JP5320413B2 - 自動変速機の制御装置 - Google Patents

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Description

この発明は自動変速機の制御装置に関し、より具体的には油圧クラッチ(摩擦係合要素)に高低2種のライン圧を供給可能なレギュレータバルブの故障判定に関する。
油圧クラッチと油圧源を接続する油路に設けられて車両の走行状態から決定される高低2種のライン圧領域に応じたライン圧を油圧クラッチに供給可能なレギュレータバルブを備えた自動変速機において、低ライン圧領域を拡大して供給油圧を減少させることで燃費性能の向上を図る技術が知られており、その例としては下記の特許文献1記載の技術を挙げることができる。
特許文献1記載の技術にあっては、レギュレータバルブにライン圧ソレノイド(電磁ソレノイドバルブ)を接続し、ライン圧ソレノイドへの通電をオン・オフすることでレギュレータバルブのスプールに印加される制御圧を調節し、よってレギュレータから高低2種のライン圧を油圧クラッチに供給、より具体的には通電をオフすることで高ライン圧、オンすることで低ライン圧を油圧クラッチに供給可能に構成している。
国際公開2010/001665号公報
特許文献1記載の技術にあっては、上記のように構成することで、車両の走行状態から決定される高低2種のライン圧領域に応じたライン圧を油圧クラッチに供給可能としているが、レギュレータバルブのライン圧ソレノイドがオン固着、即ち、オン位置で固着(故障)すると、供給油圧を減少させることができず、所期の燃費性能の向上を図ることができない。
その場合、例えば油路に油圧スイッチなどのデバイスを追加すれば、レギュレータバルブのライン圧ソレノイドの故障を検出することができるが、デバイスの追加はコストアップを招いてしまう。
この発明の目的は上記した課題を解決し、高低2種のライン圧を摩擦係合要素に供給可能なレギュレータバルブを少なくとも備える自動変速機において、新たなデバイスを追加することなく、レギュレータバルブの故障を判定するようにした自動変速機の制御装置を提供することにある。
上記した課題を解決するために、請求項1にあっては、車両に搭載された原動機の駆動軸に接続される入力軸と、前記車両の駆動輪に接続される出力軸と、前記入力軸と出力軸の間に配置される複数個の変速段ギヤと、前記複数個の変速段ギヤのいずれかを前記入力軸または出力軸に係合して前記変速段のいずれかを確立する複数個の摩擦係合要素と、前記摩擦係合要素と油圧源を接続する油路に設けられて前記車両の走行状態から決定される高低2種のライン圧領域に応じたライン圧を前記摩擦係合要素に供給可能なレギュレータバルブとを少なくとも備えた自動変速機の制御装置において、前記高低2種のライン圧領域のうちの高ライン圧領域で走行するとき、前記係合される摩擦係合要素の滑りがしきい値を超えるか否か判定する摩擦係合要素滑り判定手段と、前記滑りが前記しきい値を超えるとき、前記レギュレータバルブが故障と判定する故障判定手段とを備えると共に、前記しきい値は、前記摩擦係合要素の係合トルクと前記入力軸に入力される入力トルクとに少なくとも基づいて設定される如く構成した。
請求項に係る自動変速機の制御装置にあっては、前記摩擦係合要素の係合トルクは、前記摩擦係合要素の構成部材の温度を少なくとも含むパラメータから推定される如く構成した。
請求項に係る自動変速機の制御装置にあっては、前記故障判定手段は、前記滑りが前記しきい値を所定時間以上継続して超えるとき、前記レギュレータバルブが故障と判定する如く構成した。
