JP5304247B2 - セラミックハニカム構造体成形用金型の製造方法及びセラミックハニカム構造体の製造方法 - Google Patents

セラミックハニカム構造体成形用金型の製造方法及びセラミックハニカム構造体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、セラミックハニカム構造体を押出成形する際に用いる金型の製造方法、及びセラミックハニカム構造体の製造方法に関する。
排気ガス浄化用フィルタ等に用いられるセラミックハニカム構造体(以下、「ハニカム構造体」と略す)は、ハニカム構造体成形用金型(以下、「成形用金型」と略す)を用いて、セラミック坏土を押出し成形してハニカム成形体とし、その後乾燥及び焼成することで製造する。成形用金型10は、図2(a)及び図2(b)に示すように、成形溝加工面21が突出した形状を有する金型素材11からなり、金型素材11の供給孔加工面31に供給孔30が形成され、成形溝加工面21に格子状の成形溝20が形成されている。成形用金型10の供給孔30は、図3に示すように、成形溝20と連通するように設けられている。供給孔30より成形用金型10内に導入されたセラミック坏土は、成形溝20でハニカム状に成形されハニカム成形体が形成される。
成形用金型10は、図4(a)に示す成形溝加工面21が突出した金型素材11の供給孔加工面31(成形溝加工面21の反対側の面)に、ドリル加工等により供給孔30を形成し、次いで成形溝加工面21に成形溝20を形成して製造する。格子状の成形溝20は、図4(b)に示すように、回転工具40を用いて研削又は切削加工により、平行した複数の第一の成形溝20aを加工した(第一の加工)後に、金型素材11を90°回転させて、図4(c)に示すように、先に加工した第一の成形溝20aと交差する平行した複数の第二の成形溝20bを加工し(第二の加工)、形成する。
幅が狭く深い成形溝20を薄い回転工具40で加工すると、大きな加工抵抗が生じて回転工具40が反ってしまい、成形溝20が蛇行したり、回転工具40が破損したりする問題が生じることがある。
従って、幅に対して切り込みが深い成形溝20は、通常2パス以上の工程で形成する。すなわち、図6(a)に示すように、1パス目で深さL1の成形溝22を形成し、図6(b)に示すように、2パス目で成形溝22を更に深く加工し、深さLの成形溝20を形成する。
また従来の成形溝20の加工は、工具40を図4(b)に示すような方向に回転させて、いわゆるダウンカットで行う。工具40の回転方向を図4(b)に示す方向と逆(アップカット)にして加工すると、金型素材11を持ち上げる方向に力が加わるため、成形用金型10に微小な振動、いわゆるビビリが生じることがある。この現象は切り込み深さが大きい場合に特に発生しやすい。ビビリが発生すると成形溝20の幅や深さの精度が悪化したり、回転工具40が破損したりする。
加工をダウンカットで行うと、図6(a)に示すように既に加工した成形溝20を交差して成形溝22を形成(1パス目)する際、成形溝20と成形溝22との交差部23にバリ50を生じる。2パス目の加工において回転工具40が前記交差部23に進行する際、図6(b)に示すように、前記バリ50が回転工具40と金型素材11との間に巻き込まれ、回転工具40に破損又は反りが生じることがある。回転工具40が破損するとその破片により成形溝にキズが生じ、反りが生じると成形溝20の幅が部分的に大きくなってしまう。
特開平11-70510号は、材料供給用の複数の供給穴と,前記供給穴に連通して格子状に設けられ材料をハニカム形状に成形するためのスリット溝とを有し,かつ各スリット溝はその溝幅の10倍以上の溝深さを有するハニカム構造体成形用金型を製造する方法において,上記スリット溝の加工は,150μm以下の厚みを有する回転工具を用いて金型素材を研削又は切削することにより行い,かつ同一方向に沿って平行に設ける複数のスリット溝の加工順序は,加工順序による溝幅の変化がハニカム構造体の成形性に影響を与えないようなランダムな順序で行うことを特徴とするハニカム構造体成形用金型の製造方法を開示している。この方法により、回転工具の破損が防止され、スリット溝の幅の変化が抑えられると記載されている。
