JP5240306B2 - 太陽電池検査装置 - Google Patents
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Description
本発明は、太陽電池に光照射により電流を流し、流れる電流により発生する磁界を測定することで太陽電池の電極の接続不良を検出する太陽電池検査装置に関する。
従来から、例えば下記特許文献1に示されているように、太陽電池に光を照射することにより太陽電池に発電させ、この発電によって太陽電池の各部に流れる電流により発生する各部の磁界を磁気センサで測定し、各部の測定磁界を用いて太陽電池の電極の接続不良を検出する太陽電池検査装置は知られている。この太陽電池検査装置においては、太陽電池をステージ上に載置して太陽電池に対してその表面に光を照射するとともに、磁気センサを太陽電池の表面又は裏面に対向させながら太陽電池の表面又は裏面に沿って移動して、太陽電池の各部に流れる電流によって発生する各部の磁界を検出するようにしている。この場合、太陽電池を載置するステージの機構、磁気センサを移動させる機構などの問題により、例えば太陽電池が柔軟性に富んだシート状の部材で構成されていて太陽電池をステージに吸引するような複雑な機構を有する必要がある場合などのように、太陽電池に対して光を照射する側の表面に磁気センサを配置する必要が生じる場合がある。
しかし、上記のように、太陽電池に光を照射する側に磁気センサを配置すると、磁気センサ及び磁気センサを支持する機構が太陽電池に光を照射するための光源と太陽電池との間に位置することになるので、前記磁気センサ及びその支持機構による影が太陽電池上に形成される。なお、光源を太陽電池の表面に平行に広く配置した場合には、鮮明な影は形成されないにしても、太陽電池の表面には明度に差がある明るい部分と暗い部分とが生じていることは間違いない。そして、太陽電池の表面に影が形成されたり、明度に差がある明るい部分と暗い部分とが生じたりして、太陽電池の表面に光が均一に照射されていない場合、すなわち太陽電池の表面の一部が暗い場合には、測定した磁界に基づく太陽電池の電極の接続不良が精度よく検出されない。これは、太陽電池の表面の一部の暗い部分が太陽電池の各部に流れる電流に影響を与えているものと考えられる。さらに、推定を加えると、光の照射が少ない部分では、他の部分に比べて抵抗値が大きく保たれて、電流が流れ難くなるものと推定される。
本発明は、この問題を解決するためになされたもので、太陽電池に光を照射することにより電流を流し、流れる電流により発生する磁界を測定することで太陽電池の電極の接続不良を検出する太陽電池検査装置において、太陽電池に光を照射する側に磁気センサを配置しても、太陽電池の電極の接続不良を精度よく検出することができる太陽電池検査装置を提供することにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、太陽電池(SB)を載置するためのステージ(20)と、ステージに対向して配置されて、ステージ上に載置された太陽電池に対して発電のために光を照射する第1光照射手段(60)と、第1光照射手段の光の照射による発電に基づいて太陽電池に流れる電流により発生される磁界を検出する磁気検出手段(10)と、ステージと第1光照射手段との間に配置されて、磁気検出手段をステージに対向させて支持する支持部材(31)とを備えた太陽電池検査装置において、支持部材に取付けられて、ステージ上に載置された太陽電池の支持部材と対向する領域に光を照射する第2光照射手段(59)を設けたことにある。この場合、例えば、支持部材は、長尺状に形成され、かつ磁気検出手段は、支持部材にその長手方向に移動可能に支持されている。また、磁気検出手段は、支持部材の長手方向に配置された複数の磁気センサで構成されている。
前記のように構成した本発明の特徴によれば、支持部材に取付けられた第2光照射手段がステージ上に載置された太陽電池の支持部材と対向する領域に光を照射するので、支持部材及び磁気検出手段が発電のために光を照射する第1光照射手段と太陽電池と間に位置しても、支持部材及び磁気検出手段による影が太陽電池上に形成されたり、太陽電池の表面に明度に大きな差がある明るい部分と暗い部分とが生じたりすることがなくなる。このように太陽電池の表面に影を形成させないようにしたり、明度に大きな差がある明るい部分と暗い部分とを生じさせないようにしたりした結果、測定した磁界に基づいて太陽電池の電極の接続不良を精度よく検出できるようになった。このことは、実験によって確認されているとともに、太陽電池の表面の一部の暗い部分が太陽電池の各部に流れる電流に影響を与なくなるためであると推定される。
また、本発明の他の特徴は、さらに、支持部材に取付けられて、ステージ上に載置された太陽電池の支持部材と対向する領域に、第1光照射手段による光が照射されないように光を遮断する遮光部材(51A,51B)を設けたことにある。
前記のように構成した本発明の特徴によれば、遮光部材がステージ上に載置された太陽電池の支持部材と対向する領域への第1光照射手段による光の照射を遮断するので、支持部材及び磁気検出手段による第1光照射手段の光の遮断による影響が全くなくなり、太陽電池の表面には明度に差がある明るい部分と暗い部分とが全くなくなる。したがって、測定した磁界に基づいて太陽電池の電極の接続不良をさらに精度よく検出できるようになった。このことも、実験によって確認されている。
本発明の他の特徴は、さらに、磁気検出手段によって検出された磁界を表す磁界信号に基づいて、太陽電池の電極又はその近傍の位置における電極の延設方向の磁界の強さ又は前記延設方向と直交する方向の電流の大きさを検出する検出手段(90,S30,S104,S114)とを設けたことにある。これによれば、アモルファス太陽電池の場合によくあるように、太陽電池セル内に単位セルを直列接続した太陽電池における電極の接続不良を精度よく検出できる。
本発明の他の特徴は、さらに、前記検出された磁界の強さ又は電流の大きさの変動が大きい部分の変動量を表す特性値を計算する変動量特性値計算手段(90,S144〜S156)を設けたことにある。これによれば、前記太陽電池セル内に単位セルを直列接続した太陽電池における電極の接続不良を数値で検出できるので、前記電極の接続不良を自動検出できるようになる。
本発明の他の特徴は、さらに、磁気検出手段によって検出された磁界を表す磁界信号に基づいて、太陽電池の電極又はその近傍の位置における電極の延設方向の電流の大きさ又は前記延設方向と直交する方向の磁界の強さを検出する検出手段(90,S30,S104,S112,S114)とを設けたことにある。これによれば、結晶系太陽電池の場合によくあるように、太陽電池セル内には単位セルの直列接続はなく、太陽電池セル間を直列接続した太陽電池における電極の接続不良及び太陽電池セル間の接続不良を精度よく検出できる。
本発明の他の特徴は、さらに、前記検出された電流の大きさ又は磁界の強さの変動量を表す特性値を計算する変動量特性値計算手段(90,S260〜S274)を設けたことにある。これによれば、前記太陽電池セル間を直列接続した太陽電池における電極の接続不良及び太陽電池セル間の接続不良を数値で検出できるので、前記電極の接続不良を自動検出できるようになる。
本発明の他の特徴は、第1光照射手段は、太陽電池に所定周期で強度が変化する光を照射し、前記磁気検出手段によって検出される磁界を表す磁界信号のうちで、前記所定周期で変化する磁界信号を取出して検出手段に供給する周期信号取出手段を設けたことにある。これによれば、外乱光、地磁気など影響を受けることなく、第1光照射手段による太陽電池への光の照射に基づいて太陽電池に流れる電流によって発生される磁界のみを検出することができて、高精度で太陽電池の電極の接続不良を検出できるようになる。
なお、本明細書においては、単に「電流の大きさ」なる表現は、方向を問題とすることなく電流の絶対的な大きさを示す。そして、特定方向の電流の大きさに関しては、方向を特定したうえで電流の大きさを表現する。例えば、「X軸方向の電流の大きさ」、「Y軸方向の電流の大きさ」などと表現する。また、この点は、磁界の強さに関しても同じである。
a.構成例
以下、本発明の一実施形態に係る太陽電池検査装置の構成例について図面を用いて説明する。図1は、この太陽電池検査装置の全体概略図である。図2は、測定対象である太陽電池SBの各部に流れる電流によって発生する磁界を検出するための磁界検出機構の概略斜視図である。この太陽電池検査装置は、詳しくは後述する磁気センサ10に対向して配置されて太陽電池SBを載置するためのステージ20と、磁気センサ10をX軸方向に移動させるためのX方向移動機構30と、磁気センサ10を含むX方向移動機構30をY軸方向に移動させるためのY方向移動機構40とを備えている。
以下、本発明の一実施形態に係る太陽電池検査装置の構成例について図面を用いて説明する。図1は、この太陽電池検査装置の全体概略図である。図2は、測定対象である太陽電池SBの各部に流れる電流によって発生する磁界を検出するための磁界検出機構の概略斜視図である。この太陽電池検査装置は、詳しくは後述する磁気センサ10に対向して配置されて太陽電池SBを載置するためのステージ20と、磁気センサ10をX軸方向に移動させるためのX方向移動機構30と、磁気センサ10を含むX方向移動機構30をY軸方向に移動させるためのY方向移動機構40とを備えている。
ステージ20は、方形状に形成されている。ステージ20の表面には多数の微小孔が形成されており、これらの多数の微小孔は共通にバキュームポンプ21に連通している。そして、バキュームポンプ21を作動させると、ステージ20の上面に載置された太陽電池SBが微小孔を介して吸引されるようになっている。これは、後述するように、太陽電池SBの中には柔軟性に富んだシート状に形成されているものもあり、このようなシート状の太陽電池SBを単にステージ20上に載置しただけでは、シート状の太陽電池SBの表面に凹凸が生じて後述する磁界測定が精度よく行われないことがあるためである。このような場合は、本実施形態のように、バキュームポンプ21でシート状の太陽電池SBを吸引すれば、太陽電池SBがステージ20上に吸着され、太陽電池SBの表面の高さが均一になるために、後述する磁界測定の精度が良好になる。
なお、この種のシート状の太陽電池SBには様々な大きさのものが存在する。そして、シート状の太陽電池SBをステージ20上にセットして、バキュームポンプ21を作動させる場合、太陽電池SBがステージ20の上面の面積より小さければ、図5(A)に示すように、ステージ20上の太陽電池SBが存在しない部分には、別の平板Hを置くようにするとよい。また、シート状の太陽電池SBがステージ20の上面の面積より大きい場合には、図5(B)に示すように、太陽電池SBの検査を行う部分をステージ20上に置き、それ以外の部分を巻いたりしてステージ20の下方に置けばよい。なお、ステージ20はシート状の太陽電池SBをセットするための構造であるが、この太陽電池検査装置は、他の種類の太陽電池SB(例えば、硬質の太陽電池SB)をステージ20にセットして検査することも可能である。
X方向移動機構30は、図3のX方向移動機構のX軸方向の両端部分を示す概略図、並びに図4A及び図4BのX方向移動機構の断面図に示すように、X軸方向に延設された長尺状の支持部材31を有する。支持部材31の両端近傍には、下方に突出した方形状の凸部31A,31Bを有する。支持部材31の凸部31A,31Bは、Y方向移動機構40を構成するY軸方向に延設された一対の支持部材41,42の上面に設けた溝41a,42a内にY軸方向に摺動可能に侵入している。支持部材41,42の溝41a,42aは、支持部材41,42に延設方向(Y軸方向)に沿って断面方形状に形成されている。支持部材41,42の下部には幅広の底部41b,42bがそれぞれ設けられ、支持部材41,42は底部41b,42bによりステージ20のX軸方向両側に安定して設置されるようになっている。
支持部材41の溝41a内には、Y軸方向に延設されて支持部材31の凸部31Aを貫通する雄ねじ43が収容されている。支持部材31の凸部31A内には、雄ねじ43に螺合した図示しないナットが組み込まれており、雄ねじ43の回転により、支持部材31がY軸方向に移動するようになっている。すなわち、雄ねじ43と支持部材31の凸部31A内に組み込まれたナットにより、ボールねじ機構が構成されている。雄ねじ43の一端は、支持部材41の一端に組み付けたY方向モータ44の回転軸に連結され、雄ねじ43の他端は支持部材41の他端に回転可能に支持されている。これにより、Y方向モータ44の回転により雄ねじ43が軸線周りに回転して、支持部材31がY軸方向に移動する。
X方向移動機構30の支持部材31には、X軸方向の両端部分を除いて、断面方形状に形成されて下方に開口されるとともにX軸方向に延設された凹部31aが設けられている。この支持部材31の凹部31aの前後方向内側面(Y軸方向内側面)には、同一高さ位置にて断面方形状の溝31b,31cがX軸方向に延設されて形成されている。これらの溝31b,31cには、方形状に形成した移動部材32の両側部に設けた方形状の凸部32a,32bが摺動可能に係合している。移動部材32の下面には、磁気センサ10がステージ20に対向するように固定されている。
支持部材31のX軸方向両端部にはX軸方向に延設された貫通孔31d,31eも設けられており、これらの貫通孔31d,31e及び前述した凹部31a内には、X軸方向に延設されて移動部材32を貫通する雄ねじ33が収容されている。移動部材32内には、Y軸方向に延設されて雄ねじ33に螺合した図示しないナットが組み込まれており、雄ねじ33の回転により、移動部材32がX軸方向に移動するようになっている。すなわち、雄ねじ33と移動部材32内に組み込まれたナットにより、ボールねじ機構が構成されている。雄ねじ33の一端は、支持部材31の一端に組み付けたX方向モータ34の回転軸に連結され、雄ねじ33の他端は支持部材31の他端に設けた支持部31fに回転可能に支持されている。これにより、X方向モータ34の回転により雄ねじ33が軸線周りに回転して、移動部材32が磁気センサ10と共にX軸方向に移動する。
支持部材31の側面上部には、軸線方向(X軸方向)に沿って、外側(Y軸方向両側)にそれぞれ延設された薄板上の延設部31g、31hが設けられている。これらの延設部31g,31hの下面には、遮光カーテン51A,51Bの上端がX軸方向に沿ってそれぞれ固着されている。これらの遮光カーテン51A,51Bは、光を遮断する柔軟性材料で構成されており、図4Bに示すように、太陽電池SB上に下げられた状態では、移動部材32の下方に位置する太陽電池SBの表面への外部からの光の侵入が遮られる。この遮光カーテン51A,51Bは、支持部材31上に固定されたカーテン用モータ52により上下動されるようになっている。
カーテン用モータ52の出力軸は、ギア53a,53bを介して回転軸54に接続されている。回転軸54は、その両端にて、支持部材31に設けた支持部31i,31jに回転可能に支持されている。回転軸54の外周上には円柱状の巻取りローラ55が固定されており、巻取りローラ55は回転軸54と一体的に軸線周りに回転する。巻取りローラ55の軸線方向すなわちX軸方向には、適当な間隔をおいて複数組の巻取りワイヤ56A,56Bの各一端がそれぞれ固定されている。これらの複数組の巻取りワイヤ56A,56Bの各他端は、支持部材31に固定した複数組のローラ57A,57Bを介して下方に延設されるとともに、支持部材31の延設部31g、31hに設けた貫通孔を介してさらに下方に延設されている。巻取りワイヤ56A,56Bの下端は、遮光カーテン51A、51Bの下端に固定したストッパ58A,58Bに固定されている。ストッパ58A,58Bは、硬質かつある程度大きな質量を有する絶縁材料で形成されて、遮光カーテン51A,51Bの長さだけX軸方向に延設されている。したがって、巻取りローラ55を図4A及び図4Bにてカーテン用モータ52側から見て時計方向に回転させれば、遮光カーテン51A,51Bは図4Aに示すように巻き上げられる。一方、巻取りローラ55を図4A及び図4Bにて同方向から見て反時計方向に回転させれば、遮光カーテン51A,51Bは図4Bに示すように下げられる。また、巻取りローラ55には、遮光カーテン51A,51Bを最大限に巻き上げた状態及び最大限に下げた状態で、巻取りローラ55の回転が禁止される図示しないストッパが設けられている。
支持部材31の両側底面には、所定の間隔をおいて複数の発光素子(LED)59が固定されている。この発光素子59は、太陽電池SBに対する光の照射量が減少した箇所における抵抗値が他に比べて高くならないようにするもので、X方向移動機構30による影に起因した抵抗値の増大に影響、特に遮光カーテン51A,51Bによる遮光時に前記照射量の減少した箇所の抵抗値が高くならないようにするためのものである。言い換えれば、この発光素子59による太陽電池SBへの照射は、太陽電池SBに発電させる目的ではなく、太陽電池SBの照射量の減少した箇所の抵抗値が他に比べて高くならないようにするためのものであるので、発光素子59による光の照射強度は後述する発電のための発光素子60に比べれば微弱であってもよい。
