサポート18に、バルクヘッド24上部に備えられるフードロック27に係合するストライカ32を車幅中央に備える。
ストライカ32が、フードロック27と係合するループ56と、ループ56を支持するループブラケット57と、からなり、ループブラケット57が、フードフレーム16下面とグリルサポート18とに跨って備えられることで、ループ56をグリルサポート18の下方に配置することができる。すなわち、ループ56をグリルサポート18の下方に配置することで、フードフレーム16による上方からの荷重吸収を良好にすることができる。ループブラケット57が、フードフレーム16下面とグリルサポート18に跨ることで、グリルサポート18に必要な強度を確保することができるとともに、フード手付き時のフードスキン15への荷重補強をするリーンフォースメント39の補強機能を持たせることができる。
図10に示されたように、車体前部構造では、ループブラケット57に、車体上下方向中央近傍に脆弱部68を設けたので、請求項4に記載の効果に加え、上方からの荷重入力時に脆弱部68が折れることができる。この結果、荷重吸収に悪影響を与えない。
図7及び図8に示されたように、車体前部構造では、グリルサポート18に、下端18aに沿って取付けられる耐熱シール51を設けたので、ラジエータ25の熱を遮断することができる。本発明に係る車体前部構造では、フードロック27が通常より下方に配置されているため、フード開閉時を配慮してラジエータ25の熱によって高熱にならないように、グリルサポート18の下端18aに沿って耐熱シール51を設けている。
図1及び図11に示されたように、車体前部構造では、エンジンルーム13を閉塞するフードスキン15及びフードスキン15の裏面に設けられるフードフレーム16からなるエンジンフード17と、エンジンフード17下方の左右に備えられる灯体21,21と、を備えた。
フードフレーム16に、衝撃荷重を吸収するフードシール34と、フードシール34を取付けるシール取付部37と、シール取付部37の前方に上方からの荷重入力時にフードシール34を圧潰するシール押圧部38と、を備える。灯体21に、エンジンフード17が閉じた状態でシール押圧部38に対峙する位置にシール当て面71を備え、エンジンフード17が閉じた状態でフードシール下端34aをシール当て面71から離間させた。
すなわち、フードフレーム16にシール押圧部38を形成し、灯体21上面にシール当て面71を形成し、これらが略平行になるように配置することで、中空部(水滴状部)76を挟み込んで潰すことができ、エンジンフード17強閉時の上方からの入力荷重を適切に吸収することができる。
これにより、エンジンフード17強閉時に先端がエンジンフード17下方に備えられる灯体21にダメージを与えることにより生じる灯体21内への雨水浸入を防止でき、灯体21が持つ熱をフードシール34が直接受けることによる乾燥劣化を防止でき、フードシール34と灯体21が接触していることによる騒音及び振動の防止を図ることができる。
図11に示されたように、車体前部構造では、フードシール34が、中空円筒状に形成された中空部76を備えたので、シール押圧部38とシール当て面71によって挟み込んで潰しやすくなり、雨水浸入の防止、乾燥劣化の防止及び騒音及び振動の防止がより発揮される。
図11に示されたように、車体前部構造では、フードシール34の中空部76の根元76a近傍がシール押圧部38に当接するので、シール押圧部38とシール当て面71によって挟み込んで、さらに潰しやすくなり、雨水浸入の防止、乾燥劣化の防止、騒音及び振動の防止がより発揮される。
図2及び図11に示されたように、車体前部構造では、フードフレーム16に、前方下面から下方に延出するグリルサポート18と、グリルサポート18前面に設けられるフロントグリル19と、を備え、フードシール34が、グリルサポート18左右に位置するので、フードシール34をエンジンフード前端17aの全面に備えることなく、必要に応じた位置、大きさ、範囲で設定することができる。
図11に示されたように、車体前部構造では、フードシール34が、シール取付部37の前方でフードフレーム16下面に当接しているので、フードシール34上部をシール取付部37にて固定でき、その前方はフードフレーム16下面に沿って常時上方に押圧されるため、上方からの荷重入力時や振動等によりフードシール34がズレることなく、所望のシール性能を発揮できる。
図11に示されたように、車体前部構造では、フードシール34が、エンジンフード17が閉じた状態で側面視においてエンジンフード前端17aよりフードシール下端34aが上方に位置しているので、フードシール34と灯体21上面の間に間隙S5があっても、エンジンフード17が閉じた状態で車体前方からフードシール34が見えにくくなり、外観が向上する。
尚、本発明に係る車体前部構造は、図15に示すように、フードシール34に中空円筒状に形成された中空部76が形成されたが、これに限るものではなく、中空部76はU字状の溝形状であってもよく、また、フードシール34の幅方向全部に設けるものでなくてもよい。
本発明に係る車体前部構造では、明細書中「エンジンフード前端17a」及び「フードフレーム16前端」と記載した箇所があるが、これらの位置は同位置である。
本発明に係る車体前部構造は、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適であり、特にデザイン上大きなフロントグリルを有する軽自動車に採用するのには最適である。
11…車体、13…エンジンルーム、15…フードスキン、16…フードフレーム、17…エンジンフード、17a…エンジンフード前端、18…グリルサポート、18a…グリルサポートの下端、19…フロントグリル、21…灯体、24…バルクヘッド、26…フードストッパ、27…フードロック、32…ストライカ、33…サポート補強部材、34…フードシール、34a…フードシール下端、38…シール押圧部、44…サポート接合部に対峙する部分(接合対峙部)、45a〜45e…サポート接合部、46a〜46d…切り欠き、47…フードストッパ当て面、51…耐熱シール、56…ループ、57…ループブラケット、68…脆弱部、71…シール当て面、76…中空部、76a…根元。

Claims (6)

  1. エンジンルームを閉塞するフードスキン及び該フードスキンの裏面に設けられるフードフレームからなるエンジンフードと、前記フードフレーム前方下面から下方に延出するグリルサポートと、前記グリルサポート前面に設けられるフロントグリルと、を備えた車体前部構造であって、
    前記グリルサポートは、前記フードフレームに溶接固定され、車体後方に折り曲げられたサポート接合部と、前記エンジンフードを両側部で支持するフードストッパが当接するフードストッパ当て面と、を有し、
    前記フードフレームは、前記サポート接合部に対峙する部分が該フードフレーム前端より後方に位置するとともに、前記サポート接合部に対峙する部分が後傾していることを特徴とする車体前部構造。
  2. 前記グリルサポートは、複数の前記サポート接合部間に切り欠きを有することを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
  3. 前記グリルサポートは、前記フードストッパ当て面上方に、前記フードフレーム下面と前記グリルサポートとに跨って備えられるサポート補強部材を備え、
    前記サポート補強部材は、断面視コ字状かつ上下端が開放形状であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車体前部構造。
  4. 前記グリルサポートは、前記エンジンフードを支えるバルクヘッド上部に備えられるフードロックに係合するストライカを車幅中央に備え、
    前記ストライカは、前記フードロックと係合するループと、該ループを支持するループブラケットと、からなり、
    前記ループブラケットは、前記フードフレーム下面と前記グリルサポートとに跨って備えられ、前記ループは、前記グリルサポートの下方に設置されたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の車体前部構造。
  5. 前記ループブラケットは、車体上下方向中央近傍に脆弱部を設けたことを特徴とする請求項4に記載の車体前部構造。
  6. 前記グリルサポートは、下端に沿って取付けられる耐熱シールを設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載の車体前部構造。
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