JP2009243638A - 自動変速機の制御装置 - Google Patents

自動変速機の制御装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2009243638A
JP2009243638A JP2008093354A JP2008093354A JP2009243638A JP 2009243638 A JP2009243638 A JP 2009243638A JP 2008093354 A JP2008093354 A JP 2008093354A JP 2008093354 A JP2008093354 A JP 2008093354A JP 2009243638 A JP2009243638 A JP 2009243638A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
command value
friction
hydraulic pressure
automatic transmission
expected
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2008093354A
Other languages
English (en)
Inventor
Takayuki Kubo
孝行 久保
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Aisin AW Co Ltd
Original Assignee
Aisin AW Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Aisin AW Co Ltd filed Critical Aisin AW Co Ltd
Priority to JP2008093354A priority Critical patent/JP2009243638A/ja
Publication of JP2009243638A publication Critical patent/JP2009243638A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Abstract

【課題】変速進行状態に伴う摩擦材の表面温度変化によって生じる摩擦係数変化に起因する係合遅れや急係合を防止し、クラッチやブレーキの伝達トルクを目標通りに制御する。
【解決手段】目標伝達トルク設定手段21が変速中におけるクラッチやブレーキの目標伝達トルクを設定する。発熱量演算手段22aが所定時間後までに上昇させる伝達トルクと摩擦材の相対回転数とに基づき予想発熱量を演算し、吸熱量演算手段22bが摩擦材に供給される潤滑油量に基づき予想吸熱量を演算し、上昇温度演算手段22が予想発熱量及び予想吸熱量から摩擦材の予想上昇温度を演算する。指令値設定手段20は、変速進行状態判定手段23の判定結果に基づき、変速の進行状態ごとに用意された指令値マップM1〜Mnから1つを選定し、予想上昇温度と目標伝達トルクとを用いて指令値マップを参照して油圧指令値を設定する。
【選択図】図1

Description

本発明は、車輌等に搭載される自動変速機の制御装置に係り、詳しくは、例えばクラッチやブレーキ等の摩擦部材を、変速の進行状態に応じて適正に摩擦係合させるための油圧制御を行う自動変速機の制御装置に関する。
一般に、車輌等に搭載される自動変速機において、動力伝達経路を形成するクラッチやブレーキは、油圧制御装置から供給される作動油圧によって係合制御されており、その作動油圧は、制御部(ECU)等により演算された油圧指令値によってコントロールされている。この制御部により油圧指令値を演算する際は、あらかじめクラッチやブレーキの摩擦材の総面積、摩擦材の枚数、摩擦材の摩擦係数等から、それらのクラッチやブレーキにおける油圧指令値とトルク容量との関係を演算しておき、例えば変速時に係合ショック等が生じないように、その油圧指令値の大きさ、スイープ勾配、時間等を決定して油圧制御に用いている。
しかしながら、このように油圧指令値をあらかじめ演算する際に用いている摩擦材の摩擦係数は、一般的な摩擦材の単体試験を行って得られた値を用いているが、この試験自体が、摩擦材の性能限界等を考慮して、高負荷状態を想定した(例えば全開スロットル状態のパワーオンアップシフト等を想定した)試験となっており、その試験の結果で得られた摩擦係数が、どのような状況でも一定の摩擦係数であるかのように上記演算に用いられているという問題がある。即ち、実際には摩擦材の摩擦係数は、特にその表面温度によって変化するものであり、低負荷状態(低スロットル開度の変速)と高負荷状態(高スロットル開度の変速)とでは発熱量の違いから摩擦材の表面温度の推移が大きく相違する。
従って、上述のような高負荷状態を想定した試験で得られた摩擦係数を基にして油圧指令値を算出すると、特に低負荷状態の変速において、設計通りのトルク伝達が行われず、例えば変速初期に摩擦材の表面温度が低いことに起因して摩擦係合力が足りず、変速終了期に摩擦材の表面温度が上昇することに起因して急係合が生じてエンドショック(変速ショック)が発生してしまう虞があり、また、摩擦係数が一定であるとして設計されているために、油圧の学習制御においても誤学習を生じてしまう虞もあった。
そのため、摩擦材の温度を実測して摩擦係数の変化を制御に反映させようとしたものも提案されている(特許文献1参照)。このものは、変速クラッチのクラッチドラムの外周に油温センサを配設して、該変速クラッチを通過した潤滑油の温度を検出することで摩擦材の温度を実測し、その摩擦材の温度から摩擦係数を推定することで、目標の油圧を決定している。
特開2007−239900号公報
しかし、上記特許文献1のものにあっては、検出された潤滑油の温度を摩擦材の温度として用いているため、精度良く摩擦材の温度が検出できないという問題がある。また、潤滑油温の検出結果から摩擦係数を求めているため、クラッチの作動油圧を算出する際に該摩擦係数をフィードバック制御に用いることはできるものの、その後のクラッチの摩擦係数がどのように変化するかは検出することができないため、油圧指令からの油圧応答性を考慮すると、検出した摩擦係数に応じた油圧制御を行うまでにタイムラグが生じ、その間にも摩擦材のスリップによる発熱等によって該摩擦材の温度が変化してしまうので、結局はクラッチが目標通りの伝達トルクにならないという問題がある。
さらに、上述のようにクラッチの外周側において潤滑油の温度を検出するものでは、複数のクラッチやブレーキが備えられている多段式自動変速機において用いることができる場所が限られており、特に内周側に配置されているクラッチについては、潤滑油温の上昇を正確に検出することができないという問題もある。
そこで本発明は、摩擦係合の進行状態により変化する摩擦部材の予想表面温度に基づき油圧指令値を設定することを可能とし、もって上記課題を解決する自動変速機の制御装置を提供することを目的とするものである。
請求項1に係る本発明は(例えば図1乃至図13参照)、変速機構(5)の動力伝達経路を摩擦係合によって形成する摩擦部材(例えばC−1,C−2,C−3,B−1,B−2の摩擦材)と、油圧指令値(Ps)に基づき油圧(P)を調圧して前記摩擦部材を押圧する油圧サーボに供給する油圧制御手段(6)と、を備えた自動変速機(3)の制御装置(1)において、
前記摩擦係合の進行状態により変化する前記摩擦部材の予想表面温度(T)と、前記摩擦部材の目標伝達トルク(TgTs)と、に基づき前記油圧指令値(Ps)を設定する指令値設定手段(20)を備えた、
ことを特徴とする自動変速機の制御装置(1)にある。
請求項2に係る本発明は(例えば図1及び図9参照)、前記摩擦部材における予想発熱量(PrCv)を演算する発熱量演算手段(22a)と、前記摩擦部材における予想吸熱量(PrCa)を演算する吸熱量演算手段(22b)と、を有し、前記予想発熱量(PrCv)と前記予想吸熱量(PrCa)に基づき、前記摩擦部材の予想上昇温度(ΔT)を演算する上昇温度演算手段(22)を備え、
前記指令値設定手段(20)は、前記予想上昇温度(ΔT)を前記予想表面温度(T)として用いてなる、
ことを特徴とする請求項1記載の自動変速機の制御装置(1)にある。
請求項3に係る本発明は(例えば図1及び図9参照)、前記発熱量演算手段(22a)は、所定時間後における、前記摩擦部材により摩擦係合させる2つの部材の相対回転数(Nr)と、前記目標伝達トルク(TgTs)に基づき上昇させる前記摩擦部材の伝達トルク(ΔTs)と、に基づき前記予想発熱量(PrCv)を演算する、
