以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る液体吐出装置の一例としてのプリンター1の構成例を示す図である。
プリンター1は、例えば、入出力I/F(インターフェース)11と、RAM(Random Access Memory)12と、ROM(Read Only Memory)15と、CPU(Central Processing Unit)13と、プリント部16とを備える。CPU13、ROM15、RAM12、入出力I/F部11及びプリント部16は、例えば、バス17を介して接続される。
ROM15には、例えば、CPU13により実行される各種のコンピュータープログラムが格納される。RAM12は、CPU13が処理するデータ、例えば、ホスト装置2から受信した印刷ジョブデータや、その受信した印刷ジョブデータをラスターライズすることで得られたラスターデータ等を、一時的に格納しておくためのバッファとして利用される。
入出力I/F11は、ホスト装置2とデータ通信を行うためのインターフェース装置である。入出力I/F11は、印刷ジョブの内容を示す印刷ジョブデータをホスト装置2から受信し、その受信した印刷ジョブデータ(以下、「受信ジョブデータ」)をRAM12に書き込む。
CPU13は、ROM15に格納されている各種のコンピュータープログラムを実行することにより、例えば、プリント制御部131として機能する。プリント制御部131は、プリント部16を制御して、受信ジョブデータに基づく画像を画像形成媒体に出力させる処理部である。具体的には、プリント制御部131は、RAM12に格納されている受信ジョブデータを読み出し、その読み出した受信ジョブデータをラスターライズすることで、受信ジョブデータに対応したラスターデータを生成する。そして、プリント制御部132は、その生成したラスターデータに基づく画像をプリント部16に出力させる。これにより、受信ジョブデータに基づく画像が、画像形成媒体に出力される。
プリント部16は、例えば、紙、OHPシート、厚紙、封筒等の記録媒体に、指定された画像(入力されたラスターデータに基づく画像)を出力する装置である。プリント部16は、例えば、パス分解部161と、パス統合部162と、複数のノズルを備えた印刷ヘッド163とを備える。パス分解部161及びパス統合部162は、それぞれ、専用のハードウェア回路で実装されてもよいし、或いは、コンピューターによるソフトウェア処理として実装されてもよい。なお、印刷ヘッド163は、複数のノズルが列設されたノズル列を複数備え、各ノズル列は各色に対応する。そして、印刷ヘッド163の複数のノズル列は、ノズル列内のノズル列設方向と交差する方向に並んで配置される。
本実施形態において、プリント部16は、印刷ヘッド163を搭載したキャリッジに複数回の走行を繰り返させつつ印刷ヘッド163のノズルから吐出したインクによって記録媒体上にドットを形成することでキャリッジの走査方向(以下、単に「走査方向」という)のドットの一行を印刷することができる。以下、このような印刷方法における、1回のキャリッジ走行による印刷動作を「パス」と呼び、ドットの一行を完成させるために行われるパスの繰り返し回数を「分割パス数」と呼ぶ。そして、このような印刷方法による印刷(複数パスによる印刷)を「複数パス印刷」と呼ぶ。本実施形態では、プリント制御部16は、複数パス印刷における各パスを、360dpiの解像度(以下、この各パスの印刷解像度を「パス解像度」という)で印刷するものとする。従って、本実施形態に係るプリント部16は、例えば分割パス数を4回として複数パス印刷を行うことにより、1440dpi(360dpi×4回)の解像度で印刷することができる。尚、パス解像度及び分割パス数は、上記の値(360dpi、4回)に限られず、任意に定めることができる。
図2は、複数パス印刷の概要を説明する図である。
図2において、符号3は、ラスターデータ(一行分のラスターデータ)を示している。図2に示されたラスターデータ3は、その解像度が1440dpiである。説明の簡単のため、ラスターデータ3には、12個の画素データ(P1〜P12)が含まれているものとする。各画素データは、その画素についてドットを打つか、空白にするか(ドットを打たないか)を示したデータである。
一方、符号4は、ラスターデータ3の各画素に対応した記録媒体上の位置(即ち、プリント部16が実際にドットを打つ、記録媒体上の位置であり、以下、「ドット位置」という)を示している。
例えば、ラスターデータ3に含まれる全ての画素データ(P1〜P12)が、ドットを打つことを示すデータである場合は、プリント部16は、以下のように複数パス印刷を行って、ラスターデータ3に基づく画像を記録媒体に出力する。
