JP5255919B2 - コラーゲン産生促進剤 - Google Patents

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本発明はコラーゲンの産生を促進するコラーゲン産生促進剤、及び皮膚のはり・弾力の低下によるしわ・たるみといった皮膚の老化現象の防止や、肌荒れや紫外線による皮膚の炎症などを予防・改善する創傷治癒促進に特に有用な皮膚外用剤に関する。
コラーゲンは、我々の体全体あるいは臓器の支持、補強、結合など、体の構造の維持に重要な役割を果たしている。そして、体の全タンパク量の約1/3はコラーゲンとも言われており、特に皮膚、骨、軟骨、腱、血管壁などに大量に存在している。全コラーゲンの約40%が皮膚に、10〜20%が骨・軟骨に、7〜8%が血管に存在しているとのことである。
そして、さらに細胞レベルでは、コラーゲンは細胞間に存在し、細胞の保護や細胞の接着など重要な生理的役割も果たしている。また、組織が傷害された際などは、真皮繊維芽細胞におけるコラーゲン等の繊維成分の産生は、炎症や創傷の治癒過程においても重要な役割を担うことが報告されている。
しかし、このように生体において重要な役割を持つコラーゲンであるが、紫外線やストレス、さらには加齢による新陳代謝の衰えなどによって減少し、様々な障害を引き起こすことが報告されている。特に、皮膚ではその乾燥重量の70%をコラーゲンがしめており、コラーゲンの減少にともない、はり・弾力の低下が著しく、ひいては、しわやたるみといった肌の加齢変化を生じさせるものである。
そのようななか、近年コラーゲン産生促進作用を有することで知られているビタミンA(レチノイド)が皮膚の加齢変化を予防・改善する薬物として注目され、ビタミンAの一種であるレチノイン酸やレチノールが皮膚外用剤として用いられるようになった。しかしレチノイン酸は肌へ塗布した際、炎症や角質剥離、刺激感など非常に副作用が強いため、現在は医師による指導がない限り一般には使用できない状態である。もう一方のレチノールにおいても、レチノイン酸ほどではないが副作用があることが知られている。加えて、レチノイン酸やレチノールは熱や酸素により不安定化しやすい物質である。
また近年においては、ビタミンA以外で顕著なコラーゲン産生促進効果を有する物質が強く望まれている。そこで、本発明においては、コラーゲン産生を促進し、コラーゲンの減少にともなう、はり・弾力の低下、ひいては、しわやたるみといった肌の加齢変化を予防・改善し、加えて炎症や創傷の治癒過程にも有効な新規有用物質を含む皮膚外用剤を提供することを目的とする。
なお本発明は新規の有効成分に係るものであるため、関連する先行技術文献情報として特記すべきものはない。
前記目的を達成するために、本発明者らは、安全性に優れた物質の中から、コラーゲン産生促進効果を発現させる物質を得るべく鋭意研究を重ねた結果、従来は細胞賦活剤や防腐剤としてのみ知られたツヤプリシンが顕著なコラーゲンの産生促進効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明はツヤプリシンを有効成分として含有するコラーゲン産生促進剤を提供するものである。以下、本発明の構成について詳述する。
本発明に用いられるツヤプリシンとはトロポロン化合物で、天然には青森ヒバや台湾ヒノキの精油から抽出される成分である。ツヤプリシンには、α−ツヤプリシン、β−ツヤプリシン、γ−ツヤプリシンなどの異性体が知られている。特に、β−ツヤプリシンはヒノキチオールとも呼ばれ、天然、合成に関わらず、通常、医薬品、化粧品等の分野で殺菌剤、細胞賦活剤等として幅広く利用されている化合物である。ツヤプリシン、もしくはその誘導体がとりわけ好ましい。
本発明のコラーゲン産生促進剤を皮膚外用剤に配合する際の配合量は、皮膚外用剤の用途に応じて調整することができるが、安定性、安全性などの点からは、限定しないが0.00001重量%〜2.0重量%が好ましく、さらには0.0001重量%〜0.5重量%がより好ましい。
本発明のコラーゲン産生促進剤を配合する皮膚外用剤には、前記の必須成分に加えて、必要に応じ、本発明の効果を損なわない範囲内で化粧料、医薬部外品、医薬品等に一般に用いられる各種成分、水性成分、保湿剤、増粘剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、防腐剤、酸化防止剤、香料、色剤、薬剤、生薬等を配合できる。また、本発明のコラーゲン産生促進剤を配合する皮膚外用剤の剤型は任意であり、例えば化粧水等の可溶化系、乳液、クリーム等の乳化系、あるいは軟膏、粉末分散系、水−油二層系、水−油−粉三層系等のような剤型でもかまわない。
本発明の実施例を以下にあげて説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
3次元培養ヒト皮膚モデルを用いたツヤプリシン含有外用剤のコラーゲン産生促進効果の評価
(1)試験例1
[試験品]
ヒノキチオール水溶液(ヒノキチオール 純度98(W/W)%以上):60.9μmol/L
陽性対照 ビタミンAパルミテート水溶液(ビタミンAとして170万単位/g):1700IU/g
陰性対象 無添加
上記の試験品をそれぞれ3次元培養ヒト皮膚モデルに添加処理した。陽性対照のビタミンAパルミテートの濃度は、通常医薬部外品の薬剤として用いられている濃度のなかでも比較的高い濃度のものを用いた。
[3次元培養ヒト皮膚モデル]
3次元培養ヒト皮膚モデルは、ヒトの皮膚モデルとして、安全性評価や有用性評価に広く用いられている。3次元培養ヒト皮膚モデルは、TESTSKIN LSE−d(東洋紡績)を用いた。
[コラーゲン産生促進効果の評価]
24時間、48時間培養後の培地中のコラーゲンを、市販のコラーゲン定量用キット(ACBio社製ヒトコラーゲン タイプ1 ELISA)を用いて酵素免疫測定法(ELISA法)により定量した。
Figure 0005255919

