しかしながら、特許文献2に開示されたスポンジブラストペレットは、スポンジに特化した上述の効果を得るものの、研削材を発泡ポリウレタンペレット内に固着した高価なものなので、ブラストペレットとして使用した場合には工費がかさむという問題があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ブラスト時の粉塵発生量が少なく作業環境を改善できるというスポンジブラストペレットが持つ効果に近い効果、すなわち、ブラスト時の粉塵発生量を少なくできるという効果を得ることができるとともに、コスト的に有利な媒体、及び媒体の製造方法、並びに媒体の製造装置を提供することを目的とする。
本発明は、前記目的を達成するために、瓦礫、ゴム屑、ガラス屑、廃プラスチック、鉱物資源、煤塵、コンクリート屑、燃え殻、金属廃棄物の産業廃棄物を溶融した後のスラグを破砕して製造された粒状体に、ポリウレタン水性エマルジョンからなるバインダをコーティングすることによってブラスト媒体を製造するブラスト媒体の製造装置において、前記粒状体を洗浄水により水洗するとともにその洗浄水の電気伝導度を検出する電気伝導度検出手段を備えた水洗手段と、水洗後の前記粒状体を加熱するとともに急冷して焼き入れする焼入手段と、前記焼き入れした前記粒状体に前記バインダを添加して混合することにより、前記バインダがコーティングされた前記ブラスト媒体を製造する添加混合手段と、を有し、前記水洗後の前記粒状体を篩分けして粒径毎に分別する分別手段を備え、前記焼入手段は、前記粒状体を搬送するスチールコンベア、該スチールコンベアによる搬送方向上流側に設けられ該粒状体を加熱する加熱手段、該スチールコンベアによる搬送方向下流側に設けられ搬送されてきた前記粒状体を冷却する冷却手段を有し、前記添加混合手段は、前記粒状体を収容するタンク、該タンクに収容された前記粒状体と添加された前記バインダとを攪拌する攪拌手段、該タンクを加熱するヒータ、該タンク内の圧力を負圧にする圧力制御手段を有し、所望する前記粒状体の硬度に基づいて、前記焼入手段の前記加熱手段による前記粒状体の加熱温度、前記スチールコンベアの搬送速度、前記冷却手段の冷気温度、冷気供給量を可変制御する焼入制御部が設けられたことを特徴としている。
本発明によれば、研削材となる粒状体にバインダをコーティングしたブラスト媒体は、粒状体が割れ難くなることから、ブラスト作業時における粉塵の発生をスポンジブラストペレット近くまで抑えることができる。これにより、ブラスト時の粉塵発生量が少なく作業環境を改善できるというスポンジブラストペレットの効果に近い効果を得ることができる。また、このブラスト媒体は粒状体にバインダをコーティングして製造されるものなので、すなわち、高価な発泡ポリウレタンペレットを用いないため、製品コストを下げることができる。更に、ブラスト媒体の噴射(投射)時において、ブラスト媒体同士の滑りがよくなるため、ブラスト媒体が投入される噴射装置の容器内においてブリッジ等の詰まりを防止できる。これにより、噴射装置による噴射量が一定になるので、ブラスト作業を効率よく行うことができる。
本発明の粒状体は、中実の粒状体であることが好ましい。これに対して、空洞のある粒状体、リング状の粒状体は、空洞部やリング内の空間部がブラスト時に緩衝機能として作用し、ブラスト作業の仕事量が低下するので好ましくない。
また、前記粒状体は、瓦礫、ゴム屑、ガラス屑、廃プラスチック、鉱物資源、煤塵、コンクリート屑、燃え殻、金属廃棄物の産業廃棄物を溶融した後のスラグを破砕して製造された粒状体である。このような産業廃棄物の溶融スラグをブラスト媒体として利用することにより、産業廃棄物を有効に再利用することができ、また、コスト的にも非常に有利となる。なお、溶融スラグは上記の他、金属鉱石から金属を精錬する際に得られた金属酸化物の溶融スラグであってもよい。また、このような粒状体の溶融スラグを結合材により結合させることにより、グラインダ(砥石)として再利用することもできる。更に、粒状体として、アルミナ、スチールグリットを使用してもよい。また、銅カラミであってもよい。銅カラミとは、銅精錬の際に発生するスラグを粒状化したものであり、珪砂に比べて比重が大きく重研削用に好適であり、ブラストに用いることも可能である。
