JP5267317B2 - 高強度薄鋼板のレーザ重ね溶接継手及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、高強度薄鋼板のレーザ重ね溶接継手およびその製造方法に関する。
近年、自動車の燃費の改善や安全性の向上といった要求に対応するため、引張強さが440MPa級以上の高強度の薄鋼板が自動車車体に多く使用されるようになっており、レーザ溶接を用いてこれらの鋼板を溶接することが求められている。さらに、高強度薄鋼板を重ね合わせて溶接する方法において、安定した接合部強度が得られるレーザ溶接方法が望まれている。
レーザ溶接は、レーザ光を熱源とするため、TIG溶接(Tungsten Inert Gas arc welding)やMIG溶接(Metal Inert Gas arc welding)などのアーク溶接に比べて入熱量の制御が確実かつ容易である。このため、溶接速度やレーザビームの照射出力、さらにはシールドガス流量などの溶接条件を適切に設定することによって熱変形を小さくできる。また、レーザ溶接は、片側から溶接できることから自動車の車体など複雑な部材の組付溶接に好適である。
実際、レーザ溶接は、自動車製造業や電気機器製造業その他の分野において、薄鋼板を成形加工した部材の溶接に多く採用されている。また、これに関連して、溶接継手強度に優れた重ね継手のレーザ溶接方法が多数提案されている。
例えば、特許文献1では、被溶接部材の重ね継手をレーザ溶接する方法において、良好な継手強度を得るため、被溶接部材の幅Wsに対するレーザ溶接部の溶接長Lbの比率Lb/Wsによって、レーザ溶接部の溶接幅Wbの板厚tに対する比率Wb/tを規定した発明が開示されている。
また、特許文献2には、薄鋼板の重ね継手溶接において、溶接予定箇所にYAGレーザを照射する工程と、その後にガスメタルアーク溶接を行う工程を備え、溶接ビードの幅Wが所定の式を満足するようにレーザ出力、アーク電流、溶接速度を調節する重ね溶接法が開示されている。
ところで、生産コストを抑制する観点から、被溶接部材の全幅に渡って溶接せずに必要な強度を得るだけの必要最小限の溶接長しか溶接しない場合や、さらに、接合部材の固定方法によっては溶接長を被溶接部材の幅より小さくせざるを得ない場合は十分あり得ることである。ところが、本発明者らの実験によれば、高強度薄鋼板のレーザ重ね溶接継手において、溶接長を全幅未満とする場合は、溶接長に比例した継手強度の向上が必ずしも達成されないことが判明した。
具体的には、引張強さが440MPa級以上の高強度の鋼板(被溶接部材)をレーザー溶接した後、引張試験で溶接強度を測定すると、被溶接部材の幅Wsに対するレーザ溶接部の溶接長Lbの比率Lb/Wsが0.6の時に、溶接強度がばらつく結果となった。このときの破断形態としては、溶接金属でせん断破断する場合と鋼板熱影響部で破断する場合の二通りの形態があった。また、Lb/Wsが0.6超0.8以下の範囲では、単位溶接長さ当たりの溶接強度が、Lb/Wsが0.6以下の場合に比べて低下していた。
特開2002−079387号公報 特開2002−144063号公報
溶接強度のばらつきの原因や、単位溶接長さ当たりの溶接強度の低下の原因を、本発明者らが追及したところ、引張応力によって溶接ビードの始端部及び終端部に応力(あるいは歪み)が集中し、この応力(あるいは歪み)によって溶接金属のせん断破断が引き起こされ、溶接強度のばらつきや溶接強度の低下に至ることが見出された。
本発明者らによる上記の知見を鑑みて、溶接金属でのせん断破断を防止して継手強度を高めるには、特許文献1に記載の発明に従って、溶接速度を遅くするなどして入熱を増加させ溶接幅を広くすれば、溶接ビードの始端部及び終端部とに歪みが集中することがなく、良好な継手が得られる。しかし、この場合は、薄鋼板の熱変形が大きくなり、レーザ溶接の利点を損なうだけでなく、溶接時間が長くなり生産コストがかさむ問題があった。
また、特許文献2に記載されたレーザとアークを用いて、必要な溶接幅を得る溶接方法では、レーザ単独溶接時に比べ入熱の絶対量が増加するため、薄鋼板に対しては熱変形が大きくなるという問題があった。
そこで、本発明は、従来の問題点を有利に解決して、高強度薄鋼板の重ね継手をレーザ溶接により作製する場合に、小入熱の細いビードでも溶接金属での破断を防止し、安定した強度が得られる、高強度薄鋼板のレーザ重ね溶接継手およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
引張強さが440MPa級以上の高強度薄鋼板を被溶接部材の幅方向に沿ってレーザ溶接してなるレーザ重ね溶接継手であって、前記被溶接部材の幅(Ws)に対するレーザ溶接部の溶接長さ(Lb)の比率(Lb/Ws)が0.6以上であり、前記レーザ溶接部の溶接幅(Wb)の板厚(t)に対する比率(Wb/t)が0.8以上2以下であり、前記レーザ溶接部の始端部の隣接領域および終端部の隣接領域の両方に、前記レーザ溶接部の長手方向と直交する方向に沿う開口長さが前記レーザ溶接部を中心に溶接幅の8割以上の長さを有する板厚貫通開口部が設けられていることを特徴とする高強度薄鋼板のレーザ重ね溶接継手。 ただし、前記溶接幅(Wb)は、高強度薄鋼板の重ね合わせ面における溶接幅であり、前記隣接領域は、一辺とこの一辺に直交する他辺とによって囲まれた平面視長方形の領域であって、前記一辺は、前記レーザ溶接部の長手方向に沿って、前記レーザ溶接部のR止まりから前記レーザ溶接部の最端部よりも板厚(t)分だけはみ出た位置に至るまで延在するものであり、前記他辺は、前記レーザ溶接部の長手方向と直交する方向に沿って、前記レーザ溶接部を中心に前記溶接幅の8割の長さとするものである。
前記レーザ溶接部が、連続した一つの溶接ビードから構成され、前記溶接ビードの始端部及び終端部にそれぞれ前記隣接領域が設けられるとともに、前記の各隣接領域に前記板厚貫通開口部が設けられていることを特徴とする(1)に記載の高強度薄鋼板のレーザ重ね溶接継手。 ただし、前記隣接領域は、一辺とこの一辺に直交する他辺とによって囲まれた平面視長方形の領域であって、前記一辺は、前記溶接ビードの長手方向に沿って、前記溶接ビードのR止まりから前記溶接ビードの最端部よりも板厚(t)分だけはみ出た位置に至るまで延在するものであり、前記他辺は、前記溶接ビードの長手方向と直交する方向に沿って、前記溶接ビードを中心に前記溶接幅の8割の長さとするものである。
前記レーザ溶接部が、前記被溶接部材の幅方向に沿って間欠的に形成された複数の溶接ビードから構成され、各溶接ビードのビード長さの合計が前記溶接長さ(Lb)とされ、前記複数の溶接ビードの各始端部及び各終端部の一部または全部に前記隣接領域が設けられるとともに、前記の各隣接領域に前記板厚貫通開口部が設けられていることを特徴とする(1)に記載の高強度薄鋼板のレーザ重ね溶接継手。 ただし、前記隣接領域は、一辺とこの一辺に直交する他辺とによって囲まれた平面視長方形の領域であって、前記一辺は、前記の各溶接ビードの長手方向に沿って、前記の各溶接ビードのR止まりから前記の各溶接ビードの最端部よりも板厚(t)分だけはみ出た位置に至るまで延在するものであり、前記他辺は、前記の各溶接ビードの長手方向と直交する方向に沿って、前記の各溶接ビードを中心に前記溶接幅の8割の長さとするものである。