ふたたび図1の説明に戻ると、ステージ20の上面に対向する位置であって、X方向移動機構30よりもさらに上方の位置には、複数の発光素子(LED)60が配置されている。複数の発光素子60はマトリクス状に配置されて、太陽電池SBをステージ20上に載置した状態で、太陽電池全体に均一な光量(すなわち強度)の光が照射されるようになっている。
バキュームポンプ21には、ポンプ駆動回路71が接続されている。ポンプ駆動回路71は、後述するコントローラ90による指示により、バキュームポンプ21の作動開始及び作動停止を制御する。
X方向モータ34内には、X方向モータ34の回転を検出して、その回転を表す回転信号を出力するエンコーダ34aが組み込まれている。この回転信号は、X方向モータ34が所定の微少角度だけ回転するたびにハイレベルとローレベルとを交互に切替えるパルス列信号であって、回転方向を識別するために互いにπ/2だけ位相のずれたA相信号とB相信号とで構成される。回転信号は、X方向位置検出回路72及びX方向フィードモータ制御回路73に出力される。X方向位置検出回路72は、前記回転信号のパルス数をX方向モータ34の回転方向に応じてカウントアップ又はカウントダウンし、そのカウント値からX方向モータ34による移動部材32のX軸方向位置(すなわち磁気センサ10のX軸方向位置)を検出し、検出したX軸方向位置をX方向フィードモータ制御回路73及び後述するコントローラ90に出力する。X方向フィードモータ制御回路73は、コントローラ90の指示により、X方向モータ34の駆動及び停止を制御する。このX方向モータ34の駆動時においては、X方向フィードモータ制御回路73は、エンコーダ34aからの回転信号を用いてX方向モータ34を所定の回転速度で回転させる。
X方向位置検出回路72におけるカウント値の初期設定は、電源投入時にコントローラ90の指示によって行われる。すなわち、コントローラ90は、電源投入時に、X方向フィードモータ制御回路73に移動部材32の初期位置に対応したX軸方向限界位置への移動、及びX方向位置検出回路72に初期設定を指示する。この指示により、X方向フィードモータ制御回路73は、X方向モータ34を駆動して移動部材32を初期位置に対応したX軸方向限界位置まで移動させる。X方向位置検出回路72は、移動部材32のX軸方向への移動中、X方向モータ34内のエンコーダ34aからの回転信号を入力し続けている。そして、移動部材32が初期位置に対応したX軸方向限界位置まで達してX方向モータ34の回転が停止すると、X方向位置検出回路72はエンコーダ34aからの回転信号の入力停止を検出して、カウント値を「0」にリセットする。このとき、X方向位置検出回路72は、X方向フィードモータ制御回路73に出力停止のための信号を出力し、これにより、X方向フィードモータ制御回路73はX方向モータ34への駆動信号の出力を停止する。その後に、X方向モータ34が駆動された際には、X方向位置検出回路72は、回転信号のパルス数をX方向モータ34の回転方向に応じてカウントアップ又はカウントダウンし、そのカウント値に基づいて移動部材32のX軸方向位置を計算し、計算したX軸方向位置をX方向フィードモータ制御回路73及びコントローラ90に出力し続ける。
Y方向モータ44内には、Y方向モータ44の回転を検出して、前記X方向モータ34と同様に、その回転を表す回転信号を出力するエンコーダ44aが組み込まれている。この回転信号は、Y方向位置検出回路74及びY方向フィードモータ制御回路75に出力される。Y方向位置検出回路74は、前記回転信号のパルス数をY方向モータ44の回転方向に応じてカウントアップ又はカウントダウンし、そのカウント値からY方向モータ44による移動部材32のY軸方向位置(すなわち磁気センサ10のY軸方向位置)を検出し、検出したY軸方向位置をY方向フィードモータ制御回路75及びコントローラ90に出力する。Y方向フィードモータ制御回路75は、コントローラ90の指示により、前記X方向フィードモータ制御回路73の場合と同様に、Y方向モータ44の駆動及び停止を制御する。
Y方向位置検出回路74におけるカウント値の初期設定も、電源投入時にコントローラ90の指示によって行われる。すなわち、コントローラ90は、電源投入時に、Y方向フィードモータ制御回路75に移動部材32の初期位置に対応したY軸方向限界位置への移動、及びY方向位置検出回路74に初期設定を指示する。この指示により、Y方向フィードモータ制御回路75は、Y方向モータ44を駆動して移動部材32を初期位置に対応したY軸方向限界位置まで移動させる。Y方向位置検出回路74は、移動部材32のY軸方向への移動中、Y方向モータ44内のエンコーダ44aからの回転信号を入力し続けている。そして、移動部材32が初期位置に対応したY軸方向限界位置まで達してY方向モータ44の回転が停止すると、Y方向位置検出回路74はエンコーダ44aからの回転信号の入力停止を検出して、カウント値を「0」にリセットする。このとき、Y方向位置検出回路74は、Y方向フィードモータ制御回路75に出力停止のための信号を出力し、これにより、Y方向フィードモータ制御回路75はY方向モータ44への駆動信号の出力を停止する。その後に、Y方向モータ44が駆動された際には、Y方向位置検出回路74は、回転信号のパルス数をY方向モータ44の回転方向に応じてカウントアップ又はカウントダウンし、そのカウント値に基づいて移動部材32のY軸方向位置を計算し、計算したY軸方向位置をY方向フィードモータ制御回路75及びコントローラ90に出力し続ける。
カーテン用モータ52内にも、カーテン用モータ52の回転を検出して、前記X方向モータ34及びY方向モータ44と同様に、その回転を表す回転信号を出力するエンコーダ52aが組み込まれている。この回転信号は、遮光カーテン用モータ駆動回路76に出力される。遮光カーテン用モータ駆動回路76は、コントローラ90による指示により、遮光カーテン51A,51Bを巻上げ及び巻下げのためにカーテン用モータ52の駆動を制御する。具体的には、コントローラ90から遮光カーテン51A,51Bの巻上げの指示があった場合には、遮光カーテン用モータ駆動回路76は、図4A及び図4Bにて巻取りローラ55がカーテン用モータ52側から見て時計方向に回転するようにカーテン用モータ52の回転を開始させる。一方、コントローラ90から遮光カーテン51A,51Bの巻下げの指示があった場合には、遮光カーテン用モータ駆動回路76は、図4A及び図4Bにて巻取りローラ55が同方向から見て反時計方向に回転するようにカーテン用モータ52の回転を開始させる。これらの回転開始後、遮光カーテン用モータ駆動回路76は、エンコーダ52aからの回転信号の入力停止によりカーテン用モータ52の回転停止を制御する。すなわち、上述のように、巻取りローラ55にはストッパが設けられていて、遮光カーテン51A,51Bを最大限に巻き上げた状態及び最大限に巻き下げた状態で巻取りローラ55の回転が停止されるので、この状態では、エンコーダ52aからの回転信号が遮光カーテン用モータ駆動回路76には入力されなくなる。したがって、遮光カーテン用モータ駆動回路76は、この回転信号の入力停止を検出して、前記遮光カーテン51A,51Bの巻上げた状態及び巻下げた状態でカーテン用モータ52への駆動信号の出力を停止させることができる。
この太陽電池検査装置は、さらに、発光信号供給回路81、第1光源駆動回路82、センサ信号取出回路83、ロックインアンプ84、第2光源駆動回路85及びコントローラ90を備えている。発光信号供給回路81は、正弦波発振器及び矩形波変換回路を含み、コントローラ90によって作動制御されて、正弦波発振器によって発振される正弦波信号を発光制御信号として第1光源駆動回路82に供給する。なお、発光制御信号は、「0」を基準に正負に変化する信号であり、その周波数は、例えば数10ヘルツから数100ヘルツ程度である。また、発光信号供給回路81は、前記正弦波信号からなる発光制御信号を矩形波変換回路による変換により、前記発光制御信号と同期して「0」を中心として正負に変化する矩形波信号を生成して、参照信号としてロックインアンプ84に出力する。第1光源駆動回路82も、コントローラ90によって作動制御されて、前記供給された発光制御信号によって複数の発光素子60を同時に発光制御する。発光素子60は、前記発光制御信号に同期して正弦波状に変化する発光強度で太陽電池SBの表面を照射する。
次に、磁気センサ10について説明しておく。磁気センサ10は、図6に示すように、X軸方向の磁界を検出するX方向磁気センサ10Aと、Y軸方向の磁界の変化を検出するY方向磁気センサ10Bとを備えている。X方向磁気センサ10Aは、抵抗r11,r12,r13及び磁気抵抗素子MR1からなるブリッジ回路で構成されており、抵抗r11,r13の接続点と、抵抗r12及び磁気抵抗素子MR1の接続点との間に、センサ信号取出回路83の後述する定電圧供給回路83aから電圧+V,−Vが印加されるようになっている。また、X方向磁気センサ10Aにおいては、抵抗r13及び磁気抵抗素子MR1の接続点と、抵抗r11,r12間の接続点との間の電圧をX方向磁気検出信号として出力する。抵抗r11,r12,r13の値は同じであり、磁界の強さが「0」であるときの磁気抵抗素子MR1の抵抗値に等しい。これにより、ほぼ「0」を基準としたX軸方向の磁界の正負の変化により、X方向磁気検出信号はほぼ「0」を基準にX軸方向の磁界の大きさに比例して正負に変化する電圧信号となる。
Y方向磁気センサ10Bは、抵抗r21,r22,r23及び磁気抵抗素子MR2からなるブリッジ回路で構成されており、抵抗r21,r22の接続点と、抵抗r23及び磁気抵抗素子MR2の接続点との間に、センサ信号取出回路83の後述する定電圧供給回路83bから電圧+V,−Vが印加されるようになっている。また、Y方向磁気センサ10Bにおいては、抵抗r22及び磁気抵抗素子MR2の接続点と、抵抗r21,r23間の接続点との間の電圧をY方向磁気検出信号として出力する。抵抗r21,r22,r23の値は同じであり、磁界の強さが「0」であるときの磁気抵抗素子MR2の抵抗値に等しい。これにより、ほぼ「0」を基準としたY軸方向の磁界の正負の変化により、Y方向磁気検出信号はほぼ「0」を基準にY軸方向の磁界の大きさに比例して正負に変化する電圧信号となる。
センサ信号取出回路83は、定電圧供給回路83a,83b及び増幅器83c,83dを備えている。定電圧供給回路83a,83bは、コントローラ90からの指示により、X方向磁気センサ10A及びY方向磁気センサ10Bに対して、定電圧+V,−Vを供給する。増幅器83c、83dは、X方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号をそれぞれ増幅してロックインアンプ84に出力する。
ロックインアンプ84は、図7に詳細に示すように、X方向磁気センサ10Aから増幅器83cを介して供給されるX方向磁気検出信号を入力するハイパスフィルタ84aと、Y方向磁気センサ10Bから増幅器83dを介して供給されるY方向磁気検出信号を入力するハイパスフィルタ84bとを備えている。ハイパスフィルタ84a,84bは、X方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号に含まれる、磁界の強さに比例した信号成分以外の不要な成分を取り除くとともに、信号をグランドレベルを中心に変化するようにする。
ハイパスフィルタ84aの出力は、増幅器84cを介して位相検波回路84d,84eに供給される。位相検波回路84d,84eは、それぞれ乗算器によって構成されている。位相検波回路84dは、ハイパスフィルタ84a及び増幅器84cを介して供給されるX方向磁気検出信号に、発光信号供給回路81からの参照信号を乗算してローパスフィルタ84fに出力する。位相検波回路84eは、ハイパスフィルタ84a及び増幅器84cを介して供給されるX方向磁気検出信号に、発光信号供給回路81からの参照信号を位相シフト回路84gで90度位相を遅らせた遅延参照信号を乗算してローパスフィルタ84hに出力する。これにより、ローパスフィルタ84fにはX方向磁気検出信号の発光制御信号(参照信号)と同期した成分が供給され、ローパスフィルタ84fは供給された成分信号をローパスフィルタ処理してX方向磁気検出信号の発光制御信号と同期した成分の大きさを表す信号を出力する。ローパスフィルタ84hにはX方向磁気検出信号の発光制御信号よりも90度位相を遅らせた信号(遅延参照信号)と同期した成分が供給され、ローパスフィルタ84hは供給された成分信号をローパスフィルタ処理してX方向磁気検出信号の発光制御信号よりも90度位相を遅らせた信号と同期した成分の大きさを表す信号を出力する。
ハイパスフィルタ84bの出力は、増幅器84iを介して位相検波回路84j,84kに供給される。位相検波回路84j,84kには、ローパスフィルタ84m,84nが接続されている。位相検波回路84j,84k及びローパスフィルタ84m,84nは、前述した位相検波回路84d,84e及びローパスフィルタ84f,84hと同様に構成されている。これにより、ローパスフィルタ84mにはY方向磁気検出信号の発光制御信号(参照信号)と同期した成分が供給され、ローパスフィルタ84mは供給された成分信号をローパスフィルタ処理してY方向磁気検出信号の発光制御信号と同期した成分の大きさを表す信号を出力する。ローパスフィルタ84nにはY方向磁気検出信号の発光制御信号よりも90度位相を遅らせた信号(遅延参照信号)と同期した成分が供給され、ローパスフィルタ84nは供給された成分信号をローパス処理してY方向磁気検出信号の発光制御信号よりも90度位相を遅らせた信号と同期した成分の大きさを表す信号を出力する。ローパスフィルタ84f,84h,84m,84nは、A/D変換器84o,84p,84q,84rにそれぞれ接続されている。A/D変換器84o,84p,84q,84rは、所定の時間間隔ごとに、ローパスフィルタ84f,84h,84m,84nからの信号をそれぞれA/D変換してコントローラ90に供給する。
ふたたび図1の説明に戻り、第2光源駆動回路85は、コントローラ90により指示されて、複数の発光素子59を同時に点灯させる。この場合、複数の発光素子59を点灯制御する駆動信号は、直流信号でもよいし、発光信号供給回路81が出力する信号の周期とは異なった周期の信号でもよい。また、上述のように、発光素子59による太陽電池SBへの照射は、太陽電池SBに発電させる目的ではなく、太陽電池SBの発光素子60の光の照射量が減少した箇所の抵抗値が他に比べて高くならないようにするためのものであるので、駆動信号の大きさは第1光源駆動回路82に比べて微弱であってもよい。
コントローラ90は、CPU、ROM、RAMを備えたマイクロコンピュータと、ハードディスクや不揮発性メモリなどの記憶装置と、入出力インタフェース等から構成される電子制御装置である。コントローラ90は、記憶装置に記憶された図8のデータ取得プログラム及び図9A乃至図9Fの評価プログラムを実行してこの太陽電池検査装置の動作を制御する。コントローラ90には、作業者が各種パラメータや処理等を指示するための入力装置91と、作業者に対して作動状況等を視覚的に知らせるための表示装置92とが接続されている。
b.太陽電池例
次に、本実施形態に係る太陽電池検査装置によって検査される太陽電池SBの構成について、2種類のタイプを例にして説明しておく。第1タイプの太陽電池SBは、アモルファス太陽電池の場合がよくあるように、太陽電池SBを構成する複数の太陽電池セルSC内にそれぞれ電池の直列接続構造を有するものである。また、第2タイプの太陽電池SBは、結晶系太陽電池の場合によくあるように、前記電池の直列接続構造を有さないものである。まず、第1タイプの太陽電池SBについて説明すると、この太陽電池SBは、図10に示すように、マトリクス状に配置された多数の太陽電池セルSCが、基板100上に固定されている。本実施形態では、X軸方向にsmax個、Y軸方向にtmax個の太陽電池セルSCが配置されているものとする。
次に、本実施形態に係る太陽電池検査装置によって検査される太陽電池SBの構成について、2種類のタイプを例にして説明しておく。第1タイプの太陽電池SBは、アモルファス太陽電池の場合がよくあるように、太陽電池SBを構成する複数の太陽電池セルSC内にそれぞれ電池の直列接続構造を有するものである。また、第2タイプの太陽電池SBは、結晶系太陽電池の場合によくあるように、前記電池の直列接続構造を有さないものである。まず、第1タイプの太陽電池SBについて説明すると、この太陽電池SBは、図10に示すように、マトリクス状に配置された多数の太陽電池セルSCが、基板100上に固定されている。本実施形態では、X軸方向にsmax個、Y軸方向にtmax個の太陽電池セルSCが配置されているものとする。
