JP2009275356A - 建物補強金物 - Google Patents
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Abstract
【課題】既設の建物を簡便かつ安価な方法で補強して耐震性を向上させるとともに、成形パネルの損壊を防止することが可能な建物補強金物を提供する。
【解決手段】建物100の壁を構成する成形パネル110を躯体に固定する建物補強金物200であって、成形パネル110に固定されるパネル固定部202と、パネル固定部202から立設される立設部204と、建物の躯体に固定される躯体固定部206と、パネル固定部202と躯体固定部206とを接続する架橋部208とを備え、架橋部208は、立設部204と躯体固定部206とが相対的に移動する際に弾塑性変形可能であることを特徴とする。
【選択図】図3
【解決手段】建物100の壁を構成する成形パネル110を躯体に固定する建物補強金物200であって、成形パネル110に固定されるパネル固定部202と、パネル固定部202から立設される立設部204と、建物の躯体に固定される躯体固定部206と、パネル固定部202と躯体固定部206とを接続する架橋部208とを備え、架橋部208は、立設部204と躯体固定部206とが相対的に移動する際に弾塑性変形可能であることを特徴とする。
【選択図】図3
Description
本発明は、成形パネルで壁が構成された建物用の建物補強金物に関するものである。
一般に建物の地震対策としては、耐震構造、免震構造、制震構造が挙げられる。耐震構造は建物の剛性を高くして、揺れても壊れにくくした構造である。免震構造は弾塑性機構などによって揺れのエネルギーを吸収し、揺れを建物に伝達しにくくした構造である。制震構造も揺れのエネルギーを吸収する点で免震構造と同様であるが、主に建物自体の揺れ(変形)を軽減する構造である。
建物は、一般に梁や柱などの躯体に、壁や床などを取り付けて構成される。ここで小規模な木造住宅などにおいては壁面も重要な構造部材であるが、工場などの大型施設では主として鉄骨からなる躯体が構造部材であり、壁や床などは躯体に取り付けられているに過ぎない。大型施設では地震などによる応力を受け流すためにトラス構造を取ることが多く、変形量が大きくなるため、壁面に破壊を生じてしまうおそれがあるからである。
ところで建設現場において型枠を設置し、コンクリートを打設して造られる場所打ち工法または現場打ち工法では、時間や費用が嵩むなどの問題があるため、昨今のコンクリート建物は、専用工場においてあらかじめコンクリート成形パネルを製作した後、現場へ運搬して設置を行う工法が一般的となっている。かかる成形パネルは事前に成形されることから、プレキャストコンクリートパネル(PC版:以下「成形パネル」と称する。)と呼ばれる。例えば発電所などの建物も、PC版で建設されているケースが多い。
このような成形パネルは、コンクリート製であることから、相応の剛性が見込まれる。そこで大型工場においても、壁を構造部材のように用いて、建物全体の剛性を高めようとする試みがなされている。例えば特許文献1には、建物外壁のコンクリートパネルを外側からボルト接合することによって耐震性を向上させる技術が記載されている。
特開2003−307036号公報
しかし、従来の耐震補強技術は、いずれも大規模で、原則として建物の施工時に施すものである。したがって既存の建物に対して補強を行おうとすると、工事期間が長く、相当の長期間にわたり建物の使用ができないことになる。このため、仮移転が必要となって、施工者に補償義務が生じたりするため、コストが嵩むという問題がある。
また、一般的に鉄骨造建物は構造材が建物内部にあり、建物外周部は仕上材(外装材)である。したがって、特許文献1のように、外側からボルトを打ち込むなどの外部からの補強構造は、比較的簡便であるものの、外装材を損傷して建物の外観が損なわれてしまう問題があった。
そこで本件出願人は、特願2007−141987において、隣接配置された成形パネル同士を連結する連結ファスナについて提案をしている。この提案によれば、地震などによって建物の躯体が傾斜しようとしたとき、成形パネル間に作用するせん断力を受けることができるため、成形パネルの回転移動を防止し、建物全体の傾斜を防止することができる。
