JP5306998B2 - 筒状編地の編成方法と筒状編地 - Google Patents

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Description

本発明は、筒状編地の編成方法と筒状編地に関するものである。特に、環状の弾性編地部の周回方向を他の編地部の周回方向に対して斜行させ、且つ、弾性編地部がその周回方向に効果的に収縮するように編成できる筒状編地の編成方法に関する。
環状の弾性編地部を有する筒状編地として、特許文献1に記載のソックスがある。このソックスでは、筒状編地の途中に、同編地の周回方向と平行に弾性編地部が形成されている。
その他、特許文献2には、筒状編地の一部に螺旋状の帯状片を形成し、その帯状片に他の箇所より高い緊締力を持たせたサポータ又はストッキングが開示されている。
特開平11-124702号公報 特公平6-51921号公報
しかし、いずれの従来技術によっても、筒状編地の一部に、同編地の周回方向に対して斜行する環状の弾性編地部を形成し、且つこの弾性編地部の周回方向により高い伸縮力を持たせることができない。
特許文献1のソックスでは、弾性編地部が他の編地部と平行に設けられている。そのため、筒状編地の編成時において、編目が編幅方向に並列される方向(以下、この方向をコース方向といい、編幅方向に並列された一行の編目列をコースといい、複数のコースが並列される方向をウェール方向という)が弾性編地部と他の編地部とで同じであり、弾性編地部を他の編地部と異なる周回方向に効果的に収縮させることができない。
また、特許文献2のサポータ又はソックスでは、斜行した帯状片を成型編みで形成することが挙げられている。しかし、このサポータやソックスは、帯状片の周回方向が、その他の編地部の周回方向に対して傾斜しているだけで、帯状片のコース方向と他の編地部のコース方向とが同じである。そのため、帯状片を、その周回方向に効果的に収縮させることが難しい。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、環状の斜行した弾性編地部を有する筒状編地であって、その弾性編地部の周回方向に効果的に収縮できる筒状編地とその編成方法を提供することにある。
本発明の筒状編地の編成方法は、左右方向に延び、前後方向に対向する少なくとも一対の針床を有する横編機を用いて、環状の弾性編地部と、弾性編地部の軸方向一端側の編目列に接合される第一ベース編地部と、弾性編地部の軸方向他端側の編目列に接合される第二ベース編地部とを有する筒状編地を編成する方法である。そして、この方法は、次のステップを備えることを特徴とする。
第一ベース編地部を編成する過程で、編成の進行に伴って、編幅が変化するように引き返し編成を行なって第一傾斜部を編成するステップ。
第一傾斜部の開口縁に並ぶ編目列に連続して、環状に弾性編地部を編成するステップ。
弾性編地部の開口縁に並ぶ編目列に連続して第二ベース編地部を編成する過程を行い、その過程で、編成の進行に伴って編幅が変化するように引き返し編成を行なって第二傾斜部を編成するステップ。
上記の本発明の編成方法で、第一傾斜部の開口縁に並ぶ編目列および弾性編地部に接合される第二傾斜部の編目列の少なくとも一方は、異なるコースの編目を含む場合でも、同じコースの編目を含む場合でも、いずれでもよい。
本発明の筒状編地は、左右方向に延び、前後方向に対向する少なくとも一対の針床を有する横編機を用いて編成された筒状編地である。この編地は、筒状編地の軸方向に対して傾斜した方向に形成される環状の弾性編地部と、弾性編地部の軸方向一端側に並ぶ編目列に接合される第一ベース編地部と、弾性編地部の軸方向他端側に並ぶ編目列に接合される第二ベース編地部とを備える。そして、この弾性編地部は、弾性編地部の周回方向に沿ったコースを有することを特徴とする。