即ち、まず、プリント部16は、分割パス数(パスの繰り返し回数)を決定する。通常、ラスターデータ3の解像度をパス解像度で除算して得られた値が、分割パス数の最小値となる。プリント部16は、この最小値(ラスターデータ3の解像度をパス解像度で除算して得られた値)を、分割パス数と決定することができる。本実施形態では、パス解像度が360dpiであり、ラスターデータ3の解像度が1440dpiであるため、分割パス数は、4回(1440dpi/360dpi)とされる。
次に、プリント部16のパス分解部161が、ラスターデータ3の各画素について、どのパスで印刷するか(どのパスでドットを打つか)を決定する。例えば、パス分解部161は、パス解像度(本実施形態では、360dpi)に対応した画素間隔51(パス解像度でドットを打つ場合のドット(ドットに対応した画素)の間隔)で選択した複数の画素の組み合わせを、一つのパスで印刷するように決定する。この一つのパスで印刷するように決定された複数の画素の組み合わせを、以下、「同一パス画素セット」と呼ぶ。そして、パス分解部161は、それぞれの同一パス画素セットについて、何パス目で印刷するか(即ち、印刷するパスの番号であり、以下、「パス番号」)を決定する。図2の例であれば、パス分解部161は、例えば、P1、P5及びP9の組み合わせを同一パス画素セットとし、1パス目に印刷するように決定することができる。また、P2、P6及びP10の組み合わせを同一パス画素セットとし、2パス目に印刷するように決定することができる。同様に、P3、P7及びP11の組み合わせを同一パス画素セットとして3パス目に、P4、P8及びP12の組み合わせを同一パス画素セットとして4パス目に、それぞれ印刷するように決定することができる。以下、このパス分解部161が行う処理(ラスターデータ3を構成する各画素について、どのパスで印刷するかを決定する処理)を「パス分解処理」と呼ぶ。
次に、プリント部16は、パス分解処理の結果に従って複数パス印刷を行う。即ち、プリント部16は、図2に示されるように、1パス目では、P1、P5及びP9のそれぞれに対応する各ドット位置にドットを打つ。具体的には、プリント部16は、印刷ヘッド163が記録媒体の上方をドット位置D1からドット位置D12まで移動する中で、D1、D5及びD9のそれぞれに対応する位置を通過する際に、それぞれのドット位置に向けてノズル164からインクを吐出する。2パス目以降も同様である。即ち、2パス目では、P2、P6及びP10のそれぞれに対応する各ドット位置にドットを打ち、3パス目では、P3、P7及びP11のそれぞれに対応する各ドット位置にドットを打ち、4パス目では、P4、P8及びP12のそれぞれに対応する各ドット位置にドットを打つ。これにより、ラスターデータ3に基づく画像が記録媒体に印刷される。このように、プリント部16は、複数パス印刷を行うことで、通常の制御の下に印刷し得る解像度(本実施形態では、360dpi)よりも高い解像度(図2の例では、1440dpi)で印刷できるようになる。言い換えると、プリント部16は、通常の制御の下では、所定の画素間隔(本実施形態では、360dpiに対応した画素間隔51)よりも狭い間隔で連続してドットを打つことができないが、複数パス印刷を行うことで、そのような狭い間隔(図2の例では、1440dpiに対応した画素間隔52)でドットを打つことが可能となる。
図1に戻り、パス統合部162は、上述した複数パス印刷において、パス分解部161により決定された分割パス数を削減する処理部である。上述したように、通常は、ラスターデータ3の解像度をパス解像度で除算して得られた値が分割パス数の最小値となり、この最小値が、分割パス数として決定される。パス統合部162は、パスの幾つかを統合することによって、決定された分割パス数を削減することができ、それにより、複数パス印刷の処理時間を短縮することができる。以下、パス統合部162によって行われる、パスを統合することによって分割パス数を削減する処理を「パス統合処理」と呼ぶ。以下、パス統合処理について具体的に説明する。
図3は、単一色の場合におけるパス統合処理の説明図である。
図3は、プリント部16が、単一色(ブラック)で印刷する場合の例を示している。ラスターデータ3の各画素のうち、グレーで塗りつぶされている画素は、ドットを打つ画素を示しており、白抜きの画素は、ドットを打たない画素を示している。即ち、ラスターデータ3は、P1、P4、P5、P7、P9及びP12の各画素について、対応するドット位置(D1、D4、D5、D7、D9及びD12)にドットを打つことを示している。