更に、本発明では、バインダとして、一定条件下で製造されたMSDS(Material Safety Data Sheet)情報を伴った結合剤であり、とろみのあるアルカリ性のポリウレタン水性エマルジョン(発泡ポリウレタン結合剤)製を使用している。このバインダは、ポリウレタン樹脂を25〜40%含有し、比重は約1.1である。バインダの添加量は、粒状体の質量に対して1〜10%(w/w)であることが好ましい。1%(w/w)以下であると、コーティングの膜厚が薄くなり、ブラスト時に粒状体が割れて粉塵を発生させるおそれがあり、また、10%(w/w)を超えると、コーティングの膜厚が厚くなり過ぎて粒状体の仕事量が低下するからである。
本発明によれば、粒状体の塩分が高いと、そのブラスト媒体によって加工された鋼壁面の塩分も同様に高くなり、その塩分が水分を吸着し塗膜の膨れ、剥離、錆の原因になる。よって、バインダのコーティングの前に粒状体を洗浄水により洗浄し、洗浄水に含まれる塩化ナトリウム濃度に起因する電気伝導度が所定の値以下になるまで水洗を行う。前記所定の値とは、ブラスト後の鋼壁面にブラスト媒体による錆が発生しないための粒状体に要求される規定値であり、例えば、米国規格であるASTM D4940に準拠した場合には、電気伝導度が290μS/cm以下であることが規定されている。
洗浄により所定の電気伝導度以下となった粒状体をそのままバインダでコーティングすることもできるが、ブラスト用に使用するためには、その硬度を適正な値まで上げる必要がある。よって、洗浄工程の後、焼入工程を設け、焼入手段によって粒状体の硬度を上げる。例えば、粒状体をバーナ等の加熱手段によって1300℃に加熱した後、ノズルから常温空気を吹き付けて焼き入れする。
また、焼入工程において、焼き入れの諸条件(焼入温度、焼入時間、冷却温度等)を変更することにより、粒状体の硬度を調整することができる。硬度の高い(例えば新モース:5超)粒状体は、ブラスト用として使用する場合、仕事量(研削能力)が大きいことから塗装面の剥離作業に好適に使用することができ、硬度の中程度の(例えば新モース:3〜5)粒状体は、塗装面が剥離された素地面の調整作業に好適に使用することができ、硬度の低い(例えば新モース:3未満)粒状体は、素地調整処理された素地面の鏡面磨き作業に好適に使用することができる。すなわち、所望のアンカープロファイルの深さ(ブラストにより生じる素地面の粗さ)に応じて粒状体の硬度が選択される。
このように適正な硬度にまで上げられた粒状体にバインダをコーティングすることにより、ブラスト作業に好適な粒状体を得ることができる。なお、洗浄後、そのままの状態で適正な硬度を有している粒状体においては、焼入工程を省くことができる。なお、ブラスト作業時に粉塵発生が多くともアンカープロファイルをより深く得たい場合は、スラグメディアにバインダ添加を行わない場合もある。
本発明によれば、粒径の大きい(例えば2.0以上〜4.0mm未満)粒状体は、ブラスト用として使用する場合、仕事量(研削能力)が大きいことから塗装面の剥離作業に好適に使用することができ、粒径の中程度の(例えば1.0以上〜2.0mm未満)粒状体は、塗装が剥離された素地面の調整作業に好適に使用することができ、粒径の小さい(例えば1.0mm未満)粒状体は、素地調整処理された素地面の鏡面磨き作業に好適に使用することができる。
