以下、本発明の一実施形態に係る電流分布測定装置について図面を用いて説明する。図1は、この電流分布測定装置の全体構成図である。電流分布測定装置は、太陽電池セルSCを載置するためのステージ10を有する。
ステージ10は、図2(A)の平面図及び図2(B)の断面図にも示すように、方形状の枠体11を有する。枠体11は、中央部に方形状の貫通窓11aが形成され、貫通窓11aの外側上面には所定幅を有する方形状の段差部11bが形成されている。段差部11b上には、金属製の導電材料で形成された複数の電極端子12(本実施形態では、M個の電極端子12)が所定の間隔をおいて貫通窓11aの外側に沿って方形状に配置されている。そして、複数の電極端子12は、それぞれ接続線12aを介して外部の回路に接続されるようになっている。また、枠体11における段差部11bの外側部分11cにも、電極13が設けられている。電極13には、後述する太陽電池セルSCの複数のバイパー電極27に接続した複数の接続線28が複数のねじ13aによってそれぞれ接続固定されるようになっている。また、電極13は、共通に接続され図示しない接続線を介して外部の回路に接続されるようになっている。これらの複数の電極端子12と電極13とが、一対の正負の電極をそれぞれ構成する。
このように構成したステージ10には、太陽電池セルSCが載置されるようになっている。太陽電池セルSCは、図5の平面図に示されるように、平板状かつ方形状に形成され、ステージ10の段差部11bに載置される。太陽電池セルには様々な構造があるが、この太陽電池セルSCは、図6の拡大断面図に示すように、裏面電極21、p+形層22、p形層23、n形層24及び反射防止膜25を積層して構成されている。また、太陽電池セルSCは、平板状かつ長尺状に形成され等間隔で横方向に配列された複数のグリッド電極(受光面電極)26を備え、グリッド電極26の下端面はn形層23に接続されて上端面を上方に突出させている。複数のグリッド電極26の上端面には、棒状に形成した複数のバイパー電極27がそれらの下面にて接続されている。そして、太陽電池セルSCをステージ10上にセットした状態では、裏面電極21は複数の電極端子12に接触する。一方、複数のバイパー電極27は、複数のねじ13aによってそれぞれ固定される複数の接続線28を介して、電極13にそれぞれ接続される。
枠体11の貫通窓11aの下方には、方形状の支持台31が配置されている。支持台31の上面には、複数の磁気センサ32(本実施形態では、N個の磁気センサであり、以降、磁気センサ32−1,32−2・・32−Nという)がマトリクス状に配置されている。支持台31は図示しない調整機構によって上下方向に位置調整可能であり、磁気センサ32−1,32−2・・32−Nの高さが調整されるようになっている。
この電流分布測定装置は、さらに、通電信号供給回路41、M個の通電回路42−1,42−2・・・42−M、N個のセンサ信号取出回路43−1,43−2・・・43−N、信号選択回路44、ロックインアンプ45及びコントローラ50を備えている。
通電信号供給回路41は、正弦波発振器及び矩形波変換回路を含み、コントローラ50によって作動制御されて、正弦波発振器によって発振される正弦波信号を通電信号として通電回路42−1,42−2・・・42−Mに供給する。なお、通電信号は、「0」を基準に正負に変化する信号であり、その周波数は、例えば数10ヘルツから数100ヘルツ程度の範囲内にある。通電信号供給回路41は、前記正弦波信号からなる通電信号を矩形波変換回路による変換により、前記通電信号と同期して「0」を中心として正負に変化する矩形波信号をそれぞれ生成して、参照信号としてロックインアンプ45に出力する。
通電回路42−1,42−2・・・42−Mも、コントローラ50によって作動制御されて、前記供給された通電信号に基づいて電極端子12,13間を通電制御する。この場合、通電回路42−1,42−2・・・42−Mは、通電信号供給回路41から供給される「0」を基準に正負に変化する正弦波信号に正のオフセット電圧を加算して、前記オフセット電圧を中心に正弦波状に変化して常に正の範囲内で変化する通電信号に変換して、ステージ10のM個の電極端子12に正側電圧としてそれぞれ供給する。一方、通電回路42−1,42−2・・・42−Mの接地電圧は、ステージ10の電極13に供給される。これにより、N個の電極端子12を介して、太陽電池セルSCのp+形層22及びp形層23からn形層24に電流が流れる。
次に、磁気センサ32−1,32−2・・32−Nについて説明しておく。磁気センサ32−1,32−2・・32−Nのうちの一つの磁気センサ32−n(n=1〜N)は、図3に示すように、X方向の磁界を検出するX方向磁気センサ32Aと、Y方向の磁界を検出するY方向磁気センサ32Bとを備えている。X方向磁気センサ32Aは、抵抗r11,r12,r13及び磁気抵抗素子MR1からなるブリッジ回路で構成されており、抵抗r11,r13の接続点と、抵抗r12及び磁気抵抗素子MR1の接続点との間に、センサ信号取出回路43−n(n=1〜N)の後述する定電圧供給回路43aから電圧+V,−Vが印加されるようになっている。また、X方向磁気センサ32Aにおいては、抵抗r13及び磁気抵抗素子MR1の接続点と、抵抗r11,r12間の接続点との間の電圧をX方向磁気検出信号として出力する。抵抗r11,r12,r13の値は同じであり、磁界の強さが「0」であるときの磁気抵抗素子MR1の抵抗値に等しい。
Y方向磁気センサ32Bは、抵抗r21,r22,r23及び磁気抵抗素子MR2からなるブリッジ回路で構成されており、抵抗r21,r22の接続点と、抵抗r23及び磁気抵抗素子MR2の接続点との間に、センサ信号取出回路43−nの後述する定電圧供給回路43bから電圧+V,−Vが印加されるようになっている。また、Y方向磁気センサ32Bにおいては、抵抗r23及び磁気抵抗素子MR2の接続点と、抵抗r21,r22間の接続点との間の電圧をY方向磁気検出信号として出力する。抵抗r21,r22,r23の値は同じであり、磁界の強さが「0」であるときの磁気抵抗素子MR2の抵抗値に等しい。