請求項1にあっては、車両に搭載された原動機の駆動軸に接続される入力軸と駆動輪に接続される出力軸の間に配置され変速段ギヤを入力軸または出力軸に係合して変速段を確立する複数個の摩擦係合要素と、摩擦係合要素と油圧源を接続する油路に設けられて車両の走行状態から決定される高低2種のライン圧領域に応じたライン圧を摩擦係合要素に供給可能なレギュレータバルブとを少なくとも備えた自動変速機の制御装置において、高低2種のライン圧領域のうちの高ライン圧領域で走行するとき、摩擦係合要素の滑りがしきい値を超えるか否か判定し、しきい値を超えるとき、レギュレータバルブ(のライン圧ソレノイド)が故障と判定する如く構成したので、油圧スイッチなどの新たなデバイスを追加することなく、レギュレータバルブ(のライン圧ソレノイド)のオン故障を判定することができる。
即ち、高ライン圧領域で走行するとき、摩擦係合要素は低ライン圧領域で走行するときに比して高いライン圧を供給されていることから、摩擦係合要素の滑りは比較的小さいはずである。従って摩擦係合要素の滑りが適宜設定するしきい値を超えるか否か判定することでレギュレータバルブの故障、より具体的にはオン故障(オン(励磁)しても所期の動作が生じない故障)を判定することができる。
また、しきい値は、摩擦係合要素の係合トルクと入力軸に入力される入力トルクとに少なくとも基づいて設定される如く構成したので、上記した効果に加え、摩擦係合要素の係合トルクなどを考慮することでしきい値を摩擦係合要素の滑りに対応させて適正に設定することができ、レギュレータバルブの故障の判定精度を向上させることができる。
請求項に係る自動変速機の制御装置にあっては、摩擦係合要素の係合トルクは、摩擦係合要素の構成部材の温度を少なくとも含むパラメータから推定される如く構成したので、上記した効果に加え、構成部材の温度による係合トルクの変化を考慮してしきい値を適正に設定することができ、レギュレータバルブの故障の判定精度を一層向上させることができる。
請求項に係る自動変速機の制御装置にあっては、滑りがしきい値を所定時間以上継続して超えるとき、レギュレータバルブが故障と判定する如く構成したので、上記した効果に加え、一過性の現象による場合などを排除することができ、レギュレータバルブの故障の判定精度を一層向上させることができる。
この発明の実施例に係る自動変速機の制御装置を全体的に示す概略図である。 図1に示す油圧機構の構成を部分的に示す油圧回路図である。 図1に示すTM/ECUが行う変速制御で用いられるシフトマップの説明図である。 図1に示すTM/ECUが行うレギュレータバルブの故障判定動作を示すフロー・チャートである。 図4フロー・チャートの処理で使用される安全率としきい値を示す説明図である。 図5の安全率の算出で用いられるプレート温度とクラッチトルクの関係を示す説明図である。 図4フロー・チャートの処理を説明するタイム・チャートである。
以下、添付図面を参照してこの発明に係る自動変速機の制御装置を実施するための形態について説明する。
図1はこの発明の実施例に係る自動変速機の制御装置を全体的に示す概略図、図2は図1に示す油圧機構の構成を部分的に示す油圧回路図である。
図1を参照して以下説明すると、符号TMは自動変速機を示す。自動変速機TMは車両(図示せず)用の変速機であり、前進5速および後進1速の変速段を有すると共に、例えばガソリンを燃料とする火花点火式のエンジン(内燃機関(原動機))ENGに接続される。
即ち、自動変速機TMは、エンジンENGのクランク軸に接続される駆動軸10にトルクコンバータ(流体継手)12を介して接続される第1入力軸14と、第1入力軸14と平行に配置される第2入力軸16と、第1、第2入力軸14,16と平行に配置される出力軸(カウンタ軸)20とを備える。
第1、第2入力軸14,16の間にはアイドル軸22が平行に配置される。トルクコンバータ12はポンプインペラ12aとタービンランナ12bとロックアップクラッチ12cを備え、ポンプインペラ12aは駆動軸10、タービンランナ12bは第1入力軸14に接続される。
第1入力軸14には、4速ドライブギヤ24aと、4速クラッチ24bと、5速ドライブギヤ26aと、5速クラッチ26bと、4速ドライブギヤ24aと一体に連結されたリバース(後進)ドライブギヤ30aが相対回転自在に配置される。
