JP5282721B2 - 剛床構造および剛床工法 - Google Patents
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前者は、現場でコンクリートが打設され、床板と鉄骨梁とは頭付きスタッド等で緊結されるので、地震時において床面に作用する面内剪断力を床板が負担することができる。したがって、床面ブレースは不要である。また、床板が梁の上フランジの移動を拘束するので、小梁の場合の横座屈止めが不要となる。このように床面に作用する面内剪断力を床板が負担できる床構造は、一般的に剛床構造と呼ばれる。
例えば、鉄筋の両端に支持金物が溶接された剛床金物を床パネルの目地部に設置し、両端の支持金物をそれぞれ床パネルが掛け渡される二本の鉄骨梁にワンサイド接合具で結合し、鉄筋が入る床パネルの目地部と支持金物が設置される床パネルの切欠部にはモルタルを充填して構成される剛床構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
さらに、目地とパネルの切欠部に大量のモルタルを充填する必要があるので、施工の手間が掛かるとともに、コストも高くなってしまう。
さらに、支持金具を床パネルに締結する際に、切欠部の狭い場所で横方向にボルトを挿入、締め付けをしなければならないので、施工が難しい。
また、ボルト孔とボルトとの隙間に湿式材料を充填するものとしても、湿式材料の使用量は僅かなものとなり、充填も短時間で終わることになり、コストの増大を防止することができる。
図1〜図7に示すように、この例の剛床構造は、例えば、鉄骨造建築で梁(鉄骨梁)1どうしの間に掛け渡されるALC板等の床パネル2により構築される床や平屋根に適用されるものである。梁1は、例えば、H形鋼からなり、フランジ3とウェブ4とを有する。床パネル2は、ALCや、その他周知の素材からなるものであり、長尺な矩形状に形成されている。
剛床構造においては、互いに平行で同じ高さ位置にある2本の梁1の間に架け渡された状態に床パネル2が配置されている。また、床パネルの長手方向は、梁1の長手方向と直交する配置となっている。
また、切欠部21の形状が概略半円状とされ、床パネル2の端面側に前記半円(円弧)の弦側が配置されるとともに半円状の切欠部21の弦側が床パネル2の端面で開放された状態となっている。
また、ボルト孔22を有する座掘り23と床パネル2の端面との間には、床パネル2の支持部耐力に支障がないように、床パネル2の板厚程度の間隔があけられている。
座掘り23は、その直径は、座金59の直径よりも大きくし、その深さは、ボルト53のねじ部余長を見込んでボルト53が床パネル2の上面から突き出さない範囲でできるだけ小さい深さとする。
ベース板54は、梁1の上側のフランジ3の下面に当接する梁当接部55と、床パネル2の端部のフランジ3に載せられる部分より中央側の下面に当接するパネル当接部56と、梁当接部55とパネル当接部56との間となる中間部57とを備えている。
また、中間部57には、その幅方向(梁1の長手方向と平行な方向)の中央部に後述のように仮固定用ばね52を貫通させる開口部58が形成されている。
また、ピン51を二本としたのは、梁1に対して接合金物5の回転を規制するためである。
ピン孔にピン51が挿入されることで、梁1に対して接合金物5の水平方向への移動が規制されるとともに、梁1と接合金物5との間で水平方向の力が伝達されるようになっている。
ピン孔11にピン51を挿入する場合に、上述のように接合金物5の水平方向の移動が規制された状態で、上側のフランジ3の側縁部に、仮固定用ばね52の最も上側となる傾斜部75が接触する。この状態で、傾斜部75の下側の係止部74を上側フランジ3の側縁部に係止しようとすると、傾斜部75がフランジ3の側縁部に押し付けられてフランジ3から離れる方向に係止部74が移動する。この際には、仮固定用ばね52のU字部72、延出部73等が弾性変形することで、係止部74が移動する。
前記ボルト53は、通常の例えば六角形状の頭部と、棒状の雄ねじ部とを有するものであり、接合金物5のベース板54のパネル当接部56に設けられている。
ボルト53は、パネル当接部56に形成された雄ねじ部の外径より僅かに大きな内径を有する挿入孔に下側から挿入され、頭部がパネル当接部56の下面に溶接されることで、パネル当接部56から雄ねじ部が垂直に上側に延出するようにパネル当接部56にボルト53が固定される。