各太陽電池セルSCは、図11A及び図11Bに示すように、方形状に形成され、外部に電力を取出すための長尺状の一対の取出電極(正電極及び負電極)101,102を上面にて平行に延設させており、一対の取出電極101,102の間を前記取出電極101,102と同一方向に延設させた複数の発電セル103を直列接続した構造を有している。各発電セル103は、表面電極103a、半導体層103b及び裏面電極103cからなる。半導体層103bは、図示左側をP層とするとともに図示右側をN層としており、発生電流は裏面電極103cから表面電極103aの方向に流れる。隣り合う発電セル103,103間は、一方の表面電極103aと他方の裏面電極103cが導電層104によって電気的に接続され、かつ絶縁層105によって絶縁されている。一端(図示上側端)の発電セル103の表面電極103aは、導電層からなる内部電極106を介して取出電極101に接続され、この発電セル103の外側には絶縁層107aが設けられている。他端(図示下側端)の発電セル103の裏面電極103cは、導電層からなる内部電極108を介して取出電極102に接続されており、この発電セル103の外側には絶縁層107bが設けられている。この太陽電池セルSCの上面はガラス層109で覆われており、取出電極101,102は、内部電極106,108に導電性ペースト又は半田により接続されている。
そして、図10に示すように、X軸方向に配置されたsmax個の太陽電池セルSCの各電極101,102は接続線111でそれぞれ直列に接続され、この直列に接続されたsmax個の電極101,102は接続線112,113によりそれぞれ並列に接続されている。そして、接続線112,113から電力が出力されるようになっている。なお、この太陽電池セルSCの検査の場合には、接続線112,113間に後述する抵抗Rcsが導線L1,L2を介して接続される。そして、電流は図示矢印の方向に流れる。
次に、第2タイプの太陽電池SBについて説明すると、この太陽電池SBも、図13に示すように、マトリクス状に配置された多数の太陽電池セルSCが、基板200上に固定されている。この場合も、X軸方向にsmax個、Y軸方向にtmax個の太陽電池セルSCが配置されているものとする。各太陽電池セルSCは、例えば図14Aの拡大概略断面図に示すように、裏面電極201、p+形層202、p形層203、n形層204及び反射防止膜205を積層して構成されている。また、太陽電池セルSCは、平板状かつ長尺状に形成され等間隔で横方向に配列された複数のグリッド電極(受光面電極)206を備え、グリッド電極206の下端面はn形層204に接続されて上端面を上方に突出させている。複数のグリッド電極206の上端面には、棒状に形成した一対のバスバー電極207がそれらの下面にて接続されている。
そして、X軸方向に配置されたsmax個の太陽電池セルSCは直列に接続され、この直列に接続されたsmax個の太陽電池セルSCからなるtmax組の太陽電池セルSC群がそれぞれ並列に接続されている。この場合、X軸方向に配置されたsmax個の太陽電池セルSCにおいては、図14Bに示すように、裏面電極201を隣の太陽電池セルSCのバスバー電極207に接続線208を介して接続するようにしている。また、直列に接続されたsmax個の太陽電池セルSCからなるtmax組の太陽電池セルSC群においては、X軸方向一端の太陽電池セルSCの裏面電極201が接続線211によって共通に接続されるとともに、太陽電池セルSC群のX軸方向他端の太陽電池セルSCのバスバー電極207が接続線212によって共通に接続されている。そして、接続線211,212から電力が出力されるようになっている。なお、この場合も、太陽電池セルSCの検査の場合には、接続線211,212間に後述する抵抗Rcsが導線L1,L2を介して接続される。そして、電流は図示矢印の方向に流れる。
c.作動説明
次に、上記のように構成した太陽電池検査装置の動作について説明する。作業者は、図10又は図13に示すように、検査対象となる太陽電池SBに導線L1,L2を介して小さな抵抗Rcs(例えば、5オーム程度の抵抗)を接続して、ステージ20上の所定位置に載置する。抵抗Rcsを接続する理由は、発光素子60を用いた光の照射により、太陽電池セルSCの発電による電流が太陽電池セルSCを流れるようにするためである。なお、この場合、電極(取出電極101,102又はバスバー電極207)の延設方向がX軸方向となるように、太陽電池SBをステージ20上に載置する。この状態で、太陽電池検査装置の電源が投入されると、上述したように、コントローラ90の指示により、X方向フィードモータ制御回路73及びY方向フィードモータ制御回路75は、移動部材32(すなわち磁気センサ10)をX軸方向及びY軸方向の限界位置に移動させるとともに、X方向位置検出回路72及びY方向位置検出回路74は検出されるX軸方向位置及びY軸方向位置を初期値に設定する。
次に、上記のように構成した太陽電池検査装置の動作について説明する。作業者は、図10又は図13に示すように、検査対象となる太陽電池SBに導線L1,L2を介して小さな抵抗Rcs(例えば、5オーム程度の抵抗)を接続して、ステージ20上の所定位置に載置する。抵抗Rcsを接続する理由は、発光素子60を用いた光の照射により、太陽電池セルSCの発電による電流が太陽電池セルSCを流れるようにするためである。なお、この場合、電極(取出電極101,102又はバスバー電極207)の延設方向がX軸方向となるように、太陽電池SBをステージ20上に載置する。この状態で、太陽電池検査装置の電源が投入されると、上述したように、コントローラ90の指示により、X方向フィードモータ制御回路73及びY方向フィードモータ制御回路75は、移動部材32(すなわち磁気センサ10)をX軸方向及びY軸方向の限界位置に移動させるとともに、X方向位置検出回路72及びY方向位置検出回路74は検出されるX軸方向位置及びY軸方向位置を初期値に設定する。
次に、作業者は、入力装置91を操作することにより、太陽電池SBの計測に必要なパラメータを入力する。この場合、必要なパラメータとしては、例えば、太陽電池セルSC(取出電極101,102、バスバー電極207など)のX軸方向の長さ、ステージ20上に存在するX軸方向の太陽電池セルSCの数smax、太陽電池SBのタイプ(上述した太陽電池セルSC内に直列接続構造を有する第1タイプの太陽電池SBか、第2タイプなどのそれ以外の太陽電池SBか)などである。この入力されたパラメータは、コントローラ90に記憶される。また、後述するデータ処理プログラムや評価プログラムにて使用されるX軸方向終了位置Xmaxなどが、この入力されたパラメータから計算されて記憶される。
この状態で、作業者は、入力装置91を操作することにより、バキュームポンプ21の作動開始をコントローラ90に入力指示する。これにより、コントローラ90はポンプ駆動回路71を制御して、バキュームポンプ21を作動させる。このバキュームポンプ21の作動により、ステージ20の上面に載置された太陽電池SBが微小孔を介して吸引されて、太陽電池SBがステージ20上に固定される。したがって、太陽電池SBが柔軟性に富んだシート状のものであっても、太陽電池SBがステージ20状に吸着され、太陽電池SBの表面の高さが均一になるために、後述する磁界測定の精度が良好になる。なお、バキュームポンプ21による太陽電池SBの吸引が必要ない場合には、特に、バキュームポンプ21を作動させる必要はない。
次に、作業者は、入力装置91を操作することにより、コントローラ90を介してY方向フィードモータ制御回路75に指示して、磁気センサ10がX軸方向に延設された電極(第1タイプの太陽電池SBであれば取出電極101,102、第2タイプの太陽電池SBであればバスバー電極207)に対向する位置に来るように、Y方向モータ44を作動させる。この磁気センサ10の移動は、作業者の視覚判断により行えばよいが、電極の位置検出装置などを用いた自動制御を含めてもよい。なお、最初は、Y軸方向の初期位置に近い電極位置(図10の最下段の取出電極102の位置又は図13の最下段のバスバー電極207の位置)に合わせる。この場合、遮光カーテン51A,51Bが巻上げられた状態で、支持部材31がY軸方向に移動される。遮光カーテン51A,51Bが巻上げられていなければ、作業者は、入力装置91を操作することにより、コントローラ90を介して遮光カーテン用モータ駆動回路76に対して、遮光カーテン51A,51Bを巻上げる方向にカーテン用モータ52を回転させるように指示する。これにより、遮光カーテン用モータ駆動回路76は、カーテン用モータ52を回転させて遮光カーテン51A,51Bを上限位置まで巻上げて、カーテン用モータ52による遮光カーテン51A,51Bの巻上げ動作を終了する。
次に、作業者は、入力装置91を操作して、コントローラ90に図8のデータ取得プログラムの実行を開始させる。すなわち、太陽電池SBの計測の開始をコントローラ90に指示する。この指示に応答して、コントローラ90は、図8のステップS10にてデータ取得プログラムの実行を開始し、ステップS12にて変数nを「1」に初期設定する。変数nは、太陽電池SBの電極位置(又はその近傍位置)における磁気センサ10によるX軸方向の磁界検出位置を示す変数である。次に、コントローラ90は、ステップS14にて、遮光カーテン用モータ駆動回路76に対して、遮光カーテン51A,51Bを下げる方向にカーテン用モータ52を回転させるように指示する。遮光カーテン用モータ駆動回路76は、カーテン用モータ52を回転させて、遮光カーテン51A,51Bを下限位置まで、すなわちストッパ58A,58Bが太陽電池SBの上面に接するまで下げる。そして、遮光カーテン用モータ駆動回路76は、カーテン用モータ52の作動を停止させて遮光カーテン51A,51Bの巻下げ動作を終了する。これにより、磁気センサ10による磁界の検出対象となる電極位置(第1タイプの太陽電池SBであれば取出電極101,102の位置、第2タイプの太陽電池SBであればバスバー電極207の位置)は外部の光から遮断されることになる。
前記ステップS14の処理後、コントローラ90は、ステップS16にて、X方向フィードモータ制御回路73に対して磁気センサ10をX軸方向に移動して検査位置がX軸方向の初期値Xsによって表される初期位置になるように指示する。この指示に応答して、X方向フィードモータ制御回路73は、X方向位置検出回路72からX軸方向検出位置(X軸方向の検査位置すなわち測定位置)を入力しながら、X軸方向検出位置が初期値Xsに一致するまでX方向モータ34を駆動制御する。前記ステップS16の処理後、コントローラ90は、ステップS18にてX方向位置検出回路72から磁気センサ10のX軸方向位置を入力して、ステップS20にてこの入力したX軸方向位置が前記初期値Xsに等しい位置か否かを判定する。そして、前記入力したX軸方向位置が前記初期値Xsに等しい位置になるまで、コントローラ90は、ステップS20にて「No」と判定して、ステップS18,S20の循環処理を繰り返す。前記入力したX軸方向位置が前記初期値Xsに等しい位置になると、コントローラ90は、ステップS20にて「Yes」と判定して、ステップS22以降の処理を実行する。
ステップS22においては、コントローラ90は、発光信号供給回路81の作動開始を指示する。この指示に応答して、発光信号供給回路81は、正弦波状の発光制御信号を第1光源駆動回路82に供給するとともに、前記発光制御信号と同期した矩形波状の参照信号をロックインアンプ84に供給し始める。次に、コントローラ90は、ステップS24にて第1光源駆動回路82の作動開始を指示する。この指示に応答して、第1光源駆動回路82は、前記供給された発光制御信号に応じて正弦波状に変化する駆動制御信号を発光素子60に供給して、発光素子60を発光制御し始める。次に、コントローラ90は、ステップS26にて第2光源駆動回路85の作動開始を指示する。この指示に応答して、第2光源駆動回路85は発光素子59を発光させ、発光素子59は遮光カーテン51A,51Bによって遮光された空間内を照射し始める。次に、コントローラ90は、ステップS28にてセンサ信号取出回路83の作動開始を指示する。この指示に応答して、センサ信号取出回路83内の定電圧供給回路83a,83bは、X方向磁気センサ10A及びY方向磁気センサ10Bに定電圧信号+V,−Vを供給し始める。これにより、X方向磁気センサ10A及びY方向磁気センサ10BによるX方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号が、増幅器83c,83dを介してロックインアンプ84にそれぞれ供給され始める。
このX方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号について説明する。前記発光素子60の発光制御により、発光素子60は、その発光強度を前記発光制御信号に同期して正弦波状に変化させながら、遮光された部分を除く太陽電池SBの表面に均等に光を照射する。この光の照射により、太陽電池SBの各太陽電池セルSCは前記発光強度に応じて電力を発電し始める。この電力の発電により、各太陽電池セルSCには電流が流れ始めるとともに、導線L1,L2を介して抵抗Rcsにも電流が流れ始める(図10及び図13の矢印参照)。各太陽電池セルSCの表裏面近傍には、前記電流による磁界が発生する。そして、X方向磁気センサ10Aは、X軸方向の磁界Hの強さに比例した電圧をX方向磁気検出信号として出力し始める。また、Y方向磁気センサ10Bは、Y軸方向の磁界Hの強さに比例した電圧をY方向磁気検出信号として出力し始める。これらのX方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号は、前記発光素子60の発光強度が正弦波状に変化するので、正弦波状に変化する信号である。ただし、X方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号の位相は、発光素子60を駆動制御するための正弦波状の発光制御信号とは若干異なる。
ロックインアンプ84においては、入力されたX方向磁気検出信号がハイパスフィルタ84a及び増幅器84cを介して位相検波回路(乗算器)84d,84eにそれぞれ供給されるとともに、入力されたY方向磁気検出信号がハイパスフィルタ84b及び増幅器84iを介して位相検波回路(乗算器)84j,84kにそれぞれ供給される。位相検波回路84d,84jには、発光信号供給回路81からの矩形波状の参照信号が供給されている。また、位相検波回路84e,84kには、前記参照信号の位相を位相シフト回路84gで90度遅らせた遅延参照信号が供給されている。そして、位相検波回路84d,84eは、増幅器84cを介して供給されたX方向磁気検出信号に参照信号及び遅延参照信号をそれぞれ乗算して、乗算した信号をローパスフィルタ84f,84hを介してA/D変換器84o,84pにそれぞれ供給する。位相検波回路84j,84kは、増幅器84cを介して供給されたY方向磁気検出信号に参照信号及び遅延参照信号をそれぞれ乗算して、乗算した信号をローパスフィルタ84m,84nを介してA/D変換器84q,84rにそれぞれ供給する。
ここで、ローパスフィルタ84f,84h,84m,84nは供給された信号の成分の大きさを表す信号すなわち正弦波状の信号の振幅に比例した大きさを表す信号を出力するように機能する。したがって、A/D変換器84oには、X方向磁気検出信号の参照信号(すなわち発光制御信号)に同期した信号成分の大きさを表す信号が供給される。A/D変換器84pには、X方向磁気検出信号の参照信号から90度だけ位相の遅れた信号成分の大きさを表す信号が供給される。A/D変換器84qには、Y方向磁気検出信号の参照信号に同期した信号成分の大きさを表す信号が供給される。A/D変換器84rには、Y方向磁気検出信号の参照信号から90度だけ位相の遅れた信号成分の大きさを表す信号が供給される。そして、A/D変換器84o,84p,84q,84rは、それぞれ供給された信号を所定時間ごとにサンプリングしてA/D変換し、A/D変換したサンプリングデータをコントローラ90に供給する。したがって、コントローラ90には前記各信号成分の所定時間ごとの大きさを表すサンプリングデータが所定時間ごとに供給されるようになる。