本発明の筒状編地の編成方法によれば、編幅が変化する引き返し編成を行って第一傾斜部を編成することで、第一傾斜部の開口縁の編目列を筒状編地の軸方向に対して傾斜して並列させることができる。そのため、この開口縁に連続して形成される弾性編地部も筒状編地の軸方向に対して傾斜したコースを有するように編成することができる。さらに、この弾性編地部に編幅が変化する引き返し編成を行って第二傾斜部を形成することで、第二傾斜部における弾性編地部との接合箇所の編目列を筒状編地の軸方向に対して傾斜して並列させることができる。その結果、筒状編地の軸方向に対して傾斜する環状の弾性編地部でありながら、それ自身の周回方向に沿ったコースを有する弾性編地部を形成することができ、この弾性編地部を、それ自身の周回方向に沿って伸縮させることができる。
また、本発明の編成方法において、各傾斜部のうち、弾性編地部に接合される編目列が、異なるコースの編目を含むように引き返し編成を行うので、弾性編地部のコースを各傾斜部のコースと非平行にすることができる。これによって、ベース編地部に対して弾性編地部を特異的に周回方向に伸縮させることが可能な筒状編地を編成できる。一方、各傾斜部のうち、弾性編地部に接合される編目列が、同じコースの編目を含むように引き返し編成を行えば、弾性編地部のコースを各傾斜部のコースと平行にすることができる。その場合でも、周回方向に沿って伸縮させることが可能な環状の弾性編地部を筒状編地の途中に編成することができる。特に、各ベース編地部のうち、弾性編地部に接合される編目列が、異なるコースの編目が並んだ部分と、同じコースの編目が並んだ部分とからなるように、第一傾斜部と第二傾斜部の各引き返し編成を行うことで、弾性編地部の途中に鋭角の角が形成されることを抑制し、弾性編地部に沿ったラインを滑らかにできる。その結果、両ベース編地部と弾性編地部とのつながり箇所のシルエットをスムーズにできる。
一方、本発明の筒状編地によれば、弾性編地部のコースと両ベース編地部のコースとを異なる方向とすることができ、より伸縮性の高い環状の弾性編地部を有する筒状編地とすることができる。特に、両ベース編地部の少なくとも一方が、弾性編地部の周回方向とは非平行のコースを有することで、弾性編地部を筒状編地の他の領域に対して特異的に周回方向に伸縮させることが可能になる。
(A)は、実施形態1に係る靴下の平面図であって、着用したときに、踝に相当する側から見た図である。(B)は、本発明靴下を着用した状態を示す図である。 実施形態1に係る弾性編地部を形成するための編成工程図第一図を示す。 実施形態1に係る弾性編地部を形成するための編成工程図第二図を示す。 (A)は、実施形態2に係る靴下の平面図であって、着用したときに、踝に相当する側から見た図である。(B)は、本発明靴下を着用した状態を示す図である。 実施形態2に係る弾性編地部を形成するための編成工程図を示す。 実施形態3に係る弾性編地部を形成するための編成工程図を示す。 実施形態4に係る靴下の平面図で、(A)は第一・第二傾斜部のコースと弾性編地部のコースが平行である場合、(B)は弾性編地部のコースが第一傾斜部のコースと平行で、第二編地部のコースとは非平行である場合、(C)は弾性編地部のコースが第一傾斜のコースと非平行で、第二編地部のコースとは平行である場合を示す。 実施形態4に係る弾性編地部を形成するための編成工程図を示す。
符号の説明
1 靴下 1A 甲側編地部 1B 裏側編地部
11 下側編地部 12 上側編地部 13 中間編地部
11t 第一筒状部 11s 第一傾斜部
12t 第二筒状部 12s 第二傾斜部
20,21,22,23 弾性編地部
30 はき口部
F 足 N 膝 C 脹脛 S 脛 T つま先
本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて以下に説明する。各実施形態では、左右方向に延び、かつ前後方向に互いに対向する前後一対の針床を有する2枚ベッドの横編機を用いて環状の弾性編地部を有する靴下を製作する。さらに、後針床が左右にラッキング可能で、しかも、前後の針床間で編目の目移しが可能な2枚ベッドの横編機を使用すれば、リンクス編やガーター編などの種々の組織柄を有する靴下を編成できる。
<実施形態1>