本発明によれば、焼入手段はスチールコンベアによって粒状体を搬送しながら焼き入れする。すなわち、粒状体はスチールコンベアの搬送方向上流側で載置され、この搬送開始後に、搬送方向上流側に設けられた加熱手段によって加熱される。この後、搬送方向下流側に設けられた冷却手段によって冷却されることにより、適正な硬度に焼き入れされる。
スチールコンベアは、粒状体の粒径に合わせて大径用のもの、中径用のもの、小径用のものと3種類揃えておくことが好ましく、焼入工程の前工程である篩工程で粒径毎に選別された3種類の粒状体を、その径に対応したスチールコンベアに載置して焼き入れすることが好ましい。要するに、粒状体の径に応じて焼き入れの諸条件を変更することにより、その径に対応した好適な硬度の粒状体を製造できる。
一方、添加混合手段は、タンクに収容された粒状体と添加されたバインダとをスクリュウ等の攪拌手段によって均等に攪拌する。バインダは、粒状体に均等に供給するために、タンクの上部に放射状に設けたられたスプレー管から供給することが好ましい。また、攪拌手段による攪拌中に、タンクの底部、又は壁部に設けられたヒータによってタンクを加熱(例えば40〜60℃)することが好ましい。これにより、バインダがコーティングされたブラスト媒体の乾燥を促進できる。また、圧力制御手段によってタンク内の圧力を負圧(例えば、−4.9×104Pa〜−2.9×104Pa)にすることが好ましい。これにより、粒状体表面の凸凹の凹内の空気が強制的に引き出されるため、その凹部にバインダが入り込み易くなり、粒状体全表面をバインダによってコーティングできる。さらに、タンク内でのブラスト媒体を乾燥する場合には、乾燥空気をタンクに供給しながら攪拌手段による攪拌を行うとともに、圧力制御手段によってタンク内の圧力を負圧に制御することが好ましい。これによって、ブラスト媒体の乾燥をより効率よく行うことができる。
本発明によれば、加熱手段による粒状体の加熱温度、スチールコンベアの搬送速度、冷却手段の冷気温度、冷気供給量を焼入制御部によって制御することが好ましい。これにより、所望する粒状体の硬度を簡単に得ることができる。
本発明の前記焼入制御部のメモリには、前記粒状体の粒径、前記粒状体の粒径毎の加熱温度、前記スチールコンベアの搬送速度、前記冷却手段の冷気温度、冷気供給量の諸条件を変更した際に得られた多数の硬度情報が予め記憶され、前記粒状体の粒径と前記所望の硬度が入力された際に、前記焼入制御部は、その粒径において所望の硬度に該当する条件を前記諸条件から読み出し、この条件に基づいて制御し、前記粒状体の粒径に基づいて、前記添加混合手段の前記攪拌手段による回転数、前記バインダの添加量、前記ヒータによって加熱された前記タンクの温度、前記タンクの負圧値を可変制御する添加攪拌制御部が設けられ、前記添加攪拌制御部のメモリには、前記攪拌手段の回転数、前記バインダの添加量、前記ヒータによって加熱された前記タンクの温度、前記タンクの負圧値の諸条件を変更した際に得られた好適なコーティング条件が前記粒状体の粒径毎に予め記憶され、粒状体の粒径が入力された際に、前記添加攪拌制御部は、その粒径に対応する好適なコーティング条件を読み出し、このコーティング条件に基づいて制御することを特徴としている。
本発明によれば、焼入制御部のメモリに、粒状体の粒径、粒状体の粒径毎の加熱温度、スチールコンベアの搬送速度、冷却手段の冷気温度、冷気供給量の諸条件を変更した際に得られた多数の硬度情報を予め記憶しておく。そして、焼き入れする粒状体の粒径と所望の硬度が、焼入制御部の入力部から入力されると、焼入制御部は、その粒径において所望の硬度に該当する条件を前記諸条件から読み出し、この条件に基づいて加熱手段による粒状体の加熱温度、スチールコンベアの搬送速度、冷却手段の冷気温度、冷気供給量を制御することが好ましい。このように焼入硬度に関する諸条件をデータベース化しておくことにより、粒径に応じた所望の硬度を再現できる。
