<1.第1実施形態>
<1−1.装置構成>
図1および図2は、本発明の第1実施形態に係るアライメント装置1(1Aとも称する)を示す図(縦断面図)である。また、図3は、チャンバ2内を示す斜視図である。なお、各図においては、便宜上、XYZ直交座標系を用いて方向等を示している。
このアライメント装置1は、2つの対象物(ここでは半導体チップ21および基板31)の水平方向における位置合わせを行った後に、当該2つの対象物を接合する装置である。なお、このアライメント装置1は、接合装置あるいはチップボンディング装置などとも称される。
このアライメント装置1は、半導体チップ21と基板31との接合処理等の処理空間であるチャンバ2を備える。
チャンバ2内には、ツール23と昇降部材25とが備えられる。また、昇降部材25の内部には、ミラー29と、当該ミラー29を固定するミラー取付部材28とが設けられている。
ツール23は、半導体チップ21を保持する保持部であり、昇降部材25の下端部に装着される。なお、ツール23としては、半導体チップ21の種類等に応じた適宜の形状のものが選択されて装着される。
昇降部材25は、Z軸昇降駆動機構27によってZ軸方向に移動(昇降)され、半導体チップ21とツール23とは、昇降部材25のZ軸方向の移動動作に連動して移動(昇降)される。Z軸昇降駆動機構27は、不図示の圧力検出センサにより検出した信号に基づいて、接合時の加圧力を制御することができる。
ミラー29は、光の進路(光路)を変更する光路変更手段であり、略矩形の平面形状を有している。また、ミラー29は、水平面に対して45度傾いた状態でミラー取付部材28に固定されている。ミラー取付部材28は、略三角柱形状を有しており、図1に示すようにミラー取付部材28の断面は直角二等辺三角形形状を有している。ミラー29は、当該ミラー取付部材28の斜面(断面視で当該直角二等辺三角形の斜辺、に対応する面)に取り付けられており、ミラー29の反射面は、斜め下方を向いている。また、ミラー29は、昇降部材25の内部に固定されており、昇降部材25の移動動作に連動して移動するとともに、昇降部材25に固定されたツール23の移動動作にも連動して移動する。
このミラー29は、当該ミラー29の−Y側(図1の左側)から+Y方向(図1の右向き)に進行する光を−Z方向(図1の下向き)に反射する。また、逆に、ミラー29は、ミラー29の−Z側(図1の下側)から+Z方向(図1の上向き)に進行する光を−Y方向に(図1の左方向)に反射する。
また、チャンバ2内には、基板31を支持(保持)するステージ33と、ステージ33を支持するアライメントテーブル35と、アライメントテーブル35を支持する回転テーブル37とがさらに備えられる。
回転テーブル37は、不図示の回転駆動機構によりθ方向(Z軸回りの回転方向)に回転する。
アライメントテーブル35は、X軸方向およびY軸方向に移動(並進移動)される。アライメントテーブル35は、比較的大きな可動範囲(例えば、100mm(ミリメートル)程度)を有するとともに、比較的粗い精度(例えば、0.05mm(ミリメートル)程度)で位置決めされる。そのため、アライメントテーブル35は、粗動テーブルとも称される。
ステージ33は、基板31を保持する保持部であり、アライメントテーブル33と同様に、X軸方向およびY軸方向に移動(並進移動)される。ただし、ステージ33は、ピエゾアクチュエータ等で構成される駆動機構により微小駆動される。ステージ33は、比較的小さな可動範囲(例えば、100μm(マイクロメートル)程度)を有するとともに、比較的高い精度(例えば、0.01μm(マイクロメートル)程度)で位置決めされる。なお、ステージ33は、微動テーブルなどとも称される。
後述するように、アライメントテーブル35を比較的粗い精度で位置決めした後に、ステージ33を微小駆動して微調整することによって、ステージ33ひいては基板31を非常に高精度に位置決めすることが可能である。
また、アライメント装置1は、図2に示すように、スライド部材40とX軸スライド移動機構45とをさらに備える。
X軸スライド移動機構45は、スライド部材40をX軸方向に移動(並進移動)させる駆動機構である。スライド部材40は、X軸スライド移動機構45によって高精度に位置決めされる。
スライド部材40は、ツール23に保持された半導体チップ21とステージ33に保持された基板31とが鉛直方向(Z方向)に離間して配置された状態において、当該半導体チップ21と当該基板31との間隙に対して挿脱可能に設けられている。
また、スライド部材40の内部には、2つのミラー41,43がX軸方向に配列されて固定されている(図3参照)。
ミラー41は、光の進路(光路)を変更する光路変更手段であり、略矩形の平面形状を有している。ミラー41は、水平面に対して45度傾いた状態(図1参照)でミラー取付部材42に固定されている。詳細には、ミラー取付部材42は、略三角柱形状を有しており、図7にも示すようにミラー取付部材42の断面は直角二等辺三角形形状を有している。ミラー41は、当該ミラー取付部材42の斜面(断面視で当該直角二等辺三角形の斜辺、に対応する面)に取り付けられている。ミラー41の反射面は、斜め上方を向いている。
このミラー41は、当該ミラー41の−Y側(図7の左側)から+Y方向(図7の右向き)に進行する光を+Z方向(図7の上向き)に反射する。また、逆に、ミラー41は、当該ミラー41の+Z側(図7の上側)から−Z方向(図7の下向き)に進行する光を−Y方向に(図7の左方向)に反射する。
ミラー43も、光の進路(光路)を変更する光路変更手段であり、略矩形の平面形状を有している。ミラー43は、水平面に対して45度傾いた状態(図9参照)でミラー取付部材44に固定されている。詳細には、ミラー取付部材44は、略三角柱形状を有しており、図9に示すようにミラー取付部材44の断面は直角二等辺三角形形状を有している。ミラー43は、当該ミラー取付部材44の斜面(断面視で当該直角二等辺三角形の斜辺、に対応する面)に取り付けられている。ミラー43の反射面は、斜め下方を向いている。
このミラー43は、当該ミラー43の−Y側(図9の左側)から+Y方向(図9の右向き)に進行する光を−Z方向(図9の下向き)に反射する。また、逆に、ミラー43は、当該ミラー43の−Z側(図9の下側)から+Z方向(図9の上向き)に進行する光を−Y方向に(図9の左方向)に反射する。
なお、スライド部材40においては、ミラー41,43などに対応する部分には、光を通過させる孔(不図示)が設けられている。そのため、スライド部材40の材質等が画像の取得に与える影響は、非常に少ない。
また、アライメント装置1は、撮像部10(10Aとも称する)を備える。図3に示すように、撮像部10Aは半導体チップ21と基板31との対向空間に対して−Y側に配置される。当該撮像部10Aの光軸は、Y軸方向に平行に配置される。換言すれば、撮像部10Aの光軸は、半導体チップ21と基板31との対向方向(Z方向)とスライド部材40の進退方向(X方向)との双方に対して垂直である。また、撮像部10Aは、チャンバ2に固定された状態で配置される。なお、これに限定されず、撮像部10をZ方向に移動可能に設けるようにしてもよい。