センサ信号取出回路43−1,43−2・・・43−Nは、定電圧供給回路43a,43b及び増幅器43c,43dをそれぞれ備えている。図3には、センサ信号取出回路43−1,43−2・・・43−Nのうちの一つのセンサ信号取出回路43−n(n=1〜N)を代表して示している。定電圧供給回路43a,43bは、コントローラ50からの指示により、X方向磁気センサ32A及びY方向磁気センサ32Bに対して、定電圧+V,−Vを供給する。増幅器43c、43dは、X方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号をそれぞれ増幅して信号選択回路44へ出力する。信号選択回路44は、コントローラ50によって制御されて、センサ信号取出回路43−1,43−2・・・43−Nからそれぞれ出力されるN組のX方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号を一組ずつ選択してロックインアンプ45へ出力する。
ロックインアンプ45は、図4に詳細に示すように、磁気センサ32−1,32−2・・・32−NのX方向磁気センサ32Aから増幅器43c及び信号選択回路44を介して供給されるX方向磁気検出信号を入力するハイパスフィルタ45aと、磁気センサ32−1,32−2・・・32−NのY方向磁気センサ32Bから増幅器43d及び信号選択回路44を介して供給されるY方向磁気検出信号を入力するハイパスフィルタ45bとを備えている。ハイパスフィルタ45a,45bは、X方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号に含まれる、磁界の強さに比例した信号成分以外の不要な成分を取り除くとともに、信号をグランドレベルを中心に変化するようにする。
ハイパスフィルタ45aの出力は、増幅器45cを介して位相検波回路45d,45eに供給される。位相検波回路45d,45eは、それぞれ乗算器によって構成されている。位相検波回路45dは、ハイパスフィルタ45a及び増幅器45cを介して供給されるX方向磁気検出信号に、通電信号供給回路41からの参照信号を乗算してローパスフィルタ45fに出力する。位相検波回路45eは、ハイパスフィルタ45a及び増幅器45cを介して供給されるX方向磁気検出信号に、通電信号供給回路41からの参照信号を位相シフト回路45gで90度位相を遅らせた遅延参照信号を乗算してローパスフィルタ45hに出力する。これにより、ローパスフィルタ45fにはX方向磁気検出信号の通電信号(参照信号)と同期した成分が供給され、ローパスフィルタ45fは供給された成分信号をローパスフィルタ処理してX方向磁気検出信号の通電信号と同期した成分の大きさを表す信号を出力する。ローパスフィルタ45hにはX方向磁気検出信号の通電信号よりも90度位相を遅らせた信号(遅延参照信号)と同期した成分が供給され、ローパスフィルタ45hは供給された成分信号をローパスフィルタ処理してX方向磁気検出信号の通電信号よりも90度位相を遅らせた信号と同期した成分の大きさを表す信号を出力する。
ハイパスフィルタ45bの出力は、増幅器45iを介して位相検波回路45j,45kに供給される。位相検波回路45j,45kには、ローパスフィルタ45m,45nが接続されている。位相検波回路45j,45k及びローパスフィルタ45m,45nは、前述した位相検波回路45d,45e及びローパスフィルタ45f,45hと同様に構成されている。これにより、ローパスフィルタ45mにはY方向磁気検出信号の通電信号(参照信号)と同期した成分が供給され、ローパスフィルタ45mは供給された成分信号をローパスフィルタ処理してY方向磁気検出信号の通電信号と同期した成分の大きさを表す信号を出力する。ローパスフィルタ45nにはY方向磁気検出信号の通電信号よりも90度位相を遅らせた信号(遅延参照信号)と同期した成分が供給され、ローパスフィルタ45nは供給された成分信号をローパス処理してY方向磁気検出信号の通電信号よりも90度位相を遅らせた信号と同期した成分の大きさを表す信号を出力する。ローパスフィルタ45f,45h,45m,45nは、A/D変換器45o,45p,45q,45rにそれぞれ接続されている。A/D変換器45o,45p,45q,45rは、所定の時間間隔ごとに、ローパスフィルタ45f,45h,45m,45nからの信号をそれぞれA/D変換してコントローラ50に供給する。
ふたたび図1の説明に戻り、コントローラ50は、CPU、ROM、RAMを備えたマイクロコンピュータと、ハードディスクや不揮発性メモリなどの記憶装置と、入出力インタフェース等から構成される電子制御装置である。コントローラ50は、記憶装置に記憶された図7のデータ取得プログラム及び図8の評価プログラムを実行してこの電流分布測定装置の動作を制御する。コントローラ50には、作業者が各種パラメータや処理等を指示するための入力装置51と、作業者に対して作動状況等を視覚的に知らせるための表示装置52とが接続されている。
次に、上記のように構成した実施形態の動作について説明する。作業者は、図1に示すように、上記のように構成した電流分布測定装置のステージ10上に検査対象となる太陽電池セルSCを載置する。そして、太陽電池セルSCのバイパー電極27に接続された接続線28を電極13に接続する。この状態で、電流分布測定装置の電源が投入され、作業者が入力装置51を操作することにより、太陽電池セルSCの検査の開始をコントローラ50に指示する。この指示に応答して、コントローラ50は、図7のステップS10にてデータ取得プログラムの実行を開始し、ステップS11にて変数nを「1」に初期設定する。変数nは、磁気センサ32−1,32−2・・・32−Nをそれぞれ指定するための変数、言い換えれば太陽電池セルSCのX方向及びY方向の位置を指定するための変数である。
前記ステップS11の処理後、コントローラ50は、ステップS12にて通電信号供給回路12に作動開始を指示する。この指示に応答して、通電信号供給回路41は、正弦波状の通電信号を通電回路42−1,42−2・・・42−Nに供給するとともに、前記通電信号と同期した矩形波状の参照信号をロックインアンプ45に供給し始める。次に、コントローラ50は、ステップS13にて通電回路42−1,42−2・・・42−Mに作動開始を指示する。この指示に応答して、通電回路42−1,42−2・・・42−Mは、前記供給された通電信号に応じて正の範囲内で正弦波状に変化する通電信号をM個の電極端子12にそれぞれ供給して、M個の電極端子12及び電極13を介して太陽電池SCに通電し始める。
