JP5413090B2 - 全固体型リチウム二次電池 - Google Patents
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Description
ガーネット型酸化物Li5+XLa3(ZrX,Nb2-X)O12(X=0〜2)は、Li2CO3、La(OH)3、ZrO2、およびNb2O5を出発原料に用いて合成を行った。ここで、実験例1〜7のXの値は、それぞれX=0,1.0,1.5,1.625,1.75,1.825,2.0とした(表1参照)。はじめに、出発原料を化学量論比になるように秤量し、エタノール中にて遊星ボールミル(300rpm/ジルコニアボール)で1時間、混合・粉砕を行った。出発原料の混合粉末をボールとエタノールから分離したのち、Al2O3製のるつぼ中にて、950℃、10時間大気雰囲気で仮焼を行った。その後、本焼結でのLiの欠損を補う目的で、仮焼した粉末に、Li5+XLa3(ZrX,Nb2-X)O12(X=0〜2)の組成中のLi量に対して Li換算で10at.%になるようにLi2CO3を過剰添加した。この混合粉末を、混合のためエタノール中にて遊星ボールミル(300rpm/ジルコニアボール)で1時間処理した。得られた粉末を再び950℃、10時間大気雰囲気の条件下で再度仮焼した。その後、成型したのち、1200℃、36時間大気中の条件下で本焼結を行い、試料(実験例1〜7)を作製した。
1.相対密度
電子天秤にて測定した乾燥重量をノギスを用いて測定した実寸から求めた体積で除算することにより、各試料の測定密度を算出した。また、理論密度を算出し、測定密度を理論密度で除算し100を乗算した値を相対密度(%)とした。実験例1〜7の相対密度は、88〜92%であった。
各試料の相及び格子定数は、XRDの測定結果から求めた。XRDの測定は、XRD測定器(ブルカー(Buruker)製、D8ADVANCE)を用いて、試料粉末をCuKα、2θ:10〜120°,0.01°step/1sec.の条件で測定した。結晶構造解析は、結晶構造解析用プログラム:Rietan−2000(Mater. Sci. Forum, p321−324(2000),198)を用いて解析を行った。代表例として実験例1,3,5,7つまりLi5+XLa3(ZrX,Nb2-X)O12(X=0,1.5,1.75,2)のXRDパターンを図3に示す。図3から、各試料は不純物を含まず単相であることがわかる。また、実験例1〜3,5〜7につき、XRDパターンより求めた格子定数のX値依存性を図4に示す。図4から、Zrの割合が増えるほど格子定数が増大することがわかる。これは、Zr4+のイオン半径(rZr4+=0.79Å)がNb5+のイオン半径(rNb5+=0.69Å)よりも大きいためである。格子定数が連続的に変化していることから、NbはZrサイトに置換されていると考えられる(全率固溶が可能と考えられる)。
伝導度は、恒温槽中にてACインピーダンスアナライザーを用い(周波数:0.1Hz〜1MHz、振幅電圧:100mV)、ナイキストプロットの円弧より抵抗値を求め、この抵抗値から算出した。ACインピーダンスアナライザーで測定する際のブロッキング電極にはAu電極を用いた。Au電極は市販のAuペーストを850℃、30分の条件で焼き付けることで形成した。実験例1〜7つまりLi5+XLa3(ZrX,Nb2-X)O12(X=0〜2)の25℃での伝導度のX値依存性を図5に示す。図5から、伝導度は、Xが1.4≦X<2のとき、公知のLi7La3Zr2O12(つまりX=2、実験例7)に比べて高くなり、Xが1.6≦X≦1.95のとき、実験例7に比べて一段と高くなり、Xが1.65≦X≦1.9の範囲のとき、ほぼ極大値(6×10-4Scm-1以上)を取ることがわかる。上記1.で述べたとおり、各試料の相対密度は88〜92%であったことから、伝導度がX値に応じて変化するのは、密度による影響ではないと考えられる。
