LSI等のチップのボンディングパッドと基板のボンディングリードを接続する実装方法として、ワイヤボンディングの他にフェースダウンボンディングが行われる。フェースダウンボンディングは、チップの裏面側をボンディングツールで保持し、保持されたチップの表面側、すなわち電極パッドが配列される側の面と、基板の配線面とを向かい合わせ、チップの電極パッドの位置と基板のボンディングリードの位置とを位置決めし、熱エネルギあるいは超音波エネルギを用いて接続する方法である。フェースダウンボンディング装置として、フリップチップボンダーやCOF(Chip On Film)ボンダー等が用いられる。
フェースダウンボンディングにおける位置決めには、互いに向かい合うチップの表面の電極パッドと基板表面のボンディングリードとを観察することが必要なため、チップの位置測定用のカメラと基板の位置測定用のカメラが用いられる。例えば、基板の上方からボンディングツールを下降させてチップを実装する場合には、基板位置測定用カメラとして上方から下方を観察する下向きカメラを用い、チップ位置測定用カメラとしては下方から上方を観察する上向きカメラを用いる。
2つのカメラについての配置方法の1つは、下向きカメラを基板の高さ位置より上方に設け、これとは別に上向きカメラを基板の高さ位置より下方に設けることができる。また、特許文献1には、2つの反射面を有するプリズム型ミラーを用い、光線をプリズム型ミラーの上方向と下方向とに分けて、チップ表面と基板表面を同時に観察できる光学装置が開示されている。この場合には、チップと基板との間にこの光学装置を挿入配置して、チップと基板とを同時に観察することができる。このようなカメラは、プローブカメラと呼ばれることがある。
どの方法をとるにせよ、上記の例でいえば、チップを観察する光軸は上向きであり、基板を観察する光軸は下向きであり、別々の光軸であるので、これらの光軸がずれると、位置決めに影響を及ぼし、ボンディングにおける位置ずれの原因となる。光軸のずれは、例えばボンディング作業における温度上昇等の影響や、経時変化によって光学系等の設定がずれることにより生ずる。以下に、光軸のずれがボンディングにおける位置ずれにどのように影響を及ぼすかを説明する。
最初に、光軸がずれていないときの通常のチップと基板との位置決めの仕方を図14に示す。説明を単純にするため、図に示すX方向の位置決めのみを考える。チップ10はボンディングツール12に保持され、基板14はキャリア16に保持される。ボンディングツール12及びキャリア16は、それぞれ図示されていない駆動装置によりX方向の任意の位置に移動可能である。チップ10と基板14とを観察する上下カメラ20は、チップ10と基板14の間に配置され、上向きの光軸22を有する第1カメラ26によりチップ10の位置を、下向きの光軸24を有する第2カメラ28により基板14の位置を測定できる。なお、位置あるいは位置間の距離の測定に際して各カメラの倍率を考慮する必要があるが、以下では、特に断らない限り、カメラにより測定される位置間距離を実際の距離、すなわち物体面上の距離に換算して説明を進めることとする。
図14は、上向きの光軸22と下向きの光軸24とが正確に軸あわせされている場合である。この場合には、第1カメラ26の視野の中心と第2カメラ28の視野の中心とが一致しているので、その位置にそれぞれチップ10の基準位置と基板14の基準位置を合わせればよい。ボンディングのための基準位置としては、チップ10の電極パッドのエッジ位置と、それに対応する基板14のボンディングリードのエッジ位置等を選ぶことができる。図14において、仮に、上向きの光軸22を第1カメラ26の視野の中心位置を表すものとし、下向きの光軸24を第2カメラ28の視野の中心を表すものとする。その状態でチップ10と基板14の位置を測定したところ図14の破線で示すようにずれていたとする。この場合には、まず基板14の基準位置が第2カメラ28の視野の中心を表す下向きの光軸24に一致するまでキャリア16を移動する。そして、チップ10の基準位置が第1カメラ26の視野の中心を表す上向きの光軸22に一致するまでボンディングツール12を移動する。こうしてチップ10と基板14とが位置決めされ、他の原因がなければ、ボンディングにおける位置ずれはおこらない。
何らかの原因で、第1カメラ26の視野の中心を表す上向きの光軸22と第2カメラ28の視野の中心を表す上向きの光軸24とがずれてしまうと、図14の方法では不十分である。すなわち、基板14の基準位置を第2カメラ28の視野の中心を表す下向きの光軸24に一致させ、さらにチップ10の基準位置が第1カメラ26の視野の中心を表す上向きの光軸22に一致させたとしても、チップ10は所望の基板14の位置にボンディングされない。図15は、光軸24を基準に光軸22が+Xcずれた場合について、基板14の基準位置を第2カメラ28の視野の中心を表す下向きの光軸24に一致させた状態を示す図である。チップ10が破線の状態の位置にあるとして、これを第1カメラ26の視野の中心を表す上向きの光軸22に一致させたとしても、その光軸22は光軸24に対し+Xcずれているので、それに合わせたチップ10の基準位置は、基板14の基準位置に対し+Xcずれてしまう。
したがってボンディングにおける位置ずれを起こすことなく、正確な位置にボンディングを行うには、何らかの方法で第2カメラ28の視野の中心を表す光軸24を基準とする第1カメラ26の視野の中心を表す光軸22のずれ量+Xcを測定することが必要である。そして測定されたずれ量+Xcに基づき、チップ10の基準位置を第1カメラ26の視野の中心を基準として−Xcだけ補正した位置に合わせることで、2カメラ間で光軸のずれがあっても正確なボンディングを行うことができる。
第1カメラと第2カメラのずれ量の測定方法として、特許文献2には、高さの異なる2つの表面又は基準表面にそれぞれ基準マークを配置し、予めこの高さの異なる2つの基準マークの間における位置関係を調整して整列させ、これを基準とする方法が開示されている。すなわち、チップ表面と基板表面を同時に観察できる光学装置をこの予め位置関係を整列させた2つの基準マークの間に挿入し、第1カメラと第2カメラのずれ量を測定する。
また、特許文献3には、光軸が互いに向かい合う方向を有する第1認識カメラと第2認識カメラを有する半導体位置合わせ装置において、第1認識カメラの高さと第2認識カメラの高さの間に設けられたターゲットを基準として、2つの認識カメラにおける基準位置の変化を検出する方法が開示されている。すなわち、ターゲットをはさんで第1認識カメラと第2認識カメラを同軸上に位置できるようにこれらを相対移動させ、ターゲットを基準として第1認識カメラと第2認識カメラの基準位置を測定し記憶する。次に通常のボンディング作業を行い、その後再び先の基準位置測定と同じ測定を行い、その測定位置が記憶された基準位置から変化しているかをみることで、2つの認識カメラにおける基準位置の変化が検出できる。
特開2001−176934号公報
特公平6−28272号公報
特許第2780000号
チップや基板に対する多ピン化及び細密化の傾向が進展するにつれ、フェースダウンボンディング装置において、基板上にチップをより高精度に配置することが要求されてきている。基板上にチップをより高精度に配置するには、ボンディングにおける位置ずれをより少なくすることが必要である。したがって、上記のように2カメラ間のずれをより正確に検出することが必要である。
