JP6015527B2 - エンドミル - Google Patents
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Description
一方、エンドミルの底刃の外周部は、例え縦送りして穴加工を行う場合やランピング加工を行う場合であっても、周速度が速いため高熱となりやすく、耐摩耗性が重要視される。
すなわち、前記課題を解決するために、本発明は、軸線回りに回転されるエンドミル本体の先端部外周に、前記エンドミル本体の先端から後端側に向けて延びる複数条の切屑排出溝が形成され、これらの切屑排出溝のエンドミル回転方向を向く壁面の外周側辺稜部にそれぞれ外周刃が形成されるとともに、前記エンドミル本体の先端部にこれらの外周刃の先端から前記エンドミル本体の内周側に延びる底刃が形成され、少なくとも前記外周刃及び前記底刃を有する切刃部が硬質被覆層で被覆されたエンドミルにおいて、前記底刃のすくい面のうち、エンドミル回転中心を含みそこから前記エンドミル本体の径方向外方に向かい以下の(1)式で表されるXの範囲にわたる領域が、前記硬質被覆層を有しておらず前記エンドミル本体の基材が露出された領域であることを特徴とする。
0.1D≦X≦0.25D …(1)
(D:エンドミル本体の外径)
このため、すくい面の回転中心付近では、硬質被膜層を有しておらず基材が直接露出しており、当然に硬質皮膜層の表面に生じがちなドロップレット(硬質皮膜層を形成する際に生じる表面の凹凸欠陥となる微粒子)を有していないから、切削時において底刃の中心付近によって生成される切屑は、この基材が露出するすくい面上を速やかに移動する。これにより、良好な切屑排出性が確保される。なお、切削時において底刃の回転中心付近は周速度が遅く高熱になりにくいため、耐摩耗性はあまり要求されない。
逆に、底刃のすくい面の硬質被覆層が、エンドミル回転中心を含みそこからエンドミル本体の径方向外方に向かって0.1Dの範囲よりも狭い範囲だけしか除去されない場合には、すくい面の回転中心付近での良好な切屑排出性が確保されなくなる。
一方、生成された切屑はすくい面を移動する際に次第に冷却されて硬化する。硬化した切屑を受ける部分、すなわち、すくい面の先端からエンドミル本体の基端側へ所定距離以上至った部分は、もともと硬質被膜層によって被膜されているので、硬化した切屑から過度の負荷が加わる場合でも、損傷されにくい。
このため、切屑がすくい面上を移動する際に該切屑から両部分の境界部分に過度の荷重が加わり、その境界部分が集中的に損傷されるのを未然に防ぐことができる。
エンドミル本体1の少なくとも切刃部3の部分は、底刃9のすくい面7aの一部を除いて大部分が例えば硬質被覆層によって覆われている。
ギャッシュ7(7A、7B、7C)のエンドミル回転方向Tを向く壁面、すなわち、底刃のすくい面7aには、図4〜図6に示すように硬質被覆層が除去された領域Za、Zb、Zcが設けられている。これら硬質被覆層が除去された領域Za、Zb、Zcは、エンドミル回転中心Oを含みそこからエンドミル本体1の径方向外方に向かい前記(1)式で表されるXの範囲であり、かつ、すくい面7aの先端を含みそこからエンドミル本体1の基端側に向かって0.02D〜0.1Dの範囲に設定されている。
このように、第1〜第3の底刃9A、9B、9Cに対応する各すくい面7a、7b、7cの硬質被覆層が除去された領域Za、Zb、Zcは、一義的ではなく、第1、第2、第3の底刃9A、9B、9Cの大きさ等の性状によって決定される。
また、本発明1におけるすくい面の外周部においては、切削時に底刃の外周部が周速が速いため高熱となりやすく、耐摩耗性の点が懸念されるが、この部分にはもともと硬質被膜層によって被膜されているので、耐摩耗性の問題は生じない。切屑排出性についても通常の性能は得られる。
本発明2では、すくい面の硬質皮膜層が除去された領域が、すくい面の先端からエンドミル本体基端側に向かって0.02D未満と若干狭いものの、すくい面の硬質皮膜層が除去された該領域を有しており、この領域において良好な切屑排出性が得られるので、生成された直後の高温状態にある切屑が、すくい面に溶着するのを防ぐことができる。
