以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
図1は、本発明に係る画像形成装置の実施形態を、パソコンに接続されて印刷を行うプリンタを例として、説明するための図である。
画像形成装置1は、感光体ドラム21、帯電ローラ22、露光器23、現像器24、転写ローラ25、クリーナ26、定着器3、分岐ガイド41、排紙ローラ42、搬送ローラ43,44、搬送ローラ5、排紙トレイ6、給紙カセット7、制御装置8、および操作パネル9を備えている。
この画像形成装置1では、帯電ローラ22によって感光体ドラム21を所定の電圧レベルに帯電させる(帯電工程)、露光器23によって画像データ(形成すべき画像のデータ)に基づき感光体ドラム21を露光して潜像を形成する(潜像形成工程)、感光体ドラム21に形成された潜像に現像器24によりトナーを付着させて顕像化(トナー像の形成)する(現像工程)、転写ローラ25により感光体ドラム21上のトナー像に用紙Sを圧接させて当該トナー像を用紙Sに転写する(転写工程)からなる画像形成プロセスによって用紙に画像を形成する。
従って、感光体ドラム21の周囲に、帯電ローラ22、露光器23、現像器24および転写ローラ25がこの順に配置され、感光体ドラム21の回転に同期して帯電ローラ22、露光器23、現像器24および転写ローラ25をシーケンシャルに動作させることで、感光体ドラム21の1回転中に給紙カセット7から供給される用紙Sに画像形成する。
トナー像の転写が行われた感光体ドラム21は、クリーナ26によりドラム周面に残ったトナーが除去された後(クリーニング工程)、帯電ローラ22の位置に戻ると、次の回転で次の画像形成が開始されることになる。
一方、上記の感光体ドラム21の回転に同期して給紙トレイ7から用紙Sが供給され、片面印刷の場合、その用紙Sは、片面印刷経路R1を通って排紙トレイ6に排出される。
給紙カセット7は、用紙Sを積層して収容するものであり、用紙Sは、搬送ローラ71により1枚ずつ取り出され、搬送ローラ44により片面印刷経路R1に給紙される。給紙カセット7の内部には、収容する用紙Sの大きさに応じて移動可能な図示しない仕切りが設けられている。また、給紙カセット7の内部には、仕切りの位置により収容されている用紙Sの大きさを検出するセンサと、各大きさの用紙Sの有無を検出するためのセンサとが設けられている。図1においては簡略化のために、これらのセンサをまとめて用紙センサ72としている。用紙センサ72により検出される用紙Sの大きさと用紙Sの有無の情報は制御装置8に出力される。なお、仕切りの位置で用紙Sの大きさを検出する代わりに、用紙サイズに応じて複数用意されている給紙カセット7のいずれがセットされているかにより、用紙Sの大きさを検出するようにしてもよい。
片面印刷経路R1上の感光体ドラム21の下流側には定着器3と搬送ローラ5がこの順で設けられている。画像が形成された用紙Sは、定着器3に搬送され、定着器3でトナー像が溶融定着された後(定着工程)、搬送ローラ5によって画像形成装置1の上面に設けられた排紙トレイ6に搬送される。画像形成装置1の上部の排出口には排紙ローラ42が設けられ、搬送ローラ5によって搬送された用紙は、排紙ローラ42で排紙トレイ6に排出される(排出工程)。
なお、定着器3は、熱と圧力を加えることで用紙Sに転写されたトナー像を定着させるものであり、熱を加えるためのヒータを備えた定着ローラ31、および定着ローラ31に対して所定の押圧力で押圧する加圧ローラ32を備えている。
画像形成装置1は、両面印刷機能も備えている。具体的には、排紙ローラ42の近傍に分岐ガイド41が設けられるとともに、その分岐ガイド41から片面印刷経路R1上の搬送ローラ44に戻る両面印刷経路R2が設けられている。両面印刷において、画像形成装置1は、片面印刷がされた用紙Sを排紙ローラ42と分岐ガイド41とで両面印刷経路R2に逆送し、両面印刷経路R2上の搬送ローラ43で搬送ローラ44まで搬送して片面印刷経路R1に戻すことにより裏面にも画像を形成する。裏面に画像を形成した後は、片面印刷の場合と同様に、定着器3で裏面のトナー像を溶融定着した後、搬送ローラ5および排紙ローラ42で排紙トレイ6に排出する。
通常の片面印刷の場合は、上記のように、用紙Sは、片面印刷経路R1を通って感光体ドラム21と転写ローラ25により画像が形成され、定着器3で定着処理が行われた後、分岐ガイド41の下側を通って、排紙ローラ42により排紙トレイ6に排出される。一方、両面印刷の場合、印刷された用紙Sは、その後端部が分岐ガイド41を通過した後の排出ローラ42の逆回転により、分岐ガイド41の上側を通るように引き込まれる。用紙Sは、両面印刷経路R2を通って、搬送ローラ44により再度片面印刷経路R1に戻される(反転工程)。この反転工程を行うための分岐ガイド41、排紙ローラ42、および搬送ローラ43,44をまとめて、反転機構という。反転工程によって片面印刷経路R1に戻された用紙Sは表裏が反転されているので、再度の片面印刷経路R1の通過の際には裏面に印刷がなされる。
図2は、本発明に係る画像形成装置の第1実施形態を説明するための図である。同図は、図1に示す画像形成装置1とは異なる特徴的な部分のみを残し、共通する部分は適宜省略したものである。用紙Sのカールの発生しやすさは、定着器3で加える熱量に左右される。したがって、加える熱量に応じて、さらに丸まりスタックの発生を抑制するようにする。
同図に示す画像形成装置1Bは、定着器3'に温度センサ33および排紙センサ34を設けた点、並びに、搬送ローラ5および排出ローラ42の回転速度が制御装置8で制御される点で、図1に示す画像形成装置1と異なる。
温度センサ33は、定着ローラ31の温度を検出するものであり、検出した温度情報を制御装置8に出力する。本実施形態では、温度センサ33は図示しないサーミスタを有し、温度の上昇に比例した電圧が出力される。制御装置8は、温度センサ33から入力される電圧に基づいて、定着ローラ31の温度を判断する。