第2入力軸16には、1速(LOW)ドライブギヤ32aと、1速クラッチ32bと、2速ドライブギヤ34aと、2速クラッチ34bと、3速ドライブギヤ36aと、3速クラッチ36bが相対回転自在に配置される。
出力軸20には、1速ドライブギヤ32aと噛合する1速ドリブンギヤ32cと、2速ドライブギヤ34aと噛合する2速ドリブンギヤ34cと、3速ドライブギヤ36aと噛合する3速ドリブンギヤ36cと、5速ドライブギヤ26aと噛合する5速ドリブンギヤ26cと、ファイナルドライブギヤ40が相対回転不能に固定される。
また出力軸20には、4速ドライブギヤ24aと噛合する4速ドリブンギヤ24cとリバースドライブギヤ30aと噛合するリバースドリブンギヤ30cが相対回転可能に配置されると共に、ドグクラッチ42が相対回転不能でかつ軸方向に移動自在に配置される。
第1入力軸14には連結ギヤ44a、第2入力軸16には連結ギヤ44bが固定されると共に、アイドル軸22には連結ギヤ44aと噛合する連結ギヤ44cと、連結ギヤ44bと噛合する連結ギヤ44dが固定される。
第1、第2入力軸14,16と出力軸20はアイドル軸22と連結ギヤ44(44a,44b,44c,44d)を介して連結される。第1、第2入力軸14,16、出力軸20とアイドル軸22は、自動変速機TMのケース(図示せず)内にベアリング46を介して回転自在に支承される。
このように自動変速機TMは平行軸式からなると共に、前進5速、後進(リバース)1速の(それぞれドライブギヤとドリブンギヤからなる)変速段ギヤ32,34,36,24,26(および30)を有する。
ファイナルドライブギヤ40はファイナルドリブンギヤ(図示せず)などを介してディファレンシャル機構50に接続される。ディファレンシャル機構50はドライブ軸52を介して駆動輪(車輪)54に接続される。
1速、2速、3速、4速、5速クラッチ32b、34b、36b、24b、26bは全て多板式の油圧クラッチ(摩擦係合要素)からなり、油圧供給機構56からリターンスプリングが作用する油室に油圧(作動油ATFの圧力)を供給されるとき、対向配置されたディスクをプレートに押圧することで対応するギヤを第1、第2入力軸14,16または出力軸20に係合(固定)して相応する変速段を確立する。
以下、油圧クラッチ、即ち、1速クラッチ32b、2速クラッチ34b、3速クラッチ36b、4速クラッチ24b、5速クラッチ26bを総称するとき、「油圧クラッチCLn」という。
変速段の確立について説明すると、1速クラッチ32bに油圧を供給して1速ドライブギヤ32aを係合(即ち、1速ドライブギヤ32aを第2入力軸16に係合)すると、トルクコンバータ12を介して第1入力軸14に入力された回転駆動力(入力トルク)はアイドル軸22と連結ギヤ44を介して第2入力軸16に伝達され、そこに係合された1速ドライブギヤ32aを回転させる。
1速ドライブギヤ32aの回転はそれに噛合する1速ドリブンギヤ32cに伝えられて出力軸20を回転させることで1速が確立される。出力軸20の回転はファイナルドライブギヤ40からファイナルドリブンギヤなどを介してディファレンシャル機構50に伝えられ、さらには駆動輪54に伝えられて車両を1速で前進走行させる。
2速クラッチ34bに油圧を供給して2速ドライブギヤ34aを第2入力軸16に係合すると、同様に第1入力軸14の回転駆動力はアイドル軸22と連結ギヤ44を介して第2入力軸16に伝達され、2速ドライブギヤ34aを回転させる。2速ドライブギヤ34aの回転は2速ドリブンギヤ34cに伝えられて出力軸20を回転させることで2速が確立される。
3速クラッチ36bに油圧を供給して3速ドライブギヤ36aを第2入力軸16に係合すると、同様に第1入力軸14の回転駆動力はアイドル軸22と連結ギヤ44を介して第2入力軸16に伝達され、3速ドライブギヤ36aを回転させる。3速ドライブギヤ36aの回転は3速ドリブンギヤ36cに伝えられて出力軸20を回転させることで3速が確立される。
