以下、本発明の冷蔵庫の第一の実施形態について図を用いて説明する。
まず、図1から図3を参照しながら冷蔵庫全体に関して説明する。図1は本実施形態の冷蔵庫の正面図、図2は図1の冷蔵庫の中央縦断面図、図3は図1の冷蔵庫本体の正面図である。
冷蔵庫は、冷蔵庫本体1及び扉6〜10を備えて構成されている。冷蔵庫本体1は、鋼板製の外箱11と樹脂製の内箱12との間にウレタン発泡断熱材13及び真空断熱材(図示せず)を有して構成され、上から冷蔵室2、冷凍室3、4、野菜室5の順に複数の貯蔵室を有している。換言すれば、最上段に冷蔵室2が、最下段に野菜室5が、それぞれ区画して配置されており、冷蔵室2と野菜室5との間には、これらの両室と断熱的に仕切られた冷凍室3、4が配設されている。冷蔵室2及び野菜室5は冷蔵温度帯の貯蔵室であり、冷凍室3、4は、0℃以下の冷凍温度帯(例えば、約−20℃〜−18℃の温度帯)の貯蔵室である。なお、冷凍室3は製氷室3aと急冷凍室3bとに区画されている。これらの貯蔵室2〜5は仕切り壁34,35,36により区画されている。
冷蔵庫本体1の前面には、貯蔵室2〜5の前面開口部を閉塞する扉6〜10が設けられている。冷蔵室扉6は冷蔵室2の前面開口部を閉塞する扉、製氷室扉7は製氷室3aの前面開口部を閉塞する扉、急冷凍室扉8は急冷凍室3bの前面開口部を閉塞する扉、冷凍室扉9は冷凍室4の前面開口部を閉塞する扉、野菜室扉10は野菜室5の前面開口部を閉塞する扉である。冷蔵室扉6は観音開き式の両開きの扉で構成され、製氷室3a、急冷凍室3b、冷凍室4、野菜室5は、引き出し式の扉によって構成され、引き出し扉とともに貯蔵室内の容器が引き出される。
冷蔵庫本体1には、冷凍サイクルが設置されている。この冷凍サイクルは、圧縮機14、凝縮器(図示せず)、キャピラリチューブ(図示せず)及び蒸発器15、そして再び圧縮機14の順に接続して構成されている。圧縮機14及び凝縮器は冷蔵庫本体1の背面下部に設けられた機械室に設置されている。蒸発器15は冷凍室3、4の後方に設けられた冷却器室に設置され、この冷却器室における蒸発器15の上方に送風ファン16が設置されている。
蒸発器15によって冷却された冷気は、送風ファン16によって冷蔵室2、製氷室3a、急冷凍室3b、冷凍室4及び野菜室5の各貯蔵室へと送られる。具体的には、送風ファン16によって送られる冷気は、開閉可能なダンパー装置を介して、その一部が冷蔵室2及び野菜室5の冷蔵温度帯の貯蔵室へと送られ、他の一部が製氷室3a、急冷凍室3b及び冷凍室4の冷凍温度帯の貯蔵室へと送られる。つまり、本発明では、以下にも詳述するが、前記開閉可能なダンパー装置は、冷却室からの冷気を前記冷蔵温度帯の貯蔵室への冷蔵吐出口と前記冷凍温度帯の貯蔵室への冷凍吐出口の一方若しくは両方に選択可能に流通させる選択手段を構成している。
送風ファン16によって冷蔵室2、製氷室3a、急冷凍室3b、冷凍室4及び野菜室5の各貯蔵室へと送られる冷気は、各貯蔵室を冷却した後、冷気戻り通路を通って冷却器室へと戻される。このように、本実施形態の冷蔵庫は冷気の循環構造を有しており、各貯蔵室2〜5を適切な温度に維持する。
冷蔵室2内には、透明な板で構成される複数段の棚17〜20が取り外し可能に設置されている。最下段の棚20は、内箱12の背面及び両側面に接するように設置され、その下方空間である最下段空間21を上方空間と区画している。また、各冷蔵室扉6の内側には複数段の扉ポケット25〜27が設置され、これらの扉ポケット25〜27は冷蔵室扉6が閉じられた状態で冷蔵室2内に突出するように設けられている。
次に、図2から図6を参照しながら、冷蔵室2の最下段空間21における機器の配置に関して説明する。図4は図1の冷蔵庫本体の冷蔵室部分の正面図、図5は図4の冷蔵室の最下段空間部分の平面図、図6は図4の冷蔵室の最下段空間部分の断面斜視図である。
最下段空間21には、左から順に、製氷室3aの製氷皿に製氷水を供給するための製氷水タンク22、デザートなどの食品を収納するための収納ケース23、室内を減圧して食品の鮮度保持及び長期保存するための減圧貯蔵室24が設置されている。減圧貯蔵室24は、冷蔵室2の横幅より狭い横幅を有し、冷蔵室2の側面に隣接して配置されている。
このように、減圧貯蔵室24は、冷蔵庫の冷凍室3、4及び野菜室5の上に配置された冷蔵室2の最下段空間21に配置されているので、使い勝手が良好である。