しかしながら、特開平11-70510号に記載の方法は、前記の成形溝の蛇行や、回転工具の破損の問題に対してある程度の効果はあるものの、特に回転工具の摩耗が進行し切れ味が劣化した場合には十分な効果が得られず、これらの問題を皆無にすることはできなかった。このため加工中に回転工具が破損し、その破片により成形溝にキズを生じる場合や、回転工具が破損に至らなくとも反ることにより成形溝の幅が部分的に広がって、手直しが不可能となる場合があった。成形溝に一カ所でもキズが生じたり、成形溝の幅が部分的に広くなったりすると、押出成形により得られるハニカム構造体に隔壁の歪や切れ等の欠陥を生じてしまうため、もはや金型として使用できなくなる。
以上のような問題により、成形用金型の製造費用が高くなり、ハニカム構造体の製造費用の低減に対して大きな障害となっている。このため、更なる対策を講じる必要があった。
従って、本発明の目的は、成形溝を加工する際の回転工具の破損や反りを防止し、成形溝のキズや成形溝の幅の部分的な拡大が生じない成形用金型の製造方法と、歪や切れ欠陥が発生しないハニカム構造体の製造方法を得ることにある。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者達は、既に加工した成形溝を交差して回転工具が進行する第二の加工の2パス目をアップカットにより加工することにより、成形溝にできるキズや成形溝の幅の拡大が著しく防止されることを見出し、本発明に想到した。
すなわち、セラミックハニカム構造体成形用金型を製造する本発明の方法は、格子状の成形溝と、前記成形溝に連通する坏土供給孔とを有するセラミックハニカム構造体成形用金型の製造方法であって、前記格子状の成形溝の加工は、平行した複数の第一の成形溝を形成する第一の加工と、前記第一の成形溝と交差する第二の成形溝を形成する第二の加工からなり、前記第一及び第二の加工は回転工具を用いて研削又は切削することにより少なくとも2パスで行うとともに、前記第一の加工はダウンカットにより行い、前記第二の加工の1パス目はダウンカットにより、2パス目以降はアップカットにより行うことを特徴とする。
セラミックハニカム構造体を製造する本発明の方法は、格子状の成形溝と、前記成形溝に連通する坏土供給孔とを有するセラミックハニカム構造体成形用金型を用いてセラミックハニカム構造体を製造する方法であって、前記格子状の成形溝は、平行した複数の第一の成形溝を形成する第一の加工と、前記第一の成形溝と交差する第二の成形溝を形成する第二の加工によって形成され、前記第一及び第二の加工は回転工具を用いて研削又は切削することにより少なくとも2パスで行われるとともに、前記第一の加工はダウンカットにより行い、前記第二の加工の1パス目はダウンカットにより、2パス目以降はアップカットにより行われることを特徴とする。
本発明により、成形溝を加工する際の回転工具の破損やそりを防止し、成形溝のキズや成形溝の幅の部分的な拡大が起こらないので、歪や切れ欠陥のないハニカム構造体を得ることができる。
成形用金型を製造する本発明の方法を説明する模式図である。 成形用金型の一例を示す斜視図である。 成形用金型の他の一例を示す斜視図である。 成形用金型の一例を示す断面図である。 従来の成形用金型用の素材を示す模式図である。 従来の成形用金型を製造する第一の加工を示す模式図である。 従来の成形用金型を製造する第二の加工を示す模式図である。 成形用金型の成形溝の加工状態を示す模式図である。 従来の成形用金型の成形溝加工時の不具合発生状態を説明する模式図である。 従来の成形用金型の成形溝加工時の不具合発生状態を説明する他の模式図である。