本発明によれば、攪拌する粒状体の粒径に基づいて、攪拌手段による回転数、バインダの添加量、ヒータによって加熱されたタンクの温度、タンクの負圧値を添加攪拌制御部によって制御することが好ましい。これにより、バインダが好適にコーティングされたブラスト媒体を得ることができる。
本発明によれば、添加攪拌制御部のメモリに、攪拌手段の回転数、バインダの添加量、ヒータによって加熱されたタンクの温度、タンクの負圧値の諸条件を変更した際に得られた好適なコーティング条件を粒状体の粒径毎に予め記憶しておく。そして、攪拌する粒状体の粒径が、添加混合手段の入力部から入力されると、添加攪拌制御部は、その粒径に対応する好適なコーティング条件を読み出し、このコーティング条件に基づいて攪拌手段による回転数、バインダの添加量、ヒータによって加熱されたタンクの温度、タンクの負圧値を制御することが好ましい。このようにコーティングに関する諸条件をデータベース化しておくことにより、粒径に応じた好適なコーティングを再現できる。
具体的には、これらの条件下でどこまで良好にバインダが粒状体の凹部にまでも付着しているかを顕微鏡で調査し、これを粒径毎にデータ化する。
本発明に係る媒体、及び媒体の製造方法、並びに媒体の製造装置によれば、瓦礫、ゴム屑、ガラス屑、廃プラスチック、鉱物資源、煤塵、コンクリート屑、燃え殻、金属廃棄物の産業廃棄物を溶融した後のスラグを破砕して製造された粒状体に、ポリウレタン水性エマルジョンからなるバインダをコーティングした媒体は、粒状体が割れ難くなることから、ブラスト作業時における粉塵の発生をスポンジブラストペレット近くまで抑えることができる。これにより、作業環境を改善できるというスポンジブラストペレットの効果に近い効果を得ることができる。また、この媒体は粒状体にバインダをコーティングして製造されるものなので、すなわち、高価な発泡ポリウレタンペレットを用いないため、製品コストを下げることができる。
以下添付図面に従って、本発明に係る媒体、及び媒体の製造方法、並びに媒体の製造装置の好ましい実施の形態について詳説する。
図1は、実施の形態の媒体10、及び媒体10の製造方法の概念図が示されている。
図1に基づき媒体10の製造方法の概念について説明すると、所定の粒状体12をタンク14に投入するとともに、バインダ16を粒状体12に添加し、タンク14内において攪拌手段18によって攪拌することによりバインダ16が表面にコーティングされた媒体10を得るものである。この媒体10は粒径、硬度等に応じて、鋼壁面の塗装を研削除去する媒体、塗装が研削除去された素地面の調整用ブラスト媒体、及び調整された素地面の鏡面加工用ブラスト媒体等として使用される。
ここで使用する粒状体12は、瓦礫、ゴム屑、ガラス屑、廃プラスチック、鉱物資源、煤塵、コンクリート屑、燃え殻、金属廃棄物の産業廃棄物を溶融した後のスラグを破砕して製造された粒状体であり、以下、「スラグメディア」と称する。すなわち、本願では粒状体をスラグメディア12と呼び、スラグメディア12にバインダ16をコーティングしたものを媒体10と呼ぶ。なお、このスラグメディア12は、銅精錬時のスラグを粒状化した銅カラミも含む。また、ここで使用するバインダ16は、一定条件下で製造されたMSDS(Material Safety Data Sheet)情報を伴った結合剤であり、トロ味のあるアルカリ性のポリウレタン水性エマルジョンであって、ポリウレタン樹脂を25〜40%含有し、比重は約1.1であるものが使用される。バインダ16の添加量は、スラグメディア12の質量に対して1〜10%(w/w)であることが好ましい。1%(w/w)以下であると、コーティングの膜厚が薄くなり、ブラスト時にスラグメディア12が割れて粉塵を発生させるおそれがあり、また、10%(w/w)を超えると、コーティングの膜厚が厚くなり過ぎてスラグメディア12の仕事量が低下するからである。