前記レーザ溶接部が、前記被溶接部材の幅方向に沿って間欠的に形成された複数の溶接ビードから構成され、各溶接ビードのビード長さの合計が前記溶接長さ(Lb)とされ、前記複数の溶接ビードのうち、前記レーザ溶接部の前記始端部及び前記終端部に相当する位置に前記隣接領域が設けられるとともに、前記の各隣接領域に前記板厚貫通開口部が設けられていることを特徴とする(1)に記載の高強度薄鋼板のレーザ重ね溶接継手。 ただし、前記隣接領域は、一辺とこの一辺に直交する他辺とによって囲まれた平面視長方形の領域であって、前記一辺は、前記の各溶接ビードの長手方向に沿って、前記の各溶接ビードのR止まりから前記の各溶接ビードの最端部よりも板厚(t)分だけはみ出た位置に至るまで延在するものであり、前記他辺は、前記の各溶接ビードの長手方向と直交する方向に沿って、前記の各溶接ビードを中心に前記溶接幅の8割の長さとするものである。
(1)乃至(4)のいずれか一項に記載の高強度薄鋼板の被溶接部材の幅方向に沿ってレーザ重ね溶接継手を製造する方法であって、レーザ溶接部の形成に先立ち、前記隣接領域に相当する位置に、前記レーザ溶接部の長手方向と直交する方向に沿う開口長さが前記レーザ溶接部を中心に溶接幅の8割以上の長さを有する板厚貫通開口部を設ける工程と、前記被溶接部材の幅(Ws)に対するレーザ溶接部の溶接長さ(Lb)の比率(Lb/Ws)が0.6以上、かつレーザ溶接部の溶接幅(Wb)の板厚(t)に対する比率(Wb/t)が0.8以上2以下となるように、前記レーザ溶接部を形成する工程と、を具備してなることを特徴とする高強度薄鋼板のレーザ重ね溶接継手の製造方法。 ただし、前記溶接幅(Wb)は、高強度薄鋼板の重ね合わせ面における溶接幅であり、前記隣接領域は、一辺とこの一辺に直交する他辺とによって囲まれた長方形の領域であって、前記一辺は、前記レーザ溶接部の長手方向に沿って、前記レーザ溶接部のR止まりから前記レーザ溶接部の最端部よりも板厚(t)分だけはみ出た位置に至るまで延在するものであり、前記他辺は、前記レーザ溶接部の長手方向と直交する方向に沿って、前記レーザ溶接部を中心に前記溶接幅の8割の長さとするものである。
(1)乃至(4)のいずれか一項に記載の高強度薄鋼板の被溶接部材の幅方向に沿ってレーザ重ね溶接継手を製造する方法であって、前記被溶接部材の幅(Ws)に対するレーザ溶接部の溶接長さ(Lb)の比率(Lb/Ws)が0.6以上、かつレーザ溶接部の溶接幅(Wb)の板厚(t)に対する比率(Wb/t)が0.8以上2以下となるように、前記レーザ溶接部を形成する工程と、前記レーザ溶接部の始端部の隣接領域および終端部の隣接領域の両方に、前記レーザ溶接部の長手方向と直交する方向に沿う開口長さが前記レーザ溶接部を中心に溶接幅の8割以上の長さを有する板厚貫通開口部を設ける工程と、を具備してなることを特徴とする高強度薄鋼板のレーザ重ね溶接継手の製造方法。
ただし、前記溶接幅(Wb)は、高強度薄鋼板の重ね合わせ面における溶接幅であり、前記隣接領域は、一辺とこの一辺に直交する他辺とによって囲まれた長方形の領域であって、前記一辺は、前記レーザ溶接部の長手方向に沿って、前記レーザ溶接部のR止まりから前記レーザ溶接部の最端部よりも板厚(t)分だけはみ出た位置に至るまで延在するものであり、前記他辺は、前記レーザ溶接部の長手方向と直交する方向に沿って、前記レーザ溶接部を中心に前記溶接幅の8割の長さとするものである。
本発明によれば、小入熱の細いビードでも始端部および終端部の隣接領域に板厚貫通開口部を設けることで、破断形態を、溶接金属のせん断破断から、強度低下の起きにくい溶接熱影響部の破断に移行させることができ、溶接金属のせん断破断を防止し、溶接強度に優れた重ね溶接継手を提供できる。
図1は、本発明のレーザ重ね溶接継手を示す平面模式図である。 図2は、従来のレーザ重ね溶接継手における溶接部の溶接長Lbと継手強度との関係を示すグラフである。 図3(A)は、従来のレーザ重ね溶接継手における溶接ビード表面の始端部または終端部を示す拡大平面模式図であり、図3(B)は、(A)のC1−C2線に沿う断面模式図であって、溶接金属の形状および溶接金属でのせん断破断時に生じる破断箇所を説明する図である。 図4(A−1)は、板厚貫通開口部を設ける前のレーザ重ね溶接継手における溶接ビード表面の始端部または終端部を示す拡大平面模式図であり、図4(A−2)は、本発明のレーザ重ね溶接継手における溶接ビード表面の始端部または終端部を示す拡大平面模式図であり、図4(B)は、(A−2)のD1−D2線に沿う断面模式図であって、溶接金属の形状および熱影響部でのプラグ破断時に生じる破断箇所を説明する図である。 図5は、従来のレーザ重ね継手の引張試験時における変形を示す図であって、(A)は溶接ビード延長上に生じる変形を示す図であり、(B)は溶接ビードを中心とした回転変形を示す図であり、(C)は回転変形の結果生じる面外変形を示す図である。 図6は、継手引張時に鋼板間の溶接金属に生じる、重ね合わせ面に対して平行なせん断応力成分を示す図である。 図7は、継手引張時に生じる、重ね合わせ面に対して垂直な、板厚方向のせん断応力成分を示す図である。 図8は、本発明のレーザ重ね溶接継手における隣接領域を説明する図である。 図9は、本発明の第1の実施形態であるレーザ重ね溶接継手を示す平面模式図である。 図10は、本発明の第1の実施形態であるレーザ重ね溶接継手のレーザ溶接部近傍を示す断面模式図である。 図11は、溶接ビードの始端部及び終端部の決定方法を説明する図であって、(A)は溶接ビードの断面模式図であり、(B)は下側の鋼板に形成された溶接ビードを示す平面模式図である。 図12は、溶接ビードの溶接幅の決定方法を説明する図であって、溶接ビードを示す断面模式図である。 図13は、本発明のレーザ重ね溶接継手における板厚貫通開口部の一例を示す平面模式図である。 図14は、本発明のレーザ重ね溶接継手における板厚貫通開口部の別の例を示す平面模式図である。 図15は、本発明のレーザ重ね溶接継手における板厚貫通開口部の更に別の例を示す平面模式図である。 図16は、本発明のレーザ重ね溶接継手における板厚貫通開口部の他の例を示す平面模式図である。 図17は、本発明のレーザ重ね溶接継手における板厚貫通開口部の更に他の例を示す平面模式図である。 図18は、本発明のレーザ重ね溶接継手における板厚貫通開口部の別の例を示す平面模式図である。 図19は、レーザ重ね溶接継手の継ぎ手強度と溶接幅/板厚(Wb/t)との関係を示すグラフである。 図20は、本発明の第2の実施形態であるレーザ重ね溶接継手の一例を示す平面模式図である。 図21は、本発明の第2の実施形態であるレーザ重ね溶接継手の別の例を示す平面模式図である。 図22は、本発明の第3の実施形態であるレーザ重ね溶接継手を示す平面模式図である。 図23は、実施例における貫通孔の形成位置を説明する平面模式図である。 図24は、実施例における貫通孔の形成位置を説明する平面模式図である。