ことを特徴とする請求項2記載の自動変速機の制御装置(1)にある。
請求項4に係る本発明は(例えば図1及び図9参照)、前記吸熱量演算手段(22b)は、所定時間における、前記摩擦部材に供給される潤滑油量(Luq)に基づき前記予想吸熱量(PrCa)を演算する、
ことを特徴とする請求項2または3記載の自動変速機の制御装置(1)にある。
請求項5に係る本発明は(例えば図1参照)、前記摩擦部材の回転数と、潤滑油供給圧と、油温と、に対応してあらかじめ前記潤滑油量(Luq)が記録された潤滑油量マップ(24)を備え、
前記吸熱量演算手段(22b)は、前記潤滑油量マップ(24)を参照することで前記潤滑油量(Luq)を演算する、
ことを特徴とする請求項4記載の自動変速機の制御装置(1)にある。
請求項6に係る本発明は(例えば図1及び図10参照)、あらかじめ前記摩擦部材の予想上昇温度(ΔT)と前記目標伝達トルク(TgTs)とに対応した前記油圧指令値(Ps)が記録された指令値マップ(Mn)を、変速進行状態ごとに複数有し、
前記指令値設定手段(20)は、前記変速進行状態に応じた指令値マップ(Mn)を、前記上昇温度演算手段(22)により演算される予想上昇温度(ΔT)と前記目標伝達トルク(TgTs)とに基づき参照することで、前記油圧指令値(Ps)を設定してなる、
ことを特徴とする請求項2ないし5のいずれか記載の自動変速機の制御装置(1)にある。
請求項7に係る本発明は(例えば図1及び図10参照)、前記複数の指令値マップ(Mn)は、少なくともトルク相用の指令値マップ(例えばM1,M2)、イナーシャ相用の指令値マップ(例えばM3〜Mn)からなる、
ことを特徴とする請求項6記載の自動変速機の制御装置(1)にある。
請求項8に係る本発明は(例えば図1参照)、変速開始からの経過時間を計時する計時手段(23a)を備え、
前記トルク相用の指令値マップは、前記経過時間に応じた複数の指令値マップ(例えばM1,M2)からなり、
前記指令値設定手段(20)は、前記経過時間に応じた指令値マップ(例えばM1,M2)を参照してなる、
ことを特徴とする請求項7記載の自動変速機の制御装置(1)にある。
請求項9に係る本発明は(例えば図1参照)、前記自動変速機(3)の入力軸回転数(Nin)を検出する入力軸回転数検出手段(42)と、
前記自動変速機(3)の出力軸回転数(Nout)を検出する出力軸回転数検出手段(43)と、
前記入力軸回転数(Nin)と前記出力軸回転数(Nout)とからギヤ比を算出し、該ギヤ比に基づき変速進行率を算出する変速進行率算出手段(23b)と、を備え、
前記イナーシャ相用の指令値マップは、前記変速進行率に応じた複数の指令値マップ(例えばM3〜Mn)からなり、
前記指令値設定手段(20)は、前記変速進行率に応じた指令値マップ(例えばM3〜Mn)を参照してなる、
ことを特徴とする請求項7または8記載の自動変速機の制御装置(1)にある。
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
請求項1に係る本発明によると、摩擦係合の進行状態により変化する摩擦部材の予想表面温度と、摩擦部材の目標伝達トルクと、に基づき油圧指令値を設定するので、油圧応答性を加味しつつフィードフォワード制御により摩擦部材の摩擦係合を行うことが可能となり、摩擦係合の進行中にあって摩擦部材を目標通りの伝達トルクに推移させることができる。それにより、摩擦係合の進行に伴い表面温度が変化して摩擦係数が変化することに伴う係合遅れや急係合等に起因する係合ショックを防止することができ、また、油圧指令値の学習制御を正確に行うことも可能にすることができる。
また特に、スロットル開度が低い場合のパワーオンアップシフトにおいては、相対回転数が小さく、かつ伝達トルクが小さくて摩擦部材の温度上昇が少なく、つまり摩擦係数が低いために、例えば摩擦係数を一定として油圧指令値を設定した場合には、変速初期に係合遅れが生じると共に変速後期に急係合が生じる虞があったが、予想表面温度に応じた摩擦係数に基づき油圧指令値を設定することで、変速初期の摩擦係合状態が安定して、滑らかな変速を可能にすることができる。
請求項2に係る本発明によると、摩擦部材における予想発熱量と予想吸熱量とを演算し、それら予想発熱量と予想吸熱量に基づき摩擦部材の予想上昇温度を演算するので、精度良く摩擦部材の予想表面温度を演算することができ、つまり摩擦部材の摩擦係数を精度良く演算することができて、摩擦係合の進行に伴う摩擦係数の変化に起因する急係合や係合遅れ等を精度良く防止することができる。
請求項3に係る本発明によると、予想発熱量は、所定時間後における、摩擦部材により摩擦係合させる2つの部材の相対回転数と、目標伝達トルクに基づき上昇させる摩擦部材の伝達トルクと、に基づき演算することができる。
請求項4に係る本発明によると、予想吸熱量は、所定時間における、摩擦部材に供給される潤滑油量に基づき演算することができる。
請求項5に係る本発明によると、摩擦部材の回転数と、潤滑油供給圧と、油温と、に対応してあらかじめ潤滑油量が記録された潤滑油量マップを備え、潤滑油量マップを参照することで摩擦部材に供給される潤滑油量を演算するので、その都度膨大な演算を行うことなく、精度良く摩擦部材に供給される潤滑油量を求めることができ、つまり車輌に搭載される制御部(コンピュータ)により充分に処理し得る演算で、正確な予想吸熱量を得ることができる。
請求項6に係る本発明によると、あらかじめ摩擦部材の予想上昇温度と目標伝達トルクとに対応した油圧指令値が記録された指令値マップを、変速進行状態ごとに複数有して、変速進行状態に応じた指令値マップを、上昇温度演算手段により演算される予想上昇温度と目標伝達トルクとに基づき参照することで、油圧指令値を設定するので、その都度膨大な演算を行うことなく、精度良く油圧指令値を求めることができ、つまり車輌に搭載される制御部(コンピュータ)により充分に処理し得る演算で、精度良い油圧制御を可能にすることができる。
請求項7に係る本発明によると、複数の指令値マップが、少なくともトルク相用の指令値マップ、イナーシャ相用の指令値マップに分けられているので、変速の進行状況に応じた精度良い油圧制御を可能にすることができる。
請求項8に係る本発明によると、変速中のトルク相にあって、指令値設定手段が経過時間に応じた指令値マップを参照して油圧指令値を設定するので、変速の進行に伴い変化する表面温度(即ち摩擦係数)に応じた的確な油圧制御を可能にすることができる。
請求項9に係る本発明によると、変速中のイナーシャ相にあって、指令値設定手段が変速進行率に応じた指令値マップを参照して油圧指令値を設定するので、変速の進行に伴い変化する表面温度(即ち摩擦係数)に応じた的確な油圧制御を可能にすることができる。
以下、本発明に係る実施の形態を図1乃至図13に沿って説明する。まず、本発明を適用し得る自動変速機3の概略構成について図1乃至図5に沿って説明する。図2に示すように、例えばFFタイプ(フロントエンジン、フロントドライブ)の車輌に用いて好適な自動変速機3は、エンジン2(図1参照)に接続し得る自動変速機3としての入力軸3aを有しており、該入力軸3aの軸方向を中心としてトルクコンバータ4と、自動変速機構(変速機構)5とを備えている。また、自動変速機構5には、後述する各クラッチC−1,C−2,C−3やブレーキB−1,B−2の油圧サーボ(不図示)に供給する油圧、ロックアップクラッチ7の作動油圧等を、図示を省略したソレノイドバルブ等への電気的指令によって油圧制御するための油圧制御装置(油圧制御手段)6が備えられている。
上記トルクコンバータ4は、自動変速機3の入力軸3aに接続されたポンプインペラ4aと、作動流体を介して該ポンプインペラ4aの回転が伝達されるタービンランナ4bとを有しており、該タービンランナ4bは、上記入力軸3aと同軸上に配設された上記自動変速機構5の入力軸5aに接続されている。また、該トルクコンバータ4には、ロックアップクラッチ7が備えられており、該ロックアップクラッチ7が油圧制御装置6の油圧制御によって係合されると、上記自動変速機3の入力軸3aの回転が自動変速機構5の入力軸5aに直接伝達される。
上記自動変速機構5には、入力軸5a上において、プラネタリギヤSPと、プラネタリギヤユニットPUとが備えられている。上記プラネタリギヤSPは、サンギヤS1、キャリヤCR1、及びリングギヤR1を備えており、該キャリヤCR1に、サンギヤS1及びリングギヤR1に噛合するピニオンP1を有している、いわゆるシングルピニオンプラネタリギヤである。