この図3の例も、図2の場合と同様、パス解像度が360dpi、ラスターデータ3が1440dpi、ラスターデータ3の画素数が12であるため、パス分解部161は、図2で説明したのと同様にして、パス分解処理を行うことができる。即ち、パス分解部161は、P1、P5及びP9の同一パス画素セットを1パス目に、P2、P6及びP10の同一パス画素セットを2パス目に、P3、P7及びP11の同一パス画素セットを3パス目に、P4、P8及びP12の同一パス画素セットを4パス目に、それぞれ印刷するように決定することができる。
ここで、図3の例では、P2、P3、P6、P8、P10及びP11の各画素は、ドットを打たない画素である。従って、実際には、パス分解処理部161は、上記のパス分解処理によって、P1、P5及びP9の同一パス画素セットを1パス目に印刷すること、P7の同一パス画素セットを3パス目に印刷すること、及び、P4及びP12の同一パス画素セットを4パス目に印刷することを決定したことになる。そして、このように決定された場合、2パス目に印刷される画素は実際には存在しないため、2パス目は、空打ちのパス(即ち、キャリッジの走行は行われるがドットが打たれないパスであり、以下、「空パス」という)となる。
このような場合に、パス統合部162は、2パス目の空打ちがなくなるように(言い換えると、空パスがなくなるように)、同一パス画素セットのパス番号(印刷するパスの番号)を変更する。具体的には、例えば、パス統合部162は、P7の同一パス画素セットを2パス目に、P4及びP12の同一パス画素セットを3パス目に、それぞれ印刷するように変更する。これにより、2パス目の空打ち(空パス)をなくすとともに、1〜3パス目で、ラスターデータ3に基づく画像の出力が完了するので、4パス目が行われる必要がなく、分割パス数を4回から3回へ削減することができる。もし、印刷ヘッド163の単一色(ブラック)に対応するノズル列を構成する全ノズルについて、パス統合処理の結果、分割パス数が3回以下になったとする。そうすれば、印刷ヘッド全体として1回分のキャリッジ走行を省略でき、その分の印刷時間を短縮できる。なお、1パス目と2パス目と3パス目とのそれぞれを同じノズルでドットを形成してもよいし、パス毎に異なるノズルでドットを形成してもよい。
図4は、複数色の場合におけるパス統合処理の説明図である。
図4は、プリント部16が、複数色(シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの4色)で印刷する場合の例を示している。図3の場合と同様に、ラスターデータ3(3C,3M,3Y,3K)の各画素のうち、グレーで塗りつぶされている画素は、ドットを打つ画素を示しており、白抜きの画素は、ドットを打たない画素を示している。即ち、図4のラスターデータ3C,3M,3Y,3Kは、シアンに関してはP4、P8及びP12の各画素について、マゼンタに関してはP3及びP7の各画素について、イエローに関してはP2、P6及びP11の各画素について、ブラックに関してはP1及びP9の各画素について、それぞれ対応するドット位置にドットを打つことを示している。
この図4の例も、図2の場合と同様、パス解像度が360dpi、ラスターデータ3が1440dpi、ラスターデータ3の画素数が12であるため、パス分解部161は、図2で説明したのと同様にして、パス分解処理を行うことができる。即ち、パス分解部161は、P1、P5及びP9の同一パス画素セットを1パス目に、P2、P6及びP10の同一パス画素セットを2パス目に、P3、P7及びP11の同一パス画素セットを3パス目に、P4、P8及びP12の同一パス画素セットを4パス目に、それぞれ印刷するように決定することができる。
上記のようにパス分解処理が行われた場合、各色について見ると以下のようになる。即ち、シアンについては、P4、P8及びP12の同一パス画素セットを、4パス目に印刷することになる。また、マゼンタについては、P3及びP7の同一パス画素セットを、3パス目に印刷することになる。更に、イエローについては、P2及びP6の同一パス画素セットを2パス目に、P11の同一パス画素セットを3パス目に、それぞれ印刷することになる。そして、ブラックについては、P1及びP9の同一パス画素セットを、1パス目に印刷することになる。つまり、シアンについては、4パス目でだけ印刷され、1〜3パス目が、空パスとなる。また、マゼンタについては、3パス目でだけ印刷され、1、2及び4パス目が、空パスとなる。また、イエローについては、2パス目と3パス目で印刷され、1及び4パス目が空パスとなる。ブラックについては1パス目でだけ印刷され、2〜4パス目が空パスとなる。