生産コストを抑制する観点から、被溶接部材の全幅に渡って溶接せずに必要な強度を得るだけの必要最小限の溶接長さしか溶接しない場合や、さらに、接合部材の固定方法によっては溶接長さを被溶接部材の幅より小さくせざるを得ない場合がある。ところが、本発明者らの実験によれば、高強度薄鋼板のレーザ重ね溶接継手において、溶接長を被溶接部材の全幅未満とした場合に、溶接長さに比例した継手強度の向上が必ずしも達成されないことが判明した。以下に、本発明者らの上記実験について説明する。
調査した鋼板は、引張強さが590MPa級で、板厚1.2mm、幅60mm、長さ185mmの合金化溶融亜鉛めっき鋼板とした。これを2枚、重ね代60mmで重ね合わせ、試験片の全幅Ws(被溶接部材の幅)に対し溶接長Lbを12mm(被溶接部材の幅Wsの20%)、24mm(同40%)、36mm(同60%)、48mm(同80%)、60mm(同100%)と変えて溶接して、図1に示すようなレーザ重ね溶接継手の試験片を得た。図1において、符号1及び2が引張強さ590MPa級の合金化溶融亜鉛めっき鋼板であり、符号3が重ね合わせ部であり、符号4がレーザ溶接部である。
レーザ溶接条件は、溶接ビード幅狙い1.2mm、ビームウエスト0.6mm、加工点出力4kW、焦点はずし距離0mm、溶接速度3m/分とし、ノズル径φ5mmのノズルより、シールドガスとして流量20L/分のArガスを同軸センターシールド(裏面シールドなし)で供給した。なお、溶接に際し、2枚の鋼板1、2間には合金化溶融亜鉛めっき鋼板の溶接時に発生する亜鉛蒸気を逃がすため、板厚0.1mmの金属箔をレーザ溶接部と重ならないよう挿入した。
レーザ溶接部4の強度を評価するため、図1に示すように、溶接ビードと直角方向(符号5の方向)に引っ張る引張試験を行い、レーザ溶接部4が破断する際の最大荷重を調べ、これを継手強度(kN)とした。引張速度は10mm/分、チャック間距離は240mmとした。
実験の結果、図2に示すように、溶接長LbをWs全幅未満とする場合は、溶接長Lbに比例した継手強度の向上が必ずしも達成されないことが判明した。図2中の点線は、溶接長Lbが被溶接部材の幅Wsの20%及び40%の場合のプロットを結んだ直線である。この直線に対応する継手強度を溶接長Lbに比例した継手強度としている。図2に示すように、特に溶接長が36mm(被溶接部材の幅の60%)の場合は、継手強度のばらつきが大きく、かつ図2中の点線より低い継手強度になっていた。そこで、破断形態を調査したところ、重ね合わせ面に対して平行な、鋼板界面の溶接金属でのせん断破断(図中Sと表記。)と、重ね合わせ面に対して垂直な、鋼板熱影響部でのプラグ破断(図中Pと表記。)の2種類が現れていた。せん断破断Sは、図3の重ね合わせ部分の断面模式図(図3(B))に示すように、鋼板界面の溶接金属4aが符号10に示す線で破断したものであり、プラグ破断Pは、図4の重ね合わせ部分の平面模式図(図4(A−1))及び断面模式図(図4(B))に示すように、鋼板1の熱影響部が符号11に示す線で破断したものである。符号10はせん断破断時の破断箇所を示し、11はプラグ破断時の破断箇所を示している。
図2に示すように、せん断破断Sの場合は、鋼板熱影響部でのプラグ破断Pに比べて継手強度が低下していた。さらに、溶接長Lbが48mm(試験片幅の80%)の場合には、溶接長Lbから期待される継手強度に比べて実際の継手強度が大幅に低下していたことから、その破断形態を調査したところ、破断形態はすべて溶接金属でのせん断破断Sであることが判明した。
溶接長Lbが被溶接部材の幅Wsの60%、80%と長くなり、せん断破断Sが起きた場合に、継手強度が、溶接長Lbから期待される強度より低下する主な原因および、60%の場合にせん断破断Sとプラグ破断Pに分かれる理由について調べるため、引張試験時における試験片の変形について調べた結果を図5に示す。
引張試験時には、載荷される鋼板1、2の板厚中心が左右でずれているため、溶接金属4aを中心とした回転モーメントが生じ、図5(B)に示すような、鋼板1、2の板厚中心が揃うような回転変形M1が生じる。しかし、それと同時にレーザ溶接部4の延長上では、回転変形M1の中心となる溶接金属4aがないために、図5(A)及び図5(C)のような面外への曲げ変形M2が生じる。上記のような曲げ変形M2が進むと、レーザ溶接部の始端部および終端部には、図5(A)に示す曲げ変形M2に伴い、図6に示すような重ね合わせ面に対して平行なせん断応力成分7が鋼板間の溶接金属4aに大きく働く。また、このような始端部及び終端部へのせん断応力は応力集中となり、溶接長Lbが長くなるほど、継手強度およびそれに伴う変形が大きくなるため顕著となる。したがって、溶接長Lbが60%、80%と長くなった場合には、溶接金属4aが均一に荷重を負担しないため、期待される強度よりも低下するという結果になると考えられる。
また、溶接長Lbが60%の場合にせん断破断Sとプラグ破断Pに分かれる理由を引張試験時の荷重-変位曲線(S-Sカーブ)より調べたところ、2つのカーブ形状はほぼ同じであったことから、プラグ破断Pはせん断破断Sが生じず、そのまま回転変形が進んだ場合に生じていることが分かった。すなわち、せん断破断Sが生じず変形が進んだ場合には、図7に示すように、重ね合わせ面に対して垂直な、板厚方向のせん断応力成分8が大きくなり、溶接部4を剥離させる方向に荷重が働くため、プラグ破断になると考えられる。
また、せん断破断Sとプラグ破断Pに分かれるのを助長する要因として、引張試験機に固定された試験片が板幅方向に均一に引っ張られるとは限らないことが考えられる。すなわち、荷重のバランスが溶接ビードのどちらか一方に偏った場合には、始端部と終端部どちらか一方に作用する応力集中が大きくなるため、せん断破断Sとなり、荷重が偏らない場合には、変形が十分進み、プラグ破断Pになると考えられる。
(第1の実施形態)
以上の知見を踏まえて、本発明の第1の実施形態は、高強度薄鋼板のレーザ重ね溶接継手およびその製造方法に関し、引張強さが440MPa級以上で、被溶接部材の幅(Ws)に対するレーザ溶接部の溶接長さ(Lb)の比率(Lb/Ws)が0.6以上であって、レーザ溶接部の溶接幅(Wb)の板厚(t)に対する比率(Wb/t)が0.8以上、2以下である高強度薄鋼板の重ね溶接継手をレーザ溶接により作製する場合、図8に示すように、レーザ溶接部4の始端部の隣接領域A内および終端部の隣接領域A内の両方に、レーザ溶接部4の長手方向と直交する方向に沿う開口長さがレーザ溶接部4を中心に溶接幅(Wb)の8割(0.8Wb)以上の長さを有する板厚貫通開口部を設けるようにする。