2カメラ間のずれを検出する従来技術の方法のうち、特許文献2の方法は、2つのターゲットが必要で、さらにこれらターゲット間の位置関係の調整整列作業を要し、構成が複雑で作業に時間を要する。
また、特許文献3の方法は、正確なずれ検出を行うために認識カメラの合焦位置が制約される。すなわち、この方法においては、ターゲットを認識する際に、第1認識カメラの合焦位置も第2認識カメラの合焦位置もターゲット上にあることが必要である上に、ボンディングの際の位置決めにおいてはチップを認識するカメラの合焦位置はチップ上に、基板を認識するカメラの合焦位置は基板上にあることが必要である。
また、ターゲットを用いることで基準位置を設けることができるが、ターゲット自身の位置が、例えばボンディング作業における温度上昇等の影響や、経時変化によってずれてくることがあり、場合によっては十分な位置基準とならないことがある。
それに加え、ボンディング作業に際し、ボンディングツールが位置決め高さから基板上のボンディング高さまで光軸に平行に移動しないときは、ボンディングにおける位置ずれが生ずる。これにより、仮に、第1カメラの光軸と第2カメラの光軸のずれ量+Xcが正確に測定できてその補正を行ったとしても、基板上にチップを正確に配置することができないことが生ずる。その様子を図16に示す。
図16において、上向きの光軸22と下向きの光軸24とが正確に軸あわせされている。この場合に、ボンディングツール12が、基板上の高さから第1カメラ26の合焦位置の高さまで光軸22と平行に移動してくれれば、図14で説明したように、第2カメラ28の視野の中心に基板14の基準位置を合わせ、ついで第1カメラ26の視野の中心にチップ10の基準位置と基板14の基準位置を合わせればよい。いま、ボンディングツール12が基板上の高さから第1カメラ26の合焦位置の高さまで移動する間に、その位置が+Xnずれるものとする。このとき、基板14の基準位置を第2カメラ28の視野の中心を表す下向きの光軸24に一致させ、さらにチップ10の基準位置が第1カメラ26の視野の中心を表す上向きの光軸22に一致させたとしても、チップ10は所望の基板14の位置ではなく、基板14上で−Xnの位置にボンディングされてしまい、ボンディングにおける位置ずれが起こる。
したがって基板14上の正確な位置にチップ10を配置するには、何らかの方法でボンディングツール12の移動によるずれ量、すなわち、基板上の高さにおける位置を基準として、第1カメラ26の合焦位置の高さまで移動する間にずれる量+Xnを測定することが必要である。そしてずれ量+Xnが測定されれば、基板14上で−Xnの位置にボンディングされないように、チップ10の基準位置を第1カメラ26の視野の中心を基準として+Xnだけ補正した位置に合わせることで、ボンディングにおける位置ずれを抑制し、基板14上の正確な位置にチップ10を配置することができる。
特許文献1及び特許文献2の方法では、ボンディングツールの移動によるずれ量を知ることができない。しかし、一般的には、試しボンディングを行うことでずれ量+Xnを測定できる。すなわち、ずれ量+Xnがわかっていないとしても、基板14の基準位置を第2カメラ28の視野の中心を表す下向きの光軸24に一致させ、さらにチップ10の基準位置が第1カメラ26の視野の中心を表す上向きの光軸22に一致させてボンディングを行えば、上記のように、基板14上でチップ10は−Xnずれる。したがって試しボンディングによって検出されるずれ量の符号を反転すれば、ボンディングツールの移動によるずれ量+Xnを求めることができる。
しかし、試しボンディングによって測定できるのは、チップの裏面側の外形と基板との間のずれ量であり、チップの電極パッドと基板のボンディングリードとの間のずれ量を正確に測定することはできない。また、ボンディング作業中に試しボンディングを行うには基板及びチップを無駄にする可能性があり、オフラインで試しボンディングを行うのは効率がよくない。
このように、従来技術においては、2カメラ間のずれ量を測定するには位置基準に用いるターゲットを含む装置の構成に制約があり、また、ボンディングツールの移動によるずれ量を正確に測定することができない。したがって、ボンディングにおけるチップと基板の位置決めに際し、これらのずれ量のより正確な補正が困難で、ボンディングにおける位置ずれをより少なくすることができない。また、ターゲットの位置の経時変化により十分な精度でずれ量を検出できない。
本発明の目的は、かかる従来技術の課題を解決し、ボンディングにおける位置ずれをより少なくすることができるボンディング装置を提供することである。他の目的は、ボンディングにおけるチップと基板の位置決めに際し、位置決め用の2カメラ間のずれ量とともにボンディングツールの移動のずれ量も補正できるボンディング装置を提供することである。また、他の目的は、ずれ量の補正において、ターゲット位置の経時変化の影響を抑制できるボンディング装置を提供することである。
1.本発明の原理
以下に、ボンディングにおける位置ずれをより少なくすることができる本発明の原理、特に、ボンディングにおけるチップと基板の位置決めに際し、位置決め用の2カメラ間のずれ量とともにボンディングツールの移動のずれ量も補正できる原理を説明する。ここでは、図14−16で説明したと同様に、1次元方向、すなわちX方向の位置決めについて説明するが、1次元のベクトルを2次元のベクトルに置き換えて、2次元の位置決めに拡張することは容易である。また、図14−16と同様に、位置あるいは位置間の距離の測定に際して各カメラの倍率を考慮する必要があるが、以下においても、特に断らない限り、カメラにより測定される位置間距離を実際の距離、すなわち物体面上の距離に換算して説明を進めることとする。
最初に、位置決め用の2カメラ間のずれ量とともにボンディングツールの移動のずれ量が存在する場合において、ボンディングにおける位置ずれをなくすために、チップと基板の位置決めについて補正すべき補正量ΔXを明らかにする。各要素の配置、ずれ量及び補正量について図14−16と同じ座標系と記号を用いると、上記のように、2カメラのずれ量+Xcに対する補正量は−Xcであり、ボンディングツールの移動によるずれ量+Xnに対する補正量は+Xnである。そして、この2つがともに存在するときは、図15にさらに+Xnのボンディングツールの移動によるずれが起こった場合でも、図16にさらに+Xcの光軸ずれが起こった場合でも同じ結論になることからも理解できるように、その場合の補正すべき補正量は、(−Xc+Xn)である。したがって、位置決め用の2カメラ間のずれ量とともにボンディングツールの移動のずれ量が存在する場合において、ボンディングにおける位置ずれをなくすために必要な位置決めに対する補正量ΔXは、次の式(1)で与えられる。
ΔX=−Xc+Xn ・・・(1)
