以下、本発明に係るリングコアの製造装置について、その製造装置を用いた製造方法との関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るリングコアの製造装置により製造されたロータコア(リングコア)10aの斜視図である。ロータコア10aは、例えば、ロータ(回転子)を構成する一部品として、図示しないステータ(固定子)等と共に電動機(回転電機)を構成する。
ロータコア10aは、薄板扇状の電磁鋼板からなる第1分割コアプレート(ロータコアピース)12を周方向に複数枚(本実施形態では3枚)配置してリング状に形成した第1コアプレート14と、薄板扇状の電磁鋼板からなる第2分割コアプレート(ロータコアピース)16を前記第1コアプレート14から所定の位相だけずらして周方向に複数枚(本実施形態では3枚)配置してリング状に形成した第2コアプレート18とから構成される。該ロータコア10aでは、最下層を形成する第1コアプレート14上に、複数枚(本実施形態では49枚)の第2コアプレート18が層状に積層され合計50層とされている。
このようなロータコア10aでは、各分割コアプレートに2個ずつ、つまり、各層に6個ずつ設けられた孔部(結合部、貫通孔)20に、非磁性材料(非磁性体)からなるピン(結合部材)22が積層方向(軸方向)に沿って嵌挿され、各層間が結合されている。さらに、ロータコア10aの各層間は、第1分割コアプレート12や第2分割コアプレート16の上下面に塗布された接着剤23により、一層強固に結合されている。ロータコア10aの積層枚数は、その使用条件等に応じて適宜変更可能である。
ピン22を形成する非磁性材料としては、アルミニウム、真鍮、オーステナイト系ステンレス鋼等が挙げられ、本実施形態の場合、強度や入手の容易さ等を考慮してオーステナイト系ステンレス鋼を用いている。なお、前記アルミニウムの場合には、強度が低いため、ピン22の径を太くする必要があり、真鍮の場合には、強度的には十分であるが、入手が難しくコストが増加する可能性がある。
このようなロータコア10aでは、重なり合う層間、すなわち、奇数層(第1層、第3層等)と偶数層(第2層、第4層等)の間では、各層を構成する分割コアプレート同士が当接する端部(突き当て面)の位置が所定角度(所定距離)ずれた状態で積層されている。奇数層における前記端部は、図1中にA1で示す位置を基準として120°刻みで合計3箇所に配置されている。偶数層における前記端部は、図1中にA2で示す位置、すなわち、前記A1から60°ずれた位置を基準として120°刻みで合計3箇所に配置されている。
具体的には、図2に示すように、例えば、奇数層である第1層(最下層)を構成する第1コアプレート14では、第1分割コアプレート12同士が当接する端部の位置A1は、所定角度θ1(本実施形態では120°)刻みで合計3箇所に配置されている。一方、偶数層である第2層を構成する第2コアプレート18では、第2分割コアプレート16同士が当接する端部の位置A2は、前記位置A1から所定角度θ2(本実施形態では60°)ずれた位置とされ、所定角度θ3(本実施形態では120°)刻みで合計3箇所に配置されている。
また、第1分割コアプレート12には、その内周側の円弧状縁部に略半円状の一対の凸部(突出部、プレート側凸部)24、24が形成され、各凸部24は第1分割コアプレート12が3枚配置された第1コアプレート14において等間隔に配置される。凸部24の略中央部には、第2分割コアプレート16の位置決め部(結合部、カシメ部)26が係止されると共に(図14A及び図14B参照)、ピン22が嵌挿される孔部20が形成されている。
さらに、第1分割コアプレート12には、その外周側の円弧状縁部に沿って略等間隔に、矩形状からなる4個のマグネット孔(磁石挿入孔)28が形成されている。マグネット孔28には、第1コアプレート14及び第2コアプレート18が層状に積層された状態で、図示しないマグネットが嵌挿される。この場合、各凸部24は、隣り合うマグネット孔28同士の中心位相位置に設けられる。
第2分割コアプレート16には、その内周側の円弧状縁部に略半円状の一対の凸部24、24が形成され、各凸部24は第2分割コアプレート16が3枚配置された第2コアプレート18において等間隔に配置される。凸部24の略中央部には、下方に突出した略円錐状の位置決め部26が形成されている(図14A及び図14B参照)。さらに、第1分割コアプレート12と同様、第2分割コアプレート16にも、その外周側の円弧状縁部に沿って略等間隔に、矩形状からなる4個のマグネット孔28が形成されている。
位置決め部26は、第2分割コアプレート16の下面側に形成され下方に突出した位置決め凸部26aと、上面側において前記位置決め凸部26aの内壁面で形成された位置決め凹部26bとから構成されている(図14A及び図14B参照)。各位置決め部26は、位置決め凸部26aが、その下層の第1コアプレート14の孔部20や第2コアプレート18の位置決め凹部26bにより係止されることで、各層を積層する際の位置決め部として機能する。
さらに、位置決め部26は、各層が位置決めされ積層された後には、後述するピン嵌挿装置70によりその周辺部と共に排出されて、ピン22が嵌挿される孔部20として機能する。
このような第2分割コアプレート16は、前記第1分割コアプレート12と略同形状に形成されており、所定角度θ3(本実施形態では120°)刻みに3枚配置されると、前記第1コアプレート14と略同形状からなるリング状の第2コアプレート18を形成する。
図2中の破線網目模様にて示すように、第1分割コアプレート12及び第2分割コアプレート16の上下面(表面)には、接着剤23が塗布されている。接着剤23は、第1分割コアプレート12及び第2分割コアプレート16の素材鋼板である板部材32(図3参照)の上下面に予め塗布されている。このような接着剤23は、板部材32や第1分割コアプレート12等の表面に塗布されている状態では略薄膜状に構成されており、その接着力は発揮されず、加熱処理及び冷却処理が施された際に接着力が発揮される(有効となる)ものである。
次に、上記のように構成されるロータコア10aを製造する製造方法の一例について、図面を参照しながら説明する。
図3に示すように、ロータコア製造ライン30は、第1成形装置31aと、該第1成形装置31aに並設された第2成形装置31bとから構成される。このロータコア製造ライン30では、第1成形装置31a及び第2成形装置31bに跨る薄板帯状の電磁鋼板からなる板部材32が、矢印X方向に1ピッチずつ(図3中の矢印1Pずつ)搬送される。そして、第1成形装置31a及び第2成形装置31bにより、板部材32から第1分割コアプレート12や第2分割コアプレート16が並行して2枚ずつ連続成形され、それぞれ積層されて2個のロータコア10aが並行して製造される。
第1成形装置31aは、板部材32が搬送される上流側から下流側(矢印X方向)に向かって、パイロット孔成形金型34と、孔部成形金型36と、位置決め部成形金型38と、外形抜き戻し金型40と、マグネット孔成形金型42と、孔部抜き戻し金型44と、抜き落とし金型46とを備える。これら各金型は、例えば、孔部や分割コアプレートを打ち抜くためのパンチを備える上型(図示せず)と、該上型に対向配置され、その上面を板部材32が搬送される下型(図示せず)とから構成される。
第2成形装置31bは、前記第1成形装置31aと略同一構成であり、パイロット孔成形金型34、孔部成形金型36及び位置決め部成形金型38は、第1成形装置31aのそれらと一体に構成される。また、位置決め部成形金型38からやや離間した下流側に、外形抜き戻し金型40、マグネット孔成形金型42、孔部抜き戻し金型44及び抜き落とし金型46が順次備えられる。第2成形装置31bにおいて、孔部成形金型36、位置決め部成形金型38、外形抜き戻し金型40、マグネット孔成形金型42、孔部抜き戻し金型44及び抜き落とし金型46は、前記第1成形装置31aのそれらと比較して、それぞれが板部材32の搬送方向(矢印X方向)に直交する方向で対称に構成されている。
図4は、ロータコア製造ライン30によるロータコア10aの製造方法の第1工程を説明する一部省略平面図である。この製造方法において、各工程は前記板部材32を1ピッチ搬送する毎に実施されるものとし、各工程で稼動される金型には図中に符号Opを記している。なお、1つの工程で複数の金型が同期した状態で同時稼動される場合には、稼動される全ての金型に符号Opを記している。
図4に示すように、先ず、第1工程において、図示しない搬送手段により搬送された板部材32に対し、第1成形装置31a及び第2成形装置31bのパイロット孔成形金型34でパイロット孔47、47及び48、48をあける。これらパイロット孔47、48は、工程毎に、各金型やロータコア製造ライン30上に設けられたパイロットピン(図示せず)と係合され、板部材32を所定位置に位置決めする機能を果たす。前記パイロット孔47は、主に第1成形装置31aにて使用され、前記パイロット孔48は、主に第2成形装置31bにて使用される。ロータコア製造ライン30では、パイロット孔成形金型34は2工程に1回、すなわち、奇数工程時に稼動されるものとするが、これに限らず、例えば、全工程で稼動するように設定してもよい。
前記第1工程においてパイロット孔47、48をあけた後、板部材32を2ピッチ搬送して(矢印Xの方向)、パイロット孔47、48を前記パイロットピンに係合させて板部材32を位置決めする。パイロット孔47、48とパイロットピンとによる位置決め作業は、通常、各工程とも同様に実施されるため、以下では説明を省略する。
図5に示すように、第3工程では、パイロット孔成形金型34で新たなパイロット孔47、48を、前記第1工程であけたパイロット孔47、48よりも2ピッチ後方(上流側)にあける。同時に、第1成形装置31a及び第2成形装置31bの孔部成形金型36により、各成形装置31a、31bにおける1枚目の第1分割コアプレート12に設けられることになる孔部20をあける。パイロット孔成形金型34によるパイロット孔47、48の成形は、1工程おきに同様に実施されるため、以下では説明を省略する。
前記第3工程の後、板部材32を1ピッチ搬送する。次いで、前記第3工程と同様に孔部成形金型36を稼動して、第3工程であけた孔部20よりも1ピッチ後方に、各成形装置31a、31bにおける2枚目の第1分割コアプレート12に設けられることになる孔部20をあける(第4工程)。その後、板部材32を1ピッチ搬送する。
図6に示すように、第5工程では、第1成形装置31a及び第2成形装置31bの孔部成形金型36により、前記第4工程であけた孔部20よりも1ピッチ後方に、各成形装置31a、31bにおける3枚目の第1分割コアプレート12に設けられることになる孔部20をあける。第5工程の後、板部材32を3ピッチ搬送する。