次に、コントローラ50は、ステップS14にて、センサ信号取出回路43−1,43−2・・・43−Nに作動開始を指示する。この指示に応答して、センサ信号取出回路43−1,43−2・・・43−N内の各定電圧供給回路43a,43bは、磁気センサ32−1,32−2・・・32−N内の各X方向磁気センサ32A及びY方向磁気センサ32Bにそれぞれ定電圧信号+V,−Vを供給し始める。これにより、磁気センサ32−1,32−2・・・32−N内の各X方向磁気センサ32A及びY方向磁気センサ32BによるX方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号が、センサ信号取出回路43−1,43−2・・・43−N内の各増幅器43c,43dを介して信号選択回路44にそれぞれ供給され始める。
これらのX方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号について説明しておく。通電回路42−1,42−2・・・42−Mによる通電により、太陽電池セルSCの表面には面電流が流れ、太陽電池セルSCの表裏面近傍には、前記面電流による磁界が発生する。そして、磁気センサ32−1,32−2・・・32−N内の各X方向磁気センサ32Aは、X方向の磁界Hの大きさに比例した電圧をX方向磁気検出信号としてそれぞれ出力し始める。また、磁気センサ32−1,32−2・・・32−N内のY方向磁気センサ32Bは、Y方向の磁界Hの大きさに比例した電圧をY方向磁気検出信号としてそれぞれ出力し始める。
ふたたび図7のデータ取得プログラムの説明にもどると、前記ステップS14の処理後、コントローラ50は、ステップS15にて、信号選択回路44に変数nを出力する。信号選択回路44は、センサ信号取出回路43−1,43−2・・・43−Nのうちで変数nによって指定されるセンサ信号取出回路43−nから出力されているX方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号を選択してロックインアンプ45に出力する。この場合、変数nは「1」であるので、ロックインアンプ45には、センサ信号取出回路43−1からのX方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号、すなわち磁気センサ32−1の検出に基づくX方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号が供給されることになる。
ロックインアンプ45においては、入力されたX方向磁気検出信号がハイパスフィルタ45a及び増幅器45cを介して位相検波回路(乗算器)45d,45eにそれぞれ供給されるとともに、入力されたY方向磁気検出信号がハイパスフィルタ45b及び増幅器45iを介して位相検波回路(乗算器)45j,45kにそれぞれ供給される。位相検波回路45d,45jには、通電信号供給回路41からの矩形波状の参照信号が供給されている。また、位相検波回路45e,45kには、前記参照信号の位相を位相シフト回路45gで90度遅らせた遅延参照信号が供給されている。そして、位相検波回路45d,45eは、増幅器45cを介して供給されたX方向磁気検出信号に参照信号及び遅延参照信号をそれぞれ乗算して、乗算した信号をローパスフィルタ45f,45hを介してA/D変換器45o,45pにそれぞれ供給する。位相検波回路45j,45kは、増幅器45cを介して供給されたY方向磁気検出信号に参照信号及び遅延参照信号をそれぞれ乗算して、乗算した信号をローパスフィルタ45m,45nを介してA/D変換器45q,45rにそれぞれ供給する。
この場合、前述のように、ロックインアンプ45には、通電信号供給回路41からの参照信号が供給されているとともに、磁気センサ32−1の検出に基づくX方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号が供給されている。したがって、位相検波回路45d及びローパスフィルタ45fは、通電信号によって発生された正弦波状に変化するX方向の磁界の大きさであって、参照信号(すなわち通電信号)に同期した信号成分の振幅に比例した大きさを表す信号をA/D変換器45oに出力する。位相検波回路45e及びローパスフィルタ45hは、通電信号によって発生された正弦波状に変化するX方向の磁界の大きさであって、参照信号(すなわち通電信号)の位相をπ/2だけ遅らせた信号に同期した信号成分の振幅に比例した大きさを表す信号をA/D変換器45pに出力する。位相検波回路45j及びローパスフィルタ45mは、通電信号によって発生された正弦波状に変化するY方向の磁界の大きさであって、参照信号(すなわち通電信号)に同期した信号成分の振幅に比例した大きさを表す信号をA/D変換器45qに出力する。位相検波回路45k及びローパスフィルタ45nは、通電信号によって発生された正弦波状に変化するY方向の磁界の大きさであって、参照信号(すなわち通電信号)の位相をπ/2だけ遅らせた信号に同期した信号成分の振幅に比例した大きさを表す信号をA/D変換器45rに出力する。そして、A/D変換器45o,45p,45q,45rは、それぞれ供給された信号を所定時間ごとにサンプリングしてA/D変換し、A/D変換したサンプリングデータをコントローラ50に供給する。したがって、コントローラ50には前記各信号成分の所定時間ごとの大きさを表すサンプリングデータが所定時間ごとに供給されるようになる。
前記ステップS15の処理後、コントローラ50は、ステップS16にて、ロックインアンプ45のA/D変換器45o,45p,45q,45rから供給されるサンプリングデータを取込み、ステップS17にて取込んだ各サンプリングデータの数が所定数Kに達したか否かを判定する。この所定数Kは、例えば数個から数十個の各サンプリングデータの数を表す値に設定されている。各サンプリングデータの数が所定数Kに達していなければ、コントローラ50は、ステップS17にて「No」と判定して、ステップS16にてA/D変換器45o,45p,45q,45rから次に出力されるサンプリングデータを取込む。そして、A/D変換器45o,45p,45q,45rから取込んだ各サンプリングデータの数が所定数Kに達すると、コントローラ50は、ステップS17にて「Yes」と判定して、ステップS18以降の処理を実行する。ステップS16にて取込まれたサンプリングデータは、変数nによって指定されるサンプリングデータ群として、RAMに記憶される。