製氷水タンク22及び収納ケース23は、左側の冷蔵室扉6の後方に配置されている。また、減圧貯蔵室24は右側の冷蔵室扉6の後方に配置されている。これによって、右側の冷蔵室扉6を開くのみで、減圧貯蔵室24の食品トレイ60(図6参照)を引き出すことができる。なお、製氷水タンク22及び収納ケース23は左側の冷蔵室扉6の最下段の扉ポケット27の後方に位置することとなり、減圧貯蔵室24は右側の冷蔵室扉6の最下段の扉ポケット27の後方に位置することとなる。
製氷水タンク22の後方には、図5及び図6に示すように、製氷水ポンプ28が設置されている。収納ケース23の後方で且つ減圧貯蔵室24の後部側方の空間には、図5及び図6に示すように、減圧貯蔵室24を減圧するための手段の一例である真空ポンプ29が配置されている。これによって、真空ポンプ29は、減圧貯蔵室24の側面に設けられたポンプ接続部42i(図10参照)に導管29a(図9参照)を容易に接続することができると共に、収納ケース23を取り出すことにより前方から簡単にメンテナンスすることができる。
次に、図7と図8を参照しながら、減圧貯蔵室24の冷却方法に関して説明する。図7は図4の冷蔵室の背面パネルの正面図、図8は図4の冷蔵室の減圧貯蔵室付近の縦断面図である。
冷蔵室2の背面には、送風ファン16から供給された冷気を通す通路を形成する背面パネル30が設けられている。背面パネル30には、冷蔵室2に冷気を供給する冷蔵室冷却用の冷気吐出口(第1の冷気吐出口)31と、冷蔵室2の最下段空間21に冷気を供給する減圧貯蔵室冷却用の冷気吐出口(第2の冷気吐出口)32と、冷気戻り口33とが設けられている。冷気戻り口33は減圧貯蔵室24の背面後方で冷蔵室2の側面に近い側に位置して設けられている。
冷気吐出口32は減圧貯蔵室24の上面と棚20の下面との隙間に向けて設けられている。冷気吐出口32から吐出された冷気は、減圧貯蔵室24の上面と棚20の下面との隙間を冷気通路37として流れ、減圧貯蔵室24を上面から冷却する。従って減圧貯蔵室24内を間接冷却する。
ここで、減圧貯蔵室24を冷蔵室2の右側面に近接して配置して減圧貯蔵室24の右側の隙間をなくしてあると共に、減圧貯蔵室24の上面の左端部に図示していない棚(仕切り壁)を設けて減圧貯蔵室24の左側の隙間をなくしてあるので、冷気吐出口32から吐出された冷気は減圧貯蔵室24の左右の側方に分流することなく減圧貯蔵室24の上面を流れる。これによって、減圧貯蔵室24の上面を冷却する冷気量を増大し、減圧貯蔵室24内を短時間に冷却することができる。減圧貯蔵室24の上面を冷却した冷気は、減圧貯蔵室24の前方から減圧貯蔵室24の左側面を通って冷気戻り口33に吸い込まれ、冷気戻り通路を通って冷却器室へと戻される。冷気戻り口33は減圧貯蔵室24の背面後方で冷蔵室2の側面に近い側に位置して設けられているので、冷気は減圧貯蔵室24の背面及び左側面に接触して冷却する。
このように、減圧貯蔵室24は冷気が外部を通ることにより間接的に冷却される。なお、冷蔵室2の全体を冷却した冷気も冷気戻り口33に吸込まれる。
次に、図8から図11を参照しながら、減圧貯蔵室24の構成に関して説明する。図9は図4の冷蔵室の減圧貯蔵室の斜視図、図10は減圧貯蔵室の収納容器を左上方から見た斜視図、図11は図9の減圧貯蔵室の補強ガラス板と環状パッキングを示す斜視図である。
減圧貯蔵室24は、食品出し入れ用開口部を有する箱状の収納容器42と、収納容器42の食品出し入れ用開口部を開閉する減圧貯蔵室ドア50と、食品を収納して減圧貯蔵室ドア50に出し入れする食品トレイ60とを備えて構成されている。収納容器42で減圧貯蔵室ドア50の食品出し入れ用開口部42aを閉じることにより、減圧貯蔵室ドア50と食品トレイ60とで囲まれた空間が減圧される低圧空間41として形成される。食品トレイ60は、減圧貯蔵室ドア50の背面側に取り付けられ、減圧貯蔵室ドア50の移動に伴って前後に移動可能である。
収納容器42は、耐薬品性、耐衝撃性及び成形性に優れた樹脂製の外郭42と、透明な強化ガラスで構成されたガラス板43(例えば強化ガラス)と、鋼板などの金属製の板状部材44と、樹脂製のドア係合部材48とを備えて構成されている。