前記ステップS28の処理後、コントローラ90は、ステップS30にて、ロックインアンプ84のA/D変換器84o,84p,84q,84rから供給されるサンプリングデータを取込み、ステップS32にて取込んだ各サンプリングデータの数が所定数Kに達したか否かを判定する。この所定数Kは、例えば数個から数十個の各サンプリングデータの数を表す値に設定されている。各サンプリングデータの数が所定数Kに達していなければ、コントローラ90は、ステップS32にて「No」と判定して、ステップS30にてA/D変換器84o,84p,84q,84rから次に出力されるサンプリングデータを取込む。そして、A/D変換器84o,84p,84q,84rから取込んだ各サンプリングデータの数が所定数Kに達すると、コントローラ90は、ステップS32にて「Yes」と判定して、ステップS34以降の処理を実行する。ステップS30にて取込まれたサンプリングデータは、変数nによって指定されるサンプリングデータ群として、RAMに記憶される。
具体的には、A/D変換器84oから取込んだ所定数Kのサンプリングデータ、すなわちX方向磁気検出信号の参照信号と同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのデータは、サンプリングデータ群Sx1(n)としてRAMに記憶される。A/D変換器84pから取込んだ所定数Kのサンプリングデータ、すなわちX方向磁気検出信号の遅延参照信号と同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのデータは、サンプリングデータ群Sx2(n)としてRAMに記憶される。A/D変換器84pから取込んだ所定数Kのサンプリングデータ、すなわちY方向磁気検出信号の参照信号と同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのデータは、サンプリングデータ群Sy1(n)としてRAMに記憶される。A/D変換器84rから取込んだ所定数Kのサンプリングデータ、すなわちY方向磁気検出信号の遅延参照信号と同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのデータは、サンプリングデータ群Sy2(n)としてRAMに記憶される。なお、この場合の変数nは、「1」である。
前記ステップS32の処理後、コントローラ90は、ステップS34にて、値Xs+n・ΔXがX軸方向の終了値Xmaxよりも大きいか否かを判定する。値Xs+n・ΔXは、X軸方向の走査間隔を表す所定値ΔXに変数nを乗算して初期値Xsを加算した値であり、次のX軸方向の検出位置(X軸方向の走査位置すなわち測定位置)を表す値である。値Xs+n・ΔXが終了値Xmax以下であれば、コントローラ90は、ステップS34にて「No」と判定して、ステップS36にて、X方向フィードモータ制御回路73に、磁気センサ10の中心位置をX軸方向正側に移動させるように指示する。これにより、X方向フィードモータ制御回路73は、X方向モータ34を作動させて磁気センサ10の中心位置をX軸方向正側に移動させ始める。
次に、コントローラ90は、ステップS38にてX方向位置検出回路72からX軸方向位置を入力し、ステップS40にて入力したX軸方向位置が次のX軸方向の検出位置に達したか否か、すなわちX軸方向位置を示す値が値Xs+n・ΔX以上になったか否かを判定する。そして、X方向位置検出回路72から入力したX軸方向位置が次のX軸方向の検出位置に達するまで、コントローラ90は、ステップS40にて「No」と判定し続けて、ステップS38,S40の処理を繰り返し実行する。X方向位置検出回路72から入力したX軸方向位置が次のX軸方向の検出位置に達すると、コントローラ90は、ステップS40にて「Yes」と判定し、ステップS42にてX方向フィードモータ制御回路73に、磁気センサ10のX軸方向正側への移動を停止させることを指示する。これにより、X方向フィードモータ制御回路73は、X方向モータ34の作動を停止させて、磁気センサ10のX軸方向正側への移動を停止させる。その結果、磁気センサ10は、値Xs+n・ΔXで表されたX軸方向位置を磁気センサ10の検出位置として、太陽電池SBの磁界を検出し始める。前記ステップS42の処理後、コントローラ90は、ステップS44にて変数nに「1」を加算することにより、変数nを次の検出位置を表す値に変更して、ステップS30に戻る。
そして、コントローラ90は、前述のステップS30,S32のサンプリングデータの取込み処理を実行する。これらのステップS30,S32の処理により、値Xs+(n−1)・ΔXで表されたX軸方向位置を検出位置とする磁気センサ10の磁界検出によるサンプリングデータがRAMに新たに記憶される。具体的には、X方向磁気検出信号の参照信号及び遅延参照とそれぞれ同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのサンプリングデータが、サンプリングデータ群Sx1(n),Sx2(n)としてRAMに記憶される。また、Y方向磁気検出信号の参照信号及び遅延参照信号とそれぞれ同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのサンプリングデータが、サンプリングデータ群Sy1(n),Sy2(n)としてRAMに記憶される。なお、この場合の変数nは「2」である。
そして、コントローラ90は、次のX軸方向の検出位置(X軸方向の走査位置)を表す値Xs+n・ΔXが終了値Xmaxよりも大きくなるまで、ステップS30〜S44の処理により、磁気センサ10による検出位置をX軸方向正側に所定値ΔXずつ移動させるとともに、変数nを「1」ずつ増加させながら、サンプリングデータを取込む。そして、次のX軸方向の検出位置を表す値Xs+n・ΔXが終了値Xmaxよりも大きくなると、コントローラ90は、ステップS34にて「Yes」と判定して、ステップS46以降に進む。この状態では、サンプリングデータ群Sx1(n),Sx2(n),Sy1(n),Sy2(n)(n=1,2,3・・・nmax)がRAMに記憶される。なお、値nmaxは、終了値Xmax直前の検出位置によるサンプリングデータ群に関する変数nの値であって、X軸方向における検出位置の数を表している。
コントローラ90は、ステップS46にてセンサ信号取出回路83の作動停止を指示し、ステップS48にて第1光源駆動回路82の作動停止を指示し、ステップS50にて第2光源駆動回路85の作動停止を指示し、ステップS52にて発光信号供給回路81の作動停止を指示する。これらの作動停止の指示により、発光素子59,60、発光信号供給回路81、第1光源駆動回路82、センサ信号取出回路83、ロックインアンプ84、第2光源駆動回路85及び磁気センサ10の作動が停止する。前記ステップS52の処理後、コントローラ90は、ステップS54にて、移動部材32をX軸方向駆動限界位置まで移動させることをX方向位置検出回路72及びX方向フィードモータ制御回路73に指示する。これにより、X方向フィードモータ制御回路73は、前述の初期設定のように、X方向位置検出回路72と協働して、移動部材32をX軸方向駆動限界位置まで移動させる。次に、コントローラ90は、ステップS56にて遮光カーテン用モータ駆動回路76に対して遮光解除を指示して、ステップS58にてデータ取得プログラムの実行を終了する。遮光カーテン用モータ駆動回路76は、カーテン用モータ52を回転させて、遮光カーテン51A,51Bを上限位置まで巻上げる。そして、遮光カーテン51A,51Bが上限位置まで持ち上げられると、遮光カーテン用モータ駆動回路76は、カーテン用モータ52の作動を停止させて遮光カーテン51A,51Bの巻上げ動作を終了する。これにより、磁気センサ10による磁界の検出対象となる電極位置(第1タイプの太陽電池SBであれば取出電極101,102の位置、第2タイプの太陽電池SBであればバスバー電極207の位置)における遮光が解除される。
次に、前記データ取得プログラムで取得した所定数Kずつのサンプリングデータ群Sx1(n),Sx2(n),Sy1(n),Sy2(n)(n=1〜nmax)を用いて、太陽電池SBを評価する方法について説明する。この場合、作業者は、入力装置91を操作して、コントローラ90に図9A乃至図9Fの評価プログラムを実行させる。この評価プログラムにおいては、太陽電池SBの合否判定が行われたり、作業者が太陽電池SBの合否を判定するために、太陽電池SBの電極位置における電流の大きさと向きである電流分布の画像が表示装置に表示される。そこで、評価プログラムを説明する前に、太陽電池セルSCの電極に異常が発生した場合について説明しておく。
まず、図10、図11A及び図11Bに示す第1タイプの太陽電池SBの異常について説明する。この種の太陽電池セルSCにおいては、取出電極101,102が内部電極106,108に導電性ペースト又は半田により接続されているので、取出電極101,102と内部電極106,108との間の接続不良が異常の原因となる。
1つの太陽電池セルSCにおいて、正常な場合と異常な場合(前記接続不良の場合)との電流の分布について、図12を用いて説明する。(A)は、1つの太陽電池セルSCに着目して1対の取出電極101,102の間に抵抗Rcsを接続した等価回路を示し、×印位置にて、取出電極101と内部電極106との間に接続不良の異常が発生している状態を示している。(B)は、実線により、太陽電池セルSCが正常な状態において、取出電極101の位置における電流の大きさを、取出電極101のX軸方向位置に対応させて示している。また、(B)は、破線により、太陽電池セルSCに前記異常が発生した状態において、取出電極101の位置における電流の大きさを、取出電極101のX軸方向位置に対応させて示している。この場合、X軸方向位置に応じて電流の大きさが変化するのは、(A)の矢印のように電流が流れるため、すなわち右側位置に流れる電流は左側位置にも重なって流れるためである。なお、この場合の電流の大きさとは、電流の向きとは無関係な電流の大きさの絶対値(後述するIxy)である。したがって、(B)のグラフからは、太陽電池セルSCが正常な場合と異常な場合とでは、電流の大きさの変化において差があまり大きくなく、電流の大きさは共に滑らかに変化していることが分かる。これは、接続不良の異常箇所においても、取出電極101及び内部電極106自体には、異常が発生しているわけではなく、取出電極101及び内部電極106が延設されているY軸方向には前記接続不良の異常とは無関係に充分な電流が流れ得るからであると推定される。
一方、(C)は、実線により、太陽電池セルSCが正常な状態において、取出電極101の位置におけるY軸方向(取出電極101に直交する方向)の電流の大きさを、取出電極101のX軸方向位置に対応させて示している。また、(C)は、破線により、太陽電池セルSCに前記異常が発生した状態において、取出電極101の位置のY軸方向の電流の大きさを、取出電極101のX軸方向位置に対応させて示している。この場合も、X軸方向位置に応じて電流の大きさが変化するのは、(A)の矢印のように電流が流れるため、すなわち右側位置に流れる電流は左側位置にも重なって流れるためである。そして、(C)のグラフからは、太陽電池セルSCが正常な場合と異常な場合とでは、Y軸方向の電流の大きさの変化において差が大きく、正常な場合にはY軸方向の電流の大きさは滑らかに変化しているが、異常な場合にはY軸方向の電流の大きさは異常箇所近傍で大きく変動していることが分かる。これは、接続不良の異常箇所において、異常箇所を避けて電流がX軸方向に傾いて流れ、Y軸方向の電流の大きさが減少するためであると推定される。
一方、(D)は、実線により、太陽電池セルSCが正常な状態において、取出電極101の位置近傍におけるY軸方向(取出電極101に直交する方向)の電流の大きさを、取出電極101のX軸方向位置に対応させて示している。また、(D)は、破線により、太陽電池セルSCに前記異常が発生した状態において、取出電極101の位置近傍におけるY軸方向電流の大きさを、取出電極101のX軸方向位置に対応させて示している。この場合も、X軸方向位置に応じて電流の大きさが変化するのは、太陽電池セルSCにおいて(A)の矢印のように電流が流れるため、すなわち右側位置に流れる電流は左側位置にも重なって流れるためである。そして、(D)のグラフからは、太陽電池セルSCが正常な場合と異常な場合とでは、(C)の場合よりも、Y軸方向の電流の大きさの変化において差が大きく、正常な場合にはY軸方向の電流の大きさは滑らかに変化しているが、異常な場合にはY軸方向の電流の大きさは異常箇所近傍で大きく変動していることが分かる。これも、接続不良の異常箇所において、異常箇所を避けて電流がX軸方向に傾いて流れ、Y軸方向の電流が減少するためであると推定される。
本発明は、これらの取出電極101の位置又は位置近傍におけるX軸方向の電流の大きさの変化に着目してなされたもので、後述する説明では、このY軸方向の電流の大きさをIyとして説明する。また、取出電極102と内部電極108との間の接続不良による異常の発生時においても同じ結果を得ている。すなわち、本発明は、取出電極101,102の位置又はその近傍位置におけるY軸方向の電流の大きさIyのX軸方向に沿った変化において、Y軸方向の電流の大きさIyの変動が接続不良部分の近傍にて大きくなることに着目して、取出電極101,102と内部電極106,108との接続不良を検出するようにしている。
次に、図13、図14A及び図14Bに示す第2タイプの太陽電池SBの異常について説明する。図17は、太陽電池セルSCの電極の1つが断線している場合における電流の大きさの分布の実験結果を示している。(A)は、1つの太陽電池セルSCに着目して、一対のバスバー電極207,207と一対の裏面電極201,201との間に抵抗Rcsを接続した等価回路を示している。なお、電流の方向は、図示右方向を正とする。この状態で、図示上側のバスバー電極207に流れる電流の大きさは、X軸方向位置において次のように変化する。まず、断線が生じていない場合には、図示上側のバスバー電極207に流れる電流の大きさの分布は、(B)のAに示すように、X軸方向位置が変化してもほぼ一定となった。一方、バスバー電極207側を断線させた場合((A)のB断線)、図示上側のバスバー電極207に流れる電流の大きさは、(B)のBに示すように、断線箇所に近い左部であるX軸方向位置では小さく、右方に向かうに従って大きくなる。また、裏面電極201側を断線させた場合((A)のC断線)、図示上側のバスバー電極207に流れる電流の大きさは、(B)のCに示すように、断線箇所に遠い左部であるX軸方向位置では大きく、右方に向かうに従って小さくなる。これらは、断線箇所に近い位置の電流が流れ難く、断線した位置から離れるに従って、グリッド電極206などを介して流れ込む電流が増加するためであると推定される。
(C)は、前述したA,B,Cの条件下で、下側のバスバー電極207に流れる電流の大きさのX軸方向における分布を示している。この場合、(B)の場合とは逆に、上側のバスバー電極207の断線箇所に近いX軸方向位置の電流の大きさは大きく、前記断線箇所から離れたX軸方向位置ほど電流の大きさは小さくなる。これは、上側のバスバー電極207を流れることができなくなった分の電流が下側のバスバー電極207に流れ込んでいるためと推定される。このように、バスバー電極207側及び裏面電極201側を断線させた場合には、上側及び下側のバスバー電極207,207に流れる電流の大きさは、断線してない場合に比べて極めて大きく変化することが分かる。なお、前記説明では、電流の大きさ(電流の絶対値)の変化について説明したが、バスバー電極207内を流れる電流の向きはほぼX軸方向であるので、X軸方向の電流の大きさを用いても同じ結果が得られる。
図18は、太陽電池セルSCの上側のバスバー電極207の接触抵抗が大きい場合における電流の大きさの分布の実験結果を示している。(A)は、1つの太陽電池セルSCに着目して、上側のバスバー電極207に抵抗rを直列に接続した等価回路を示している。この場合、抵抗rを、上側のバスバー電極207に、50cm及び150cmの電線を直列に接続することにより実現している。なお、上下のバスバー電極207,207間の距離は、例えば5cmである。また、この場合も、電流の方向は、図示右方向を正とする。このような抵抗rにより、図示上側のバスバー電極207に流れる電流の大きさは、X軸方向位置において次のように変化する。まず、正常時(上側のバスバー電極207に抵抗rが接続されていない場合)には、図示上側のバスバー電極207に流れる電流の大きさの分布は、(B)のAに示すように、X軸方向位置が変化してもほぼ一定となった。一方、上側のバスバー電極207に50cmの電線を直列に接続した場合には、図示上側のバスバー電極207に流れる電流の大きさは、(B)のBに示すように、抵抗rが接続されている側の左部であるX軸方向位置では小さく、右方に向かうに従って大きくなる。また、上側のバスバー電極207に150cmの電線を直列に接続した場合には、図示上側のバスバー電極207に流れる電流の大きさは、(B)のCに示すように、抵抗rが接続されている側の左部であるX軸方向位置ではさらに小さくなる。これらは、抵抗rが大きくて電流が流れ難い位置の電流が小さくなり、前記電流が流れ難い位置から離れるに従って、グリッド電極206などを介して流れ込む電流が増加するためであると推定される。そして、この電流の変化は、前記図17の断線の場合に比べて小さいものである。