この撮像部10Aは、対象物21(22),31の画像を撮像する撮像素子13(図17参照)等を備えるとともに、当該対象物21(22),31に対して照明光(具体的には、赤外光)を照射する照明系をも備える。この照明系は、撮像素子13で受光される光の光軸と照明光の光軸とを(一部で)共有する同軸照明系である。
具体的には、撮像部10Aは、撮像素子13に加えて、光源11とハーフミラー15とをさらに備える(図17参照)。ここでは、光源11として、赤外光を照射するものを用いる。また、ハーフミラー15は、水平面に対して45度傾いた状態で設置され、光源11から照射された−Z方向に向かう光を+Y方向に反射する。なお、ここでは照明光として赤外光を用いる場合を例示するが、これに限定されず、赤外光ではなく可視光等を照明光として用いるようにしてもよい。
この実施形態においては、半導体チップ21に関する撮影画像GA1の取得動作、基板31に関する撮影画像GA2の取得動作、ならびにガラスチップ22と基板31とに関する撮影画像GA3の取得動作においては、それぞれ、撮像部10Aの同軸照明系からの照明光(赤外光等)が用いられる。
例えば、状態ST1(後述)においては、撮像部10の同軸照明系から出射され+Y方向に進行する照明光が、ミラー41(図7参照)で反射されて半導体チップ21へと(+Z方向に)進行し、半導体チップ21で反射される。そして、半導体チップ21で反射された光は、今度は逆の進路を辿って進行する。具体的には、当該光(反射光)は、図7に示すように、ミラー41で反射されて−Z方向から−Y方向に進路を変更して、撮像部10に到達する。
同様に、状態ST2(後述)においては、撮像部10の同軸照明系から出射され+Y方向に進行する照明光が、ミラー43(図9参照)で反射されて(−Z方向に)基板31へと進行し、基板31で反射される。そして、基板31で反射された光は、今度は逆の進路を辿って進行する。具体的には、当該光(反射光)は、図9に示すように、ミラー43で反射されて+Z方向から−Y方向に進路を変更して、撮像部10に到達する。
また、状態ST3(後述)においては、図17に示すように、撮像部10の同軸照明系から出射され+Y方向に進行する照明光(同軸照明系の光源11から出射されハーフミラー15によって反射された後に撮像部10の光軸に沿って+Y方向に進行する光)は、ミラー29で反射されて−Z方向に進行して対象物22,31へと到達する。そして、当該光は、対象物22,31で反射される。対象物22,31からの反射光は、図18に示すように、ミラー29で反射され撮像部10の光軸に沿って−Y方向に進行した後、ハーフミラー15を通過してそのまま直進し撮像素子13に到達する。
図4は、アライメント装置1のコントローラ100の機能ブロックを示す図である。図4に示すように、コントローラ(制御部)100は、各種の機能処理部、具体的には、切換制御部111,算出部112,キャリブレーション部113などを備えている。なお、コントローラ100は、物理的には、CPUおよび半導体メモリなどにより構成される。
切換制御部111は、上側の半導体チップ21の画像GA1を取得する状態ST1と下側の基板31の画像GA2を取得する状態ST2とを切り換える処理部である。
算出部112は、半導体チップ21と基板31との両対象物の画像GA1,GA2に基づいて、当該両対象物の相対位置関係を算出する処理部である。
キャリブレーション部113は、両対象物の位置ずれ計測に関するキャリブレーション処理を実行する処理部である。
<1−2.アライメント動作および接合動作>
次に、半導体チップ21と基板31とのアライメント動作等について図5のフローチャートを参照しながら説明する。
まず、アライメント装置1は、半導体チップ21と基板31とが鉛直方向(Z方向)に離間して配置された状態にて、上方の半導体チップ21に関する撮影画像GA1と下方の基板31に関する撮影画像GA2とをそれぞれ取得する(ステップS10)。
また、アライメント装置1は、これらの撮影画像GA1,GA2に基づいて、鉛直方向に略垂直な方向(すなわち水平方向)における両対象物21,31の相対位置関係を算出する。具体的には、アライメント装置1は、水平方向(X方向、Y方向およびθ方向)における当該両者の位置ずれを認識する(ステップS20)。
そして、回転テーブル37が水平面に沿って回転移動することによって当該両者のθ方向(回転方向)の位置ずれが低減され、アライメントテーブル35とステージ35とが水平面に沿って並進移動することによって当該両者のX,Y方向への位置ずれが低減される(ステップS30)。
その後、昇降部材25が鉛直方向(Z方向)に下降することによって、ツール23および半導体チップ21が昇降部材25とともに下降し、半導体チップ21が基板31に接合される(ステップS40)。
以下では、各ステップS10,S20,S30,S40の処理を順次に詳細に説明する。
はじめに、ステップS10において半導体チップ21の撮影画像GA1と基板31の撮影画像GA2とを取得する処理について、図6〜図9を参照しながら説明する。図6および図7は、半導体チップ21に関する光像がミラー41を介して撮像部10に到達する状態(以下、状態ST1とも称する)を示す図である。また、図8および図9は、基板31に関する光像がミラー43を介して撮像部10に到達する状態(以下、状態ST2とも称する)を示す図である。
半導体チップ21と基板31とに関する両画像GA1,GA2は、切換制御部111によって状態ST1と状態ST2とが切り換えられることによって取得される。ここでは、スライド部材40がX方向に駆動されることによって、撮像部10とスライド部材40とが相対的に移動され、両状態ST1,ST2が相互に切り換えられる。図6と図8とを比較すると判るように、状態ST1と状態ST2とではスライド部材40(ミラー41,43等)のX方向の位置が互いに異なっている。
たとえば、切換制御部111は、スライド部材40を所定の退避位置からX軸方向に移動させ、図6に示すように、半導体チップ21と基板31との両者の間隙(対向空間)(詳細には、半導体チップ21の直下且つ基板31の直上)にミラー41を移動させる。移動後の状態ST1においては、図7に示すように、半導体チップ21の光像は、ミラー41によって反射され撮像部10に到達する。撮像部10は、受光した光像に基づき、撮影画像GA1を生成する。
また、切換制御部111は、スライド部材40をX軸方向(+X方向)に移動させ、図8に示すように、半導体チップ21と基板31との対向空間にミラー43を移動させる。移動後の状態ST2においては、図9に示すように、基板31の光像は、ミラー43によって反射され撮像部10に到達する。撮像部10は、受光した光像に基づき、撮影画像GA2を生成する。
このように、切換制御部111は、撮像部10の移動を伴うことなくスライド部材40(ミラー41,43)をX軸方向に移動することによって、状態ST1と状態ST2とを切り換える。そして、撮像部10は、状態ST1にて半導体チップ21の画像(撮影画像)を取得し、状態ST2にて基板31の画像(撮影画像)GA2を取得する。
このような動作によれば、半導体チップ21の撮影画像GA1と基板31の撮影画像GA2とを同一の撮像部10を用いて取得することができるので、当該両者の位置合わせにおいて複数の撮像部を設ける必要がない。