本発明に係るボンディング装置は、基板とボンディングツールに保持されたチップの位置決めを行う機能に加えて、ボンディングにおける位置ずれを補正するための補正量ΔXを求める補正機能を有する。すなわち、位置決め及びボンディングを行う位置決め・ボンディングポジションと別に、補正量ΔXを求めるための補正ポジションが設定される。補正ポジションには、補正用の位置基準であるターゲットと、補正用カメラとが設けられ、チップの位置を測定する第1カメラと、基板の位置を測定する第2カメラと、チップを保持するボンディングツールは、補正ポジションに移動可能である。
図1は、補正ポジションにおける各要素の位置関係を示す図である。図14−16と共通の要素には同一の符号を付してある。座標系は、ボンディングが行われるボンディング面に平行な面をXY面とし、ボンディングツール12が上下方向に移動する方向をXY面に垂直なZ方向として、X軸とZ軸を示してある。Z軸方向の高さZ1とZ2はそれぞれ、位置決め・ボンディングポジションにおける基板の高さとボンディングツールに保持されるチップの高さである。なお、位置決め・ボンディングポジションにおいて位置決めを行うときは上下カメラ20がそのポジションに移動し、第1カメラ26の合焦位置はボンディングツールに保持されるチップの面上に、すなわちZ2の高さのところに設定され、第2カメラ28の合焦位置は基板の面上に、すなわちZ1の高さのところに設定される。
図1に示されるように、補正ポジションの所定位置に、補正用カメラ30と補正用の位置基準であるターゲット32が配置される。ターゲット32は、高さZ1の位置、すなわち基板14のボンディング高さと同じ高さの位置に設けられる。補正用カメラ30はターゲット32を観察できるように、ターゲット32を合焦位置としてターゲット32の下方に上向きに配置される。なお、図1において、ターゲット32は、水平面、すなわちXY面内に長手軸を有する基準ピンを用い、その先端を補正用の位置基準としてあるが、補正用の位置基準としては、補正用カメラ30及び第2カメラ28の双方から位置基準が撮像できるものであればよい。
次に、補正量ΔXを求めるための各要素の動作とそのときのX軸上の位置関係を説明する。最初にボンディングツール12を図示されていない位置決め・ボンディングポジションから所定距離移動して補正ポジションに移し、さらに上方に引き上げる。そのときのボンディングツール12uに保持されたチップ10uの高さを第1カメラ26の合焦位置の高さZ2とする。なお、添え字uは、高さZ2にあることを示し、後述の高さZ1にあるときには添え字dを付して区別するためである。その状態で、第1カメラ26と第2カメラ28を一組として図示されていない位置決め・ボンディングポジションから所定距離移動して補正ポジションに移し、第2カメラ28及び補正用カメラ30でターゲット32を撮像し、第1カメラ26でボンディングツール12uに保持された高さZ2におけるチップ10uを撮像する。
次に、各要素の位置関係を計算するため、座標系は図1に示すように紙面の右側方向を+X方向にとり、各要素の位置は、各カメラの撮像中心を基準として考えることとする。図1には、以下で説明するX1,X2,X3,X4,Xc,Xnをベクトルとして、その正方向を矢印の方向で示した。ここで、第2カメラ28の撮像中心を表す光軸24の位置をXbとし、これを基準に各要素のX軸上の位置関係を表すものとする。いま、X2を光軸24の位置(Xb)からみたターゲット32の先端位置までの距離とすれば、ターゲット32の先端位置は、Xb+X2である。X2は第2カメラ28の撮像データから求めることができる。
また、X1を補正用カメラ30の撮像中心を表す光軸31からみたターゲット32の先端位置までの距離とすれば、補正用カメラ30の撮像中心を表す光軸31の位置は、Xb+X2−X1である。X1の符号がマイナスになっているのは、図1の例でベクトルX1の正方向の向きが−X方向だからである。X3は補正用カメラ30の撮像データから求めることができる。
また、Xcを第2カメラ28の撮像中心を表す光軸24からみた第1カメラ26の撮像中心を表す光軸22までの距離とすると、第1カメラ26の撮像中心を表す光軸22の位置は、Xb+Xcである。そして、X3を第1カメラ26の撮像中心を表す上向きの光軸22からみた高さZ2におけるチップ10uの基準位置までの距離とすると、高さZ2におけるチップ10uの基準位置は、Xb+Xc+X3である。X3は第1カメラ26の撮像データから求めることができる。
次に、必要ならば第1カメラ26と第2カメラ28及びターゲット32を適当に退避させた上で、ボンディングツール12を下げ、基板14の高さZ1と同じ高さにボンディングツール12dに保持されたチップ10dの高さをもってくる。このときボンディングツール12のZ軸方向の移動による位置ずれXnが生ずるが、その状態で、ボンディングツール12dに保持されたチップ10dを補正用カメラ30で撮像する。X4を補正用カメラ30の撮像中心を表す光軸31からみた高さZ1におけるチップ10dの基準位置までの距離とすれば、高さZ1におけるチップ10dの基準位置は、Xb+X2−X1+X4である。X4は補正用カメラ30の撮像データから求めることができる。
ここで、ボンディングツール12の移動による位置ずれXnを、高さZ1におけるチップ10dの基準位置(Xb+X2−X1+X4)からみた高さZ2におけるチップ10uの基準位置までの距離とすれば、高さZ2におけるチップ10uの基準位置は、Xb+X2−X1+X4+Xnである。
先ほど第1カメラ26により得られた高さZ2におけるチップ10uの基準位置は、Xb+Xc+X3であるので、これをXb+X2−X1+X4+Xnと等しいとおいて、
Xb+Xc+X3=Xb+X2−X1+X4+Xn
となり、さらに、Xc=X2−X1+X4+Xn−X3
となる。ここから、補正量ΔX=−Xc+Xnを導くと、式(2)となる。
−Xc+Xn=ΔX=X3−(X2−X1+X4) ・・・(2)
式(2)の右辺の成分であるX3,X2,X1,X4は、それぞれ撮像データから求められる位置偏差量であるので、補正量ΔX=−Xc+Xnは、各撮像データに基づいて求めることができる。このように、本発明の構成によれば、2カメラのずれ量+Xcとボンディングツールの移動によるずれ量+Xnとを独立して測定しなくても、4つの位置偏差量の測定から、必要な補正量ΔXを求めることができる。
また、X3,X2,X1,X4は、1つの位置基準と、ボンディングツール12上の基準位置を用いることでそれぞれのカメラの撮像データから求めることができる。したがって、従来技術のように、予め位置関係を調整整列された2つのターゲットを用いる必要もなく、あるいはターゲットに対する第1カメラ及び第2カメラの合焦位置に対する制約もない。
また、上記のような構成のターゲット32を用いることで、ずれ量の補正において、ターゲット位置の経時変化の影響を抑制できる。すなわち、第1に、ターゲット32の先端位置の測定は、補正ポジションにおいて補正用カメラ30及び第2カメラ28によって行われるが、これは同じターゲット32の先端位置を上下方向から撮像することで処理できるので、略同時に実行できる。これ以外にターゲット32の測定は必要ないので、ターゲット32の位置は、この2つの撮像処理の間でほとんど変化せず、したがって、ターゲット32の位置における経時変化の影響を抑制できる。