図1(A)は、靴下の平面図であって、着用したときに、踝の位置に相当する側から見た図である。また、図1(B)は、靴下を着用した状態を踝側から見た概略図である。
両図に示すように、靴下1は、着用者の足Fのつま先Tから脹脛Cと脛Sの途中までを覆う下側編地部11と、脹脛Cと脛Sの上部を覆う上側編地部12と、これら編地部11,12の間に設けられた環状の弾性編地部20とを有する。この下側編地部11が第一ベース編地部に、上側編地部12が第二ベース編地部に相当する。
図1(A)に示すように、弾性編地部20は、下側編地部11および上側編地部12と同軸上に延びるのではなく、各編地部11,12の軸方向に対して傾斜した軸方向を持つように設けられている。また、弾性編地部20のコース方向は、各編地部11、12のコース方向と異なる方向となっている。さらに、上側編地部12と下側編地部11のコース方向は、平行になっている。そのため、下側編地部11と弾性編地部20との繋ぎ目、および、上側編地部12と弾性編地部20との繋ぎ目における靴下1の輪郭形状に段が形成されている。
この靴下1を着用すると、靴下1の弾性編地部20は、図1(B)に示すように、脹脛Cから脛Sに向かって、斜め上方(膝Nの方向)に延びるようになっている。また、上側編地部12のうち、弾性編地部20と反対側には、足Fを挿入するためのはき口部30が形成されている。
本実施形態では、説明の便宜上、下側編地部11と上側編地部12とを平編の無地とし、はき口部30をリブ編とした。
第1実施形態で編成される靴下1は、図1(A)において紙面左側の筒状編地の半分、即ち、下側編地部11、弾性編地部20および上側編地部12の半分を甲側編地部1Aとし、紙面右側の筒状編地の半分(編地部11,20,12の半分)を裏側編地部1Bとしている。そして、甲側編地部1Aを横編機の後針床(BB)で、裏側編地部1Bを横編機の前針床(FB)で編成している。
本実施形態では、つま先から編み始めて下側編地部11を編成する。ここで、つま先の部分には、着用者の足指を収納する指袋部を形成しても良い。また、裏側編地部1Bのうち、着用者の踵の部分に相当する箇所では、踵に相当する部分に向かって編幅を順次減らし、その後、編幅を順次増やす編成を行なって、着用者の踵の形状に沿うようにすると良い。
次に、下側編地部11に連続するように弾性編地部20を編成する。弾性編地部20は、他の編地部11、12に比べてより大きな収縮性を有する箇所である。本実施形態では、ベース糸で編成される編地に、各編地部11、12を編成するベース糸よりも伸縮性に優れた弾性糸を編み込むことで、弾性編地部20としている。具体的には、ベース糸で編成される編目列に対して、数目おきに弾性糸をタックさせた状態とした、いわゆるタック編みにより弾性編地部20を形成している。また、弾性編地部20は、ベース糸を弾性糸に切り替えて編成しても良い。
次に、弾性編地部20とその前後における各編地部11、12の編成方法を図2、3に基づいて説明する。これらの図の左端に示される数字は、編成工程のステップを示す。また、同図の左の図面は、FBとBBの針における編目の係止状態を示し、黒塗りされた目は、その編成工程においてニットされている編目を、白抜きされた目は、その編成工程においては針床に係止されたままニットされない編目を示す。さらに、編目の係止状態を示す上記の図面の右側には、そのステップに対応して編成された筒状の靴下の概略図を示す。この概略図では、甲側編地部1Aと裏側編地部1Bとが重なって示されている。その他、両図に示す矢印は、編成方向を示し、これら矢印のうち、片端にのみ矢印が付いているものは筒状の編成を、両端に矢印が付いているものは引き返し編成を示す。
まず、つま先から弾性編地部20に向かって編地を筒状に編成する。ステップ1は、弾性編地部20が編成される前の編成状態を示す。具体的には、甲側編地部1Aと裏側編地部1Bとが連続した一つの筒となるように編地を編成している。