4速クラッチ24bに油圧を供給して4速ドライブギヤ24aを第1入力軸14に係合すると、第1入力軸14の回転駆動力は4速ドライブギヤ24aを回転させる。ドグクラッチ42によって4速ドリブンギヤ24cが出力軸20に係合されると、4速ドライブギヤ24aの回転は4速ドリブンギヤ24cを介して出力軸20に伝えられ、出力軸20を回転させることで4速が確立される。
5速クラッチ26bに油圧を供給して5速ドライブギヤ26aを第1入力軸14に係合すると、第1入力軸14の回転駆動力は5速ドライブギヤ26aを回転させ、その回転は5速ドリブンギヤ26cに伝えられて出力軸20を回転させることで5速が確立される。
4速クラッチ24bに油圧を供給してリバースドライブギヤ30aを第1入力軸14に係合して回転させると共に、ドグクラッチ42によってリバースドリブンギヤ30cが出力軸20に係合されると、リバースドライブギヤ30aの回転はリバースアイドルギヤ(図示せず)を介してリバースドリブンギヤ30cに伝えられ、出力軸20を反対方向に回転させることで後進1速が確立される。
図2は油圧供給機構56の構成を部分的に示す油圧回路図である。
図示の如く、油圧供給機構56はリザーバ56aに貯留された作動油ATFを汲み上げて加圧して得た油圧を油路56bに吐出する送油ポンプ(オイルポンプ(油圧源))56cと油圧クラッチCLn(1速クラッチ32b、2速クラッチ34b、3速クラッチ36b、4速クラッチ24b、5速クラッチ26b)を接続する油路56dに設けられるレギュレータバルブ56eを備える。
送油ポンプ56cから油路56bに吐出される油圧は油路56f、56gを介してレギュレータバルブ56eに送られ、レギュレータバルブ56eでライン圧(元圧)に調圧された後、油路56dから油圧クラッチCLnに向けて出力される。
レギュレータバルブ56eはスプリング56e1によって図2で左方向に付勢されるスプール56e2を有する。送油ポンプ56cから油路56bに吐出される油圧は油路56h,56iを介してスプール56e2の前端に作用させられる。
油路56hと56iの連通路56jにはソレノイドバルブ(電磁オン・オフソレノイドバルブ)56e3が介挿(接続)される。ソレノイドバルブ56e3はプランジャ56e31を備える。プランジャ56e31はスプリングで連通路56jを閉塞する突出位置に付勢されており、オン(励磁)されるとき後退して連通路56jを開放する。
より具体的には、ソレノイドバルブ56e3がオン(励磁)されると、プランジャ56e31は突出位置から後退させられて連通路56jを開放する。その結果、レギュレータバルブ56eのスプール56e2には油路56fと油路56h,56i(と連通路56j)から供給される油圧が共に作用してスプール56e2を図2で右方向に移動させ、油路56dから出力されるレギュレータ56eのライン圧は低圧となる。
一方、ソレノイドバルブ56e3がオフ(消磁)されると、プランジャ56e31は突出位置に止まって連通路56jを閉塞する。その結果、レギュレータバルブ56eのスプール56e2には油路56fから供給される油圧のみが作用し、スプール56e2の図2で右方向への移動量はオン(励磁)される場合に比して減少し、油路56dから出力されるレギュレータ56eのライン圧は所定圧だけ高圧となるように構成される。以下、ソレノイドバルブ56e3を「ライン圧ソレノイド」という。
レギュレータバルブ56eで低圧(あるいは高圧)に調圧されたライン圧は油路56dから出力され、マニュアルバルブとリニアソレノイドバルブ、シフトバルブなどの油圧制御バルブ群(全て図示せず)を介して油圧クラッチCLnに供給される。
より具体的には、後述するように車両の走行状態に応じてシフト(変速)されるとき、現在係合されている油圧クラッチCLnから油圧を排出すると共に、シフト先の変速段(n速)に対応する油圧クラッチCLnに油圧が供給される。
図1の説明に戻ると、自動変速機TMはマイクロコンピュータを備えた電子制御ユニット(ECU。以下「TM/ECU」という)60を備える。エンジンENGの動作を制御するために同様にマイクロコンピュータを備えた電子制御ユニット(以下「ENG/ECU」という)62が設けられる。