(C)は、前述したA,B,Cの条件下で、下側のバスバー電極207に流れる電流の大きさのX軸方向における分布を示している。この場合には、(B)の場合とは異なり、上側のバスバー電極207に抵抗rが接続されている側のX軸方向位置の電流の大きさはある程度大きく、前記抵抗rが接続された箇所から離れたX軸方向位置の電流の大きさはある程度小さい。この場合も、上側のバスバー電極207を流れることができなくなった分の電流が下側のバスバー電極207に流れ込んでいるためと推定される。このように、バスバー電極207側の接触抵抗が大きくなった場合も、前記断線の場合よりはその変化は小さいが、上側及び下側のバスバー電極207,207に流れる電流の大きさは、接触抵抗が正常な場合に比べて極めて大きく変化することが分かる。また、裏面電極201側の接触抵抗が大きくなった場合も、同様な現象が現われる。なお、この場合も、前記説明では、電流の大きさ(電流の絶対値)の変化について説明したが、バスバー電極207内を流れる電流の向きはほぼX軸方向であるので、X軸方向の電流の大きさを用いても同じ結果が得られる。
図19は、太陽電池セルSCのバスバー電極207とグリッド電極206との間に接触不良が生じている場合における電流の大きさの分布の実験結果を示している。(A)は、1つの太陽電池セルSCに着目して、上側のバスバー電極207が図示右部位置(図示×印位置)にてグリッド電極206と接触不良である状態の等価回路を示している。なお、この場合も、電流の方向は、図示右方向を正とする。この状態で、図示上側のバスバー電極207に流れる電流の大きさは、X軸方向位置において次のように変化する。まず、バスバー電極207とグリッド電極206との間に接触不良が生じていない場合には、図示上側のバスバー電極207に流れる電流の大きさの分布は、(B)のAに示すように、若干は変化するもののX軸方向位置が変化してもほぼ一定となった。一方、バスバー電極207とグリッド電極206との間に接触不良が生じた場合、図示上側のバスバー電極207に流れる電流の大きさは、(B)のBに示すように、接触不良位置から遠い左部であるX軸方向位置では大きく、接触不良位置である右方に向かうに従って小さくなる。これは、接触不良位置では、バスバー電極207に流れる電流が減少するためであると推定される。
(C)は、前述したA,Bの条件下で、下側のバスバー電極207に流れる電流の大きさのX軸方向における分布を示している。この場合、(B)の場合とは逆に、上側のバスバー電極207の接触不良に近い右部であるX軸方向位置の電流の大きさは大きく、前記接触不良箇所から離れたX軸方向位置ほど電流の大きさは小さくなる。これは、上側のバスバー電極207を流れることができなくなった分の電流が下側のバスバー電極207に流れ込んでいるためと推定される。このように、バスバー電極207とグリッド電極206との間に接触不良が生じた場合も、上側及び下側のバスバー電極207,207に流れる電流の大きさは、接触不良が生じていない場合に比べて極めて大きく変化することが分かる。なお、前記説明では、電流の大きさ(電流の絶対値)の変化について説明したが、この場合も、バスバー電極207内を流れる電流の向きはほぼX軸方向であるので、X軸方向の電流の大きさを用いても同じ結果が得られる。
次に、評価プログラムの実行について説明する。この評価プログラムの実行は図9AのステップS100にて開始され、コントローラ90は、ステップS102にて変数nを「1」に初期設定する。変数nは、この場合も、X軸方向における検出位置を指定するための変数である。そして、値nmaxは、前述のように、それぞれX軸方向における検出位置の数を表している。前記ステップS102の処理後、コントローラ90は、ステップS104にて、変数nによって指定される所定数Kずつのサンプリングデータ群Sx1(n),Sx2(n),Sy1(n),Sy2(n)の磁界の大きさの各平均値Sx1,Sx2,Sy1,Sy2を計算する。具体的には、各サンプリングデータ群Sx1(n),Sx2(n),Sy1(n),Sy2(n)ごとに、K個のサンプリングデータを加算して値Kで除算する。
次に、コントローラ90は、ステップS106にて、前記計算した平均値Sx1,Sx2を用いた下記式1,2の演算の実行により、X方向磁気検出信号の極大値Hxと、X方向磁気検出信号の参照信号に対する位相シフト量θxとを計算する。
Hx=(Sx12+Sx22)1/2 …式1
θx=tan-1(Sx2/Sx1) …式2
これにより、X方向磁気検出信号としてHx・sin(2πft+θx)が検出されたことになる。なお、fは、発光信号供給回路81から出力される発光信号及び参照信号の周波数に等しい。
Hx=(Sx12+Sx22)1/2 …式1
θx=tan-1(Sx2/Sx1) …式2
これにより、X方向磁気検出信号としてHx・sin(2πft+θx)が検出されたことになる。なお、fは、発光信号供給回路81から出力される発光信号及び参照信号の周波数に等しい。
次に、コントローラ90は、ステップS108にて、前記計算した平均値Sy1,Sy2を用いた下記式3,4の演算の実行により、Y方向磁気検出信号の極大値Hyと、Y方向磁気検出信号の参照信号に対する位相シフト量θyとを計算する。
Hy=(Sy12+Sy22)1/2 …式3
θy=tan-1(Sy2/Sy1) …式4
これにより、Y方向磁気検出信号としてHy・sin(2πft+θy)が検出されたことになる。
Hy=(Sy12+Sy22)1/2 …式3
θy=tan-1(Sy2/Sy1) …式4
これにより、Y方向磁気検出信号としてHy・sin(2πft+θy)が検出されたことになる。
次に、コントローラ90は、ステップS110にて、前記計算したHx,θx,Hy,θyを用いた下記式5,6の演算の実行により、発光素子60の発光量すなわち通電電流が最大となるタイミング(前記X方向磁気検出信号Hx・sin(2πft+θx)及び前記Y方向磁気検出信号Hy・sin(2πft+θy)における2πftがπ/2のタイミング)における、検査位置の磁界の強さHxy及び磁界の向きθxyを計算する。この場合、通電電流が最大となるタイミングを採用した理由は、位相シフト量θx,θyは小さく、通電電流が最大となるタイミング近傍で検査位置の磁界の強さHxyが最大値近傍の値になるためである。なお、位相シフト量θx,θyが小さくなく、通電電流が最大となるタイミング近傍で検査位置の磁界の強さHxyが最大値近傍にならない場合には、磁界の強さHxyが最大値近傍になるようなタイミングの角度をπ/2に代えて用いればよい。
Hxy=[{Hx・sin(π/2+θx)}2+{Hy・sin(π/2+θy)}2]1/2 …式5
θxy=tan-1{Hy・sin(π/2+θy)}/{Hx・sin(π/2+θx)} …式6
Hxy=[{Hx・sin(π/2+θx)}2+{Hy・sin(π/2+θy)}2]1/2 …式5
θxy=tan-1{Hy・sin(π/2+θy)}/{Hx・sin(π/2+θx)} …式6
次に、コントローラ90は、ステップS112にて、太陽電池SBに流れる電流は前記磁界の強さHxyに比例し、かつ方向が磁界の方向θxyとπ/2異なることから、前記計算したHxy,θxyを用いた下記式7,8の演算の実行により、通電電流が最大となるタイミングにおける、太陽電池SBの検査位置に流れる電流の大きさIxy及び方向θixyを計算する。ただし、値Kは、比例定数である。
Ixy=K・Hxy …式7
θixy=θxy+π/2 …式8
そして、このステップS112にて、前記計算された電流の大きさIxy及び方向θixyは、太陽電池SBの検査位置を表す変数nを用いて電流の大きさデータIxy(n)及び方向データθixy(n)としてRAM又は記憶装置に記憶される。
Ixy=K・Hxy …式7
θixy=θxy+π/2 …式8
そして、このステップS112にて、前記計算された電流の大きさIxy及び方向θixyは、太陽電池SBの検査位置を表す変数nを用いて電流の大きさデータIxy(n)及び方向データθixy(n)としてRAM又は記憶装置に記憶される。
次に、コントローラ90は、ステップS114にて、前記計算したIxy,θixyを用いた下記式9,10の演算の実行により、太陽電池SBの検査位置においてX軸方向及びY軸方向に流れる電流の大きさIx,Iyを計算する。
Ix=Ixy・cosθixy …式9
Iy=Ixy・sinθixy …式10
そして、このステップS114にて、前記計算された電流の大きさIx,Iyも、太陽電池SBの検査位置を表す変数nを用いて電流の大きさデータIx(n),Iy(n)としてRAM又は記憶装置に記憶される。
Ix=Ixy・cosθixy …式9
Iy=Ixy・sinθixy …式10
そして、このステップS114にて、前記計算された電流の大きさIx,Iyも、太陽電池SBの検査位置を表す変数nを用いて電流の大きさデータIx(n),Iy(n)としてRAM又は記憶装置に記憶される。
次に、コントローラ90は、ステップS116にて変数nがX軸方向の検出位置数を表す値nmaxに達したか否かを判定する。変数nが値nmaxに達していなければ、コントローラ90は、ステップS116にて「No」と判定し、ステップS118にて変数nに「1」を加算してステップS104に戻る。そして、前述したステップS104〜S114の処理を実行した後、コントローラ90は、ステップS116にてふたたび変数nが値nmaxに達したか否かを判定する。変数nが値nmaxに達しない限り、ステップS104〜118の処理が繰り返し実行される。
このようなステップS104〜S118の繰り返し処理中、変数nが値nmaxに達すると、コントローラ90は、ステップS116にて「Yes」と判定して、ステップS120にて、検査対象である太陽電池SBが太陽電池セルSC内にそれぞれ電池の直列接続構造を有するもの(図10の第1タイプの太陽電池SB)であるか否かを判定する。検査対象である太陽電池SBが太陽電池セルSC内にそれぞれ電池の直列接続構造を有するものであれば、コントローラ90は、ステップS120にて「Yes」と判定して、図9BのステップS124以降に進む。この時点では、太陽電池SBの検査位置ごとに、電流の大きさデータIxy(n)、電流の方向データθixy(n)、X軸方向の電流の大きさデータIx(n)及びY軸方向の電流の大きさデータIy(n)(n=1〜nmax)が、RAM又は記憶装置に記憶されている。
ステップS124においては、コントローラ90は、X軸方向の磁気センサ10の検出位置を示す変数nを「1」に初期設定し、取出電極101(又は102)のX軸方向の検出位置の数(取出電極101,102の長さをX軸方向の移動距離単位ΔXで除した数)をカウントするための変数pを「0」に初期設定し、取出電極101(又は102)のX方向電極番号gを「1」に初期設定する。そして、コントローラ90は、ステップS126にて、変数nによって指定されるY軸方向の電流の大きさデータIy(n)が所定の小さな基準値以上であるかを判定することにより、変数nによって示される検出位置が取出電極101(又は102)の位置にあるか、取出電極101(又は102)の間の接続線111にあるかを判定する。これは、変数nによって指定されるX軸方向位置が取出電極101,102に対応した位置にあるときには、Y軸方向の電流の大きさデータIy(n)はある程度大きな値を示す(図10参照)が、変数nによって指定されるX軸方向位置が取出電極101,102の間の接続線111に対応した位置にあるときには、Y軸方向の電流の大きさデータIy(n)はほぼ「0」である。
したがって、変数nによって指定されるX軸方向位置が取出電極101,102に対応する位置であれば、コントローラ90は、ステップS126にて「Yes」と判定して、ステップS128にて変数pに「1」を加算し、ステップS130にて変数nに「1」を加算して、ステップS126に戻る。変数nの増加によって検出位置がX軸方向に移動されても、検出位置が取出電極101,102に対応する位置である限り、前記ステップS126〜S130の循環処理が繰り返し実行されて、変数pが変数nの増加に従って増加する。このステップS126〜S130の循環処理中、検出位置が取出電極101,102を超えて接続線111の領域に入ると、コントローラ90は、ステップS126にて「No」と判定して、ステップS132に進む。
ステップS132においては、コントローラ90は、前記変数pが所定数以上であるかを判定する。この場合、所定数は、取出電極101,102の長さを移動距離単位ΔXで除した値よりも若干小さな値であり、前記入力した太陽電池セルSCのX軸方向の長さと移動距離単位ΔXとにより予め決められた値である。取出電極101,102の位置に対応したY軸方向の電流の大きさIy(n)が正確に検出されていれば、変数pは所定数以上であるので、コントローラ90はステップS132にて「Yes」と判定して、ステップS134にてY軸方向の電流の大きさデータIy(n−p)〜Iy(n−1)に電極番号gを割当てる。そして、コントローラ90は、ステップS136にて、電極番号gに「1」を加算して、ステップS138に進む。これは、図10のX軸方向に沿って次の取出電極101,102の検出を意味する。
また、前記ステップS132の判定処理において、「No」すなわち変数pが所定数未満である場合には、コントローラ90は、ステップS132にて「No」と判定して、ステップS134,S136の処理を実行しないで、ステップS138に進む。この場合、Y軸方向の電流の大きさデータIy(n−p)〜Iy(n−1)に電極番号gの割当ては行われない。
ステップS138においては、変数nが値nmax(すなわち終了値Xmax直前の検出位置によるサンプリングデータ群に関する変数nの値)に達したかが判定される。変数nが値nmaxに達していなければ、コントローラ90は、ステップS138にて「No」と判定して、ステップS140にて変数pを「0」に初期設定して、ステップS130に進む。コントローラ90は、前述のように、ステップS130にて変数nに「1」を加算し、ステップS126の判定処理をふたたび実行する。ステップS126の処理は、前述のように、X軸方向の検出位置が取出電極101,102に対応しているか、取出電極101,102間の接続線111に対応しているかを判定する処理である。そして、検出位置が接続線111に対応した位置にある状態では、Y軸方向の電流の大きさデータIy(n)は基準値未満であり、コントローラ90は、ステップS126にて「No」と判定して、ステップS132に進む。この場合、変数pは前記ステップS140の処理により「0」に保たれるので、コントローラ90は、ステップS132にて「No」と判定し続けて、ステップS138,S140,S130,S126,S132の循環処理を繰り返し実行する。
この循環処理中、ステップS130による変数nの増加により、検出位置が取出電極101,102に対応した位置まで来ると、前述の場合と同様に、コントローラ90は、ステップS126にて「Yes」と判定して、ステップS126〜S130の循環処理を繰り返し実行する。そして、検出位置が接続線111の領域に入ると、前述のように、コントローラ90は、ステップS126にて「No」と判定して、ステップS132〜S136の処理を実行する。そして、これらのステップS132〜S136の処理により、X軸方向の次の取出電極101,102に対応したY軸方向の電流の大きさデータIy(n−p)〜Iy(n−1)に次の電極番号gが割当てられる。また、変数pが所定数未満のときには、ステップS132における「No」との判定のもとに、電極番号gの割当ては行われない。
これらのステップS132〜S136の処理後、コントローラ90は、前記ステップS138,S140の処理を実行して、ふたたびステップS130に進む。これにより、変数nの増加により、図10に示すX軸方向に一列に延設された複数の取出電極101,102に対応したY軸方向の電流の大きさデータIy(n−p)〜Iy(n−1)に次々に電極番号g(g=1〜smax)が割当てられていく。そして、変数nが値nmaxに達すると、コントローラ90は、ステップS138にて「Yes」と判定し、ステップS142にて変数gが初期に入力したX軸方向の太陽電池セルSCの数smaxに等しいか否かを判定する。この判定処理は、前記ステップS124〜S140の処理によってX軸方向の全ての取出電極101,102が検出された否かを判定するものである。全ての取出電極101,102が正確に検出されていれば、変数gは前記数smaxに等しく、コントローラ90は、ステップS142にて「Yes」と判定して、図9CのステップS144に進む。一方、取出電極101,102が正確に検出されていなければ、変数gは前記数smaxに等しくなく、コントローラ90は、ステップS142にて「No」と判定して、図9CのステップS168に進む。