ステップ2では、コースの編成が進むに従って、FBの中央側から順にニットしない針を増やしていくC字状の引き返し編成を行なって、裏側編地部1Bの両端側と甲側編地部1Aの編目を形成していく。このステップ2では、最終的には、FBの針ではニットしない状態にする。つまり、裏側編地部1Bは、中間側でコース方向に直交するウェール方向の編目数が少なく、両端側でウェール方向の編目が多い状態になり、ステップ2の編成が終了した時点で、後述する弾性編地部20との接合箇所が2等辺三角形状に凹んだ状態になる。ここで、FBの針には、異なるコースの編目が係止された状態になる。
ステップ3では、BB側のみで引き返し編成を行なって、甲側編地部1Aを編成する。このとき、コースの進行に伴って、BBの針でニットしない針を増やしていき、甲側編地部1Aの両端部から順に編目を減らしていく。つまり、甲側編地部1Aは、中間側でウェール方向の編目が多く、両端側に行くほどウェール方向の編目が少ない状態になり、ステップ3の編成が終了した時点で、後述する弾性編地部20との接合箇所が2等辺三角形状に突出した状態になる。このステップ3と上述したステップ2とを行うことで、異なるコースの複数の編目が、下側編地部11における弾性編地部20との接合箇所の編目列になり、図1に示す靴下1のように、下側編地部11と弾性編地部20との境界が、裏側編地部1Bから甲側編地部1Aに向かって、斜め上方に延びるように傾斜して形成される。これらステップ2、3が第一傾斜部の編成ステップに相当する。
次のステップ4では、下側編地部11を編成するベース糸と弾性糸とを用いて、下側編地部11に連続するように環状に編成を行い、弾性編地部20を形成する。弾性編地部20は、ウェール方向の編目の数が等しく、同編地部20の幅が周回方向に亘って均一に形成される。
ここで、弾性編地部20との接合箇所における下側編地部11の編目列は異なるコースの編目群から構成され、それらの編目の並列方向に沿って弾性編地部20が編成される。そのため、弾性編地部20のコース方向は、下側編地部11のコース方向に対して傾斜する。
上述したステップ4により弾性編地部20の編成が終了したら、弾性糸の挿入を中止して、下側編地部11と弾性編地部20とを編成する際に使用したベース糸をそのまま使用して上側編地部12の編成を開始する。
図3に示すステップ5は、上側編地部12の編成初期の状態を示す。具体的には、このステップ5では、甲側編地部1Aに対して編幅が小さい裏側編地部1Bの凹みを埋めるように、FBに係止される編地の中央から編目を増やしていく引き返し編成を行なう。
そして、ステップ6では、甲側編地部1Aと裏側編地部1Bの編幅が同じとなるように、C字状の引き返し編成を行なう。このステップ6と上述したステップ5により弾性編地部20に連続して形成された上側編地部12のコース方向は、弾性編地部20のコース方向に対して傾斜している。このステップ5、6が第二傾斜部の編成ステップに相当する。そして、上側編地部12のコース方向は、下側編地部11のコース方向と平行になる。
最後に、靴下1のはき口部30まで筒状に上側編地部12を編成し(ステップ7参照)、靴下1を完成させる。完成した靴下1において、弾性編地部20は、下側と上側の各編地部11,12とは異なる周回方向に効果的に収縮するようになっている。
本実施形態の靴下1によれば、脹脛Cを周方向からほぼ均等な力で締め付けることができるように、脹脛Cの凹凸に沿った方向に弾性編地部20を設けることができ、脹脛Cの下側の細い部分から脹脛Cを持ち上げるように締め付けることができる。そのため、この靴下1は、着け心地が良く、足Fにフィットしてずれ難い。さらに、この靴下1によれば、脹脛C全体を締め付けることがないので、足Fの血行が阻害され難く、長時間着用しても足Fが浮腫み難く、疲労し難い。
<実施形態1の変形例>
実施形態1の変形例として、甲側編地部と裏側編地部とで弾性編地部の斜めに延びる方向を変化させる筒状編地の編成方法を説明する。
まず、靴下を踝側からみたとき、弾性編地部が山形に形成される靴下、つまり、靴下を正面からみたときに、弾性編地部が谷形に形成される靴下の編成方法を説明する。山形の弾性編地部を編成するには、図2のステップ2において、裏側編地部1Bと同様に、甲側編地部1Aも編地の中央から編目を減らし、下側編地部11を形成する。そして、実施形態1と同様に、中央部で編目を減らした甲側編地部1Aと裏側編地部1Bからなる下側編地部11に連続して、各ウェール方向の編目の数が等しい弾性編地部20を形成し、さらに弾性編地部20に連続して上側編地部12を形成する。