具体的には、A/D変換器45oから取込んだ所定数Kのサンプリングデータ、すなわちX方向磁気検出信号の参照信号と同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのデータは、サンプリングデータ群Sx1(n)としてRAMに記憶される。A/D変換器45pから取込んだ所定数Kのサンプリングデータ、すなわちX方向磁気検出信号の遅延参照信号と同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのデータは、サンプリングデータ群Sx2(n)としてRAMに記憶される。A/D変換器45pから取込んだ所定数Kのサンプリングデータ、すなわちY方向磁気検出信号の参照信号と同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのデータは、サンプリングデータ群Sy1(n)としてRAMに記憶される。A/D変換器45rから取込んだ所定数Kのサンプリングデータ、すなわちY方向磁気検出信号の遅延参照信号と同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのデータは、サンプリングデータ群Sy2(n)としてRAMに記憶される。なお、この場合の変数nは、共に「1」である。
前記ステップS16,S17の処理後、コントローラ50は、ステップS18にて変数nが値Nであるか否かを判定する。変数nは「1」に初期設定されているので、この場合、コントローラ50は、ステップS18にて「No」と判定して、ステップS19にて変数nに「1」を加算して、ステップS15に戻る。ステップS15においては、コントローラ50は、前述した場合と同様に信号選択回路44に変数nを出力する。そして、信号選択回路44は、前述のように変数nによって指定されるセンサ信号取出回路43−nから出力されているX方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号を選択してロックインアンプ45に出力する。この場合、変数nは「2」であるので、ロックインアンプ45には、センサ信号取出回路43−2からのX方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号、すなわち磁気センサ32−2の検出に基づくX方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号が供給されることになる。
この場合も、ロックインアンプ45は、前述した場合と同様に動作して、磁気センサ32−2によって検出されたX方向及びY方向の磁界の大きさであって、参照信号(すなわち通電信号)及び参照信号(すなわち通電信号)の位相をπ/2だけに遅らせた信号にそれぞれ同期した信号成分の振幅に比例した大きさを表す信号を所定時間ごとにサンプリングしてA/D変換し、A/D変換したサンプリングデータをコントローラ50に供給する。前記ステップS15の処理後、コントローラ50は、前記場合と同様に、ステップS16,S17の処理により、K個ずつのサンプリングデータ群Sx1(n),Sx2(n),Sy1(n),Sy2(n)をRAMに記憶する。なお、この場合の変数nは「2」である。そして、変数nが値Nになるまで、前記ステップS15〜S19からなる処理を繰り返し実行する。変数nが値Nになると、コントローラ50は、ステップS18にて「Yes」と判定して、ステップS20以降の処理を実行する。この状態では、サンプリングデータ群Sx1(n),Sx2(n),Sy1(n),Sy2(n)(n=1〜N)がRAMに記憶されている。
コントローラ50は、ステップS20にてセンサ信号取出回路43−1,43−2・・・43−Nに作動停止を指示し、ステップS21にて通電回路42−1,42−2・・・42−Mに作動停止を指示し、ステップS22にて通電信号供給回路41に作動停止を指示して、このデータ取得プログラムの実行を終了する。これらの作動停止の指示により、磁気センサ32−1,32−2・・・32−N、通電信号供給回路41、通電回路42−1,42−2・・・42−M、及びセンサ信号取出回路43−1,43−2・・・43−Nの作動が停止する。
次に、前記データ取得プログラムで取得した所定数Kずつのサンプリングデータ群Sx1(n),Sx2(n),Sy1(n),Sy2(n)(n=1〜N)を用いて、太陽電池セルSCを評価する方法について説明する。この場合、作業者は、入力装置51を操作して、コントローラ50に図8の評価プログラムを実行させる。この評価プログラムの実行はステップS50にて開始され、コントローラ50は、ステップS51にて変数nを「1」に初期設定した後、ステップS52にて、変数nによって指定される所定数Kずつのサンプリングデータ群Sx1(n),Sx2(n),Sy1(n),Sy2(n)の磁界の大きさの各平均値Sx1,Sx2,Sy1,Sy2を計算する。具体的には、各サンプリングデータ群Sx1(n),Sx2(n),Sy1(n),Sy2(n)ごとに、K個のサンプリングデータを加算して値Kで除算する。
次に、コントローラ50は、ステップS53にて、前記計算した平均値Sx1,Sx2を用いた下記式1,2の演算の実行により、X方向磁気検出信号の極大値Hxと、X方向磁気検出信号の参照信号に対する位相シフト量θxとを計算する。
Hx=(Sx12+Sx22)1/2 …式1
θx=tan-1(Sx2/Sx1) …式2
これにより、X方向磁気検出信号としてHx・sin(2πft+θx)が検出されたことになる。なお、fは、通電信号供給回路41から出力される通電信号及び参照信号の周波数に等しい。
次に、コントローラ50は、ステップS54にて、前記計算した平均値Sy1,Sy2を用いた下記式3,4の演算の実行により、Y方向磁気検出信号の極大値Hyと、Y方向磁気検出信号の参照信号に対する位相シフト量θyとを計算する。
Hy=(Sy12+Sy22)1/2 …式3
θy=tan-1(Sy2/Sy1) …式4
これにより、Y方向磁気検出信号としてHy・sin(2πft+θy)が検出されたことになる。