エンジンENGにあってアクセルペダルは吸気管に配置されたスロットルバルブとの機械的な連結が断たれ、スロットルバルブを電動モータなどのアクチュエータで開閉するDBW(Drive By Wire)機構64が設けられる。
エンジンENGにおいて、DBW機構64にはスロットル開度センサ66が設けられてアクチュエータの動作量からスロットルバルブの開度(スロットル開度TH)を示す出力を生じると共に、アクセルペダルの付近にはアクセル開度センサ70が設けられてアクセル開度(アクセルペダルの踏み込み量)APATに応じた出力を生じる。
また、エンジンENGのクランク軸の付近にはクランク角センサ72が設けられてピストンのクランク角度を示す出力を生じると共に、吸気管においてスロットルバルブの下流には絶対圧センサ74が設けられて吸気管内絶対圧(エンジン負荷)を示す出力を生じる。
ENG/ECU62はクランク角センサ72の出力間隔をカウントしてエンジン回転数NEを検出し、検出されたエンジン回転数NEとアクセル開度センサ70から検出されたアクセル開度APATとエンジン回転数NEからエンジンENGで要求される要求トルクPMCMDを算出し、算出された要求トルクPMCMDとエンジン回転数NEから燃料噴射量と点火時期を制御する。
TM/ECU60はENG/ECU62と相互に通信自在に接続され、ENG/ECU62からエンジン回転数NE、スロットル開度TH、アクセル開度APATなどの情報を取得する。
さらに、自動変速機TMの第1入力軸14の付近には第1の回転数センサ80が配置され、自動変速機TMの入力軸回転数(入力回転数)NMを示す信号を出力すると共に、出力軸20には第2の回転数センサ82が配置され、自動変速機TMの出力軸回転数(出力回転数)NCを示す信号を出力する。
またドライブ軸52の付近には第3の回転数センサ84が配置されてドライブ軸52の所定回転当たりに出力を生じ、油圧供給機構56のリザーバ56aの内部には温度センサ86が配置されて作動油ATFの温度(油温TATF)を示す信号を出力すると共に、レンジセレクタ(図示せず)の付近にはセレクタ位置センサ90が配置され、運転者によって選択されたP,N,D,Rなどのレンジを示す出力を生じる。
これらセンサの出力もTM/ECU60に入力される。TM/ECU60は第3の回転数センサ84の出力の間隔をカウントして車速VLVHを検出し、検出された車速VLVHと前記したセンサの出力とENG/ECU62から通信される情報に基づき、変速制御を行う。
その変速制御について図3を参照して説明すると、TM/ECU60は、Dなどの前進走行レンジが選択されて車両が走行しているとき、車両の走行状態、即ち、検出されたアクセル開度APATと車速VLVHから同図に示すシフトマップを検索し、現在の変速段(n速)からシフトアップ(あるいはシフトダウン)すべきか否か判断し、肯定されるとき前記した油圧制御バルブ群のリニアソレノイドバルブなどを励磁・消磁してアップ(あるいはダウン)すべき変速段を確立する。尚、図3で実線はアップ、破線はダウンのときのシフト線を示す。
その場合、図3に示す如く、車両の走行領域は走行状態、具体的にはアクセル開度APATから高低2種のライン圧領域に大別される。即ち、アクセル開度APATが比較的小さい領域は低ライン圧領域、然らざる場合は高ライン圧領域とされる。高ライン圧領域は低ライン圧領域より供給油圧が所定値以上高く設定される。
従って、TM/ECU60は検索される高低2種のライン圧領域に応じたライン圧をシフトすべき変速段(n速)を確立する油圧クラッチCLnに供給するようにレギュレータバルブ56eのライン圧ソレノイド56e3を励磁・消磁する。
TM/ECU60は上記した変速制御に加え、そのレギュレータバルブ56e(のライン圧ソレノイド56e3)の故障判定を行う。
図4はTM/ECU60の動作、即ち、この実施例に係る自動変速機の制御装置の動作であるレギュレータバルブ56eの故障判定動作を示すフロー・チャートである。