図3は、定着ローラ31の温度の変化を示す図である。定着ローラ31の温度は、目標とする制御温度範囲内に制御され、当該制御温度範囲内で変化する。定着ローラ31の温度が高いときに定着器3を通過した用紙Sは、カールが発生しやすくなっており、丸まりスタックが発生しやすくなる。本実施形態では、温度センサ33が検出した温度Tが所定の温度Tt以上の場合、丸まりスタックが発生する可能性が高いと判断し、定着器3を通過した用紙Sにカールが発生する前に排紙トレイ6に到達させるために、用紙Sの搬送速度を速くする。なお、温度Ttは、定着ローラ31の直径、回転速度などにより異なるので、適切な値を実験により決定しておく必要がある。
排紙センサ34は、定着ローラ31および加圧ローラ32により送り出される用紙Sを検出するものであり、用紙Sの検出情報を制御装置8に出力する。本実施形態では、排紙センサ34は図示しないフォトセンサを有し、フォトセンサが用紙Sを検出している場合にはハイレベルの電圧が出力され、フォトセンサが用紙Sを検出しない場合にはローレベルの電圧が出力される。制御装置8は、排紙センサ34から入力される電圧がハイレベルからローレベルに変化したことにより、用紙Sの後端が排紙センサ34を通過したと判断する。
搬送ローラ5および排出ローラ42は、定着ローラ31および加圧ローラ32を駆動する駆動モータとは異なる駆動モータで駆動されており、搬送ローラ5および排出ローラ42による用紙Sの搬送速度は、定着ローラ31および加圧ローラ32による用紙Sの排出速度より速い所定の速度に変更することができる。なお、図2では省略しているが、搬送ローラ5と排出ローラ42との間にも複数の搬送ローラが配置されており、これらの搬送ローラも搬送ローラ5および排出ローラ42と同じ駆動モータで駆動される。
制御装置8は、用紙Sが定着器3を通過したときに、温度センサ33が検出した温度Tが所定の温度Tt以上の場合、当該用紙Sの後端が排紙センサ34を通過した後、搬送ローラ5および排出ローラ42の回転速度を速くするように駆動モータを制御する。
まず、搬送ローラ71が駆動されて用紙Sが給紙カセット7から取り出され(S10−1)、定着ローラ31の温度が目標制御温度範囲内に収まるのを待つ(S10−2)。定着ローラ31の温度が目標制御温度範囲内に収まった場合(S10−2:YES)、ビットマップに基づくトナー像が用紙Sの第1面に転写され(S10−3)、定着器3によりトナー像が定着される(S10−4)。
用紙Sが定着器3を通過しているときの定着ローラ31の温度が検出され、当該温度Tが所定の温度Tt以上であるか否かが判別される(S10−5)。温度Tが温度Ttより低い場合(S10−5:NO)、搬送ローラ5および排出ローラ42は通常の回転速度で駆動されているので、用紙Sは通常の速度で搬送され排出される。一方、温度Tが温度Tt以上の場合(S10−5:YES)、用紙Sの後端が排紙センサ34を通過したか否かが判別される(S10−6)。用紙Sの後端が排紙センサ34を通過するまで(S10−6:NO)は、用紙Sは通常の速度で搬送される。用紙Sの後端が排紙センサ34を通過した場合(S10−6:YES)、搬送ローラ5および排出ローラ42の回転速度は所定の速い速度に変更され、用紙Sは速い速度で搬送され排出される(S10−7)。
本実施形態においては、用紙Sが定着器3を通過したときに、温度センサ33が検出した温度Tが所定の温度Tt以上の場合、当該用紙Sの後端が排紙センサ34を通過した後、搬送ローラ5および排出ローラ42の回転速度を所定の速い速度として、用紙Sにカールが発生する前に排紙トレイ6に到達させる。したがって、定着ローラ31の温度が高くてカールが発生しやすい場合に、適切に用紙の丸まりスタックを抑制することができる。
本実施形態では、温度センサ33が検出した温度Tが所定の温度Tt以上の場合、用紙Sの搬送速度を所定の速い速度に変更しているが、これに限定されない。例えば、用紙Sの搬送速度を検出した温度に応じて速くするようにしてもよい。
本実施形態では、温度センサ33が検出した温度Tにより、搬送速度を変更して丸まりスタックを抑制したが、他の方法で丸まりスタックを抑制してもよい。例えば、排出口から用紙Sを排出する角度を変更することで、丸まりスタックを抑制してもよい。
図6は、本発明に係る画像形成装置の第2実施形態を説明するための図である。同図は、図1に示す画像形成装置1とは異なる特徴的な部分のみを残し、共通する部分は適宜省略したものである。
同図に示す画像形成装置1Cは、定着器3”に温度センサ33を設けた点、および、排出口にセパレータ67を設けた点で、図1に示す画像形成装置1と異なる。温度センサ33は、上記第1実施形態のもの(図2参照)と同一なので説明を省略する。
セパレータ67は、排出ローラ42と排出口との間に設けられ、用紙Sの排出方向を切り換えるものである。セパレータ67は、制御装置8からの切替信号により排出方向を上方向と下方向に切り換える。排出方向が下方向の場合、排出された用紙Sの先端が排紙トレイ6に達するまでの時間が短くなるので、用紙Sと排紙トレイ6とがなす角度δ'は排出方向が上方向の場合の角度δより小さくなる。したがって、用紙Sに丸まりスタックが発生することを抑制することができる。
制御装置8は、用紙Sが定着器3を通過したときに温度センサ33が検出した温度Tが所定の温度Tt以上の場合、排出方向を下方向とするようにセパレータ67を切り換える。一方、検出温度Tが所定の温度Ttより低い場合、排出方向を上方向とするようにセパレータ67を切り換える。
図7は、本実施形態における印刷処理の処理手順のうち、図4におけるステップS10の工程の処理手順を示すフローチャートである。当該処理手順は、用紙幅Wおよび用紙長Lから判断されて片面印刷処理が行われる場合に、1ページ分の印刷データがビットマップ展開された後の処理手順である。なお、ステップS10−1〜S10−5は図14のフローチャートと同一なので、説明を省略する。
用紙Sが定着器3を通過しているときの定着ローラ31の温度Tが温度Ttより低い場合(S10−5:NO)、排出方向は上方向とされる(S10−11)。すなわち、排出方向が下方向とされていた場合はセパレータ67が切り換えられ、排出方向が上方向とされていた場合はセパレータ67は切り換えられない。一方、温度Tが温度Tt以上の場合(S10−5:YES)、排出方向は下方向とされる(S10−12)。すなわち、排出方向が上方向とされていた場合はセパレータ67が切り換えられ、排出方向が下方向とされていた場合はセパレータ67は切り換えられない。