上記提案によれば、成形パネルを用いて建物の剛性を向上させることができた。さらにしかし、コンクリートは脆性材料であるから、建物に係る応力が大きくなると、成形パネルの躯体に対する接続部分が損壊してしまうという問題が生じた。これは、例えば大きな地震が来たときに成形パネルが破損し、壁が落下して失われる可能性があることを示している。
一方、建物が地震によって変形するとき、躯体は横方向に揺れ、壁は横剪断力を受ける。壁が複数枚の成形パネルを配列してなるときは、個々の成形パネルは剪断力によって回転方向に変位する。したがって、このような成形パネルの挙動において、成形パネルを損壊させることなく、かつ地震に対して建物の剛性を向上させることができるように、成形パネルを躯体に接合する必要がある。
本発明はこのような課題に鑑み、既設の建物を簡便かつ安価な方法で補強して耐震性を向上させるとともに、成形パネルの損壊を防止することが可能な建物補強金物を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の代表的な構成は、建物の壁を構成する成形パネルを躯体に固定する建物補強金物であって、成形パネルに固定されるパネル固定部と、パネル固定部から立設される立設部と、建物の躯体に固定される躯体固定部と、パネル固定部と躯体固定部とを接続する架橋部とを備え、架橋部は、立設部と躯体固定部とが相対的に移動する際に弾塑性変形可能であることを特徴とする。
上記構成によれば、成形パネルに固定される立設部は、躯体に取り付けられる躯体固定部と対向し、弾塑性変形可能な架橋部によって接続される。したがって成形パネルと躯体とがずれるとき(立設部と躯体固定部とが相対的に移動するとき)に、架橋部がその変位を吸収し、成形パネルに過度の応力がかかることを防止することができる。これにより、成形パネルによって建物の剛性を向上させつつ、成形パネルの損壊を防止することができる。
パネル固定部と立設部とは板材を屈曲させてなり、躯体固定部は立設部と平行に配置される板材であって、架橋部は成形パネルの面に対して直交する板材であってもよい。
すなわち、架橋部が成形パネルの面に対して直交する板材であるということは、成形パネルが躯体(梁や柱)に沿ってずれる方向は架橋部(板材)の厚み方向となるため変形しやすく、成形パネルが躯体から離接する方向は架橋部の伸縮方向(圧縮引張方向)となって変位しにくい。このため架橋部の剛性に異方性をもたせることができ、剛性と損壊防止を両立させることができる。
架橋部は立設部の先端近傍に偏って配置されており、立設部の架橋部よりパネル固定部側は、ねじれ変形可能なねじれ変形部を構成してもよい。
すなわち、架橋部は成形パネルからなるべく離れた位置において接続されている。上述のように、成形パネルと躯体がずれると立設部と躯体固定部とが相対的に位置ずれを生じ、架橋部が弾塑性変形してこれを緩和する。しかし架橋部が変形しにくい方向成分の変位や、特に架橋部が2つ以上の要素で構成されている場合には、立設部にねじれが生じ、架橋部との接合部に破損を生じるおそれがある。そこで架橋部を成形パネルから離れた位置に配置することにより、立設部にねじれ変形部を構成し、破損を防止することができる。
架橋部は、成形パネルの面に平行ないずれかの方向に偏って配置されており、当該建物補強金物は建物の躯体に沿って複数配置され、かつ、成形パネルの縁側に架橋部が偏った状態で取り付けられていてもよい。
すなわち、架橋部は成形パネルのなるべく端に寄った位置に配置される。プレキャストコンクリートである成形パネルは必然的に複数枚を配列されることによって壁を構成し、上下2箇所以上を躯体に接続される。そして建物が横揺れするとき、上下の躯体(梁)はずれを生じることから、個々の成形パネルは回転方向に変位する。このとき、建物補強金物をなるべく成形パネルの端に寄った位置に配置することにより、その回転を阻止することができる。しかし成形パネルの損壊を防止するためには、成形パネルに固定されるパネル固定部をある程度の大きな面積とする必要がある。そこで上記のように構成することにより、より効率的に建物の剛性を向上させつつ、成形パネルの損壊を防止することができる。