以下説明すると、S(ステップ)10において車両が高ライン圧領域を走行中か否か判断する。即ち、図3に示す高ライン圧領域を走行状態にあるか否か判断し、否定されるときは以降の処理をスキップする。このように故障判定は高ライン圧領域走行時に限って行う。
一方、S10で肯定されるときはS12に進んで安全率を算出し、S14に進んでしきい値を設定し、S16に進んでクラッチスリップ量がしきい値を超えるか否か判断する。
クラッチスリップ量は以下のように算出される。
クラッチスリップ量=入力軸回転数NM−出力軸回転数NC×レシオ[rpm]
上記で入、出力軸回転数NM,NCは第1、第2の回転数センサ80,82の出力から検出される。レシオは係合されている変速段の変速比を意味する。
上記について説明すると、車両が高ライン圧領域を走行中であれば油圧供給機構56のライン圧ソレノイド56e3はオフ(消磁)されていてレギュレータバルブ56eからは油圧クラッチCLnに高ライン圧が供給されており、従って油圧クラッチCLnのスリップ量は比較的小さく、例えば低ライン圧供給時のそれよりも所定量だけ小さいはずである。
従って、油圧クラッチCLnのスリップ量を算出して適宜設定されるしきい値と比較することで、レギュレータバルブ56eのライン圧ソレノイド56e3の故障を判定することができる。即ち、算出値がしきい値を超えるときはレギュレータバルブ56eのライン圧ソレノイド56e3がオフ(消磁)されない故障(オン故障)と判定することができる。
故障判定に際してはしきい値の設定が判定精度に影響することから、この実施例においてはクラッチトルクなどを勘案して得た安全率という概念でしきい値を設定するようにした。
図5はその安全率としきい値を示す説明図である。
ここで、安全率は以下のように算出される。
安全率=クラッチトルク/タービントルク
尚、クラッチトルク、即ち、油圧クラッチCLnは下記のパラメータから算出される。
クラッチトルク=μ×n×rm×(P×A+Foil−Frtn)
上記で、μ:油圧クラッチCLnの摩擦係数(プレート温度/回転数で変化)、n:フェーシング摩擦面数(固定値)、rm:フェーシング有効半径(固定値)、P:クラッチ圧(油温/回転数で変化)、A:ピストン受圧面積(固定値)、Foil:遠心油圧によるピストン推力(回転数で変化)、Frtn:リターンスプリング荷重(固定値)である。
油温TATFは温度センサ86の出力から、回転数は第1の回転数センサ80(あるいは第2の回転数センサ82)の出力から検出するが、油圧クラッチCLnのプレート温度(構成部材の温度)も同様に油温TATFと回転数の履歴から推定する。
即ち、図6に示す如く、プレート温度が上昇するにつれてクラッチトルクは低下し、その低下は回転数が増加するに伴って顕著となる。このようにプレート温度がクラッチトルクに大きく影響することから、プレート温度を推定するようにした。尚、図6は油温TATFが80℃のときの値である。
プレート温度の推定は具体的には以下のように行う。
即ち、油圧クラッチCLnに単位時間Δt当たりに発生する発熱量ΔQを適宜な手法で算出し、次いでプレートの比熱などを用いて算出された発熱量ΔQによる温度上昇分ΔTを算出し、次いで算出値を積算して時間tにおける発熱量Qを算出する。
さらに、油圧クラッチCLnのプレート温度は作動油ATFとの熱交換で冷却されることから、例えば作動油ATFの熱吸収量を油温TATFと回転数を用いて算出して発熱量を修正してプレート温度を算出する。
タービントルク、即ち、入力トルクはエンジン回転数NEとエンジン負荷(例えば吸気管内絶対圧PBA)に基づき、トルクコンバータ12のロックアップクラッチ12cの係合容量を勘案しつつ、算出する。
図5に示す如く、しきい値は安全率が1.0以上で一定に設定される一方、安全率が減少、即ち、入力トルクに対する油圧クラッチCLnの伝達容量(クラッチ伝達トルク)が減少するほど増加するように設定する。