図7に示すように、第8工程では、第1成形装置31aの位置決め部成形金型38により、前記第5工程であけた孔部20よりも1ピッチ後方に、第1成形装置31aにおける1枚目(第1分割コアプレート12も含めた合計では4枚目)の第2分割コアプレート16に設けられることになる位置決め部26を形成する。すなわち、前記1枚目の第2分割コアプレート16は、前記3枚目の第1分割コアプレート12の後に連続して成形される。
同時に、第1成形装置31aの外形抜き戻し金型40により、該第1成形装置31aで成形される1枚目の第1分割コアプレート12の外形(輪郭)を打ち抜き、プッシュバックを実施する。このプッシュバックとは、ワーク(この場合には、第1分割コアプレート12及び第2分割コアプレート16)を打ち抜き加工する場合に、打ち抜かれたワークを再び元の位置に押し戻す加工方法である。
図8A〜図8Cを参照して外形抜き戻し金型40のプッシュバック機構について、第1分割コアプレート12の抜き戻し成形を行う場合を例示して説明する。
パイロット孔47とパイロットピンによる位置決め作用下に、先ず、図8Aに示すように、板部材32を外形抜き戻し金型40にセットする。外形抜き戻し金型40は、上型50と下型52とから構成され、下型52はプッシュバック機構54を備えている。
次いで、図8Bに示すように、上型50を矢印Z1方向に下降させ、第1分割コアプレート12を打ち抜く。
続いて、上型50を上昇させ、プッシュバック機構54を構成する戻し部53を矢印Z2方向へと上昇させる。すなわち、図8Cに示すように、第1分割コアプレート12が打ち抜かれて形成された板部材32の抜き孔部57へと、プッシュバック機構54により第1分割コアプレート12を突き戻す。これにより、第1分割コアプレート12は、自身が打ち抜かれて形成された板部材32の抜き孔部57に嵌め戻され、以降の工程へと搬送される。
前記第8工程の後、板部材32を4ピッチ搬送する。この間、第9〜第11工程にて、第1成形装置31aの位置決め部成形金型38により、新たな位置決め部26が順次形成される。さらに、第1成形装置31aの外形抜き戻し金型40により、2〜3枚目の第1分割コアプレート12が抜き戻し成形され(第9及び第10工程)、続いて、1枚目(合計では4枚目)の第2分割コアプレート16が抜き戻し成形される(第11工程)。
図9に示すように、第12工程では、第1成形装置31a及び第2成形装置31bの位置決め部成形金型38により、前記第11工程にて形成された位置決め部26の1ピッチ後方に、新たな位置決め部26を形成する。同時に、第1成形装置31aの外形抜き戻し金型40により、前記第11工程にて抜き戻し成形された1枚目の第2分割コアプレート16の1ピッチ後方に、2枚目(合計では5枚目)の第2分割コアプレート16を抜き戻し成形する。
さらに、第12工程では、第1成形装置31aのマグネット孔成形金型42により、1枚目の第1分割コアプレート12にマグネット孔28をあける。
前記第12工程の後、板部材32を6ピッチ搬送する。この間、第13〜第17工程では、第1成形装置31a及び第2成形装置31bのパイロット孔成形金型34及び位置決め部成形金型38と、第1成形装置31aの外形抜き戻し金型40及びマグネット孔成形金型42とが適宜稼動され、板部材32に対する所定の加工が実施される。
図10に示すように、第18工程では、第1成形装置31a及び第2成形装置31bの位置決め部成形金型38により、新たな位置決め部26を形成する。同時に、第1成形装置31aの外形抜き戻し金型40により、新たな第2分割コアプレート16を抜き戻し成形すると共に、マグネット孔成形金型42により、新たな第2分割コアプレート16にマグネット孔28をあける。
さらに、第18工程では、第1成形装置31aの孔部抜き戻し金型44により、1枚目(合計では4枚目)の第2分割コアプレート16の凸部24に形成された位置決め部26及びその周縁部を円形状に打ち抜き、プッシュバックを実施する。この場合の打ち抜き範囲は、第2分割コアプレート16を第1分割コアプレート12に重ねた際、該第1分割コアプレート12の凸部24に形成された孔部20と一致、すなわち、孔部20と同心同径となるように設定される。従って、前記のように打ち抜かれた打ち抜き部である位置決め部26及びその周縁部は、自身が打ち抜かれたことで形成された第2分割コアプレート16の凸部24に形成された抜き孔部である孔部20に嵌め戻される。
なお、孔部抜き戻し金型44による打ち抜き及びプッシュバックは、外形抜き戻し金型40による第1分割コアプレート12等の打ち抜き及びプッシュバックを行う加工方法と略同様であるため、詳細な説明は省略する。
前記第18工程の後、板部材32を5ピッチ搬送する。この間、第19〜第22工程では、第1成形装置31a及び第2成形装置31bのパイロット孔成形金型34及び位置決め部成形金型38と、第1成形装置31aの外形抜き戻し金型40、マグネット孔成形金型42及び孔部抜き戻し金型44とが適宜稼動され、板部材32に対する所定の加工を実施する。
図11に示すように、第23工程では、第1成形装置31aの外形抜き戻し金型40により新たな第2分割コアプレート16を抜き戻し成形すると共に、マグネット孔成形金型42により新たな第2分割コアプレート16にマグネット孔28をあける。さらに、第1成形装置31aの孔部抜き戻し金型44により、新たな第2分割コアプレート16の位置決め部26に孔部20を抜き戻し成形する。
そして、この第23工程では、1枚目の第1分割コアプレート12が、抜き落とし金型46の抜き落とし位置D(図12A中に点線で囲む範囲)に到達することになる。このため、抜き落とし金型46を稼動して、外形抜き戻し金型40にて打ち抜き後、プッシュバックにより戻された第1分割コアプレート12を抜き落とす。このような抜き落とし金型46は、その後の各工程(第24工程以降)においても順次稼動され、第1分割コアプレート12及び第2分割コアプレート16をリング状に配置しながら積層する。
ここで、抜き落とし金型46により第1分割コアプレート12及び第2分割コアプレート16を抜き落として積層する方法について、図12〜図14を参照して説明する。
図12A及び図12Bに示すように、抜き落とし金型46は、内周側に環状溝部が形成された略円筒状の上部枠体56と、上部枠体56の前記環状溝部に装着され、回転機構(駆動機構)55により回転自在に構成されたアウターガイド部材(かしめリング)58と、上部枠体56の下面と所定距離離間して対向する円筒状の下部枠体60とを有する。
上部枠体56及び下部枠体60の内周側には、油圧シリンダ機構(背圧付与機構)61のロッド部61aによりバックアップされ、所定位置(高さ)に保持されたインナーガイド部材62が配置されている。油圧シリンダ機構61は、昇降自在に且つ所定位置で停止自在に構成されている。ロッド部61aの下端側にはフランジ部61bが設けられている。フランジ部61bは、下部枠体60の内周部に形成されたフランジ部60aに当接することにより、ロッド部61aが所定位置(高さ)以上に上昇しないための位置決め部として機能する。なお、ロッド部61aの先端面(上面)は、インナーガイド部材62の下面に設けられた凹部(図示せず)に係合可能であり、これにより該インナーガイド部材62の径方向での位置決めがなされている。
インナーガイド部材62は、第1コアプレート14及び第2コアプレート18の内周側の環状縁部が嵌脱可能な外周面、換言すれば、前記環状縁部と略一致する形状の外周面からなる略円柱状に構成される。従って、インナーガイド部材62の外周面には、軸方向に延在する複数の凹部62aが形成され、これら凹部62aは、第1コアプレート14及び第2コアプレート18の内周側に形成された凸部24に係合可能である。
なお、第1コアプレート14等の凸部24は6個であるにも拘らず、前記凹部62aは等間隔に12個設けられているが、これは、インナーガイド部材62の汎用性を向上させるためである。すなわち、後述する凸部24を12個有した第1コアプレート114等にもインナーガイド部材62を適用可能に構成するためである(図25A〜図25C参照)。従って、本実施形態の場合、凸部24は、凹部62aに対して1個おきに係合することになるが、該凹部62aを凸部24と同数の6個としてもよいことは言うまでもない。
図12Aに示すように、回転機構55は、サーボモータ63と、該サーボモータ63の駆動軸63aに連結されることにより回転するプーリ65と、該プーリ65及びアウターガイド部材58の間に巻き掛けられたタイミングベルト67とを有する。従って、サーボ制御部69の制御下に、サーボモータ63を介してプーリ65を所定角度回転させることにより、タイミングベルト67を介してアウターガイド部材58を高精度に、しかも迅速に所定角度回転させることができる。この際、アウターガイド部材58に近接配置されたセンサ71により検出されるアウターガイド部材58の回転角度情報及び角度位置(位相)情報がサーボ制御部69に入力される。そして、サーボ制御部69では前記回転角度情報及び角度位置情報に基づき、サーボモータ63をフィードバック制御している。
このような抜き落とし金型46において、インナーガイド部材62の外周面とアウターガイド部材58の内周面との間の隙間51の幅である寸法R1は、第1分割コアプレート12や第2分割コアプレート16の半径方向の幅である寸法R2(図2、図12A及び図12B参照)よりも多少小さく設定されている(R1<R2)。従って、隙間51を、抜き落とされた第1分割コアプレート12等を保持する保持部51として機能させることができる。
そこで、抜き落とし金型46では、パイロット孔47とパイロットピンとの位置決め作用下に、先ず、外形抜き戻し金型40にて板部材32に抜き戻された1枚目の第1分割コアプレート12がインナーガイド部材62上を通過して、保持部51の上部にセットされる(図12B参照)。すなわち、1枚目の第1分割コアプレート12は、図12A中の抜き落とし位置Dにて抜き落とし金型46にセットされる。
次いで、図12Bに示すように、パンチ64を下降させ板部材32から前記1枚目の第1分割コアプレート12を抜き落とす。
そうすると、抜き落とされた第1分割コアプレート12は、保持部51において、内周側の円弧状縁部がインナーガイド部材62の外周面に摺接すると共に内圧を付与され、外周側の円弧状縁部がアウターガイド部材58の内周面と摺接すると共に側圧(外圧)を付与される。すなわち、抜き落とされた第1分割コアプレート12は、凸部24と凹部62aとの位置決め作用によって内周側がインナーガイド部材62により支持される一方、外周側にアウターガイド部材58からの圧力が付与されることにより、保持部51(隙間51)に圧入されて嵌合される。従って、第1分割コアプレート12は、図12B中の2点鎖線で示すように、下方に脱落することなく保持部51にて保持される(図13A参照)。なお、例えば、凸部24を凹部として形成し、凹部62aを凸部として形成しても同様な位置決め作用を得ることができる。