パネル固定部は、成形パネルにアンカーボルトによって固定するための複数の孔を備えていてもよい。これによりパネル固定部を、接着のみでなく、アンカーボルトによって確実に成形パネルに固定することができる。
本発明にかかる建物補強金物によれば、既設の建物を簡便かつ安価な方法で補強して耐震性を向上させるとともに、成形パネルの損壊を防止することができる。
本発明に係る建物補強金物の実施形態について、図を用いて説明する。以下の実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。また、同様の要素は同一の参照符号によって表示する。
図1は本実施形態に係る建物補強金物によって補強される建物の外観図である。建物100は高層の鉄筋コンクリート構造であり、その外装壁は事前に工場等で成形された成形パネル110で構成されている。すなわち、成形パネル110は、図1に示すように、建物100の壁を構成する隣接配置されたコンクリートパネル(プレキャストコンクリート版(PC版))としてよい。
図2は成形パネルと躯体および建物補強金物を説明する図であって、図2(a)は建物100の内側から見た使用態様図、図2(b)は地震などにより建物に変形が生じた場合の挙動を説明する図である。成形パネル110と梁130(躯体)、および建物補強金物200を示している。本実施形態において躯体というとき、鉄骨の梁130および後述する鉄骨の柱134を含むものとする。また成形パネル110は建物100の外壁であり、さらに躯体より屋内側に内装を設けるか否かについては問わないものとする。
図2(a)に示すように、成形パネル110は梁130に建物補強金物200および小型L字鋼140によって取り付けられている。建物補強金物200は次に詳述するように、建物100の壁を構成する成形パネル110を躯体(梁130)に固定する金物である。小型L字鋼140は従来から成形パネル110を支持するために用いられている金物であって、成形パネル110の重量を支持するためには充分であるが、躯体の変形(地震による変形)に対抗しうる耐力はない。このため本実施形態において小型L字鋼140は必ずしも必要ではないが、図示のように補助的に設置してもよい。
図3は建物補強金物の構成を説明する3面図および斜視図であって、図3(a)は建物補強金物200の3面図、図3(b)は建物補強金物200の斜視図である。建物補強金物200は、成形パネル110に固定されるパネル固定部202と、パネル固定部202から立設される立設部204と、建物の躯体に固定される躯体固定部206と、パネル固定部202と躯体固定部206とを接続する架橋部208とを備えている。そして架橋部208は、立設部204と躯体固定部206とが相対的に移動する際に弾塑性変形可能である。
建物補強金物200は、図2(a)に示すように、上下の躯体(梁130)のそれぞれ複数箇所において成形パネル110を固定している。図2(b)に示すように、地震などにより建物が横揺れするとき、上下の梁130は横方向に相対的にずれを生じる。そして成形パネル110は上下2箇所以上を梁130に接続されているため、個々の成形パネルは回転方向に変位する。また梁130にずれが生じることから建物補強金物200の取り付け位置は平行四辺形に変形し、回転中心Cに対して離接方向の応力Wを生じる。応力Wは、梁130に平行な分力(水平力Wp)と直交する分力(垂直力Wc)に分解することができる。
ここで、仮に建物補強金物200が全体として剛体であると仮定すると、回転中心Cに対して躯体固定部206が傾斜していることから、建物補強金物200の中でも応力に傾斜が生じるために、パネル固定部202と成形パネル110との接着面にはねじれ応力がかかる。このためパネル固定部202の回転中心Cから最も遠い点に高い応力がかかり、その位置から剥離などの損壊が開始すると、破壊位置に応力が集中して一気に全体が剥離(損壊)してしまう。したがって、建物補強金物200にかかる応力を水平力Wpまたは垂直力Wcのいずれか一方にすることにより、パネル固定部202の全体に均等に応力をかけたいという要請がある。