次に、靴下を踝側からみたとき、弾性編地部が谷型に形成される靴下、つまり、靴下を正面からみたときに、弾性編地部が山形に形成される靴下の編成方法を説明する。谷形の弾性編地部を編成するには、図2のステップ2を行なわずに、ステップ3で編成した甲側編地部1Aと同様に、裏側編地部1Bで編地の両端部から編目を減らし、下側編地部11を形成する。そして、実施形態1と同様に、形成した下側編地部11に連続して弾性編地部20を形成し、さらに弾性編地部20に連続して上側編地部12を形成する。
<実施形態2>
実施形態2では、図1に示す靴下1において下側編地部11と弾性編地部20との間、および、弾性編地部20と上側編地部12との間に形成されていた段差を緩和することができる筒状編地の編成方法を説明する。
図4は、本実施例の靴下1を示す図である。図4(A)は、靴下1の平面図、図4(B)は、靴下2を着用した状態を示す概略図である。なお、図1と同一の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の靴下1は、弾性編地部21の位置における甲側編地部1Aの中間部と裏側編地部1Bの中間部に、平坦部210を有する。この平坦部210は、下側編地部11のコース方向にほぼ平行な部分である。この平坦部210により、靴下1を正面または背面から見た際、弾性編地部21に鋭角の角が形成されることを抑制し、弾性編地部21に沿ったラインを滑らかにすることができる。また、弾性編地部21のうち、平坦部210の位置にある編地部が、平坦部210以外の位置にある編地部を引っ張って、靴下1の弾性編地部21を挟む下部編地部11と上側編地部12の輪郭に生じる段差を緩和することができる。
図5に、この実施形態の弾性編地部21の編成方法を示す。本実施形態の実施形態1との主たる相違点は、下側編地部の弾性編地部との接合箇所における編目列および上側編地部の弾性編地部との接合箇所における編目列の形成手順にある。
つまり、ステップ2では、裏側編地部1Bの中間の一部分(FBに係止される編目の中間部)をニットしないように、C字状の引き返し編成を行なって、裏側編地部1Bの両端側と甲側編地部1Aの編目を形成していく。そして、コースの編成が進むに従って、FBの中央側から順にニットしない針を増やしていき、最終的には、FBの針ではニットしない状態にする。このステップ2により、裏側編地部1Bの中央部に逆台形状の凹みが形成される。
次のステップ3では、BBにおいて引き返し編成により甲側編地部1Aの中央部の編目を増やし、下側編地部11を完成させる。このステップ3でも、コースの進行に伴って、BBの針でニットしない針を甲側編地部1Aの両端側から増やしていき、甲側編地部1Aが台形状に突出した状態とする。これらステップ2、3により、各編地部1A、1Bの中間部において同一コースの編目が並列された箇所が、靴下1の平坦部210となる。続いて、ステップ4で、下側編地部11に連続して各ウェール方向の編目の数が等しい弾性編地部21を筒状に編成する。
その後、ステップ5、6において、順次、裏側編地部1Bの引き返し編成と、甲側編地部1Aの引き返し編成を行って、ステップ1から数えた各編地部1B、1Aのコース数が同一となるようにする。最後に、はき口部30(図4参照)まで筒状に上側編地部12を編成し(ステップ7)、靴下1を完成する。
なお、平坦部210の形成は、FBおよびBBに係止される編地の側端部で行なっても良い。この場合、上述したステップ2と3とで、甲側編地部1Aと裏側編地部1Bの編幅方向両端部で編目を減らさないようにすれば良い。
本実施形態の靴下1は、弾性編地部21の近傍で上側編地部11と下側編地部12との間に平坦部210が設けられていることにより、弾性編地部21に鋭角の角が形成されることを抑制し、弾性編地部21に沿ったラインを円滑にできる。それに伴い、実施形態1で弾性編地部近傍の靴下の輪郭に生じていた段差を緩和することができる。そのため、靴下1のシルエットは、実施形態1の靴下よりも通常の靴下のシルエットに近くすることができる。