一方、本発明1では、すくい面の硬質皮膜層が除去された領域が、すくい面の先端を含みこの先端からエンドミル本体基端側に向かって0.02D〜0.1Dの範囲と十分広いので、この広い領域において良好な切屑排出性が得られる。このため、生成された直後の高温状態にある切屑が、すくい面に溶着するのを広範囲にわたって防ぐことができ、より好ましい。
これに対し、本発明3では、底刃のすくい面の硬質皮膜層が該すくい面の先端からエンドミル本体基端側に向かって0.1Dを超える範囲にわたって除去されたより広い領域を有しているので、良好な切屑排出性が得られるものの、硬化した切屑から過度の負荷が加わる場合には、本発明2よりも損傷されやすくなる。
すくい面において、硬化被覆層が被覆されたままの部分と硬化被覆層が除去された部分との間では性状が異なる。つまり、これらの部分は、切屑の排出性や耐摩耗性の点で大きく異なり、また、硬質被膜層の有無により厚さも異なる。これらの両部分の間に硬質皮膜層の厚さが他の硬質皮膜層よりも薄い中間層X、つまり双方の部分の性状を併せ持つ中間層Xを設けることにより、該中間層Xがこれら両部分の緩衝的な役割を果たす。
このため、切屑がすくい面上を移動する際に該切屑から両部分の境界部分に過度の荷重が加わり、その境界部分が集中的に損傷されるのを未然に防ぐことができる。
なお、一旦コーティングした硬質皮膜層を除去したり中間層Xを形成する方法としては、例えば、ブラスト処理が挙げられる。
さらに、本実施形態では、外周刃6と底刃9とが回転軌跡で互いに直交または僅かに鋭角に交差するスクエアエンドミルに本発明を適用した場合について説明したが、外周刃と底刃とが1/4円弧等の凸曲線状をコーナ刃を介して連なるラジアスエンドミルにも本発明を適用することが可能である。
2 シャンク部
3 切刃部
4 切屑排出溝
4A〜4C 第1〜第3の切屑排出溝
4a 切屑排出溝4のエンドミル回転方向Tを向く壁面
4b 切屑排出溝4のエンドミル回転方向T後方側を向く壁面
5 外周逃げ面
6 外周刃
6A〜6C 第1〜第3の外周刃
7 ギャッシュ
7A〜7C 第1〜第3のギャッシュ
7a、7aa、7ab、7ac (側壁)すくい面
9 底刃
9A 第1の底刃(長底刃)
9B 第2の底刃(短底刃)
9C 第3の底刃(中底刃)
Za、Zb、Zc 硬質被覆層が除去された領域
O エンドミル本体1の軸線
T エンドミル回転方向
Claims (3)
- 軸線回りに回転されるエンドミル本体の先端部外周に、前記エンドミル本体の先端から後端側に向けて延びる複数条の切屑排出溝が形成され、これらの切屑排出溝のエンドミル回転方向を向く壁面の外周側辺稜部にそれぞれ外周刃が形成されるとともに、前記エンドミル本体の先端部にこれらの外周刃の先端から前記エンドミル本体の内周側に延びる底刃が形成され、少なくとも前記外周刃及び前記底刃を有する切刃部が硬質被覆層で被覆されたエンドミルにおいて、
前記底刃のすくい面のうち、エンドミル回転中心を含みそこから前記エンドミル本体の径方向外方に向かい以下の(1)式で表されるXの範囲にわたる領域は、前記硬質被覆層を有しておらず前記エンドミル本体の基材が露出している領域であることを特徴とするエンドミル。
0.1D≦X≦0.25D …(1)
(D:エンドミル本体の外径) - 前記底刃のすくい面において前記基材が露出している領域は、該すくい面の先端からエンドミル本体基端側に向かって0.02D以上の範囲にわたって形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエンドミル。
- 前記底刃のすくい面において前記基材が露出している領域のエンドミル本体径方向外側及びエンドミル本体基端側に、硬質皮膜層の厚さが他の硬質皮膜層よりも薄い中間層がそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のエンドミル。
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