JP5329207B2 - 高分子膜及びその利用 - Google Patents
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Description
近年、膜により気体成分を分離する技術の中でも、二酸化炭素を選択的に分離する技術が精力的に検討されている。この技術は、油田のオフガス、ゴミ焼却や火力発電の排ガス、天然ガス等からの二酸化炭素の分離回収に利用することができる。
このような膜を得るために、二酸化炭素に対して選択的に親和性が高い素材を用いることが提案されている。例えば、室温で液状物質であるポリアミドアミンデンドリマーを、微多孔質の支持体に含浸させた分離膜が提案されている(非特許文献2及び3)。この含浸膜の分離性能を、ヘリウムキャリアー法と言う膜に圧力差を設けない方法を用いて測定すると、二酸化炭素選択性が1000を超える優れた二酸化炭素選択性を示した。
しかしながら、液状物質であるポリアミドアミンデンドリマーを微多孔質の支持体に含浸させた分離膜では、この膜に圧力を掛けると、含浸させたデンドリマーが時間と共に支持体から抜け出して、性能を維持できないため、実用に供することが困難である。
ガス分離技術の新展開、東レリサーチセンター調査研究事業部編、株式会社東レリサーチセンター発行、1990年、第345〜362頁 J.Am.Chem.Soc.122(2000)7594〜7595 Ind.Eng.Chem.Res.40(2001)2502〜2511
[1] 式(1)
M(OR1)n (1)
(式中、Mは三価以上の金属原子を示し、nは3〜6の整数を示し、R1は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルケニル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、炭素数2〜7のアシル基、式−NHR2で示される基(式中、R2は、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−NR3R4で示される基(式中、R3及びR4は、独立に、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−C(O)−NHR5で示される基(式中、R5は、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−C(O)−NR6R7で示される基(式中、R6及びR7は、独立に、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、又は、1〜3個の酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含む5〜10員複素環基を示し、これらは互いに結合して環構造を形成していてもよく、これらの基又は環は置換基を有していてもよい。)
で示される架橋剤で架橋されてなる、架橋部分と結晶部分とを有するポリビニルアルコール内に、式(2)
で示される基、式(3)
で示される基、式(4)
で示される基、又は式(5)
で示される基を有するアミン化合物が固定化されてなる高分子膜、
[2] 三価以上の金属原子が、チタン、ジルコニウム、アルミニウム又はコバルトである前記[1]記載の高分子膜、
[3] 架橋剤が、式(6)
Ti(OR8)4 (6)
(式中、R8は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルケニル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、炭素数2〜7のアシル基、式−NHR2で示される基(式中、R2は、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−NR3R4で示される基(式中、R3及びR4は、独立に、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−C(O)−NHR5で示される基(式中、R5は、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−C(O)−NR6R7で示される基(式中、R6及びR7は、独立に、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、又は、1〜3個の酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含む5〜10員複素環基を示し、これらは互いに結合して環構造を形成していてもよく、これらの基又は環は置換基を有していてもよい。)
で示される架橋剤である前記[1]に記載の高分子膜、
[4] 架橋剤が、式(7)
で示される化合物又は式(8)
[5] ポリビニルアルコールの分子量が、5,000〜1,000,000である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の高分子膜、
[6] アミン化合物が、ポリアミドアミン系デンドリマーである前記[1]〜[5]のいずれかに記載の高分子膜、
[7] ポリアミドアミン系デンドリマーが、式
[8] 前記[1]〜[7]のいずれかに記載の高分子膜を組み込んでなるガス分離膜モジュール、及び
[9] 二酸化炭素を含む混合ガスを、前記[1]〜[7]のいずれかに記載の高分子膜に接触させて、該混合ガス中の二酸化炭素を選択的に透過させる工程を含むことを特徴とする二酸化炭素の分離方法、
に関する。
M(OR1)n (1)
(式中、記号は前記と同一意味を有する。)
で示される架橋剤で架橋されてなる、架橋部分と結晶部分とを有するポリビニルアルコール内に、式(2)
で示される基、式(3)
で示される基、式(4)