また、該プラネタリギヤユニットPUは、4つの回転要素としてサンギヤS2、サンギヤS3、キャリヤCR2、及びリングギヤR2を有し、該キャリヤCR2に、サンギヤS2及びリングギヤR2に噛合するロングピニオンPLと、サンギヤS3に噛合するショートピニオンPSとを互いに噛合する形で有している、いわゆるラビニヨ型プラネタリギヤである。
上記プラネタリギヤSPのサンギヤS1は、ミッションケース9に一体的に固定されている不図示のボス部に接続されて回転が固定されている。また、上記リングギヤR1は、上記入力軸5aの回転と同回転(以下「入力回転」という。)になっている。更に上記キャリヤCR1は、該固定されたサンギヤS1と該入力回転するリングギヤR1とにより、入力回転が減速された減速回転になると共に、クラッチC−1及びクラッチC−3に接続されている。
上記プラネタリギヤユニットPUのサンギヤS2は、ブレーキB−1に接続されてミッションケース9に対して固定自在となっていると共に、上記クラッチC−3に接続され、該クラッチC−3を介して上記キャリヤCR1の減速回転が入力自在となっている。また、上記サンギヤS3は、クラッチC−1に接続されており、上記キャリヤCR1の減速回転が入力自在となっている。
更に、上記キャリヤCR2は、入力軸5aの回転が入力されるクラッチC−2に接続され、該クラッチC−2を介して入力回転が入力自在となっており、また、ワンウェイクラッチF−1及びブレーキB−2に接続されて、該ワンウェイクラッチF−1を介してミッションケース9に対して一方向の回転が規制されると共に、該ブレーキB−2を介して回転が固定自在となっている。そして、上記リングギヤR2は、不図示の駆動車輪に回転を出力する出力ギヤ5bに接続されている。
つづいて、上記構成に基づき、自動変速機3の作用について図2、図3及び図4に沿って説明する。なお、図4に示す速度線図において、縦軸はそれぞれの回転要素(各ギヤ)の回転数を示しており、横軸はそれら回転要素のギヤ比に対応して示している。また、該速度線図のプラネタリギヤSPの部分において、横方向最端部(図4中左方側)の縦軸はサンギヤS1に、以降図中右方側へ順に縦軸は、キャリヤCR1、リングギヤR1に対応している。更に、該速度線図のプラネタリギヤユニットPUの部分において、横方向最端部(図4中右方側)の縦軸はサンギヤS3に、以降図中左方側へ順に縦軸はリングギヤR2、キャリヤCR2、サンギヤS2に対応している。
例えばD(ドライブ)レンジであって、前進1速段(1ST)では、図3に示すように、クラッチC−1及びワンウェイクラッチF−1が係合される。すると、図2及び図4に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるリングギヤR1によって減速回転するキャリヤCR1の回転が、クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、キャリヤCR2の回転が一方向(正転回転方向)に規制されて、つまりキャリヤCR2の逆転回転が防止されて固定された状態になる。すると、サンギヤS3に入力された減速回転が、固定されたキャリヤCR2を介してリングギヤR2に出力され、前進1速段としての正転回転が出力ギヤ5bから出力される。
なお、エンジンブレーキ時(コースト時)には、ブレーキB−2を係止してキャリヤCR2を固定し、該キャリヤCR2の正転回転を防止する形で、上記前進1速段の状態を維持する。また、該前進1速段では、ワンウェイクラッチF−1によりキャリヤCR2の逆転回転を防止し、かつ正転回転を可能にするので、例えば非走行レンジから走行レンジに切換えた際の前進1速段の達成を、ワンウェイクラッチF−1の自動係合により滑らかに行うことができる。
前進2速段(2ND)では、図3に示すように、クラッチC−1が係合され、ブレーキB−1が係止される。すると、図2及び図4に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるリングギヤR1によって減速回転するキャリヤCR1の回転が、クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、ブレーキB−1の係止によりサンギヤS2の回転が固定される。すると、キャリヤCR2がサンギヤS3よりも低回転の減速回転となり、該サンギヤS3に入力された減速回転が該キャリヤCR2を介してリングギヤR2に出力され、前進2速段としての正転回転が出力ギヤ5bから出力される。
前進3速段(3RD)では、図3に示すように、クラッチC−1及びクラッチC−3が係合される。すると、図2及び図4に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるリングギヤR1によって減速回転するキャリヤCR1の回転が、クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、クラッチC−3の係合によりキャリヤCR1の減速回転がサンギヤS2に入力される。つまり、サンギヤS2及びサンギヤS3にキャリヤCR1の減速回転が入力されるため、プラネタリギヤユニットPUが減速回転の直結状態となり、そのまま減速回転がリングギヤR2に出力され、前進3速段としての正転回転が出力ギヤ5bから出力される。
前進4速段(4TH)では、図3に示すように、クラッチC−1及びクラッチC−2が係合される。すると、図2及び図4に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるリングギヤR1によって減速回転するキャリヤCR1の回転が、クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、クラッチC−2に係合によりキャリヤCR2に入力回転が入力される。すると、該サンギヤS3に入力された減速回転とキャリヤCR2に入力された入力回転とにより、上記前進3速段より高い減速回転となってリングギヤR2に出力され、前進4速段としての正転回転が出力ギヤ5bから出力される。
前進5速段(5TH)では、図3に示すように、クラッチC−2及びクラッチC−3が係合される。すると、図2及び図4に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるリングギヤR1によって減速回転するキャリヤCR1の回転が、クラッチC−3を介してサンギヤS2に入力される。また、クラッチC−2の係合によりキャリヤCR2に入力回転が入力される。すると、該サンギヤS2に入力された減速回転とキャリヤCR2に入力された入力回転とにより、入力回転より僅かに高い増速回転となってリングギヤR2に出力され、前進5速段としての正転回転が出力ギヤ5bから出力される。
前進6速段(6TH)では、図3に示すように、クラッチC−2が係合され、ブレーキB−1が係止される。すると、図2及び図4に示すように、クラッチC−2の係合によりキャリヤCR2に入力回転が入力される。また、ブレーキB−1の係止によりサンギヤS2の回転が固定される。すると、固定されたサンギヤS2によりキャリヤCR2の入力回転が上記前進5速段より高い増速回転となってリングギヤR2に出力され、前進6速段としての正転回転が出力ギヤ5bから出力される。
後進1速段(REV)では、図3に示すように、クラッチC−3が係合され、ブレーキB−2が係止される。すると、図2及び図4に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるリングギヤR1によって減速回転するキャリヤCR1の回転が、クラッチC−3を介してサンギヤS2に入力される。また、ブレーキB−2の係止によりキャリヤCR2の回転が固定される。すると、サンギヤS2に入力された減速回転が、固定されたキャリヤCR2を介してリングギヤR2に出力され、後進1速段としての逆転回転が出力ギヤ5bから出力される。
なお、例えばP(パーキング)レンジ及びN(ニュートラル)レンジでは、クラッチC−1、クラッチC−2、及びクラッチC−3、が解放される。すると、キャリヤCR1とサンギヤS2及びサンギヤS3との間、即ちプラネタリギヤSPとプラネタリギヤユニットPUとの間が切断状態となる。また、入力軸5aとキャリヤCR2との間が切断状態となる。これにより、入力軸5aとプラネタリギヤユニットPUとの間の動力伝達が切断状態となり、つまり入力軸5aと出力ギヤ5bとの動力伝達が切断状態となる。