本発明においては、図1に示すように、既に加工した成形溝(第一の成形溝)を交差して進行する第二の加工の2パス目に、回転工具40を図6(b)に示す回転方向とは逆の方向に回転させて、いわゆるアップカット加工を行う。アップカット加工により、交差部23に生じたバリ50を部分的に加工済である1パス目の成形溝22に排出することができ、バリ50を回転工具40と金型素材11との間に巻き込まない。従って、成形溝20を加工する際の回転工具40の破損や反りが発生しないので、成形溝のキズや成形溝の幅の部分的な拡大を防止することができる。
また、上記のように第二の加工の2パス目をアップカットで加工した金型を用いてハニカム構造体を製造することで、隔壁の歪や切れの発生を防止することができる。なお、成形溝をアップカットで加工する際にビビリが生じないようにするには、1パスでの切り込み深さを小さくすることが好ましく、成形溝の幅の10倍以下の切り込み深さであるのが好ましく、8.5倍以下であるのがより好ましい。
上記のように切り込み深さを小さくするためには、成形溝20を少なくとも2パスで加工する。すなわち、図5に示すように、成形溝20の形成完了時の目標深さLに対して、このLより小さい切り込み深さL1にて1回目の加工を行い(1パス)、再度同じ成形溝の位置に回転工具40を通過させて成形溝20の深さが深くなるように加工する。2パスで目標深さLまで加工を行うことが好ましいが、必要に応じて3パス以上で加工を行うこともできる。特に直径が200 mm以上の大口径のハニカム構造体を製造するための成形用金型をアップカットで加工する場合は、ビビリの発生を防止するために2パス以上で行うのが効果的である。
1パス目の成形溝の加工はダウンカットで行うものとする。1パス目の成形溝の加工をダウンカットで行うことにより、ビビリの発生及びバリの巻き込みを考慮する必要がなくなる。例えば切り込み深さを4 mmでアップカットしたときに成形用金型10にビビリが発生したとしても、ダウンカットした場合にはビビリの発生は起こらない。つまり通常ダウンカット時の切り込み深さはアップカット時の切り込み深さよりも深くすることができる。ただし、ダウンカットであっても切り込み深さが深すぎた場合には加工抵抗が大きくなり、回転工具の反りや破損のおそれがあるので、この点は考慮する必要がある。従って、1パス目の成形溝の加工をダウンカットで行うことで、アップカットで行った場合よりも1パス目の切り込み深さを深くすることができ、加工工数が増大することを防止できる。
成形溝と交差しない加工(第一の加工)は、ダウンカットで行うものとする。すなわち図4(b)に示すように、既に加工した成形溝を交差することなく互いに平行な成形溝のみを加工する第一の加工の場合は、交差部23は存在していないので、この部分にバリ50は生成しない。第一の加工の2パス目の加工も、バリ50を回転工具40と金型素材11との間に巻き込むおそれはないため、ビビリの発生しないダウンカットで行うものとする
上記のように、既に加工した成形溝を交差して回転工具が進行する第二の加工の2パス目の加工はアップカットで行う必要がある。なお、本発明において、回転工具が進行するとは、金型素材11に対して相対的に回転工具40が進行するという意味であり、位置が固定された金型素材11に対して回転工具40が進行しても良いし、位置が固定された回転工具40に対して金型素材11が進行しても良い。
以下、本発明を参考例と比較例により説明する。
参考例1
(1)供給孔の形成
図4(a)に示す、240 mm×240 mmの突出した成形溝加工面21、及び260 mm×260 mmの供給孔加工面31を有する合金工具鋼(JIS G4404)からなる金型素材11を準備した。金型素材11の供給孔加工面31から、図3に示すように、直径1.1 mmで先端角140°の超硬ドリルを使用してドリル加工により供給孔30を形成した。
(2) 第一の成形溝の加工