上記の如く実施の形態では、研削材となるスラグメディア12にバインダ16をコーティングした媒体10は、スラグメディア12が割れ難くなることから、ブラスト作業時における粉塵の発生を、バインダ16をコーティングしていない時よりも約20%少なくすることができる。よって、ブラスト作業時における粉塵の発生をスポンジブラストペレット近くまで抑えることができる。これにより、作業環境を改善できるというスポンジブラストペレットの効果に近い効果を得ることができる。そしてこのように産業廃棄物の溶融スラグから得られたスラグメディア12をブラスト媒体として利用することにより、産業廃棄物を有効に再利用することができるので好ましく、また、高価な発泡ポリウレタンペレットを用いないため、コスト的にも非常に有利となる。更に、媒体10の噴射(投射)時において、媒体10、10…同士の滑りがよくなるため、媒体10が投入される噴射装置の容器内においてブリッジ等の詰まりを防止できる。これにより、噴射装置による噴射量が一定になるので、ブラスト作業を効率よく行うことができる。
スラグメディア12は、中実の粒状体であることが好ましい。これに対して、空洞のある粒状体、リング状の粒状体は、空洞部やリング内の空間部がブラスト時に緩衝機能として作用し、ブラスト作業の仕事量が低下するので好ましくない。
スラグメディア12をブラスト媒体として好適に使用する場合、その製造工程は、スラグメディア12を洗浄水により水洗し、その洗浄水の塩化ナトリウム濃度に起因する電気伝導度が所定の値以下になるまで水洗を行う水洗工程と、水洗後のスラグメディア12を加熱するとともに急冷して焼き入れする焼入工程と、焼き入れしたスラグメディア12にバインダ16を添加して混合することにより、バインダ16がコーティングされた媒体10を製造する添加混合工程とを有する。
図2は水洗工程の水洗手段20が示され、図3は焼入工程の焼入手段22が示され、図4は添加混合工程の添加混合手段24がそれぞれ示されている。
スラグメディア12の塩化ナトリウムによる塩分が高いと、そのスラグメディア12によって加工された鋼壁面の塩分も同様に高くなり、その塩分が水分を吸着し塗膜の膨れ、剥離、錆等の原因になる。よって、バインダ16のコーティングの前にスラグメディア12を洗浄する必要がある。
図2に示す水洗手段20は、スラグメディア12が投入される容器26、容器26を回転させるモータ28、洗浄水30を容器26から吸水するポンプ32、給水した洗浄水30の電気伝導度を検出する電気伝導度計34等から構成されている。
容器26内に投入されたスラグメディア12は、容器26の下部開口部36に取り付けられたメッシュ38によって吸水パイプ40内に流失しないようになっており、吸水パイプ40から供給される洗浄水30によって洗浄される。
容器26の外周部にはギヤ42が固着されており、このギヤ42にモータ28のギヤ44が噛合されている。また、容器26の下部は軸受46を介して支持部48に回転自在に支持されている。したがって、モータ28が駆動されると、その回転力がギヤ44からギヤ42を介して容器26に伝達されることにより、容器26が鉛直軸を中心に回転される。したがって、スラグメディア12は、容器26が回転されながら洗浄水30によって洗浄される。更に、容器26の下部は、不図示のロータリージョイントを介して吸水パイプ40に接続されている。更にまた、軸受46と容器26の下部開口部36との間にはバルブ50が設けられている。このバルブ50が開放されるとともにポンプ32が駆動されると、容器26内の洗浄に供した洗浄水30が吸水パイプ40に吸水される。そして、その吸水された洗浄水30は、吸水パイプ40に設けられた電気伝導度計34によって電気伝導度が計測された後、容器26に循環供給される。また、吸水パイプ40に吸水された洗浄水30の一部は、吸水パイプ40に設けられたバルブ41が開放されることにより、排水管43を介して外部に排水される。更に、吸水パイプ40に接続されている給水管54からバルブ56を介して新たな洗浄水30が容器26に供給されるようになっている。