次に、コントローラ50は、ステップS55にて、前記計算したHx,θx,Hy,θyを用いた下記式5,6の演算の実行により、通電電流が最大となるタイミング(前記X方向磁気検出信号Hx・sin(2πft+θx)及び前記Y方向磁気検出信号Hy・sin(2πft+θy)における2πftがπ/2のタイミング)における、検査位置の磁界の強さHxy及び磁界の向きθxyを計算する。この場合、通電電流が最大となるタイミングを採用した理由は、位相シフト量θx,θyは小さく、通電電流が最大となるタイミング近傍で検査位置の磁界の強さHxyが最大値近傍の値になるためである。なお、位相シフト量θx,θyが小さくなく、通電電流が最大となるタイミング近傍で検査位置の磁界の強さHxyが最大値近傍にならない場合には、磁界の強さHxyが最大値近傍になるようなタイミングの角度をπ/2に代えて用いればよい。
Hxy=[{Hx・sin(π/2+θx)}2+{Hy・sin(π/2+θy)}2]1/2 …式5
θxy=tan-1{Hy・sin(π/2+θy)}/{Hx・sin(π/2+θx)} …式6
次に、コントローラ50は、ステップS56にて、太陽電池セルSCに流れる面電流は前記磁界の強さHxyに比例し、かつ方向が磁界の方向θxyと−π/2異なることから、前記計算したHxy,θxyを用いた下記式7,8の演算の実行により、通電電流が最大となるタイミングにおける、太陽電池セルSCの検査位置に流れる面電流の大きさIxy及び方向θixyを計算する。ただし、値Kは、比例定数である。
Ixy=K・Hxy …式7
θixy=θixy−π/2 …式8
そして、このステップS56にて、前記計算された面電流の大きさIxy及び方向θixyは、太陽電池セルSCの検査位置を表す変数nを用いて面電流の大きさデータIxy(n)及び方向データθixy(n)としてRAM又は記憶装置に記憶される。
前記ステップS56の処理後、コントローラ50は、ステップS57,S58の判定処理を実行する。ステップS57においては、前記計算した面電流の大きさIxyと面電流の大きさの基準値Iref(n)との差の絶対値|Ixy−Iref(n)|が、比較値3・DEVi(n)以上であるか否かを判定する。ステップS58においては、前記計算した面電流の向きθixyと面電流の向きの基準値θref(n)との差の絶対値|θixy−θref(n)|が、比較値3・DEVθ(n)以上であるか否かを判定する。
この場合、基準値Iref(n),θref(n)及び比較値3・DEVi(n),3・DEVθ(n)は、次のような方法で事前に用意されて記憶装置に予め記憶されているデータである。まず、良品である複数の太陽電池セルSCに係るサンプリングデータ群Sx1(n),Sx2(n),Sy1(n),Sy2(n)(n=1〜N)を図7に示すようなデータ取得プログラムで取得する。そして、上述した図8の評価プログラムのステップS52〜S56と同様な処理により、検査位置ごとの面電流の大きさIxy(n)(n=1〜N)及び方向θixy(n)(n=1〜N)を計算して記憶装置に記憶しておく。さらに、検査位置ごとに、前記複数の太陽電池セルSCの電流の大きさIxy(n)及び方向θixy(n)の平均値を計算して、これらの計算した平均値を基準値Iref(n),θref(n)(n=1〜N)として記憶装置に記憶しておく。また、検査位置ごとに、前記複数の太陽電池セルSCの電流の大きさIxy(n)及び方向θixy(n)の標準偏差DEVi(n),DEVθ(n)を計算して、計算した標準偏差DEVi(n),DEVθ(n)を3倍した値を比較値3・DEVi(n),3・DEVθ(n)(n=1〜N)として記憶装置に記憶しておく。したがって、前記ステップS57,S58の判定は、検査対象の太陽電池セルSCの検査位置の面電流の大きさIxy及び方向θxyが、良品である太陽電池セルSCの前記検査位置と同一位置の面電流の大きさ及び方向よりも許容値以上に大きく異なっているか否かを判定するものである。
ふたたびステップS57,S58の処理の説明に戻ると、前記絶対値|Ixy−Iref(n)|が比較値3・DEVi(n)未満であり、かつ前記絶対値|θixy−θref(n)|が比較値3・DEVθ(n)未満であれば、コントローラ50は、ステップS57,S58にて共に「No」と判定し、ステップS60に進む。一方、前記絶対値|Ixy−Iref(n)|が比較値3・DEVi(n)以上であれば、コントローラ50は、ステップS57にて「Yes」と判定して、ステップS59に進む。また、前記絶対値|θixy−θref(n)|が比較値3・DEVθ(n)以上であれば、コントローラ50は、ステップS58にて「Yes」と判定して、ステップS59に進む。ステップS59においては、コントローラ50は、検査位置を特定する変数nにより指定されるエラーデータE(n)を異常を表す“1”に設定する。なお、エラーデータE(n)(n=1〜N)は、初期の状態では全て“0”に設定されている。このステップS59の処理後、ステップS60に進む。
コントローラ50は、ステップS60にて変数nに「1」を加算し、ステップS61にて変数nが磁気センサ32−1,32−2・・・32−Nの数を表す値Nよりも大きい否かを判定する。変数nが値N以下であれば、コントローラ50は、ステップS61にて「No」と判定して、ステップS52に戻って前述したステップS52〜S60の処理を繰り返し実行する。このようなステップS52〜S61の繰り返し処理中、変数nが値Nよりも大きくなると、コントローラ50は、ステップS61にて「Yes」と判定して、ステップS62に進む。
この時点では、太陽電池セルSCの検査位置ごとに、面電流の大きさデータIxy(n)及び方向データθixy(n)(n=1〜N)が、RAM又は記憶装置に記憶されている。また、前記検査位置の異常の有無を表すエラーデータE(n)(n=1〜N)も、RAM又は記憶装置に記憶されている。
ステップS62においては、コントローラ50は、前記面電流の大きさデータIxy(n)及び方向データθixy(n)(n=1〜N)から表示用画像データを生成して、表示装置52に画像データによって表された画像を表示する。この画像は、図9に示すように、太陽電池セルSCの検査位置ごとに、面電流の大きさデータIxy(n)に応じて明度、色彩などを異ならせて表示するとともに、面電流の方向データθixy(n)によって示された方向を示す矢印を表示するものである。