表1に示したように、本発明のツヤプリシンの1つであるヒノキチオールは、48時間の培養後、コラーゲン産生促進効果を有することがすでに報告されているビタミンAパルミテート(非特許文献1)の3倍、無添加対照の3.6倍と、コラーゲン産生が著しく促進されていた。
「Fragrance Journal,臨時増刊号 No.15」、フレグランスジャーナル社、1996年、p.154−162
(2)試験例2
ヒノキチオール水溶液:<1>6.09,<2>60.9μmol/L
陽性対照 ビタミンAパルミテート水溶液:1530IU/g
コラゲナーゼ阻害剤 硫酸アルミニウム水溶液:75.03μmol/L
陰性対照 無添加
上記の試験品をそれぞれ3次元培養ヒト皮膚モデルに添加処理した。
[細胞賦活効果の評価]
48時間培養後の培養細胞の細胞賦活作用(細胞生存率)をMTT(3−[4,5−dimethylthiazol−2−yl]−2,5−diphenyltetrazolium bromide)法を用いて測定した。
Figure 0005255919

表2に示したように、本発明のツヤプリシンの1つであるヒノキチオールは、48時間の培養後、濃度依存的にコラーゲン産生促進効果を高めることが明らかとなった。さらに、コラゲナーゼ阻害剤として知られているアルミニウム(非特許文献2)を添加しても、ヒノキチオールが配合されていない場合には、24−48時間後にコラーゲン産生量がわずかに増えたのみであった。従って、本発明のコラーゲン産生促進効果はコラゲナーゼの阻害作用では説明できない別の機能であることが明らかとなった。
「American Journal of Pathology」、(米国)、米国研究病理学会、2001年12月、第159巻、第6号、p.1981−1986
Figure 0005255919