本実施形態におけるレーザ溶接部4は、図9に示すように、始端部から終端部に至る連続した一つの溶接ビード4bから構成されるものである。溶接ビード4bの始端部及び終端部にそれぞれ隣接領域Aが設けられるとともに、各隣接領域Aに板厚貫通開口部9が設けられている。板厚貫通開口部9は、重ね合わせた鋼板1、2を貫通する貫通孔である。
ここで、板厚(t)の鋼板1、2のレーザ溶接部4の部材幅(Ws)及び溶接長さ(Lb)は、図9に示す通りであり、溶接幅(Wb)は、図10に示すように、鋼板1、2の重ね合わせ面における溶融、凝固した溶接金属の幅であって、鋼板1及び2の間の溶接金属4aの溶接幅のうち、幅が小さい方を指す。また、隣接領域Aは、図8に示すように、鋼板間の溶接幅が短い方の溶接ビード4bにおいて、一辺A1とこの一辺A1に直交する他辺A2とによって囲まれた平面視長方形の領域であって、一辺A1は、レーザ溶接部4の長手方向に沿って、レーザ溶接部4(溶接ビード4b)のR止まり(R−end)からレーザ溶接部4(溶接ビード4b)の最端部4cよりも板厚(t)分だけはみ出た位置に至るまで延在するものであり、他辺A2は、レーザ溶接部4(溶接ビード4b)の長手方向と直交する方向に沿って、レーザ溶接部4(溶接ビード4b)を中心に溶接幅(Wb)の8割の長さ(0.8Wb)とするものである。
レーザ重ね溶接継手を作製する工程は、板厚貫通開口部9を設ける工程とレーザ溶接部4(溶接ビード4b)を作製する工程の2つからなり、どちらを先に行うかに関して特に制約はない。板厚貫通開口部9を設けた後、レーザ溶接部4(溶接ビード4b)を作製する順序で継手を作製する場合には、例えばプレス打抜き加工等により板厚貫通開口部9を開けた後、2つの板厚貫通開口部9の中心間を結ぶレーザ溶接部4(溶接ビード4b)をレーザ溶接により形成すればよい。
また、順序として、レーザ溶接部4(溶接ビード4b)を作製した後、板厚貫通開口部9を設ける場合には、鋼板1表面に形成された溶接ビード4bの両端に、レーザによる穴開け加工等により板厚貫通開口部9を設ければよい。
板厚貫通開口部9を設ける手段に関しては、これをプレス打抜き加工やレーザによる穴開け加工に限定するものではなく、機械的に直接接触し切削するドリルやフライスによる穴開け加工のほか、高圧の水を用いたウォータージェットによる加工、高圧の水とレーザを用いた水ジェット誘導レーザによる穴開け加工等が挙げられる。
レーザ溶接により溶接ビード4bを作製する際の加工点の出力および溶接速度に関しては、2枚の薄鋼板1、2間を接続する溶接ビード4b(レーザ溶接部4)を形成するのに必要な大きさであればよい。
また、板厚貫通開口部9の形状や切断面の表面粗さについては、特にこれを制約するものではないが、先に板厚貫通開口部9を作製し、その後に溶接する場合には、溶接時に板厚貫通開口部9が塞がれるのを避けるため、溶接ビード4bの溶接幅Wbを直径とする円以上の領域を有する板厚貫通開口部9を設けることが好ましい。板厚貫通開口部9の上限に関しては特に制約するものではないが、部材そのものを大きく減少させるような貫通孔は実用的ではなく、また、構造物を作製する場合においては構造物の強度が低下するため好ましくない。
また、図11に示すように、隣接領域Aおよび隣接領域Aを決定するのに必要な溶接ビード4bの始端部及び終端部(図11における符号i1と符号i2)と溶接幅Wbは、鋼板1及び2の重ね合わせ面における溶接ビード4bの形状が元となるが、一般に、これを外観から精度良く知ることは困難である。
しかしながら、レーザで鋼板1,2の重ね溶接をする場合、溶接する際の上側の鋼板1の表面あるいは下側の鋼板2の裏面における溶接幅は、鋼板1、2間の溶接幅より大きくなる傾向が見られる。また、上側の鋼板1の表面あるいは下側の鋼板2の裏面に形成される溶接ビードの始端部及び終端部も、鋼板1、2間に形成される始端部および終端部よりも外側に広がる傾向となる。
そこで、板厚貫通開口部9を設けることによって応力集中を確実に緩和するには、図11(A)に示すように、上側の鋼板1の表面に形成された溶接ビードの始端部i3から終端部i4までの長さと、下側の鋼板2の溶接のビードの始端部i5から終端部i6までの長さを比較し、各溶接ビードのうち長さが短い方の溶接ビードの始端部i5および終端部i6の位置を、厳密な始端部位置i1と終端部位置i2の代替とすればよい。なお、図11の矢印12は、溶接方向を示している。
また、溶接幅Wbについては、図12に示すように、上側の鋼板1の表面の溶接幅(Wb-upper)と下側の鋼板2の溶接幅(Wb-lower)のうち、幅が広い方で代替し、隣接領域Aを決定すれば良い。
上記のように決めた場合、始端部と終端部の位置ずれを最小に抑えることができるが、溶接幅Wbと隣接領域Aについては誤差が生じるため、板厚貫通開口部9については、より好ましくは、溶接ビード4bと直角方向に、上記のようにして決めた溶接幅以上の長さ(0.8Wb)で、板厚貫通開口部9を設けるのが望ましい。
本発明者らは、まず、種々の板厚の鋼板の部材幅(Ws)のすべて、または、その一部(Lb)を種々の溶接幅(Wb)でレーザ溶接を行い、レーザ溶接部4の溶接幅(Wb)、溶接長さ(Lb)等の溶接条件と得られた溶接継手に図9に示す矢印5の方向に引張荷重が働いた場合の接合継手強度及び破断形態の関係を詳細に調べた。
その結果、引張強さが440MPa級以上で、被溶接部材の幅(Ws)に対するレーザ溶接部4の溶接長さ(Lb)の比率(Lb/Ws)が0.6以上であって、レーザ溶接部4の溶接幅(Wb)の板厚(t)に対する比率(Wb/t)が0.8以上、2以下である高強度薄鋼板の重ね溶接継手に、図13〜図18に示すような、隣接領域A内において、溶接ビード4bと直角方向に溶接ビード4bを中心に溶接幅(Wb)の8割を占める領域を含み、その領域以上の大きさの板厚貫通開口部9を設けた場合には、溶接金属4aでのせん断破断を防止し、プラグ破断Pにできることがわかった。
ここで、図13〜図18について詳細に説明する。
図13に示す板厚貫通開口部9は、平面視略長方形であり、この長方形を構成する長辺が、溶接ビード4bの長手方向と直交する方向に沿って延在しており、更に板厚貫通開口部9の4つの角部が平面視曲線になっている。板厚貫通開口部9を区画する一方の長辺は、隣接領域Aを区画する他辺A2のうち溶接ビード4bのR止まり(R−end)側の辺A2に隣接している。また、図13に示す板厚貫通開口部9は、溶接ビード4bの長手方向と直交する方向に沿う長さが、溶接ビード4bの溶接幅Wbの1.5倍の長さ(1.5Wb)となっている。