また、第2に、ターゲット32の先端位置の撮像処理が終われば、ターゲット32の先端位置が求められ、この計算値を保存して以後の位置ずれ算出に用いるので、ターゲット32は適当な位置に退避しても構わない。つまり、ボンディング作業の温度の影響等を受けないところにターゲット32を退避させ、ターゲット32の先端位置の再現精度に影響を及ぼさないようにできる。
なお、X1の測定において、ボンディングツールの高さ位置を基板14の高さ位置Z1としなくても、撮像データからX3,X2,X1,X4が求められ式(2)を計算することができる。上述したように、X3,X2,X1,X4を求めるにあたっては、従来技術のような装置上の制約がないので、この場合でも式(2)の計算値に基づいて位置決めの補正を行えば、従来に比してより正確に補正が行え、ボンディングにおける位置ずれをより抑制することができる。
ただし、ボンディングツールの高さ位置を基板14の高さ位置Z1としない場合には、ボンディングツールの上下方向の移動によるずれに伴う補正が十分でないことがあるので、より好ましくは試しボンディングを併用することがよい。例えば、式(2)で求められた補正量に基づいて位置決めを補正し、さらにこの補正を行った状態で試しボンディングを行って、この補正後におけるボンディングツールの上下方向の移動によるずれに伴う補正量を別途求める。このように試しボンディングを併用することで、ボンディングにおける位置ずれをさらに抑制することができる。
2.課題解決手段
本発明に係るボンディング装置は、ボンディングツール又はボンディングツールに保持されたボンディング対象物又はボンディングツールに保持された測定用部材の少なくとも1つをボンディングツールに関する対象物として、ボンディングツールに関する対象物の位置を測定する第1カメラと基板の位置を測定する第2カメラとによって対象物の位置と基板の位置を同時に観察する上下カメラを含む位置決め機構を有し、位置決め機構により、ボンディングツールに保持されたボンディング対象物をボンディング作業面に配置された基板の決められた位置に位置決めしてボンディングを行うボンディング装置において、位置決め機構は、さらに、位置基準を有し両側から観察可能なターゲットと、ターゲットの一方側に予め定められた位置関係で配置される補正用カメラと、補正用カメラにより、ターゲットを撮像し、撮像データよりターゲットの位置基準と補正用カメラの撮像基準位置との間の第1位置偏差であるX 1 を求める第1測定手段と、上下カメラを所定の補正ポジションに配置し、予め定められた位置関係で第2カメラをターゲットの他方側に配置し、第2カメラによりターゲットを撮像し、撮像データよりターゲットの位置基準と第2カメラの撮像基準位置との間の第2位置偏差であるX 2 を求める第2測定手段と、補正ポジションに上下カメラを配置した状態において、予め定められた位置関係で第1カメラをボンディングツールに関する対象物に向かい合わせ、第1カメラによりボンディングツールに関する対象物を撮像し、撮像データよりボンディングツールに関する対象物の基準位置と第1カメラの撮像基準位置との間の第3位置偏差であるX 3 を求める第3測定手段と、予め定められた位置関係でボンディングツールに関する対象物を第1カメラで撮像される高さの位置から基板の高さの位置に移動させて配置し、補正用カメラにより、ボンディングツールに関する対象物を撮像し、撮像データよりボンディングツールに関する対象物の基準位置と補正用カメラの撮像基準位置との間の第4位置偏差であるX 4 を求める第4測定手段と、第1位置偏差であるX 1 と第2位置偏差であるX 2 と第3位置偏差であるX 3 と第4位置偏差であるX 4 とに基づき、ボンディングにおける位置ずれとして{X 3 −(X 2 −X 1 +X 4 )}を算出する算出手段と、算出結果に基づき、第1カメラと第2カメラとの間の光軸ずれとボンディングツールの移動のずれ量とが存在する場合においてボンディングにおける位置ずれを補正して位置決めを行う手段と、を備え、第1測定手段におけるターゲットの撮像と、第2測定手段におけるターゲットの撮像とは、同時または近接した時間に行われることを特徴とする。
また、本発明に係るボンディング装置において、ターゲットの撮像データ又はそれに基づくデータを記憶する記憶手段を備え、ターゲットは、その撮像データ又はそれに基づくデータが記憶された後に、撮像位置から退避可能であることが好ましい。
また、本発明に係るボンディング装置において、ターゲットは、高さ方向に移動し、補正用カメラの合焦位置から外れる高さに退避することが好ましい。
また、ターゲットは、水平面内に長手軸が配置される基準ピンであることが好ましい。
また、ターゲットは、基板が配置される高さと同じ高さに配置されることが好ましい。
上記構成により、第1カメラと第2カメラとを有する位置決め機構は、その位置ずれを補正するために、さらに位置基準を有するターゲットと、補正用カメラとを備え、ターゲットの位置基準と補正用カメラの撮像基準位置との間の第1位置偏差と、ターゲットの位置基準と第2カメラの撮像基準位置との間の第2位置偏差と、ボンディングツールに関する対象物の基準位置と第1カメラの撮像基準位置との間の第3位置偏差と、ボンディングツールに関する対象物の基準位置と補正用カメラの撮像基準位置との間の第4位置偏差とを求める。第1位置偏差から第4位置偏差は、本発明の原理で説明したX1,X2,X3,X4に対応するので、これらに基づいてボンディングにおける位置ずれを求めてそれを補正する。したがって、ボンディングにおける位置ずれをより少なくすることができる。
このとき、ターゲットは第2カメラと補正用カメラとによって撮像されるが、この撮像を略同時に行うことにしたので、補正作業を行う間におけるターゲットの位置の経時変化が撮像データに基づく位置偏差の算出に影響することを抑制できる。例えば、ボンディング装置がヒータ等を有している場合等は、高い環境温度によって補正作業を行う間においてもターゲットの位置が変化することがある。そのような経時変化についても、ターゲットに必要な撮像の全てを、略同時に行うことで、撮像データの取得時刻の差による影響をなくすことができる。
また、ターゲットは、撮像データ等が記憶された後に撮像位置から退避するものとしたので、第4位置偏差を求める際に、ボンディングツールに関する対象物の高さ位置の設定の妨げとならず、例えば、ターゲットの撮像位置の高さにボンディングツールに関する対象物の高さを正確に設定することも可能となる。さらに、ターゲットをボンディングツールから十分離して退避させることで、例えばボンディングツールが高温の場合等における温度の影響がターゲットに及ばないようにできる。
また、ターゲットは、高さ方向に移動して退避することとしたので、ターゲットが水平方向に退避することに比べ、その水平面内の位置の再現性を向上させることができる。また、補正用カメラの合焦位置から外れる高さに退避するので、補正用カメラの撮像データに影響を及ぼさない。
また、ターゲットは、水平面内に長手軸を有する基準ピンとしたので、容易に位置基準としてのターゲットを製作でき、また、透明板のターゲットを用いる場合に比べ、光が透明板を通過するときの屈折等の影響がない。