この際、インナーガイド部材62は、油圧シリンダ機構61により背圧を付与されてバックアップされているため、パンチ64による下方への押圧力によっても変位せず、所定の位置に保持されている。
以上のようにして第23工程が完了するが、続けて、第24工程以降での抜き落とし金型46の動作について説明する。
第24工程において抜き落とし金型46では、先ず、前記第23工程により抜き落とされた1枚目の第1分割コアプレート12が保持部51にて保持された状態で(図13A参照)、回転機構55を駆動させる。そして、アウターガイド部材58を所定角度θ1(本実施形態では120°)旋回させる(図13B参照)。
この場合、上記した、寸法R1<寸法R2、の関係により、保持部51には第1分割コアプレート12が嵌合されており、しかも該第1分割コアプレート12の凸部24がインナーガイド部材62の凹部62aに係合している。このため、アウターガイド部材58の回転は、第1分割コアプレート12を介してインナーガイド部材62へと伝達される。従って、油圧シリンダ機構61によるバックアップ作用下に、インナーガイド部材62についてもアウターガイド部材58と同期して前記所定角度θ1旋回することになる。当然、保持部51にて保持されている第1分割コアプレート12もアウターガイド部材58と共に所定角度θ1旋回する。
次いで、2枚目の第1分割コアプレート12を前記1枚目の第1分割コアプレート12と同様、保持部51へと抜き落とし圧入する。そうすると、図13Bに示すように、抜き落とされた2枚目の第1分割コアプレート12が、1枚目の第1分割コアプレート12に対して周方向に並んで配置される。
第25工程において抜き落とし金型46では、前記第24工程と同様に、アウターガイド部材58をさらに所定角度θ1旋回させた後、3枚目の第1分割コアプレート12を保持部51へと抜き落とし圧入する。そうすると、抜き落とされた3枚目の第1分割コアプレート12は、1枚目及び2枚目の第1分割コアプレート12と並んで同一平面上に配置され、リング状の第1コアプレート14が形成される。このように形成された第1コアプレート14は、ロータコア10aの最下層(第1層)を構成する。
第26工程において抜き落とし金型46では、図13Cに示すように、保持部51に第1コアプレート14が保持された状態で、先ず、アウターガイド部材58を所定角度θ2(本実施形態では60°)旋回させることにより、第1コアプレート14を所定角度θ2旋回させる。
次いで、1枚目(合計では4枚目)の第2分割コアプレート16を前記第1コアプレート14上に積層するように抜き落とし、保持部51に圧入する。
この場合、第1コアプレート14を、予め所定角度θ2旋回させてあるので、抜き落とされた1枚目の第2分割コアプレート16の円弧中心が、第1コアプレート14における2枚の第1分割コアプレート12(ここでは、1枚目と3枚目の第1分割コアプレート12)同士が当接した端部A1上に一致して積層される(図13C参照)。また、このように抜き落とされた第2分割コアプレート16は、パンチ64による打ち抜き荷重(押圧作用)により、保持部51に嵌合されると同時に、その下部にある第1分割コアプレート12を押し下げながら積層される。
従って、前記1枚目の第1分割コアプレート12の一方の孔部20と、前記3枚目の第1分割コアプレート12の一方の孔部20に対し、抜き落とされた前記1枚目の第2分割コアプレート16の2つの位置決め凸部26aが係合される(図14A参照)。
ここで、図14A及び図14Bにおいて、各分割コアプレート12、16に近接して付された数字[1]〜[9]は、ロータコア製造ライン30で成形された順番を示しており、例えば、[1]は、1枚目の第1分割コアプレート12を示し、[4]は、1枚目の第2分割コアプレート16を示している。また、図14A及び図14B中に破線で示された基準線Bは、1枚目〜3枚目の第1分割コアプレート12(第1コアプレート14)を最初に打ち抜き、保持部51に保持させた位置(高さ)である。
第27及び第28工程において、先ず、回転機構55によりアウターガイド部材58を所定角度θ1(120°)旋回させ、第1コアプレート14及び1枚目の第2分割コアプレート16を所定角度θ1旋回させる。次いで、2、3枚目(合計では5、6枚目)の第2分割コアプレート16を抜き落とす。これにより、第1層である第1コアプレート14上に、第2層となる第2コアプレート18が、前記第1層と所定角度θ2(60°)ずれた状態で積層される。この際、第1コアプレート14の各孔部20には、第2コアプレート18の位置決め部26の各位置決め凸部26aが係合される(図14A参照)。
同様に、第29工程において、先ず、アウターガイド部材58を所定角度θ2(60°)旋回させ、第1コアプレート14(第1層)及び第2コアプレート18(第2層)を所定角度θ2旋回させた後、4枚目(合計では7枚目)の第2分割コアプレート16を前記第2層の上に抜き落とす。次いで、第1コアプレート14(第1層)、第2コアプレート18(第2層)及び4枚目の第2分割コアプレート16を所定角度θ1(120°)旋回させて、5、6枚目(合計では8、9枚目)の第2分割コアプレート16を抜き落とす(第30及び第31工程)(図14B参照)。
これにより、前記第2層の上に、第3層となる第2コアプレート18が、第2層と所定角度θ2(60°)ずれた状態で積層される。この場合、第2層の第2コアプレート18の位置決め凹部26bには、第3層の第2コアプレート18の位置決め凸部26aが係合する(図14B参照)。
第32工程以降における抜き落とし金型46による第2分割コアプレート16の抜き落とし及び積層方法については、上記した第29工程〜第31工程(図14B参照)の場合と略同様であるため、詳細な説明は省略する。なお、前記第24工程以降の各工程については、抜き落とし金型46による動作のみを説明したが、他の金型も適宜稼動され、板部材32に対する所定の加工を実施することは言うまでもない。
また、第2成形装置31bにおいても、板部材32が順次搬送され、外形抜き戻し金型40、マグネット孔成形金型42、孔部抜き戻し金型44及び抜き落とし金型46の所定の加工位置に達した際には、第1成形装置31aの場合と同様に、該板部材32に対して所定の加工を実施する。例えば、図15に示すように、第43工程では、第2成形装置31bにおいて、1枚目の第1分割コアプレート12が抜き落とし金型46により抜き落とされる。
その後、第1成形装置31a及び第2成形装置31bの抜き落とし金型46では、プレート積層数が所定の層数(本実施形態では、最下層の第1コアプレート14上に第2コアプレート18が49枚積層された合計50層)まで積層動作が継続される。そして、第1コアプレート14及び第2コアプレート18が所定の層数(第50層)まで積層されると、合計50層からなる積層体11aが保持部51にて保持された状態で形成される(図16参照)。
このように形成された積層体11aは、各分割コアプレート12、16が保持部51に圧入により嵌め込まれながら積層されている。このため、積層体11aの各層は一体に圧着成形されており、例えば、搬送時等での軽い衝撃等では積層ずれ(位置ずれ)を生じない程度の強度を有する。また、前記のようにアウターガイド部材58を回転させながら積層しているため、例えば、積層時に各層間での位置決め凸部26aと位置決め凹部26bの位置が多少ずれて積層されているような場合であっても、アウターガイド部材58の回転による各層の円環外周面への摺接作用により、軸合わせ作用が営まれ、これらのずれが是正され、より正確に圧着され積層される。
続けて、前記圧着成形された積層体11a上に、第2回目における1枚目(前記第1工程からでは151枚目)の第1分割コアプレート12が積層され、順次、第1分割コアプレート12や第2分割コアプレート16が上記のように説明した各工程と同様に、所定の層数まで積層される。
そうすると、図17Aに示すように、積層体11a上に新たな積層体11bが形成されることになる。この場合、積層体11bの最下層(第1層)は、積層体11aの最下層と同様に第1コアプレート14により構成されており、その下面は平坦面であり、位置決め凸部26aを有していない。従って、積層体11bの最下層(第1層)が、積層体11aの最上層(第50層)の位置決め凹部26bに対して係合及び圧着されてしまうことはなく、積層体11aと積層体11bとは、それぞれ別体に成形される。
次いで、積層体11b上に新たな積層体11cの形成が開始されると、図17Bに示すように、積層体11aが保持部51を完全に通過することになる。これにより、最初に形成された積層体11aは、保持部51から自動的に離脱し、落下して、下部枠体60の上面に載置される。
従って、図17Cに示すように、油圧シリンダ機構61のロッド部61aを下降させ、下部枠体60の上面上で搬出部材68を水平方向に移動させることにより、積層体11aを抜き落とし金型46から容易に搬出し、次工程(本実施形態の場合、ピン22の嵌挿工程)へと搬送することができる。この際、積層体11bが、アウターガイド部材58とインナーガイド部材62との間の保持部51に圧入され保持されているため、前記ロッド部61aが下降しても、積層体11bやインナーガイド部材62が落下することはない。
ロータコア製造ライン30では、前記積層体11c上に新たな積層体を形成し、このような作業を連続して実施することで、1枚の帯状の板部材32から、ロータコア10aを構成する積層体を連続して形成し、自動的に搬出させることができる。
次に、図18〜図20を参照しながら、ロータコア製造ライン30で成形された積層体11aに対してピン嵌挿装置70によりピン22を嵌挿させて各層間を結合する方法について説明する。
ピン嵌挿装置70は、ロータコア10aを構成する積層体11aを上面及び下面から加圧して保持する上面加圧治具72及び下面加圧治具74と、積層体11aの各孔部20にピン22を嵌挿させる押圧治具76とから構成される。
押圧治具76は、その下面(押圧方向面)に各孔部20に対応する複数(本実施形態では6本)の治具ピン78a、78bが突設されている。これらは、例えば2種類の長さに設定され、本実施形態の場合、3本の治具ピン78aが、他の3本の治具ピン78bよりもやや長く設定されている。治具ピン78aと治具ピン78bとの長さの差は、例えば、積層体11a(ロータコア10a)の各層の厚さ、すなわち、第1コアプレート14や第2コアプレート18の1枚分の厚さ以上のものとされる。
上面加圧治具72は、ピン22の長さよりもやや厚いブロック状であり、中央部を貫通するねじ部79が形成されると共に(図21参照)、各孔部20の位置に対応した複数(本実施形態では6つ)のガイド孔80が貫通している(図19参照)。
下面加圧治具74は、上面加圧治具72と略同形状であり、中央部を貫通するボルト挿通孔81が形成されると共に(図21参照)、各孔部20の位置に対応した複数(本実施形態では6つ)の排出孔82が貫通している(図19参照)。