外郭42は略直方体の基本形状を有しており、前面に食品出し入れ用開口部42aが形成され、上面にガラス板載置用開口部42bが形成されている。この外郭42を構成する側壁42c、底壁42d及び背壁42eの外面には、外郭42の強度アップを図るために、外郭補強リブ42fが突出して形成されている。
ガラス板43は、ガラス板載置用開口部42bに環状パッキング45を介して気密的に載置され、収納容器42の上壁を形成している。このガラス板43は、減圧力によりガラス板載置用開口部42bが内側に変形するのを防止する強度を備える。また、透明なガラス板43を外郭42の上面に設けたことにより、減圧貯蔵室24内を透視することができる。
板状部材44は、減圧力による外郭42の両側壁42c及び底壁42d及び背壁42eの変形を防止するため、外郭42の両側壁42c、底壁42d及び背壁42eに沿って延びるように、設置されている。
収納容器42は、食品出し入れ用開口部42aを前面に形成した箱状の樹脂製外郭42と、外郭42の両側壁42c、底壁42d及び背壁42eに沿って延びる金属製板状部材44を有しているので、外郭42全体を金属板で形成する場合に比較して、安価な構造とすることができる。また、外郭42を樹脂製にできることにより、取り付け構造などを簡略化することができる。
次に、図8、図9、図12を参照しながら、減圧貯蔵室ドア50に関して説明する。図12は、図9の減圧室24ドア背面側の斜視図である。
減圧貯蔵室ドア50は、耐薬品性、耐衝撃性及び成形性に優れた樹脂製のドア本体51、ドアハンドル52、密閉状態解除バルブ53、ゴム製のインジケータ54、空気が洩れないように密閉性を高くするマグネットガスケット55を備えている。
ドア係合部材48は、図9に示すように、食品出し入れ用開口部42aの上面に設置されている。ドア係合部材48は、食品出し入れ用開口部42aの上面に形成された凹部42a1内に収納されるコ字状部48aと、コ字状部48aから前方に延びるドア係合爪部48bとが一体に成形されている。ドア係合爪部48bは、ドアハンドル52の幅と略同じ幅で設けられており、前後位置決め上端部51eに係合されている。減圧貯蔵室ドア50を開ける場合は、ドアハンドル52を引くとヒンジ部(図示せず)を中心に上方に回転して、ドアハンドル52の上部がドア係合爪部48bを押し上げる。これによって、ドア係合爪部48bと前後位置決め上端部51eとの係合が外れる。更にドアハンドル52を引くと、減圧貯蔵室ドア50を開くことができる。
また、減圧貯蔵室ドア50は、リンク機構70と接続されており、回動可能及び前後動可能となっている。上記密閉状態解除バルブ53は、真空ポンプ29により減圧貯蔵室内の空気を吸引し酸素の少なくなった空気を戻すことから内部が僅かに減圧すること、若しくは内部に収納した食品及び空気が冷却されて収縮することによっても内部が僅かに減圧することから、指の力の小さい消費者でも容易に開閉できるように設けたものである。
ドア本体51は、収納容器42の開口部42aの外形とほぼ同じ外形を有し、ハンドル凹部51a、ハンドルヒンジ受け51c、リンク機構接続部51d、前後位置決め上端部51e、前後位置決め下端部51fなどを備えている。
次に、図9及び図14を参照しながら、リンク機構70に関して説明する。図14は図9の減圧貯蔵室ドア50を前方に引き出した状態の斜視図である。
リンク機構70は、隣接する冷蔵室2の側面と収納容器42の側面との間に配置されている。
次に、図9及び図13を参照しながら、減圧貯蔵室24の操作に関して説明する。図13は、図9の減圧貯蔵室の断面斜視図である。
ドア本体51を開く際には、図9の状態で、ハンドル凹部51a内に指を入れ、ドアハンドル52の下部を引くことにより、まず図13の密閉状態解除バルブ53が動作して減圧貯蔵室24の密閉状態が解除される。従って、使用者が特に意識しなくても、ドア本体51の開放動作の最初に減圧貯蔵室24の密閉状態の解除を行うことができる。
さらに、ドアハンドル52を引くことにより、ドア本体51を介して上リンク辺70aが前方に引かれ、上リンク辺70aと後リンク辺70dとの接続部がリンク用上支持部42kの傾斜に沿って前方下方へ移動され、ドア本体51が傾斜された状態となる。これによって、図13のドア本体51の前後位置決め下端部51fが図8の仕切り壁34の前後位置決め溝34aから開放され、ドア本体51を前方に引き出すことが可能となる。