次に、建物補強金物200が水平力Wpと垂直力Wcのいずれに耐えるべきかについて検討する。躯体が水平力によって平行四辺形に変形するとき、水平力Wpに耐え、仮想的に垂直力Wcは完全に逃がすことができると仮定する。このとき、梁130上の建物補強金物200の取り付け位置の間隔は変わらないため、成形パネル110は単に回転してしまい、躯体の変形を阻止することができない。一方、垂直力Wcに耐え、仮想的に水平力Wpは完全に逃がすことができると仮定する。ここで、躯体が平行四辺形に変形するとき、梁130同士の間隔が狭くなる(四角形の高さが低くなる)ことから、これを阻止すれば変形を阻止できると考えられる。すなわち、建物の横揺れに対する変形を阻止するためには、垂直力Wcに対する剛性の方がより効果的である。そこで建物補強金物200は、水平力Wpを逃がし、垂直力Wcに耐えることにより、成形パネルの損壊を防止しつつ、躯体の耐震性を向上させる。
再び図3を参照して、建物補強金物200の各部について説明する。
パネル固定部202は建物補強金物200を成形パネルに固定するための部位であるが、換言すれば立設部204を成形パネル110に固定するためにある。パネル固定部202は成形パネル110の面に強固に固定できればよく、例えば図示のように板状体であってもよいが、枠体であったり、板状体にさらにリブを設けたりしてもよい(いずれも不図示)。
パネル固定部202は建物補強金物200を成形パネルに固定するための部位であるが、換言すれば立設部204を成形パネル110に固定するためにある。パネル固定部202は成形パネル110の面に強固に固定できればよく、例えば図示のように板状体であってもよいが、枠体であったり、板状体にさらにリブを設けたりしてもよい(いずれも不図示)。
また、パネル固定部202は樹脂系接着剤によって成形パネル110に接着してもよいが、パネル固定部202に設けたボルト孔210を通じて成形パネル110にボルト留めしてもよい。接着剤のみでパネル固定部202を固定すると、成形パネルは脆性材料であるコンクリートであるから、その表面が剥離して損壊してしまうおそれがある。これに対し深部まで埋設したアンカーボルトによって固定することにより、強固に固定することができる。具体例としては、接着系アンカー等を用いたアンカーボルトを設置し、これにパネル固定部202のボルト孔を挿通して、ナットで締結することができる。また接着剤とボルト留めを併用することにより、さらに強固にパネル固定部202を成形パネルに固定することができる。
立設部204はパネル固定部202から立設されることにより、成形パネル110の表面から突出して設置される。これは、躯体固定部206を梁130に固定する際に、成形パネル110の面と直交する面に固定するためである。すなわち立設部204は、梁130に取り付けられる躯体固定部206と平行となる位置(対向する位置)に設置される。具体的には、例えばパネル固定部202と立設部204とを、1枚の板材を屈曲させたL字型の部材として形成することができる。
躯体固定部206は、鉄骨である梁130に固定される部位である。躯体固定部206は梁に強固に固定されていればよく、例えば図示のように板状体であってもよいが、枠体であったり、さらに鉄骨に係止するフック形状を備えていてもよい。躯体固定部206は、樹脂系接着剤によって接着したり、溶接したり、ボルト留めしたりすることができる。躯体固定部206を接着のみによって固定する場合には、成形パネル110が回転方向に変位する際にかかる応力によって剥離するおそれがあるため、躯体固定部206は所要の面積を有する必要がある。
架橋部208は立設部204と躯体固定部206とを接続する部位である。架橋部208は弾塑性変形することを目的とする部位であって、他の部位よりも断面積を小さく形成している。ここで上述したように架橋部208は、水平力Wpを逃がし、垂直力Wcに耐えるように、弾塑性変形に異方性をもたせる必要がある。そこで、成形パネル110が梁130(躯体)に沿ってずれる方向は変形しやすく、成形パネル110が梁130から離接する方向は変位しにくいように構成する。