本実施形態においては、用紙Sが定着器3を通過したときに、温度センサ33が検出した温度Tが所定の温度Tt以上の場合、用紙Sの排出方向が下方向とされる。したがって、定着ローラ31の温度が高くてカールが発生しやすい場合に、適切に用紙の丸まりスタックを抑制することができる。
なお、上記第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせて、温度センサ33が検出した温度Tが所定の温度Tt以上の場合、用紙Sの排出方向が下方向とされ、かつ、用紙Sの搬送速度を所定の速い速度としてもよい。また、温度センサ33が検出した温度Tが所定の温度Tt以上の場合、用紙Sの排出方向が下方向とされ、かつ、用紙Sの搬送速度を検出した温度Tに応じて速くするようにしてもよい。
図9は、本発明に係る画像形成装置の第3実施形態を説明するための図である。同図は、図1に示す画像形成装置1とは異なる特徴的な部分である排紙トレイ周辺を拡大したものである。
同図に示す画像形成装置1Aは、排紙トレイ6を変形可能な排紙トレイ6’に変更した点、排紙トレイ6’を変形させるための第1昇降シャフト61、第2昇降シャフト62、および駆動モータ63,64を設けた点、および、積載量センサ65および温湿度センサ66を設けた点で、図1に示す画像形成装置1と異なる。
排紙トレイ6’は、第1パネル6'a、第2パネル6'b、および第3パネル6'cを有する。第1パネル6'aは、排出口から排出される印刷後の用紙Sの先端が当接する位置に相当するパネルであり、排出される用紙Sの先端は積載された用紙Sの当該パネルの位置で当接する。第2パネル6'bは、第1パネル6'aの排出方向の先端部(図9において右端部)に回動可能に支持されているパネルである。第3パネル6'cは、画像形成装置1Aと第1パネル6'aとを接続するパネルであり、排出口下部で画像形成装置1Aに回動可能に支持され、排出方向の先端部(第3パネル6'cの右端部)で第1パネル6'aの左端部と互いに回動可能に接続されている。
第1昇降シャフト61は、第1パネル6'aの裏面(図9において、下側の面)を押圧する位置に配置されており、第1パネル6'aを上下動させることで排出口との距離を変化させるものである。
第1パネル6'aが基本位置にある場合(排紙トレイ6’が図9において破線で示される位置にある場合)、排出口から排出された用紙Sの先端が排紙トレイ6'に当接したときの用紙Sと排紙トレイ6'とがなす角度γは大きくなり、丸まりスタックが発生しやすい。一方、第1パネル6'aが高い位置にある場合(排紙トレイ6’が図9において実線で示される位置にある場合)、排出口から排出された用紙Sの先端が排紙トレイ6'に当接したときの用紙Sと排紙トレイ6'とがなす角度γ'は小さくなり、丸まりスタックが発生しにくい。したがって、本実施形態では、用紙Sの用紙幅Wおよび用紙長Lにより、丸まりスタックが発生しやすい場合は、第1パネル6'aをより高い位置とすることで、丸まりスタックを発生しにくいようにしている。
第2昇降シャフト62は、第2パネル6'bの裏面(図9において、下側の面)を押圧する位置に配置されており、第2パネル6'bを上下動させることで、第1パネル6'aと第2パネル6'bとがなす角度を変更させるものである。
第1パネル6'aが高い位置にある場合第3パネル6'cの傾斜が大きくなり、また、用紙Sにカールが発生しているため、丸まりスタックとはならなくても、排紙トレイ6'に積載された用紙Sの形状に起伏が生じることがある。用紙Sの形状に起伏が生じた状態で排紙を継続すると、排出口から排出された用紙Sの先端と当該起伏との接触負荷が大きくなり、丸まりスタックが発生する可能性がある。したがって、本実施形態では、用紙Sの用紙長Lが大きい場合、第1パネル6'aと第2パネル6'bとがなす角度を小さくして排紙トレイ6'の形状を用紙Sのカールした形状に近付けることにより、積載された用紙Sの形状の起伏の発生を抑制する。
駆動モータ63および64は、それぞれ第1昇降シャフト61および第2昇降シャフト62を駆動するものであり、制御装置8により制御されている。なお、駆動モータの代わりに、ソレノイドなどの他の駆動部品を用いてもよい。
積載量センサ65は、排紙トレイ6'に積載された用紙Sの積載量を検出するものである。積載量センサ65は、積載された用紙Sにより検出レバー65aの先端が持ち上げられることにより、積載量を検出する。本実施形態では、検出レバー65aの基端部分に設けられた図示しない遮蔽板が図示しないフォトセンサを遮ることにより、フォトセンサの出力電圧が変化し、この出力電圧が制御装置8に出力される。なお、積載量センサ65は、これに限定されるものではなく、他の方法で積載量を検出するものでもよい。
排紙トレイ6'に多量の用紙Sが積載されている場合、排出口と積載された用紙Sまでの距離が短いので丸まりスタックが発生しにくい(図16参照)。したがって、この場合は、第1パネル6'aの位置をある程度低くしても丸まりスタックが発生しにくい。また、用紙Sをさらに積載するためには、第1パネル6'aの位置を低くする必要がある。したがって、本実施形態では、積載量センサ65により検出された用紙Sの積載量に応じて、第1パネル6'aの位置を下降するようにしている。なお、第1パネル6'aと第2パネル6'bとがなす角度を変更しないように、第2昇降シャフト62を第1昇降シャフト61と連動して下降させるようにしている。
温湿度センサ66は、画像形成装置1A内部に設けられ、内部の温度および湿度を検出するものであり、検出した温度および湿度の情報を制御装置8に出力する。
画像形成装置1A内部の温度が高い場合、定着器3の温度は制御温度より少し高めで推移するので、用紙Sが定着器3から加えられる熱が多くなる。したがって、用紙Sに生じるカールが大きくなる。また、画像形成装置1A内部の湿度が高い場合、用紙Sが有する水分量が多くなるので、定着器3で熱を加えられた面と裏面との水分量の差が大きくなる。したがって、用紙Sに生じるカールが大きくなる。したがって、本実施形態では、画像形成装置1A内部の温度および湿度が高い場合は、丸まりスタックを抑制するために、第1パネル6'aをより高い位置とするように補正している。
図10は、第1昇降シャフト61および第2昇降シャフト62の上昇量を設定しているテーブルの一例である。当該テーブルに設定されている値に応じて、第1昇降シャフト61および第2昇降シャフト62は上下動して、排紙トレイ6'の位置および形状を変化させる。上昇量がともにゼロのとき、排紙トレイ6'は基本位置で基本形状(図9において、破線で示す。)となる。