したがって、ボルト孔22は、座金59により閉塞されてしまうが、座金59には、ボルト53を貫通させるボルト貫通孔78が形成されるだけではなく、ボルト貫通孔78と交差して連通するように、長孔79が形成されている。この長孔79の長手方向の長さは、例えば、ボルト貫通孔78の3倍程度となっており、ボルト貫通孔78から長孔79が左右に延出した状態となっている。
本発明のように湿式材料(グラウト材31)を利用すると、ボルト孔22の直径を大きくして支圧面積を大きくすることができ、全体の支圧強度を高める効果がある。床パネル2がALC板(軽量気泡コンクリート)の場合は、ボルト孔22の単位面積当たりの支圧強度はプレキャストコンクリート板等と比べて小さいので、本発明が特に有効である。
なお、ピン51は、梁1と床パネル2との間で水平方向の力を伝達する部材として機能する。
したがって、床面に剪断力が加わって床パネル2の両端をそれぞれ支持している並行する梁1がずれようとすると、個々の床パネル2は回転してこれに追随しようとする。その場合、隣り合う床パネル2同士には剪断ずれが発生する。逆に、このずれを止めれば個々の床パネル2の回転も止まり、床面の剪断力に抵抗できる構造となる。
なお、ボルト53を2本として回転止めとしてもよいが、ボルト53の締め付け作業が倍増するとともに、床パネル2の各端部に近接して2本のボルト孔22が形成されることにより、ボルト53により力がかかる部分の強度の低下を招く虞があることからこの例では、下地材6により床パネル2の回転を止めるようになっている。
また、下地材6は、床パネル2の敷き詰められた部分の全面を覆うように配置される。
まず、現場で剛床構造を構築する前に、床パネル2の端部が載る梁1の上フランジ3に、当該フランジ3上に上述のように敷き詰められる床パネル2の中心線を挟んで対称に1対のピン孔11をあけて置く。
これら床パネル2の両端部には、下面の中心線上に切欠部21を設けておく。また、中心線上で両端から若干離れた上面に座掘り23を設け、さらにその中央にボルト孔22を設けておく。
床パネル2を梁1のフランジ3の上に設置した後、一対のピン51が梁1の上側のフランジ3の一対のピン孔11に挿入され、ボルト53が床パネル2のボルト孔22に挿入されるように接合金物5を下側から当接させる。その際、仮固定用ばね52が梁1のフランジ3をくわえるように係合するまで接合金物5を上側に押し込むことで、仮固定用ばね52により接合金物5を梁1に仮固定し、接合金物5が後述のようにボルト53にナット77を螺合させて床パネル2に締結されるまで落下しないようにする。
次に、床パネル2のボルト孔22とボルト53との隙間に座金59の長孔79の一方の端部からグラウト材31を注入して固定する。
全ての床パネル2を接合金物5により梁1に固定した後に、床パネル2の上に床パネル2どうしの間の目地部を跨いで下地材6を敷き詰め、タッピンねじ80で床パネル2に固定する。
また、梁1に接合金物5を取り付ける際に、ピン51に代えてボルトを使用するものとすると、フランジ3上に突出するピン51や仮固定用ばね52を避けるためだけに形成された床パネル2の切欠部21をボルトへのナットの締結などの作業用スペースを有する大きなものとする必要が生じる可能性があり、床パネル2の強度の確保が難しくなる。
また、接合金物5は、梁1の上側フランジ3と当該フランジ3に載せられる床パネル2の端部とをつなぐ状態となるので、長さを短くすることができる。また、接合金物5は、床パネル2の長さに対してかなり短いベース板54に、ピン51、仮固定用ばね52、ボルト53を設けるだけなので、軽量化することができ、保管や取り扱いが容易である。
ボルト53の外周面と、床パネル2のボルト孔22の内周面との間には、グラウト材31が注入されるが、注入量が僅かなものなので、注入に長い時間を取られることがなく、かつ、グラウト材31の注入にかかるコストも僅かなものとなる。
一般に、鉄骨造建築物が住宅として用いられる場合には、下地材6が設けられる場合が多いが、住宅以外の建築物においては、下地材6が設けられない可能性がある。この変形例は下地材6が設けられない場合についてのものであり、床面に剪断力がかかって上述のように床パネル2が回転して床パネル2に剪断ずれが起きるのを防止する下地材6に代えて、隣接する床パネルどうしで互いに当接する側縁部に剪断ずれが起きるのを防止する構造が設けられてものである。
床パネル2の長手方向に沿った側縁部には、半円柱状の切欠部82が形成されている。切欠部82は、床パネル2の側縁部の二箇所に床パネル2の長手方向い並んで形成されるとともに、床パネル2の端面からは、前記座掘り23より離れた位置に配置され、かつ、二箇所の切欠部82間の距離が端面から近い方の切欠部82までの距離より長くなっている。