このように構成された水洗手段は、容器26を回転させながら、洗浄水30を連続循環供給し、かつ、洗浄水30の一部を排水管43から排水するとともに新たな洗浄水30を給水管54から補充しながら、洗浄水30の塩化ナトリウムによる電気伝導度を電気伝導度計34によって連続的に計測する。
電気伝導度計34によって計測されている電気伝導度が規定値よりも高い場合には、洗浄を継続して実施し、電気伝導度が規定値になったところで、スラグメディア12の洗浄を終了する。この後、不図示の傾倒手段により傾倒自在に設けられている容器26を図5の如く傾倒させ、容器26内のスラグメディア12を容器26から取り出す。なお、図5中符号52は、容器26の傾倒軸である。また、容器26を傾倒させる前に容器26から洗浄水30を予め排水しておいてもよい。
電気伝導度の規定値とは、ブラスト後の鋼壁面にスラグメディア12による錆が発生しないためのスラグメディア12に要求される規定値であり、例えば、米国規格であるASTM D4940に準拠した場合には、電気伝導度が290μS/cm以下であることが規定されている。なお、図6のグラフには、洗浄水量と電気伝導度(μS/cm)との関係が示されており、洗浄水量に応じて電気伝導度(μS/cm)が低下していくことが示されている。
水洗手段20による洗浄により所定の電気伝導度以下となったスラグメディア12をそのままバインダ16でコーティングすることもできるが、ブラスト用に使用するためには、その硬度を適正な値まで上げる必要がある。よって、洗浄工程の後、焼入工程を設け、焼入手段によってスラグメディア12の硬度を上げる必要がある。
図3に示す焼入手段22は、スチールコンベア60、スチールコンベア60による搬送方向上流側に設けられスラグメディア12を加熱するバーナ(加熱手段)62、スチールコンベア60による搬送方向下流側に設けられ搬送されてきたスラグメディアを冷却する空冷ノズル(冷却手段)64等から構成されている。また、スチールコンベア60による搬送方向上流側には、スチールコンベア60を加熱するバーナ66も設けられ、スチールコンベア60を振動させて、バーナ62によって加熱されたスラグメディア12をほぐすバイブレータ68も設けられている。
この焼入手段22は、スチールコンベア60によってスラグメディア12を搬送しながら焼き入れする。すなわち、スラグメディア12はスチールコンベア60の搬送方向上流側で載置され、この搬送開始後に、バーナ66によって例えば1300度に加熱される。この後、空冷ノズル64から吹き出された空気によって冷却されることにより、適正な硬度に焼き入れされる。
スチールコンベア60は、図3の如くスラグメディア12の粒径に合わせて大径用のもの、中径用のもの、小径用のものと3種類のスチールコンベア60A、60B、60Cを揃えておくことが好ましく、それぞれのスチールコンベア60A、60B、60Cを別個の動力により独立して駆動させることが好ましい。
このため、図2に示した水洗工程と図3に示した焼入工程との間に、スラグメディア12を篩分けして粒径毎に分別する分別工程を備えることが好ましい。この分別工程の分別手段70は、粒径がさまざまなスラグメディア12から粒径の大きい(例えば2.0以上〜4.0mm未満)スラグメディア12Aを分別する第1の篩72、粒径の中程度の(例えば1.0以上〜2.0mm未満)スラグメディア12Bを分別する第2の篩74、粒径の小さい(例えば1.0mm未満)スラグメディア12Cを分別する第3の篩76から構成されている。第1の篩72によって分別されたスラグメディア12Aは、スチールコンベア60Aでの搬送中に焼き入れされて回収箱78Aに回収される。そして、第2の篩74によって分別されたスラグメディア12Bは、スチールコンベア60Cでの搬送中焼き入れされて回収箱78Bに回収され、第3の篩76によって分別されたスラグメディア12Cは、スチールコンベア60Aでの搬送中に焼き入れされて回収箱78Cに回収される。