一方、この靴下1を着用した場合、図4(B)に示すように、実施形態1の靴下と着用状態は変わらず、その着け心地も実施形態1の靴下とほとんど変わらない。
<実施形態3>
実施形態3では、2つの弾性編地部を近接して設けた筒状編地の編成方法について、図6に基づいて説明する。
まず、ステップ1では、図2を参照して説明した実施形態1と同様に、下側編地部11の一部を筒状に編成する。
次に、ステップ2で、FBとBBにおいてC字状の引き返し編成を行なって、甲側編地部および裏側編地部1Bが直角三角形状に突出した状態とする。このステップ2では、各編地部1A、1Bの両端側で、同一コースに編目が並ぶ平坦部を形成しており、出来上がった靴下のシルエットに段差が生じにくいようにしている。
次のステップ3では、ステップ2で形成した下側編地部11に連続して弾性編地部22を環状に形成する。
さらに、ステップ4,5で、弾性編地部22に続く中間編地部13をC字状に編成する。中間編地部13は、菱形状であり、図のように裏側編地部1Bから見ると二等辺三角形状をしている。但し、弾性編地部22の一端(紙面右側)では、中間編地部13を形成しないようにして、次のステップ6で編成する弾性編地部23の一部と、ステップ3で編成した弾性編地部22の一部が接合された状態にする。
続くステップ6では、中間編地部13と、弾性編地部22の一端に連続して弾性編地部23を筒状に編成する。
最後に、ステップ7で、弾性編地部23に連続する上側編地部12をC字状に引き返し編成し、弾性編地部23の紙面左側のコースと上側編地部12のコースが揃った状態となったら、筒状の編成に切り替えて、はき口部まで編成を行ない、靴下を完成する。
本実施形態の編成方法によれば、例えば、靴下を甲側から見たときに、靴下の軸に対して斜めに延びる弾性編地部とすることができる。このような弾性編地部は、例えば、靴下を着用したときに土踏まずに相当する位置に設けることにより、土踏まずを効率よく締め付けることができる。
<実施形態4>
上記実施形態では、弾性編地部のコースが両傾斜部のコースと異なる方向となった靴下を説明したが、本実施形態では、弾性編地部のコースが第一・第二傾斜部の少なくとも一方のコースと平行となった靴下について説明する。
図7(A)は、第一傾斜部、弾性編地部および第二傾斜部の各コースが全て平行になった靴下1を示している。このような靴下1の編成方法を図8に基づいて説明する。以下の編成法方位おいて、各傾斜部を形成する引き返し編成自体の手法は、既述した他の実施の形態と同様に行えばよいため、ここでは詳細な説明は省略する。
この方法では、まずステップ1で、第一ベース編地部の第一筒状部11tを編成する。次に、ステップ2で、筒状部11tの編幅の一端から、順次編幅が増加するように引き返し編成を行い、第一傾斜部11sを編成する。この編成により、筒状部11tの開口縁に図8における第一傾斜部11sの左側の斜辺が接合される。そして、第一傾斜部11sは、その開口部に同じコースの編目が並列されることになる。なお、本例では、筒状編地の仕上がり具合をよくするため、第一傾斜部11sの図の右側の折返し端を、第一筒状部11tの編幅方向右側の端部よりもさらに右側に突出した箇所に調整している。この編成手法の考え方は、後述する第二傾斜部12sにおいても同様に適用される。次に、ステップ3で弾性編地部20を環状に編成する。続いて、弾性編地部20の開口縁の編地に対して、順次編幅が減少するように引き返し編成を行って、第二傾斜部12sを形成する。この編成により、弾性編地部20の開口縁に図8における第二傾斜部12sの右側の斜辺が接合される。このとき、第二傾斜部12sにおける弾性編地部20との接合箇所には、同一コースの編目が並列されることになる。そして、ステップ5で第二傾斜部12sに続けて第二ベース編地部の第二筒状部12tを編成する。