これにより、入力トルクに対するクラッチ伝達トルクが小さいときに故障と誤判定するのを回避することができる。尚、図中の破線は油圧クラッチCLnが正常時のスリップ量を示す。
尚、上記において安全率(=クラッチトルク/タービントルク)という概念を用いてしきい値を設定するようにしたが、要はしきい値をクラッチトルク(油圧クラッチCLnの係合トルク)とタービントルク(第1入力軸14に入力される入力トルク)とに基づいて設定すれば良い。
図4フロー・チャートの説明に戻ると、S16で否定されるときは以降の処理をスキップする。換言すれば、ライン圧ソレノイド56e3が正常であって故障ではないと判定する。
他方、S16で肯定されてクラッチスリップ量がしきい値を超えると判断されるときはS18に進み、所定時間(例えば2sec)経過したか否か判断し、否定されるときは以降の処理をスキップする。
他方、S18で肯定されるときはS20に進み、ライン圧ソレノイド56e3が故障と判定、即ち、レギュレータバルブ56e(のライン圧ソレノイド56e3)が故障、より正確にはオン故障(オン(励磁)してもプランジャ56e31が後退せず、突出状態のまま)と判定する。
図7はS18,S20の処理を説明するタイム・チャートである。このように所定時間の経過を判断することで、レギュレータバルブ56e(のライン圧ソレノイド56e3)の故障を確実に判定することができる。
上記した如く、この実施例にあっては、車両に搭載された原動機(エンジンENG)の駆動軸10に接続される入力軸(第1、第2の入力軸14,16)と、前記車両の駆動輪54に接続される出力軸20と、前記入力軸と出力軸の間に配置される複数個の変速段ギヤ(1速ドライブギヤ32a、1速ドリブンギヤ32c、2速ドライブギヤ34a、2速ドリブンギヤ34cなど)と、前記複数個の変速段ギヤのいずれかを前記入力軸または出力軸に係合して前記変速段のいずれかを確立する複数個の摩擦係合要素(油圧クラッチCLn、より具体的には1速クラッチ(油圧クラッチ)32b、2速クラッチ(油圧クラッチ)34bなど)、前記摩擦係合要素と油圧源(送油ポンプ56c)を接続する油路56dに設けられて前記車両の走行状態から決定される高低2種のライン圧領域に応じたライン圧を前記摩擦係合要素に供給可能なレギュレータバルブ56eとを少なくとも備えた自動変速機TMの制御装置(TM/ECU60)において、前記高低2種のライン圧領域のうちの高ライン圧領域で走行するとき、前記係合される摩擦係合要素の滑り(クラッチスリップ量)がしきい値を超えるか否か判定する摩擦係合要素滑り判定手段(S10からS18)と、前記滑りが前記しきい値を超えるとき、前記レギュレータバルブ56eが故障と判定する故障判定手段(S20)とを備える如く構成したので、油圧スイッチなどの新たなデバイスを追加することなく、レギュレータバルブ56eのオン故障を判定することができる。
即ち、高ライン圧領域で走行するとき、摩擦係合要素(油圧クラッチCLn)は低ライン圧領域で走行するときに比して高いライン圧を供給されていることから、摩擦係合要素の滑りは比較的小さいはずである。従って摩擦係合要素の滑りが適宜設定するしきい値を超えるか否か判定することでレギュレータバルブ56eの故障、より具体的にはそのオン故障(オン(励磁)しても所期の動作が生じない故障)を判定することができる。
また、前記しきい値は、前記摩擦係合要素(油圧クラッチCLn)の係合トルク(クラッチトルク)と前記入力軸に入力される入力トルク(タービントルク)とに少なくとも基づいて設定される如く構成したので、上記した効果に加え、摩擦係合要素(油圧クラッチCLn)の係合トルクなどを考慮することでしきい値を摩擦係合要素の滑りに対応させて適正に設定することができ、レギュレータバルブ56eの故障の判定精度を向上させることができる。
