JP5287499B2 - 全固体型リチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Description
ガーネット型酸化物Li5+XLa3(ZrX,Nb2-X)O12(X=0〜2)は、Li2CO3、La(OH)3、ZrO2、およびNb2O5を出発原料に用いて合成を行った。ここで、実験例1〜7のXの値は、それぞれX=0,1.0,1.5,1.625,1.75,1.825,2.0とした(表1参照)。はじめに、出発原料を化学量論比になるように秤量し、エタノール中にて遊星ボールミル(300rpm/ジルコニアボール)で1時間、混合・粉砕を行った。出発原料の混合粉末をボールとエタノールから分離したのち、Al2O3製のるつぼ中にて、950℃、10時間大気雰囲気で仮焼を行った。その後、本焼結でのLiの欠損を補う目的で、仮焼した粉末に、Li5+XLa3(ZrX,Nb2-X)O12(X=0〜2)の組成中のLi量に対して Li換算で10at.%になるようにLi2CO3を過剰添加した。この混合粉末を、混合のためエタノール中にて遊星ボールミル(300rpm/ジルコニアボール)で1時間処理した。得られた粉末を再び950℃、10時間大気雰囲気の条件下で再度仮焼した。その後、成型したのち、1200℃、36時間大気中の条件下で本焼結を行い、試料(実験例1〜7)を作製した。
1.相対密度
電子天秤にて測定した乾燥重量をノギスを用いて測定した実寸から求めた体積で除算することにより、各試料の測定密度を算出した。また、理論密度を算出し、測定密度を理論密度で除算し100を乗算した値を相対密度(%)とした。実験例1〜7の相対密度は、88〜92%であった。
各試料の相及び格子定数は、XRDの測定結果から求めた。XRDの測定は、XRD測定器(ブルカー(Buruker)製、D8ADVANCE)を用いて、試料粉末をCuKα、2θ:10〜120°,0.01°step/1sec.の条件で測定した。結晶構造解析は、結晶構造解析用プログラム:Rietan−2000(Mater. Sci. Forum, p321−324(2000),198)を用いて解析を行った。代表例として実験例1,3,5,7つまりLi5+XLa3(ZrX,Nb2-X)O12(X=0,1.5,1.75,2)のXRDパターンを図1に示す。図1から、各試料は不純物を含まず単相であることがわかる。また、実験例1〜3,5〜7につき、XRDパターンより求めた格子定数のX値依存性を図2に示す。図2から、Zrの割合が増えるほど格子定数が増大することがわかる。これは、Zr4+のイオン半径(rZr4+=0.79Å)がNb5+のイオン半径(rNb5+=0.69Å)よりも大きいためである。格子定数が連続的に変化していることから、NbはZrサイトに置換されていると考えられる(全率固溶が可能と考えられる)。
伝導度は、恒温槽中にてACインピーダンスアナライザーを用い(周波数:0.1Hz〜1MHz、振幅電圧:100mV)、ナイキストプロットの円弧より抵抗値を求め、この抵抗値から算出した。ACインピーダンスアナライザーで測定する際のブロッキング電極にはAu電極を用いた。Au電極は市販のAuペーストを850℃、30分の条件で焼き付けることで形成した。実験例1〜7つまりLi5+XLa3(ZrX,Nb2-X)O12(X=0〜2)の25℃での伝導度のX値依存性を図3に示す。図3から、伝導度は、Xが1.4≦X<2のとき、公知のLi7La3Zr2O12(つまりX=2、実験例7)に比べて高くなり、Xが1.6≦X≦1.95のとき、実験例7に比べて一段と高くなり、Xが1.65≦X≦1.9の範囲のとき、ほぼ極大値(6×10-4Scm-1以上)を取ることがわかる。上記1.で述べたとおり、各試料の相対密度は88〜92%であったことから、伝導度がX値に応じて変化するのは、密度による影響ではないと考えられる。