成形溝加工面21に成形溝20を回転工具40により加工した。回転工具40として、厚さ0.25 mm及び直径100 mmの円形薄刃砥石を用いた。まず互いに平行な深さが4 mmの成形溝20をダウンカットで加工した(1パス目)。次に先に形成した成形溝20の深さが更に2.5 mm深くなるように、すなわち形成後の成形溝20の深さが6.5 mmとなるようにアップカットで2パス目の加工を行った。回転工具40は加工時間に応じて摩耗によりその直径が減少したが、直径が規定の値より小さくなった場合には、新たな回転工具へ交換して加工を行った。上記加工により、深さ6.5 mm、幅0.26 mm及びピッチ1.5 mmの互いに平行な159本の成形溝20を形成した。
(3) 第二の成形溝の加工
第一の成形溝と成形溝加工面21視で垂直に交差する第二の成形溝20を、第一の成形溝と同様に2パスで加工した。すなわち、厚さ0.25 mm及び直径100 mmの円形薄刃砥石を用いて、深さが4 mmの成形溝20をダウンカットで加工し(1パス目)、アップカットで2パス目の加工を行い、深さ6.5 mm、幅0.26 mm及びピッチ1.5 mmの互いに平行な159本の第二の成形溝20を形成した。

以上のようにして、金型素材11の供給孔加工面31に供給孔30が形成され、成形溝加工面21に格子状に交差した成形溝20が形成された成形用金型10を得た。
本参考例において、既に形成した第一の成形溝を交差する第二の成形溝の1パス目の加工が終了した時点で成形用金型10を観察したところ、第一と第二の成形溝20の交差部23にバリ50が多数確認されたものの、2パス目の加工が終了するまでに回転工具40の破損は発生しなかった。また、成形溝のキズや成形溝の幅の部分的な拡大も確認されなかった。
本参考例にて製造した金型を用いて、公知の方法で押出成形したハニカム状成形体を、乾燥及び焼成したコーディエライトを主成分としたハニカム構造体には、実用上問題となる切れや歪欠陥は確認されなかった。
比較例1
第一と第二の成形溝20の加工において、2パス目のアップカットでの加工を、ダウンカットによる加工に変更した以外は実施例1と同様にして成形用金型10を作製した。既に形成した第一の成形溝を交差する第二の成形溝の1パス目の加工が終了した時点で成形用金型10を観察したところ、成形溝20の交差部23にバリ50が多数確認され、次に第二の成形溝の2パス目の加工の途中で、バリ50が回転工具に巻き込まれ、回転工具40の破損が発生した。
比較例2
深さが6.5 mmの第一と第二の成形溝20を1パスのみでダウンカットで加工した以外は実施例1と同様にして成形用金型10を作製した。格子状に交差した成形溝20の加工が終了した成形用金型10を観察すると、回転工具40の反りのために発生したと思われる成形溝の部分的な拡大が確認された。

Claims (2)

  1. 格子状の成形溝と、前記成形溝に連通する坏土供給孔とを有するセラミックハニカム構造体成形用金型の製造方法であって、前記格子状の成形溝の加工は、平行した複数の第一の成形溝を形成する第一の加工と、前記第一の成形溝と交差する第二の成形溝を形成する第二の加工からなり、前記第一及び第二の加工は回転工具を用いて研削又は切削することにより少なくとも2パスで行うとともに、前記第一の加工はダウンカットにより行い、前記第二の加工の1パス目はダウンカットにより、2パス目以降はアップカットにより行うことを特徴とするセラミックハニカム構造体成形用金型の製造方法。
  2. 格子状の成形溝と、前記成形溝に連通する坏土供給孔とを有するセラミックハニカム構造体成形用金型を用いてセラミックハニカム構造体を製造する方法であって、前記格子状の成形溝は、平行した複数の第一の成形溝を形成する第一の加工と、前記第一の成形溝と交差する第二の成形溝を形成する第二の加工によって形成され、前記第一及び第二の加工は回転工具を用いて研削又は切削することにより少なくとも2パスで行われるとともに、前記第一の加工はダウンカットにより行い、前記第二の加工の1パス目はダウンカットにより、2パス目以降はアップカットにより行われることを特徴とするセラミックハニカム構造体の製造方法。
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