また、基板が配置される高さと略同じ高さにターゲットを配置する。基板が配置される高さと略同じ高さにボンディングツールに関する対象物を配置して第4位置偏差を求める。これにより、本発明の原理において説明したように、ボンディングツールの高さ方向の移動によるずれ+Xnと、位置決め用の2カメラ間のずれ+Xcとがともに存在するときの補正量ΔX=−Xc+Xnを求め、これらを補正する。したがって、ボンディングにおける位置ずれをより少なくすることができる。
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。なお、以下の説明においては、図14−16及び図1と同様の要素には同一の符号を付した。以下において、ボンディング装置は、バンプを有するLSIチップをフィルム基板にフェースダウンボンディングするCOF(Chip On Film)ボンディング装置として説明するが、チップはLSIチップ以外の半導体素子あるいは電子デバイスであってもよく、基板はガラエポ基板、フィルムの開口領域にボンディングリードを張り出させたテープ基板等を用いてもよい。COF(Chip On Film)ボンディング装置は、ボンディングツールを加熱し、その熱によりバンプと基板とがボンディングされるものとして説明するが、その他に基板側を加熱してもよく、ボンディングツールと基板の双方を加熱するものとしてもよい。また、超音波エネルギを併用して、加熱温度を低くするボンディング装置であってもよい。
図2はCOF用のボンディング装置50の構成図である。ボンディング装置50は、チップ10の裏側を吸引等で保持するボンディングツール12と、基板14を保持して搬送するキャリア16と、チップ10を供給する供給ステーション52と、基板14とチップ10との位置を検出する上下カメラ60と、ボンディングにおける位置ずれを補正するために用いられる補正用カメラ30と、ターゲット移動機構54に保持された位置基準としてのターゲット32と、これらの要素の動作を制御する制御装置部100とを備える。
チップ10は、LSIチップであって、その各入出力端子のパッドには金を主成分とするバンプが設けられている。基板14は、電子部品用プラスチックフィルムに導体パターンが配線されているフィルム基板で、チップ10のバンプが接続される配線パターン部分には、錫を主成分とした金属層が設けられる。この錫を主成分とした金属層の上に金を主成分とするバンプを位置決めし、約500℃程度の温度で加圧することで、ボンディングを行うことができる。すなわち、COF用のボンディング装置50は、チップ10と基板4との間の位置決めと、加熱加圧によりチップ10を基板14にボンディングする機能を有するボンディング装置である。
ボンディングツール12は、先端にチップ保持部分を有する4角錐形状の部材で、中心にはチップ保持部分に通ずる真空吸引穴が設けられ、制御装置部100の制御によりチップ保持部分においてチップ10の吸引保持を行うことができる。また、ボンディングツール12は、内部にヒータを内蔵し、例えばチップ10を約500℃程度に加熱することができる。温度の制御も制御装置部100により行われる。
ボンディングツール12は、図示されていない移動機構に搭載されており、制御装置部100の制御の下で、図2に示すX,Y,Z方向に移動することができる。具体的には、供給ステーション52からチップ10をピックアップする位置であるピックアップポジション90と、チップ10と基板14との間の位置決めを行い、その後ボンディングを行う位置である位置決め・ボンディングポジション92と、位置決めに対する補正量を求めるための補正ポジション94との間を移動することができる。それぞれのポジションにおいて、ボンディングツール12はZ方向の上下移動を行うことができ、各ポジション間において水平移動あるいは斜め移動を行うことができる。
キャリア16は、基板14を保持する治具で、図示されていないコンベヤ等の搬送機構によりY方向に搬送される。搬送の制御は、制御装置部100により行われ、基板14は供給口から搬送されて位置決め・ボンディングポジション92に止まる。位置決め・ボンディングポジション92においてチップ10と基板14との間の位置決め及びチップ10のボンディングが行われた後は、搬出口に向けて搬送され、同時に次の基板が搬送されてきて位置決め・ボンディングポジション92に止まる。
上下カメラ60は、内部に2台のカメラを備える光学部品である。図3に上下カメラ60の内部構成を示す。上下カメラ60は、適当なハウジングの内部に第1カメラ26と第2カメラ28と、反射鏡62,64と、両面反射鏡66とを備える。第1カメラ26と第2カメラ28は、CCD(Charge Coupled Device)を有する撮像装置で、その開口部がともに+X軸方向に向けられ、上下カメラ60のX方向の中心軸に対し対称の位置に配置される。反射鏡62,64は、その反射面がそれぞれX軸に対しZ軸を軸として−45度及び+45度の傾きを有し、上下カメラ60のX方向の中心軸に対し対称に配置される。両面反射鏡66は、両面反射面が、XY面に対し45度の傾きを有し、上下カメラ60のX方向の中心軸と反射鏡62と反射鏡64とを結ぶ線が交差する位置に配置される。
かかる内部構成の上下カメラ60の作用を説明する。第1カメラ26の撮像中心を表す光軸は、その開口部から+X方向に向かい、反射鏡62で90度方向が変更されて−Y方向に向かい、両面反射鏡66の上側反射面で90度方向が変更され+Z方向に向かう。つまり、上向きの光軸22となって、上下カメラ60の外部に向かう。一方、第2カメラ28の撮像中心を表す光軸は、その開口部から+X方向に向かい、反射鏡62で90度方向が変更されて+Y方向に向かい、両面反射鏡66の下側反射面で90度方向が変更され−Z方向に向かう。つまり、下向きの光軸24となって、上下カメラ60の外部に向かう。
このように、上下カメラ60は、第1カメラ26の撮像中心を表す光軸22を上向きに、第2カメラ28の撮像中心を表す光軸24を下向きとして、外部に向かわせる機能を有する。上下カメラ60は、予め光軸22と光軸24とを方向が逆で、その軸が組み立て時には一致するようにハウジング内に組み付けられる。
第1カメラ26と第2カメラ28を同じ性能のものとするときは、上下カメラ60の高さ位置は、基板14の高さ位置Z1と、基板14との位置決めにおけるチップ10の高さ位置Z2との中間の高さ位置に設定される。そして、基板14とボンディングツール12に保持されたチップ10の位置決めにおいては、第1カメラ26がチップ10の表面に合焦し、第2カメラ28が基板14の表面に合焦するように、全体の光学系が設計される。
上下カメラ60は、通常はボンディング作業の妨げにならない退避ポジション96に退避しており、制御装置部100の制御により、その位置からX方向に移動可能である。具体的には、位置決め・ボンディングポジション92及び補正ポジション94に移動することができる。
補正用カメラ30は、CCDを有する撮像装置で、補正ポジション94に配置される。その開口部は上向き、すなわち+Z方向を向き、その高さ位置は、基板14の表面の高さZ1に合焦位置がくるように設定される。あるいは、補正用カメラ30をテレセントリック光学系としてもよい。