さらに、ドアハンドル52を引くことによりドア本体51を介して上リンク辺70aが前方に引かれるので、上リンク辺70aに近接して配置され、減圧貯蔵室24のドア本体51の開閉状態を検出するドアスイッチ(図示せず)が、減圧貯蔵室24のドア本体51の開状態を検出することになる。
さらに、ドアハンドル52を引くことにより、ドア本体51が傾斜した状態でリンク機構70及び食品トレイ60と共に前方に移動され、これらが図14に示すように引き出され、食品トレイ60の上面が開放される。
これらの操作は、ドアハンドル52を引くという単一操作でよく、各機器の一連の動作を行うことができ、使い勝手が良好である。
なお、ドア本体51を閉じる際には、図14の状態でドアハンドル52の上部を押すことにより、上述した開動作の逆の動作が行われ、ドアスイッチが、減圧貯蔵室24のドア本体51の閉状態を検出することになる。
次に、図15を参照しながら、上述した冷蔵庫本体の一部に取り付けられ、冷蔵庫の各種の運転状態や動作を制御する制御装置を構成するマイコン80と各機器との入出力を説明する。制御装置であるマイコン80は、図15に示すように、冷蔵室扉6の前面に配置されて使用者によって操作される操作スイッチ81、冷蔵室扉6の開閉状態を検出する冷蔵室扉スイッチ82、減圧貯蔵室24のドア本体51の開閉状態を検出する低圧室ドアスイッチ83、減圧貯蔵室24内部の圧力を検知する圧力センサからなる圧力スイッチ84、冷蔵室2の温度を検出する冷蔵室温度センサ85からの操作・検出信号を受け(入力し)、所定の処理を行い、その結果に基づいて、真空ポンプ29、更には、以下にも示す第1及び第2のダンパー112、111の開閉状態を制御する。
次に、図16により、上記の冷凍室3の背部に形成された冷却器室110にて作られた冷気により、冷蔵庫内の冷蔵室2、冷凍室3、冷凍室4、野菜室5内が冷却される点について説明する。
110は冷凍室3、4の背部に形成された冷却器室であり、この冷却器室110内には、冷凍サイクルを構成する冷却器15と、更に、この冷却器15で作られた冷気を第1のダンパー112を介して冷凍冷気通路39を通して冷凍室3、4に、又は、第2のダンパー111を介して冷蔵冷気通路38を通して冷蔵室2、野菜室5に、強制循環する為の冷気循環ファン16が設けられている。また、冷却器15の下部には、冷却器15に付着した霜により冷却器と空気との接触効率が低下し、これにより冷却効率低下を防止するため、冷却器15に付着した霜を溶かす除霜ヒータ113が設置されている。
次に、上記第1のダンパー111、第2のダンパー112の開閉動作の詳細について、図17を用いて説明する。この図17において、符号117は冷気循環ファン16の運転状況を示している。118は冷却器室8から冷蔵冷気通路38への冷気を制御するダンパー11の開閉状況を示し、119は冷却器室110から冷凍冷気通路39への冷気を制御ダンパー112の開閉を示している。120は除霜ヒータの通電状況を示している。121は冷蔵室2または野菜室5の温度変化を示しており、122は冷凍室3、4の温度変化を示している。
この図17に示すように、冷凍室3、4の温度がT3まで上昇すると、第1のダンパー112が開き、且つ、第2のダンパー111が閉まり、冷気循環ファン110により冷凍室3、4にのみ冷気が循環される。そしてT4まで冷凍室3、4の温度が低下すると、それ以上の冷凍室3、4の冷却は必要ないと判断し、第1のダンパー112が閉じ、第2のダンパー111を開けて、今度は、冷蔵室2および野菜室5が冷却される。そして、冷蔵室2または野菜室5の温度がT2まで冷却されると、冷凍室3の温度がT3まで上昇していない場合、これ以上の冷気循環ファン16による冷気循環による冷却は必要ないと判断し、冷気循環ファン16が停止する。