図10(a)は、用紙幅および用紙長に応じた上昇量を設定しているテーブルである。用紙幅Wが小さい場合、また、用紙長Lが大きい場合、第1昇降シャフト61の上昇量がより大きくなるように設定されている。また、用紙長Lが所定値より大きい場合、第2昇降シャフト62の上昇量が第1昇降シャフト61の上昇量より小さく設定されている。これにより、第1パネル6'aと第2パネル6'bとがなす角度が小さくなり、積載された用紙Sの形状の起伏の発生が抑制される。
図10(b)は、画像形成装置内部の温度および湿度に応じた補正をするための上昇量の補正量を設定しているテーブルである。画像形成装置内部が高温多湿の場合、両昇降シャフト61,62の上昇量をより大きくし、低温低湿の場合、両昇降シャフト61,62の上昇量をより小さくするように、補正量が設定されている。
図10(c)は、排紙トレイ6'の積載量に応じた補正をするための上昇量の補正量を設定しているテーブルである。本実施形態において、積載量センサ65は、積載量が少ない場合高い電圧を出力し、積載量が多い場合低い電圧を出力する。積載量センサ65からの出力電圧が4.5V以上の場合、積載量が少なく上昇量の補正の必要がないので、補正量としてゼロが設定されている。出力電圧が1.5Vから4.5Vの場合、出力電圧に応じた補正量が設定されており、出力電圧が0.5V上がると上昇量が5mm下がるように設定されている。出力電圧が1.5V以下の場合、上昇量がゼロとなるように設定されている。この場合、排紙トレイ6'は基本位置に位置することになる(図9における破線の排紙トレイ6’参照)。
なお、図10に示すテーブルの数値は一例であり、定着ローラ31の直径、回転速度、加える熱量、排紙トレイ6'の各パネル6'a,6’b,6'cの大きさ、積載量センサ65の構成などにより異なるので、適切な値を実験により決定しておく必要がある。
図11は、排紙トレイ6'の位置および形状を変化させるために制御装置8で行われる、駆動モータ63,64の駆動制御の処理手順を示すフローチャートである。
まず、印刷処理が行われているか否かが判別され(S41)、印刷中でなければ(S41:NO)、印刷情報の受信を待つ(S42)。印刷情報を受信した場合(S42:YES)、用紙幅Wが150mm以下であるか否かが判別される(S43)。
用紙幅Wが150mm以下の場合(S43:YES)、用紙長Lの大きさが150mmより大きく、365mmより小さいか否かが判別される(S44)。用紙長Lが150mm以下の場合、第1昇降シャフトの上昇量H1に35mmが設定され、第2昇降シャフトの上昇量H2に35mmが設定される(S45)。用紙長Lが150mmより大きく、365mmより小さい場合、第1昇降シャフトの上昇量H1に40mmが設定され、第2昇降シャフトの上昇量H2に40mmが設定される(S46)。用紙長Lが365mm以上の場合、第1昇降シャフトの上昇量H1に40mmが設定され、第2昇降シャフトの上昇量H2に35mmが設定される(S45)。なお、用紙Sの用紙幅Wおよび用紙長Lは、受信した印刷情報の用紙サイズデータ(図12参照)から参照される。
用紙幅Wが150mmより大きい場合(S43:NO)、用紙長Lの大きさが200mm以下であるか否かが判別される(S48)。用紙長Lが200mm以下の場合(S48:YES)、第1昇降シャフトの上昇量H1に30mmが設定され、第2昇降シャフトの上昇量H2に30mmが設定される(S49)。用紙長Lが200mmより大きい場合(S48:NO)、第1昇降シャフトの上昇量H1に35mmが設定され、第2昇降シャフトの上昇量H2に30mmが設定される(S50)。
次に、温湿度センサ66により、画像形成装置1A内部の温度および湿度が検出され(S51)、検出された温度および湿度により、画像形成装置1A内部の環境が判別される(S52)。環境がLL(温度15度以下、湿度40%以下の低温低湿状態)の場合、第1昇降シャフトの上昇量H1および第2昇降シャフトの上昇量H2から3mmが減じられる(S53)。環境がNN(温度16度〜25度、湿度41%〜64%の通常状態)の場合、第1昇降シャフトの上昇量H1および第2昇降シャフトの上昇量H2は補正されない(S54)。環境がHH(温度26度以上、湿度65%以上の高温高湿状態)の場合、第1昇降シャフトの上昇量H1および第2昇降シャフトの上昇量H2に3mmが加えられる(S55)。
次に、積載量センサ65より入力される電圧Eが、1.5Vより大きく、4.5Vより小さいか否かが判別される(S56)。なお、電圧Eは、積載量センサ65から制御装置8に常に出力されている。電圧Eが1.5V以下の場合、第1昇降シャフトの上昇量H1および第2昇降シャフトの上昇量H2はゼロとされる(S57)。電圧Eが1.5Vより大きく、4.5Vより小さい場合、第1昇降シャフトの上昇量H1および第2昇降シャフトの上昇量H2は、{10×(4.5−E)}mmが減じられる。例えば、Eが3Vの場合、15mmが減じられる。電圧Eが4.5V以上の場合、第1昇降シャフトの上昇量H1および第2昇降シャフトの上昇量H2は補正されない(S59)。
以上により、第1昇降シャフトの上昇量H1および第2昇降シャフトの上昇量H2は決定され、これに応じて、第1昇降シャフト61および第2昇降シャフト62を駆動するために、駆動モータ63および64が駆動される(S60)。
ステップS41において、印刷処理が行われていると判別された場合(S41:YES)、印刷中は排紙トレイ6'の積載量の変化に応じて第1昇降シャフト61および第2昇降シャフト62を駆動するので、ステップ56に進む。
本実施形態においては、用紙Sの用紙幅Wおよび用紙長L、画像形成装置1A内部の温度および湿度、並びに、排紙トレイ6'の積載量に応じて、用紙Sの丸まりスタックが発生しないように、排紙トレイ6'の位置および形状が変化される。したがって、カールが発生する場合に、適切に用紙の丸まりスタックを抑制することができる。
なお、上記第3実施形態では、用紙Sの用紙幅Wおよび用紙長L、画像形成装置1A内部の温度および湿度、並びに、排紙トレイ6'の積載量に応じて、排紙トレイ6'の位置および形状を変化させているが、これらすべての条件を用いることに限定されるものではない。例えば、用紙Sの用紙幅Wおよび用紙長Lのみに応じて変化させるようにした場合、温湿度センサ66および積載量センサ65を設ける必要が無い。また、用紙Sの用紙幅Wおよび用紙長Lに加えて、用紙Sの厚さや種類などの条件に応じて変化させるようにしてもよい。