ここで、複数色の場合、各色は、それぞれ異なるノズル列のノズル164からインクが吐出される。上述したように、本実施形態において、プリント部16が通常の制御の下に印刷し得る解像度は360dpiであるが(即ち、プリント部16は、360dpiに対応した画素間隔51おきにドットを打つことが可能であるが)、これは、一つのノズル164又は一つのノズル列についての制限である。従って、異なる色については、インクが吐出されるノズル列及びノズル164が異なるので、各ノズル164のインク吐出のタイミングを変えることで、360dpiに対応した画素間隔51よりも短い間隔で異なる色のドットを連続的に打つことができる。図4の例で具体的に説明すると、例えば1パス目において、ブラックのノズル164でP1とP9のドットを打ち、イエローのノズル164でP2とP6のドットを打ち、マゼンタのノズル164でP3とP7のドットを打ち、シアンのノズル164でP4とP8とP12とのドットを打つことが可能である。
複数色の場合は、以上の点(異なる色を連続的に印刷できるという点)を考慮して、パス統合部162は、各色のそれぞれの空パスができるだけ少なくなるように、パス統合処理を行う。以下、図5を参照して、複数色の場合におけるパス統合処理の詳細を説明する。
図5は、複数色の場合におけるパス統合処理のフローチャートである。
パス統合処理は、パス分解処理の後に行われる。以下、パス分解処理によって決定された分割パス数、即ち、パス統合処理前の分割パス数を「統合前パス数」と呼び、パス統合処理後の分割パス数、即ち、パス統合処理によって削減された後の分割パス数を「統合後パス数」と呼ぶ。また、或る同一パス画素セットに着目して、パス分解処理によって決定された、その同一パス画素セットのパス番号を「統合前パス番号」と呼び、パス統合処理によって決定された、その同一パス画素セットのパス番号を「統合後パス番号」と呼ぶ。
また、Nは、1から統合前パス数までの数をカウントするための変数であり、Mは、同一パス画素セットに新規に割り当てることとなるパス番号(即ち、統合後パス番号)を格納するための変数である。変数N、Mの初期値は、“1”であるとする。
まず、パス統合部162は、一つの色を選択する(S1)。以下、選択された色を「選択色」と呼ぶ。
次に、パス統合部162は、選択色について、パス分解処理においてNパス目に印刷するものと決定された同一パス画素セット(ここではドットを打つ画素によってのみ構成されるものを指し、以下、図5の説明において同じ)が存在するか否かを判定する(S2)。Nの初期値は“1”であるため、まずは、パス分解処理において1パス目に印刷するものと決定された同一パス画素セットが存在するか否かが判定される。例えば、図4の例において、選択色がブラックである場合は、1パス目に印刷するものと決定された同一パス画素セットはP1及びP9であり、従って、存在すると判定される。一方、選択色がシアン、マゼンタ又はイエローの場合は、1パス目に印刷するものと決定された同一パス画素セットは存在しないと判定される。
Nパス目に印刷するものと決定された同一パス画素セットが存在する場合は(S2:YES)、パス統合部162は、そのNパス目に印刷するものと決定された同一パス画素セット(以下、「対象画素セット」)を、Mパス目で印刷するものと決定する(S3)。そして、パス統合部162は、対象画素セット(対象画素セットを構成する各画素の番号)とMの値(即ち、統合後パス番号)とを対応付けてRAM12に記憶する。その後、M及びNのそれぞれの値が1インクリメントされ(S4、S5)、ステップS6の処理が行われる。
一方、Nパス目に印刷するものと決定された同一パス画素セットが存在しない場合は(S2:NO)、Nの値が1インクリメントされ(S5)、ステップS6の処理が行われる。
ステップS6では、パス統合部162は、Nの値が統合前パス数よりも大きいか否かを判定する。
Nの値が統合前パス数以下の場合は(S6:NO)、パス統合部162は、再度、ステップS2の処理を行う。
一方、Nの値が統合前パス数よりも大きい場合は(S6:YES)、パス統合部162は、4色全てについて、ステップS2〜S6の処理を行ったか否かを判定する(S7)。
4色全てについて、ステップS2〜S6の処理を行っていない場合は(S7:NO)、パス統合部162は、次の色を選択し(S8)、その選択した色(選択色)について、ステップS2〜S6の処理を行う。
一方、4色全てについて、ステップS2〜S6の処理を行った場合は(S7:YES)、パス統合処理が完了する。
以上が、複数色の場合におけるパス統合処理のフローチャートの説明である。以下、図4の場合を例にとって、各色ごとに、上記のフローチャートに当てはめて、より具体的に説明する。