次に、図14に示す板厚貫通開口部9は、平面視略長方形であり、この長方形を構成する長辺が、溶接ビード4bの長手方向と直交する方向に沿って延在している。この板厚貫通開口部9を区画する一方の長辺は、隣接領域Aを構成する他辺A2のうち溶接ビード4bのR止まり(R−end)に接する辺とは反対側の辺A2に隣接している。また、図14に示す板厚貫通開口部9は、溶接ビード4bの長手方向と直交する方向に沿う長さが、溶接ビード4bの溶接幅Wbと同じ長さ(Wb)となっている。
次に、図15に示す板厚貫通開口部9は、平面視略円形であり、隣接領域Aのほぼ中央に配置されている。また、図15に示す板厚貫通開口部9は、溶接ビード4bの長手方向と直交する方向に沿う長さが、溶接ビード4bの溶接幅Wbと同じ長さ(Wb)になっている。図15に示す板厚貫通開口部9は平面視略円形であるから、溶接ビード4bの長手方向と直交する方向に沿う長さが、板厚貫通開口部9の直径に相当するものとなる。
次に、図16に示す板厚貫通開口部9は、平面視略円形であり、隣接領域Aのほぼ中央に配置されている。また、図16に示す板厚貫通開口部9は、溶接ビード4bの長手方向と直交する方向に沿う長さが、溶接ビード4bの溶接幅Wbの0.8倍の長さ(0.8Wb)となっている。図16に示す板厚貫通開口部9は平面視略円形であるから、図15と同様に、溶接ビード4bの長手方向と直交する方向に沿う長さが、板厚貫通開口部9の直径に相当する。
次に、図17に示す板厚貫通開口部9は、平面視略長方形であり、長方形を構成する長辺が溶接ビード4bの長手方向に対して傾斜している。また、この板厚貫通開口部9は、隣接領域Aのほぼ中央に配置されている。また、図17に示す板厚貫通開口部9は、溶接ビード4bの長手方向と直交する方向に沿う長さが、溶接ビード4bの溶接幅Wbの1.3倍の長さ(1.3Wb)となっている。
次に、図18に示す板厚貫通開口部9は、平面視略長方形であり、長方形を構成する長辺が溶接ビード4bの長手方向に対して傾斜している。また、この板厚貫通開口部9は、隣接領域Aの中央よりもR止まり寄り(R−end)に配置されている。また、図18に示す板厚貫通開口部9は、溶接ビード4bの長手方向と直交する方向に沿う長さが、溶接ビード4bの溶接幅Wbと同じ長さ(Wb)となっている。
このように、本発明に係る板厚貫通部9は、少なくとも一部が隣接領域A内に配置され、かつ開口長さがレーザ溶接部4を中心に溶接幅Wbの8割(0.8Wb)以上の長さを有するものであればよい。また、図13、14、15、17、18に示すように、板厚貫通部9の一部が隣接領域Aからはみ出ていてもよい。
図19に示すように、溶接幅Wbの板厚Tに対する比率(Wb/t))を横軸にとり、板厚貫通開口部9を作製しない従来技術の溶接継手と本実施形態の溶接継手とを比べると、溶接長Lbを一定としたときには、同じ継手強度を得るのに、従来の溶接ビードより細いビードで実現でき、また、入熱量および熱変形を低く抑えられることが判明した。
しかし、被溶接部材(鋼板1、2)の幅(Ws)に対するレーザ溶接部4の長さ(Lb)の比率(Lb/Ws)が0.6未満の場合で、かつ、継手の引張試験の結果が溶接金属でのせん断破断時となる場合に、板厚貫通開口部9を請求項に記載の条件を満たすように形成させても、プラグ破断には移行しなかった。
また、被溶接部材(鋼板1、2)の幅(Ws)に対するレーザ溶接部4の溶接長さ(Lb)の比率(Lb/Ws)が0.6以上であり、かつ、レーザ溶接部4の溶接幅(Wb)の板厚(t)に対する比率(Wb/t)が0.8以上、2以下であるが、板厚貫通開口部9を請求項に記載の条件を満たさずに作製した場合も、プラグ破断に移行しなかった。
(Wb/t)の値の下限を0.8とし、上限を2に限定した理由は、被溶接部材(鋼板1、2)の幅(Ws)に対するレーザ溶接部の長さ(Lb)の比率(Lb/Ws)が0.6以上であっても、(Wb/t)の値が0.8を下回るとプラグ破断にはならず、重ね合わせ面からせん断破断してしまうからであり、また、(Wb/t)の上限である2を上回ると、入熱が大き過ぎ、溶接変形が大きくなるからである。
また、鋼板1,2の引張強さを440MPa級以上に限定した理由は、440MPa級を下回る場合、被溶接部材(鋼板1,2)の幅(Ws)に対するレーザ溶接部4の溶接長さ(Lb)の比率(Lb/Ws)を種々変えて作製した継手の継手強度が、溶接長Lbに比例した強度から極端に低下することがなかったためである。これは、440MPa級を下回る鋼板では、伸びが大きいため、溶接ビード4bの始端部及び終端部に応力集中が生じるようなことが起こっても、そこに局所的な伸びが生じるため、溶接ビード4bに対し均一に荷重が負担されるようになり、結果として、溶接ビード4bの始端部及び終端部における応力集中が緩和されるためである。
更に、鋼板1,2の引張強さの上限を設定しなかった理由は、引張強さが高い場合でも、板厚(t)を薄くし、被溶接部材の幅(Ws)に対するレーザ溶接部4の溶接長さ(Lb)の比率(Lb/Ws)が0.6以上、かつ、レーザ溶接部4の溶接幅(Wb)の板厚(t)に対する比率(Wb/t)が0.8以上、2以下であれば、継手強度が溶接長に比例した強度から極端に低下してしまうためである。
板厚貫通開口部9を、隣接領域A内において、レーザ溶接部4(溶接ビード4b)と直角方向にレーザ溶接部4(溶接ビード4b)を中心に溶接幅(Wb)の8割の長さ(0.8Wb)を占める領域を含み、その領域以上の大きさとする理由、および、隣接領域AをR止まり(R−end)までとする理由は、継手の引張時において、応力集中が生じる箇所が、図8に示すレーザ溶接部4(溶接ビード4b)の始端部および終端部のR止まり(R−end)であり、上記に記載の位置に板厚貫通開口部9を設けることで、R止まり(R−end)への、溶接金属をせん断破断させる向きの応力集中を緩和できるからである。R止まり(R−end)に応力が集中する理由は、引張試験時の重ね継ぎ手を途中で除荷し、き裂の起点および発生状況の観察結果から、回転変形と同時に生じる面外変形の際に、溶接ビード4bの始端部および終端部を中心に変形が進むためであると考えられる。また、板厚貫通開口部9を設けることで応力集中を緩和できる理由は、回転変形と同時に進む面外変形の際に、溶接ビード4bの始終端が周りの板と分離しているため、変形時の力が伝わらないためであることが分かった。
また、隣接領域Aの一辺A1を、レーザ溶接部4(溶接ビード4b)方向に、レーザ溶接部4(溶接ビード4b)のR止まり(R−end)からビードの最端部4c+板厚(t)までとする理由は、溶接ビード4bの最端部4c+板厚tを超える外側の位置に貫通開口部9を設けると、溶接ビード4bの最端部4cと貫通開口部9との距離が大きくなり、回転変形と同時に進む面外変形の際に、力が溶接ビード4bの始終端に伝わってしまい、応力集中の緩和効果が見られないためである。
以上説明したように、本実施形態のレーザ重ね溶接継手によれば、図13〜図18に示すように、溶接ビード4bの両端に板厚貫通開口部9を有しているため、面外変形に伴い生じる、溶接ビード4bの始端部および終端部への応力集中を緩和することができる。