で示される基、又は式(5)
で示される基を有するアミン化合物が固定化されてなることを特徴とする。
式(1)で示される架橋剤としては、式(6)
Ti(OR8)4 (6)
(式中、記号は前記と同一意味を有し、R8の基の具体例としては、R1と同様のものが挙げられる。)
で示される架橋剤が好適に挙げられる。好ましい架橋剤として、具体的には、下記の式で示される化合物が挙げられる。式(7)
で示される化合物、式(8)
で示される化合物。チタン系架橋剤は、PVAの水酸基と架橋反応する一方で、デンドリマーのアミノ基との反応性が低く、デンドリマーとは反応し難いため、架橋剤として特に好ましい。
また、本発明で使用されるアミン化合物において、式(2)、(3)、(4)又は(5)の基が占める重量分率は、特に制限されるものではない。二酸化炭素と水素の分離能を高めるという観点から、該アミン化合物に占める式(2)、(3)、(4)又は(5)で示される基の重量分率が30%以上、好ましくは40〜95%、更に好ましくは50〜95%であるのが望ましい。
メチルエステル基を有する化合物と、式(2a)で示されるアミン化合物との反応は、通常、適当な溶媒中で行われる。溶媒としては、反応を阻害しない溶媒であれば公知のものを広く使用できる。このような溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒には、水が含まれていていることを妨げるものではない。
メチルエステル基を有する化合物と、(2a)で示されるアミン化合物との反応は、通常0〜40℃、好ましくは20〜30℃で、90〜180時間、好ましくは160〜170時間攪拌を続けることにより行われる。
原料として用いられるメチルエステル基を有する化合物、及び式(2a)で示されるアミン化合物は公知化合物の化合物を用いることができる。
上記反応によって得られた反応混合物を、例えば、冷却した後、濾過、濃縮、抽出等の単離操作に供して粗反応生成物を分離し、更に必要に応じてカラムクロマトグラフィー、再結晶等の通常の精製操作を行うことによって式(2)で示される基を有するアミン化合物を単離精製することができる。
A7で示される炭素数1〜3の有機残基としては、例えば、直鎖状又は分枝状の炭素数1〜3のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基)が好適に挙げられる。
ラミネートに用いる接着剤としては、特に限定されないが、水系接着剤(例えば、α−オレフィン系接着剤、水性高分子−イソシアネート系接着剤等)、水分散系接着剤(例えば、アクリル樹脂エマルジョン接着剤、エポキシ樹脂エマルジョン接着剤、酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤等)、溶剤系接着剤(例えば、ニトロセルロース接着剤、塩化ビニル樹脂溶剤系接着剤、クロロプレンゴム系接着剤等)、反応系接着剤(例えば、シアノアクリレート系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、シリコーン系接着剤等)、ホットメルト接着剤(例えば、エチレン−酢酸ビニル樹脂ホットメルト接着剤、ポリアミド樹脂ホットメルト接着剤、ポリアミド樹脂ホットメルト接着剤、ポリオレフィン樹脂ホットメルト接着剤等)等が挙げられる。接着フィルムとしては、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂等の熱可塑性透明樹脂からなるフィルム等が挙げられる。本発明の高分子膜のガス透過性及び多孔質支持膜のガス透過性を妨げない範囲であれば、接着剤又は接着フィルムの層の厚さは特に限定されない。
具体的には、前記ポリビニルアルコールの水溶液に、前記アミン化合物を添加し、混合溶液を調製した後、該混合溶液に架橋剤を加え重合反応(架橋反応)させることによって本発明の高分子膜を製造できる。前記ポリビニルアルコールと前記アミン化合物の混合溶液を調製後、前記架橋剤を添加し、ポリマー溶液を調製する。架橋剤を添加後、得られたポリマー溶液を攪拌するのが好ましく、攪拌時間は通常0.1〜10時間、好ましくは0.5〜5時間である。また、架橋剤を添加した後、得られた混合溶液を十分に脱泡するのが好ましい。前記架橋剤の添加量は、上記ポリビニルアルコール水溶液100重量部に対し、通常約0.5〜10重量部、好ましくは約2〜5重量部である。次いで、得られたポリマー溶液をテフロン(登録商標)シャーレにキャスティングし、乾燥し、成膜する。乾燥時間は、通常8〜100時間、好ましくは12〜75時間である。乾燥温度は、通常15〜60℃、好ましくは20〜40℃である。乾燥後、得られた膜を加熱して重合反応(架橋反応)させることによって本発明の高分子膜を得る。架橋反応の反応時間は、通常0.5〜40時間、好ましくは1〜8時間である。架橋反応の反応温度は、通常60〜160℃、好ましくは80〜120℃である。
[PVA溶液の調製]
スターラー攪拌装置、還流冷却器を備えた内容積300mlのナス型フラスコにポリビニルアルコール(PVA)(和光純薬製、重合度約2000)試薬5.00gを蒸留水95.00gに入れ、110℃のオイルバス中で4時間以上PVAを解けて溶液が透明となるまで加熱・還流・撹拌し、5wt%のPVA水溶液100gを調製した。
[高分子膜の製造]
下記式
実施例1で調製した5wt%のPVA水溶液10gに1.17gのPAMAMを加え、混合溶液を一晩で撹拌した。得られた(PVA+PAMAM)水溶液に前記式(7)で示されるジイソプロポキシ・ビス(トリエタノ−ルアミネ−ト)チタン(マツモトファインケミカル株式会社製、80wt%イソプロパノール溶液)0.32gを加え、混合溶液を2時間撹拌した。得られた混合溶液を十分に脱泡してポリマー溶液とした。このポリマー溶液をテフロン(登録商標)シャーレにキャスティングし、常圧室温で2日間自然乾燥し、引続き40℃で1日乾燥し、フィルムを得た。さらにフィルムを120度で1時間加熱処理し、目的とする高分子膜を得た。得られた高分子膜の膜厚は0.560mmであった。高分子膜の組成と製膜条件を表2に示す。