このための架橋部208の具体的な構成の例としては、図示のように成形パネル110の面に対して直交する板材を溶接によって接合することができる。これにより、水平力Wpによってずれる方向は架橋部208(板材)の厚み方向となるため変形しやすく、垂直力Wcによって離接する方向は架橋部208の伸縮方向となって変位しにくくすることができる。このため架橋部208の剛性に異方性をもたせることができ、剛性と損壊防止を両立させることができる。
架橋部208は、一つの要素(板材)であってもよいが、複数の要素としてもよい。図では2つの板材を用いて架橋部208を構成している。これは上記の異方性を得るにあたり、1つの要素で充分な垂直力Wcに対する剛性を得ようとすると、水平力Wpに対する剛性も高くなってしまうからである。極論すれば、より断面積の小さな多数の要素を用いて架橋部を構成することにより、より異方性を高めることができる。
図4は建物補強金物に生じる応力と変形を説明する図であって、図4(a)は水平力Wpを加力したとき、図4(b)は垂直力Wcを加力したときの有限要素法解析を示す図である。
図4(a)によれば、水平力Wpに対しては、架橋部208が応力に応じて大きく変形し、パネル固定部202および躯体固定部206に生じる応力は小さいことがわかる。すなわち、水平力Wpはほぼ変形によって吸収することができ、これによってパネル固定部202にかかる応力はほぼ削減することが可能である。
図4(b)によれば、垂直力Wcに対しては、パネル固定部202に大きく力が伝達され、垂直力Wcに耐えていることがわかる。これにより複数の梁130の間の距離の変更を阻止し、建物の横揺れに対する剛性を向上させることができることがわかる。ここで上述したように、パネル固定部202にかかる応力はねじれ応力ではなく、ほぼ垂直力Wcのみの平行な剪断力であることから、接合面全体に略均一に応力が分散するため、成形パネル110の損壊を防止することができる。
ここで上述のように、成形パネル110と躯体がずれると立設部204と躯体固定部206とが相対的に位置ずれを生じ、架橋部208が弾塑性変形してこれを緩和する。しかし架橋部が変形しにくい方向成分の変位や、特に架橋部が2つ以上の要素で構成されている場合には、立設部にねじれが生じ(外側の方が応力および変位量が大きくなる)、架橋部との接合部に破損を生じるおそれがある。
そこで図3に示したように、架橋部208は立設部の先端204a近傍に偏って配置し、立設部204の架橋部208よりパネル固定部202側は、弾塑性変形およびねじれ変形可能なねじれ変形部204bとしている。すなわち、架橋部208は成形パネル110からなるべく離れた位置において接続している。ねじれ変形部204bは、図4(b)にも示されるように、垂直力Wcに対してわずかに変形する。これにより架橋部208の要素ごとに生じる垂直力Wcの差を吸収し、パネル固定部202にかかる剪断力の不均一を緩和して損壊を防止することができる。
図5は建物補強金物の要素試験による変形を説明する解析図であって、図5(a)は要素試験装置の構成を示す概略図、図5(b)は荷重と変形を説明する図、図5(c)は低荷重時の拡大図である。要素試験とは、単体の建物補強金物200について調べる試験である。図5(a)に示すように、要素試験装置300は、単体の建物補強金物200を用いて成形パネル110と梁130を連結し、梁130に固定したジャッキ312によって成形パネル110に繰り返し荷重をかけた。
すると図5(b)に示すように、荷重が約±100kNまでは弾性変形し、その後は塑性変形した。荷重を大きくすると変形量も大きくなったが、架橋部208は破壊に到らず、またパネル固定部202と成形パネル110との剥離も生じなかった。
図6は比較例となるL字金物の変形を説明する図であって、図6(a)はL字金物400の構成を説明する図、図6(b)は要素試験装置の構成を示す概略図、図6(c)は荷重と変形を説明する図である。図6(a)に示すように、比較例となるL字金物400は、1枚の鋼板を折り曲げることにより、成形パネル110に固定されるパネル固定部402と、梁130に固定される躯体固定部406とを構成している。L字金物400は応力に対する変形が極めて少なく、剛体であるとみなすことができる。このL字金物400を、図6(b)に示すように、要素試験装置300に取り付けて繰り返し荷重をかけた。パネル固定部402は成形パネル110にエポキシ樹脂によって接着した。