このようなピン嵌挿装置70では、先ず、上面加圧治具72と下面加圧治具74とを用い、積層体11aを加圧しながら保持する。この際、図示しない位置決め手段等により、積層体11aの孔部20の位置と、上面加圧治具72のガイド孔80及び下面加圧治具74の排出孔82の位置とを一致させ、これらが同軸上で連続するようにセットする。
次いで、上面加圧治具72の各ガイド孔80にピン22を挿入した後、該ピン22の上部からガイド孔80へと押圧治具76の各治具ピン78a、78bを挿入する。そして、押圧治具76を下方に押圧することにより、各治具ピン78a、78bによって各ピン22を下方に押圧降下させる。そうすると、図19に示すように、治具ピン78a、78bの押圧作用下に、各層における孔部抜き戻し金型44により抜き戻された打ち抜き部である位置決め部26及びその周縁部が、ピン22により下方へと押圧されて突き抜かれ、下面加圧治具74の排出孔82へと連続的に排出される。
この場合、押圧治具76では、2種類の長さからなる治具ピン78a、78bを用いている。このため、積層体11aを構成する各層では、先ず、半数(3個)の前記打ち抜き部(位置決め部26及びその周縁部)が突き抜かれ、次いで、残り半数(3個)の位置決め部26が突き抜かれながら排出孔82へと次第に排出される。
従って、各層では、初めの3本の治具ピン78aによりピン22が嵌挿され且つその上層と結合される際には、常に、残りの3個の前記打ち抜き部が、その上層及び下層の位置決め部26と圧着された状態にある。すなわち、ピン22の嵌挿時、各層では常に位置決め部26のうちの半数が位置決め機能を維持しているため、嵌挿時の積層ずれ(位置ずれ)を有効に抑えることができ、ピン22を正確に且つ迅速に嵌挿させることができる。
また、最下層にピン22を嵌挿させる際にも、その上層から段階的に落とされた位置決め部26が、該最下層の孔部20に嵌まった状態となっている。従って、位置決め部26の位置決め凸部26aの一部が下面加圧治具74の排出孔82に係合しており、前記のような積層ずれ防止作用を果たすことができる。
なお、押圧治具76では、治具ピンの半数を治具ピン78a、残り半数を治具ピン78bとしたが、どちらか一方が少なくとも1本以上設定されていれば積層ずれを防止することができるが、好適には2本以上がよい。また、例えば、押圧治具76の治具ピンを孔部20の数の半数に設定しておき、先ず、半数のピン22を嵌挿した後、残りのピン22を嵌挿するように構成することもできる。
そして、図20に示すように、全てのピン22が積層体11aの各層を連結する状態まで嵌挿され、積層体11aの各層が結合されると、次工程である積層体11aの加熱・冷却処理工程へと移行する。
次に、図21及び図22を参照しながら、ピン22で結合された積層体11aを加熱・冷却することで接着剤23により各層を一層強固に結合し、ロータコア10aを成形する方法について説明する。
先ず、図21に示すように、ピン22が嵌挿された積層体11aを押圧治具76、上面加圧治具72及び下面加圧治具74により狭持した状態で、ボルト挿通孔81にボルト84を挿通させると共に、該ボルト84をねじ部79に螺合させる。すなわち、ボルト84は、ボルト挿通孔81を貫通し、積層体11aの内側を通過した状態でねじ部79へと締結される。
このようなボルト84の締結作業は、押圧治具76をボルト84の進行方向(図21では上方)と対向する方向(図21では下方)に押圧しながら行う。これにより、上面加圧治具72と下面加圧治具74とが積層体11aを挟んだ状態でボルト84により強固に且つ隙間なく締結され、積層体11aが強固にクランプされる。
次いで、押圧治具76を離間させると共に、下面加圧治具74の排出孔82内に残留している排出屑(ピン22により排出された第2コアプレート18の位置決め部26及びその周縁部)を廃棄する。
そして、図22A及び図22Bに示すように、上面加圧治具72、下面加圧治具74及びボルト84により強固にクランプされた積層体11aを加熱炉86内で加熱する。加熱炉86では、接着剤23を溶解可能な温度で所定時間加熱する。これにより、接着剤23が確実に溶解され、積層体11aの各層間に十分に浸透することになる。
その後、積層体11aを冷却(例えば、常温で所定時間放置)することで、各層間に浸透した接着剤23が固化して接着力が発揮され、積層体11aの各層間が強固に密着結合される。続いて、上面加圧治具72、下面加圧治具74及びボルト84を取り外すと、各層間が極めて強固に結合されたロータコア10aの成形が完了する。
なお、図22Aに示すように、加熱炉86として、炉内に複数段の棚86aを有し、前記積層体11aに比べて十分に大きな容積からなるものを用い、複数の積層体11aを同時に加熱処理できるように構成すると、より効率的にロータコア10aを製造することができる。
以上のように、第1の実施形態に係るロータコア10aの製造方法及び装置によれば、図15に示すように、1枚の板部材32からほとんど隙間無く第1分割コアプレート12や第2分割コアプレート16を切り出すことができ、板部材32の利用率を一層向上させることができる。さらに、板部材32を連続的に搬送しながら、第1分割コアプレート12や第2分割コアプレート16を成形し、続けてこれらを迅速に積層することができる。従って、高効率に且つ迅速にロータコア10aを成形することができ、製造効率が極めて高い。
抜き落とし金型46では、アウターガイド部材58の回転、すなわち、第1分割コアプレート12等の位相を変化させるための回転機構55が、サーボモータ63やサーボ制御部69から構成されるサーボ機構により構成されると共に、上記フィードバック制御を行っている。従って、前記位相の変化を、高精度に且つ高い反応性で実行することができ、製造部品が変わった際にも容易に設定変更を行うことができる。
また、抜き落とし金型46では、積層される第1分割コアプレート12等に対して、アウターガイド部材58及びインナーガイド部材62により外圧及び内圧を付与することができるため、保持部51では第1分割コアプレート12等の下面を保持する必要がない。従って、所定の積層枚数に積層され成形された積層体11a等は、保持部51を通過するだけで自動的に落下するため、当該抜き落とし金型46での積層作業を停止させることなく、次工程へと容易に且つ迅速に搬送することができ、ロータコア10aの製造効率が一層向上する。
さらに、インナーガイド部材62の外周面には第1分割コアプレート12等の凸部24に対応して位置決め機能を果たす凹部62aが形成されているため、一層高精度な積層が可能となる。
また、成形されたロータコア10aでは、ピン22と接着剤23とにより、各層が極めて高強度に結合され、高い耐久性を得ることができる。この接着剤23は、素材鋼板である帯状の板部材32に塗布するだけでよいため、例えば、スプレー、刷毛又は浸漬等からなる各種方法により容易に且つ迅速に付与することができる。そして、積層体11aは、ピン嵌挿装置70によりピン22を嵌挿させた後、実質的にボルト84による締結作業を行うだけで加熱炉86へと搬送することができる。従って、極めて高効率にロータコア10aの製造を行うことができる。
ところで、ロータコア10aは、ピン22及び接着剤23により極めて高強度に結合されるが、ロータコア10aの使用条件等によっては、ピン22のみによる結合、又は、接着剤23のみによる結合だけで十分な強度を得ることもできる。この場合、製造コストを一層低減させることができる。
接着剤23による結合を行わずピン22による結合のみを行う場合には、接着剤23が塗布されていない板部材を用いると共に、ピン22を嵌挿させた後の前記加熱・冷却処理工程を省略すればよい。一方、ピン22による結合を行わず接着剤23による結合のみを行う場合には、ピン22を嵌挿させる必要がないため、ロータコア製造ライン30において、位置決め部成形金型38で成形された位置決め部を抜き戻す必要がない。すなわち、ロータコア製造ライン30から孔部抜き戻し金型44を省略(又は不使用)とすると共に、上記したピン嵌挿装置70によるピン22の嵌挿工程を省略すればよい。
次に、本発明の第2の実施形態に係るリングコアの製造方法及び製造装置について、主に図23〜図26を参照して説明する。なお、図23〜図26において、図1〜図22に示される参照符号と同一の参照符号は、同一又は同様な構成を示し、このため同一又は同様な機能及び効果を奏するものとして詳細な説明を省略するものとして、以下同様とする。また、図23では、図面の簡略化のため接着剤23を示す破線網目模様(図2参照)を省略しており、以下同様とする。
図23は、本発明の第2の実施形態に係るリングコアの製造装置により製造されたロータコア(リングコア)10bの斜視図である。
ロータコア10bは、上記したロータコア10aと比較すると、内周側に凸部24が4個形成された第1分割コアプレート112をリング状に形成した第1コアプレート114と、内周側に凸部24が4個形成された第2分割コアプレート116をリング状に形成した第2コアプレート118とから構成される点、及び、各層での端部(突き当て面)のずれ角度(位相)が異なる点が相違する。
凸部24は、ロータコア10aでは隣り合うマグネット孔28同士の中心位相位置に設けられていたが(図1等参照)、ロータコア10bでは各マグネット孔28の中心と同一位相位置に設けられている(図23及び図24参照)。
そして、ロータコア10bでは、第1層の第1コアプレート114の端部位置を図23中の矢印B1にて示した場合、第2層の第2コアプレート118の端部位置は矢印B2で示される。同様に、第3層の第2コアプレート118の端部位置は矢印B3で示され、第4層の第2コアプレート118の端部位置は矢印B4で示され、第5層の第2コアプレート118の端部位置は矢印B1で示され、その上層でも同順に積層される。この場合、各矢印B1〜B4の位相は、それぞれ60°ずつずれている。
具体的には、図24に示すように、例えば、第1層(最下層)を構成する第1コアプレート114では、第1分割コアプレート112同士が当接する端部(突合せ面)の位置B1は、所定角度θ11(本実施形態では120°)刻みで合計3箇所に配置されている。そして、第2層を構成する第2コアプレート118では、第2分割コアプレート116同士が当接する端部の位置B2は、前記位置B1から所定角度θ12(本実施形態では30°)ずれた位置とされている。さらに、第3層を構成する第2コアプレート118では、端部の位置B3は、前記位置B2から所定角度θ12(本実施形態では30°)ずれた位置とされ、その上層でも同様である。
このように、ロータコア10bでは、各層が所定角度θ12(30°)ずつずれた状態で積層されている。この場合、凸部24が第1コアプレート114等には12個設けられているため、各層間において、凸部24に形成された位置決め部26同士を係合させることができる(図26A及び図26B参照)。