実施例1において、ジイソプロポキシ・ビス(トリエタノ−ルアミネ−ト)チタンを加えない以外は実施例1と同様にして高分子膜を得た。得られた高分子膜の膜厚は0.576mmであった。高分子膜の組成と製膜条件を表2に示す。
実施例1において、ジイソプロポキシ・ビス(トリエタノ−ルアミネ−ト)チタンの代わりにグルタルアルデヒド(GA)(東京化成工業株式会社製、50wt%水溶液)0.23gを加えた以外は実施例1と同様にして高分子膜を得た。得られた高分子膜の膜厚は0.507mmであった。高分子膜の組成と製膜条件を表2に示す。
実施例1において、ジイソプロポキシ・ビス(トリエタノ−ルアミネ−ト)チタンを加えず、また、熱処理を施さない以外は実施例1と同様にして高分子膜を得た。得られた高分子膜の膜厚は約0.580mmであった。高分子膜の組成と製膜条件を表2に示す。
得られた高分子膜を用いて二酸化炭素と水素混合ガスから二酸化炭素の分離する性能を測定した。供給側圧力101kPa〜810kPa、ガス組成CO2/H2=5vol%/95vol%〜80vol%/20vol%混合ガスを供給し、分離膜を透過したガスの透過流束F(m3(STP)/s)を石鹸膜流量計を用いて測定し、供給ガス組成XCO2、XH2と透過したガスの組成YCO2、YH2をガスクロマトグラフィーで求めた。
下記式(a)、(b)及び(c)に従って透過係数PCO2(単位:m3(STP)m/m2sPa)を算出し、同様にしてPH2も算出した。得られる透過係数から選択性α=PCO2/PH2を算出した。その結果を表3に示す。
供給ガス圧力:1〜8[kPa−A]
透過側圧力:大気圧
供給ガス流量:100cm3/min
透過側ヘリウムガス流量:10cm3/min
膜セルオーブン温度:40℃
加湿器バブラー温度:35.8℃
供給側ガス相対湿度:80RH%
<ガスクロマトグラフィー分析条件>
GC−4000:
検出器:パルス放電検出器(PDD)と熱伝導度検出器(TCD)
PDD 温度:80℃
TCD 温度:80℃
キャリアーガス量:
PDD(He):
カラム流量:25[mL/min]
放電流量:35[mL/min]
TCD(Ar):25[mL/min]
GC オーブン温度:50℃
分析カラム
(1)PDD
プレカラム:PorapakQ 80/100 SUS 1/8"×2.17mm×1.0m
メインカラム:ActiveCarbon 60/80 SUS 1/8"×2.17mm×1.0m
放電カラム:MolecularSieve5A 60/80 SUS 1/8"×2.17mm×3.0m
(2)TCD
プレカラム:PorapakQ 80/100 SUS 1/8"×2.17mm×1.0m
メインカラム:ActiveCarbon 60/80 SUS 1/8"×2.17mm×1.0m
抵抗カラム:Porapak N 80/100 SUS 1/8"×2.17mm×1.0m
2 圧力計
3 平膜セル
4 加湿器
5 背圧弁
6 石鹸膜流量計
7 ガスクロマトグラフィー
8 Heガス
9 CO2ガス
10 H2ガス
Claims (6)
- 式(6)
Ti(OR 8 ) 4 (6)
(式中、R 8 は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルケニル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、炭素数2〜7のアシル基、式−NHR 2 で示される基(式中、R 2 は、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−NR 3 R 4 で示される基(式中、R 3 及びR 4 は、独立に、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−C(O)−NHR 5 で示される基(式中、R 5 は、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−C(O)−NR 6 R 7 で示される基(式中、R 6 及びR 7 は、独立に、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、又は、1〜3個の酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含む5〜10員複素環基を示し、これらは互いに結合して環構造を形成していてもよく、これらの基又は環は置換基を有していてもよい。)
で示されるチタン系架橋剤で架橋されてなる、架橋部分と結晶部分とを有するポリビニルアルコール内に、式(2)
で示される基、式(3)
で示される基、式(4)
で示される基、又は式(5)
で示される基を有するポリアミドアミン系デンドリマーが固定化されてなる二酸化炭素分離用高分子膜。 - ポリビニルアルコールの分子量が、5,000〜1,000,000である請求項1又は2に記載の二酸化炭素分離用高分子膜。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の二酸化炭素分離用高分子膜を組み込んでなる二酸化炭素分離膜モジュール。
- 二酸化炭素を含む混合ガスを、請求項1〜4のいずれかに記載の二酸化炭素分離用高分子膜に接触させて、該混合ガス中の二酸化炭素を選択的に透過させる工程を含むことを特徴とする二酸化炭素の分離方法。
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