まず、全ての取出電極101,102が正確に検出された場合について説明すると、コントローラ90は、ステップS144にて電極番号gを指定するための変数sを「1」に初期設定して、ステップS146にて変数sに等しい電極番号gが割当てられたY軸方向の電流の大きさデータ群Iy(n)を抽出する。すなわち、電極番号g(=s)によって指定される取出電極101,102の位置又はその近傍位置における、Y軸方向の電流の大きさデータ群Iy(n)が抽出される。なお、このY軸方向の電流の大きさデータ群Iy(n)は、「1」ずつ順次増加する変数nによって指定される取出電極101,102のX軸方向の長さ分のデータ数を含む。
前記ステップS146の処理後、コントローラ90は、ステップS148にて、前記抽出したY軸方向の電流の大きさデータ群Iy(n)を用いて次のような計算を実行する。まず、前記抽出したY軸方向の電流の大きさデータ群Iy(n)を、変数nが増加する方向に連続して所定数ごとの複数のグループ(例えば、5〜10程度のグループ)に振り分ける。ただし、最も大きな変数nを含むグループにおけるデータ数は前記所定数よりも小さい可能性があるが、他のグループのデータ数は前記所定数となる。このグループへの振り分け後、グループごとに、前記抽出したY軸方向の電流の大きさデータ群Iy(n)の平均値の絶対値を平均値A(s)としてそれぞれ計算する。
次に、グループごとに、前記抽出したY軸方向の電流の大きさデータ群Iy(n)の最大値から最小値を減算して、減算結果を前記計算した平均値A(s)で除算して、除算結果である(最大値−最小値)/A(s)をグループごとの評価データB(s)とする。次に、グループごとに、前記抽出したY軸方向の電流の大きさデータ群Iy(n)の標準偏差を前記計算した平均値A(s)で除算して、除算結果である標準偏差/A(s)をグループごとの評価データC(s)とする。なお、この状態では、前記振り分けたグループ数分の評価データB(s),C(s)がそれぞれ計算されることになる。そして、これらの評価データB(s),C(s)は、Y軸方向の電流の大きさデータ群Iy(n)の変動を表すデータとして機能する。
前記ステップS148の処理後、コントローラ90は、ステップS150にて、グループごとの評価データB(s)のうちのいずれかが所定の許容値よりも大きいか否かを判定するとともに、グループごとの評価データC(s)のうちのいずれかが所定の許容値よりも大きいか否かを判定する。なお、前記所定の許容値は、評価データB(s)と評価データC(s)とで異なる値に設定されている。前記評価データB(s)が所定の許容値よりも大きいか、又は前記評価データC(s)が所定の許容値よりも大きければ、コントローラ90は、ステップS150にて「Yes」と判定して、ステップS152にてエラーデータEr(s)を“1”に設定して、ステップS154に進む。一方、前記評価データB(s)が所定の許容値以下であり、かつ前記評価データC(s)も所定の許容値以下であれば、コントローラ90は、ステップS150にて「No」と判定して、ステップS154に進む。これにより、変数sによって指定される取出電極101,102に異常(取出電極101,102と内部電極106,108との接続不良)が発生し、図12を用いて前述したように、Y軸方向の電流の大きさデータ群Iy(n)の変動が大きければ、変数sによって指定されるエラーデータEr(s)が“1”に設定される。この“1”に設定されたエラーデータEr(s)は、RAM又は記憶装置に記憶される。
ステップS154においては、変数sが前記入力したX軸方向の太陽電池セルSCの数smaxに達したか否かを判定する(図10参照)。変数sがX軸方向の太陽電池セルSCの数smaxに達していなければ、コントローラ90は、ステップS154にて「No」と判定し、ステップS156にて変数sに「1」を加算して、ステップS146に戻る。そして、コントローラ90は、前述したステップS146〜S152の処理により、図10の次の取出電極101,102に関して、所定数からなるグループごとに、平均値A(s)及び評価データB(s),C(s)を計算するとともに、これらの評価データB(s),C(s)を評価し、前記取出電極101,102に異常が発生していれば、エラーデータEr(s)を“1”に設定してRAM又は記憶装置に記憶する。
そして、これらのステップS146〜S154の処理を全ての取出電極101,102に関して実行した後、コントローラ90は、ステップS154にて「Yes」すなわち変数sがX軸方向の太陽電池セルSCの数smaxに達していると判定して、ステップS158に進む。
ステップS158においては、コントローラ90は、前記RAM又は記憶装置に記憶した電流の大きさデータIxy(n)及びY軸方向の電流の大きさデータIy(n)を用いて、電極番号gによって指定される太陽電池セルSCごとに、表示用画像データを生成して、表示装置92に画像データによって表された画像を表示する。この画像は、例えば、太陽電池セルSCの検査位置ごとに、X軸方向に沿って、電流の大きさデータIxy(n)に応じて明度、色彩などを異ならせて表示するとともに、Y軸方向の電流の大きさデータIy(n)に応じて明度、色彩などを異ならせて表示するとよい。
前記ステップS158の処理後、コントローラ90は、ステップS160にて、エラーデータEr(s)(s=1〜smax)の中に“1”を示すエラーデータが存在するかを調べる。“1”を示すエラーデータEr(s)が存在しなければ、コントローラ90は、ステップS160にて「No」と判定して、ステップS162にて表示装置92に「合格」を表示し、ステップS172にてこの評価プログラムの実行を終了する。一方、“1”を示すエラーデータEr(s)が存在すると、コントローラ90は、ステップS160にて「Yes」と判定して、ステップS164にて表示装置92に「不合格」を表示し、ステップS166にて、エラーデータE(s)が“1”である変数sを取り出して、前記表示した画像中の変数sによって指定される取出電極101,102を欠陥ありとして表示する。これによれば、作業者は、表示装置92の表示状態から、太陽電池セルSCの異常(取出電極101,102の接続不良)を確実かつ容易に認識できる。
次に、前記ステップS124〜S140の処理によって取出電極101,102が正確に検出されていなくて、図9BのステップS142にて「No」と判定された場合について説明する。この場合には、コントローラ90は、ステップS168にて、電流の大きさデータIxy(n)、電流の方向データθixy(n)、X軸方向の電流の大きさデータIx(n)及びY軸方向の電流の大きさデータIy(n)(n=1〜nmax)から表示用画像データを生成して、表示装置92に画像データによって表された画像を表示する。
特に、可能であれば、取出電極101,102の異常(取出電極101,102と内部電極106,108との接続不良)を視覚判断できるように、取出電極101,102の対応位置又はその近傍位置(取出電極101,102の間であって取出電極101,102の近傍位置)のY軸方向の電流の大きさデータIy(n)のみを、取出電極101,102ごと又は太陽電池セルSCごとに表示するようにするとよい。この場合には、取出電極101,102の位置が検出されていないので、作業者が、表示装置92の表示画面を見ながら、表示画像を移動させて取出電極101,102の対応位置又はその近傍位置のY軸方向の電流の大きさデータIy(n)を表示させる必要がある。これによれば、作業者は、表示装置92による表示状態から、太陽電池セルSCの異常(取出電極101,102の接続不良)を判断することができる場合がある。
次に、コントローラ90は、ステップS170にて、「取出電極101,102の合否判定は不能」である旨を表示装置92に表示して、ステップS172にてこの評価プログラムの実行を終了する。
上述のようにして、X軸方向に一列に配置された複数の取出電極101,102の異常検出が終了したら、作業者は、入力装置91を操作することにより、コントローラ90を介してY方向フィードモータ制御回路75に指示して、磁気センサ10がX軸方向に延設されたY軸方向の隣の取出電極101,102に対向する位置に来るように、Y方向モータ44を作動させる。この場合も、磁気センサ10の移動は、作業者の視覚判断によって行ってもよいし、電極の位置検出装置などを用いた自動制御を含めてもよい。そして、コントローラ90に、図8のデータ取得プログラム及び図9A〜図9Aの評価プログラムを上述したように実行させて、前記取出電極101,102のY軸方向の隣の取出電極101,102の異常を検出する。そして、全ての取出電極101,102の異常検出の終了をもって第1タイプの太陽電池SBの検査の終了とする。
上記作動説明からも理解できるように、第1タイプの太陽電池(太陽電池セル内に直列接続構造を有する太陽電池)においては、取出電極101,102又はその近傍の位置において、取出電極101,102の延設方向であるX軸方向と直交するY軸方向に流れる電流の大きさIyを検出するようにしたので、アモルファス太陽電池の場合によくあるように、太陽電池セルSC内に単位セルを直列接続した太陽電池SBにおける取出電極101,102の接続不良を精度よく検出できる。また、さらに、この前記検出された電流の大きさIyの変動が大きい部分の変動量を表す特性値すなわち評価値B(s),C(s),を計算するようにしたので、前記取出電極101,192の接続不良の自動検出できるようになる。
次に、検査対象である太陽電池SBが太陽電池セルSC内にそれぞれ電池の直列接続構造を有しないもの(図13の第2タイプの太陽電池SB)の検査について説明する。なお、この場合、作業者は、入力装置91を操作することにより、コントローラ90を介してY方向フィードモータ制御回路75を指示して、磁気センサ10がX軸方向に延設されたバスバー電極207に対向する位置に来るように、Y方向モータ44を作動させる。そして、上述した図8のデータ取得プログラム及び図9Aの評価プログラムをコントローラ90に実行させる。この場合、コントローラ90は、図9AのステップS120にて「No」と判定して、図9DのステップS204〜S222の処理を実行する。この場合も、この時点では、太陽電池SBの検査位置ごとに、電流の大きさデータIxy(n)、電流の方向データθixy(n)、X軸方向の電流の大きさデータIx(n)及びY軸方向の電流の大きさデータIy(n)(n=1〜nmax)が、RAM又は記憶装置に記憶されている。そして、この場合には、主にX−Y平面内の電流の大きさデータIxy(n)を用いる。
ステップS204〜S220の処理は、図9BのステップS124〜S140の処理とほぼ同じであり、異なる点は、ステップS206,S214の処理である。ステップS206においては、上記ステップS124のY軸方向の電流の大きさデータIy(n)に代えて電流の大きさデータIxy(n)が用いられ、変数nによって指定される電流の大きさデータIxy(n)が所定の小さな基準値以上であるかを判定することにより、変数nによって示される検出位置が太陽電池セルSC上(バスバー電極207)の位置にあるのか、太陽電池セルSC間(接続線208)の位置にあるかを判定する。これは、バスバー電極207の位置に比べて接続線208の位置では、電流の大きさデータIxy(n)が極めて小さくなるからである。すなわち、図13に示すように、複数のバスバー電極207はX軸方向に沿って配置されている。そして、複数のバスバー電極207は、図14B及び図16(A)に示すように、接続線208によって裏面電極201に接続されている。この場合、バスバー電極207を流れる電流の大きさデータIxy(n)は大きいが、接続線208を流れる電流はX−Y平面を流れる電流だけではなく、Z方向(上下方向)に流れる成分を含むために小さい。したがって、複数のバスバー電極207に沿ってY方向に流れる電流は、図16(B)に示すように、バスバー電極207に対応する位置では大きく、接続線208に対応した位置では小さい。したがって、前記ステップS206の判定処理により、上記図9BのステップS126の場合と同様に、バスバー電極207,207の位置と接続線208の位置とが検出される。
また、ステップS214においては、上記ステップS134のY軸方向の電流の大きさデータ群Iy(n−p)〜Iy(n−1)に代えて、電流の大きさデータ群Ixy(n−p)〜Ixy(n−1)に電極番号gを割当てる。そして、これらのステップS204〜S220の処理により、各バスバー電極208の検出位置における電流の大きさデータ群Ixy(n−p)〜Ixy(n−1)に、「1」ずつ増加する電極番号gが順次割当てられる。そして、上記図9Bの場合と同様に、変数nが値nmax(すなわち終了値Xmax直前の検出位置によるサンプリングデータ群に関する変数nの値)に達すると、コントローラ90は、ステップS218にて「Yes」と判定して、ステップS222にて変数gが初期に入力したX軸方向の太陽電池セルSCの数smaxに等しいか否かを判定する。この場合、全てのバスバー電極207が正確に検出されていて変数gが前記数smaxに等しければ、コントローラ90は、ステップS222にて「Yes」と判定して、図9FのステップS260に進む。一方、全てのバスバー電極207が正確に検出されていなくて変数gが前記数smaxに等しくなければ、コントローラ90は、ステップS222にて「No」と判定して、図9EのステップS230に進む。
ステップS230においては、コントローラ90は、各電極番号gが割当てられている電流の大きさデータ群Ixy(n)ごとに、電流の大きさデータ群Ixy(n)にそれぞれ対応した複数の検出位置nのX軸方向の中央値Aven(g)をそれぞれ計算する。次に、コントローラ90は、ステップS232にて電極番号gを指定するための変数sを「1」に初期設定して、ステップS234にて、変数s+1によって指定される中央値Aven(s+1)から変数sによって指定される中央値Aven(s)及び値ceを減算した絶対値|Aven(s+1)−Aven(s)−ce|が所定の小さな値Δp以下であるかを判定する。値ceは、1つの太陽電池セルSCのX軸方向の長さ(バスバー電極207の長さに等しい)を移動距離単位ΔXで除した値である。したがって、値ceは、1つのバスバー電極207の延設方向における位置検出数に等しい。
今、隣合う1対のバスバー電極207がX軸方向にて連続して検出されていれば、前記絶対値|Aven(s+1)−Aven(s)−ce|はほぼ「0」である。したがって、この場合には、コントローラ90は、ステップS234にて「Yes」と判定して、ステップS236にて変数sに「1」を加算し、ステップS238にて変数s+1によって指定される次の中央値Aven(s+1)が存在していることを条件に「Yes」と判定して、ふたたびステップS234の判定処理を実行する。一方、図15のY軸方向の3列目のように、X軸方向の4番目のバスバー電極207が検出されていない場合、変数sが「3」であるとき、前記絶対値|Aven(s+1)−Aven(s)−ce|はほぼ値ceとなる。この場合には、コントローラ90は、ステップS234にて「No」と判定し、ステップS240にて、変数s+1以上の電極番号gが割当てられた電流の大きさデータ群Ixy(n)の電極番号gをそれぞれ電極番号g+1に変更、すなわち変数s+1以上の電極番号gが割当てられた電流の大きさデータ群Ixy(n)の電極番号gを「1」ずつ増加させる。
次に、コントローラ90は、ステップS242にて変数sに等しい電極番号gが割当てられた電流の大きさデータ群Ixy(n)の変数n(検出位置を示す値)に値ceをそれぞれ加算した値n+ceに対応した電流の大きさデータ群Ixy(n+ce)を新たに定義し、定義した電流の大きさデータ群Ixy(n+ce)に変数s+1に等しい電極番号gを割当て、変数nの中央値Aven(g)を計算する。これにより、図15のY軸方向の3列目でX軸方向の4番目のバスバー電極207に対応した電流の大きさデータ群Ixy(n)が補充されるとともに、その中央値Aven(g)も計算され、電極番号gも順番にX軸方向の全ての電流の大きさデータ群Ixy(n)に割当てられる。