粒径の大きい(例えば2.0以上〜4.0mm未満)スラグメディア12Aは、ブラスト媒体として使用する場合、仕事量(研削能力)が大きいことから塗装面の剥離作業に好適に使用することができ、粒径の中程度の(例えば1.0以上〜2.0mm未満)スラグメディア12Bは、塗装が剥離された素地面の調整作業に好適に使用することができ、粒径の小さい(例えば1.0mm未満)スラグメディア12Cは、素地調整処理された素地面の鏡面磨き作業に好適に使用することができる。
また、焼入工程において、焼き入れの諸条件(焼入温度、焼入時間、冷却温度等)を変更することにより、スラグメディア12の硬度を調整することができる。硬度の高い(例えば新モース:5超)スラグメディア12は、ブラスト媒体として使用する場合、仕事量(研削能力)が大きいことから塗装面の剥離作業に好適に使用することができ、硬度の中程度の(例えば新モース:3〜5)スラグメディア12は、塗装面が剥離された素地面の調整作業に好適に使用することができ、硬度の低い(例えば新モース:3未満)スラグメディア12は、素地調整処理された素地面の鏡面磨き作業に好適に使用することができる。すなわち、所望のアンカープロファイルの深さ(ブラストにより生じる素地面の粗さ)に応じてスラグメディア12の硬度が選択される。
このように適正な硬度にまで上げられたスラグメディア12にバインダ16をコーティングすることにより、ブラスト作業に好適な媒体10を得ることができる。なお、洗浄後、そのままの状態で適正な硬度を有しているスラグメディア12においては、焼入工程を省くことができる。また、硬度と前述した粒径とを組み合わせることで、多種多用の機能をもつ媒体10を製造できる。なお、ブラスト作業時に粉塵発生が多くともアンカープロファイルをより深く得たい場合は、スラグメディアにバインダ添加を行わない場合もある。
図4に示す添加混合手段24は、スラグメディア12を収容するタンク80、タンク80に収容されたスラグメディア12と添加されたバインダ16とを攪拌するスクリュウ(攪拌手段)82、タンク80を加熱するヒータ84、タンク80内の圧力を負圧にする圧力制御手段86等から構成されている。
添加混合手段24は、タンク80に収容されたスラグメディア12(不図示)と添加されたバインダ16とを回転するスクリュウ82によって均等に攪拌する。バインダ16は、スラグメディア12にバインダ16を均等に供給するために、タンク80の上部に放射状に設けたられたスプレー管88、88…から供給することが好ましい。また、スクリュウ82による攪拌中に、タンク80の底部(壁部でもよい)に設けられたヒータ84によってタンク80を加熱(例えば40〜60℃)することが好ましい。これにより、バインダ16がコーティングされた媒体10の乾燥を促進できる。また、圧力制御手段86によってタンク80内の圧力を負圧(例えば、−4.9×104Pa〜−2.9×104Pa)にすることが好ましい。これにより、スラグメディア12の表面の凸凹の凹内の空気が強制的に引き出されるため、その凹部にバインダ16が入り込み易くなり、スラグメディア12の全表面をバインダ16によってコーティングできる。さらに、タンク80内での媒体10を乾燥する場合には、ポンプ90からの乾燥空気を、バルブ92を開いてタンク80に供給しながらスクリュウ82による攪拌を行うとともに、圧力制御手段86によってタンク80内の圧力を負圧に制御することが好ましい。これにより、媒体10の乾燥をより効率よく行うことができる。また、スクリュウ82を昇降手段94によって昇降させることにより、攪拌、乾燥効率が更に向上する。