ターゲット32は、ターゲット移動機構54に保持され、先端が位置基準となる基準ピンである。ターゲット32は、ワイヤボンディングに用いられるキャピラリのように、先端が先細りとなるテーパ状のピンで、先端は、例えば直径15μm程度の円形面又は半球状に正確に仕上げられたものを用いることができる。ターゲット32は、その長手軸がXY平面に平行に配置される。ターゲット32の長手軸の方向は、図2に示すように、例えばY軸に平行とすることができる。かかるターゲット32は、金属材料やセラミック材料を所定の形状に加工したものを用いることができる。
ターゲット移動機構54は、ターゲット32を制御装置部100の制御の下で、Z方向に移動させる機構で、例えばモータ等を用いることができる。ターゲット32の移動範囲は、基板14の高さ位置Z1と、補正用カメラ30の上部との間である。
ターゲットは、補正用カメラ30と第2カメラ28の双方から位置基準として観察できれば、基準ピン形状以外のものでもよい。他の例として、図4に示す薄い透明板の上に位置基準となるクロスヘアパターンが設けられたターゲット33を用いてもよい。このターゲット33は、薄いプラスチック板、薄いガラス板等の薄い透明板に、エッチング等でクロスヘアパターンを設けたものである。位置基準は、十分な精度で持って測定できる安定したパターンであれば、クロスヘアパターン以外のパターンであってもよい。クロスヘアパターン等の位置基準は、ターゲット33の上面、すなわちボンディングツール12に向かい合う面に設けられ、その高さ位置を基板14の高さ位置Z1に設定されることがよい。その他のターゲットとして、例えば、ターゲット32の母材を薄く不透明な板とし、その両面に位置基準を設けたものでもよい。
次に、制御装置部100の構成を説明する。制御装置部100は、ボンディング装置を構成する各要素を制御する機能を有し、特に上下カメラ60内部の第1カメラ26と第2カメラ28及び補正用カメラ30から撮像データを取得し、これらのデータに基づいて位置決め及び位置決めにおける補正を行う機能を有する装置で、一般的なコンピュータで構成できる。
具体的には、補正ポジション94において、上下カメラ60とボンディングツール12の動作を制御し、補正用カメラ30と上下カメラ60の3つのカメラから必要な撮像データを取得し、これらのデータを処理して、ボンディングにおける位置ずれを算出する機能を有する。また、ターゲット移動機構54動作の制御により、ターゲット32を撮像が終わった後退避させる機能を有する。また、位置決め・ボンディングポジション92において、上下カメラ60とボンディングツール12と必要な場合キャリア16の動作を制御し、上下カメラ60から必要な撮像データを取得し、補正ポジション94において算出されたボンディングにおける位置ずれを補正するように、基板14とボンディングツール12に保持されたチップ10の相対的な位置決めを行い、ボンディング作業を実行させる機能を有する。これらの機能に対応する処理を行うには、ソフトウエアを用いることができ、対応する位置ずれ補正プログラム及びボンディングプログラムを実行することで所定の処理を行うことができる。処理の一部をハードウエアで実行させることもできる。
制御装置部100は、CPU102と、キーボード等の入力部104と、表示盤等のディスプレイである出力部106と、記憶装置108と、ボンディングツール12の動作を制御するボンディングツール制御部110と、補正用カメラ30の撮像動作を制御し撮像データを受け取る補正用カメラ制御部112と、ターゲット32の上下移動を制御するターゲット制御部114と、上下カメラ60の動作を制御し、その内部の第1カメラ26と第2カメラ28の撮像動作を制御し撮像データを受け取る上下カメラ制御部116とを含み、これらは内部バスで相互に結ばれる。
CPU102は、位置ずれ補正部120と、位置決め部122と、ボンディング処理部124とを含む。位置ずれ補正部120の中の第1位置偏差測定モジュール130乃至位置ずれ算出モジュール138は、本発明の原理で説明したX1,X2,X3,X4に相当する4つの位置偏差ベクトルを算出し、2次元の補正量Δ(X,Y)を求める機能を有する。これらについて、図5乃至図13を用いて説明する。
図5は、ボンディング装置50の構成要素のうち、上下カメラ60、キャリア16に保持された基板14、ターゲット32とその下部にある補正用カメラ30及びチップ10を保持したボンディングツール12の平面配置を模式的に示す図である。図6は、これらの構成要素の側面配置を模式的に示す図である。図5及び図6は、ボンディング装置50の初期状態を示す。すなわち、基板14は位置決め・ボンディングポジション92にあり、ターゲット32及び補正用カメラ30は補正ポジション94に設けられている。また、上下カメラ60は退避ポジション96にあり、ボンディングツール12はピックアップポジション90等にあってもよいが、初期状態であることを示すために位置決め・ボンディングポジション92の隣に後退しているものとしてある。なお、参考のため、位置決め・ボンディングポジション92におけるボンディングツール12と上下カメラ60の配置状態を破線で示した。
CPU102の第1位置偏差測定モジュール130、第2位置偏差測定モジュール132、第3位置偏差測定モジュール134は、いずれも補正ポジション94においてほぼ同時に処理が行われるが、便宜上第1位置偏差測定モジュール130から第2位置偏差測定、第3位置偏差測定の順序で処理が行われるものとして説明する。
これらの処理のために、ボンディングツール12と上下カメラ60が補正ポジション94に移動され、ターゲット32が基板14の高さZ1の高さに設定される。具体的には、制御装置部100の機能、特に最初に補正に関する処理を行う第1位置偏差測定モジュール130の機能により、次のことが実行される。すなわち、ボンディングツール制御部110に指令を与え、ボンディングツール12を補正ポジション94に移動させる。ボンディングツール12の高さは、第1カメラ26の合焦位置の高さであるZ2にチップ10のボンディング面がくるように設定される。そして、上下カメラ制御部116に指令を与え、上下カメラ60を補正ポジション94に移動させる。上下カメラ60の高さ位置は、第1カメラ26が上記のようにボンディングツール12のチップ10のボンディング面に合焦し、第2カメラ28は基板14の高さZ1に合焦するように設定される。さらにターゲット制御部114に指令を与え、ターゲット移動機構54を駆動してターゲット32を基板14の高さ位置であるZ1の高さにセットする。図7は、そのようにして設定された補正ポジション94における各要素の配置状況を示す図である。
その状態において、第1位置偏差測定モジュール130は、さらに、ターゲット32を補正用カメラ30で撮像させ、その撮像データに基づいて第1位置偏差を求める機能を有する。具体的には、補正用カメラ制御部112に指令を与え、撮像指示を出させ、撮像データを取得させ、取得した撮像データを第1位置偏差測定モジュール130に転送させる。そして、転送された撮像データに基づいて第1位置偏差を求める。