つぎに、ステップS20において算出部112が半導体チップ21と基板31との両者の画像に基づいて当該両者の相対位置関係を算出する処理について、図10〜図13を参照しながら説明する。
図10は、半導体チップ21の画像GA1を示す図であり、図11は、基板31の画像GA2を示す図である。上述したように、画像GA1は、状態ST1にて撮像部10によって取得される画像であり、画像GA2は、状態ST2にて撮像部10によって取得される画像である。
マークMK1a,MK1b,MK2a,MK2bは、半導体チップ21と基板31との両者の相対位置関係の算出に使用されるマークであり、アライメントマークとも称する。円環状(ドーナツ状)の比較的大きな2つのマークMK1a,MK1bは、半導体チップ21に付されており、点状の比較的小さな2つのマークMK2a,MK2bは、基板31に付されている。マークMK1a,MK1b,MK2a,MK2bはそれぞれ反射部材で形成されている。半導体チップ21に光が照射されると、当該光は、マークMK1a,MK1b部分で反射される。また、基板31に光が照射されると、当該光は、マークMK2a,MK2b部分で反射される。この結果、画像GA1(グレースケール画像)にはマークMK1a,MK1bでの反射部分が白色部分(高輝度部分)として撮影され、画像GA2(グレースケール画像)にはマークMK2a,MK2bでの反射部分が白色部分(高輝度部分)として撮影される。
図12および図13は、それぞれ、半導体チップ21の画像GA1と基板31の画像GA2とを、座標系を合わせた状態で仮想的に重ねて示す図である。図12は、半導体チップ21と基板31との両者の相対位置関係にずれがない場合に対応し、図13は、当該両者の相対位置関係にずれがある場合に対応する。
当該両者の相対位置関係は、マークMK1a,MK1b,MK2a,MK2bの相対位置を用いて算出される。具体的には、算出部112は、マークMK1aとマークMK2aとの位置ずれ量(Δxa,Δya)と、マークMK1bとマークMK2bとの位置ずれ量(Δxb,Δyb)とに基づいて、半導体チップ21と基板31との相対的な位置ずれ量(ΔX,ΔY,Δθ)を算出する。
この後、ステップS30の処理が実行される。ステップS30では、半導体チップ21と基板31との両者の相対的な位置ずれ量に基づいて、当該両者の位置合わせが行われる。具体的には、回転テーブル37を所定の回転軸(Z方向に平行な軸)周りに回転させることによってθ方向のずれが補正される。また、アライメントテーブル35およびステージ33をX方向およびY方向に水平移動することによってX方向およびY方向のずれが補正される。詳細には、アライメントテーブル35を比較的粗い精度で位置合わせした後に、ステージ33を微小駆動して微調整することによって、ステージ33(ひいては基板31)を非常に高精度に位置合わせすることが可能である。
つぎに、半導体チップ21と基板31との接合動作(ステップS40)について、図14および図15を参照しながら説明する。
半導体チップ21と基板31との両者の間隙に挿入されていたスライド部材40は、当該両者の位置合わせが行われた後においては、図14に示すように、X軸スライド移動機構45によって−X方向に大きく(例えば数百mm)離れた退避位置へ移動され、当該間隙から退避する。
この後、図15に示すようにして、半導体チップ21と基板31とが接合される。
図15は、半導体チップ21と基板31とが接合される様子を示す図である。位置P1は、アライメント時(接合動作開始前)(図6〜図9参照)における半導体チップ21の位置を示し、位置P2は、接合動作終了後における半導体チップ21の位置を示す。
図15に示すように、半導体チップ21は、Z軸昇降駆動機構27による昇降部材25の移動に連動して位置P1から位置P2に降下する。そして、半導体チップ21と基板31とは、位置P2付近にて接合される。
以上のように、この実施形態に係る装置1によれば、撮像部10と複数のミラー41,43とを相対的に移動することによって、状態ST1と状態ST2とが切り換えられる。そして、各状態ST1,ST2で取得された2つの撮影画像GA1,GA2に基づいて、2つの対象物21,31の相対位置関係が算出される。したがって、撮像部の数を低減することができる。たとえば、上記の特許文献1のようにアライメント動作を実行するために2つの撮像部を要することなく、1つの撮像部を用いてアライメント動作を実行することが可能である。
<1−3.キャリブレーション動作>
上記においては、2つの撮影画像における座標系が互いに正しく調整されていることを前提に説明した。しかしながら、実際には、ミラー41,43の取付角度の微小誤差あるいは各種部品寸法の経時変化等に起因して、2つの対象物に関する光の光軸のずれ等が生じ、各撮影画像GA1,GA2に関する2つの座標系が正しく調整されていない状況が生じ得る。このような場合には、半導体チップ21と基板31との両者の間隙にスライド部材40が挿入された状態で当該両者の水平方向における相対位置が所望の状態を有していたとしても、当該両者の接近後(鉛直方向における移動後)には、当該両者の水平方向における相対位置は所望の状態からずれてしまう。
そこで、2つの対象物の位置ずれ計測に関するキャリブレーション動作(2つの座標系の関係等を正しく調整する動作等)が適宜のタイミングで行われることが好ましい。
以下では、このようなキャリブレーション動作について図16を参照しながら説明する。
なお、ここでは、半導体チップ21に代えてガラスチップ22を、キャリブレーション用のダミーチップとして用いて、キャリブレーション動作を実行する場合について例示する。ガラスチップ22は、光源11からの照明光(赤外光等)を透過する透光性部材である。接合対象物である半導体チップ21等が、光源11からの照明光(赤外光等)を透過しない非透光性部材である場合、このキャリブレーション動作においては、半導体チップ21に代えてガラスチップ22等の透光性部材を用いることが特に有用である。なお、ガラスチップ22には、半導体チップ21と同様に、反射部材であるマークMK1a,MK1bが付されている。
さて、このキャリブレーション動作では、図16に示すように、まず、上記の通常のアライメント動作と同様に、ガラスチップ22と基板31との両者に関して、水平方向における位置合わせが行われる。具体的には、上記のステップS10,S20,S30(図5)の各処理と同様の処理(ステップS110,S120,S130)が実行される。
その後、当該両者22,31の間隙に挿入されていたスライド部材40は、図14と同様に、X軸スライド移動機構45によって当該間隙から退避する(ステップS140)。
また、スライド部材40が両者22,31の間隙から退避した後に、ガラスチップ22がZ軸方向に下降されることによって、ガラスチップ22と基板31とが相対的に接近され、ガラスチップ22と基板31との両者が近接あるいは接触した状態(以下、状態ST3とも称する)が実現される(ステップS150)。
より具体的には、昇降部材25が、Z軸昇降駆動機構27によって鉛直方向(Z方向)に下降され、ツール23およびガラスチップ22が昇降部材25とともに下降し、状態ST3が実現される(図17参照)。この際、昇降部材25の内部のミラー29も、昇降部材25の下降動作に伴って下降する。換言すれば、ミラー29は、昇降部材25に固定されたツール23等にも連動して移動(下降)する。