つづいて、本発明の要部となる自動変速機の制御装置1について図1、図5乃至図10に沿って説明する。本自動変速機の制御装置1は、制御部(ECU)10を有しており、該制御部10には、変速判断手段11、変速マップ12、指令値設定手段20、目標伝達トルク設定手段21、発熱量演算手段22a及び吸熱量演算手段22bを有する上昇温度演算手段22、計時手段23a或いは変速進行率算出手段23bを有する変速進行状態判定手段23、潤滑油量マップ24、トルク相用マップ31とイナーシャ相用マップ32とに分けられている指令値マップ30、が備えられている。
また、該制御部10には、エンジン2に接続されてエンジントルク信号が入力されていると共に、不図示の運転席に設置されたアクセルペダルの踏込み量を検出するアクセル開度センサ41、上記自動変速機3の入力軸3aの回転数を検出する入力軸回転数センサ(入力軸回転数検出手段)42、上記出力ギヤ5bの回転数を検出する出力軸回転数(車速)センサ(出力軸回転数検出手段)43、自動変速機3内の油温(特に潤滑油の油温)を検出する油温センサ44、が接続されて構成されている。なお、上記入力軸回転数センサ42は、自動変速機構5としての入力軸5aの回転数を検出するものでもよい。
ここで、上記クラッチC−1,C−2,C−3やブレーキB−1,B−2等における摩擦部材の摩擦特性について図5乃至図8に沿って説明する。なお、本実施の形態で説明する摩擦部材とは、正確には多板式のクラッチやブレーキにおける外摩擦板或いは内摩擦板に付設された摩擦材を指すものである。
自動変速機に用いられる摩擦材は、いわゆる湿式ペーパ摩擦材からなり、例えばセルロース繊維と熱硬化樹脂とを基材として、グラファイトカシューダスト、アラミド繊維、カーボンファイバー等が充填されて形成されている。このような摩擦材は、図5に示すように、表面温度Tが低いと摩擦係数が低く、温度が上がるに連れて摩擦係数が高くなると共に、さらに温度が上昇すると徐々に摩擦係数が低くなる傾向にある。
上記摩擦材の摩擦特性を、スロットル開度別に実際の変速状況に合わせて実験的に求めたものが図6乃至図8に示すものである。図6に示すように、高スロットル開度θd−hiの場合(例えばスロットル開度100%)は、変速前後の回転数差が大きく、変速開始当初は外摩擦板と内摩擦板との相対回転数Nrが大きく、変速が進行するに連れて相対回転数Nrは徐々に小さくなる。この際、摩擦材の摩擦係数μは、相対回転数Nrが大きい段階で最大値を迎え、相対回転数Nrが小さくなるに連れて該摩擦係数μが徐々に小さくなる。なお、図中の範囲TSは、一般的な摩擦材の性能評価試験が行われる範囲であり、この摩擦材の摩擦特性は、該範囲TSの試験結果から、変速中に摩擦係数μが下降する負勾配特性といわれる。
しかしながら、中スロットル開度θd−midの場合(例えばスロットル開度50%)では、相対回転数Nrがあまり変化しない間に摩擦係数μが最大値近くまで上昇してから、相対回転数Nrが小さくなるに連れて摩擦係数μが小さくなる。また、低スロットル開度θd−lowの場合(例えばスロットル開度10%)では、相対回転数Nrがあまり変化しない間に摩擦係数μが急上昇し、さらに相対回転数Nrが小さくなるに連れて摩擦係数μが大きくなる。従って、摩擦材の摩擦係数μを相対回転数Nrとの関係だけで演算によって求めることはできないことが分かる。
また、図7に示すように、高スロットル開度θd−hiの場合(例えばスロットル開度100%)にあって、摩擦係合するための油圧P(即ち係合力)を大きくしていくと、油圧Pが小さい段階で最大値を迎え、油圧Pが大きくなるに連れて該摩擦係数μが徐々に小さくなる。
しかしながら、中スロットル開度θd−midの場合(例えばスロットル開度50%)では、油圧Pを大きくしていく変速の中期に摩擦係数μが最大値まで上昇してから、さらに油圧Pを大きくしていくと摩擦係数μが小さくなる。また、低スロットル開度θd−lowの場合(例えばスロットル開度10%)では、油圧Pがあまり変化しない間に摩擦係数μが急上昇し、さらに油圧Pが大きくなるに連れて摩擦係数μが大きくなる。従って、摩擦材の摩擦係数μを油圧Pとの関係だけで演算によって求めることはできないことも分かる。
ここで、図8に示すように、摩擦係合の進行に応じて生じる発熱量Cvと摩擦係数μとの関係を見ると、低スロットル開度θd−lowの場合(例えばスロットル開度10%)、中スロットル開度θd−mid1の場合(例えばスロットル開度50%)、中スロットル開度θd−mid2の場合(例えばスロットル開度70%)、高スロットル開度θd−hiの場合(例えばスロットル開度100%)、のそれぞれにあって、上記図5に示す摩擦材の表面温度による摩擦特性に近似されているものであることが分かる。この図8に示す発熱量Cvと摩擦係数μとの関係は、実験的なものであり、潤滑油による吸熱が考慮されていない。従って、発熱量Cvと吸熱量Caとから摩擦材の温度上昇ΔTを算出することで、それを表面温度Tに近似して、摩擦材の摩擦係数μを求めることができることが分かる。
また、摩擦材の摩擦係数μが求まると、その摩擦材を有するクラッチやブレーキにおける単体の伝達トルク容量と油圧との関係は、
摩擦材の伝達トルク容量=摩擦材の総面積×押圧力(油圧P)×摩擦係数μ
であり、摩擦材の総面積は、自動変速機3の設計に基づき定数として与えることができるので、そのクラッチやブレーキの油圧サーボに供給する油圧Pの大きさ、つまり油圧指令値Psは摩擦係数μから求めることができる。そして、摩擦係数μは、上述のように摩擦材の表面温度Tから一義的に求めることができ、その表面温度Tは、特に通常の自動変速機の使用環境にあって、摩擦材の上昇温度ΔTにより略々近似できるので、上記発熱量Cvと上記吸熱量Caとから摩擦係数μを求めることができる。
なお、実際の変速における摩擦材の目標伝達トルクTgTsは、相対回転数Nrにより動摩擦係数として変化が生じるため、単純に上記摩擦係数μを用いるだけでは好ましくない。そのため、目標伝達トルクTgTs、上記油圧指令値Ps、上記上昇温度ΔT、相対回転数Nrは、互いの4つのパラメータによる関係となる。
つづいて、以上説明した各値の関係に基づく本自動変速機の制御装置1による変速制御を、図9のフローチャートに沿って図1を参照しつつ説明する。
図9に示すように、本自動変速機の制御装置1による制御は、例えばイグニッションON等により開始され(S1)、所定時間のサイクルで繰り返される。例えば車輌の前進走行中にあっては、変速判断手段11が、アクセル開度センサ41により検出されるアクセル開度と、出力軸回転数センサ43により検出される車速とに基づき変速マップ12を参照して変速を行うか否かを判断しており(S2)、変速が開始されるまで繰り返し待機する(S2のNo、S10)。
上記変速判断手段11により変速が判断され、変速中となると(S2のYes)、まず、指令値設定手段20は、油圧制御装置6における、係合側のクラッチ又はブレーキの油圧サーボに供給する油圧を調圧するソレノイドバルブに指令を与え、油圧サーボのピストンと摩擦板との間のガタ詰め動作を行う。このガタ詰め動作は、時間的な制御で行われ、ガタ詰めの時間が経過すると、トルク相における油圧制御に移行する。
すると、まず目標伝達トルク設定手段21が、当該係合側のクラッチ又はブレーキの目標伝達トルクTgTsを設定する(S3)。この目標伝達トルクTgTsは、エンジン2のスロットル開度と、入力軸3aの入力軸回転数Nin(又はエンジン回転数Ne)と、エンジントルクTeとに基づき、変速進行状態に合わせた係合側のクラッチ又はブレーキの伝達トルクとして理想的な値となるように、つまり係合遅れや急係合が生じない理想値として設定される。
ついで、発熱量演算手段22aが、所定時間後(例えば100msec後)までに発熱する予想発熱量PrCvを演算する(S4)。この予想発熱量PrCvは、上記目標伝達トルクTgTsに基づき所定時間後までに上昇させる摩擦材の伝達トルクΔTsと、相対回転数Nrとから演算する。なお、相対回転数Nrは、上述の入力軸回転数Ninに、入力軸3aから当該摩擦材までの伝達経路のギヤ比を乗算した回転数と、出力軸回転数Noutに出力ギヤ5bから当該摩擦材までの伝達経路のギヤ比を乗算した回転数と、から求められる。