まず、ブラックについて(即ち、選択色がブラックとされた場合について)説明する。N=1におけるステップS2の判定では、上述したように、パス分解処理において1パス目に印刷するものと決定された同一パス画素セットはP1及びP9であり、従って、存在すると判定される。よって、ステップS3において、対象画素セット(P1及びP9)が、Mパス目(Mの初期値は1であるため、1パス目)で印刷するものと決定される。つまり、この場合、P1及びP9の同一パス画素セットは、パス統合処理の前後で変わりなく、1パス目で印刷されるものと決定される。そして、N=2乃至4は、印刷する同一パス画素セットが存在しないために次の色であるイエローに進む。
次に、イエローについて(即ち、選択色がイエローとされた場合について)説明する。N=1におけるステップS2の判定では、上述したように、パス分解処理において1パス目に印刷するものと決定された同一パス画素セットは存在しないと判定される。よって、ステップS5においてNの値が1インクリメントされて2となる。そして、Nの値(2)は、統合前パス数(4)以下であるため、再度、ステップS2の処理が行われる。N=2におけるステップS2の判定では、パス分解処理において2パス目に印刷するものと決定された同一パス画素セットはP2及びP6であり、従って、存在すると判定される。よって、ステップS3において、対象画素セット(P2及びP6)が、Mパス目(Mの初期値は1であり未だ変更されていないため、1パス目)で印刷するものと決定される。つまり、P2及びP6の同一パス画素セットのパス番号は、2パス目から1パス目へ変更される。その後、ステップS4及びS5においてN及びMの値がそれぞれ1インクリメントされて、Nが3、Mが2となる。そして、Nの値(3)は、統合前パス数(4)以下であるため、再度、ステップS2の処理が行われる。N=3におけるステップS2の判定では、パス分解処理において3パス目に印刷するものと決定された同一パス画素セットはP11であり、従って、存在すると判定される。よって、ステップS3において、対象画素セット(P11)が、Mパス目(即ち、2パス目)で印刷するものと決定される。つまり、P11の同一パス画素セットのパス番号は、3パス目から2パス目へ変更される。N=4は、印刷する同一パス画素セットが存在しないために次の色であるマゼンタに進む。
次に、マゼンタについて(即ち、選択色がマゼンタとされた場合について)説明する。N=1におけるステップS2の判定では、上述したように、パス分解処理において1パス目に印刷するものと決定された同一パス画素セットは存在しないと判定される。よって、ステップS5においてNの値が1インクリメントされて2となる。そして、Nの値(2)は、統合前パス数(4)以下であるため、再度、ステップS2の処理が行われる。N=2におけるステップS2の判定でも、パス分解処理において2パス目に印刷するものと決定された同一パス画素セットは存在しないと判定される。よって、ステップS5においてNの値が1インクリメントされて3となる。そして、Nの値(3)は、統合前パス数(4)以下であるため、再度、ステップS2の処理が行われる。N=3におけるステップS2の判定では、パス分解処理において3パス目に印刷するものと決定された同一パス画素セットはP3及びP7であり、従って、存在すると判定される。よって、ステップS3において、対象画素セット(P3及びP7)が、Mパス目(Mの初期値は1であり未だ変更されていないため、1パス目)で印刷するものと決定される。つまり、P3及びP7の同一パス画素セットのパス番号は、3パス目から1パス目へ変更される。N=4は、印刷する同一パス画素セットが存在しないために次の色であるシアンに進む。
最後に、シアンについて(即ち、選択色がシアンとされた場合について)説明する。N=1におけるステップS2の判定では、上述したように、パス分解処理において1パス目に印刷するものと決定された同一パス画素セットは存在しないと判定される。よって、ステップS5においてNの値が1インクリメントされて2となる。そして、Nの値(2)は、統合前パス数(4)以下であるため、再度、ステップS2の処理が行われる。N=2におけるステップS2の判定でも、パス分解処理において2パス目に印刷するものと決定された同一パス画素セットは存在しないと判定される。よって、ステップS5においてNの値が1インクリメントされて3となる。そして、Nの値(3)は、統合前パス数(4)以下であるため、再度、ステップS2の処理が行われる。N=3におけるステップS2の判定でも、パス分解処理において3パス目に印刷するものと決定された同一パス画素セットは存在しないと判定される。よって、ステップS5においてNの値が1インクリメントされて4となる。そして、Nの値(4)は、統合前パス数(4)以下であるため、再度、ステップS2の処理が行われる。N=4におけるステップS2の判定では、パス分解処理において4パス目に印刷するものと決定された同一パス画素セットはP4、P8及びP12であり、従って、存在すると判定される。よって、ステップS3において、対象画素セット(P4、P8及びP12)が、Mパス目(Mの初期値は1であり未だ変更されていないため、1パス目)で印刷するものと決定される。つまり、P4、P8及びP12の同一パス画素セットのパス番号は、4パス目から1パス目へ変更される。