以上のように構成されるロータコア10bは、例えば、接着剤23のみで各層が結合されている。従って、ピン22の嵌挿作業が不要となるため、前記ロータコア製造ライン30から孔部抜き戻し金型44を省略すると共に、外形抜き戻し金型40における凸部24の抜き型の数を変更した(外形を変更した)製造ラインを用いることにより、上記したロータコア10aの場合と略同様に、連続して自動的に成形可能である。
この場合、抜き落とし金型46では、アウターガイド部材58の回転、すなわち、第1分割コアプレート112等の位相を変化させるための回転機構55は、サーボ機構により構成されると共に、上記フィードバック制御を行っている。従って、ロータコア10bにおいても、図25A〜図25Cに示すように、所定角度θ11(120°)、θ12(30°)へと第1分割コアプレート112等を容易に且つ迅速に回転させながら、積層することができる。
なお、ロータコア10bは、ピン22が嵌挿されず、接着剤23のみで各層が結合されているが、上記したロータコア10aの場合と同様に、各層をピン22のみ、又は、ピン22及び接着剤23の両方で結合するようにしてもよい。
以上のように、第2の実施形態に係るロータコア10bの製造方法及び装置によれば、第1分割コアプレート112や第2分割コアプレート116の凸部24を4個ずつとして、各マグネット孔28の中心と同一位相位置に設けている。そして、各層を上記所定角度θ12(30°)毎にずらした状態で積層している。
換言すれば、ロータコア10bでは、少なくとも2以上のマグネット孔28が等間隔に形成された分割コアプレート112、116をリング状に配置したコアプレート114、118が、順次、マグネット孔28の1つ分に相当する角度単位で分割位置である端部(突き当て面)が変位するように積層されている。これは、例えば、前記第1分割コアプレート112の円弧は前記所定角度θ11(120°)で構成され、マグネット孔28を4個有するため、その1つ分に相当する角度単位とは、前記所定角度θ11を4で割った30°(前記所定角度θ12)を示している。
これにより、各層において分割コアプレート同士が重なり合う面積(接着面積)を極めて大きくすることができ、しかも、接着剤はせん断方向に作用する力に対して強大な抵抗力を発揮するため、各層を極めて強固に結合することができる。従って、例えば、極めて高速で回転されて、径方向に強い遠心力とせん断力が作用するようなロータコアに、特に有効に適用することができる。
なお、第1分割コアプレート112や第2分割コアプレート116は、例えば、図27に示すように、マグネット孔28が2個形成され、より細かく分割された第1分割コアプレート124や第2分割コアプレート126として形成してもよい。
このような場合には、各分割コアプレート124、126の円弧は所定角度θ21(60°)で構成される。従って、最下層(第1層)の第1分割コアプレート124の端部(付き当て面)である矢印C1から、所定角度θ22(30°)毎にずれた位置に、第2層及び第3層を構成する第2分割コアプレート126の端部が配置されるようにすればよい(図27中の矢印C2、C3参照)。
次に、上記各分割コアプレートを用いると共に、ピン22を用いず、接着剤23のみで各層を結合したロータコアの中心軸を中心として高速で回転させ、遠心力により高負荷(荷重)を付与し、該ロータコアの破損荷重を測定する回転バースト試験を行った結果について説明する。
この場合、次の3種類の接着結合によるロータコアA〜Cについて試験を実施した。ロータコアAは、上記した第1分割コアプレート12及び第2分割コアプレート16を用い(図2参照)、端部同士のずれを所定角度θ2(60°)としたものである。ロータコアBは、上記した第1分割コアプレート112及び第2分割コアプレート116を用い(図24参照)、端部同士のずれを所定角度θ12(30°)としたものである。ロータコアCは、上記した第1分割コアプレート124及び第2分割コアプレート126を用い(図27参照)、端部同士のずれを所定角度θ22(30°)としたものである。
このような試験を行った結果、ロータコアAのバースト荷重を100とすると、ロータコアBのバースト荷重は112であり、ロータコアCのバースト荷重は80であった。いずれも実用上必要な強度を有していたが、ロータコアBが最も強固に各層が結合されていることが示された。
次に、本発明の第3の実施形態に係るリングコアの製造方法及び製造装置について、説明する。図28は、本発明の第3の実施形態に係るリングコアの製造装置により製造されたロータコア(リングコア)10cの斜視図である。
ロータコア10cは、上記したロータコア10b(図23参照)の各層をピン22によって結合して構成されている。
図29に示すように、ロータコア製造ライン30aは、上記したロータコア製造ライン30と比較して、孔部成形金型36、位置決め部成形金型38、外形抜き戻し金型40及び孔部抜き戻し金型44を、凸部24の設置数の変更に対応するように変更した孔部成形金型36a、位置決め部成形金型38a、外形抜き戻し金型40a及び孔部抜き戻し金型44aとして構成している。さらに、ロータコア製造ライン30aでは、上記した抜き落とし金型46aに代えて、アウターガイド部材やインナーガイド部材、回転機構等の構成を変更した抜き落とし金型46aを備えている。
このようなロータコア製造ライン30aにおいても、孔部成形金型36aから孔部抜き戻し金型44aまでの成形工程は、上記したロータコア製造ライン30の場合と略同様であるため、詳細な説明は省略する。
そこで、次に、抜き落とし金型46aにより第1分割コアプレート112及び第2分割コアプレート116を抜き落として積層し、ロータコア10cを成形する方法について、図30〜図33を参照して説明する。
図30〜図32に示すように、抜き落とし金型46aは、内周側に環状溝部154bを有する段部154aが周設された略円筒形状の上部枠体154と、前記上部枠体154の下面を支持する略円筒形状の下部枠体160とを有する。さらに、上部枠体154の前記段部154aに配設され、内周側及び外周側にそれぞれ段部156a及び環状溝部156bが周設された略円筒形状の可動枠体156と、該可動枠体156の前記段部156aに固着されたリング部材(アウターガイド部材、カシメリング)158とから構成されるアウターガイド部材157を有する。アウターガイド部材157は、サーボモータ(回転駆動源、回転機構)159の回転駆動力により回転可能に構成されている。なお、リング部材158と可動枠体156とは一体に構成してもよい。
また、図32に示すように、下部枠体160と当接する上部枠体154の下面側には、板部材32の搬送方向である矢印X方向と直交する矢印Y方向に沿う第1通路154cと、該第1通路154cよりもやや大きな第2通路154dとが形成されており、第1通路154c内には、矢印Y方向に進退可能な搬出部材163が配置されている。
さらに、抜き落とし金型46aにおいて、リング部材158の内周側には、油圧シリンダ機構(背圧付与機構)161を構成する段付き円柱形状のロッド部162の先端側でバックアップされることで所定位置(高さ)に保持されたインナーガイド部材164が配置されている。
油圧シリンダ機構161は、可動枠体156、上部枠体154及び下部枠体160の内周側を挿通するロッド部162を昇降自在に且つ所定位置で停止自在に構成されており、ロッド部162の下端側にはフランジ部162aが設けられている。フランジ部162aは、下部枠体160の内周部に形成されたフランジ部160aに当接することにより、ロッド部162が所定位置(高さ)以上に上昇しないための位置決め部として機能する。また、ロッド部162の先端側(上端側)には、コイルばね(圧縮ばね、弾性部材)166が周方向に複数(本実施形態の場合、18個)設置された第1段部162bと、該第1段部162bよりも小径であり且つ高さ方向に低い第2段部162cとが形成されている。
図31及び図32から諒解されるように、第2段部162cは、ロッド部162の先端面162dの周縁部を掘り下げた形状である。この第2段部162cには、上方に突出する軸受168が配設されており、該軸受168の一端面(上面)が実質的にロッド部162の先端面をなしている。従って、軸受168の内周面と先端面162dとで形成される凹部が、インナーガイド部材164の下面に設けられた凸部(後述するボルト169の頭部)の逃げ部として、さらに該インナーガイド部材164の直径方向での位置決め部として機能する。
コイルばね166は、その伸縮方向(図31の上下方向)の下端側が第1段部162bの底面に固着され、上端側がスライダ部材170に固着されている。スライダ部材170は、第1段部162bの鉛直方向周面を囲繞する円筒部170aが、該鉛直方向周面上にロッド部162の軸線方向に延在して形成されたガイド凸部172によりガイドされることで上下動自在に構成されている。前記円筒部170aには、その直径方向にフランジ部170bが突設されている。フランジ部170bの下面には、コイルばね166の上端側が固着され、上面には、軸受174が配設されている。このようなコイルばね166のばね定数は、該コイルばね166に対して、スライダ部材170及び軸受174の重量と、コイルばね166自体の自重とが作用した状態において、軸受174の上面が、軸受168の上面と同位置となる位置(原位置)となるように設定されている。
インナーガイド部材164は、その外周面により、第1コアプレート114や第2コアプレート118の内周側の環状縁部を支持及びガイドする機能を果たす。このようなインナーガイド部材164は、第1コアプレート114等の内周側に当接する第1ガイド部材(駒部材)176と、該第1ガイド部材176の内側に板ばね178を介して配置された第2ガイド部材(駒部材)180とからなる組(セット)がリング状に複数組(本実施形態の場合、12組)並べられた外郭部材182と、該外郭部材182の内周側に配置された中央部材184とから構成されている(図30参照)。
第2ガイド部材180の内周側には、高さ方向略中央部から上下方向に向かって拡径しながら傾斜する傾斜面180a及び180bが形成されている。中央部材184は、これら傾斜面180a及び180bに対応した円錐台形状からなる一対の楔部材186a及び186bを有する。楔部材186a、186bの軸中心にはねじ孔187が貫通している。ねじ孔187にはボルト169が螺合される。楔部材186a及び186bの間に挟まれる部分には、スペーサ(シム)188が挿入されている。スペーサ188は、ボルト169がねじ孔187に螺入され、楔部材186a及び186bが互いに締結された際に、これら楔部材186a及び186bの軸線方向(上下方向)での位置を規定するものである。