その結果、小入熱の細いビードでも図3に示すような鋼板界面の溶接金属でのせん断破断Sを防止し、図4に示すように、板厚方向にき裂が進行する熱影響部での破断に移行させることができ、継手強度が、溶接長に比例した強度から極端に低下することのない、また、板幅方向に均一でない荷重がかかった場合でも、継手強度の安定した重ね継手が実現できる。このような本発明によれば、自動車工業や電気機器工業その他の分野において多用される、薄鋼板成形加工部材のレーザ溶接継手の品質向上、および、レーザ溶接継手の適用範囲拡大をもたらす等、その産業上の効果は計り知れないものになる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態の高強度薄鋼板のレーザ重ね溶接継手は、レーザ溶接部が複数の溶接ビードから構成され、各溶接ビードの両端の一部または全部に板厚貫通開口部が設けられたものである。なお、本実施形態の構成要素のうち、第1の実施形態で説明した構成要素と同一の構成要素については、説明を省略する。
即ち、本実施形態のレーザ重ね溶接継手の一例は、図20に示すように、レーザ溶接部14が、被溶接部材(鋼板1,2)の幅方向に沿って間欠的に形成された複数の溶接ビード14bから構成されており、複数の溶接ビード14bの各始端部及び各終端部の一部に隣接領域が設けられ、各隣接領域に板厚貫通開口部9が設けられて構成されている。図20に示す例では、複数の溶接ビード14bからなるレーザ溶接部14の両端14A、14Bには必ず板厚貫通開口部9が設けられている。
また、本実施形態のレーザ重ね溶接継手の別の例では、図21に示すように、レーザ溶接部14が、被溶接部材(鋼板1,2)の幅方向に沿って間欠的に形成された複数の溶接ビード14bから構成されており、複数の溶接ビード14bの各始端部及び各終端部の全部に隣接領域が設けられ、各隣接領域に板厚貫通開口部9が設けられている。
図20及び図21に示す鋼板1、2は、第1の実施形態と同様に、引張り強さが440MPa以上の高強度薄鋼板である。
また、図20及び図21においては、各溶接ビード14bのビード長さの合計(Lb1+Lb2)が溶接長さ(Lb)とされており、被溶接部材(鋼板1、2)の幅(Ws)に対する溶接長さ(Lb)の比率(Lb/Ws)が0.6以上とされており、溶接幅(Wb)の板厚(t)に対する比率(Wb/t)が0.8以上2以下とされている。これら数値範囲の限定理由は、第1の実施形態の場合と同様である。
また、始端部及び終端部に設ける隣接領域は、第1の実施形態と同様に、一辺とこの一辺に直交する他辺とによって囲まれた平面視長方形の領域であって、前記一辺は、溶接ビード14bの長手方向に沿って、溶接ビード14bのR止まりから溶接ビード14bの最端部よりも板厚(t)分だけはみ出た位置に至るまで延在するものであり、前記他辺は、溶接ビード14bの長手方向と直交する方向に沿って、溶接ビード14bを中心に前記溶接幅の8割の長さとするものである。
更に、第1の実施形態と同様に、板厚貫通開口部9は、重ね合わせた鋼板1,2を貫通する貫通孔であり、溶接ビード14bの長手方向と直交する方向に沿う開口長さが溶接ビード14bを中心に溶接幅の8割以上の長さを有するものであればよく、具体的には図13〜図18に示したものでよい。
隣り合う溶接ビード14bの間においても、鋼板1、2を引張った際に、こぶのような凸形の面外変形が生じるため、図20および図21に示すように、各溶接ビード14bの両端に存在するそれぞれの隣接領域に対し、必要に応じて、数個およびすべての箇所に板厚貫通部9を設けることが望ましい。
各溶接ビード14bの始端部及び終端部の一部または全部に板厚貫通開口部9を設けることで、鋼板1,2を引っ張った際の面外変形に伴い生じる応力が各溶接ビード14bの始端部及び終端部に集中するおそれがなく、鋼板界面の溶接金属でのせん断破断Sを防止し、板厚方向にき裂が進行する熱影響部での破断に移行させることができる。これにより、継手強度が、溶接長に比例した強度から極端に低下することのない、また、板幅方向に均一でない荷重がかかった場合でも、継手強度の安定した重ね継手が実現できる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態の高強度薄鋼板のレーザ重ね溶接継手は、レーザ溶接部24が複数の溶接ビード24bからなる。また、複数の溶接ビード24bのうち、レーザ溶接部24の始端部及び終端部に相当する位置にのみ隣接領域が設けられ、各隣接領域に板厚貫通開口部9が設けられている。なお、本実施形態の構成要素のうち、第1の実施形態で説明した構成要素と同一の構成要素については、説明を省略する。
即ち、本実施形態のレーザ重ね溶接継手の一例は、図22に示すように、レーザ溶接部24が、被溶接部材(鋼板1,2)の幅方向に沿って間欠的に形成された複数の溶接ビード24bから構成されており、複数の溶接ビード24bのうち、レーザ溶接部24の始端部24A及び終端部24Bに対応する位置に隣接領域が設けられ、各隣接領域に板厚貫通開口部9が設けられて構成されている。
図22に示す鋼板1、2は、第1の実施形態と同様に、引張り強さが440MPa以上の高強度薄鋼板である。
また、図22においては、各溶接ビード24bのビード長さの合計(Lb1+Lb2)が溶接長さ(Lb)とされており、被溶接部材(鋼板1、2)の幅(Ws)に対する溶接長さ(Lb)の比率(Lb/Ws)が0.6以上とされており、溶接幅(Wb)の板厚(t)に対する比率(Wb/t)が0.8以上2以下とされている。これら数値範囲の限定理由は、第1の実施形態の場合と同様である。
また、隣接領域は、第1の実施形態と同様に、一辺とこの一辺に直交する他辺とによって囲まれた平面視長方形の領域であって、前記一辺は、溶接ビード24bの長手方向に沿って、溶接ビード24bのR止まりから溶接ビード24bの最端部よりも板厚(t)分だけはみ出た位置に至るまで延在するものであり、前記他辺は、溶接ビード24bの長手方向と直交する方向に沿って、溶接ビード24bを中心に前記溶接幅の8割の長さとするものである。
更に、第1の実施形態と同様に、板厚貫通開口部9は、重ね合わせた鋼板1,2を貫通する貫通孔であり、溶接ビード24bの長手方向と直交する方向に沿う開口長さが溶接ビード24bを中心に溶接幅の8割以上の長さを有するものであればよく、具体的には図13〜図18に示したものでよい。
レーザ溶接部24の始端部24A及び終端部24Bに対応する位置に板厚貫通開口部9を設けることで、鋼板1,2を引っ張った際の面外変形に伴い生じる応力が各溶接ビード24bの始端部及び終端部に集中するおそれがなく、鋼板界面の溶接金属でのせん断破断Sを防止し、板厚方向にき裂が進行する熱影響部での破断に移行させることができる。これにより、継手強度が、溶接長に比例した強度から極端に低下することのない、また、板幅方向に均一でない荷重がかかった場合でも、継手強度の安定した重ね継手が実現できる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