また、前記摩擦係合要素(油圧クラッチCLn)の係合トルク(クラッチトルク)は、前記摩擦係合要素の構成部材の温度(プレート温度)を少なくとも含むパラメータ、より具体的には摩擦係数、クラッチ圧などから推定される如く構成したので、上記した効果に加え、構成部材の温度(プレート温度)による係合トルク(クラッチトルク)の変化を考慮してしきい値を適正に設定することができ、レギュレータバルブ56eの故障の判定精度を一層向上させることができる。
また、前記故障判定手段は、前記滑りが前記しきい値を所定時間以上継続して超えるとき、前記レギュレータバルブ56eが故障と判定する如く構成したので、上記した効果に加え、一過性の現象による場合などを排除することができ、レギュレータバルブ56eの故障の判定精度を一層向上させることができる。
尚、上記において、有段式の自動変速機の例として平行軸方式の自動変速機を示したが、この発明はそれに限定されるものではなく、ツインクラッチ型の自動変速機であっても良い。
また、原動機としてガソリンを燃料とする火花点火式のエンジン(内燃機関)を示したが、この発明はそれに限定されるものではなく、軽油を燃料とする圧縮着火式のディーゼルエンジンであっても良く、あるいは電動機など他の原動機であっても良い。
TM 自動変速機、ENG エンジン(内燃機関(原動機))、CLn 油圧クラッチ、10 駆動軸、12 トルクコンバータ、14 第1入力軸、16 第2入力軸、20 出力(カウンタ)軸、22 アイドル軸、24a 4速ドライブギヤ、24b 4速クラッチ(油圧クラッチ(摩擦係合要素))、24c 4速ドリブンギヤ、26a 5速ドライブギヤ、26b 5速クラッチ(油圧クラッチ(摩擦係合要素))、26c 5速ドリブンギヤ、30a リバースドライブギヤ、30c リバースドリブンギヤ、32a 1速ドライブギヤ、32b 1速クラッチ(油圧クラッチ(摩擦係合要素))、32c 1速ドリブンギヤ、34a 2速ドライブギヤ、34b 2速クラッチ(油圧クラッチ(摩擦係合要素))、34c 2速ドリブンギヤ、36a 3速ドライブギヤ、36b 3速クラッチ(油圧クラッチ(摩擦係合要素))、36c 3速ドリブンギヤ、40 ファイナルドライブギヤ、44 連結ギヤ、46 ベアリング、50 ディファレンシャル機構、54 駆動輪、56 油圧供給機構、56e レギュレータバルブ、56e3 ソレノイドバルブ(ライン圧ソレノイド)、60 TM/ECU、62 ENG/ECU、64 DBW機構、66 スロットル開度センサ、70 アクセル開度センサ、80 第1の回転数センサ、82 第2の回転数センサ、84 第3の回転数センサ、86 温度センサ

Claims (3)

  1. 車両に搭載された原動機の駆動軸に接続される入力軸と、前記車両の駆動輪に接続される出力軸と、前記入力軸と出力軸の間に配置される複数個の変速段ギヤと、前記複数個の変速段ギヤのいずれかを前記入力軸または出力軸に係合して前記変速段のいずれかを確立する複数個の摩擦係合要素と、前記摩擦係合要素と油圧源を接続する油路に設けられて前記車両の走行状態から決定される高低2種のライン圧領域に応じたライン圧を前記摩擦係合要素に供給可能なレギュレータバルブとを少なくとも備えた自動変速機の制御装置において、前記高低2種のライン圧領域のうちの高ライン圧領域で走行するとき、前記係合される摩擦係合要素の滑りがしきい値を超えるか否か判定する摩擦係合要素滑り判定手段と、前記滑りが前記しきい値を超えるとき、前記レギュレータバルブが故障と判定する故障判定手段とを備えると共に、前記しきい値は、前記摩擦係合要素の係合トルクと前記入力軸に入力される入力トルクとに少なくとも基づいて設定されることを特徴とする自動変速機の制御装置。
  2. 前記摩擦係合要素の係合トルクは、前記摩擦係合要素の構成部材の温度を少なくとも含むパラメータから推定されることを特徴とする請求項記載の自動変速機の制御装置。
  3. 前記故障判定手段は、前記滑りが前記しきい値を所定時間以上継続して超えるとき、前記レギュレータバルブが故障と判定することを特徴とする請求項1または2記載の自動変速機の制御装置。
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