なお、状態ST3でのガラスチップ22のZ方向位置は、上記接合動作における半導体チップ21と基板31との接合時点での半導体チップ21のZ方向位置に非常に近い位置(理想的には同じ位置)であることが好ましい。端的に言えば、状態ST3は、半導体チップ21と基板31とが接合される状態に非常に近い状態であることが好ましい。
つぎに、この状態ST3において当該両者に関する撮影画像(キャリブレーション用画像)GA3が取得される(ステップS160)。
図17は、状態ST3にて、ガラスチップ22と基板31との両者に照明光(赤外光)を照射する様子を示す図であり、図18は、状態ST3にて、当該両者の画像を取得する様子を示す図である。図17および図18を参照しながら、状態ST3における撮影画像GA3の取得動作、すなわちステップS160における動作について説明する。
図17に示すように、状態ST3にて撮像部10の同軸照明系(光源11等)から出射された照明光は、ハーフミラー15による進路変更を伴って(ハーフミラー15によって反射されて)、ミラー29に向けて+Y方向に進行する。この状態ST3においては、ミラー29は、撮像部10の同軸照明系(光源11等)から出射された照明光を受光する位置に存在する。そのため、当該ミラー29は、当該照明光を−Z方向に向けて反射し、当該照明光を両対象物22,31に向けて進行させる。このようにして、撮像部10からの照明光は、ミラー29による進路変更を伴ってガラスチップ22と基板31との両者に向けて進行する。そして、当該照明光は、ガラスチップ22における透過を伴って当該両者22,31を照射するとともに、当該両者22,31にそれぞれ設けられたマークMK1a,MK1bおよびMK2a,MK2bにて反射される。
また、図18に示すように、マークMK1a,MK1b,MK2a,MK2bでの反射光を含む当該両対象物22,31に関する光像は、ミラー29に向けて+Z方向に進行する。この状態ST3においては、ミラー29は、下方(−Z方向)からの入射光を、撮像部10へ向けて反射する位置に存在する。そのため、当該ミラー29は、両対象物22,31に関する光像(+Z方向に進行してきた光像)を反射して、−Y方向の撮像部10へ向けて進行させる。このようにして、両対象物22,31に関する光像は、ミラー29による進路変更を伴って撮像部10に向けて進行する。ミラー29により進路変更された当該両対象物に関する光像は、ハーフミラー15を透過し、撮像素子13に到達する。
このようにして、撮像部10Aは、状態ST3にてガラスチップ22と基板31とに関する撮影画像GA3を取得することができる。この撮影画像GA3(グレースケール画像)においては、マークMK1a,MK1b,MK2a,MK2bに相当する領域が白色部分(高輝度部分)として撮影されている。
なお、昇降部材25およびツール23には、光を通過させる孔(不図示)が設けられている。そのため、昇降部材25およびツール23の材質等がガラスチップ22と基板31との両者に関する画像の取得に与える影響は、非常に少ない。
さらに、ステップS170において、アライメント装置1は、当該撮影画像GA3に基づいて、両対象物の位置ずれ計測に関する調整パラメータを取得する。
上述のように、ガラスチップ22と基板31とに関して、ステップS110,S120,S130の各処理が既に施されている。そのため、これら2つの対象物22,31の間隙にスライド部材40を挿入した状態(状態ST1,ST2)においては、水平方向における両対象物22,31の相対的な位置ずれが理論的には解消されている。そして、ステップS130の後に単にZ軸方向にガラスチップ22が下降した状態ST3においても、水平方向におけるガラスチップ22と基板31との相対的な位置ずれは理論的には存在しない。
しかしながら、上述したように、両対象物の接近前に両対象物の水平方向における相対位置にずれ存在しないときであっても、両対象物の接近後(Z方向における移動後)の状態ST3には、両対象物の水平方向における相対位置にずれが生じていることがある。
そこで、このステップS170においては、状態ST3で撮像部10により取得された撮影画像GA3に基づいて、両対象物の位置ずれ計測に関する調整パラメータPTを取得する。
具体的には、まず、算出部112は、ガラスチップ22と基板31との両者に関する撮影画像GA3に基づいて、当該両者22,31の相対位置関係を算出する。当該両者22,31の相対位置関係は、マークMK1a,MK1b,MK2a,MK2bの相対位置を用いて算出される。具体的には、算出部112は、マークMK1aとマークMK2aとの位置ずれ量(Δxa,Δya)と、マークMK1bとマークMK2bとの位置ずれ量(Δxb,Δyb)とに基づいて、ガラスチップ22と基板31との相対的な位置ずれ量(ΔX,ΔY,Δθ)を算出する。
そして、キャリブレーション部113は、算出された位置ずれ量に基づいて、両対象物の位置ずれ計測に関する調整パラメータPTを取得する。具体的には、算出された位置ずれ量を、2つの座標系相互間のずれであると判定し、当該位置ずれ量を、調整パラメータPTとして保存する。そして、以後の(接合動作直前の)アライメント動作においては、調整パラメータPTとして保存された位置ずれ量に対して逆向きにずれた位置が正規の基準位置であるとして認識される。
以上のようにしてキャリブレーション動作が実行される。
このようなキャリブレーション動作の終了後には、キャリブレーション用の対象物であるガラスチップ22が、次の接合動作に向けて、当該接合動作における実際の対象物である半導体チップ21に付け替えられる。その後、上述したような当該半導体チップ21と基板31とのアライメント動作(ステップS10〜S30)および接合動作(ステップS40)が実行される。ただし、当該接合動作直前のアライメント動作は、上述のキャリブレーション動作で取得された調整パラメータPTを用いて2つの座標系の相互間の関係が校正された状態で、実行される。
以上のような動作によれば、状態ST3においては、両対象物22,31に関する光像は、ミラー29による進路変更を伴って撮像部に向けて進行し、(アライメント用途にも兼用される)撮像部10により取得される。そして、当該撮像部10により取得された撮影画像GA3に基づいて、2つの対象物の位置ずれ計測に関する調整パラメータPTが取得される。すなわち、アライメント用の撮像部10を用いてキャリブレーション用の画像GA3を取得され、当該画像GA3を用いたキャリブレーションが行われる。したがって、キャリブレーション動作のためにアライメント用の撮像部とは別個の撮像部を設けることを要さず、撮像部の数を低減することが可能である。たとえば、上記特許文献1の装置は、アライメント動作とキャリブレーション動作との双方を行うために、3つの撮像部を備えている。これに対して、この実施形態に係る装置は、1つの撮像部の撮像部を備えることによって、アライメント動作とキャリブレーション動作との双方を行うことが可能である。
<2.第2実施形態>
第2実施形態は、第1実施形態の変形例である。以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