図6は、図4の例においてパス統合処理が行われた場合の結果の一例を示す図である。
図6は、上述したパス統合処理が行われたことにより、シアンの同一パス画素セット(P4、P8及びP12)、マゼンタの同一パス画素セット(P3及びP7)、イエローの同一パス画素セット(P2及びP6)、及びブラックの同一パス画素セット(P1及びP9)のそれぞれが、1パス目で印刷されるものと決定され、イエローの同一パス画素セット(P11)が、2パス目で印刷されるものと決定されたことを示している。つまり、パス統合処理が行われたことにより、3、4パス目で印刷される同一パス画素セットが存在しなくなったことがわかる。従って、1〜2パス目で、ラスターデータ3に基づく画像の出力が完了することになるので、3、4パス目が行われる必要がなく、分割パス数を4回から2回へ削減できることになる。
ここで、図6の結果に基づく印刷の仕方について説明する。上述したように、シアンの同一パス画素セット(P4、P8及びP12)、マゼンタの同一パス画素セット(P3及びP7)、イエローの同一パス画素セット(P2及びP6)、及びブラックの同一パス画素セット(P1及びP9)のそれぞれは、同じ1パス目で印刷されるが、ドットを打つ位置(ドット位置)はそれぞれ異なる。つまり、シアンについては対応するドット位置(D4、D8及びD12)に、マゼンタについては対応するドット位置(D3及びD7)に、イエローについては対応するドット位置(D2及びD6)に、ブラックについては対応するドット位置(D1及びD9)に、それぞれドットを打つ必要がある(図6の破線矢印参照)。
プリント部16は、各色ごとにノズル164からインクを吐出するタイミングを変えることにより、各色ごとに対応するドット位置にドットを打つことができる。各色ごとのインクの吐出タイミングについては、図7を参照して説明する。
図7は、インクの吐出タイミングを説明する図である。
図7に示されるように、複数色の場合は、印刷ヘッド163には、各色のインクを吐出するための複数のノズル164が備えられている。図7の例では、符号164Kがブラックのインクを吐出するノズル、符号164Yがイエローのインクを吐出するノズル、符号164Mがマゼンタのインクを吐出するノズル、符号164Cがシアンのインクを吐出するノズルをそれぞれ示している。以下、各色ごとに、インクの吐出タイミングを説明する。尚、本実施形態では、印刷ヘッド163が、パス解像度(360dpi)に対応する画素間隔51を移動するのに要する時間は、A秒であるとする。つまり、本実施形態では、各ノズル164C,164M,164Y,164Kは、A秒周期でインクを吐出することができる。
まず、ブラックについて説明する。ブラックについては、ブラックのノズル164Kがドット位置D1を通過する時刻を基準時とした場合に(この基準時を「ブラック基準時」と呼ぶ)、ブラック基準時からnA秒(nは0以上の整数)経過した時刻を、インク吐出可能なタイミングとすることができる。このように設定されることで、ブラックのノズル164Kは、1パス目では、D1(ブラック基準時から0秒経過したときにノズル164Kが通過するドット位置)、D5(ブラック基準時からA秒経過したときにノズル164Kが通過するドット位置)及びD9(ブラック基準時から2A秒経過したときにノズル164Kが通過するドット位置)にドットを打つことが可能となる。図6の例では、ブラックの画素P5はドットを打たない画素であるため、ノズル164Kは、実際には、D1及びD9にドットを打つことになる。
次に、イエローについて説明する。イエローについては、イエローのノズル164Yがドット位置D1を通過する時刻を基準時とした場合に(この基準時を「第一イエロー基準時」と呼ぶ)、第一イエロー基準時から(nA+A/4)秒(nは0以上の整数)経過した時刻を、インク吐出可能なタイミングとすることができる。このように設定されることで、イエローのノズル164Yは、1パス目では、D2(第一イエロー基準時から(A/4)秒経過したときにノズル164Yが通過するドット位置)、D6(第一イエロー基準時から(A+A/4)秒経過したときにノズル164Yが通過するドット位置)及びD10(第一イエロー基準時から(2A+A/4)秒経過したときにノズル164Yが通過するドット位置)にドットを打つことが可能となる。図6の例では、イエローの画素P10はドットを打たない画素であるため、ノズル164Yは、実際には、D2及びD6にドットを打つことになる。