実施形態4は、図1の画像形成装置1での片面印刷において、所定の条件を満たす場合には用紙Sの表面に画像が形成された後、直ちに排紙トレイ6に排出せず、両面印刷経路R2で片面印刷経路R1に戻し、再度、定着器3を通した後、排紙トレイ6に排出することで、カールの発生を抑制するようにしている。
制御装置8は、画像形成装置1における片面印刷および両面印刷の制御を行うが、片面印刷におけるカールの発生を抑制するための印刷処理の制御も行うものである。制御装置8は、パソコン10から入力される印刷情報を元に設定を変更して、印刷情報の印刷データを用紙Sに印刷するように制御を行う。
図12は、パソコン10から入力される印刷情報のデータ構造の一例を示す図である。印刷情報は、印刷方式データ、用紙サイズデータ、および各ページの印刷データを含んでいる。印刷方式データは、印刷データの印刷を片面印刷で行うか、両面印刷で行うかを示す情報である。用紙サイズデータは、印刷を行う用紙Sの大きさの情報であり、用紙Sの搬送方向の長さである用紙長L、および、搬送方向と直交する方向の長さである用紙幅Wを含む。
制御装置8は、パソコン10から入力される印刷方式データが両面印刷を示す場合、印刷データを用紙Sに両面印刷するよう制御を行う。一方、印刷方式データが片面印刷を示す場合でも、用紙サイズデータである用紙長Lおよび用紙幅Wに応じて、カールを抑制するために両面印刷するよう制御を行う。
図13は、用紙Sの大きさと丸まりスタックの発生しやすさの関係を説明するための図であり、排出口から排出された用紙Sの先端が排紙トレイ6に達した状態を示している。図13(a)は、用紙長Lが比較的長い場合のものである。用紙先端が排紙トレイ6に達した後、排出ローラ42により用紙Sが後方から押され続けるので、丸まりスタックが発生しやすい。図13(b)は、用紙長Lが比較的短い場合のものである。用紙先端が排紙トレイ6に達したときには、用紙Sの後端が排出口を通過して排紙トレイ6に下降しようとしているので、丸まりスタックが発生しにくい。
図13(c)は、用紙幅Wが比較的狭い場合のものである。用紙Sが折れやすく、下方から受ける空気抵抗が小さいので、用紙先端が排紙トレイ6に達したときの用紙Sと排紙トレイ6とがなす角度αが大きくなり、丸まりスタックが発生しやすい。また、用紙幅Wが狭い場合、定着器3を通過する用紙Sに消費される熱が少ないので、定着器3の温度は制御温度より少し高めで推移する。したがって、当該用紙Sは用紙幅Wが広い場合と比べて良く乾燥するためにカールが大きくなり、丸まりスタックが発生しやすい。図3(d)は、用紙幅Wが比較的広い場合のものである。用紙Sが折れにくく、下方から受ける風量が大きいので、用紙先端が排紙トレイ6に達したときの用紙Sと排紙トレイ6とがなす角度α’が小さくなり、丸まりスタックが発生しにくい。
これらのことから、用紙長Lが所定の用紙長Ltより短い場合、または、用紙幅Wが所定の用紙幅Wtより大きい場合は、丸まりスタックが発生しにくいので、カールを抑制する必要が無いと判断できる。用紙長Ltおよび用紙幅Wtは、定着ローラ31の直径、回転速度、加える熱量などにより異なるので、適切な値を実験により決定しておく必要がある。
本実施形態においては、用紙長Lが所定の用紙長Lt以上であり、かつ、用紙幅Wが所定の用紙幅Wt以下である場合、片面印刷が指定されていてもカールを抑えるために裏面を白紙とした両面印刷(以下、「カール抑制印刷」という。)が行われる。
制御装置8は、パソコン10から入力される印刷データに基づいて印刷イメージを作成し、露光器23に出力する。具体的には、通常の片面印刷の場合は、1ページ分の印刷データをビットマップに展開した印刷イメージを作成して露光器23に出力し、パソコン10から入力された全ての印刷データについてこの処理を行う。両面印刷を行う場合は、2ページ分の印刷データを第1面用のビットマップと第2面用のビットマップに展開する。カール抑制印刷を行う場合は、1ページ分の印刷データを第1面用のビットマップに展開し、第2面用のビットマップに白紙のビットマップを作成する。
制御装置8は、両面印刷またはカール抑制印刷を行う場合、分岐ガイド41および排出ローラ42により反転動作を行う。すなわち、用紙Sが片面印刷経路R1を通過して第1面に印刷が行われた後、表裏が反転されて再度片面印刷経路R1に戻される。用紙Sは、片面印刷経路R1を通過して第2面にも印刷が行われた後、排出ローラ42により排紙トレイ6に排出される。したがって、カール抑制印刷を行う場合、用紙Sの第1面には印刷データに基づく印刷イメージが印刷され、第2面には白紙イメージが印刷される。
制御装置8は、パソコン10から入力される用紙サイズデータで指定される用紙Sが給紙カセット7にあるか否かを判断する。具体的には、用紙センサ72から入力される用紙Sの大きさの情報がパソコン10から入力される用紙サイズデータと一致するかどうか、および、用紙Sが給紙カセット7に有るか否かを判断する。指定された用紙Sがある場合には印刷処理を行い、無い場合にはパソコン10に指定された用紙Sがない旨を通知する。
操作パネル9には、画像形成装置1の各種設定を変更するための操作ボタンが設けられている。操作ボタンの押圧信号は制御装置8に入力され、制御装置8は該当する設定の変更を行う。
次に、処理手順について、図14に示すフローチャートを参照して説明する。
図14は、制御装置8が印刷データを受信したときに行う印刷処理の処理手順を示しており、パソコン10から印刷情報を受信したときに開始される。
まず、指定された用紙Sが給紙カセット7に有るか否かが判別される(S1)。無い場合(S1:NO)、指定用紙がない旨をパソコン10に通知して(S2)、処理を終了する。指定用紙が有る場合(S1:YES)、片面印刷が指定されているか否かが判別される(S3)。すなわち、パソコン10から入力された印刷方式データが片面印刷を示しているか否かが判別される。両面印刷が指定されている場合(S3:NO)、両面印刷処理(S4〜S6)が行われる。