活性化エネルギー(Ea)はアレニウス(Arrhenius)の式:σ=Aexp(−Ea/kT)(σ:伝導度、A:頻度因子、k:ボルツマン定数、T:絶対温度)を用い、アレニウスプロットの傾きより求めた。代表例として実験例1〜7のLi5+XLa3(ZrX,Nb2-X)O12(X=0〜2)の伝導度の温度依存性(アレニウスプロット)を図9に示す。図9には、併せてLiイオン伝導性酸化物の中でも特に高い伝導度を示すガラスセラミックスLi1+XTi2SiXP3-XO12・AlPO4(オハラ電解質、X=0.4)とLi1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3(LAGP)の伝導度の温度依存性(いずれも文献値)を示す。実験例1〜7につき、アレニウスプロットより求めた活性化エネルギーEa(25℃)のX値依存性を図10に示す。図10から、Xが1.4≦X<2のとき、Li7La3Zr2O12(つまりX=2、実験例7)より低い活性化エネルギーEa(つまり0.34eV未満)を示すことから、広い温度域で伝導度が安定した値をとるといえる。また、Xが1.5≦X≦1.9のときには活性化エネルギーが0.32eV以下となり、特にXが1.75のときに極小値0.3eVとなった。0.3eVという値は既存のLiイオン伝導性酸化物中で最も低い値と同等の値である(オハラ電解質:0.3eV、LAGP:0.31eV)。
ガーネット型酸化物Li6.75La3Zr1.75Nb0.25O12(つまりX=1.75、実験例5)の室温大気中での化学的安定性を調べた。具体的には、大気中に放置したLi6.75La3Zr1.75Nb0.25O12の伝導度の経時変化(0〜7日)の有無を確認することで行った。その結果を図11に示す。バルクの抵抗成分が大気中に放置していた時間によらず一定であることから、ガーネット型酸化物は室温大気中でも安定と言える。
ガーネット型酸化物Li6.75La3Zr1.75Nb0.25O12(つまりX=1.75、実験例5)の電位窓を調べた。電位窓は、Li6.75La3Zr1.75Nb0.25O12のバルクペレットの片面に金を、もう片面にLiメタルを貼り付け、0〜5.5V(対Li+)および−0.5V〜9.5V(対Li+)の範囲で電位をスイープ(1mV/sec.)させることで調べた。その測定結果を図12に示す。電位を0〜5.5Vの範囲で走査しても、電流は全く流れなかった。このことからLi6.75La3Zr1.75Nb0.25O12は0〜5.5Vの範囲で安定と言える。走査する電位を−0.5 〜9Vに広げると、0Vを境にして、酸化・還元電流が流れた。これはリチウムの酸化・還元に起因すると思われる。また、約7V以上でわずかに酸化電流が流れ始めた。しかし、流れる酸化電流量が非常に微弱であること、目視で色に変化が無いことなどから、流れる酸化電流は電解質の分解ではなく、セラミックス中に含まれている微量の不純物や粒界の分解が原因だと考えている。
ガーネット型酸化物Li6.75La3Zr1.75Nb0.25O12(つまりX=1.75、実験例5)を固体電解質とする全固体型リチウムイオン二次電池を作製した。図13は、正極活物質層112aを備えたガーネット型酸化物製のペレット110の説明図、図14は、全固体型リチウムイオン二次電池120の側面図である。まず、実験例5のガーネット型酸化物を直径13mm、厚さ2mmのペレット110とし、その片面に、PLD法(パルスレーザー堆積法)にてLiCoO2を堆積させ、正極活物質層112aとした。PLD法では、Nd−YAGレーザー(λ=266nm,E=〜1Jcm-2pls-1)を用い、製膜時のチャンバー酸素圧PO2を10Paとし、温度を常温とした。正極活物質層112aは直径6mm,厚さ500nmであった。その後、正極活物質層112aを備えたペレット110を電気炉中にて500℃、1時間の条件(大気雰囲気)でアニール処理したのち、正極活物質層112aの上にAuペースト112cを塗布し、400℃、30分の条件で正極集電体であるAu金属板112bを焼きつけた。正極活物質層112aとAu金属板112bとAuペースト112cとが正極112に相当する。その後、この正極112の付いたペレット110をグローブボックス(Ar雰囲気)中に導入後、正極112の付いていない面に負極114としてのLiメタルを押し付けることで全固体型リチウムイオン二次電池120を完成した。このLiメタルは、負極であると同時に参照極の役割を持つ。
作製した二次電池120をグローブボックス(Ar雰囲気)中にて密閉容器に入れ、シールしたリードを取り出すことで充放電測定を行った。二次電池120の開放電圧は3.0Vであった。この二次電池120を3〜4.3Vの走査範囲で定電圧(スイープ速度:0.2mV/min)にて充放電を行った(1サイクル)。その後、電流値1mAにてスイープ電位3〜4.3V(対Li)の範囲で3サイクル充放電を行った。更にその後、電流値2mAにてスイープ電位3〜4.3V(対Li)の範囲で3サイクル充放電を行った。その後、電流値1mAにてスイープ電位3〜4.4V(対Li)の範囲で3サイクル充放電を行った(つまり、定電圧にて1サイクル、定電流にて合計9サイクル)。なお、充放電条件や各サイクル間には充放電の休止期間はとらなかった。その結果を図15に示す。図15は、充放電特性を表すグラフである。図15から明らかなように、全固体型リチウムイオン二次電池120の充放電特性は、可逆的な充放電曲線を描いたことから、二次電池として作動することが確認できた。なお、サイクルでの電池容量を図16にまとめた。