活性化エネルギー(Ea)はアレニウス(Arrhenius)の式:σ=Aexp(−Ea/kT)(σ:伝導度、A:頻度因子、k:ボルツマン定数、T:絶対温度)を用い、アレニウスプロットの傾きより求めた。代表例として実験例1〜7のLi5+XLa3(ZrX,Nb2-X)O12(X=0〜2)の伝導度の温度依存性(アレニウスプロット)を図11に示す。図11には、併せてLiイオン伝導性酸化物の中でも特に高い伝導度を示すガラスセラミックスLi1+XTi2SiXP3-XO12・AlPO4(オハラ電解質、X=0.4)とLi1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3(LAGP)の伝導度の温度依存性(いずれも文献値)を示す。実験例1〜7につき、アレニウスプロットより求めた活性化エネルギーEa(25℃)のX値依存性を図12に示す。図12から、Xが1.4≦X<2のとき、Li7La3Zr2O12(つまりX=2、実験例7)より低い活性化エネルギーEa(つまり0.34eV未満)を示すことから、広い温度域で伝導度が安定した値をとるといえる。また、Xが1.5≦X≦1.9のときには活性化エネルギーが0.32eV以下となり、特にXが1.75のときに極小値0.3eVとなった。0.3eVという値は既存のLiイオン伝導性酸化物中で最も低い値と同等の値である(オハラ電解質:0.3eV、LAGP:0.31eV)。
ガーネット型酸化物Li6.75La3Zr1.75Nb0.25O12(つまりX=1.75、実験例5)の室温大気中での化学的安定性を調べた。具体的には、大気中に放置したLi6.75La3Zr1.75Nb0.25O12の伝導度の経時変化(0〜7日)の有無を確認することで行った。その結果を図13に示す。バルクの抵抗成分が大気中に放置していた時間によらず一定であることから、ガーネット型酸化物は室温大気中でも安定と言える。
ガーネット型酸化物Li6.75La3Zr1.75Nb0.25O12(つまりX=1.75、実験例5)の電位窓を調べた。電位窓は、Li6.75La3Zr1.75Nb0.25O12のバルクペレットの片面に金を、もう片面にLiメタルを貼り付け、0〜5.5V(対Li+)および−0.5V〜9.5V(対Li+)の範囲で電位をスイープ(1mV/sec.)させることで調べた。その測定結果を図14に示す。電位を0〜5.5Vの範囲で走査しても、電流は全く流れなかった。このことからLi6.75La3Zr1.75Nb0.25O12は0〜5.5Vの範囲で安定と言える。走査する電位を−0.5 〜9Vに広げると、0Vを境にして、酸化・還元電流が流れた。これはリチウムの酸化・還元に起因すると思われる。また、約7V以上でわずかに酸化電流が流れ始めた。しかし、流れる酸化電流量が非常に微弱であること、目視で色に変化が無いことなどから、流れる酸化電流は電解質の分解ではなく、セラミックス中に含まれている微量の不純物や粒界の分解が原因だと考えている。
固体電解質と電極との界面抵抗について検討した。図15は、対称セル30の説明図である。この対称セル30は、ガーネット型酸化物である固体電解質10を、同一組成の電極11(負極)で挟んだ構造を有している。この対称セルによれば、組成の異なる正極による界面抵抗への影響を抑制することができ、より正確に負極の評価を行うことができる。ここでは、電極11を固体電解質10に押圧して固定してこの対称セル30を作製した。界面抵抗の測定は、交流インピーダンス法にて行った。交流インピーダンス測定は、振幅を100mV、走査周波数を106〜10-1Hzの条件とし、対称セル作製直後(Imp0と称する)、サイクリックボルタンメトリー(CV)操作1分後(Imp1と称する)、CV終了1時間後(Imp2と称する)、CV終了12時間後(Imp3と称する)の合計4回行った。測定は全て25℃で行った。このCV操作は、電圧範囲を−0.5〜0.5V、レートを1mV/s、サイクル数を3回の条件として行った。