従って、インナーガイド部材164では、楔部材186a及び186b間に挿入されるスペーサ188の板厚を変更することで、ボルト169を締結した際の楔部材186a及び186bの軸線方向での位置(楔部材186a及び186bの間隔)を適宜設定可能である。これにより、第2ガイド部材180の直径方向での位置が、傾斜面180a及び180bと、楔部材186a及び186bとの間の摺接作用によって適宜調整される。
すなわち、スペーサ188の板厚を薄くすると、楔部材186aと楔部材186bとが互いに近接するため、第2ガイド部材180が直径方向に拡がる方向で押圧される。このため、外郭部材182が直径方向(放射方向)に拡径されて、第1ガイド部材176とリング部材158との間の隙間189の寸法R11(図30参照)が収縮される。反対に、スペーサ188の板厚を厚くすると、楔部材186aと楔部材186bとが互いに離間するため、外郭部材182が直径方向(放射方向)に縮径される。このため、第1ガイド部材176とリング部材158との間の隙間189の寸法R11が拡大される。
また、第2ガイド部材180の外周側には環状溝部180cが周設され、該環状溝部180cには、第1ガイド部材176の内周側に周設された環状凸部176bが係合している。従って、第1ガイド部材176と第2ガイド部材180とは、上下方向に対して互いに一体に構成される。
基本的には、以上のように構成されるインナーガイド部材164において、外郭部材182の外周面、すなわち、リング状に配置された各第1ガイド部材176で構成される外周面は、第1コアプレート114や第2コアプレート118の内周側の環状縁部に対応する形状とされている。従って、リング状に配置された各第1ガイド部材176で構成される外周面には、軸線方向に延在する複数の凹部176aが形成され(図30参照)、これら凹部176aは、第1コアプレート114及び第2コアプレート118の内周側に形成された凸部24と係合可能とされる。
図31及び図32に示すように、回転駆動源、ここではサーボモータ159は、上部枠体154の環状溝部154bに固着されたステータ159bと、アウターガイド部材157を構成する可動枠体156の環状溝部156bに固着されたロータ159aとから構成される。この場合、ロータ159aは、可動枠体156の外周面を帯状に囲繞するように周設されており、ステータ159bは、このようなロータ159aと対向するように配設されている。すなわち、サーボモータ159は、回転駆動対象であるアウターガイド部材157を構成する可動枠体156にロータ159aが直接配設された、いわゆるダイレクトドライブモータとして構成されている。
従って、サーボ制御部190の制御下に、ステータ159bに設けられた図示しないコイルに電流を流すことにより、ロータ159aを所定角度回転させることが可能であり、該ロータ159aと共に、アウターガイド部材157(可動枠体156及びリング部材158)を高精度に、しかも迅速に所定角度回転させることができる。この際、アウターガイド部材157の近傍にセンサ191を配置して、該センサ191により検出されるアウターガイド部材157の回転角度情報及び角度位置(位相)情報をサーボ制御部190に入力してもよい。そうすると、サーボ制御部190では前記回転角度情報及び角度位置情報に基づき、サーボモータ159をフィードバック制御することができ、一層高精度な回転制御が可能となる。なお、このサーボモータ159に代えて、例えば、空気圧で駆動させるロータリアクチュエータ等を用いてもよい。
アウターガイド部材157を構成する可動枠体156と、上部枠体154との間には、3つの軸受192〜194が配設されており、これにより、アウターガイド部材157の円滑な回転動作が確保されている。さらに、軸受192〜194は、アウターガイド部材157に対するインナーガイド部材164や後述するパンチ196からの押圧力を受ける受け部としての機能も有する。
以上のように構成された抜き落とし金型46aでは、インナーガイド部材164を構成する第1ガイド部材176の外周面と、アウターガイド部材157を構成するリング部材158の内周面との間に形成された隙間189の寸法R11は(図30参照)、ボルト169による楔部材186a、186bの位置調整下に、第1分割コアプレート112や第2分割コアプレート116の半径方向の幅である寸法R12(図2、図30及び図31等参照)よりも多少小さく設定されている(R11<R12)。これにより、抜き落とし金型46aでは、前記隙間189を、抜き落とされた第1分割コアプレート112等を保持するための保持部189として機能させることができる。
この場合、抜き落とし金型46aの稼動初期、すなわち、分割コアプレートの積層開始時には、第1コアプレート114及び第2コアプレート118を所定枚数(本実施形態の場合、合計50枚)積層した積層体と略同形状からなる第1及び第2ダミー部材198a及び198bを前記保持部189に嵌挿させておく。これにより、インナーガイド部材164を構成する各部品(第1ガイド部材176や第2ガイド部材180、中央部材184等)を一体として、所望の位置で確実に位置決め保持することができ、これら第1ガイド部材176等が脱落することを確実に防止することができる。
従って、抜き落とし金型46aでは、板部材32のパイロット孔47とパイロットピンとの位置決め作用下に、先ず、外形抜き戻し金型40aにて板部材32に抜き戻された1枚目の第1分割コアプレート112がインナーガイド部材164上を通過して、保持部189の上部にセットされる(図31参照)。すなわち、前記1枚目の第1分割コアプレート112は、図30中の抜き落とし位置Dにて抜き落とし金型46aにセットされる。
次いで、図31に示すように、パンチ196を下降させ板部材32から前記1枚目の第1分割コアプレート112を抜き落とす。
そうすると、抜き落とされた第1分割コアプレート112は、保持部189において、内周側の円弧状縁部がインナーガイド部材164の外周面に摺接すると共に内圧を付与され、外周側の円弧状縁部がリング部材158の内周面と摺接すると共に側圧(外圧)を付与される。すなわち、抜き落とされた第1分割コアプレート112は、凸部24と凹部176aとの位置決め作用によって内周側がインナーガイド部材164により支持される一方、外周側にアウターガイド部材157を構成するリング部材158からの圧力が付与されることで、保持部189(隙間189)に圧入されて嵌合される。なお、凸部24を凹部として形成し、凹部176aを凸部として形成しても同様な位置決め作用を得ることができる。
ここで、インナーガイド部材164の第1ガイド部材176は、第2ガイド部材180に対して板ばね178を介して弾性支持されている。このため、第1分割コアプレート112が保持部189に圧入される際、当該第1分割コアプレート112の加工誤差や加工ロットの違いによる幅寸法R12のばらつきや、インナーガイド部材164及びアウターガイド部材157の磨耗等による保持部189の幅寸法R11のばらつき等の影響をほとんど受けずに、保持部189により第1分割コアプレート112を安定して保持することができる。さらに、第1分割コアプレート112が保持部189に対して無理に押し込まれることを防止できるため、該第1分割コアプレート112や第1ガイド部材176、リング部材158に変形や破損を生じることを有効に防止でき、保持部189に対する分割コアプレートの円滑な圧入が可能となる。
従って、第1分割コアプレート112は、図31中の2点鎖線で示すように、保持部189にて保持され(図33A参照)、同時に、その下面側で第1及び第2ダミー部材198a及び198bを当該第1分割コアプレート112の板厚分だけ下方に押し下げる。そうすると、最下部に保持された第1ダミー部材198aは、軸受174を下方に押圧する。このため、第1ダミー部材198aは、軸受174及びスライダ部材170と共にコイルばね166の付勢力に抗して該コイルばね166を第1分割コアプレート112の板厚分だけ収縮させる。
この際、インナーガイド部材164を構成する第2ガイド部材180及び中央部材184は、油圧シリンダ機構161を構成するロッド部162により、軸受168を介して背圧を付与されてバックアップされているため、パンチ196による下方への押圧力によっても変位せず、所定の位置(原位置)に保持される。さらに、第1ガイド部材176は、その環状凸部176bが第2ガイド部材180の環状溝部180cに係合しているため、該第1ガイド部材176についても、第1分割コアプレート112や第1及び第2ダミー部材198a及び198bと共に、下方に押し下げられることはなく、原位置に保持される。
また、このような第1分割コアプレート112の保持部189への圧入に際し、インナーガイド部材164(第1ガイド部材176)とアウターガイド部材157(リング部材158)には、パンチ196からの押圧力により、直径方向(放射方向)及び軸線方向(鉛直下方向)への押圧力が付与される。そこで、抜き落とし金型46aでは、軸受168がインナーガイド部材164の軸線方向への押圧力の受け部として機能すると共に、軸受192〜194がアウターガイド部材157(可動枠体156)の直径方向及び軸線方向への押圧力の受け部として機能する。このため、インナーガイド部材164やアウターガイド部材157(可動枠体156)が、ロッド部162や上部枠体154に対して極度に押圧されて、次工程以降での円滑な回転動作が阻害されることを有効に防止することができる。さらに、軸受192、193は、板ばね178の付勢力によるインナーガイド部材164からの直径方向への押圧力の受け部としても機能する。
以上のようにして1枚目の分割コアプレート112の抜き落としを行う工程(上記第1の実施形態の第23工程に相当)が完了するが、続けて、次工程以降での抜き落とし金型46aの動作について説明する。
先ず、上記のように抜き落とされた1枚目の第1分割コアプレート112が保持部189にて保持された状態で(図33A参照)、サーボモータ159を駆動させ、アウターガイド部材157を構成する可動枠体156及びリング部材158を所定角度θ11(本実施形態では120°)旋回させる(図33B参照)。
この場合、上記した、寸法R11<寸法R12、の関係により、保持部189には第1分割コアプレート112や、第1及び第2ダミー部材198a及び198bが圧入されており、しかも第1分割コアプレート112の凸部24や第1及び第2ダミー部材198a及び198bの図示しない凸部がインナーガイド部材164の凹部176aに係合している。このため、アウターガイド部材157の回転は、保持部189に圧入された第1分割コアプレート112等を介してインナーガイド部材164へと伝達される。従って、インナーガイド部材164についても油圧シリンダ機構161によるバックアップ作用下に、アウターガイド部材157と同期して前記所定角度θ11旋回することになる。当然、保持部189にて保持されている第1分割コアプレート112もアウターガイド部材157と共に所定角度θ11旋回する。