両面印刷処理においては、パソコン10から入力された印刷データから2ページ分の印刷データがビットマップ展開される(S4)。次に、搬送ローラ71が駆動されて用紙Sが給紙カセット7から取り出され、第1面用のビットマップに基づくトナー像が用紙Sの第1面に転写され、定着器3によりトナー像が定着される。次に、反転機構が駆動されて用紙Sが反転され、第2面用のビットマップに基づくトナー像が第2面に転写され、定着器3によりトナー像が定着され、用紙Sは排出される(S5)。印刷データの全ての印刷データが印刷されたか否かが判別され(S6)、印刷されていない印刷データがある場合(S6:NO)はステップS4に戻り、全ての印刷データが印刷された場合(S6:YES)は、処理が終了される。
ステップS3において、片面印刷が指定されている場合(S3:YES)、指定された用紙の用紙長Lおよび用紙幅Wに基づいて、片面印刷処理を行うかカール抑制印刷処理を行うかが判断される。指定された用紙幅Wが所定の用紙幅Wt以下であるか否かが判別され(S7)、指定された用紙幅Wが所定の用紙幅Wtより大きい場合(S7:NO)、丸まりスタックが発生しにくいので、片面印刷処理(S9〜S11)が行われる。指定された用紙幅Wが所定の用紙幅Wt以下の場合(S7:YES)、指定された用紙長Lが所定の用紙長Lt以上であるか否かが判別される(S8)。指定された用紙長Lが所定の用紙長Ltより小さい場合(S8:NO)、丸まりスタックが発生しにくいので、片面印刷処理(S9〜S11)が行われ、指定された用紙長Lが所定の用紙長Lt以上の場合(S8:YES)、カール抑制印刷処理(S12〜S15)が行われる。
すなわち、指定された用紙幅Wが所定の用紙幅Wt以下であり、かつ、指定された用紙長Lが所定の用紙長Lt以上である場合のみ、丸まりスタックが発生しやすいと判断され、カール抑制印刷処理(S12〜S15)が行われ、それ以外の場合は片面印刷処理(S9〜S11)が行われる。
片面印刷処理においては、パソコン10から入力された印刷データから1ページ分の印刷データがビットマップ展開され(S9)、搬送ローラ71が駆動されて用紙Sが給紙カセット7から取り出され、ビットマップに基づくトナー像が用紙Sの第1面に転写され、定着器3によりトナー像が定着され、用紙Sは排出される(S10)。印刷データの全ての印刷データが印刷されたか否かが判別され(S11)、印刷されていない印刷データがある場合(S11:NO)はステップS9に戻り、全ての印刷データが印刷された場合(S11:YES)は、処理が終了される。
カール抑制印刷処理においては、パソコン10から入力された印刷データから1ページ分の印刷データが第1面用のビットマップに展開される(S12)。次に、白紙のビットマップが第2面用のビットマップに作成される(S13)。その後は、両面印刷処理と同様の処理が行われる。
次に、画像形成装置1の作用について説明する。
本実施形態においては、片面印刷が指定されている場合、用紙幅Wが所定の用紙幅Wt以下であり、かつ、用紙長Lが所定の用紙長Lt以上であるときのみ、カール抑制印刷処理が行われ、それ以外のときは通常の片面印刷が行われる。したがって、用紙の丸まりスタックが発生しやすい場合にのみカール抑制印刷処理が行われ、用紙の丸まりスタックが発生しにくい場合には工程の少ない通常の片面印刷処理が行われるので、効率よく用紙の丸まりスタックを抑制することができる。
上記第4実施形態では、カール抑制印刷処理において、白紙のビットマップを作成して用紙Sの第2面に白紙を印刷するようにしていたが、これに限定されない。定着器3により第2面にも熱を加えることが目的なので、再度の片面印刷経路R1の通過の際には、帯電ローラ22、露光器23、および現像器24を駆動せず、感光体ドラム21にトナー像を形成しないようにして、感光体ドラム21と転写ローラ25で用紙Sを搬送するだけにしてもよい。また、第1面が印刷された用紙Sを両面印刷経路R2から直接定着器3に導くカール抑制印刷経路R3(図1における破線矢印R3参照)を設けて、第2面に対しては定着器3のみを通過させるようにしてもよい。
上記第1実施形態では、制御装置8が、パソコン10から入力された印刷情報に基づいて、カール抑制印刷処理を行うか否かを判断し、両面印刷処理とは異なるカール抑制印刷処理を行うが、これに限定されない。例えば、パソコン10において、カール抑制印刷処理を行うか否かを判断して印刷情報を変更したうえで制御装置8に出力するようにしてもよい。
図15は、パソコン10で印刷情報を変更する方法を説明するための図である。図15(a)は、変更前の印刷情報であり、図2のものと同様である。図15(b)は、図15(a)の印刷情報のうちの用紙サイズデータからカール抑制印刷処理を行うと判断された場合の変更後の印刷情報である。当該判断は、用紙Sの用紙長Lおよび用紙幅Wから、パソコン10のCPUで判断される。図15(b)の印刷情報では、カール抑制印刷処理を行うために、印刷方式データが片面印刷から両面印刷に変更され、各ページの印刷データの後に白紙印刷データが挿入されている。この変更後の印刷情報が入力されることにより、制御装置8は両面印刷処理を行う。これにより、制御装置8で判断することなく、カール抑制印刷処理が行われる。
また、上記印刷情報の変更において、各ページの印刷データの後に白紙印刷データを挿入する代わりに、再度の片面印刷経路R1の通過の際には帯電ローラ22、露光器23、および現像器24を機能させない制御を行うことを指定するデータを追加するようにしてもよい。
上記第4実施形態では、用紙Sの用紙長Lおよび用紙幅Wに基づいてカール抑制印刷処理を行うか否かを判断したが、これに限られない。例えば、用紙Sの用紙長Lまたは用紙幅Wのいずれか一方に基づいて判断するようにしてもよい。また、用紙Sの種類に基づいて判断するようにしてもよいし、用紙Sの種類、用紙長L、用紙幅Wのいずれかの組み合わせに基づいて判断するようにしてもよい。
また、印刷枚数に基づいてカール抑制印刷処理を行うか否かを判断するようにしてもよい。
図16は、排紙トレイ6に積載された用紙Sの量と丸まりスタックの発生しやすさの関係を説明するための図であり、排出口から排出された用紙Sの先端が排紙トレイ6に積載された用紙Sに達した状態を示している。図16(a)は、用紙Sの積載量が少ない場合のものである。この場合、排出口と積載された用紙Sまでの距離が長いので、排出された用紙Sと積載された用紙Sとがなす角度βが大きくなり、丸まりスタックが発生しやすい。図16(b)は、用紙Sの積載量が多い場合のものである。この場合、排出口と積載された用紙Sまでの距離が短いので、排出された用紙Sと積載された用紙Sとがなす角度β’が小さくなり、丸まりスタックが発生しにくい。