さらに、表3に示したように、本発明のツヤプリシンの1つであるヒノキチオール(β−ツヤプリシン)のコラーゲン産生促進効果は、細胞賦活作用との相関もなく、このことから、単に細胞賦活効果及び代謝促進によりコラーゲン産生が促進されたわけでないことが明らかとなった。
Figure 0005255919
次に、表4の組成物(実施例1、比較例1)の処方を常法により調整し、2ヶ月間の実使用試験を行った。パネラーとしては皮膚の乾燥、しわ、たるみ等の症状を顕著に呈する30代後半〜50代の女性20名を用いた。これらの組成物は1日朝・晩2回、2ヶ月間使用してもらい、使用試験開始前及び使用試験終了後に皮膚の状況について「改善した」、「やや改善」、「変化なし」の3段階にて評価した。試験の結果は各評価を得たパネラー数にて表5に示した。
Figure 0005255919

表5に示されるように、皮膚の乾燥、はり・弾力の低下、しわ・たるみ等の改善状況については、実施例の本発明は比較例のものに比べて優れた改善効果を有していることが認められた。また、実施例使用群において、皮膚刺激性反応や皮膚感作性反応を示したパネラーも存在しなかった。
以下に、本発明のコラーゲン産生促進剤を用いた種々の処方例を示す。なお、各製剤についての製造方法は、化粧水については各成分を計量後、撹拌溶解して調整し、乳液、クリーム、美容液については、各成分を計量後、約80℃に加温した水相に同温度に加温した油相を加え、撹拌乳化し、室温まで冷却し調整した。
処方例1 化粧水
ヒノキチオール 0.001(重量%)
グリチルリチン酸ジカリウム 0.5
水素添加大豆リン脂質 1.0
エゾウコギエキス 2.0
ヒドロキシエチルセルロース 0.5
1,3−ブチレングリコール 3.0
パラベン 0.2
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.3
アルコール 5.0
香料 0.03
精製水 残 量
配合例2 乳液
ヒノキチオール 0.01(重量%)
パルミチン酸レチノール 0.1
フォスファチジルエタノールアミン 1.0
セラミド 0.1
甘草エキス 1.0
カルボキシビニルポリマー 0.3
1,3−ブチレングリコール 5.0
パラベン 0.2
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.1
ポリグリセリン脂肪酸エステル 1.0
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル 0.3
流動パラフィン 3.0
水酸化カリウム 0.07
香料 0.03
精製水 残 量
配合例3 クリーム
ヒノキチオール 0.1(重量%)
グリチルレチン酸ステアリル 0.2
酢酸レチノール 0.1
ニコチン酸トコフェロール 0.2
コレステロール 1.0
リゾフォスファチジルコリン 1.0
オリーブ油 5.0
グリセリン 15.0
パラベン 0.2
カルボキシビニルポリマー 0.3
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.1
モノグリセリン脂肪酸エステル 5.0
プロピレングリコール脂肪酸エステル 5.0
ポリエチレングリコール脂肪酸エステル 0.5
スクワラン 10.0
ベヘニルアルコール 3.0
ステアリン酸 1.0
植物エキス 2.0
香料 0.03
精製水 残 量
配合例4 美容液
ヒノキチオール 0.5(重量%)
酢酸トコフェロール 0.5
サフラワー油 1.0
ヒドロキシエチルセルロース 0.6
ジプロピレングリコール 10.0
パラベン 0.2
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.1
ポリグリセリン脂肪酸エステル 2.0
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル 0.5
スクワラン 5.0
ステアリン酸 1.0
植物エキス 2.0
香料 0.03
精製水 残 量
以上詳述したように、本発明のコラーゲン産生促進剤は、コラーゲンの減少にともなう、はり・弾力の低下、ひいては、しわやたるみといった肌の加齢変化を予防・改善し、加えて炎症や創傷の治癒過程にも有効な効果を示すものであり、産業上大きな価値を有する。
表1によって示されたコラーゲン産生促進効果を図示する。 表2によって示されたコラーゲン産生促進効果を図示する。

Claims (1)

  1. β−ツヤプリシンを有効成分とするコラーゲン産生促進剤。
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