図8は、補正用カメラ30により撮像された撮像データから第1位置偏差(X1,Y1)を求める様子を説明する図である。撮像データは、実際には補正用カメラ30が上向き(+Z方向)にターゲット32とチップ10を撮像したデータであるが、図8では説明の便宜上、補正ポジション94の上方から見たときのデータに変換して示してある。同様に、以下の図10、図12等の撮像データにおいても補正ポジション94の上方から見たときのデータに統一して示してある。図8の撮像データ150において、視野の中央に補正用カメラ30の撮像中心を示す十字パターン152があり、その左下に、基板14の高さ位置Z1におけるターゲット32の撮像されたパターン154がある。補正用カメラ30の撮像中心を示す十字パターン152の交点は、補正用カメラ30の撮像基準位置であり、ターゲットのパターン154の先端は、ターゲット32の位置基準P0を示すものである。
第1位置偏差(X1,Y1)は、十字パターン152の交点を基準位置として、基準位置から、ターゲットのパターン154の位置基準P0に向かうベクトルで与えられる。1次元の場合には、補正用カメラ30の撮像中心を表す光軸31の位置からみたターゲット32の位置基準までの距離となり、本発明の原理で説明したX1となる。
第2位置偏差測定モジュール132は、補正ポジション94の図7の状態において、ターゲット32を第2カメラ28で撮像させ、その撮像データに基づいて第2位置偏差を求める機能を有する。具体的には、上下カメラ制御部116に指令を与え、第2カメラ28に撮像指示を出させ、撮像データを取得させ、取得した撮像データを第2位置偏差測定モジュール132に転送させる。そして、転送された撮像データに基づいて第2位置偏差を求める。
図9は、第2カメラ28により撮像された撮像データから第2位置偏差(X2,Y2)を求める様子を説明する図である。図9の撮像データ156において、視野の中央に第2カメラ28の撮像中心を示す十字パターン158があり、その右上にターゲット32の撮像されたパターン160がある。第2カメラ28の撮像中心を示す十字パターン158の交点は、第2カメラ28の撮像基準位置であり、ターゲットのパターン160の先端は、ターゲット32の位置基準P1を示すものである。
第2位置偏差(X2,Y2)は、第2カメラ28の撮像中心を示す十字パターン158の交点を基準位置として、基準位置から、ターゲットのパターン160の位置基準P1に向かうベクトルで与えられる。1次元の場合には、第2カメラ28の撮像中心を表す光軸24の位置からみたターゲット32の位置基準までの距離となり、本発明の原理で説明したX2となる。
第3位置偏差測定モジュール134は、補正ポジション94の図7の状態において、チップ10を保持したボンディングツール12を第1カメラ26で撮像させ、その撮像データに基づいて第3位置偏差を求める機能を有する。具体的には、上下カメラ制御部116に指令を与え、第1カメラ26に撮像指示を出させ、撮像データを取得させ、取得した撮像データを第3位置偏差測定モジュール134に転送させる。そして、転送された撮像データに基づいて第3位置偏差を求める。
図10は、第1カメラ26により撮像された撮像データから第3位置偏差(X3,Y3)を求める様子を説明する図である。図10の撮像データ162において、視野の中央に第1カメラ26の撮像中心を示す十字パターン164があり、その右上に、高さZ2におけるチップ10uの撮像された基準パターン166uのエッジがある。ここで上記のように、添え字のuは、後述の第4位置偏差を求めるときのチップと高さ位置が異なることを区別するために用いている。チップ10uの基準パターンとしては、後述する第4位置偏差測定のときと同じものが用いることができればよい。例えば、特定の電極パッドの形状パターン、あるいはチップ10の特定のエッジ形状パターンを用いることができる。第1カメラ26の撮像中心を示す十字パターン164の交点は、第1カメラ26の撮像基準位置であり、チップの基準パターン166uのエッジは、チップ10uの基準位置を示すものである。
第3位置偏差(X3,Y3)は、第1カメラ26の撮像中心を示す十字パターン164の交点を基準位置として、基準位置から、高さZ2におけるチップ10uの基準パターン166uのエッジに向かうベクトルで与えられる。1次元の場合には、第1カメラ26の撮像中心を表す光軸22の位置からみた高さZ2におけるチップ10uの基準位置までの距離となり、本発明の原理で説明したX3となる。
上記において、第1位置偏差を求める処理と、第2位置偏差を求める処理とは、ともに高さZ1にあるターゲット32の撮像処理を含む。ターゲット32は、本発明の原理で説明したように、第1カメラ26の光軸22と第2カメラの光軸24との間の位置ずれXcと、ボンディングツール12が上下するときの位置ずれXnを求めるときの位置基準となるものであるので、位置ずれ補正処理の間においてその位置が変化しないことが求められる。
実際には、ターゲット32を保持するターゲット移動機構54の保持の経時変化や、高温のボンディングツール12からの熱で、ターゲット32の位置は位置ずれ補正処理の間に補正処理に影響を及ぼす程度の変化を生ずることがある。そこで、第1位置偏差を求めるためのターゲット32の撮像処理と、第2位置偏差を求めるためのターゲット32の撮像処理とは、同時に行うことが好ましい。具体的には、上下カメラ制御部116からの第2カメラ28に対する撮像指示と、補正用カメラ制御部112からの補正用カメラ30に対する撮像指示とを、可能ならば同時に、同時処理ができないときは、できるだけ近接した時間で行う。そして、撮像したデータを記憶装置108等に一旦記憶し、その後、各位置偏差を求める画像データ処理及び必要な演算処理を行う。
第1位置偏差から第3位置偏差を求める処理に引き続き、少なくとも第1位置偏差から第3位置偏差を求めるための各撮像処理が終わると、第4位置偏差測定モジュール136は、基板14の高さZ1において、チップ10dを保持したボンディングツール12dを補正用カメラ30で撮像させ、その撮像データに基づいて第4位置偏差を求める機能を有する。具体的には、以下の複数の処理を行う。すなわち、上下カメラ制御部116に指令を与え、上下カメラ60を退避ポジション96に移動させる。そして、ターゲット制御部114に指令を与え、ターゲット移動機構54を駆動してターゲット32を補正用カメラ30の上部側に近づけるように降下させる。その後、ボンディングツール制御部110に指令を与え、ボンディングツール12の高さが、基板14の高さであるZ1にチップ10のボンディング面がくるように降下させる。図11は、そのようにして設定された補正ポジション94における各要素の配置状況を示す図である。
ターゲット32を基板14の高さであるZ1から補正用カメラ30の上部側に近づけるように降下させるのは、1つには高さZ1にボンディングツール12が降下する妨げにならないようにするためである。これにより、チップ10のボンディング面が高さZ1に正しく設定することができる。もう1つの目的は、降下してくるボンディングツール12からターゲット32をできるだけ離して、高温のボンディングツール12からの熱の影響を退避中であってもより少なくするためである。また、補正用カメラ30の上部側に近づけるのは、このようにしても、補正用カメラ30の合焦位置からターゲット32が外れることで、補正用カメラ30によるボンディングツール12の撮像を妨げることにならないからである。また、ターゲット32の退避を水平方向の移動でなく、高さ方向の移動により行うこととしたのは、ターゲット32の退避の前後におけるXY平面内の位置の再現性が、水平方向の移動の方法に比べれば、より良いからである。