前記ステップS62の処理後、コントローラ50は、ステップS63にて、エラーデータ(n)(n=1〜N)の中に“1”を示すエラーデータが存在するかを調べる。“1”を示すエラーデータが存在しなければ、コントローラ50は、ステップS63にて「No」と判定して、ステップS64にて表示装置52に「合格」を表示し、ステップS67にてこの評価プログラムの実行を終了する。一方、“1”を示すエラーデータが存在すると、コントローラ50は、ステップS63にて「Yes」と判定して、ステップS65にて表示装置52に「不合格」を表示し、ステップS66にてエラーデータE(n)が“1”である変数nを取り出し、前記ステップS62の処理によって表示した画像中の変数nによって指定される位置に欠陥を表すマーク、色彩などを表示する。ステップS66の処理後、コントローラ50はこの評価プログラムの実行を終了する。
上記のように動作する実施形態においては、通電信号供給回路41、通電回路42−1,42−2・・・42−M及びコントローラ50のステップS12,S13の処理により、電極端子12及び電極13を介して太陽電池セルSCを通電した。そして、太陽電池セルSCへの通電による面電流によって発生される磁界の強さHxy及び方向θxyを、磁気センサ32−1,32−2・・・32−N、センサ信号取出回路43−1,43−2・・・43−N、ロックインアンプ45、コントローラ50のステップS14〜S19,S60,S61の処理などにより検出した。そして、コントローラ50のステップS52〜S56の処理によって前記磁界の強さHxy及び方向θxyを用いて太陽電池セルSCに流れる面電流の大きさIxy及び方向θixyを検出し、コントローラ50のステップS57〜S59,S63〜S66の処理により、太陽電池セルSCの欠陥を検出するとともに、欠陥位置を表示するようにした。このような太陽電池セルSCの検査装置においては、通電の電流の周波数と同じ周波数で変化する磁界のみを検出することができるので、太陽電池セルSC自体の発電による電流があっても、又は地磁気等の外部磁界が作用しても、通電による電流分布を高精度で測定することができる。
太陽電池セルSCの受光面には多数のグリッド電極(受光面電極)26が形成され、これらの多数のグリッド電極26を複数のバイパー電極27で接続しているために、電流はグリッド電極26に集まり、さらにバイパー電極27に集まって流れる。そして、グリッド電極26とバイパー電極27とは導電性ペーストにより接続されているが、この接続が不十分な場合にはその接続箇所に流れる電流が少なくなる。よって、太陽電池セルSCの通電による電流分布測定は、特にこの接続の良否を判定する目的で行うとよい。この接続の良否の判定は、太陽電池セルSCの製作段階における良品判定に使用してもよいし、太陽電池セルSCが長時間使用されたときにおける接続箇所の劣化判定に使用してもよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変形も可能である。
上記実施形態では、通電回路42−1,42−2・・・42−Mが太陽電池セルSCを通電する通電電流の周波数は全て同一として、独立した複数(M個)の電極端子12と共通の電極13との間の通電によって太陽電池セルSCの盤面に流れる電流の分布を測定するようにした。しかし、異常検出の精度を高くするために、M個の電極端子12のうちの一つの電極と共通の電極13との間で順に通電を行い、各通電ごとに太陽電池セルSCの盤面に流れる電流の分布を測定するようにしてもよい。しかし、この方法では、多くの測定時間が必要となり、測定効率が悪くなるので、次のような電流分布測定装置を用いて、太陽電池セルSCの盤面に流れる電流の分布を測定するとよい。
この場合、電流分布測定装置は、図10に示すように、電極端子12の数に等しいM個の通電信号供給回路41−1,41−2・・・41−Mを備えている。通電信号供給回路41−1,41−2・・・41−Mは、正弦波発振器及び矩形波変換回路をそれぞれ含み、コントローラ50によって作動制御されて、正弦波発振器によって発振される正弦波信号を通電信号として通電回路42−1,42−2・・・42−Nに供給する。なお、通電信号は、上記実施形態の場合と同じ「0」を基準に正負に変化する信号であるが、それらの周波数は、例えば数10ヘルツから数100ヘルツ程度の範囲にあり、数ヘルツずつ異なる。また、通電信号供給回路41−1,41−2・・・41−Mは、前記正弦波信号からなる通電信号を矩形波変換回路による変換により、前記各通電信号と同期して「0」を中心として正負に変化する矩形波信号をそれぞれ生成して、参照信号として信号選択回路46に出力する。通電回路42−1,42−2・・・42−Mは、上記実施形態の場合と同様に、通信号供給回路41−1,41−2・・・41−Mからそれぞれ供給される「0」を基準に正負に変化する正弦波信号に正のオフセット電圧を加算して、前記オフセット電圧を中心に正弦波状に変化して常に正の範囲内で変化する通電信号に変換して、ステージ10のM個の電極端子12に正側電圧としてそれぞれ供給する。また、この場合も、通電回路42−1,42−2・・・42−Mの接地電圧は、ステージ10の電極13に供給される。
信号選択回路46は、コントローラ50によって制御されて、通電信号供給回路41−1,41−2・・・41−Mからそれぞれ出力されるM個の参照信号を一つずつ選択してロックインアンプ45へ出力する。他の回路に関しては、上記実施形態の場合と同様である。ただし、この場合、コントローラ50は、上記実施形態の図7のデータ取得プログラムに代えて図11のデータ取得プログラムを実行するとともに、図8の評価プログラムに代えて図12のデータ取得プログラムを実行する。
図11のデータ取得プログラムにおいては、図7のステップS11の処理がステップS31の処理に変更され、図7の処理に対してステップS32〜S34の処理が追加されている。ステップS31においては、N個の磁気センサ32(センサ信号取出回路43−1,43−2・・・43−N)を指定するための変数nに「1」が初期設定されるのに加えて、変数mも「1」に初期設定される。変数mは、通電信号供給回路41−1,41−2・・・41−M、通電回路42−1,42−2・・・42−M及びM個の電極端子12に対応して、異なる周波数で通電されるM個の電極端子12への通電状態をそれぞれ指定するものである。