引張強さが590MPaで、板厚が0.8mm、1.2mm、2.0mmの3種類の合金化溶融亜鉛めっき鋼板を用意し、これらをそれぞれ重ね合わせてレーザ溶接を行い、図9に示すような重ね継手を製造した。図9中、符号1および符号2は引張強さが590MPaの合金化溶融亜鉛めっき鋼板であり、符号3は重ね合わせ部であり、符号4はレーザ溶接部である。試験片幅Wsは60mmとし、試験片長さは185mmとした。
溶接順序は、先に板厚貫通開口部9(貫通孔)を設けた後に溶接ビード4bを形成する工程(切断先)と、先に溶接ビード4bを形成した後に貫通孔9を設ける工程(溶接先)の2種類とした。図23に示すように、直径1mmから5mmまでの異なる大きさの貫通孔9を設けた。貫通孔9は、試験片の全幅に対し、溶接ビードの長さLbが、貫通孔9の大きさにかかわらず一定に保たれるように貫通孔の中心位置を調整した。
また、レーザ溶接の際には、鋼板2枚を重ね代60mmで重ね合わせ、2枚の板間には合金化溶融亜鉛めっき鋼板の溶接時に発生する亜鉛蒸気を逃がすため、板厚0.1mmの鋼板をレーザ溶接部と重ならないよう挿入した。
レーザ溶接はYAGレーザを使用し、加工点出力4kW、焦点はずし距離0mm、ビームウエスト0.6mm、また、溶接速度を変えて鋼板1および鋼板2の間の溶接幅を調整した。この時、溶接幅Wbと板厚tの比(Wb/t)は、0.6〜1.4であり、溶接長Lbと試験片幅Wsの比(Lb/Ws)は0.6〜0.8であった。シールドガスに関しては、ノズル径φ5mmのノズルより、流量20L/minのArガスを同軸センターシールド(裏面シールドなし)で供給した。
レーザ溶接部4の強度健全性を確かめるため、被溶接部材(鋼板1、2)に引張速度10mm/min、チャック間距離240mmで、重ね合わせ面に平行なせん断方向に荷重を付加し、引張試験を行い、溶接継手の破断形態を調べた。その結果を表1に示す。
表1に示すように、溶接長Lbが36mmで、溶接ビードの始端部及び終端部に貫通孔を設けなかった場合は、溶接金属でのせん断破断が発生し、継手強度のばらつきが生じ、溶接長Lbに相当するだけの強度が得られない場合もあった。一方、本発明例による継手は、いずれの貫通孔の径においても、常に溶接熱影響部での破断が生じ、溶接長Lbに相当するだけの継手強度が得られた。
また、溶接長Lbが48mmの場合には、本発明による継手の強度は、貫通孔を設けなかった比較例の継手の強度をすべて上回っており、継手強度が極端に低くなるような場合もなく、常に熱影響部での破断を生じた。
本発明例の重ね継手の構造は、溶接ビードの両端に貫通孔を設けることにより応力集中の緩和を可能にしているので、溶接ビードと貫通孔の作製順序を逆にした場合、すなわち、溶接した後に貫通穴を開けた場合にも実施例と同様の効果が得られることがわかった。
Figure 0005267317
次に、上記と同様の鋼板と溶接条件により、図9に示すような溶接ビード4bを作製した後、貫通孔9を設ける順序で引張試験片を作製した。
貫通孔9を開ける際、図24に示すように、溶接ビード4bの最端部4cから板厚分だけずれた位置を原点Oとし、溶接ビード4bの長手方向にX軸をとって、直径d=1mmの貫通孔9の中心Mを種々の位置にとった。図24は、溶接ビード4bと貫通孔9の相対的な位置関係を示す図である。図24(A)は貫通孔9の中心Mが原点Oよりも溶接ビード4b寄りにdmmに位置するもの(−dmmと表示する)、図24(B)は貫通孔9の中心Mが原点Oにあるもの(0mmと表示する)、図24(C)は貫通孔9の中心Mが原点Oよりも溶接ビード4bから離れる方向にd/2mmずれた位置するもの(d/2mmと表示する)である。
このような溶接継手について引張試験を行い、溶接継手の破断形態を調べた結果を表2に示す。
Figure 0005267317
表2より、溶接長Lbが36mm、48mmの場合とも、貫通孔9の中心Mが−dmm、−d/2mm、0mmの位置にあり、本発明の範囲内の位置に貫通孔9が存在する場合には、いずれも常に溶接熱影響部での破断が生じ、溶接長に相当するだけの継手強度が得られた。
しかし、貫通孔9の中心Mがd/2mmの位置にある場合には、溶接幅Wbと板厚tの比(Wb/t)が、0.9〜1.4であり、溶接長Lbと試験片幅Wsの比(Lb/Ws)が0.6〜0.8であっても、貫通孔9の位置が本発明の範囲にないため、溶接金属でのせん断破断が発生し、溶接長に相当するだけの強度が得られなかった。
さらに、表3には、図22に示すように、2本の溶接ビードからなるレーザ溶接部を備えた試験片について、レーザ溶接部の始端部及び終端部に対応する位置にのみ貫通孔を有する場合(表3:両端のみ貫通孔)と、各溶接ビードの両端すべてに貫通孔を有する場合(表3:全部貫通孔)と、貫通孔を全く設けない場合(貫通孔なし)について、引張試験を行った結果を示す。
Figure 0005267317
表3に示すように、本発明の範囲内であり、レーザ溶接部の始端部及び終端部に対応する位置にのみ貫通孔を有する場合と、各溶接ビードの両端すべてに貫通孔を有する場合とでは、常に溶接熱影響部での破断が生じ、溶接長に相当するだけの継手強度が得られた。
一方、貫通孔を全く有しない比較例では、いずれも常に金属内での破断が生じ、溶接長に相当するだけの継手強度が得られなかった。
さらに、引張強さが590MPaおよび980MPaの合金化溶融亜鉛めっき鋼板で、試験片幅Wsが500mm、試験片長さが1520mmの大きな試験片を用意し、鋼板2枚を重ね代30mmで重ね合わせ、溶接ビードの本数が5本以上からなるレーザ溶接部を備えた重ね継手を作製した。この時、溶融幅Wbと板厚tの比(Wb/t)は、0.8〜1.4、総溶接長ΣLbと試験片幅Wsの比(ΣLb/Ws)は0.6〜0.8とした。
表4に、各溶接ビードの両端全てに図21と同様の形態の貫通穴を設けた場合(表4:全部貫通穴)と、貫通穴を全く設けない場合(表4:穴なし)について引張試験を行った結果を示す。なお、表4において、各ビード長(Lb1、Lb2、…)は、溶接ビード1本当たりの溶接長であり、総溶接長ΣLbは各ビード長の合計長さ(Lb1+Lb2+…)である。
Figure 0005267317
表4に示すように、本発明の範囲内であり、各溶接ビードの両端すべてに貫通穴を有する場合は、常に溶接熱影響部での破断が生じたのに対し、貫通穴を全く有しない比較例では、常に金属内での破断が生じ、溶接熱影響部での破断に比べ継手強度は低下した。
1、2…鋼板(高強度薄鋼板(被溶接部材))、3…重ね合わせ部、4、14、24…レーザ溶接部、4a…溶接金属、4b、14b、24b…溶接ビード、9…板厚貫通開口部、A…隣接領域、A1…一辺、A2他辺、Lb…溶接長、Lb1、Lb2…溶接ビードの溶接長、R-end…始端部または終端部におけるR止まり、t…板厚、Wb…溶接幅、Ws…被溶接部材の幅。