その状態において、第4位置偏差測定モジュール136は、さらに、チップ10を保持したボンディングツール12を補正用カメラ30で撮像させ、その撮像データに基づいて第4位置偏差を求める機能を有する。具体的には、補正用カメラ制御部112に指令を与え、補正用カメラ30に撮像指示を出させ、撮像データを取得させ、取得した撮像データを第4位置偏差測定モジュール134に転送させる。そして、転送された撮像データに基づいて第4位置偏差を求める。
図12は、補正用カメラ30により撮像された撮像データから第4位置偏差(X4,Y4)を求める様子を説明する図である。図12の撮像データ150において、視野の中央に補正用カメラ30の撮像中心を示す十字パターン152がある。これは図8における補正用カメラ30の視野の場合と同じである。そして、その右上に、高さZ1におけるチップ10dの撮像された基準パターン168dのエッジがある。ここで添え字のdは、前述の第3位置偏差を求めるときのチップと高さ位置が異なることを区別するために用いている。チップ10dの基準パターンとしては、前述の第3位置偏差測定のときと同じものを用いる。補正用カメラ30の撮像中心を示す十字パターン152の交点は、補正用カメラ30の撮像基準位置であり、チップの基準パターン168dのエッジは、チップ10dの基準位置を示すものである。なお、図8で測定したターゲット32の位置基準P0を参考のために示してある。
第4位置偏差(X4,Y4)は、補正用カメラ30の撮像中心を示す十字パターン152の交点を基準位置として、基準位置から、高さZ1におけるチップ10dの基準パターン168dのエッジに向かうベクトルで与えられる。1次元の場合には、補正用カメラ30の撮像中心を表す光軸31の位置からみた高さZ1におけるチップ10dの基準位置までの距離となり、本発明の原理で説明したX4となる。
このようにして求められた第1位置偏差(X1,Y1)、第2位置偏差(X2,Y2)、第3位置偏差(X3,Y3)及び第4位置偏差(X4,Y4)は、位置ずれ算出モジュール138に送られる。位置ずれ算出モジュール138は、これらのデータを用いてボンディングにおける位置ずれを補正する補正量Δ(X,Y)を求める機能を有する。補正量Δ(X,Y)は、本発明の原理で説明した式(2)を2次元に拡張した(3)式で与えられる。
Δ(X,Y)=(X3,Y3)−[(X2,Y2)−(X1,Y1)+(X4,Y4)]
・・・・(3)
次に、位置決め部122は、ボンディングにおける位置ずれのないように、上記のようにして求められた補正量Δ(X,Y)を用いて、基板14とチップ10とを位置決めする機能を有する。具体的には、次のいくつかの機能を含む。まず、ボンディングツール制御部110に指令を与え、ボンディングツール12を位置決め・ボンディングポジション92に移動させる。ボンディングツール12に保持されたチップ10の表面の高さ位置はZ2に設定される。また、上下カメラ制御部116に指令を与え、上下カメラ60も位置決め・ボンディングポジション92に移動させる。そして、上下カメラ60に含まれる第1カメラ26及び第2カメラ28に撮像指示を出し、第1カメラ26に対し、ボンディングツール12に保持されたチップ10の撮像と、第2カメラ28に基板14の撮像を行わせ、それらの撮像データを位置決め部122に転送させる。転送された撮像データと、先ほど求められた補正量Δ(X,Y)とに基づき、位置ずれを補正し、その結果をボンディングツール制御部110に指令を与え、それにしたがって、基板14の基準位置と、ボンディングツール12に保持されたチップ10の基準位置とを位置決めする。なお、位置決めのときのチップ10を保持するボンディングツール12と、基板14と、上下カメラ60の位置関係は、上記の図6において破線で示した。
図13は、第1カメラ26の視野の中で、補正量Δ(X,Y)の処理を行って位置決めする様子を説明する図である。いま、補正ポジション94から位置決め・ボンディングポジション92へ移動したとき、位置決め・ボンディングポジション92における第1カメラ26の撮像データ162が、補正ポジション94における図10と同じとする。この場合、第1カメラ26の撮像中心を表す十字パターン164の交点と、チップ10uの基準位置である基準パターン166uのエッジとの間が、第3位置偏差(X3,Y3)だけ離れている。いま、説明を簡単にするために、基板14の基準位置は第2カメラ28の撮像中心に一致しているものとする。この場合、第1カメラ26の撮像中心とチップ10の基準位置との位置決めは、第3位置偏差(X3,Y3)分を補正するのではなく、第1カメラ26の撮像中心からみて、補正量Δ(X,Y)の位置にチップ10の基準位置を移動させて行う。このようにすることで、式(3)に従ったボンディングにおける位置ずれを補正する位置決めを行うことができる。
補正量Δ(X,Y)との関係を示すため、図13に、図8、図9、図12でそれぞれ求められた第1位置偏差(X1,Y1)、第2位置偏差(X2,X2)、第4位置偏差(X4,X4)もあわせて図示した。なお、基板14の基準位置が第2カメラ28の撮像中心に一致していないときは、その不一致分だけ第1カメラ26の基準位置をずらすことで同様な補正を行うことができる。
ボンディングにおける位置ずれを補正する位置決めを行ったのち、ボンディング処理部124は、チップ10を基板14にボンディングする機能を有する。具体的には、次のいくつかの機能を含む。位置決め・ボンディングポジション92において上記の位置決めが行われた後、上下カメラ制御部116に指令を与え、上下カメラ60を退避ポジション96に退避させる。次にボンディングツール制御部110に指令を与え、チップ10を保持したボンディングツール12を降下させ、基板14にチップ10のバンプを接触させ、加圧加熱によりボンディングを行わせる。ボンディング処理が終了すれば、ボンディングツール12の真空吸引を止めてボンディングツール12を上昇させる。
このようにして、ターゲット32の撮像処理を略同時に行うようにすることで、位置基準であるターゲット32の補正処理の間における位置の経時変化の影響を抑制できる。すなわち、一旦ターゲット32の位置に関するデータ収集が終われば、そのデータによって、環境あるいは時間的に変化することのない仮想的に普遍的なターゲット32の位置を定めることができる。そして、以後は、この仮想的なターゲット32の位置に基づいて位置ずれの補正量を求めることができる。
また、このように一旦仮想的なターゲット32の位置が定まれば、ターゲット32を任意のところに退避させてもよい。したがって、チップ10を保持したボンディングツール12を基板14の高さZ1の位置に下降させることを妨げないところにターゲット32を退避させることができる。このことで、第4位置偏差を求める際に、チップ10を保持したボンディングツール12を基板14の高さZ1の位置に正しく下降させることができる。また、このことで、ターゲット32が高温のボンディングツール12に接触して、その位置精度を劣化させることもない。
したがって、ボンディングにおけるチップと基板の位置決めに際し、2カメラ間のずれ量及びボンディングツールの移動によるずれ量を正確に補正して、ボンディングにおける位置ずれをより少なくすることができる。