したがって、印刷枚数Nをカウントして、所定の印刷枚数Ntに達するまでは排紙トレイ6に積載された用紙Sの量が少ないので丸まりスタックが発生しやすく、所定の枚数Ntに達した後は排紙トレイ6に積載された用紙Sの量が多いので丸まりスタックが発生しにくいと判断できる。印刷枚数Ntは、排紙トレイ6の深さ、定着ローラ31の直径、回転速度、加える熱量などにより異なるので、適切な値を実験により決定しておく必要がある。
本発明に係る画像形成装置の第5実施形態では、上記第4実施形態におけるカール抑制印刷を行うか否かの判断に、印刷枚数Nに基づく判断が追加されている。すなわち、用紙長Lおよび用紙幅Wに基づく判断によりカール抑制印刷が行われる場合に、印刷枚数Nがカウントされて、所定の印刷枚数Nt以下の間はカール抑制印刷が行われ、所定の印刷枚数Ntを越えた後は通常の片面印刷が行われる。なお、印刷枚数Nのカウントは、制御装置8でカウントしてもよいし、排出口にカウンタを設けて実際に排出された枚数をカウントするようにしてもよい。また、排紙トレイ6の積載量を検出するセンサを設けて、印刷枚数でなく積載量で判断するようにしてもよい。
図17は、第5実施形態における印刷処理の処理手順を示すフローチャートである。同図のフローチャートは、ステップS32〜S34が追加されている点で、図14に示す第4実施形態における印刷処理とは異なる。ステップS21〜S31については、図14に示すフローチャートのステップS1〜S11と共通しているので説明を省略する。
ステップS28でYESの場合、印刷枚数Nをゼロに初期化する(S32)。次に、印刷枚数Nに1を加算し(S33)、印刷枚数Nが所定の印刷枚数Nt以下であるか否かが判別される(S34)。印刷枚数Nが所定の印刷枚数Nt以下である場合(S34:YES)、丸まりスタックが発生しやすいと判断されるので、カール抑制印刷処理(S35〜S38)が行われる。カール抑制印刷処理(S35〜S38)は、図4に示すフローチャートのステップS12〜S15と同様であるが、ステップS38でNOの場合、ステップS33に戻る点が異なる。すなわち、1枚印刷する毎に印刷枚数Nを1増加して印刷枚数Nt以下であるか否かが判別される。印刷枚数Nが所定の印刷枚数Ntより大きい場合(S34:NO)、丸まりスタックが発生しにくいと判断されるので、片面印刷処理(S29〜S31)が行われる。
本実施形態においては、用紙長Lおよび用紙幅Wに基づく判断に加えて印刷枚数Nに基づく判断がなされるので、用紙の丸まりスタックが発生しやすい場合をより限定してカール抑制印刷処理が行われる。したがって、より効率よく用紙の丸まりスタックを抑制することができる。
図18は、本実施形態において、パソコン10で印刷情報を変更したうえで制御装置8に出力する場合の印刷情報の変更方法を説明するための図である。図18(a)は、変更前の印刷情報であり、図15(a)のものと同様である。図18(b)は、図18(a)の印刷情報のうちの用紙サイズデータからカール抑制印刷処理を行うと判断された場合の変更後の印刷情報である。図18(b)の印刷情報では、図15(b)と同様に、印刷方式データが片面印刷から両面印刷に変更され、各ページの印刷データの後に白紙印刷データが挿入されている。しかし、図15(b)では最後のnページ目まで白紙印刷データが挿入されているが、図18(b)ではNtページ目まで白紙印刷データが挿入された後、片面印刷を示す印刷方式データが挿入されている。なお、Nt≧nの場合は、図15(b)と同様に最後のnページ目まで白紙印刷データが挿入される。
この変更後の印刷情報が入力されると、制御装置8は、Ntページ目まで両面印刷処理を行い、(Nt+1)ページ目からは片面印刷処理を行う。これにより、制御装置8はカール抑制印刷処理を行うか否かを判断することなく、入力される印刷情報に従って印刷処理を行うことができる。
なお、上記実施形態では、パソコンから入力される印刷データを印刷するプリンタ装置について説明したが、これに限定されない。本発明は、接続された電話回線を介して入力される印刷データを印刷するファクシミリ装置や、スキャナにより読み取った印刷データを印刷する複写機、またはこれらの複合機においても適用することができる。
本発明に係る画像形成装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る画像形成装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
上記実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
用紙を供給する用紙供給手段と、画像形成をすべき像のトナー像を形成するための感光体ドラムと、前記トナー像を用紙に転写させるために、前記用紙供給手段から供給される用紙を前記感光体ドラムに圧接させる転写手段と、前記用紙に転写された前記トナー像を溶融定着させるために、前記転写手段から搬送される用紙を加熱する定着手段と、前記定着手段で加熱された用紙を排紙トレイに排出する排出手段と、前記定着手段の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段によって検出された温度に基づいて、温度が高いほど用紙の排出速度を速くするように、前記排出手段による前記用紙の前記排紙トレイへの排出速度を変化させる排出速度制御手段と、を備える画像形成装置。
(付記2)
前記排出速度制御手段は、前記温度検出手段によって検出された温度が所定の温度よりも小さい場合は、前記排出手段の排出速度を通常の排出速度に設定し、前記温度検出手段によって検出された温度が前記所定の温度以上の場合、前記排出手段の排出速度を前記通常の排出速度よりも高い所定の速度に上昇させる、付記1に記載の画像形成装置。
(付記3)