上記第1実施形態においては、ミラー41を用いて半導体チップ21の画像GA1を取得し、ミラー43を用いて基板31の画像GA2を取得する場合を例示した。
一方、この第2実施形態においては、ミラー43の代わりにペンタミラー47(図26および図27参照)を用いて基板31の画像を取得する場合を例示する。なお、半導体チップ21の画像の取得については、第1実施形態と同様に、ミラー41を使用する。また、ペンタミラー47も、ミラー43と同様に、光の進路(光路)を変更する。ただし、後述するように、ペンタミラー47を経由して撮像部10へと到達する光像の上下は、ミラー43を経由して撮像部10へと到達する光像の上下とは逆向きである。
上記第1実施形態に係るアライメント装置1のスライド部材40は、X軸スライド移動機構45によってX方向に高精度に移動して、2つの画像GA1,GA2を撮影する。このX方向における移動の際、スライド部材40は、理論上はZ方向には移動しない。また、スライド部材40は、Z方向において正確に位置決めされており、実際にもZ方向には殆ど移動しない。そのため、通常は、スライド部材40がX方向に移動しても、半導体チップ21と基板31との両者の画像のZ軸方向への位置ずれは、殆ど発生しない。したがって、第1実施形態に係るアライメント装置1は、通常は、非常に良好に動作する。
しかしながら、スライド部材40は、時間の経過に伴う熱膨張や当該スライド部材40自体の重さ(自重)によって、Z軸方向にずれ(たわみ)を生じることがある。図19は、スライド部材40のZ軸方向における変位(ずれ量)ΔZの経時変化を示す図である。図19に示すように、スライド部材40のZ方向における変位ΔZは、アライメント装置1の動作開始から所定時間経過後(たとえば2時間経過後)には、比較的大きな量ΔZ1(たとえば5μm(マイクロメートル))になることがある。
このとき、第1実施形態に係るアライメント装置1(1A)においては、次述するような状況が生じるため、当該変位ΔZは、半導体チップ21の撮影画像と基板31の撮影画像とを用いた両対象物21,31の相対位置算出に影響を及ぼす。
以下では、スライド部材40が位置EP(次述)から位置SP(次述)にずれた場合における、撮像部10による撮影画像(画像GA1,GA2)への影響について図20〜図25を参照しながら説明する。なお、ここでは簡単化のため、スライド部材40のZ方向における変位と、当該変位後の撮像部10で取得される画像上での変位とがいずれも値ΔZであるとして説明する。ただし、実際には、撮像部10の光学系による像の拡大によって、これらの変位は互いに異なることが多い。
図20は、スライド部材40が、−Z方向(基板31側)に変位ΔZずれた様子を誇張して示す図である。位置EP(破線)はスライド部材40の本来の位置を示し、位置SP(実線)はスライド部材40が−Z方向に変位ΔZずれた位置を示す。
図21は、半導体チップ21を示し、図22は、基板31を示す図である。なお、ここでは、各光像の向き等を示すため、便宜上、各対象物21,31および各撮影画像GA1,GA2に共通のアルファベット「A」の文字を付して示すものとする。
画像GA1の撮像時において、半導体チップ21の光像は、ミラー41を介して撮像部10へ到達する(図7参照)。具体的には、半導体チップ21に関する光像は、半導体チップ21上での+Y方向(右向き)(図21参照)が撮像部10上での+Z方向(Z方向における上向き)(図23参照)に対応するように、ミラー41の反射面で反射されて撮像部10に到達する。
図23は、ミラー41を介して撮像部10により取得される(半導体チップ21の)画像GA1を示す図である。図23においては、2つの画像GA1(詳細には画像GA1s,GA1e)が示されている。画像GA1s(実線)は、スライド部材40が位置SPに存在するときに撮像部10により取得される画像GA1であり、画像GA1e(破線)は、スライド部材40が位置EPに存在するときに撮像部10により取得される画像GA1である。図23で示すように、画像GA1sは、画像GA1eに対して矢印AR1の向き(下向き)に変位ΔZずれている。
また、第1実施形態においては、ミラー43が基板31の光像を撮像部10に向けて反射できるように、スライダ部材40(40A)がX方向に移動され当該ミラー43が撮像部10の光軸上に配置される。このような移動によって、基板31の光像がミラー43を介して撮像部10に到達する状態ST2が実現される。
このとき、図9にも示すように、基板31に関する光像GA2は、基板31上での+Y方向(右向き)(図22参照)が撮像部10上での−Z方向(Z方向における下向き)(図24参照)に対応するように、ミラー43の反射面(1つの反射面)で反射されて撮像部10に到達する。
図24は、アライメント装置1Aのミラー43を介して撮像部10により取得される画像GA2を示す図である。図24においては、2つの画像GA2(詳細には画像GA2s,GA2e)が示されている。画像GA2s(実線)は、スライド部材40が位置SPに存在するときに撮像部10により取得される画像GA2であり、画像GA2e(破線)は、スライド部材40が位置EPに存在するときに撮像部10により取得される画像GA2である。図24で示すように、画像GA2sは、画像GA2eに対して下向き(矢印AR2の向き)に変位ΔZずれている。
図25は、ミラー41を介して取得される画像GA1(図中にて左側)とミラー43を介して取得される基板31の画像GA2(図中にて右側)とを比較する図である。図25においては、両画像GA1,GA2に関する両座標系の上下方向における向きを合わせて両画像GA1,GA2が比較されている。図25に示すように、画像GA1sは、画像GA1eに対して下向き(矢印AR1の向き)に変位ΔZずれている。一方、画像GA2sは、画像GA2eに対して上向き(矢印AR2の向き)に変位ΔZずれている。換言すれば、画像GA1(GA1s)のずれの向きと画像GA2(GA2s)のずれの向きとは逆である。
このように、変位ΔZが存在するときには、画像GA1sと画像GA2sとが上下方向において互いに逆向きにずれる。このとき、変位ΔZの大きさが不明であるため、画像GA1s,GA2sのみによっては半導体チップ21と基板31との相対位置関係を算出することは困難である。たとえば、両対象物21,31が正しい位置関係を有しているにもかかわらず両対象物21,31の各マークの像がスライダ40のZ方向のずれ(変位ΔZ)に起因してずれている状態と、両対象物21,31が正しい位置に存在しないために、両対象物21,31の各マークの像がずれている状態とを、判別することが困難である。
一方、第2実施形態に係るアライメント装置1(1B)によれば、変位ΔZによる悪影響を排除することが可能である。
図26は、第2実施形態に係るアライメント装置1(1B)を示す斜視図である。
この第2実施形態においては、半導体チップ21の画像の取得については、第1実施形態と同様に、ミラー41を用いる。この結果、図23と同様の画像GA1が取得される。
その一方で、この第2実施形態においては、ミラー43の代わりにペンタミラー47(図27参照)を用いて、基板31の画像を取得する。具体的には、切換制御部111は、ペンタミラー47が基板31の光像を撮像部10に向けて反射できるように、スライダ部材40(40B)をX方向に移動させ当該ペンタミラー47を撮像部10の光軸上に移動させる。この結果、基板31の光像がペンタミラー47を介して撮像部10に到達する状態ST2(ST2b)が実現される。