次に、吸熱量演算手段22bが、所定時間の間に当該摩擦材を潤滑する潤滑油の量Luqに基づき予想吸熱量PrCaを演算する(S5)。具体的に摩擦材表面に供給される潤滑油量(表面を流れて通過する潤滑油量)Luqは、ライン圧或いはセカンダリ圧に基づき潤滑油路から当該摩擦材に向かって供給(噴出)される潤滑油の圧力(潤滑油供給圧)と、油温センサ44により検出される油温に基づく潤滑油の粘性係数と、摩擦材のミッションケース9に対する絶対回転数と、から求めることができる。しかしながら、これら3つのパラメータに基づき上記摩擦材に供給される潤滑油量Luqを演算すると、コンピュータである制御部10の処理能力として足りない虞があるので、あらかじめ潤滑油供給圧と油温と絶対回転数との関係に対応した上記潤滑油量Luqが記録された潤滑油量マップ24を用意し、吸熱量演算手段22bは、該潤滑油量マップ24を参照して潤滑油量Luqを取得し、その潤滑油量Luqから上記予想吸熱量PrCaを演算する。
このように予想発熱量PrCvと予想吸熱量PrCaとが求められると、上昇温度演算手段22は、予想発熱量PrCvから予想吸熱量PrCaを減算して、摩擦材の予想上昇温度ΔTを算出する(S6)。
ここで、上述したように油圧指令値Ps、該目標伝達トルクTgTs、予想上昇温度ΔT、相対回転数Nrは、それら4つの値の関係から成り立つため、例えばこれらの値をマップ化すると4次元マップとなり、さらに油圧指令値Psを読み取る毎に線形補完演算を行うことが必要となるが、このような演算を行うと、コンピュータである制御部10の処理能力として足りない虞がある。
そこで、あらかじめ変速進行状態ごとに分けて複数の油圧指令値Psのマップ(以下、「指令値マップ」という)30を用意する。即ち、変速進行状態ごとに分けられた第1〜第n指令値マップM1〜Mnには、その時点の値で演算して求めることができるので、相対回転数Nrを盛込んだ形で第1〜第n指令値マップM1〜Mnを準備する。これにより、第1〜第n指令値マップM1〜Mnは、目標伝達トルクTgTsと油圧指令値Psと予想上昇温度ΔTとの3つの関係が記録されたもので足り、データ容量(コンピュータの記憶領域)としても少なくて足りる。また、トルク相用マップ31に比して、特に相対回転数Nrの変化が大きいイナーシャ相用マップ32を細分化しておくことで、上述のような線形補完を不要にすることも可能になる。
具体的には、この指令値マップは、図10に示す一例のように、予想上昇温度ΔTに対する、目標伝達トルクTgTsと油圧指令値Psとの関係が記録されているものであり、図中破線で示す温度上昇が無い状態(即ち0)のΔTでは、目標伝達トルクTgTsに対して油圧指令値Psが比例する。摩擦材の温度が上昇していくと、摩擦係数μが大きくなるので(図5参照)、ΔTa、ΔTb、ΔTcの順で示すように、例えば同じ目標伝達トルクTgTsであっても油圧指令値Psが小さくて足りる。そして、摩擦係数μの最大値となる摩擦材の上昇温度ΔTcよりもさらに温度が上昇したΔTdでは、摩擦係数μが小さくなるので、例えば同じ目標伝達トルクTgTsにするための油圧指令値Psが上昇温度ΔTcよりも大きくなる。
以上説明したように、図9のステップS6において予想上昇温度ΔTが演算されると、変速進行状態判定手段23が変速進行状態を取得する(S7)。即ち、変速にあって解放側のクラッチ又はブレーキと係合側のクラッチ又はブレーキとのトルク分担を変更するトルク相にあっては、例えば解放側のクラッチ又はブレーキの解放制御が変速開始からの経過時間に基づき制御されるので、係合側となるクラッチ又はブレーキの係合制御も変速開始からの経過時間に基づき制御する必要がある。そのため、計時手段23aが変速開始からの経過時間を計時し、その経過時間を変速進行状態として取得する。
そして、指令値設定手段20は、上記経過時間に基づき、経過時間に対応付けられたトルク相用マップ31の第1指令値マップM1、第2指令値マップM2を順次選択する形で使用する指令値マップ30を選定し(S8)、該選定した指令値マップ30を参照して、上記予想上昇温度ΔTと目標伝達トルクTgTsとに基づき、所定時間後の油圧指令値Psを設定し(S9)、所定時間後に当該摩擦材を有するクラッチ又はブレーキの油圧サーボの係合油圧が油圧指令値Ps通りになるように、油圧制御装置6の図示を省略したソレノイドバルブに指令して、リターンする(S10)。
また、上記ステップS7において、係合側のクラッチ又はブレーキの摩擦係合を進行させて実際にギヤ比(つまり回転数)を変更するイナーシャ相にあっては、変速進行率算出手段23bが、入力軸回転数センサ42により検出される入力軸回転数Ninと出力軸回転数センサ43により検出される出力軸回転数Noutとから現在のギヤ比を算出し、現在のギヤ比から変速進行率を算出して、その変速進行率を変速進行状態として取得する。
そして、指令値設定手段20は、上記変速進行率に基づき、変速進行率に対応付けられたイナーシャ相用マップ32の第3指令値マップM3〜第n指令値マップMnを順次選択する形で使用する指令値マップ30を選定し(S8)、上述と同様に、該選定した指令値マップ30を参照して、上記予想上昇温度ΔTと目標伝達トルクTgTsとに基づき、所定時間後の油圧指令値Psを設定し(S9)、所定時間後に当該摩擦材を有するクラッチ又はブレーキの油圧サーボの係合油圧が油圧指令値Ps通りになるように、油圧制御装置6の図示を省略したソレノイドバルブに指令して、リターンする(S10)。なお、本実施の形態においては、このイナーシャ相における変速進行状態としてギヤ比から求まる変速進行率を用いたものを説明したが、トルク相と同様に経過時間を用いるようにしてもよい。
ついで、以上説明した本自動変速機の制御装置1による制御を、スロットル開度が高い(高スロットル開度)状態(例えば100%)の変速制御(図11)、スロットル開度が中程度(中スロットル開度)の状態(例えば50%)の変速制御(図12)、スロットル開度が低い(低スロットル開度)状態(例えば10%)の変速制御(図13)、の3つの例に沿って説明する。なお、以下の説明においては、本発明の理解を容易にするため、ワンウェイクラッチF−1が自動的に解放されると共にブレーキB−1を係合制御する前進1速段から前進2速段へのパワーオンアップシフト(図2乃至図4参照)であるものとして説明する。
図11に示すように、例えば運転者によりアクセルが全開に踏まれた高スロットル開度の状態にあって、変速判断手段11が時点t1において1−2アップシフトを判断すると(S2のYes)、指令値設定手段20は、時点t2において、ブレーキB−1のガタ詰め動作を行うための油圧指令値Ps−B1を不図示のソレノイドバルブに指令し、実際の油圧PB1を上昇させてブレーキB−1の油圧サーボに供給する。
その後、変速開始の時点t1からの経過時間に基づき時点t3になると、変速制御としてトルク相の制御に移行し、目標伝達トルク設定手段21が、目標伝達トルクTgTsを、スロットル開度と、入力軸回転数Ninと、エンジントルクTeに基づくブレーキB−1への入力トルクと、に基づき、出力トルクToutができるだけ変動しないような理想的な値に設定する(S3)。即ち、目標伝達トルクTgTsは、トルク相における解放側(この場合はワンウェイクラッチF−1)から係合側へのトルク分担の変更に合わせてスイープアップされ、トルク分担がブレーキB−1に完全に移行したイナーシャ相においては、伝達トルクが一定となるように設定される。
つづいて、発熱量演算手段22aが、目標伝達トルクTgTsに基づき所定時間後までに上昇させる摩擦材の伝達トルクΔTsと相対回転数Nrとから所定時間後の予想発熱量PrCvを演算する(S4)と共に、吸熱量演算手段22bが、潤滑油量マップ24を参照して潤滑油量Luqを取得し、その潤滑油量Luqから予想吸熱量PrCaを演算し(S5)、上昇温度演算手段22が、予想発熱量PrCvから予想吸熱量PrCaを減算して、摩擦材の予想上昇温度ΔTを算出する(S6)。
さらに、変速進行状態判定手段23の計時手段23aにより計時される変速開始からの経過時間に基づき(S7)、指令値設定手段20が第1指令値マップM1を選定し(S8)、目標伝達トルクTgTsと予想上昇温度ΔTとに基づき該第1指令値マップM1を参照して油圧指令値Ps−B1を設定すると(S9)、ブレーキB−1の油圧PB1が上昇し、時点t4から実際のブレーキB−1の伝達トルクTsが、摩擦係数μに応じて目標伝達トルクTgTsに追従するように上昇する。
また、その後のトルク相の時間的な中程になると、上記経過時間に伴い第2指令値マップM2が選定されて、目標伝達トルクTgTsと再度算出された予想上昇温度ΔTとに基づき該第2指令値マップM2を参照して油圧指令値Ps−B1が再設定され、時点t5のトルク相終了まで該油圧指令値Ps−B1によりブレーキB−1が摩擦係数μに応じて目標伝達トルクTgTsに追従するように油圧制御される。