この編成方法によれば、両筒状部11t、12tでは、各々の軸方向に対して直交する向きのコースを備え、各傾斜部11s、12s及び弾性編地部20では、前記軸方向に対して傾斜する方向のコースを備えた筒状編地を形成できる。そのため、弾性編地部20を、その周回方向に沿って収縮させることができる。
本実施形態では、第一傾斜部11sの編成は、編成の進行に伴って、編幅が増減の一方の変化をするように引き返し編成を行ない、第二傾斜部12sの編成は、編成の進行に伴って編幅が第一傾斜部11sを編成した場合とは逆の増減変化をするように引き返し編成を行なったが、第一傾斜部11sの編成は、編成の進行に伴って、編幅が増減の一方の変化をするように引き返し編成を行ない、第二傾斜部12sの編成は、編成の進行に伴って編幅が第一傾斜部11sを編成した場合とは同一の増減変化をするように引き返し編成を行なってもよい。
例えば、図7(B)に示す靴下1は、第一傾斜部11sを編成する際、順次編幅が増加するように引き返し編成を行い、第二傾斜部12sを編成する際も、順次編幅が増加するように引き返し編成を行っている。
さらに、図7(C)に示す靴下1では、第一傾斜部11sを編成する際、順次編幅が減少するように引き返し編成を行い、第二傾斜部12sを編成する際も、順次編幅が減少するように引き返し編成を行っている。
図7(B)、(C)のいずれの靴下1も弾性編地部20を、その周回方向に沿って収縮させることができる。
なお、以上の各実施形態では、靴下を例に挙げて説明したが、本発明の筒状編地は、手袋、セーター、ズボンなどの着衣であっても良い。その他、本発明方法に用いる横編機として、4枚ベッドの横編機も挙げられる。
本発明の筒状編地によれば、弾性編地部とそれ以外の編地部の周回方向が異なり、且つ、この弾性編地部がその周回方向に収縮する筒状編地とできる。そのため、例えば、フィット感の高い靴下やサポータを製造できる。また、本発明筒状編地の編成方法は、本発明筒状編地を編成するのに好適に利用できる。

Claims (5)

  1. 左右方向に延び、前後方向に対向する少なくとも一対の針床を有する横編機を用いて、環状の弾性編地部と、弾性編地部の軸方向一端側の編目列に接合される第一ベース編地部と、弾性編地部の軸方向他端側の編目列に接合される第二ベース編地部とを有する筒状編地を編成する方法であって、
    第一ベース編地部を編成する過程で、編成の進行に伴って、編幅が変化するように引き返し編成を行なって第一傾斜部を編成するステップと、
    第一傾斜部の開口縁に並ぶ編目列に連続して、環状に弾性編地部を編成するステップと、
    弾性編地部の開口縁に並ぶ編目列に連続して第二ベース編地部を編成する過程を行い、その過程で、編成の進行に伴って編幅が変化するように引き返し編成を行なって第二傾斜部を編成するステップとを含むことを特徴とする筒状編地の編成方法。
  2. 第一傾斜部の開口縁に並ぶ編目列および弾性編地部に接合される第二傾斜部の編目列の少なくとも一方は、異なるコースの編目を含むことを特徴とする請求の範囲第1項に記載の筒状編地の編成方法。
  3. 第一傾斜部の開口縁に並ぶ編目列および弾性編地部に接合される第二傾斜部の編目列の少なくとも一方は、同じコースの編目を含むことを特徴とする請求の範囲第1項に記載の筒状編地の編成方法。
  4. 左右方向に延び、前後方向に対向する少なくとも一対の針床を有する横編機を用いて編成された筒状編地であって、
    この筒状編地の軸方向に対して傾斜した方向に形成される環状の弾性編地部と、
    弾性編地部の軸方向一端側に並ぶ編目列に接合される第一ベース編地部と、
    弾性編地部の軸方向他端側に並ぶ編目列に接合される第二ベース編地部とを備え、
    この弾性編地部は、弾性編地部の周回方向に沿ったコースを有することを特徴とする筒状編地。
  5. 前記両ベース編地部の少なくとも一方は、弾性編地部の周回方向とは非平行のコースを有することを特徴とする請求の範囲第4項に記載の筒状編地。
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