イエローについては、2パス目にD11のドットが打たれる。2パス目については、図示していないが、印刷ヘッド163がD12からD1へ向けて移動するものと仮定すると、例えば、イエローのノズル164Yがドット位置D12を通過する時刻を基準時とした場合に(この基準時を「第二イエロー基準時」と呼ぶ)、第二イエロー基準時から(nA+A/4)秒(nは0以上の整数)経過した時刻を、インク吐出可能なタイミングとすることができる。このように設定されることで、イエローのノズル164Yは、1パス目では、D11(第二イエロー基準時から(A/4)秒経過したときにノズル164Yが通過するドット位置)、D7(第二イエロー基準時から(A+A/4)秒経過したときにノズル164Yが通過するドット位置)及びD3(第二イエロー基準時から(2A+A/4)秒経過したときにノズル164Yが通過するドット位置)にドットを打つことが可能となる。
次に、マゼンタについて説明する。マゼンタについては、マゼンタのノズル164Mがドット位置D1を通過する時刻を基準時とした場合に(この基準時を「マゼンタ基準時」と呼ぶ)、マゼンタ基準時から(nA+2A/4)秒(nは0以上の整数)経過した時刻を、インク吐出可能なタイミングとすることができる。このように設定されることで、マゼンタのノズル164Mは、1パス目では、D3(マゼンタ基準時から(2A/4)秒経過したときにノズル164Mが通過するドット位置)、D7(マゼンタ基準時から(A+2A/4)秒経過したときにノズル164Mが通過するドット位置)及びD11(マゼンタ基準時から(2A+2A/4)秒経過したときにノズル164Mが通過するドット位置)にドットを打つことが可能となる。図6の例では、マゼンタの画素P11はドットを打たない画素であるため、ノズル164Mは、実際には、D3及びD7にドットを打つことになる。
最後に、シアンについて説明する。シアンについては、シアンのノズル164Cがドット位置D1を通過する時刻を基準時とした場合に(この基準時を「シアン基準時」と呼ぶ)、シアン基準時から(nA+3A/4)秒(nは0以上の整数)経過した時刻を、インク吐出可能なタイミングとすることができる。このように設定されることで、シアンのノズル164Cは、1パス目では、D4(シアン基準時から(3A/4)秒経過したときにノズル164Cが通過するドット位置)、D8(シアン基準時から(A+3A/4)秒経過したときにノズル164Cが通過するドット位置)及びD12(シアン基準時から(2A+3A/4)秒経過したときにノズル164Cが通過するドット位置)にドットを打つことが可能となる。図6の例では、ノズル164Cは、D4、D8及びD12のそれぞれにドットを打つことになる。
このように、各色のノズル164C,164M,164Y,164Kごとに、それぞれがドットを打つドット位置に合わせて、インク吐出のタイミング(周期)を設定することで、異なる色について、パス解像度(本実施形態では、360dpi)に対応した画素間隔51よりも短い間隔で連続的にドットを打つことができる。従って、異なる色でドットが打たれる、連続するドット位置を、一つのパスで処理することが可能となり、上述したようなパス統合処理による分割パス数の削減が可能となる。これは、1行を印刷する場合の話であるが、これを印刷ヘッド163の全ノズルに拡張することができる。すなわち、印刷ヘッド163の全ノズルのそれぞれに対応するパスについて、パス統合処理を行う。その結果、あるドットを形成するはずであったパスとは異なるパスで形成するようにでき、印刷に必要な分割パス数を削減することができる。そうすれば、印刷全体としてキャリッジ走行の複数回分を省略でき、その分の印刷時間を短縮できる。なお、複数パスで吐出を行う場合、各パスを同じノズルでドットを形成してもよいし、同じ色で異なるノズルでドットを形成してもよい。すなわち上述の例ではイエローについては、1パス目と2パス目とを、それぞれを同じノズルを用いてもよいし、1パス目で用いたイエローノズルと2パス目で用いたイエローノズルとが異なっていてもよい。
以下、図8及び図9を参照して、パス統合処理の変形例を説明する。
図4に示した例において、パス統合部162は、本変形例では、イエローについて、P11に代えてP10を、ドットを打つ画素とする(図8参照)。このように変更することで、変更後の画素P10は、ドットを打つ他の画素P2及びP6と同じ同一パス画素セットに含められるので、イエローについても一つのパスで印刷できるようになる。このように、パス統合部162は、ドットを打つ画素を変更(例えば、隣の画素に変更)することによって、複数の同一パス画素セットを一つにまとめることができる。上記の例では、ドットを打つ画素がP11からP10へ変更されることによって、P2及びP6の同一パス画素セットと、P11の同一パス画素セットとが、一つの同一パス画素セット(P2、P6及びP10の同一パス画素セット)にまとめられたことになる。以下、このような処理(ドットを打つ画素を変更(言い換えるとドットを打つドット位置を変更)することによって、複数の同一パス画素セットを一つにまとめる処理)を「ドット位置変更による高速化処理」と呼ぶ。