一方、図3に示した焼入手段22には、所望するスラグメディア12A〜12Cの硬度に基づいて、バーナ62によるスラグメディア12A〜12Cの加熱温度、スチールコンベア60A〜60Cの搬送速度、空冷ノズル64の冷気温度、冷気供給量(約0.02Nm3/分)を可変制御する焼入制御部96が設けられている。
バーナ62による粒状体の加熱温度(例えば1300℃)、スチールコンベアの搬送速度(例えば0.2m/sec)、冷却手段の冷気温度(例えば常温)、冷気供給量を焼入制御部96によって制御することが好ましい。これにより、所望するスラグメディア12A〜12Cの硬度を簡単に得ることができる。
また、焼入制御部96のメモリ98には、スラグメディア12A〜12Cの粒径、スラグメディア12A〜12Cの粒径毎の加熱温度、スチールコンベア60A〜60Cの搬送速度、空冷ノズル64の冷気温度、冷気供給量の諸条件を変更した際に得られた多数の硬度情報が予め記憶されている。焼入制御部96は、スラグメディア12A〜12Cの粒径と所望の硬度が、焼入手段22の入力部(不図示)から入力された際に、その粒径において所望の硬度に該当する条件をメモリ98から読み出し、この条件に基づいてバーナ62によるスラグメディア12A〜12Cの加熱温度、スチールコンベア60A〜60Cの搬送速度、空冷ノズル64の冷気温度、冷気供給量を制御する。このように焼入硬度に関する諸条件をデータベース化しておくことにより、粒径に応じた所望の硬度を再現できる。
図4に示した添加混合手段4にも同様に、スラグメディア12の粒径に基づいて、スクリュウ82の回転数(例えば5〜10rpm)、バインダ16の添加量(例えばスラグメディア12の質量に対して1〜10%(w/w)、ヒータ84によって加熱されたタンクの温度(例えば40〜60℃)、タンクの負圧値(例えば−4.9×104Pa〜−2.9×104Pa)を可変制御する添加攪拌制御部100が設けられている。
この添加攪拌制御部100によって、スクリュウ82による回転数、バインダ16の添加量、ヒータ84によって加熱されたタンク80の温度、タンク80の負圧値を制御すれば、バインダ16が好適にコーティングされた媒体10を得ることができる。
また、添加攪拌制御部100のメモリ102には、スクリュウ82の回転数、バインダ16の添加量、ヒータ84によって加熱されたタンク80の温度、タンク80の負圧値の諸条件を変更した際に得られた好適なコーティング条件がスラグメディア12の粒径毎に予め記憶されている。添加攪拌制御部100は、スラグメディア12の粒径が添加混合手段24の入力部(不図示)から入力されると、その粒径に対応する好適なコーティング条件をメモリ102から読み出し、このコーティング条件に基づいてスクリュウ82の回転数、バインダ16の添加量、ヒータ84によって加熱されたタンク80の温度、タンク80の負圧値を制御する。このようにコーティングに関する諸条件をデータベース化しておくことにより、粒径に応じた好適なコーティングを再現できる。
具体的には、これらの条件下でどこまで良好にバインダ16がスラグメディア12の凹部にまでも付着しているかを顕微鏡で調査し、これを粒径毎にデータ化する。
10…媒体、12…粒状体(スラグメディア)、14…タンク、16…バインダ、18…攪拌手段、20…水洗手段、22…焼入手段、24…添加混合手段、26…容器、28…モータ、30…洗浄水、32…ポンプ、34…電気伝導度計、36…下部開口部、38…メッシュ、40…吸水パイプ、42…ギヤ、44…ギヤ、46…軸受、48…支持部、50…バルブ、54…給水管、56…バルブ、60…スチールコンベア、62…バーナ、64…空冷ノズル、66…バーナ、68…バイブレータ、70…分別手段、72…第1の篩、74…第2の篩、76…第3の篩、80…タンク、82…スクリュウ、84…ヒータ、86…圧力制御手段、88…スプレー管、90…ポンプ、92…バルブ、94…昇降手段、96…焼入制御部、98…メモリ、100…添加攪拌制御部、102…メモリ