図27は、このような状態ST2bを示す図である。
撮像部10は、状態ST2bにおいて、基板31の画像を取得する。具体的には、基板31に関する光像は、ペンタミラー47の下側(−Z側)から上方(+Z方向)に向けて進行し、ペンタミラー47の2つの反射面47p,47qで反射されることにより−Y方向に進路を変えて進行し撮像部10に到達する。詳細には、基板31に関する当該光像は、基板31上での+Y方向(右向き)(図22参照)が撮像部10上での+Z方向(Z方向における上向き)(図28参照)に対応するように、ペンタミラー47の2つの反射面47p,47qで反射されて撮像部10に到達する。なお、ペンタミラー47を介して撮像部10に到達した光像の向きは、第1実施形態においてミラー43(図9参照)で反射され撮像部10に到達した光像の向きと逆である。第1実施形態においては、図9に示すように、基板31に関する当該光像は、基板31上での+Y方向(右向き)が撮像部10上での−Z方向(下向き)に対応するように、ミラー43の1つの反射面で反射されて撮像部10に到達する。
図28は、第2実施形態の状態ST2bにおいてペンタミラー47を介して取得される(基板31の)画像GA2を示す図である。図28においては、2つの画像GA2(詳細には画像GA2s,GA2e)が示されている。図28の画像GA2s(実線)は、スライド部材40が位置SPに存在するときに撮像部10により取得される画像GA2を示している。また、図28の画像GA2e(破線)は、スライド部材40が位置EPに存在するときに撮像部10により取得される画像GA2を示している。図28に示すように、画像GA2sは、画像GA2eに対して矢印AR1の向き(下向き)に変位ΔZずれている。
図29は、ミラー41を介して取得される画像GA1(左図)とペンタミラー47を介して取得される画像GA2(右図)とを比較する図である。図29に示すように、画像GA1の変位ΔZ(画像GA1eに対する画像GA1sの変位)と画像GA2の変位ΔZ(画像GA2eに対する画像GA2sの変位)とは、同じ大きさであり且つ同じ向き(矢印AR1の向き)である。すなわち、両画像GA1,GA2内での半導体チップ21の光像と基板31の光像とは同じ向きに同じ大きさずれる。そのため、両画像GA1,GA2の相互間においては、変位ΔZに起因する上下方向における相対的なずれは存在しない。したがって、経時変化等に起因してスライド部材40のZ方向における変位ΔZが発生したときでも、両画像GA1s,GA2sを比較することによって、両対象物の位置を正確に測定することが可能である。
このように第2実施形態に係るアライメント装置1Bにおいては、ミラー41が半導体チップ21の光像を1度反射し、ペンタミラー47が基板31の光像を2度反射することによって、撮像部10によって取得される画像GA1,GA2は上下方向において互いに同一の向きで取得される。したがって、経時変化等に起因してスライド部材40のZ方向における変位ΔZが発生したときでも、両画像GA1,GA2は上下方向において互いに同一の向きにずれるため、当該変位ΔZの影響を受けることなく両対象物21,31の相対位置関係を正確に測定することが可能である。
<3.第3実施形態>
第3実施形態は、第1実施形態の変形例である。以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
上記第1実施形態においては、撮像部10が固定された状態において(撮像部10の移動を伴うことなく)スライド部材40をX軸方向に移動させることによって、状態ST1と状態ST2とが切り換えられる場合を例示した。
この第3実施形態においては、スライド部材60(図30参照)が固定された状態において撮像部10(10B)をZ軸方向に移動させることによって、撮像部10とスライド部材60とを相対的に移動させ、状態ST11と状態ST12とが切り換えられる場合を例示する。なお、ミラー61(後述)とミラー63(後述)とは、Z方向に配列されている(図30参照)。状態ST11は、半導体チップ21の光像がミラー61を介して撮像部10Bに到達する状態であり、状態ST12は、基板31の光像がミラー63を介して撮像部10Bに到達する状態である。
また、第3実施形態においては、撮像部10B(後述)が半導体チップ21と基板31との対向空間に対して(−Y側ではなく)+X側に配置される。そして、このような配置変更に伴ってミラー61,63,29Bの向きはミラー41,43,29Aの向きとは異なっている。具体的には、ミラー61,63,29Bは、対象物からの反射光が+X側に進行するように配置されている。
以下、第3実施形態に係るアライメント装置1(1C)について、図30〜図32を用いて説明する。図30は、第3実施形態に係るアライメント装置1Cのチャンバ2内を示す斜視図である。また、図31は、撮像部10Bによって半導体チップ21の画像が取得される様子を示し、図32は、撮像部10Bによって基板31の画像が取得される様子を示す図である。
図30に示すように、第3実施形態に係るアライメント装置1(1C)は、撮像部10(10B)およびスライド部材60等を備える。
撮像部10Bは、当該撮像部10Bの光軸がX軸に平行になるように配置される。また、当該撮像部10Bは、Z軸スライド機構12に保持されており、当該Z軸スライド機構12によってZ軸方向に移動される。
また、スライド部材60は、ミラー61,63を備える。ミラー61,63は、スライド部材60内においてZ方向(鉛直方向)に配列されて固定されている。
ミラー61は、ミラー取付部材62に固定されている。ミラー61はミラー41と同様の構成を有しており、ミラー取付部材62はミラー取付部材42と同様の構成を有している。ただし、ミラー61は、対象物21からの反射光が+X方向に進行するように配置されている。
より詳細には、ミラー61は、ミラー61の+X側(図31の右側)から−X方向(図31の左向き)に進行する光を+Z方向(図31の上向き)に反射する。また、逆に、ミラー61は、ミラー61の+Z側(図31の上側)から−Z方向(図31の下向き)に進行する光を+X方向(図31の右方向)に反射する。
ミラー63は、ミラー取付部材64に固定されている。ミラー63はミラー43と同様の構成を有しており、ミラー取付部材64はミラー取付部材44と同様の構成を有している。ただし、ミラー63は、対象物31からの反射光が+X方向に進行するように配置されている。
より詳細には、ミラー63は、ミラー63の+X側(図32の右側)から−X方向(図32の左向き)に進行する光を−Z方向に(図32の下向き)反射する。また、逆に、ミラー63は、ミラー63の−Z側(図32の下側)から+Z方向(図32の上向き)に進行する光を+X方向に(図32の右方向)に反射する。
図31は、半導体チップ21の光像がミラー61を介して撮像部10Bに到達する状態ST11を示している。状態ST11においては、半導体チップ21の光像がミラー61によって撮像部10に向けて反射されている。撮像部10Bがミラー61に正対する高さにまでZ方向に移動することによって、状態ST11は実現される。