ガーネット型酸化物Li6.75La3Zr1.75Nb0.25O12(つまりX=1.75、実験例5)を固体電解質10とする対称セル10を作製した。上述した対称セル30において、電極11としてAlを10重量%含むリチウム合金を用いて作製した対称セル30を実験例8とした。また、電極11としてAlを20重量%含むリチウム合金を用いて作製した対称セル30を実験例9とした。また、電極11としてInを10重量%含むリチウム合金を用いて作製した対称セル30を実験例10とした。また、電極11としてInを20重量%含むリチウム合金を用いて作製した対称セル30を実験例11とした。また、電極11として純リチウム金属を用いて作製した対称セル30を実験例12とした。
ガーネット型酸化物の両側にLiIn(20重量%)合金を貼り合わせた対称セル(実験例11)のCV操作の結果を図16に示す。図16より、0Vを中心に対称的なプロファイルが得られていることから、同程度の酸化・還元電流が流れることがわかった。これより、CV操作により、LiIn(20重量%)合金でリチウムイオンの挿入・脱離が可逆的に行われていることがわかった。次に、LiIn(20重量%)合金/ガーネット型酸化物の対称セル(実験例11)のCV操作前後での交流インピーダンス測定の結果(Imp0〜3)を図17に示す。図17のインピーダンスプロットにより、一連の測定で、ガーネット型酸化物の抵抗は変化しないが、CV操作後には、LiIn(20重量%)合金/ガーネット型酸化物の界面抵抗が小さくなることがわかった。実験例8〜12のインピーダンスプロットより求めた界面の面抵抗率の時間依存性を図18、表2に示す。全てのリチウム合金の組成で、純リチウム金属に較べて界面の抵抗率が減少することがわかった。また、LiAl合金に較べてLiIn合金の方が界面抵抗率が低いことがわかった。表2に示すように、電池の充放電時の状態に最も近いと考えられるCV操作1分後においては、LiIn(10重量%)合金の界面抵抗率がLiIn(20重量%)合金の界面抵抗率よりもわずかに小さい。しかし、LiIn(10重量%)合金は、CV操作後に界面抵抗が徐々に増大する傾向を示した。これは、LiAl(10重量%)合金でも同様であった。このことから、時間に対する安定性の観点から、ガーネット型酸化物の負極材料には、LiIn(20重量%)合金が最も適していると推察された。
ガーネット型酸化物Li6.75La3Zr1.75Nb0.25O12(つまりX=1.75、実験例5)を固体電解質とする全固体型リチウム二次電池を作製した。まず、実験例5のガーネット型酸化物を直径13mm、厚さ2mmのペレットとし、その片面に、PLD法(パルスレーザー堆積法)にてLiCoO2を堆積させ、正極活物質層とした。PLD法では、Nd−YAGレーザー(λ=266nm,E=〜1Jcm-2pls-1)を用い、製膜時のチャンバー酸素圧PO2を10Paとし、温度を常温とした。正極活物質層は直径6mm,厚さ500nmであった。その後、正極活物質層を備えたペレットを電気炉中にて500℃、1時間の条件(大気雰囲気)でアニール処理したのち、正極活物質層の上にAuペーストを塗布し、400℃、30分の条件で正極集電体であるAu金属板を焼きつけた。正極活物質層とAu金属板とAuペーストとが正極に相当する。その後、この正極の付いたペレットをグローブボックス(Ar雰囲気)中に導入後、正極の付いていない面に負極を押し付けることで全固体型リチウム二次電池を完成した。負極活物質として純リチウム金属を用いたものを実験例13とし、負極活物質としてLiIn(20重量%)合金を用いたものを実験例14とした。