ステップS32においては、コントローラ50は、信号選択回路46に変数mを出力する。信号選択回路46は、通電信号供給回路41−1,41−2・・・41−Mのうちで変数mによって指定される通電信号供給回路41−mから出力されている参照信号を選択してロックインアンプ45に出力する。このステップS32の処理後、上記実施形態の場合と同じステップS15〜S19からなる処理が実行されて、ロックインアンプ45から出力されるK個のサンプリングデータ群がRAM又は記憶装置に記憶される。また、ステップS33においては、コントローラ50は、変数mが電極端子12の数を表す値Mに達したか否かを判定する。そして、変数mが値Mに達していなければ、ステップS33にて「No」と判定されて、コントローラ50は、ステップS34にて変数mに「1」を加算して、前述したステップS32,S15〜S19,S33の処理を実行する。ただし、この場合、ステップS16においては、変数m,nにより指定されたサンプリングデータ群Sx1(m,n),Sx2(m,n),Sy1(m,n),Sy2(m,n)がRAM又は記憶装置に記憶される。すなわち、変数mは異なる周波数で通電されるM個の電極端子12への通電状態をそれぞれ指定するものであるので、M個の電極端子12のそれぞれに対して、上記実施形態のサンプリングデータ群Sx1(n),Sx2(n),Sy1(n),Sy2(n)が、サンプリングデータ群Sx1(m,n),Sx2(m,n),Sy1(m,n),Sy2(m,n)としてRAM又は記憶装置に記憶されることになる。
なお、ステップS12の通電信号供給回路の作動開始処理及びステップS21の通電信号供給回路の作動停止処理に関しては、全ての通電信号供給回路41−1,41−2・・・41−Mの作動が開始されるとともに停止される。他の処理に関しては、上記実施形態の図7のデータ取得プログラムの処理と全く同じである。
次に、図12の評価プログラムについて説明する。図12の評価プログラムにおいては、図8の評価プログラムにおける変数n(=1〜N)によって指定されるサンプリングデータ群Sx1(n),Sx2(n),Sy1(n),Sy2(n)(n=1〜N)に代えて、変数m(=1〜M)及び変数n(=1〜N)によって指定されるサンプリングデータ群Sx1(n,m),Sx2(n,m),Sy1(n,m),Sy2(n,m)(n=1〜N,m=2)が処理されるように変更されている。このため、ステップS51に代わるステップS71においては変数n,mの両方が「1」にそれぞれ初期設定され、ステップS52に代わるステップS72においてはサンプリングデータ群Sx1(n,m),Sx2(n,m),Sy1(n,m),Sy2(n,m)(n=1〜N,m=2)の各平均値Sx1,Sx2,Sy1,Sy2が計算される。
ステップS73においては、前記計算された面電流の大きさIxy及び方向θixyが上記実施形態の場合と同様に計算されるが、計算結果は変数n,mを用いて面電流の大きさデータIxy(n,m)及び方向データθixy(n,m)としてRAM又は記憶装置に記憶される。さらに、ステップS74においては、ステップS73で計算した面電流の大きさIxyと面電流の大きさの基準値Iref(n,m)との差の絶対値|Ixy−Iref(n,m)|が、比較値3・DEVi(n,m)以上であるか否かが判定される。また、ステップS75においては、ステップS73で計算した面電流の向きθixyと面電流の向きの基準値θref(n,m)との差の絶対値|θixy−θref(n,m)|が、比較値3・DEVθ(n,m)以上であるか否かが判定される。すなわち、上記実施形態とは、変数n,mによって指定される基準値Iref(n,m),θref(n,m)及び比較値3・DEVi(n,m),3・DEVθ(n,m)が利用される点で異なる。これらの基準値Iref(n,m),θref(n,m)及び比較値3・DEVi(n,m),3・DEVθ(n,m)も、事前に用意されて記憶装置に予め記憶されているデータである。この場合も、良品である複数の太陽電池セルSCに係るサンプリングデータ群Sx1(n,m),Sx2(n,m),Sy1(n,m),Sy2(n,m)(n=1〜N,m=1〜M)を図11に示すようなデータ取得プログラムで取得して、前述した計算によって得たものである。
ステップS76においても、上記実施形態とは異なり、変数n,mにより指定されるエラーデータE(n,m)がステップS74,S75の判定結果により異常を表す“1”に設定される。また、この図12の評価プログラムにおいては、ステップS77〜S79の処理が追加されており、これらのステップS77〜S79の処理により、変数mを「1」から値M(電極端子12の数)まで順に増加させて、ステップS72〜S76の演算処理により変数n,mに応じた種々のデータが計算される。
また、ステップS79においても、変数n,mによって指定される面電流の大きさデータIxy(n,m)及び方向データθixy(n,m)が表示装置52に表示される。この場合、変数mの「1」から値Mについてそれぞれ大きさデータIxy(n,m)及び方向データθixy(n,m)を表示するためのM個の表示データを生成して、入力装置51の指定により変数mを変更しながら、上記実施形態の場合と同様に、大きさデータIxy(n,m)及び方向データθixy(n,m)を表示装置52に表示するとよい。さらに、ステップS80,S81において、変数n,mによって指定されるエラーデータE(n,m)に基づいて太陽電池セルSCの欠陥を検出するとともに欠陥位置を表示する。このように、図12の評価プログラムも、図8の評価プログラムの一部が変数mのために変更されており、前述したステップ以外の処理に関しては、図8の評価プログラムの処理と同じである。
この変形例によれば、M個の電極端子12に対して異なる周波数の通電信号を同時に流して、太陽電池セルSCの欠陥をM個の電極端子への通電ごとに検出するようにした。これにより、上記実施形態の場合に比べて、太陽電池セルSCの欠陥をより的確に検出できるとともに、この太陽電池セルSCの欠陥の検出時間を同程度で済ますことができる。