図32は、基板31の光像がミラー63を介して撮像部10Bに到達する状態ST12を示している。状態ST12においては、基板31の光像がミラー63によって撮像部10に向けて反射されている。撮像部10Bがミラー63に正対する高さにまでZ方向において移動することによって、状態ST12は実現される。
上述したように、この第3実施形態においては、スライド部材60の移動(換言すれば、ミラー61,63の移動)を伴うことなく撮像部10BをZ軸方向に移動することによって、状態ST11と状態ST12とが切り換えられる。このような切換動作は、切換制御部111によって実行される。
この第3実施形態に係るアライメント装置1Cによれば、第1実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
また、この第3実施形態に係るミラー29(29B)は、第1実施形態のミラー29(29A)と同様の構成を有する一方で、異なる向きに配置されている点においてミラー29Aと相違する。具体的には、撮像部10Cが半導体チップ21と基板31との対向空間に対して+X側に配置されていることに応じて、ミラー29Bは、+X側の撮像部10Cに向けて光の進路を変更するように配置される。
より詳細には、ミラー29Bは、状態ST3において、撮像部10Bから出射されミラー29Bの+X側から−X方向に進行する光を、−Z方向に反射して、両対象物22,31に照射する。また、逆に、ミラー29Bは、ミラー29Bの−Z側から+Z方向に進行する光(両対象物22,31からの反射光)を+X方向に反射する。
このようなミラー29Bを用いることによれば、状態ST3において、上記第1実施形態と同様の撮影画像GA3を取得し、上記第1実施形態と同様のキャリブレーション動作を実行することが可能である。
なお、この第3実施形態においては、撮像部10Bが半導体チップ21と基板31との対向空間に対して+X側に配置される場合を例示した。ただし、これに限定されず、上記第1実施形態と同様に、撮像部10Bを半導体チップ21と基板31との対向空間に対して−Y側に配置するとともに、対象物からの反射光が−Y側に進行するように、ミラー61,63,29Bの向きをミラー41,43,29Aと同じ向きに配置するようにしてもよい。
<4.第4実施形態>
第4実施形態は、第3実施形態の変形例である。以下では、第3実施形態との相違点を中心に説明する。
上記第3実施形態においては、ミラー61を用いて半導体チップ21の画像を取得し、ミラー63を用いて基板31の画像を取得する場合を例示した。
この第4実施形態においては、ミラー63の代わりにペンタミラー67(図33参照)を用いて基板31の画像を取得する場合を例示する。ペンタミラー67は、第2実施形態におけるペンタミラー47と同様の役割を果たす。これにより、第4実施形態においては、第2実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
図33は、第4実施形態に係るアライメント装置1Dを示す図である。図33に示すように、このアライメント装置1Dは、ミラー61を介して半導体チップ21の画像GA1を取得し、ペンタミラー67を介して基板31の画像GA2を取得する。より詳細には、ミラー61が半導体チップ21の光像を1度反射することによって画像GA1が取得され、ペンタミラー67が基板31の光像を2度反射することによって画像GA2が取得される。そして、第2実施形態で説明した原理と同様の原理により、経時変化等に起因してスライド部材60のZ方向における変位ΔZが発生したときでも、撮像部10によって取得される画像GA1,GA2が同一方向にずれる。
したがって、当該変位ΔZの影響を受けることなく両対象物21,31の相対位置関係を正確に測定することが可能である。
このように、第4実施形態に係るアライメント装置1Dによれば、第2実施形態に係るアライメント装置1Bと同様の効果を得ることができる。
<5.第5実施形態>
上記各実施形態では、キャリブレーション動作において、両対象物22,31で反射された光を用いて画像GA3が取得される場合を例示したが、これに限定されない。たとえば、両対象物22,31を透過する光を用いて画像GA3が取得されるようにしてもよい。
第5実施形態においては、このような変形例について説明する。この第5実施形態は、第1実施形態の変形例であり、以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
この第5実施形態においては、基板31の代わりに赤外光を透過する基板32(図34参照)を用いる。そして、それぞれ赤外光を透過する両対象物22,32を用いて、当該両対象物22,32を透過した透過光を受光し、キャリブレーション用の画像GA3を取得する。この点において、赤外光(照明光)を透過しない基板31と赤外光を透過するガラスチップ22とを用いてキャリブレーション用の画像GA3を取得する上記各実施形態と相違する。
図34は、第5実施形態に係るアライメント装置1(1E)を示す図である。
図34に示すように、アライメント装置1Eは、撮像部10Aの同軸照明系の光源とは別の光源50をさらに備えるとともに、ミラー29とは別のミラー39をアライメントテーブル35内部にさらに備える。
光源50は、ミラー39と同じ高さ(Z方向位置)に配置され、ミラー39に向けて照明光(具体的には、赤外光)を出射する。当該光は、ミラー39で反射されて、ガラスチップ22と基板32とに照射される。
ミラー39は、ミラー29(29A)と同様の構成を有している。ただし、ミラー39の反射面は、斜め上方を向いている点で、ミラー29と相違する。図34に示すように、ミラー39は、ミラー39の−Y側(左側)から+Y方向(右向き)に進行する光を+Z方向(上向き)に反射する。
なお、ステージ33およびアライメントテーブル35には、光を通過させる孔(不図示)が設けられている。そのため、ステージ33およびアライメントテーブル35の材質等がガラスチップ22と基板32との両者に関する画像の取得に与える影響は、非常に少ない。
この第5実施形態のキャリブレーションにおいては、ステップS110,S120,S130,S140,S150(図16)の各処理が終了すると、次のようにしてステップS160の処理が実行される。具体的には、状態ST3にて光源50から出射された赤外光は、ミラー39による進路変更(+Y→+Z)を伴ってガラスチップ22と基板32との両対象物に向けて進行する。この後、当該両対象物を照射するとともに、当該両対象物にそれぞれ設けられたマークMK1a,MK1b,MK2a,MK2bでの遮蔽を伴いつつ当該両対象物22,32を透過して進行する。そして、当該両対象物22,32を透過して進行する光像は、ミラー29による進路変更(+Z→−Y)を伴って撮像部10Cに向けて進行する。
このようにして、撮像部10Aは、状態ST3にてガラスチップ22と基板31とに関する撮影画像GA3(GA3b)を取得することができる。この撮影画像GA3bにおいては、マークMK1a,MK1b,MK2a,MK2bが黒色部分(低輝度部分)として撮影されている。
その後、上記第1実施形態と同様にして、ステップS170の動作が実行される。