上述のように床パネル2を敷き詰めた状態で、隣り合う床パネル2の側縁部どうしの切欠部82は、互いに側面の開放側が重なるように配置され、2枚の床パネル2に渡る円柱状の凹部となる。なお、凹部は底が閉塞した状態となっている。
また、一般的な設備や工具で半円柱状の切欠部82を形成でき、床パネル2の加工によるコストの増大を防止できる。また、硬化材としてのモルタルの使用量は僅かであり、コストの増大を防止できる。また、単に穴にモルタル(このほか、硬化材としては、前述のグラウト材やコンクリート等でもよい)を注入するだけなので作業性もよい。これにより、下地材6なしでも、前記例と同様の作用効果を奏することができる。
11 ピン孔
2 床パネル
22 ボルト孔
3 フランジ
5 接合金物(接合部材)
6 下地材(移動規制部材)
51 ピン
52 仮固定用ばね(仮固定部材)
53 ボルト
54 ベース板(ベース部材)
55 梁当接部
56 パネル当接部
59 座金
77 ナット
82 切欠部
Claims (6)
- 互いに平行に配置された鉄骨梁間に架け渡されて敷き詰められた床パネルを備える剛床構造であって、
前記鉄骨梁に載せられる床パネルの端部と前記鉄骨梁とを接合する接合部材と、隣り合う前記床パネルに跨って設けられ、前記床パネル間の相対移動を規制する移動規制部材とを備え、
前記接合部材は、前記鉄骨梁のフランジの下面に当接する梁当接部および前記床パネルの下面に当接するパネル当接部を一体に備えたベース部材と、前記梁当接部から上側に延出して、前記フランジに設けられたピン孔に下側から挿入されるピンと、前記パネル当接部から上側に延出して前記床パネルに設けられたボルト孔に下側から挿入されるボルトと、前記ベース部材に設けられ、前記ピン孔に前記ピンを挿入した際に、前記フランジの下側から弾性変形しながら前記フランジの側縁の上面に係合された状態となることで、前記接合部材を前記鉄骨梁に仮固定する仮固定部材とを備え、
前記フランジのピン孔にピンが挿入されるとともに、前記床パネルの前記ボルト孔にボルトが挿入され、かつ、前記仮固定部材により前記接合部材が前記鉄骨梁に仮固定された状態で、前記ボルトと座金およびナットにより前記接合部材が前記床パネルに締結され、
前記ボルトと前記ボルト孔の隙間に湿式材料が充填されていることを特徴とする剛床構造。 - 前記移動規制部材が、隣り合う前記床パネル間に渡って配置されるとともに、当該床パネルの上面に固定される板状の下地材であることを特徴とする請求項1に記載の剛床構造。
- 前記移動規制部材が、隣り合う前記床パネル間で重なって一つの凹部となるように前記床パネルの側縁部に設けられた切欠部に充填されて硬化した硬化材であることを特徴とする請求項1に記載の剛床構造。
- 互いに平行に配置された鉄骨梁間に床パネルを架け渡して敷き詰めて形成される床を剛床構造とする剛床工法であって、
前記鉄骨梁のフランジの下面に当接する梁当接部および前記床パネルの下面に当接するパネル当接部を一体に備えたベース部材と、前記梁当接部から上側に延出して、前記フランジに設けられたピン孔に下側から挿入されるピンと、前記パネル当接部から上側に延出して前記床パネルに設けられたボルト孔に下側から挿入されるボルトと、前記ベース部材に設けられ、前記ピン孔に前記ピンを挿入した際に、前記フランジの下側から弾性変形しながら前記フランジの側縁の上面に係合された状態となることで、前記接合部材を前記鉄骨梁に仮固定する仮固定部材とを備える接合部材を用い、
前記フランジの前記ピン孔に前記ピンを挿入するとともに、前記床パネルの前記ボルト孔に前記ボルトを挿入し、かつ、前記仮固定部材により前記接合部材を前記鉄骨梁に仮固定した状態で、前記ボルトと座金およびナットにより前記接合部材を前記床パネルに締結し、
前記ボルトと前記ボルト孔の隙間に湿式材料を充填し、
前記床パネル間の相対移動を規制する移動規制部材を隣り合う前記床パネルに跨って設けることを特徴とする剛床工法。 - 前記床パネル間の相対移動を規制する移動規制部材を隣り合う前記床パネルに跨って設けるに際し、前記移動規制部材としての板状の下地材を、隣り合う前記床パネル間に渡って配置するとともに、当該床パネルの上面に固定することを特徴とする請求項4に記載の剛床工法
- 前記床パネル間の相対移動を規制する移動規制部材を隣り合う前記床パネルに跨って設けるに際し、隣り合う前記床パネル間で一体の凹部となるようにそれぞれの床パネルの側縁部に切欠部を設け、当該切欠部に前記移動規制部材としての硬化材を充填して硬化させることを特徴とする請求項4に記載の剛床構造。
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