ドット位置変更による高速化処理において、パス統合部162は、例えば、次のようにして変更対象の画素を決定することができる。即ち、パス統合部162は、或る同一パス画素セットに属する画素(ドットを打たない画素も含む)がN個あり、そのN個のうちのM個がドットを打つ画素であった場合において、上記或る同一パス画素セットに属する画素の数(N)に対するドットを打つ画素の数(M)の割合(即ち、M/Nの値)が、所定の閾値よりも小さいときに、そのM個の画素のそれぞれを、変更対象の画素と決定することができる。つまり、上記のイエローについての例に当てはめて具体的に説明すると、P3、P7及びP11の同一パス画素セットには、3つの画素が属しており、そのうちP11がドットを打つ画素である。従って、P3、P7及びP11の同一パス画素セットに属する画素の数(3)に対するドットを打つ画素の数(1)の割合(即ち、1/3)が、所定の閾値以下であったならば、そのドットを打つ画素(P11)が、変更対象の画素とされる。そして、この変更対象とされた画素(P11)が、ドットを打たない画素に変更され、その代わりとなる画素(上記の例であれば、P2及びP6と同じ同一パス画素セットに含めることができるP10)が、ドットを打つ画素に変更される。
ドット位置変更による高速化処理により、ドットを打つ画素がP11からP10へ変更された場合における、パス統合処理の結果は、図9のようになる。即ち、この変形例が適用されることにより、2パス目で印刷される同一パス画素セットが存在しなくなったことがわかる。従って、1パス目で、ラスターデータ3に基づく画像の出力が完了することになるので、2〜4パス目が行われる必要がなく、分割パス数を4回から1回へ削減できることになる。ただし、ドットを打つ画素を変更するために、このようにすると画質が低下する虞がある。そのため、画質よりも印刷速度を重視する印刷モードである場合にドット位置変更による高速化処理を実行し、印刷速度よりも画質を重視する印刷モードである場合にはドット位置変更による高速化処理を実行しないようにすることが望ましい。
図10は、本実施形態に係るプリント部16が行う印刷処理の全体のフローチャートである。尚、Nは、1から統合後パス数までの数をカウントするための変数であり、変数Nの初期値は、“1”であるとする。
まず、パス分解部161は、パス分解処理を行う(S11)。パス分解処理については、図2において説明したとおりである。
次に、プリント部16は、高速印刷モードが設定されているか否かを判定する(S12)。
高速印刷モードが設定されている場合は(S12:YES)、パス統合部162は、ドット位置変更による高速化処理を行う(S13)。ドット位置変更による高速化処理については、図8及び図9において説明したとおりである。その後、パス統合部162は、パス統合処理を行う(S14)。パス統合処理については、図3〜図6において説明したとおりである。
一方、高速印刷モードが設定されていない場合は(S12:NO)、パス統合部162は、パス統合処理を行う(S14)。
その後、プリント部16は、パス統合処理の結果に従って、複数パス印刷を行う。即ち、プリント部16は、Nパス目の印刷を行う(S15)。複数色の場合の印刷方法(インクの吐出タイミング)については、図7で説明したとおりである。
その後、プリント部16は、Nの値を1インクリメントする(S16)。
その後、プリント部16は、Nの値が統合後パス数よりも大きいか否かを判定する(S17)。
プリント部16は、統合後パス数の数だけ、ステップS15の印刷処理を繰り返して行う(S17)。尚、図6の例であれば、統合後パス数は2回であり、ドット位置変更による高速化処理が行われた図9の例であれば、統合後パス数は1回である。つまり、図6の例であれば、ステップS15の印刷処理は2回行われ、ドット位置変更による高速化処理が行われた図9の例であれば、ステップS15の印刷処理は1回だけ行われる。
その後、紙送り処理が行われる(S18)。
プリント部16は、印刷対象の全てのラインについて、ステップS11〜ステップS18の処理を繰り返して行う(S19)。
上述した本発明の実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱することなく、その他の様々な態様でも実施することができる。