また、図15のY軸方向の4列目のように、X軸方向の3番目及び4番目のバスバー電極207が連続して検出されていない場合、変数sが「2」であるとき、前記絶対値|Aven(s+1)−Aven(s)−ce|はほぼ値2・ceとなる。そして、この場合には、前述のステップS240,S242の処理により、Y軸方向に4列目でX軸方向の3番目のバスバー電極207に対応した電流の大きさデータ群Ixy(n)が補充されるとともに、その中央値Aven(g)も計算され、電極番号gも順番にX軸方向の全ての電流の大きさデータ群Ixy(n)に割当てられる。しかし、この場合には、この補充によっても、ステップS236の処理によって変数sが「3」になったとき、前記絶対値|Aven(s+1)−Aven(s)−ce|はほぼ値ceとなる。したがって、ステップS236の処理後、コントローラ90は、ステップS238にて「Yes」と判定し、ステップS234にて「No」と判定して、ふたたびステップS240,S242の処理を実行する。これにより、Y軸方向に4列目でX軸方向の4番目のバスバー電極207に対応した電流の大きさデータ群Ixy(n)が補充されるとともに、その中央値Aven(g)も計算され、電極番号gも順番にX軸方向の全ての電流の大きさデータ群Ixy(n)に割当てられる。その結果、4列目のバスバー電極207に対応した電流の大きさデータ群Ixy(n)の数もバスバー電極207(太陽電池セルSC)の数に等しくなる。なお、3つ以上の電流の大きさデータ群Ixy(n)がX軸方向の中間位置にて欠落しても同様に、前記ステップS234〜S242の処理により、欠落した電流の大きさデータ群Ixy(n)は補充される。
前記ステップS234〜S242の処理中、変数s+1によって指定される中央値Aven(s+1)が存在しなくなると、すなわちX軸方向の次の電流の大きさデータ群Ixy(n)の中央値Aven(s+1)が存在しなくなると、コントローラ90は、ステップS238にて「No」と判定して、ステップS244にて変数sが初期に入力したX軸方向の太陽電池セルの数smaxに等しいかを判定する。この場合も、変数gが前記数smaxに等しければ、コントローラ90は、ステップS244にて「Yes」と判定して、図9FのステップS260に進む。
一方、図15のY軸方向の5列目及び6列目のように、X軸方向の最後のバスバー電極207が検出されていない場合、又は図15のY軸方向の7列目及び8列目のように、X軸方向の最初のバスバー電極207が検出されていない場合には、前述したステップS234,S240,S242の処理では、電流の大きさデータ群Ixy(n)の欠落を補充できない。そして、この場合には、中央値Aven(s+1)(すなわち次の中央値Aven(s))が存在しなくなった時点でも、変数sがX軸方向の太陽電池セルSCの数smaxに等しくなく、コントローラ90は、ステップS244にて「No」と判定して、ステップS246に進む。
ステップS246においては、コントローラ90は、変数sによって指定される中央値Aven(s)に前記所定値ce(太陽電池セルSCのX軸方向の検出位置数)を加算した値Aven(s)+ceを中心値Aven(s)+ceとし、中心値Aven(s)+ceから値aを減算したX軸方向の検出位置Aven(s)+ce−aから前記中心値Aven(s)+ceに値aを加算したX軸方向の検出位置Aven(s)+ce+aまでの検出位置n(=Aven(s)+ce−a〜Aven(s)+ce+a)によって指定される電流の大きさデータ群Ixy(n)の中から最大値を抽出して最大電流値Imaxとする。なお、値aは、5〜数10程度の予め決められた値である。これにより、X軸方向の図15の最も右側の検出されたバスバー電極207の中央値Aven(s)よりもさらに値ce(バスバー電極207の長さ分に対応)だけ右側の所定幅の検出位置が定義され、この定義された検出位置における電流の大きさデータ群Ixy(n)の中から最大電流値Imaxが定義される。そして、コントローラ90は、ステップS248にて前記最大電流値Imaxが設定値以上であるかを判定する。なお、この設定値は、太陽電池セルSCが存在するならば、太陽電池セルSCが異常であっても、そのバスバー電極207位置にて検出される比較的小さな予め決められた電流値である。
そして、前記位置にバスバー電極207が存在して、前記最大電流値Imaxが設定値以上であれば、コントローラ90は、ステップS248にて「Yes」と判定してステップS250に進む。これは、図15のY軸方向の5列目又は6列目のように、X軸方向の最後のバスバー電極207が検出されていない場合の処理である。ステップS250においては、変数sに等しい電極番号gが割当てられた電流の大きさデータ群Ixy(n)の変数nに所定値ceをそれぞれ加算した電流の大きさデータ群Ixy(n+ce)を新たに定義し、新たに定義した電流の大きさデータ群Ixy(n+ce)に変数s+1に等しい電極番号gを割当て、検出位置nの中央値Aven(g)を計算する。これにより、検出されていなかったX軸方向の図示右側のバスバー電極207に対応した電流の大きさデータ群Ixy(n)が補充されるとともに、その中央値Aven(g)も計算される。そして、コントローラ90は、前記ステップS236以降の処理を実行するが、図15のX方向の5列目のように、X軸方向の最後の1つのバスバー電極207が検出されていなかった場合には、ステップS236の処理によって増加された変数sはX軸方向の太陽電池セルSCの数smaxを示すことになるので、ステップS238にて「No」と判定されるとともに、ステップS244にて「Yes」と判定されて図9FのステップS260以降に進められる。
しかし、図15のX方向の6列目のように、X軸方向の最後の2つのバスバー電極207が検出されていなかった場合には、ステップS244にてふたたび「No」と判定されて、前述したステップS246〜S250からなる処理が実行されて、検出されていなかったX軸方向の図示右側のバスバー電極207に対応した電流の大きさデータ群Ixy(n)がさらに補充されるとともに、その中央値Aven(g)も計算される。その結果、X軸方向の全てのバスバー電極207に対応した電流の大きさデータ群Ixy(n)が補充される。さらに、X軸方向の最後の3つ以上のバスバー電極207が検出されていなかった場合にも、前述したステップS246〜S250からなる処理が実行されて、検出されていなかったX軸方向の図示右側のバスバー電極207に対応した電流の大きさデータ群Ixy(n)が補充されるとともに、その中央値Aven(g)も計算される。
次に、図15のY軸方向の7列目及び8列目のように、X軸方向の最初(図示左側)のバスバー電極207が検出されていない場合について説明する。この場合には、前記ステップS246の処理によって計算されるX軸方向位置(すなわち検出位置(Aven(s)+ce−a)〜(Aven(s)+ce+a)には、太陽電池セルSCは存在しない。したがって、この場合には、コントローラ90は、ステップS248にて「No」と判定して、ステップS252に進む。ステップS252においては、コントローラ90は、最初に検出されたバスバー電極207(図15のY軸方向の7列目及び8列目の最も左側のバスバー電極)に関する中央値Aven(1)から前記所定値ce(太陽電池セルSCのX軸方向の検出位置数)を減算した値を中心値Aven(1)−ceとし、中心値Aven(1)−ceから値aを減算したX軸方向の検出位置Aven(1)−ce−aから前記中心値Aven(1)−ceに値aを加算したX軸方向の検出位置Aven(1)−ce+aまでの検出位置n(=Aven(1)−ce−a〜Aven(1)−ce+a)によって指定される電流の大きさデータ群Ixy(n)の中から最大値を抽出して最大電流値Imaxとする。なお、この場合も、値aは、5〜数10程度の予め決められた値である。これにより、X軸方向の図示最も左側の検出されたバスバー電極207の中央値Aven(1)よりもさらに値ce(バスバー電極207の長さ分に対応)だけ左側の所定幅の検出位置が定義され、この定義された検出位置における電流の大きさデータ群Ixy(n)の中から最大電流値Imaxが定義される。そして、コントローラ90は、ステップS254にて前記最大電流値Imaxが設定値以上であるかを判定する。なお、この場合も、設定値は、太陽電池セルSCが存在するならば、太陽電池セルSCが異常であっても、そのバスバー電極207位置にて検出される比較的小さな予め決められた電流値である。
そして、前記位置にバスバー電極207が存在して、前記最大電流値Imaxが設定値以上であれば、コントローラ90は、ステップS254にて「Yes」と判定してステップS256に進む。これは、図15のY軸方向の7列目又は8列目のように、X軸方向の最初のバスバー電極207が検出されていない場合の処理である。ステップS256にて、値「1」以上の電極番号gが割当てられた電流の大きさデータ群Ixy(n)の電極番号gをそれぞれ電極番号g+1に変更、すなわち電極番号gが割当てられた電流の大きさデータ群Ixy(n)の電極番号gを「1」ずつ増加させる。
次に、コントローラ90は、ステップS258にて値「2」に等しい電極番号gが割当てられた電流の大きさデータ群Ixy(n)の変数n(検出位置を示す値)から値ceをそれぞれ減算した値n−ceに対応した電流の大きさデータ群Ixy(n―ce)を新たに定義し、定義した電流の大きさデータ群Ixy(n+ce)に値「1」に等しい電極番号gを割当て、変数nの中央値Aven(g)を計算する。これにより、図15のY軸方向の7列目及び8列目でX軸方向の最初のバスバー電極207に対応した電流の大きさデータ群Ixy(n)が補充されるとともに、その中央値Aven(g)も計算され、電極番号gも順番にX軸方向の全ての電流の大きさデータ群Ixy(n)に割当てられる。
そして、コントローラ90は、図9EのステップS236以降の処理を実行するが、図15のY軸方向の7列目のように、X軸方向の最初の1つのバスバー電極207のみが検出されていなかった場合には、ステップS236の処理によって増加された変数sは電極番号gはX軸方向の太陽電池セルSCの数smaxを示すことになるので、ステップS238にて「No」と判定されるとともに、ステップS244にて「Yes」と判定されて図9FのステップS260以降に進められる。
しかし、図15のY軸方向の8列目のように、X軸方向の最初の2つのバスバー電極207が検出されていなかった場合には、ステップS244,S248にてふたたび「No」と判定されて、前述したステップS252〜S258からなる処理が実行されて、検出されていなかったX軸方向の前方(図15の左側)のバスバー電極207に対応した電流の大きさデータ群Ixy(n)が補充されるとともに、その中央値Aven(g)も計算される。その結果、全てのバスバー電極207に対応した電流の大きさデータ群Ixy(n)が補充される。さらに、X軸方向の最初の3つ以上のバスバー電極207が検出されていなかった場合にも、前述したステップS252〜S258からなる処理が実行されて、検出されていなかったX軸方向の前方のバスバー電極207に対応した電流の大きさデータ群Ixy(n)が補充されるとともに、その中央値Aven(g)も計算される。
また、ステップS248において「No」と判定されるとともに、ステップS254においても「No」と判定された場合には、コントローラ90は、図9CのステップS168以降に進む。これは、バスバー電極207に対応した全ての電流の大きさデータ群Ixy(n)の補充ができない場合には、太陽電池検査装置に異常が発生していて、太陽電池SBの異常を的確に検出できない可能性が高いためである。そして、この場合には、上述した図9CのステップS168,S170の処理により、電流の大きさデータIxy(n)、電流の方向データθixy(n)、X軸方向の電流の大きさデータIx(n)及びY軸方向の電流の大きさデータIy(n)(n=1〜nmax)から表示用画像データが生成されて、表示装置92に画像データによって表された画像が表示されるとともに、「取出電極101,102の合否判定は不能」である旨が表示装置92に表示される。これにより、バスバー電極207に関する全ての電流の大きさデータ群Ixy(n)の補充ができない場合でも、作業者は、表示装置92による表示状態から、第2タイプの太陽電池SBの異常を判断することができる場合もある。
次に、図9DのステップS222及び図9EのステップS244にて「Yes」と判定された場合、すなわちバスバー電極207に関する全ての電流の大きさデータ群Ixy(n)の補充ができた場合の処理について説明する。
この場合、コントローラ90は、ステップS260にて、電極番号g(=1〜smax)が割当てられている全ての電流の大きさデータ群Ixy(n)のデータであって、各大きさデータ群Ixy(n)の両端部に対応する大きさデータ群Ixy(n)を除いた全ての大きさデータ群Ixy(n)のトータル平均値Iavetxを計算する。この処理により、図13において、X軸方向に配列された全てのバスバー電極207の各両端部を除いて各バスバー電極207に流れる電流の検出位置ごとのX軸方向の電流のトータル平均値Iavetxが計算される。各バスバー電極207の両端部の電流の大きさデータIxy(n)を除く理由は、この両端部ではX−Y平面内の電流成分が安定しないことがあるためで、両端部の長さとしてはバスバー電極207の全長の数パーセントから20パーセント程度である。
次に、コントローラ90は、ステップS262にて、電極番号gを指定するための変数sを「1」に初期設定して、ステップS264にて、変数sに等しい電極番号gが割当てられた電流の大きさデータ群Ixy(n)から、前記ステップS260の場合と同様に両端部を除いた電流の大きさデータ群Ixy(n)を抽出する。そして、ステップS266にて、前記抽出した電流の大きさデータ群Ixy(n)を用いて次のような計算を実行する。まず、変数sに等しい電極番号gが割当てられた1つのバスバー電極207に流れる平均電流として、前記抽出した電流の大きさデータ群Ixy(n)の平均値A(s)を計算する。この平均値A(s)は、RAM又は記憶装置に記憶される。
次に、前記ステップS266にて、前記計算した平均値A(s)を前記ステップS260の処理により計算したトータル平均値Iavetxで除算して、除算結果A(s)/Iavetxを1つのバスバー電極207に流れる電流レベルを評価するための評価データB(s)としてRAM又は記憶装置に記憶しておく。また、前記抽出した電流の大きさデータ群Ixy(n)の最大値から最小値を減算して、減算結果を前記計算した平均値A(s)で除算して、除算結果(最大値−最小値)/A(s)を、1つのバスバー電極207に流れる電流レベルの変動を評価するための評価データC(s)としてRAM又は記憶装置に記憶しておく。また、前記抽出した電流の大きさデータ群Ixy(n)の標準偏差σを前記計算した平均値A(s)で除算して、除算結果σ/A(s)を、1つのバスバー電極207に流れる電流レベルの変動を評価するための評価データD(s)としてRAM又は記憶装置に記憶しておく。
前記ステップS266の処理後、コントローラ90は、ステップS268にて、評価データB(s),C(s),D(s)のうちのいずれかが所定の許容値よりも大きいか否かを判定する。なお、前記所定の許容値は、評価データB(s),C(s),D(s)ごとにそれぞれ異なる。評価データB(s),C(s),D(s)のうちのいずれかが所定の許容値よりも大きければ、コントローラ90は、ステップS268にて「Yes」と判定して、ステップS270にてエラーデータEr(s)を“1”に設定して、ステップS272に進む。一方、全ての評価データB(s),C(s),D(s)がそれぞれ各許容値以下であれば、コントローラ90は、ステップS268にて「No」と判定して、ステップS272に進む。これにより、変数sによって指定されるバスバー電極207に関する異常が発生して、図17〜図19を用いて前述したように、X軸方向の電流の大きさデータ群Ixy(n)の変動が大きければ、すなわち評価データB(s),C(s),D(s)が大きくなった場合には、変数sによって指定されるエラーデータEr(s)が“1”に設定される。この“1”に設定されたエラーデータEr(s)は、RAM又は記憶装置に記憶される。
ステップS272においては、変数sが前記入力したX軸方向の太陽電池セルSCの数smaxに達したか否かを判定する(図13参照)。変数sがX軸方向の太陽電池セルSCの数smaxに達していなければ、コントローラ90は、ステップS272にて「No」と判定し、ステップS274にて変数sに「1」を加算して、ステップS264に戻る。そして、コントローラ90は、前述したステップS264〜S270の処理により、図13の次のバスバー電極207に関して、平均値A(s)及び評価データB(s),C(s),D(s)を計算するとともに、これらの評価データB(s),C(s)
,D(s)を評価し、前記バスバー電極207に関して異常が発生していれば、エラーデータEr(s)を“1”に設定してRAM又は記憶装置に記憶する。
,D(s)を評価し、前記バスバー電極207に関して異常が発生していれば、エラーデータEr(s)を“1”に設定してRAM又は記憶装置に記憶する。
そして、これらのステップS264〜S270の処理を全てのバスバー電極207に関して実行した後、コントローラ90は、ステップS272にて「Yes」すなわち変数sがX軸方向の太陽電池セルSCの数smaxに達していると判定して、ステップS276に進む。