(1)非水リチウムイオン二次電池との対比
非水リチウムイオン二次電池で用いる電解液は、本実施例の全固体型リチウムイオン二次電池120で用いたガーネット型酸化物と比べて高いリチウムイオン伝導度を有する。しかし、電解液は、高温(60℃)において分解による劣化や発火による危険性がある。このため高温では使用できない、もしくは、温度が上がらないよう、なんらかの冷却設備が必要である。これに対して、本実施例で用いたガーネット型酸化物は高温でも安定であり、発火の心配もない。そのため、安全性が高く、冷却設備が不要というメリットがある。また、これまでに報告されている電解液のほとんどは、高電位(4.5V以上)で分解してしまうため、高電位の正極活物質を使うのは困難である。これに対して、本実施例で用いたガーネット型酸化物は、8Vでも安定であるため(図12参照)、これまでに報告されているほぼ全ての正極活物質を利用することができる。
(2)硫化物系電解質を用いる全固体型リチウムイオン二次電池との対比
硫化物系電解質(例えばLi3.25Ge0.25P0.25S4など)の伝導度と本実施例で用いたガーネット型酸化物の伝導度との間にはほとんど差がないため、両者の間では電解質抵抗の差はほとんどない。また、硫化物系電解質の電位窓は広い(0〜10V程度)という報告が多く、その点でも大きな差はない。しかし、硫化物系電解質は大気中の水分などと反応して硫化水素ガスを発生させるという化学的安定性の点で問題があるのに対し、本実施例で用いたガーネット型酸化物はそのような問題がない。
(3)他の酸化物を用いる全固体型リチウムイオン二次電池との対比
本実施例で用いたガーネット型酸化物は、従来のガーネット型酸化物に比べてリチウムイオン伝導度が数倍大きい。そのため電解質抵抗は数分の1程度に低減できる。また、従来より知られているオハラ電解質(ガラスセラミックス)は、リチウムイオン伝導度が本実施例で用いたガーネット型酸化物と同等であるが、オハラ電解質は1.5V付近で還元されて絶縁性が低下してしまうため、高電圧の電池を作製するのが困難である(例えば、現在の電池の主流であるカーボン系の負極活物質を用いることができない)。これに対して、本実施例で用いたガーネット型酸化物は8Vでも還元されることなく安定なため(図12参照)、高電圧の電池を作製することができる。
Claims (6)
- リチウムイオンを吸蔵・放出しうる正極活物質を有する正極とリチウムイオンを放出・吸蔵しうる負極活物質を有する負極とで固体電解質層を挟んだ構造の全固体型リチウムイオン二次電池であって、
前記固体電解質層は、組成式Li5+XLa3(ZrX,A2-X)O12(式中、AはNb及びTaからなる群より選ばれた1種類以上の元素、Xは1.4≦X<2)で表されるガーネット型酸化物の層である、全固体型リチウムイオン二次電池。 - Xは1.6≦X≦1.95である、請求項1に記載の全固体型リチウムイオン二次電池。
- Xは1.65≦X≦1.9である、請求項1に記載の全固体型リチウムイオン二次電池。
- リチウムイオンを吸蔵・放出しうる正極活物質を有する正極とリチウムイオンを放出・吸蔵しうる負極活物質を有する負極とで固体電解質層を挟んだ構造の全固体型リチウムイオン二次電池であって、
前記固体電解質層は、組成式Li7La3Zr2O12のZrサイトがZrとはイオン半径の異なる元素であるNb及びTaからなる群より選ばれた1種類以上の元素で置換され、XRDにおける(220)回折の強度を1に規格化したときの(024)回折の規格化後の強度が9.2以上のガーネット型酸化物の層である、全固体型リチウムイオン二次電池。 - 前記(024)回折の規格化後の強度が10.0以上である、請求項4に記載の全固体型リチウムイオン二次電池。
- 前記(024)回折の規格化後の強度が10.2以上である、請求項4に記載の全固体型リチウムイオン二次電池。
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