なお、上記の図17では、冷気循環ファン16が停止したと同時にダンパー111も閉じているが、しかしながら、本発明ではこれに限らず、これは開けたままでもよい。そして、冷凍室3の温度がT3まで上昇するまで、冷蔵室2または野菜室4の温度が冷気循環ファン16の停止により温度が上昇し、T1になったとき、第1のダンパー112は閉じたままで、第2のダンパー111を開け、冷気循環ファン16の運転を再開し、冷蔵室2および野菜室5の冷却を行い、これを繰り返すことにより冷蔵室2および野菜室5の温度を安定に保つようにする。そして、この間に冷凍室3、4の温度がT3に上昇したら、第2のダンパー111を閉じ、第1のダンパー112を開け、もって、冷気循環ファン16により冷凍室3にのみ冷気を循環させ、冷凍室3、4の温度がT4になるまで冷却する。これを繰り返すことにより、冷蔵庫全体の冷却を行う。
従って、本発明によれば、除霜運転の際、冷却器室110内の高湿な空気は、冷気循環ファン16や第2のダンパー111によって、冷蔵室2へ送風される。これにより、冷蔵室2に設けた減圧室24の周囲環境の湿度を上昇させることが出来(周囲環境の湿度>減圧室24内の湿度)、更には、減圧室24の密閉性を維持するためのパッキンにも接触してその密着力の持続力を維持・向上し、減圧室24の減圧状態を長く保つことができ、減圧室24に貯蔵した食品の乾燥防止効果が得られる。
また、減圧室24の蓋部に、例えば食品のラップなどが挟まれ、これにより減圧室24外気が流入してしまい、減圧状態から大気圧状態に変動し、これを感知して再度真空ポンプが減圧室24内の空気を吸引するも、減圧室24の蓋部のラップ挟みが改善されるまで、減圧室24外気の流入と真空ポンプの減圧室24内空気の吸引が繰り返されても、減圧室24が設置されている冷蔵室2の湿度が高湿化になっているため、減圧室24内の湿度低下を防止することが出来、減圧室24に貯蔵されている食品の乾燥防止効果が得られる。
次に、図18〜図20を参照しながら、抗酸化成分放出カセット180について具体的に説明する。図18は、上記図3、図4の抗酸化成分放出カセット180の単独斜視図、図19は、上記図3のA−A断面図、図20は、上記図18のB−B断面図である。
抗酸化成分放出カセット180は、抗酸化成分を放出する抗酸化剤181と、この抗酸化剤181を収納した樹脂容器182と、この樹脂容器182の内部の抗酸化成分をその外部に導いて放出する紙185とを備えて構成されている。紙185は、和紙や腐食布などで形成され、通気性を有している。
抗酸化剤181は、食品中の栄養成分が空気中の酸素により酸化される前に酸化することにより、食品中の栄養成分の酸化を防止するものである。従って、抗酸化剤は、非常に酸化されやすい物質からなるものである。このように、抗酸化剤181は、食品に触れるため、人体に対する安全性に配慮して、ビタミンC、ビタミンE及び酵素処理ルチンなど栄養成分を含む自然食品に含有する酸化防止剤、例えばアスコルビン酸やトコフェノールなどが用いられる。
樹脂容器182は、内側にアルミニウムフィルム183aを貼着し且つ抗酸化剤181を収納した樹脂容器本体83と、内側にアルミニウムフィルム184aを貼着した樹脂容器蓋184とからなっている。樹脂容器本体83の周縁部と樹脂容器蓋184の周縁部とを重ねて、当該両周縁部のアルミニウムフィルム183a、184aを紙185が介在された部分を除いて全周にわたって接合し、その内部空間を当該アルミニウムフィルム183a、184aで囲んだ空間としている。従って、この空間内に配置された抗酸化剤81からアルミニウムフィルム183a、184aを通して抗酸化成分が外部に放出されることはない。
樹脂容器蓋184は、表側に突出する突部184bを形成することにより、樹脂容器本体側の面に全長にわたって凹部184cが形成されている。紙185は、樹脂容器蓋184の凹部184c内に全長にわたって配置され、両端部が樹脂容器182の外部に臨んでいる。これによって、樹脂容器182内に配置された抗酸化剤181から放出される抗酸化成分は、両アルミニウムフィルム183a、184aに挟持された紙85の部分のみを通して樹脂容器182の外部空間である減圧貯蔵室24内に放出される。従って、減圧貯蔵室24内への抗酸化成分の放出率は、紙85の挟持部の断面積(換言すれば、紙185の厚みまたは幅)、挟持部における長さを調整することにより容易に調整することができる。
また、抗酸化剤181は、図19および図20に示すように、パルプとバインダーに混合され、かつ粒状である。この抗酸化剤181は、三方シール包装の袋186に収納され、樹脂容器182に収納される。なお、袋186は、その形状は袋に限定されず、抗酸化剤181を収納できる形状のものであればよい。また、抗酸化剤181の抗酸化成分は、袋186を透過して放出される構成である。すなわち、袋186の材質としては、PET/PP混抄不織布等がよい。