このような各部材の回転動作に際して、アウターガイド部材157を構成する可動枠体156は、その側面が軸受192、193により支承され、その下面が軸受194により支承されている。また、インナーガイド部材164は、第1ガイド部材176の下面が軸受174により支承され、第2ガイド部材180の下面が軸受168により支承されている。さらに、保持部189に圧入された第1ダミー部材198aの下面も軸受174により支承されている。従って、本実施形態の場合、抜き落とし金型46aでは、サーボモータ159からの回転駆動力が各部材同士の摩擦等で減衰されることがほとんどなく、アウターガイド部材157の回転が第1分割コアプレート112や、第1及び第2ダミー部材198a及び198bへと円滑に且つ確実に伝達される。このため、第1分割コアプレート112の所定角度θ11の旋回及び位置決めを極めて高精度に且つ迅速に行うことができる。
次いで、2枚目の第1分割コアプレート112を前記1枚目の第1分割コアプレート112と同様、保持部189へと抜き落とし圧入する。そうすると、図33Bに示すように、抜き落とされた2枚目の第1分割コアプレート112が、1枚目の第1分割コアプレート112に対して周方向に並んで配置される。
続いて、アウターガイド部材157をさらに所定角度θ11旋回させた後、3枚目の第1分割コアプレート112を保持部189へと抜き落とし圧入する。そうすると、抜き落とされた3枚目の第1分割コアプレート112は、1枚目及び2枚目の第1分割コアプレート112と並んで同一平面上に配置され、リング状の第1コアプレート114が形成される。このように形成された第1コアプレート114は、ロータコア10cの最下層(第1層)を構成する。
さらに、図33Cに示すように、保持部189に第1コアプレート114が保持された状態で、先ず、アウターガイド部材157を所定角度θ12(本実施形態では30°)旋回させることにより、第1コアプレート114を所定角度θ12旋回させる。
次いで、1枚目(合計では4枚目)の第2分割コアプレート116を前記第1コアプレート114上に積層するように抜き落とし、保持部189に圧入する。
この場合、第1コアプレート114を、予め所定角度θ12旋回させてあるので、抜き落とされた1枚目の第2分割コアプレート116が、第1コアプレート114における2枚の第1分割コアプレート112(ここでは、1枚目と3枚目の第1分割コアプレート112)同士が当接した端部B1上に重なるように積層される(図33C参照)。また、このように抜き落とされた第2分割コアプレート116は、第1分割コアプレート112の場合と同様、パンチ196による打ち抜き荷重(押圧力)により、保持部189に嵌合されると同時に、その下部にある第1分割コアプレート112や第1及び第2ダミー部材198a及び198bを押し下げながら積層される。
従って、前記1枚目の第1分割コアプレート112の孔部20と、前記3枚目の第1分割コアプレート112の孔部20に対し、抜き落とされた前記1枚目の第2分割コアプレート116の各位置決め凸部26aが係合することになる。
続いて、アウターガイド部材157を所定角度θ11(120°)旋回させ、第1コアプレート114及び1枚目の第2分割コアプレート116を所定角度θ11旋回させる。そして、2、3枚目(合計では5、6枚目)の第2分割コアプレート116を抜き落とす。これにより、第1層である第1コアプレート114上に、ロータコア10cの第2層となる第2コアプレート118が、前記第1層と所定角度θ12(30°)ずれた状態で積層される。この際、第1コアプレート114の各孔部20には、図24に示されるロータコア10bの場合と略同様に、第2コアプレート118の位置決め部26の各位置決め凸部26aが係合される。
次いで、アウターガイド部材157を所定角度θ12(30°)旋回させ、第1コアプレート114(第1層)及び第2コアプレート118(第2層)を所定角度θ12旋回させた後、4枚目(合計では7枚目)の第2分割コアプレート116を前記第2層の上に抜き落とす。そして、第1コアプレート114(第1層)、第2コアプレート118(第2層)及び4枚目の第2分割コアプレート116を所定角度θ11(120°)旋回させて、5、6枚目(合計では8、9枚目)の第2分割コアプレート116を抜き落とす。
これにより、前記第2層の上に、ロータコア10cの第3層となる第2コアプレート118が、第2層と所定角度θ12(30°)ずれた状態で積層される。この場合、第2層の第2コアプレート118の位置決め凹部26bには、第3層の第2コアプレート118の位置決め凸部26aが係合する。
その後、第1成形装置31a及び第2成形装置31bの抜き落とし金型46aでは、プレート積層数が所定の層数(本実施形態では、最下層の第1コアプレート114上に第2コアプレート118が49枚積層された合計50層)まで積層動作が継続される。そして、第1コアプレート114及び第2コアプレート118が所定の層数(第50層)まで積層されると、合計50層からなる積層体111aが保持部189にて保持された状態で、第2ダミー部材198bの上部に形成される(図34参照)。
なお、このように形成された積層体111aは、各分割コアプレート112、116が保持部189に圧入により嵌め込まれながら積層されている。しかも、第1コアプレート114と第2コアプレート118との間では、各孔部20と各位置決め凸部26aとが確実にかしめられ、同様に、第2コアプレート118同士の間では、各位置決め凹部26bと各位置決め凸部26aとが確実にかしめられている。このため、積層体111aの各層は一体に圧着成形されており、例えば、搬送時等での軽い衝撃等では積層ずれ(位置ずれ)を生じない程度の強度を有する。また、積層体111aでは、リング部材158(アウターガイド部材157)を回転させながら積層しているため、例えば、積層時に各層間での前記位置決め凸部26aと位置決め凹部26bの位置が多少ずれて積層されているような場合であっても、該リング部材158の回転による各層の円環外周面への摺接作用により、軸合わせ作用が営まれ、これらのずれが是正され、より正確に圧着される。
このように積層体111aが成形されると、該積層体111aによりコイルばね166に抗してスライダ部材170を押し下げた第1ダミー部材198aは、保持部189から完全に離脱した状態となる(図34)。そこで、該第1ダミー部材198aを、装置外へと搬出するが、この場合の搬出方法は、後述する図35A〜図35Cにて示される積層体111aの搬出方法と略同様であるため、詳細な説明は省略する。
抜き落とし金型46aでは、第1ダミー部材198aが搬出されると、続けて、前記圧着成形された積層体111a上に、第2回目における1枚目(前記第1工程からでは151枚目)の第1分割コアプレート112が積層され、順次、第1分割コアプレート112や第2分割コアプレート116が上記説明した各工程と同様に、所定の層数まで積層される。
そうすると、積層体111a上に新たな積層体111bが形成される。この状態では、第2ダミー部材198bが、保持部189から完全に離脱した状態となるため、該第2ダミー部材198bについても上記した第1ダミー部材198aの場合と同様に装置外へと搬出する。なお、積層体111bの最下層(第1層)は、積層体111aの最下層と同様に第1コアプレート114により構成されており、その下面は平坦面とされ、位置決め凸部26aを有していない。従って、積層体111bの最下層(第1層)が、積層体111aの最上層(第50層)の位置決め凹部26bに対して係合、圧着されてしまうことはなく、積層体111aと積層体111bとは、それぞれ別体に成形される。
次いで、積層体111b上に、さらに、第3回目における1枚目(前記第1工程からでは301枚目)の第1分割コアプレート112が積層され、順次、第1分割コアプレート112や第2分割コアプレート116が上記のように説明した各工程と同様に、所定の層数まで積層される。
そうすると、図35Aに示すように、積層体111b上に新たな積層体111cが形成される。この場合にも、当然、積層体111bと積層体111cとは別体に成形されており、最初に成形された積層体111aが、スライダ部材170を押し下げて、保持部189から完全に離脱した状態となっている。なお、積層体111cの積層途中では、積層体111aはコイルばね166によって常に、その上方の積層体111bとの間で狭持された状態である。このため、例えば、積層体111aを構成する第1コアプレート114等の自重によって、各孔部20と各位置決め凸部26aとの係合部(かしめ部)や、各位置決め凹部26bと各位置決め凸部26aとの係合部(かしめ部)が分離して、積層体111aが分解してしまうことを確実に防止することができる。
次いで、図35Aに示す状態から、油圧シリンダ機構161のロッド部162を下降させることにより、積層体111aを下部枠体160の上面に載置することができる(図35B参照)。
従って、図35Cに示すように、下部枠体160の上面上で搬出部材163を水平方向(矢印Y方向)に移動させることにより、積層体111aを抜き落とし金型46aから搬出し、次工程(本実施形態の場合、ピン22の嵌挿工程)へと容易に搬送することができる。この場合、積層体111b、111cが保持部189、すなわち、リング部材158とインナーガイド部材164との間に圧入されているため、油圧シリンダ機構161のロッド部162が下降した際にも、インナーガイド部材164が落下してしまうことはない。しかも、インナーガイド部材164の外周部である第1ガイド部材176は板ばね178により直径方向(放射方向)に付勢されているため、インナーガイド部材164の落下が一層確実に防止される。
当然、ロータコア製造ライン30aにおいても、上記したロータコア製造ライン30の場合と同様に、積層体111c上に新たな積層体を形成し、このような作業を連続して実施することで、1枚の帯状の板部材32から、ロータコア10cを構成する積層体を連続して形成し、自動的に搬出させることができる。
なお、上記のように成形した積層体111a等に対して、ピン嵌挿装置を用いてピン22を嵌挿させ、その後、加熱・冷却して接着剤23により各層間を強固に結合してロータコア10cを成形する方法は、上記した第1の実施形態の場合と略同様であるため説明を省略する。
以上のように、第3の実施形態に係るロータコア10cの製造方法及び装置によれば、上記第1及び第2の実施形態の場合に加えて、さらに次のような効果を得ることができる。
すなわち、抜き落とし金型46aを構成するサーボモータ159では、ロータ159aがアウターガイド部材157を構成する可動枠体156に直接配設されると共に、ステータ159bがアウターガイド部材157を支承する上部枠体154に直接配設されている。すなわち、サーボモータ159は、アウターガイド部材157に直接的に配設された、いわゆるダイレクトドライブモータとして構成されている。このため、例えば、モータからベルトを介してアウターガイド部材157を回転駆動させるような構成に比べて、所望の抜き落とし位置(インデックス)の位置決めに対する精度の向上や高速化が可能となり、ロータコア10cの製造時間を一層短縮することができる。