以上のように第5実施形態に係るアライメント装置1Eによれば、両対象物22,31を透過する光を用いて画像GA3を取得し、当該画像GA3を用いてキャリブレーション動作を実行することが可能である。
<6.変形例等>
以上、この発明の実施の形態について説明したが、この発明は上記説明した内容のものに限定されるものではない。
たとえば、第5実施形態においては、光源50がミラー39側に配置され、撮像部10がミラー29側に配置される場合を例示したが、これに限定されず、逆に、光源50がミラー29側に配置され、撮像部10がミラー39側に配置されるようにしてもよい。
図35は、このような変形例を示す図である。図35の装置においては、撮像部10はZ軸スライド機構14によってZ方向に移動可能に設けられる。そして、撮像部10は、状態ST3においてミラー39の高さに移動し、両対象物を透過した光を受光して撮影画像GA3を取得する。
詳細には、状態ST3にて光源50から出射された光は、ミラー29による進路変更(+Y→−Z)を伴ってガラスチップ22と基板32との両対象物に向けて進行する。この後、当該光は、当該両対象物を照射するとともに、当該両対象物にそれぞれ設けられたマークMK1a,MK1b,MK2a,MK2bでの遮蔽を伴いつつ当該両対象物を透過して進行する。そして、当該両対象物を透過して進行する光像は、ミラー39による進路変更(−Z→−Y)を伴って撮像部10に向けて進行する。
このような変形例によっても上記第5実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
また、上記各実施形態においては、昇降部材25がZ軸方向に移動(昇降)する場合(換言すれば、上側の対象物21が昇降する場合)を例示したが、これに限定されず、ステージ33等をZ軸方向に移動(昇降)して下側の対象物31等を昇降させるようにしてもよい。端的に言えば、上下を逆転させるようにしてもよい。さらに、この場合において、ミラー29を昇降部材25の内部ではなくアライメントテーブル35の内部に設け、第1実施形態と同様にして当該ミラー29を用いて撮影画像GA3を取得するようにしてもよい。
また、上記各実施形態においては、ガラスチップ22と基板31との両対象物が鉛直方向に離間して配置された状態にて当該両対象物の水平方向への位置合わせ(ステップS130)が行われた後、当該両対象物が互いに接近するように鉛直方向に移動され、当該移動後の状態ST3にて検出される当該両対象物の位置ずれが位置ずれ計測に関する調整パラメータPTとして取得される場合(図16参照)を例示したが、これに限定されない。
たとえば、当該両対象物の水平方向への位置合わせ(ステップS130)が行われることなく、位置ずれ計測に関する調整パラメータPTが取得されるようにしてもよい。具体的には、アライメント装置1は、まず、ステップS110,S120と同様の動作を行い、撮影画像GA1,GA2に基づいて当該両対象物の相対位置関係を算出する。換言すれば、当該両対象物が鉛直方向に離間して配置された状態において、当該両対象物の位置ずれ(ΔX,ΔY,Δθ)が第1の位置誤差ER1として求められる。その後、アライメント装置1は、ステップS130の動作(すなわち当該両対象物の水平方向への位置合わせ動作)を行うことなく、ステップS140,S150,S160,S170の動作を実行する。ただし、ステップS170においては、状態ST3にて取得された画像GA3に基づいて当該両対象物の相対位置関係(位置ずれ:(ΔX,ΔY,Δθ))が第2の位置誤差ER2として取得されるとともに、第1の位置誤差ER1と第2の位置誤差ER2との差分値が位置ずれ計測に関する調整パラメータ(補正値)PTとして取得される。
このような態様によっても、上記各実施形態と同様の効果を得ることが可能である。また特に、当該両対象物の水平方向への位置合わせ(ステップS130)を要しないため、キャリブレーション動作が簡略化される。さらに、水平方向への位置合わせに伴う駆動誤差が全く生じないため、より正確なキャリブレーション動作が可能になる。
また、上記各実施形態においては、ガラスチップ22を用いて状態ST3にてキャリブレーション用の画像GA3を取得する場合を例示したが、これに限定されない。たとえば、実際の接合動作(ステップS40)中に、半導体チップ21と基板31とが近接ないし接触した状態ST3bでキャリブレーション用の画像GA3を取得するようにしてもよい。
また、上記第5実施形態においては、照明光を透過する両対象物22,32を用いてキャリブレーション用の画像GA3を取得する技術を第1実施形態に適用する改変例を例示したが、これに限定されない。同様に、第2実施形態〜第4実施形態において、照明光を透過する両対象物22,32を用いてキャリブレーション用の画像GA3を取得するようにしてもよい。
また、上記第2実施形態においては、半導体チップ21の画像GA1がミラー41を用いて取得され、基板31の画像GA2はペンタミラー47を用いて取得される場合を例示したが、これに限定されない。たとえば、ミラー41とペンタミラー47とをそれぞれ上記第2実施形態とは上下反転させて配置し、当該ペンタミラー47を用いて半導体チップ21の画像を取得し、ミラー41を用いて基板31の画像を取得するようにしてもよい。
また、上記第4実施形態においては、半導体チップ21の画像GA1がミラー61を用いて取得され、基板31の画像GA2はペンタミラー67を用いて取得される場合(図33)を例示したが、これに限定されない。たとえば、ペンタミラー67とミラー61とをこの順序で上から下に配列するともに、ミラー61とペンタミラー67とをそれぞれ上記第4実施形態とは上下反転させて配置し、当該ペンタミラー67を用いて半導体チップ21の画像を取得し、ミラー61を用いて基板31の画像を取得するようにしてもよい。
また、上記第2実施形態および第4実施形態においては、ペンタミラーを用いる場合を例示したが、これに限定されず、ペンタミラーに代えてペンタプリズムを用いるようにしてもよい。さらに、同様に、ミラーに代えて、プリズム(直角プリズム等)を用いるようにしてもよい。
また、上記各実施形態においては、半導体チップ21と基板31との相対位置関係のずれを算出するために、マークMK1a,MK1b(図10参照)とマークMK2a,MK2b(図11)とを用いる場合を例示したが、これに限定されない。他のマークを用いて2つの対象物の相対位置関係を求めるようにしてもよい。
また、上記各実施形態においては、光を透過する孔が、スライド部材40、昇降部材25、ツール23、ステージ33およびアライメントテーブル35に設けられる場合を例示したが、これに限定されない。これらのスライド部材40、昇降部材25、ツール23、ステージ33およびアライメントテーブル35として、照明光(赤外光等)を透過する透光性部材を用いるようにしてもよい。
また、上記各実施形態においては、チップと基板とを位置決めした状態でチップを基板に接続するチップボンディング装置を例示したが、これに限定されず、アライメント動作を伴う接合装置等(すなわち、その他のアライメント装置)に上記の思想を適用するようにしてもよい。例えば、半導体ウエハと半導体ウエハとを接合する際に、接合平面に平行な方向における位置決め動作等に上記の思想を適用するようにしてもよい。