さらに、時点t5になりイナーシャ相に移行すると、変速進行状態判定手段23の変速進行率算出手段23bにより算出される変速進行率に基づき(S7)、指令値設定手段20が第3指令値マップM3を選定し(S8)、目標伝達トルクTgTsと再度算出された予想上昇温度ΔTとに基づき該第3指令値マップM3を参照して油圧指令値Ps−B1を設定すると(S9)、ブレーキB−1の油圧PB1が更に上昇され、実際のブレーキB−1の伝達トルクTsが、摩擦係数μに応じて目標伝達トルクTgTsに追従するように上昇する。
その後は、時点t6のイナーシャ相の終了まで、変速進行率算出手段23bにより算出される変速進行率に基づき(S7)、指令値設定手段20が順次第4指令値マップM4、・・・、第n指令値マップMnを選定し(S8)、目標伝達トルクTgTsと再度算出された予想上昇温度ΔTとに基づきそれら第4〜第n指令値マップM4〜Mnを参照して油圧指令値Ps−B1が設定されていく(S9)。
この間、摩擦材の表面温度、つまり上昇温度ΔTは、トルク相のブレーキB−1の係合開始から高スロットル開度に基づく大きなエンジントルクTe及び大きな相対回転数Nrによって急上昇していくため、摩擦係数μは図5に示す摩擦特性のように、最大値まで上昇した後、一旦急激に下がり、その後、徐々に小さくなる。そのため、従来の油圧制御による油圧PB1’のように、摩擦係数μが負勾配で一定であるものとして制御していた状態の緩やかなスイープアップだけでは、摩擦係数μが急激に下がる際にブレーキB−1の伝達トルクが小さくなり、摩擦係数μの下がり方が少なくなると、そのまま該伝達トルクが上昇してしまうため、従来の出力トルクTout’で示すように、一旦大きくなって下がることになっていまい、つまり目標伝達トルクTgTs通りに追従しない。
しかしながら、本発明のように予想上昇温度ΔTに基づき油圧指令値Psをフィードフォワード制御することで、摩擦係数μの下降の変動に対応して、油圧PB1の上昇を行った後、さらに摩擦係数μの下がり方が緩やかになるに連れて油圧PB1を僅かに下げることになるので、実際のブレーキB−1の伝達トルクTsが目標通りに追従して安定し、それによって変速中の出力トルクToutが安定して、つまり係合遅れや急係合による変速ショックを生じることなく、出力トルクToutを略々目標伝達トルクTgTs通りに制御することが可能となる。
なお、このようにトルク相、イナーシャ相の変速制御が終了すると、時点t6から終期制御に移行し、指令値設定手段20が、ブレーキB−1の係合を完了するため、油圧指令値Ps−B1を急勾配でスイープアップし、時点t7に油圧指令値Ps−B1を完全に上昇させて、以上により1−2アップシフトを終了する。
次に、中スロットル開度における1−2アップシフトにあっては、図12に示すように、上述と同様に、時点t1に変速判断がなされ、時点t2から時点t3までの間に油圧指令値Ps−B1及び油圧PB1で示すようにガタ詰め動作が行われた後、時点t3からトルク相になると、目標伝達トルクTgTsが設定される。この目標伝達トルクTgTsは、上述したようにスロットル開度と入力軸回転数NinとブレーキB−1への入力トルクとに基づき設定されるので、上記高スロットル開度の際よりも小さな値となる。
そして、同様に所定時間後の予想発熱量PrCvと予想吸熱量PrCaとを演算して予想上昇温度ΔTを演算すると、それに基づき第1指令値マップM1が参照されて油圧指令値Ps−B1が設定され、ブレーキB−1の摩擦材が摩擦係合されて時点t4から実際の伝達トルクTsが摩擦係数μに応じて目標伝達トルクTgTsに追従するように上昇を開始する。
また、トルク相の時間的な中程になると、経過時間に伴い第2指令値マップM2が選定されて、目標伝達トルクTgTsと再度算出された予想上昇温度ΔTとに基づき該第2指令値マップM2を参照して油圧指令値Ps−B1が再設定され、時点t5のトルク相終了まで該油圧指令値Ps−B1によりブレーキB−1が摩擦係数μに応じて目標伝達トルクTgTsに追従するように油圧制御される。
さらに、時点t5になりイナーシャ相に移行すると、変速進行率に基づき第3指令値マップM3を選定し、目標伝達トルクTgTsと再度算出された予想上昇温度ΔTとに基づき該第3指令値マップM3を参照して油圧指令値Ps−B1を設定され、その後は、時点t6のイナーシャ相の終了まで、変速進行率に基づき順次第4指令値マップM4、・・・、第n指令値マップMnを選定し、目標伝達トルクTgTsと再度算出された予想上昇温度ΔTとに基づきそれら第4〜第n指令値マップM4〜Mnを参照して油圧指令値Ps−B1が設定されていく。
なお、その後は、時点t6から終期制御に移行し、ブレーキB−1の係合を完了するため、油圧指令値Ps−B1を急勾配でスイープアップし、時点t7に油圧指令値Ps−B1を完全に上昇させて、以上により1−2アップシフトを終了する。
ところで、この中スロットル開度における1−2アップシフトにあっては、目標伝達トルクTgTsで示すようにブレーキB−1が伝達するトルクが上記高スロットル開度の際よりも小さく、変速判断がエンジン回転数Neの低い段階でなされるために相対回転数Nrも小さいので、予想発熱量PrCvと予想吸熱量PrCaとに基づく予想上昇温度ΔTも小さく、摩擦係数μが緩やかに上昇することになる。
そのため、従来の油圧制御による油圧PB1’のように、高スロットル開度の試験領域TS(図6乃至図8参照)で求められた摩擦係数μで制御していた状態の緩やかなスイープアップでは、実際には摩擦係数μが小さく、ブレーキB−1の伝達トルクが足りず、つまり従来の出力トルクTout’で示すように、係合遅れが生じてしまい、つまり目標伝達トルクTgTs通りに追従しない。
しかしながら、本発明のように予想上昇温度ΔTに基づき油圧指令値Psをフィードフォワード制御することで、摩擦係数μの緩やかな上昇に対応して、一旦油圧PB1の上昇を行った後、さらに摩擦係数μの上昇に伴って伝達トルクTsを上昇させる形で油圧PB1の上昇を待機させ、或いは僅かに油圧PB1を下げる形となって、実際のブレーキB−1の伝達トルクTsが目標通りに追従して、特に変速初期で安定し、それによって変速中の出力トルクToutが安定して、つまり係合遅れを生じることなく、出力トルクToutを略々目標伝達トルクTgTs通りに制御することが可能となる。
なお、従来の油圧制御にあっては、上述のように変速初期にあって実際には摩擦係数μが小さいために生じる係合遅れに起因して、その後に急係合が生じてエンドショックが生じることがあり、そのため、従来の油圧PB1’で示すように、変速が終了する前にエンドショックを吸収するために油圧PB1’を一旦下げる、いわゆるなまし制御を行っていたが、本制御のように摩擦係数μ(予想上昇温度ΔT)により正確な油圧制御を行うことで、このなまし制御も不要にすることが可能になる。
次に、低スロットル開度における1−2アップシフトにあっては、図13に示すように、上述と同様に、時点t1に変速判断がなされ、時点t2から時点t3までの間に油圧指令値Ps−B1及び油圧PB1で示すようにガタ詰め動作が行われた後、時点t3からトルク相になると、目標伝達トルクTgTsが設定される。この目標伝達トルクTgTsは、上述したようにスロットル開度と入力軸回転数NinとブレーキB−1への入力トルクとに基づき設定されるので、上記中スロットル開度の際よりも更に小さな値となる。
そして、同様に所定時間後の予想発熱量PrCvと予想吸熱量PrCaとを演算して予想上昇温度ΔTを演算すると、それに基づき第1指令値マップM1が参照されて油圧指令値Ps−B1が設定され、ブレーキB−1の摩擦材が摩擦係合されて時点t4から実際の伝達トルクTsが摩擦係数μに応じて目標伝達トルクTgTsに追従するように上昇を開始する。
また、トルク相の時間的な中程になると、経過時間に伴い第2指令値マップM2が選定されて、目標伝達トルクTgTsと再度算出された予想上昇温度ΔTとに基づき該第2指令値マップM2を参照して油圧指令値Ps−B1が再設定され、時点t5のトルク相終了まで該油圧指令値Ps−B1によりブレーキB−1が摩擦係数μに応じて目標伝達トルクTgTsに追従するように油圧制御される。
さらに、時点t5になりイナーシャ相に移行すると、変速進行率に基づき第3指令値マップM3を選定し、目標伝達トルクTgTsと再度算出された予想上昇温度ΔTとに基づき該第3指令値マップM3を参照して油圧指令値Ps−B1を設定され、その後は、時点t6のイナーシャ相の終了まで、変速進行率に基づき順次第4指令値マップM4、・・・、第n指令値マップMnを選定し、目標伝達トルクTgTsと再度算出された予想上昇温度ΔTとに基づきそれら第4〜第n指令値マップM4〜Mnを参照して油圧指令値Ps−B1が設定されていく。