パルプは、水分を吸収する、いわゆる吸湿剤の役割をする。パルプの配合量が少ないと、吸湿量が少なくなり、そのため、水に溶け易いビタミンCが溶出し易くなる。これにより、抗酸化成分がカセットから放出する量が少なくなり、目的の鮮度保持効果が得られなくなる。そこで、パルプは、抗酸化剤に対して50%以上100%以下の割合で配合される。
樹脂容器182は、抗酸化剤181を収納した樹脂容器本体183と、樹脂容器蓋184とからなっている。樹脂容器本体183の周縁部と樹脂容器蓋184の周縁部とを重ねて、当該両周縁部を紙185が介在された部分を除いて全周にわたって接合している。
樹脂容器蓋184は、表側に突出する突部184bを形成することにより、樹脂容器本体183側の面に全長にわたって凹部184cが形成されている。紙185は、樹脂容器蓋184の凹部184c内に全長にわたって配置され、両端部が樹脂容器182の外部に臨んでいる。これによって、樹脂容器182内に配置された抗酸化剤181から放出される抗酸化成分は、挟持された紙185の部分のみを通して樹脂容器182の外部空間である減圧貯蔵室24内に放出される。従って、減圧貯蔵室24内への抗酸化成分の放出率は、紙185の挟持部の断面積(換言すれば、紙185の厚みまたは幅)、挟持部における長さを調整することにより容易に調整することができる。
次に、図21から図23を参照しながら、抗酸化成分放出カセット180中の抗酸化剤181の詳細について説明する。抗酸化剤としてアスコルビン酸を用いた場合、アスコルビン酸は常温で固体であり、通常減圧しても気化しない。そこで、鋭意研究の結果、アスコルビン酸と水分を吸着する吸着剤を混合することにより抗酸化剤を有効に放出できることを見出した。図21はアスコルビン酸放出下で3日間保存したときの、ほうれん草のビタミンC残存率を測定した結果を、図22はアスコルビン酸放出下で3日間保存したときのマグロのK値を測定した結果を、図23はアスコルビン酸放出下で3日間保存したときの牛肉の色調を測定した結果を示す。図21から図23の101は、抗酸化成分放出カセット80がない場合、102は抗酸化成分放出カセット180中の抗酸化剤181をアスコルビン酸粉末と吸着剤とウレタンを混練した粒子とした場合、103は102のウレタンをメチルセルロースにした場合、104は102のウレタンを半分にした場合、105は抗酸化成分放出カセット180中の抗酸化剤81をアスコルビン酸粉末とした場合を示す。このウレタンやメチルセルロースはアスコルビン酸粉末と吸着材とのバインダーとなっている。
図21から図23において、アスコルビン酸粉末のみ105は抗酸化成分放出カセット80がない場合101と同等の値であり、抗酸化作用が無いことがわかる。これに対し、バインダーにウレタンを活用した場合102とメチルセルロースを活用した場合103は抗酸化成分放出カセット180がない場合101よりビタミンCが多く残存し、鮮度の指標であるK値が小さく、牛肉の色調が良く保たれており、抗酸化作用が高いことが判る。
また、バインダーにウレタンを活用した場合102とウレタンを半分とした103を比較すると、半分にした103のほうが抗酸化作用は小さい。このように、バインダーの使用量には最適量があり、バインダーと抗酸化剤との配合比は抗酸化剤1に対してバインダーが0.05以上、0.5以下の範囲で配合するのが好ましい。すなわち、バインダーは抗酸化剤に対して5%以上0.5%以下の割合で配合するのが好ましい。
次に、図24を参照しながら、抗酸化剤181の抗酸化成分の放出量と減圧量との関係について説明する。この図24は抗酸化剤181の抗酸化成分の放出量と減圧量との関係の測定結果を示す図である。
抗酸化剤81の抗酸化成分の放出量と減圧量との関係を測定する試験方法は、密閉容器に抗酸化剤181を内部に備えた抗酸化成分放出カセット180を入れ、負圧ポンプにより密閉容器内の空気を吸い出して密閉容器内を減圧して一定に保持し、そのときの密閉容器内の抗酸化剤181の濃度を測定した。