すると図6(c)に示すように、荷重が約±175kNまでは耐力の劣化は見られなかった。しかし荷重を約248kNとしたときにパネル固定部402と成形パネル110との接着面に亀裂が生じて剛性が低下し、引張側載荷時の−243kNとしたときに一気に剥離を生じた(図中+印で表す)。接着面において、約半分の領域はコンクリートが剥離し、残りの半分はエポキシ樹脂が成形パネル110側に残存していた。
図5(c)と図6(c)とを比較すると、例えば荷重が100kNのとき建物補強金物200では2mm程度の変形を生じているのに対し比較例であるL字金物400は0.4mm程度の変形しかしていないため、L字金物400のほうが剛性が高いことがわかる。しかしL字金物400では荷重が高くなったところで一気に剥離していることから、耐久性に劣ることがわかる。
これらのことから、立設部204と躯体固定部206とを弾塑性変形可能な架橋部208によって接続したことにより、成形パネル110と梁130とがずれるとき(立設部204と躯体固定部206とが相対的に移動するとき)に、架橋部208がその変位を吸収し、成形パネル110に過度の応力がかかることを防止することができることが確認された。そしてこれにより、成形パネル110によって建物の剛性を向上させつつ、成形パネル110の損壊を防止することができる。
図7は建物補強金物のフレーム試験による変形を説明する解析図であって、図7(a)はフレーム試験装置の構成を示す概略図、図7(b)は荷重と変形(柱の傾斜角度)を示す図である。図7(a)に示すように、フレーム試験装置302は、躯体としての鉄骨の柱134の上下に2本の鉄骨の梁130をわたし、これに2枚の成形パネル110を、それぞれ4つ(上下の梁130に2つずつ)の建物補強金物200によって固定した。さらに柱134の最上部には加力梁132を設け、別途設置した足場310に取り付けたジャッキ312によって繰り返し荷重をかけた。
図7(b)に示すように、約500kNまでは弾性変形し、その後は塑性変形した。荷重を大きくすると変形量(柱の傾斜角度)も大きくなったが、架橋部208は破壊に到らず、またパネル固定部202と成形パネル110との剥離も生じなかった。このことから、大きな地震でも成形パネルの損壊を防止することができ、建物の剛性を向上させつつも、成形パネル110の損壊を防止することができることが確認された。
(他の実施形態)
(他の実施形態)
上記実施形態において、図2および図7に示すように、成形パネル110に対して建物補強金物200を幅方向に複数設けて示している。これは、上記のように梁130の間隔が狭くなることを阻止しようとしたとき、梁が傾くのと同様に成形パネル110が回転してしまっては用を成さないためであり、成形パネル110の回転を防止する必要があるためである。回転を防止するためには梁130に対する成形パネル110の姿勢を維持する必要があり、建物補強金物200を幅方向に複数設けているのである。
ここで、より効果的に成形パネル110の回転を防止するためには、建物補強金物200を設置する間隔を広げること、すなわち建物補強金物200をなるべく成形パネルの端に寄った位置に配置することが考えられる。しかし成形パネル110の損壊を防止するためには、成形パネル110に固定されるパネル固定部202をある程度の大きな面積とする必要があり、極端に端に寄せることは困難である。
そこで、架橋部208を成形パネル110の面に平行ないずれかの方向に偏って配置し、図8(a)に示すように架橋部208が左に偏った建物補強金物200a、図8(b)に示すように架橋部208が右に偏った建物補強金物200bを構成する。そして図8(c)に示すように、成形パネル110の左側には左に偏った建物補強金物200aを、成形パネルの右側には右に偏った建物補強金物200bを取り付けてもよい。すなわち、建物補強金物を梁130に沿って複数配置し、かつ、成形パネル110の縁側に架橋部208が偏った状態で取り付けることにより、効果的に成形パネル110の回転を防止し、ひいてはより効率的に建物の剛性を向上させることができる。