なお、その後は、時点t6から終期制御に移行し、ブレーキB−1の係合を完了するため、油圧指令値Ps−B1を急勾配でスイープアップし、時点t7に油圧指令値Ps−B1を完全に上昇させて、以上により1−2アップシフトを終了する。
ところで、この低スロットル開度における1−2アップシフトにあっても、目標伝達トルクTgTsで示すようにブレーキB−1が伝達するトルクが上記高スロットル開度の際や上記中スロットル開度の際よりも更に小さく、変速判断がエンジン回転数Neの低い段階でなされるために相対回転数Nrも小さいので、予想発熱量PrCvと予想吸熱量PrCaとに基づく予想上昇温度ΔTも更に小さく、摩擦係数μが更に緩やかに上昇することになる。なお、この低スロットル開度の変速にあっては、摩擦係数μが最大値まで到達するか否かの段階で変速が終了してしまうため、摩擦係数μが負勾配ではなく正勾配のままである。
そのため、従来の油圧制御による油圧PB1’のように、高スロットル開度の試験領域TS(図6乃至図8参照)で求められた摩擦係数μで制御していた状態の緩やかなスイープアップでは、特に摩擦材があまり温度上昇しないことに起因して、実際には摩擦係数μが小さく、ブレーキB−1の伝達トルクが足りず、つまり従来の出力トルクTout’で示すように、係合遅れが生じてしまい、つまり目標伝達トルクTgTs通りに追従しない。
しかしながら、本発明のように予想上昇温度ΔTに基づき油圧指令値Psをフィードフォワード制御することで、摩擦係数μの緩やかな上昇に対応して、一旦油圧PB1の上昇を行った後、さらに摩擦係数μの上昇に伴って伝達トルクTsを上昇させる形で油圧PB1を下げる形となって、実際のブレーキB−1の伝達トルクTsが目標通りに追従して、特に変速初期で安定し、それによって変速中の出力トルクToutが安定して、つまり係合遅れを生じることなく、出力トルクToutを略々目標伝達トルクTgTs通りに制御することが可能となる。
また、特にこの低スロットル開度の変速にあって、従来の油圧制御では、上述のように変速初期にあって実際には摩擦係数μが小さいために生じる係合遅れが生じ易く、その後の急係合によるエンドショックが略々毎回生じるため、従来の油圧PB1’で示すように、変速が終了する前にエンドショックを吸収する、なまし制御を行っていたが、本制御のように摩擦係数μ(予想上昇温度ΔT)により正確な油圧制御を行うことで、係合遅れや急係合が生じることが防止され、このなまし制御も不要にすることが可能になる。
さらに、従来の油圧制御では、高スロットル開度の試験領域で求めた摩擦係数μを用いて油圧制御を行っていたため、上記係合遅れや急係合が、例えば油圧応答性等の問題で、つまり油圧制御に起因するものと考えられており、そのため、これら係合遅れや急係合を無くすために油圧の学習を行っていたが、この学習自体、摩擦係数μが一定であるかのように考えられた上で行われていたため、学習しても誤学習となってしまっていたが、本制御では、摩擦係数μ(予想上昇温度ΔT)により正確な油圧制御を行うので、このような問題も解消されることになる。
以上説明したように、本発明に係る自動変速機の制御装置1によると、摩擦係合の進行状態により変化する摩擦材の予想表面温度(即ち予想上昇温度ΔT)と、摩擦材の目標伝達トルクTgTsと、に基づき油圧指令値Psを設定するので、所定時間後における油圧応答性を加味しつつフィードフォワード制御により摩擦材の摩擦係合を行うことが可能となり、摩擦係合の進行中にあって摩擦材を目標通りの伝達トルクに推移させることができる。それにより、摩擦係合の進行に伴い表面温度が変化して摩擦係数μが変化することに伴う係合遅れや急係合による係合ショックを防止することができ、また、油圧指令値Psの学習制御も正確に行うことが可能となる。
また特に、スロットル開度が低い場合(試験領域TSではない場合)のパワーオンアップシフトにおいては、相対回転数Nrが小さく、かつ伝達トルクが小さくて摩擦材の温度上昇が少なく、つまり摩擦係数μが低いために、例えば高スルットル開度の試験領域TSで求めた摩擦係数μを、そのまま略々一定のものとして油圧指令値Psの設定に用いた場合には、変速初期に係合遅れが生じると共に変速後期に急係合が生じる虞があったが、予想上昇温度ΔTに応じた摩擦係数μに基づき油圧指令値Psを設定することで、変速初期の摩擦係合状態が安定して、滑らかな変速を可能にすることができる。
また、摩擦材における予想発熱量PrCvと予想吸熱量PrCaとを演算し、それら予想発熱量PrCvと予想吸熱量PrCaに基づき摩擦材の予想上昇温度ΔTを演算するので、精度良く摩擦材の予想上昇温度ΔTを演算することができ、つまり摩擦材の摩擦係数μを精度良く演算した形となって、摩擦係合の進行に伴う摩擦係数μの変化に起因する急係合や係合遅れ等を精度良く防止することができる。
さらに、摩擦材の絶対回転数と、潤滑油供給圧と、油温と、に対応してあらかじめ潤滑油量が記録された潤滑油量マップ24を備えて、潤滑油量マップ24を参照することで摩擦材に供給される潤滑油量を演算することで、その都度膨大な演算を行うことなく、精度良く摩擦材に供給される潤滑油量を求めることができ、車輌に搭載される制御部(コンピュータ)により充分に処理し得る演算で、正確な予想吸熱量PrCaを得ることができる。
また、あらかじめ摩擦材の予想上昇温度ΔTと目標伝達トルクTgTsとに対応した油圧指令値Psが記録された指令値マップ30を、変速進行状態ごとに複数有して、変速進行状態に応じた指令値マップ30を、該予想上昇温度ΔTと該目標伝達トルクTgTsとに基づき参照することで、油圧指令値Psを設定することで、その都度膨大な演算を行うことなく、精度良く油圧指令値Psを求めることができ、つまり車輌に搭載される制御部(コンピュータ)により充分に処理し得る演算で、精度良い油圧制御を可能にすることができる。
なお、以上説明した本実施の形態においては、自動変速機をFF車輌に用いて好適な多段式自動変速機であるものとして説明したが、どのような自動変速機であってもよいことは、勿論である。
また、以上の本実施の形態で説明した各種パラメータの演算手法、即ち、予想表面温度T、予想上昇温度ΔT、予想発熱量PrCv、予想吸熱量PrCa、目標伝達トルクTgTs、それらに基づく油圧指令値Ps等の演算手法や近似手法は、種々の設計的変更が可能なものであり、それらの変更も本発明の適用範囲内である。
本発明に係る自動変速機の制御装置を示すブロック図。 本発明を適用し得る自動変速機を示すスケルトン図。 自動変速機の係合表。 自動変速機の速度線図。 摩擦材の表面温度と摩擦係数との関係を示す図。 各スロットル開度における摩擦材の相対回転数と摩擦係数との関係を示す図。 各スロットル開度における係合油圧と摩擦係数との関係を示す図。 各スロットル開度における発熱量と摩擦係数との関係を示す図。 本発明に係る変速制御を示すフローチャート。 指令値マップの一例を示す図。 高スロットル開度における変速進行状態を示すタイムチャート。 中スロットル開度における変速進行状態を示すタイムチャート。 低スロットル開度における変速進行状態を示すタイムチャート。
符号の説明
1 自動変速機の制御装置
3 自動変速機
3a 入力軸
5 変速機構(自動変速機構)
6 油圧制御手段(油圧制御装置)
20 指令値設定手段
22 上昇温度演算手段
22a 発熱量演算手段
22b 吸熱量演算手段
23a 計時手段
23b 変速進行率算出手段
24 潤滑油量マップ
42 入力軸回転数検出手段(入力軸回転数センサ)
43 出力軸回転数検出手段(出力軸回転数センサ)
Mn 指令値マップ
P 油圧
Ps 油圧指令値
PrCv 予想発熱量
PrCa 予想吸熱量
Luq 潤滑油量
T 予想表面温度
ΔT 予想上昇温度
TgTs 目標伝達トルク
ΔTs 上昇させる伝達トルク
Nin 入力軸回転数
Nout 出力軸回転数
Nr 相対回転数

Claims (9)

  1. 変速機構の動力伝達経路を摩擦係合によって形成する摩擦部材と、油圧指令値に基づき油圧を調圧して前記摩擦部材を押圧する油圧サーボに供給する油圧制御手段と、を備えた自動変速機の制御装置において、
    前記摩擦係合の進行状態により変化する前記摩擦部材の予想表面温度と、前記摩擦部材の目標伝達トルクと、に基づき前記油圧指令値を設定する指令値設定手段を備えた、
    ことを特徴とする自動変速機の制御装置。