なお、上記の図24において、縦軸に抗酸化剤濃度、横軸に一定減圧になったときを0分としたときの経過時間を示す。図中の符号28は密閉容器内を0.7気圧に保った場合、符号29は密閉容器内を0.95気圧に保った場合、符号30は大気圧の場合を示す。
上記の図24より明らかなように、密閉容器内が大気圧の96の場合、抗酸化剤の密閉容器内の濃度は上昇しなかったのに対し、減圧した94,95は抗酸化剤の濃度が上昇すると共に、更には、0.95気圧に保った95よりも容器内を0.7気圧に保った94の方が、その放出量が大きくなったことが判る。従って、減圧することにより抗酸化剤181を密閉容器内に放出させることが出来る。従って、密閉容器の減圧量で抗酸化剤181の抗酸化成分の放出量を制御できる。しかし、密閉容器内の圧力を低くすればするほど、密閉容器の耐圧構造を強化する必要があるため、密閉容器のコストが増大する。従って、減圧時の圧力は0.80〜0.95の範囲とすることが好ましい。
なお、この図24において、縦軸に抗酸化剤濃度、横軸に一定減圧になったときを0分としたときの経過時間を示す。図中の符号94は密閉容器内を0.7気圧に保った場合、符号95は密閉容器内を0.95気圧に保った場合、符号96は大気圧の場合を示す。
即ち、この図24より明らかなように、密閉容器内が大気圧の96の場合、抗酸化剤に揮発性がないため、密閉容器内の濃度は上昇しなかったのに対し、減圧した94、95は抗酸化剤の濃度が上昇すると共に、更には、0.95気圧に保った95よりも容器内を0.7気圧に保った94のほうが放出量が大きくなったことが判る。従って、減圧することにより揮発性のない抗酸化剤181を密閉容器内に放出させることが出来る。従って、密閉容器の減圧量で抗酸化剤181の抗酸化成分の放出量を制御できる。しかし、密閉容器内の圧力を低くすればするほど、密閉容器の耐圧構造を強化する必要があるため、密閉容器のコストが増大する。従って、減圧量は0.80〜0.95の範囲とすることが好ましい。
従って、本発明によれば、除霜運転の際、冷却器室8の高湿な空気は、冷気循環ファン10によって冷蔵室2へ送風され、冷蔵室2に設けた減圧室24の周囲環境の湿度を向上させることが出来る。これにより、減圧室24の蓋部に、例えば食品のラップなどが挟まれ、このラップの挟みが改善されるまで、減圧室24の外気の流入と真空ポンプの減圧室24内空気の吸引が繰り返されても、減圧室24が設置されている冷蔵室2の湿度が高湿化になっているため、減圧室24内の湿度低下を防止することが出来る。このため、抗酸化カセット180内のパルプの吸湿量が少なくなることがなく、水に溶け易いビタミンCの溶出が抑制されること無く、効果的に減圧室24に抗酸化成分を放出させることが出来、貯蔵されている食品の酸化防止効果が得られる。
次に、図25を参照しながら、脱臭シートについて具体的に説明する。この脱臭シートは、図2において、食品トレイ60の背壁部に着脱可能に抗酸化カセット80近傍に設けられている(但し、図示せず)。
食品トレイ60に食品を載せて減圧貯蔵室蓋50を閉じることにより、減圧貯蔵室24の内部が密閉状態となり、ドアスイッチがオンされて負圧ポンプ29が駆動され、減圧貯蔵室24が大気圧より低い状態に減圧される。これにより貯蔵室13内の酸素濃度が低下するので、食品中の栄養成分の劣化を抑制することができる。更に、減圧貯蔵室24が密閉されて減圧された状態によって、減圧貯蔵室24の中に収納された食品からわずかに水分が蒸発することにより、減圧貯蔵室24の中は湿度100%になる。食品から発生する悪臭成分は水との親和性が高いため、脱臭シートに含まれる吸放湿性繊維181に水分と悪臭成分が吸着する。そして、吸放湿繊維に吸着した悪臭成分は近傍の消臭性繊維182によって脱臭される。すなわち、減圧貯蔵室24は真空を保つ為に高い密閉構造を必要とし、電気配線を必要とする送風手段を設けることは困難であるが、前記脱臭シート180の吸放湿性繊維181により送風手段を設けることなく、悪臭成分を集めることが出来、脱臭できる。
そして、減圧貯蔵室蓋50を手前に引くことにより、減圧貯蔵室蓋50の一部に設けられた圧力解除バルブがまず動作して減圧貯蔵室24の減圧状態が解除されて大気圧の状態となり、減圧貯蔵室蓋50を開くことができる。これによって、簡単に減圧貯蔵室蓋50を開け、食品の出し入れが出来る。