また、上記実施形態では、図8のステップS56の処理によって面電流の大きさIxy及び方向θixyを計算し、ステップS57,S58の判定処理によって面電流の大きさIxy及び方向θixyを用いて太陽電池セルSCの欠陥を見つけるようにした。しかし、面電流の大きさIxyはステップS55の処理によって計算される磁界の大きさHxyに比例しており、面電流の方向θixyはステップS55の処理によって計算される磁界の方向θxyとπ/2異なるだけである。したがって、ステップS56の処理を省略して、ステップS57にてステップS55で検出した磁界の大きさHxyを面電流の大きさIxyとして扱い、ステップS58にてステップS55で検出した磁界の方向θxyを面電流θixyとして扱って、太陽電池セルSCの欠陥を見つけるようにしてもよい。また、上記図10の変形例の場合も同様にして、図12のステップS73の処理を省略して、ステップS74にてステップS55で検出した磁界の大きさHxyを面電流の大きさIxyとして扱い、ステップS75にてステップS55で検出した磁界の方向θxyを面電流θixyとして扱って太陽電池セルSCの欠陥を見つけるようにしてもよい。
これらの場合には、面電流の大きさに関する基準値Iref(n)(又はIref(n,m))及び比較値3・DEVi(n)(又は3・DEVi(n,m))に関しては、磁界に関する基準値Href(n)(又はHref(n,m))及び比較値3・DEVh(n)(又は比較値3・DEVh(n,m))を用いればよい。そして、この場合にも、良品である複数の太陽電池セルSCに係るサンプリングデータ群Sx1(n),Sx2(n),Sy1(n),Sy2(n)(n=1〜N)(又はサンプリングデータ群Sx1(n,m),Sx2(n,m),Sy1(n,m),Sy2(n,m)(n=1〜N,m=1〜M))を図7(又は図11)に示すようなデータ取得プログラムで取得して、図8の評価プログラムのステップS52〜S55(又は図12のステップS72,S53〜S55)と同様な処理により、検査位置ごとの磁界の大きさHxy(n)(n=1〜N)(又はHxy(n,m)(n=1〜N,m=1〜M))を計算して記憶装置に記憶しておく。そして、上記実施形態の場合と同様にして、平均値及び標準偏差の計算により基準値Href(n)(n=1〜N)(又はHref(n,m)(n=1〜N,m=1〜M))及び比較値3・DEVh(n)(n=1〜N)(又は3・DEVh(n,m)(n=1〜N,m=1〜M))を用意すればよい。
また、上記実施形態においては、図8のステップS57,S58の処理によって太陽電池セルSCの欠陥を判定するとともに、ステップS63〜S66の処理によって前記判定結果を表示するようにした。しかし、これらの処理を省略して、ステップS62の処理によって表示装置52に表示された面電流の大きさIxy(n)(n=1〜N)及び方向θixy(n)(n=1〜N)に従って、作業者の判断により太陽電池セルSCの欠陥を判定させるようにしてもよい。すなわち、作業者は、面電流の大きさIxy(n)(n=1〜N)に応じた明度、色彩等の異常、さらには面電流の方向θixy(n)(n=1〜N)に応じた矢印の向きの異常により、太陽電池セルSCの欠陥を判定するようにしてもよい。また、上記図10の変形例の場合も同様に、図12のステップS79の処理によって表示装置52に表示された面電流の大きさIxy(n,m)(n=1〜N,m=1〜M)及び方向θixy(n,m)(n=1〜N,m=1〜M)に従って、作業者の判断により太陽電池セルSCの欠陥を判定させるようにしてもよい。
また、これらの場合、上記実施形態の図8のステップS57,S58(又は図12のステップS74,S75)で用いた面電流の大きさの基準値Iref(n)(n=1〜N)(又はIref(n,m)(n=1〜N,m=1〜M))及び面電流の向きの基準値θref(n)(n=1〜N)(又はθref(n,m)(n=1〜N,m=1〜M))を用いて、良品の太陽電池セルSCの面電流の大きさ及び向きを、ステップS62(又はステップS79)による検査対象である太陽電池セルSCの面電流の大きさ及び向きの表示と共に表示装置52に表示して、作業者に両者の比較により検査対象である太陽電池セルSCの欠陥を判断させるとよい。さらに、この場合も、前述のように、面電流の大きさに代えて磁界の大きさを表示装置52に直接表示するとともに、磁界の向きを表示装置52に直接表示して、作業者に太陽電池セルSCの欠陥を判断させるようにしてもよい。
また、上記図1の実施形態及び図10の変形例においては、M個の磁気センサ32を太陽電池セルSCの下面に対向してマトリクス状に配置して太陽電池セルSCの盤面のM箇所の磁界の大きさ及び向きを検出した。しかし、検出時間を問題にしなければ、磁気センサ又は太陽電池セルSCを移動させることにより、磁気センサの太陽電池セルSCに対する相対移動により磁気センサによる磁界の大きさ及び向きの検出位置を順次移動して、太陽電池セルSCの盤面のM箇所の磁界の大きさ及び向きを検出するようにしてもよい。この場合、例えば、太陽電池セルSCの一つの辺に平行に一つの辺の一端から他端に亘って複数の磁気センサを1列又は複数列配置し、1列又は複数列の磁気センサを太陽電池セルSCの前記一つの辺に直交する他方の辺に沿って移動して、太陽電池セルSCの盤面全体を磁気センサで走査するようにしてもよい。また、太陽電池セルSCの一つの辺の長さよりも短い範囲において一つ又は複数の磁気センサを配置し、一つ又は複数の磁気センサを太陽電池セルSCの前記一つの辺及び前記一つ辺に直交する他方の辺に沿って移動して、太陽電池セルSCの盤面全体を磁気センサで走査するようにしてもよい。なお、磁気センサに代えて太陽電池セルSCを移動させてもよい。
また、上記実施形態では、磁気センサとして磁気抵抗素子(MR素子)を利用したが、これに代えて、ホール素子、磁気インピーダンス素子効果センサ、フラックスゲート、超伝導量子干渉素子などを利用するようにしてもよい。
さらに、上記実施形態においては、太陽電池セルSCの欠陥を検出するようにした。しかし、本発明は、燃料電池の電極の欠陥、劣化などの検出にも適用できる。さらには、面電流が流れる板状部分を有する物の欠陥、劣化などの検出にも広く適用できる。たとえば、銅板、アルミ板などの導電板を有し、導電板に面電流を流す物品であれば、本発明の方法により導電板の欠陥、劣化などを検出することができる。ただし、この場合には、上記実施形態の太陽電池セルの場合及び燃料電池の場合とは異なり、P−N接合が関係しないので、上記実施形態の通電回路42−1,42−2・・・42−Mは、通電のための電圧のオフセットを必要とせず、通電信号供給回路41(又は41−1,41−2・・・41−M)から供給される「0」を基準に正負に変化する信号をそのまま通電電圧に変換して電極端子12に印加すればよい。