Claims (6)

  1. 引張強さが440MPa級以上の高強度薄鋼板を被溶接部材の幅方向に沿ってレーザ溶接してなるレーザ重ね溶接継手であって、
    前記被溶接部材の幅(Ws)に対するレーザ溶接部の溶接長さ(Lb)の比率(Lb/Ws)が0.6以上であり、
    前記レーザ溶接部の溶接幅(Wb)の板厚(t)に対する比率(Wb/t)が0.8以上2以下であり、
    前記レーザ溶接部の始端部の隣接領域および終端部の隣接領域の両方に、前記レーザ溶接部の長手方向と直交する方向に沿う開口長さが前記レーザ溶接部を中心に溶接幅の8割以上の長さを有する板厚貫通開口部が設けられていることを特徴とする高強度薄鋼板のレーザ重ね溶接継手。
    ただし、前記溶接幅(Wb)は、高強度薄鋼板の重ね合わせ面における溶接幅であり、前記隣接領域は、一辺とこの一辺に直交する他辺とによって囲まれた平面視長方形の領域であって、前記一辺は、前記レーザ溶接部の長手方向に沿って、前記レーザ溶接部のR止まりから前記レーザ溶接部の最端部よりも板厚(t)分だけはみ出た位置に至るまで延在するものであり、前記他辺は、前記レーザ溶接部の長手方向と直交する方向に沿って、前記レーザ溶接部を中心に前記溶接幅の8割の長さとするものである。
  2. 前記レーザ溶接部が、連続した一つの溶接ビードから構成され、前記溶接ビードの始端部及び終端部にそれぞれ前記隣接領域が設けられるとともに、前記の各隣接領域に前記板厚貫通開口部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の高強度薄鋼板のレーザ重ね溶接継手。
    ただし、前記隣接領域は、一辺とこの一辺に直交する他辺とによって囲まれた平面視長方形の領域であって、前記一辺は、前記溶接ビードの長手方向に沿って、前記溶接ビードのR止まりから前記溶接ビードの最端部よりも板厚(t)分だけはみ出た位置に至るまで延在するものであり、前記他辺は、前記溶接ビードの長手方向と直交する方向に沿って、前記溶接ビードを中心に前記溶接幅の8割の長さとするものである。
  3. 前記レーザ溶接部が、前記被溶接部材の幅方向に沿って間欠的に形成された複数の溶接ビードから構成され、各溶接ビードのビード長さの合計が前記溶接長さ(Lb)とされ、前記複数の溶接ビードの各始端部及び各終端部の一部または全部に前記隣接領域が設けられるとともに、前記の各隣接領域に前記板厚貫通開口部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の高強度薄鋼板のレーザ重ね溶接継手。
    ただし、前記隣接領域は、一辺とこの一辺に直交する他辺とによって囲まれた平面視長方形の領域であって、前記一辺は、前記の各溶接ビードの長手方向に沿って、前記の各溶接ビードのR止まりから前記の各溶接ビードの最端部よりも板厚(t)分だけはみ出た位置に至るまで延在するものであり、前記他辺は、前記の各溶接ビードの長手方向と直交する方向に沿って、前記の各溶接ビードを中心に前記溶接幅の8割の長さとするものである。
  4. 前記レーザ溶接部が、前記被溶接部材の幅方向に沿って間欠的に形成された複数の溶接ビードから構成され、各溶接ビードのビード長さの合計が前記溶接長さ(Lb)とされ、前記複数の溶接ビードのうち、前記レーザ溶接部の前記始端部及び前記終端部に相当する位置に前記隣接領域が設けられるとともに、前記の各隣接領域に前記板厚貫通開口部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の高強度薄鋼板のレーザ重ね溶接継手。
    ただし、前記隣接領域は、一辺とこの一辺に直交する他辺とによって囲まれた平面視長方形の領域であって、前記一辺は、前記の各溶接ビードの長手方向に沿って、前記の各溶接ビードのR止まりから前記の各溶接ビードの最端部よりも板厚(t)分だけはみ出た位置に至るまで延在するものであり、前記他辺は、前記の各溶接ビードの長手方向と直交する方向に沿って、前記の各溶接ビードを中心に前記溶接幅の8割の長さとするものである。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の高強度薄鋼板の被溶接部材の幅方向に沿ってレーザ重ね溶接継手を製造する方法であって、
    レーザ溶接部の形成に先立ち、前記隣接領域に相当する位置に、前記レーザ溶接部の長手方向と直交する方向に沿う開口長さが前記レーザ溶接部を中心に溶接幅の8割以上の長さを有する板厚貫通開口部を設ける工程と、
    前記被溶接部材の幅(Ws)に対するレーザ溶接部の溶接長さ(Lb)の比率(Lb/Ws)が0.6以上、かつレーザ溶接部の溶接幅(Wb)の板厚(t)に対する比率(Wb/t)が0.8以上2以下となるように、前記レーザ溶接部を形成する工程と、を具備してなることを特徴とする高強度薄鋼板のレーザ重ね溶接継手の製造方法。
    ただし、前記溶接幅(Wb)は、高強度薄鋼板の重ね合わせ面における溶接幅であり、前記隣接領域は、一辺とこの一辺に直交する他辺とによって囲まれた長方形の領域であって、前記一辺は、前記レーザ溶接部の長手方向に沿って、前記レーザ溶接部のR止まりから前記レーザ溶接部の最端部よりも板厚(t)分だけはみ出た位置に至るまで延在するものであり、前記他辺は、前記レーザ溶接部の長手方向と直交する方向に沿って、前記レーザ溶接部を中心に前記溶接幅の8割の長さとするものである。
  6. 請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の高強度薄鋼板の被溶接部材の幅方向に沿ってレーザ重ね溶接継手を製造する方法であって、
    前記被溶接部材の幅(Ws)に対するレーザ溶接部の溶接長さ(Lb)の比率(Lb/Ws)が0.6以上、かつレーザ溶接部の溶接幅(Wb)の板厚(t)に対する比率(Wb/t)が0.8以上2以下となるように、前記レーザ溶接部を形成する工程と、
    前記レーザ溶接部の始端部の隣接領域および終端部の隣接領域の両方に、前記レーザ溶接部の長手方向と直交する方向に沿う開口長さが前記レーザ溶接部を中心に溶接幅の8割以上の長さを有する板厚貫通開口部を設ける工程と、を具備してなることを特徴とする高強度薄鋼板のレーザ重ね溶接継手の製造方法。
    ただし、前記溶接幅(Wb)は、高強度薄鋼板の重ね合わせ面における溶接幅であり、前記隣接領域は、一辺とこの一辺に直交する他辺とによって囲まれた長方形の領域であって、前記一辺は、前記レーザ溶接部の長手方向に沿って、前記レーザ溶接部のR止まりから前記レーザ溶接部の最端部よりも板厚(t)分だけはみ出た位置に至るまで延在するものであり、前記他辺は、前記レーザ溶接部の長手方向と直交する方向に沿って、前記レーザ溶接部を中心に前記溶接幅の8割の長さとするものである。
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