脱臭部材である脱臭シートの詳細について、図25を用いて説明する。図25は、脱臭シートを模式的に説明する図である。脱臭シートは、主に繊維からなり、量産における組立性,取り扱い性を考慮してこれを板状に圧縮成形することにより剛性が付与されている。即ち、脱臭シートは、機能性繊維の不織布から成る。この脱臭シートを構成する繊維の種類は、吸放湿性能に優れたアクリレート系吸放湿性繊維、例えば日本エクスラン工業社製NX−72と、脱臭性能の優れた消臭性繊維、例えば、日本エクスラン工業社製の商品名ナノアタックと、剛性を持たせるために圧縮成形時に繊維を接着させるための熱融着性繊維、例えば熱融着性ポリエステル繊維とからなり、これらの繊維を混在または積層して一体的に形成されている。なお、本実施例では吸放湿性繊維を用いているが、本発明では水分を吸着して保持する機能の吸湿性繊維を含むものである。
そして、吸放湿性繊維NX−72は特開平5−132858号公報に記載されている方法で製造できる。具体的にはアクリル繊維へヒドラジン処理によって架橋構造が導入される。得られた架橋繊維はさらに苛性ソーダ溶液で加水分解を行うとNa塩型カルボキシル基が導入され、吸放湿性繊維が得られる。尚、カルボキシル基の塩型は、アルカリ金属であればよく、Naに限定されない。
また、消臭性繊維商品名ナノアタックは、特開2007−70748号公報に記載されている方法で製造できる。具体的には架橋繊維のカルボキシル基の少なくとも一部にAgイオンを結合させた後、アルカリ処理によって、Agを繊維表面にナノサイズレベルの超微粒子状に析出固着させることにより製造することが出来る。
前記脱臭シートの吸放湿性繊維は、繊維内部に多くのアルカリ金属塩型カルボキシル基を含有するため、貯蔵室内の水分を多量に吸着して保持することが出来ると共に、繊維内部に架橋構造を有するため、保持した水分を放出する機能を有している。また、前記消臭性繊維は、貯蔵室内の悪臭成分を吸着もしくは分解して脱臭する機能を有しており、架橋構造を有すると共に金属塩の微粒子を含有したものであり、具体的には、架橋繊維のカルボキシル基の少なくとも一部にAgイオンを結合させた後、アルカリ処理によって、Agを繊維表面にナノサイズレベルの超微粒子状に析出固着させたものである。
脱臭シートは、図25に示すように、吸放湿性繊維181、熱融着性繊維183と混在して一体化されている吸放湿性シート184と、消臭性繊維182,熱融着性繊維183と混在して一体化されている消臭性シート185を張り合わせた構成となっている。吸放湿性繊維181は、図25においてその1本を模式的に拡大して示すように、架橋結合186を有するアクリレート系繊維にNa塩型カルボキシル基187を含有している。消臭性繊維182は、図25においてその1本の断面を模式的に拡大して示すように、Ag189が架橋繊維190表面にナノサイズレベルの超微粒子状に析出固着している。この脱臭シート180が接する減圧貯蔵室24の空気中の悪臭成分、例えばメチルメルカプタンは、銀の微粒子により酸化分解されて脱臭されるものと考えられる。その反応式を次に示す。
Ag2O+CH3SH+3/2O2→Ag2S+CO2+2H2O (化1)
ここで、生成した水分188は、吸放湿性繊維181中のアルカリ金属塩型カルボキシル基に吸着し、調湿や悪臭成分の捕集に有効に活用される。
従って、本発明によれば、除霜運転の際、冷却器室8の高湿な空気は、冷気循環ファン10によって冷蔵室2へ送風され、冷蔵室2に設けた減圧室24の周囲環境の湿度を向上させることが出来る。これにより、減圧室24の蓋部に、例えば食品のラップなどが挟まれ、このラップの挟みが改善されるまで、減圧室24の外気の流入と真空ポンプの減圧室24内空気の吸引が繰り返されても、減圧室24が設置されている冷蔵室2の湿度が高湿化になっているため、減圧室24内の湿度低下を防止することが出来る。このため、脱臭シートににおいを送風する手段を搭載するのが困難な減圧室24においても、減圧室24の水分ににおいが吸着し、吸湿力のある脱臭シートに水分と一緒ににおいが引き付けることできる。このため、減圧室24の蓋部に、例えば食品のラップなどが挟まれ、このラップの挟みが改善されるまで、減圧室24の外気の流入と真空ポンプの減圧室24内空気の吸引が繰り返されても、減圧室24の湿度低下が起こること無く、効果的な脱臭効果を得ることができる。