また上記実施形態において、架橋部208は板材を溶接によって接合すると説明した。しかし上述したように架橋部は、水平力Wpを逃がし、垂直力Wcに耐えるように、弾塑性変形に異方性を備えていればよい。図9は架橋部の他の形状の例を示す図であって、架橋部は例えば図9(a)に示すような円柱212または角柱であってもよい。また図9(b)に示すように立設部204の両端を折り曲げて架橋部214を一体に構成してもよい。また図9(c)に示すように、架橋部208の板材に肉抜き孔216を設けることによって軽量化を図ってもよい。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明は、成形パネルで壁が構成された建物用の建物補強金物として利用可能することができる。
100 …建物
110 …成形パネル
130 …梁
132 …加力梁
134 …柱
140 …小型L字鋼
160 …連結ファスナ
200 …建物補強金物
200a …建物補強金物
200b …建物補強金物
202 …パネル固定部
204 …立設部
204a …立設部の先端
204b …ねじれ変形部
206 …躯体固定部
208 …架橋部
210 …ボルト孔
212 …円柱
214 …架橋部
216 …肉抜き孔
300 …要素試験装置
302 …フレーム試験装置
310 …足場
312 …ジャッキ
400 …L字金物
402 …パネル固定部
406 …躯体固定部
110 …成形パネル
130 …梁
132 …加力梁
134 …柱
140 …小型L字鋼
160 …連結ファスナ
200 …建物補強金物
200a …建物補強金物
200b …建物補強金物
202 …パネル固定部
204 …立設部
204a …立設部の先端
204b …ねじれ変形部
206 …躯体固定部
208 …架橋部
210 …ボルト孔
212 …円柱
214 …架橋部
216 …肉抜き孔
300 …要素試験装置
302 …フレーム試験装置
310 …足場
312 …ジャッキ
400 …L字金物
402 …パネル固定部
406 …躯体固定部
Claims (5)
- 建物の壁を構成する成形パネルを躯体に固定する建物補強金物であって、
前記成形パネルに固定されるパネル固定部と、
前記パネル固定部から立設される立設部と、
建物の躯体に固定される躯体固定部と、
前記パネル固定部と前記躯体固定部とを接続する架橋部とを備え、
前記架橋部は、前記立設部と躯体固定部とが相対的に移動する際に弾塑性変形可能であることを特徴とする建物補強金物。 - 前記パネル固定部と立設部とは板材を屈曲させてなり、
前記躯体固定部は前記立設部と平行に配置される板材であって、
前記架橋部は前記成形パネルの面に対して直交する板材であることを特徴とする請求項1に記載の建物補強金物。 - 前記架橋部は前記立設部の先端近傍に偏って配置されており、
前記立設部の前記架橋部より前記パネル固定部側は、ねじれ変形可能なねじれ変形部を構成することを特徴とする請求項1に記載の建物補強金物。 - 前記架橋部は、前記成形パネルの面に平行ないずれかの方向に偏って配置されており、
当該建物補強金物は建物の躯体に沿って複数配置され、かつ、前記成形パネルの縁側に前記架橋部が偏った状態で取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の建物補強金物。 - 前記パネル固定部は、前記成形パネルにアンカーボルトによって固定するための複数の孔を備えていることを特徴とする請求項1に記載の建物補強金物。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP7456886B2 (ja) | 2020-08-07 | 2024-03-27 | 株式会社竹中工務店 | 既存ファスナの補強構造 |
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- 2008-05-12 JP JP2008124862A patent/JP2009275356A/ja active Pending
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