  2. 前記摩擦部材における予想発熱量を演算する発熱量演算手段と、前記摩擦部材における予想吸熱量を演算する吸熱量演算手段と、を有し、前記予想発熱量と前記予想吸熱量に基づき、前記摩擦部材の予想上昇温度を演算する上昇温度演算手段を備え、
    前記指令値設定手段は、前記予想上昇温度を前記予想表面温度として用いてなる、
    ことを特徴とする請求項1記載の自動変速機の制御装置。
  3. 前記発熱量演算手段は、所定時間後における、前記摩擦部材により摩擦係合させる2つの部材の相対回転数と、前記目標伝達トルクに基づき上昇させる前記摩擦部材の伝達トルクと、に基づき前記予想発熱量を演算する、
    ことを特徴とする請求項2記載の自動変速機の制御装置。
  4. 前記吸熱量演算手段は、所定時間における、前記摩擦部材に供給される潤滑油量に基づき前記予想吸熱量を演算する、
    ことを特徴とする請求項2または3記載の自動変速機の制御装置。
  5. 前記摩擦部材の回転数と、潤滑油供給圧と、油温と、に対応してあらかじめ前記潤滑油量が記録された潤滑油量マップを備え、
    前記吸熱量演算手段は、前記潤滑油量マップを参照することで前記潤滑油量を演算する、
    ことを特徴とする請求項4記載の自動変速機の制御装置。
  6. あらかじめ前記摩擦部材の予想上昇温度と前記目標伝達トルクとに対応した前記油圧指令値が記録された指令値マップを、変速進行状態ごとに複数有し、
    前記指令値設定手段は、前記変速進行状態に応じた指令値マップを、前記上昇温度演算手段により演算される予想上昇温度と前記目標伝達トルクとに基づき参照することで、前記油圧指令値を設定してなる、
    ことを特徴とする請求項2ないし5のいずれか記載の自動変速機の制御装置。
  7. 前記複数の指令値マップは、少なくともトルク相用の指令値マップ、イナーシャ相用の指令値マップからなる、
    ことを特徴とする請求項6記載の自動変速機の制御装置。
  8. 変速開始からの経過時間を計時する計時手段を備え、
    前記トルク相用の指令値マップは、前記経過時間に応じた複数の指令値マップからなり、
    前記指令値設定手段は、前記経過時間に応じた指令値マップを参照してなる、
    ことを特徴とする請求項7記載の自動変速機の制御装置。
  9. 前記自動変速機の入力軸回転数を検出する入力軸回転数検出手段と、
    前記自動変速機の出力軸回転数を検出する出力軸回転数検出手段と、
    前記入力軸回転数と前記出力軸回転数とからギヤ比を算出し、該ギヤ比に基づき変速進行率を算出する変速進行率算出手段と、を備え、
    前記イナーシャ相用の指令値マップは、前記変速進行率に応じた複数の指令値マップからなり、
    前記指令値設定手段は、前記変速進行率に応じた指令値マップを参照してなる、
    ことを特徴とする請求項7または8記載の自動変速機の制御装置。
JP2008093354A 2008-03-31 2008-03-31 自動変速機の制御装置 Pending JP2009243638A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008093354A JP2009243638A (ja) 2008-03-31 2008-03-31 自動変速機の制御装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008093354A JP2009243638A (ja) 2008-03-31 2008-03-31 自動変速機の制御装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2009243638A true JP2009243638A (ja) 2009-10-22

Family

ID=41305769

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008093354A Pending JP2009243638A (ja) 2008-03-31 2008-03-31 自動変速機の制御装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2009243638A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012149675A (ja) * 2011-01-18 2012-08-09 Honda Motor Co Ltd 自動変速機の制御装置
WO2014115424A1 (ja) * 2013-01-24 2014-07-31 ジヤトコ株式会社 摩擦締結要素の温度推定演算装置
CN104299057A (zh) * 2014-10-17 2015-01-21 国家电网公司 基于多因素的油浸式变压器顶层油温预测方法

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012149675A (ja) * 2011-01-18 2012-08-09 Honda Motor Co Ltd 自動変速機の制御装置
WO2014115424A1 (ja) * 2013-01-24 2014-07-31 ジヤトコ株式会社 摩擦締結要素の温度推定演算装置
JP5922265B2 (ja) * 2013-01-24 2016-05-24 ジヤトコ株式会社 摩擦締結要素の温度推定演算装置
EP2949957A4 (en) * 2013-01-24 2016-08-31 Jatco Ltd TEMPERATURE ESTIMATION CALCULATION DEVICE FOR FRICTION TAKE-OFF ELEMENT
KR101754009B1 (ko) 2013-01-24 2017-07-04 쟈트코 가부시키가이샤 마찰 체결 요소의 온도 추정 연산 장치
CN104299057A (zh) * 2014-10-17 2015-01-21 国家电网公司 基于多因素的油浸式变压器顶层油温预测方法
CN104299057B (zh) * 2014-10-17 2018-02-13 国家电网公司 基于多因素的油浸式变压器顶层油温预测方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7500932B2 (en) Shift control apparatus and method for automatic transmission
KR101320883B1 (ko) 차량용 제어장치
JP4196891B2 (ja) 自動変速機の変速制御装置
US8180536B2 (en) Automatic transmission control apparatus and method
JP2010084867A (ja) 自動変速機の制御装置
JP4185878B2 (ja) 自動変速機の制御装置
JP2009058023A (ja) トルクコンバータ付車両用自動変速機のトルクコンバータの油温過上昇防止装置
CN109804184B (zh) 自动变速器的控制装置及控制方法
JP2010185526A (ja) 車両用自動変速機の制御装置
JP2006275227A (ja) 自動変速機の変速制御装置
JP4956587B2 (ja) 自動変速機の制御装置
US20020142886A1 (en) Speed shift control apparatus of automatic transmission
JP2009243638A (ja) 自動変速機の制御装置
JP2019157896A (ja) 油圧制御装置
JP2011190864A (ja) 自動変速機の制御装置
US9020722B1 (en) Control of power-on downshift in a vehicle with an oncoming binary clutch
JP2010203590A (ja) 車両用駆動装置の制御装置
JP6545066B2 (ja) 自動変速機の変速制御装置
JP4967722B2 (ja) 車両の制御装置および制御方法
JP5299310B2 (ja) 自動変速機の制御装置
JP2011149484A (ja) トルクコンバータの制御装置
JP5272649B2 (ja) 自動変速機の制御装置
JP2010084868A (ja) 自動変速機の制御装置
JP2007291895A (ja) 車両の制御装置
JPH023768A (ja) 自動変速機の変速制御装置