また、抜き落とし金型46aでは、積層される第1分割コアプレート112等に対して、アウターガイド部材157及びインナーガイド部材164により側圧(外圧)及び内圧を付与することにより、第1分割コアプレート112等を保持部189にて確実に保持することができる。しかも、インナーガイド部材164の第1ガイド部材176は、第2ガイド部材180に対して板ばね178を介して支持されている。このため、第1分割コアプレート112等の加工誤差や加工ロットの違いによる幅寸法R12のばらつきや、インナーガイド部材164及びリング部材158の磨耗等による前記保持部189の幅寸法R11のばらつきが生じている場合であっても、第1分割コアプレート112等を保持部189に対して再現性よく且つ安定して圧入し、保持させることができる。さらに、板ばね178による第1ガイド部材176の弾性支持により、第1分割コアプレート112等が保持部189に対して無理に押し込まれることを防止できるため、分割コアプレートや第1ガイド部材176、リング部材158等に変形や破損を生じることを有効に防止でき、保持部189に対する分割コアプレートの一層円滑な圧入が可能となる。
従って、本実施形態における抜き落とし金型46aでは、分割コアプレートを抜き落とすべき位置を確定するインデックス機能の一層の高速化及び高位置決め精度化が可能となり、分割コアプレートを確実に保持可能な安定した積層(かしめ)動作を実現することができる。これにより、積層後の積層体、すなわち、ロータコア10cの品質を一層向上させることができる。
さらに、分割コアプレートを抜き落とすパンチ196や、板ばね178の付勢力によるインナーガイド部材164からの押圧力に対抗するために、リング部材158を支持する可動枠体156におけるロータ159aの両脇に軸受192、193を配置すると共に、さらに、軸受194を可動枠体156の下面に配置している。これにより、リング部材158や可動枠体156の歪みや変形を有効に防止することができ、安定して積層される分割コアプレートの外周側を支持することができる。また、軸受192、193を配置したことにより、サーボモータ159に対して不要な応力がかかることを防止することができ、当該サーボモータ159の動作不良も防止することができる。
なお、このようなロータコア製造ライン30aを構成する抜き落とし金型46aを他のロータコア10a、10bの製造に用いてもよいことは勿論であり、ロータコア10cをロータコア製造ライン30で製造することも当然可能である。当然、ロータコア10cにおいても、ピン22のみによる結合、又は、接着剤23のみによる結合だけでも十分な強度を得ることが可能であり、これにより、製造コストを一層低減させることができる。
次に、本発明の第4の実施形態に係るリングコアの製造方法及び製造装置について説明する。図36は、本発明の第4の実施形態に係るリングコアの製造装置により製造されたロータコア(リングコア)10dの平面図である。
ロータコア10dは、図23に示されるロータコア10bと比較すると、凸部24及び位置決め部26の代わりに、角形凸部(プレート側角形凸部)224及び位置決め部(結合部、かしめ部)226が設けられている点が相違する。
角形凸部224は、上記した略半円状の凸部24と異なり、略矩形状に形成されている。すなわち、角形凸部224には、分割コアプレート212、216の円弧の方向に略直交し且つ略直径方向に延びた一対の壁部(側端部)228、228が設けられている。
位置決め部226は、上記した円形状の位置決め部26と異なり、略矩形状からなる。位置決め部226は、図39に示すように、分割コアプレート212、216の下面側に形成され下方に突出した位置決め凸部226aと、上面側で前記位置決め凸部226aの内壁面で形成された位置決め凹部226bとから構成されている。これにより、各位置決め部226は、位置決め凸部226aが、その下層のコアプレート214、218の位置決め凹部226bに係合し互いにかしめられることで、上記した位置決め部26と同様、各層を積層する際の位置決め部、及び、各層をある程度の強度で結合する結合部として機能する。
従って、角形凸部224を設けた分割コアプレート212、216に対応するため、本実施形態の場合には、上記した抜き落とし金型46に代えて、図37に示すように、各角形凸部224に対応する角形凹部262aを設けたインナーガイド部材262を備える抜き落とし金型46bを用いてロータコア10dの成形が行われる。この場合、角形凹部262aの幅L1は、角形凸部224の幅L2(壁部228間の距離)よりも多少小さく設定されている(L1<L2)。
本実施形態の場合、角形凹部262aの幅L1は、角形凸部224の幅L2よりも小さく設定されている。このため、図38に示されるように、分割コアプレート212(216)を軸方向を中心として回転させながら積層し、各層の圧着(かしめ)を行う際、分割コアプレート212(216)の角形凸部224がインナーガイド部材262の角形凹部262a内に圧入され嵌合される。すなわち、角形凸部224の壁部228が角形凹部262aの内壁面から圧力を付与される。
従って、本実施形態では、分割コアプレート212(216)が抜き落とし金型46bにて積層される際、分割コアプレート212(216)は、保持部51内において、外周側の円弧状縁部がアウターガイド部材58の内周面と摺接すると共に側圧(外圧)F1を付与され、内周側の円弧状縁部がインナーガイド部材262の外周面に摺接すると共に内圧F2を付与され、さらに、角形凸部224の壁部228が角形凹部262aに摺接すると共に圧力F3を付与される(図38参照)。
以上のように、本実施形態によれば、インナーガイド部材262を構成する角形凹部262aの幅L1を、角形凸部224の幅L2よりも小さく設定したことにより、保持部51に圧入された分割コアプレート212(216)には、上記した3方向からの圧力F1〜F3が作用する。このため、簡便な構成を用いながらも、積層される分割コアプレート212(216)の回転方向での保持力を一層向上させて、保持部51内にて安定して保持することができる。従って、一層高効率に且つ迅速にロータコア10dを成形することができ、ロータコア10dの品質精度を一層向上させることができる。
なお、角形凸部242の形状は略平行した一対の壁部282を有する矩形以外にも、例えば、一対の壁部282を非平行とした台形等であってもよく、要は、分割コアプレートの凸部に圧力を付与して保持部内での保持力を向上させることができる構成であればよい。
なお、角形凸部224の形状は略平行した一対の壁部228を有する矩形以外にも、例えば、一対の壁部228を非平行とした台形等であってもよく、要は、分割コアプレートの凸部に圧力を付与して保持部内での保持力を向上させることができる構成であればよい。
さらに、インナーガイド部材262と略同様な角形凹部262aを、例えば、上記したインナーガイド部材164に適用し、抜き落とし金型46aによってロータコア10dを成形するようにすることも当然可能である。
以上、上記各実施形態において説明したロータコア10a、10cでは、ピン22を用いると共に、該ピン22に非磁性材料を用いている。また、ピン22を嵌挿する孔部20(凸部24)を、マグネット孔28中心と同一位相位置、又は、隣り合うマグネット孔28同士の間の中心位相位置にレイアウトしている。この際、ピン22は、前記凸部24によってロータコアの内径よりも該ロータコアの中心軸寄りの位置にオフセットされている。当然、ロータコアの内径と同一ピッチでもよい。これにより、ピン22がマグネット孔28に嵌め込まれるマグネット等による磁路の妨げとなることを有効に防止することができる。
具体的には、ピン22が非磁性材料により形成されているため、ロータコアを通る磁気の流れである磁束が該ピン22を避けて通るため、渦電流の発生による発熱が抑えられ、燃費や出力の低下を抑えることが可能となる。磁束は非磁性体を通らないからである。この場合、仮にピン22がS50Cのような金属の場合には、磁束はピン22の中を通るため発熱し、損失を生じることがある。
しかも、ピン22を上記各条件(例えば、マグネット孔28中心と同一位相位置又は隣接するマグネット孔28同士の間の中心位相位置や、ロータコアの中心軸寄りの位置への配置)に配置している。すなわち、ピン22を磁束密度の低い位置にレイアウトしているため、燃費や出力の低下を一層抑えることが可能である。そして、このような各条件で磁場解析を行ったところ、誘起電圧曲線のピーク値が、ピン22を用いたもの(例えば、ロータコア10a及び10c)と、ピン22を用いていないもの(例えば、ロータコア10b)とで略同様となる結果が得られ、これらの間にピン22の有無による出力等での性能差がほとんどないことがわかった。
また、上記した各ロータコアでは、各分割コアプレートが交互にレンガ積みされるように積層されている。このため、ロータコアの使用時にピンに作用するせん断荷重を有効に分散することができる。
さらに、各ロータコアでは、各分割コアプレートの端部(突き当て面)がストレート形状とされている。このため、ロータコアの使用時に、遠心力により前記突き当て面に隙間が発生した場合であっても均一な隙間が確保され、部分的な接触に起因した磁束の集中や磁気飽和による誘起電圧出力波形の乱れを有効に抑制することができ、位相角度検出感度を向上させることができる。
また、上記各ロータコアにおいて、ピン22による結合を行う場合には、積層時の位置決め部26がピン22の嵌挿時に排出される。このため、該位置決め部26の残留による磁気特性劣化を抑制することができる。
なお、各層を構成する分割コアプレートの枚数は、上記各実施形態では3枚としたが、これに限られず、その枚数を変更した場合には前記角度θ1〜θ3、θ11、θ12等も合わせて変更すればよい。同様に、凸部24の設置数やピン22の設置数も適宜変更可能である。
また、ロータコア製造ライン30、30aを構成する各金型の配置等は変更可能であり、該各金型の構成も製造されるロータコアの形状等に応じて変更可能である。
上記ロータコア製造ライン30、30aでは板部材32から同時に2つのロータコアを製造できるものとして説明したが、これらは1つのみ又は3つ以上のものとしてもよい。
さらに、上記各実施形態において、第1分割コアプレート等は、例えば、マグネット孔が6個形成されたものとして形成することも可能である。
さらにまた、本発明に係るリングコアの製造装置は、例えば、固定子であるステータコアの成形についても有効に適用することができる。
なお、本発明は上記各実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは当然可能である。