作製した二次電池をグローブボックス(Ar雰囲気)中にて密閉容器に入れ、シールしたリードを取り出すことで充放電測定を行った。二次電池120の開放電圧は3.0Vであった。この二次電池120を3〜4.3Vの走査範囲で定電圧(スイープ速度:0.1mV/sec)にて充放電を行った(1サイクル)。その後、電流値1μAにてスイープ電位3.0〜4.4V(対Li)の範囲で充放電を行った。その結果を図19に示す。図19は、実験例13,14の充放電特性を表すグラフである。図19より、負極に純リチウム金属を用いた実験例13の二次電池では、分極(電解質及び界面抵抗による電圧損失)は500mVであった。これに対して、負極にLiIn(20重量%)合金を用いた実験例14の二次電池では、分極は150mV程度であり、界面抵抗がより低く、より優れていることが明らかとなった。
(1)非水リチウムイオン二次電池との対比
非水リチウムイオン二次電池で用いる電解液は、本実施例の全固体型リチウム二次電池で用いたガーネット型酸化物と比べて高いリチウムイオン伝導度を有する。しかし、電解液は、高温(60℃)において分解による劣化や発火による危険性がある。このため高温では使用できない、もしくは、温度が上がらないよう、なんらかの冷却設備が必要である。これに対して、本実施例で用いたガーネット型酸化物は高温でも安定であり、発火の心配もない。そのため、安全性が高く、冷却設備が不要というメリットがある。また、これまでに報告されている電解液のほとんどは、高電位(4.5V以上)で分解してしまうため、高電位の正極活物質を使うのは困難である。これに対して、本実施例で用いたガーネット型酸化物は、8Vでも安定であるため(図14参照)、これまでに報告されているほぼ全ての正極活物質を利用することができる。
硫化物系電解質(例えばLi3.25Ge0.25P0.25S4など)の伝導度と本実施例で用いたガーネット型酸化物の伝導度との間にはほとんど差がないため、両者の間では電解質抵抗の差はほとんどない。また、硫化物系電解質の電位窓は広い(0〜10V程度)という報告が多く、その点でも大きな差はない。しかし、硫化物系電解質は大気中の水分などと反応して硫化水素ガスを発生させるという化学的安定性の点で問題があるのに対し、本実施例で用いたガーネット型酸化物はそのような問題がない。
本実施例で用いたガーネット型酸化物は、従来のガーネット型酸化物に比べてリチウムイオン伝導度が数倍大きい。そのため電解質抵抗は数分の1程度に低減できる。また、従来より知られているオハラ電解質(ガラスセラミックス)は、リチウムイオン伝導度が本実施例で用いたガーネット型酸化物と同等であるが、オハラ電解質は1.5V付近で還元されて絶縁性が低下してしまうため、高電圧の電池を作製するのが困難である(例えば、現在の電池の主流であるカーボン系の負極活物質を用いることができない)。これに対して、本実施例で用いたガーネット型酸化物は8Vでも還元されることなく安定なため(図14参照)、高電圧の電池を作製することができる。
Claims (3)
- 正極活物質を有する正極と、
Mg,Al,Si,In,Ag及びSnのうち少なくとも1以上の所定元素を10重量%以上30重量%以下の範囲で含むリチウム合金を含む負極活物質を有する負極と、
前記正極と前記負極との間に介在し組成式Li5+XLa3(ZrX,A2-X)O12(式中、AはNb及びTaからなる群より選ばれた1種類以上の元素、Xは1.4≦X<2)で表されるガーネット型酸化物の固体電解質と、
を備えた全固体型リチウム二次電池。 - 前記負極は、Al及びInのうち少なくとも1以上の前記所定元素を含むリチウム合金である、請求項1に記載の全固体型リチウム二次電池。
- 前記固体電解質は、XRDにおける(220)回折の強度を1に規格化したときの(024)回折の規格化後の強度が9.2以上のガーネット型酸化物である、請求項1又は2に記載の全固体型リチウム二次電池。
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