ステップS276においては、コントローラ90は、上記図9CのステップS158の処理と同様に、前記RAM又は記憶装置に記憶した電流の大きさデータIxy(n)及びX軸方向の電流の大きさデータIx(n)を用いて、電極番号gによって指定される太陽電池セルSCごとに、表示用画像データを生成して、表示装置92に画像データによって表された画像を表示する。
前記ステップS276の処理後、コントローラ90は、上述した図9CのステップS160〜S166の処理を実行して、ステップS172にてこの評価プログラムの実行を終了する。これらのステップS160〜S166の処理により、エラーデータEr(s)(s=1〜smax)の中に“1”を示すエラーデータが存在しなければ、表示装置92に「合格」を表示する。また、 “1”を示すエラーデータEr(s)が存在する場合には、表示装置92に「不合格」を表示するとともに、変数sによって指定されるバスバー電極207を欠陥ありとして表示する。これによれば、作業者は、表示装置92の表示状態から、第2タイプの太陽電池SBの異常を確実かつ容易に認識できる。
また、この第2タイプの太陽電池SBの場合も、上述した第1タイプの太陽電池SBの場合と同様に、X軸方向に一列に配置された複数のバスバー電極207に関する異常検出が終了したら、作業者は、入力装置91を操作することにより、コントローラ90を介してY方向フィードモータ制御回路75に指示して、磁気センサ10がX軸方向に延設されたY軸方向の隣のバスバー電極207に対向する位置に来るように、Y方向モータ44を作動させる。そして、コントローラ90に、図8のデータ取得プログラム及び図9A〜図9Aの評価プログラムを上述したように実行させて、前記バスバー電極207のY軸方向の隣のバスバー電極207に関する異常を検出する。そして、全てのバスバー電極207に関する異常検出の終了をもって第2タイプの太陽電池SBの検査の終了とする。
上記作動説明からも理解できるように、第2タイプの太陽電池(結晶系太陽電池)においては、バスバー電極207又はその近傍の位置において、バスバー電極207の延設方向であるX軸方向に流れる電流の大きさIxy(X軸方向の電流Ixにほぼ等しい)を検出するようにしたので、結晶系太陽電池の場合によくあるように、太陽電池セルSC内には単位セルの直列接続はなく、太陽電池セルSC間を直列接続した太陽電池SBにおけるバスバー電極207などの接続不良を精度よく検出できる。さらに、前記検出された電流Ixyの大きさの変動が大きい部分の変動量を表す特性値すなわち評価値B(s),C(s),D(s)を計算するようにしたので、前記電極の接続不良の自動検出できるようになる。
さらに、上記のような太陽電池検査装置においては、支持部材31に取付けられた発光素子59がステージ20上に載置された太陽電池SBの支持部材31と対向する領域に光を照射する。したがって、支持部材31、移動部材32、磁気センサ10などが発電のために光を照射する発光素子60と太陽電池SBと間に位置しても、支持部材31、移動部材32、磁気センサ10などによる影が太陽電池SB上に形成されたり、太陽電池SBの表面には明度に大きな差がある明るい部分と暗い部分とが生じたりすることがなくなる。その結果、この太陽電池検査装置によれば、太陽電池SBには電流が適切に流れ、測定した磁界に基づいて太陽電池の電極の接続不良を精度よく検出できるようになる。
また、上記のような太陽電池検査装置においては、支持部材31に取付けた遮光カーテン51A,51Bは、ステージ20上に載置された太陽電池SBの支持部材31、移動部材32、磁気センサ10などと対向する領域に、発光素子60による光が照射されないように光を遮断する。その結果、支持部材31、移動部材32、磁気センサ10などによる発光素子60の光の遮断による影響が全くなくなり、太陽電池SBの表面には明度に差がある明るい部分と暗い部分とが全くなくなる。したがって、測定した磁界に基づいて太陽電池SBの電極の接続不良をさらに精度よく検出できるようになった。
また、上記太陽電池検査装置においては、発光素子60は、発光信号供給回路81及び第1光源駆動回路82の駆動制御により、ステージ20上に載置した太陽電池SBの表面全体にわたって、所定周期で強度が変化する光を均等に照射する。そして、磁気センサ10が太陽電池SBに発電によって流れる電流により発生する磁界を検出し、センサ信号取出回路83及びロックインアンプ84は、太陽電池SBに発電によって流れる電流により発生する磁界であって、前記所定周期と等しい周期で強度が変化する磁界を検出する。したがって、外乱光や、外部磁界が存在しても、コストを抑えたうえで、これらの影響を受けずに、太陽電池SBに発生する磁界を検出することができる。
d.変形例
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変形も可能である。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変形も可能である。
上記実施形態では、遮光カーテン51A,51Bによって太陽電池SBの測定箇所に光が照射されないように遮光した。しかし、前記遮光を行うことができ、かつ太陽電池SBと接触させても太陽電池SBに影響を与えないものであれば、どのような遮光部材を用いてもよい。この場合、例えば、先端が柔軟性のある絶縁物で形成された遮光板や、遮光ガラスをスライドさせて遮光を行うようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、磁気センサ10を移動部材32に固定し、移動部材32をX軸方向に延設された支持部材31にX軸方向に変位可能に支持させて、移動部材32をX方向モータ34でX軸方向の移動させることにより、磁気センサ10を太陽電池SBに対してX軸方向に走査するようにした。また、支持部材31をY軸方向に延設された支持部材41,42にY軸方向に変位可能に支持させて、支持部材31をY方向モータ44でY軸方向の移動させることにより、磁気センサ10を太陽電池SBに対してY軸方向にも走査するようにした。しかし、これに代えて、支持部材31の延設方向(X方向)に沿って複数の磁気センサをそれぞれ取付けて、太陽電池SBに流れる電流によって発生する磁界の検出において、磁気センサをX軸方向に移動させることなく、X軸方向に沿った各位置の磁界を複数の磁気センサによってそれぞれ検出するようにしてもよい。この場合も、Y軸方向の走査に関しては、支持部材31をY方向モータ44でY軸方向に移動させる。
また、上記実施形態においては、1つの磁気センサ10を移動させて磁界測定を行ったが、複数の磁気センサを取出電極101,102及びバスバー電極207の延設方向の直角方向(Y軸方向)に配置し、複数のラインで同時に磁界測定を行うようにしてもよい。これによれば、複数のラインのうちで、最適なラインの測定結果を選択して検査を行うことができるようになり、測定精度がさらに向上する。
また、上記実施形態においては、Y軸方向の測定位置(取出電極102,102又はバスバー電極207がX軸方向に延設されているY軸方向位置)を定めて、磁気センサ10の位置を調整して磁界の測定を行った。しかし、これに代えて、支持部材31、移動部材32及び磁気センサ10をY軸方向に沿って複数組設けて、Y軸方向の複数の測定位置を同時測定できるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、図9AのステップS104〜S110の処理より、磁気センサ10の検出位置のX方向磁気検出信号の極大値Hx、X方向磁気検出信号の参照信号に対する位相シフト量θx、Y方向磁気検出信号の極大値Hy、Y方向磁気検出信号の参照信号に対する位相シフト量θy、磁界の強さHxy及び磁界の向きθxyを計算して、ステップS112,S114の処理により、磁気センサ10の検出位置の電流の大きさIxy(n)、前記電流の方向θixy(n)、X軸方向の電流の大きさIx(n)及びY軸方向の電流の大きさIy(n)を計算した。そして、第1タイプの太陽電池SBにおいては、ステップS146,S148の処理により、Y軸方向の電流の大きさIy(n)を用いて、取出電極101,102に関する評価データB(s),C(s)を計算して太陽電池セルSCの取出電極101,102と内部電極106,108との接続不良を評価するようにした。しかし、電流の大きさIyは磁界の強さHyに比例しており、電流の方向は磁界の方向とπ/2異なるだけである。したがって、磁界に関する情報を電流に関する情報に変換しなくても、磁気センサ10の各検出位置の磁界の強さHxyから下記式11により求めたX軸方向の磁界の大きさHx’を、上記実施形態のY軸方向の電流の大きさIy(n)に代えて用いることにより、太陽電池セルSCの取出電極101,102と内部電極106,108との接続不良に関する評価データB(s),C(s)を計算して前記接続不良を評価するようにしてもよい。
Hx’=Hxy・cosθxy …式11
Hx’=Hxy・cosθxy …式11
また、第2タイプの太陽電池SBにおいては、ステップS260,S264,S266の処理により、電流の大きさIxyを用いて、バスバー電極207に流れる電流の評価のための評価データB(s),C(s),D(s)を計算した。しかし、上述のように、バスバー電極207位置を流れる電流の向きはほぼX方向であるので、前記電流の大きさIxy(n)に代えて、X軸方向の電流の大きさIx(n)の絶対値を用いるようにしてもよい。さらに、電流の大きさIxyは磁界の大きさHxyに比例しており、電流の方向θixyは磁界の方向θxyとπ/2異なるだけである。したがって、磁界に関する情報を電流に関する情報に変換しなくても、磁気センサ10の各検出位置の磁界の強さHxy及び磁界の強さHxyから下記式12により求めたY軸方向磁界の大きさHy’の絶対値を、上記実施形態及び変形例の電流の大きさIxy(n)及びX軸方向の電流の大きさIx(n)の絶対値にそれぞれ代えて用いることにより、各太陽電池セルSCに関する評価データを計算して太陽電池パネルSPを評価するようにしてもよい。
Hy’=Hxy・sinθxy …式12
Hy’=Hxy・sinθxy …式12
上記実施形態においては、第2タイプの太陽電池SBの検査においては、バスバー電極207の非検出時におけるバスバー電極207の補充を行うようにしたが、第1タイプの太陽電池SBの検査においては、取出電極101,102の非検出時の補充については考慮しなかった。これは、取出電極101,102の検出においては、検出されたY軸方向の電流の大きさIy(n)に起因して取出電極101,102が検出されないとことはほとんどなく、それ以外の特別な理由による場合が多いためである。しかしながら、この第1タイプの太陽電池SBの検査においても、第2タイプの太陽電池SBの検査におけるバスバー電極207の補充と同様に、図9BのステップS142にて「No」と判定されたとき、すなわちX軸方向の全ての取出電極101,102が検出されないとき、図9CのステップS168の処理を実行する前に、図9EのステップS230〜S258の処理に相当する処理を実行して、取出電極101,102の補充処理を実行するようにしてもよい。
また、コントローラ90は、判定まで行わなくて、評価データB(s),C(s),D(s)を計算して表示装置92に表示し、作業者に取出電極101,102と内部電極106,108との接続不良及びバスバー電極207等の接続不良の有無を判定させるようにしてもよい。さらに、コントローラ90は、評価データB(s),C(s),D(s)の計算も行わずに、第1タイプの太陽電池SBにおいては、取出電極101,102の位置又はその近傍位置のY軸方向の電流の大きさIy(n)の分布を画像、又はX軸方向の磁界Hx’を表示装置92に表示し、作業者はこの表示を見て取出電極101,102と内部電極106,108との接続不良の有無を判定するようにしてもよい。また、第2タイプの太陽電池SBにおいては、バスバー電極207の位置又はその近傍位置の電流の大きさIxy(n)、X軸方向の電流の大きさIx(n)、磁界の強さHxy又はY方向の磁界の強さHy’を表示装置92に表示し、作業者はこの表示を見てバスバー電極207などの接続不良の有無を判定するようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、複数の発光素子(LED)60をマトリクス状に配置した光源を利用したが、太陽電池SB又は太陽電池セルSCをセットするステージ20上の光量が均一になるならば、どのような光源でもよく、蛍光灯、ランプ等の光源でもよい。また、発光素子59に関しても、蛍光灯、ランプ等の光源でもよい。
また、上記実施形態では、複数の太陽電池セルSCを有する太陽電池SBを検査するようにした。しかし、本発明は、これに代えて、太陽電池セルSCを個々に検査する検査装置にも適用できる。
また、上記実施形態及び変形例では、磁気センサとして磁気抵抗素子(MR素子)を利用したが、これに代えて、ホール素子、磁気インピーダンス素子効果センサ、フラックスゲート、超伝導量子干渉素子などを利用するようにしてもよい。
10…磁気センサ、20…ステージ、21…バキュームポンプ、30…X方向移動機構、31…支持部材、32…移動部材、34…X方向モータ、40…Y方向移動機構、41,42…支持部材、44…Y方向モータ、59…発光素子、51A,51B…遮光カーテン、52…カーテン用モータ、55…巻取りローラ、60…発光素子、81…発光信号供給回路、83…センサ信号取出回路、84…ロックインアンプ、90…コントローラ、91…入力装置、92…表示装置、100…基板、101,102…取出電極、103…発電セル、111,112,113…接続線、200…基板、201…裏面電極、207…バスバー電極、208,211,212…接続線
Claims (9)
- 太陽電池を載置するためのステージと、
前記ステージに対向して配置されて、前記ステージ上に載置された太陽電池に対して発電のために光を照射する第1光照射手段と、
前記第1光照射手段の光の照射による発電に基づいて前記太陽電池に流れる電流により発生される磁界を検出する磁気検出手段と、
前記ステージと前記第1光照射手段との間に配置されて、前記磁気検出手段を前記ステージに対向させて支持する支持部材とを備えた太陽電池検査装置において、
前記支持部材に取付けられて、前記ステージ上に載置された太陽電池の前記支持部材と対向する領域に光を照射する第2光照射手段を設けたことを特徴とする太陽電池検査装置。 - さらに、前記支持部材に取付けられて、前記ステージ上に載置された太陽電池の前記支持部材と対向する領域に、前記第1光照射手段による光が照射されないように光を遮断する遮光部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載した太陽電池検査装置。
- 前記支持部材は、長尺状に形成され、かつ
前記磁気検出手段は、前記支持部材にその長手方向に移動可能に支持されている請求項1又は2に記載した太陽電池検査装置。 - 前記支持部材は、長尺状に形成され、かつ
前記磁気検出手段は、前記支持部材の長手方向に配置された複数の磁気センサで構成されている請求項1又は2に記載した太陽電池検査装置。 - さらに、前記磁気検出手段によって検出された磁界を表す磁界信号に基づいて、太陽電池の電極又はその近傍の位置における前記電極の延設方向の磁界の強さ又は前記延設方向と直交する方向の電流の大きさを検出する検出手段とを設けたことを特徴とする請求項1乃至4のうちのいずれか一つに記載の太陽電池検査装置。
- さらに、前記検出された磁界の強さ又は電流の大きさの変動が大きい部分の変動量を表す特性値を計算する変動量特性値計算手段を設けたことを特徴とする請求項5に記載した太陽電池検査装置。
- さらに、前記磁気検出手段によって検出された磁界を表す磁界信号に基づいて、太陽電池の電極又はその近傍の位置における前記電極の延設方向の電流の大きさ又は前記延設方向と直交する方向の磁界の強さを検出する検出手段とを設けたことを特徴とする請求項1乃至4のうちのいずれか一つに記載の太陽電池検査装置。
- さらに、前記検出された電流の大きさ又は磁界の強さの変動量を表す特性値を計算する変動量特性値計算手段を設けたことを特徴とする請求項7に記載した太陽電池検査装置。
- 前記第1光照射手段は、太陽電池に所定周期で強度が変化する光を照射し、
さらに、前記磁気検出手段によって検出される磁界を表す磁界信号のうちで、前記所定周期で変化する磁界信号を取出して前記検出手段に供給する周期信号取出手段を設けたことを特徴とする請求項5乃至7のうちのいずれか1つに記載した太陽電池検査装置。
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