前記排紙トレイの排出口に設けられ、前記用紙の排出方向を切り換える排出方向切換手段と、前記定着手段の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段によって検出された温度が所定の温度よりも小さい場合は、前記排出方向を通常の排出方向に設定し、前記温度検出手段によって検出された温度が前記所定の温度以上の場合は、前記排出方向を前記通常の排出方向よりも排紙トレイに近付けるような所定の排出方向に設定する排出方向制御手段と、をさらに備える、画像形成装置。
(付記4)
前記排紙トレイの排出口に設けられ、前記用紙の排出方向を切り換える排出方向切換手段と、前記定着手段の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段によって検出された温度が所定の温度よりも小さい場合は、前記排出手段の排出速度を通常の排出速度に設定し、前記温度検出手段によって検出された温度が前記所定の温度以上の場合、前記排出手段の排出速度を前記通常の排出速度よりも高い所定の速度に上昇させる排出速度制御手段と、前記温度検出手段によって検出された温度が前記所定の温度よりも小さい場合は、前記排出方向を通常の排出方向に設定し、前記温度検出手段によって検出された温度が前記所定の温度以上の場合は、前記排出方向を前記通常の排出方向よりも排紙トレイに近付けるような所定の排出方向に設定する排出方向制御手段と、をさらに備える、付記3に記載の画像形成装置。
(付記5)
用紙を供給する用紙供給手段と、画像形成をすべき像のトナー像を形成するための感光体ドラムと、前記トナー像を用紙に転写させるために、前記用紙供給手段から供給される用紙を前記感光体ドラムに圧接させる転写手段と、前記用紙に転写された前記トナー像を溶融定着させるために、前記転写手段から搬送される用紙を加熱する定着手段と、前記定着手段で加熱された用紙を排紙トレイに排出する排出手段と、画像形成する用紙の大きさを検出する用紙検出手段をさらに備え、前記排紙トレイは、高さが多段階に調整可能になされ、前記排紙トレイを上下動させる昇降手段と、前記用紙検出手段によって検出された用紙の大きさに基づいて、前記昇降手段により前記排紙トレイを上下動させる排紙トレイ調整手段と、をさらに備える、画像形成装置。
(付記6)
前記排紙トレイは、前記排出口から排出される用紙の先端が当接する位置に相当する第1のパネルと、前記第1のパネルの当該用紙の排出方向の先端部に回動可能に支持された第2のパネルとを備え、前記昇降手段は、前記第1のパネルと前記排出口との距離を変化させるために前記第1のパネルを上下動させる第1の昇降手段と、前記第1のパネルと前記第2のパネルとがなす角度を変更させるために前記第2のパネルを上下動させる第2の昇降手段とを備え、前記排紙トレイ調整手段は、前記用紙検出手段によって検出された用紙の大きさに基づいて、前記第1の昇降手段および第2の昇降手段に前記第1のパネルおよび第2のパネルを上下動させることで、前記排紙トレイの位置および形状を変化させる、付記5に記載の画像形成装置。
(付記7)
前記排紙トレイに排出された用紙の積載量を検出する積載量検出手段をさらに備え、前記排紙トレイ調整手段は、前記積載量検出手段により検出された積載量に応じて、前記排紙トレイの位置を変化させる、付記5または6に記載の画像形成装置。
(付記8)
内部の温度および湿度を検出する温湿度検出手段をさらに備え、前記排紙トレイ調整手段は、前記温湿度検出手段により検出された温度および湿度に応じて、前記排紙トレイの位置を変化させる、付記5ないし7のいずれかに記載の画像形成装置。
(付記9)
前記用紙検出手段は、用紙の厚さも検出し、前記排紙トレイ調整手段は、前記用紙検出手段により検出された用紙の厚さに応じて、前記排紙トレイの位置を変化させる、付記5ないし8のいずれかに記載の画像形成装置。
(付記10)
前記用紙検出手段は、用紙の種類も検出し、前記排紙トレイ調整手段は、前記用紙検出手段により検出された用紙の種類に応じて、前記排紙トレイの位置を変化させる、付記5ないし9のいずれかに記載の画像形成装置。
(付記11)
用紙を供給する用紙供給手段と、画像形成をすべき像のトナー像を形成するための感光体ドラムと、前記トナー像を用紙に転写させるために、前記用紙供給手段から供給される用紙を前記感光体ドラムに圧接させる転写手段と、前記用紙に転写された前記トナー像を溶融定着させるために、前記転写手段から搬送される用紙を加熱する定着手段と、前記定着手段で加熱された用紙を排紙トレイに排出する排出手段と、前記定着手段で加熱された用紙を反転する用紙反転手段をさらに備えている画像形成装置であって、画像形成をする用紙の大きさを設定する用紙設定手段と、前記用紙設定手段によって設定された用紙の大きさが所定の条件を満たすか否かを判別する判別手段と、前記用紙供給手段から供給される用紙が片面に画像形成されるか否かを判別する第2の判別手段と、前記用紙が片面に画像形成される場合でかつ前記用紙の大きさが前記所定の条件を満たすときには、前記定着手段で加熱された用紙を前記用紙反転手段で反転し、前記定着手段で加熱した後、前記排出手段で前記排紙トレイに排出し、前記用紙が片面に画像形成される場合でかつ前記用紙の大きさが前記所定の条件を満たさないときには、前記定着手段で加熱された用紙を前記排出手段で前記排紙トレイに排出する画像形成制御手段と、を備えている画像形成装置。
(付記12)
前記画像形成制御手段は、前記用紙が片面に画像形成される場合でかつ前記用紙の大きさが前記所定の条件を満たすときには、前記感光体ドラムに画像形成すべきトナー像として白紙のトナー像を形成し、前記用紙反転手段で反転された用紙を転写手段で前記感光体ドラムに圧接する、付記11に記載の画像形成装置。
(付記13)
前記排紙トレイに排出された用紙の枚数が所定の枚数以下であるか否かを判別する用紙枚数判別手段をさらに備え、前記画像形成制御手段は、前記用紙が片面に画像形成される場合でかつ各用紙の大きさが前記所定の条件を満たす場合において、前記用紙の枚数が前記所定の枚数以下のときには、前記定着手段で加熱された用紙を前記用紙反転手段で反転し、前記定着手段で加熱した後、前記排出手段で前記排紙トレイに排出し、前記用紙の枚数が前記所定の枚数より多いときには、前記定着手段で加熱された用紙を前記排出手段で前記排紙トレイに排出する、付記11または12に記載の画像形成装置。
(付記14)
前記所定の条件は、前記用紙の搬送方向の長さである用紙長が所定の用紙長以上であることである、付記11ないし13のいずれかに記載の画像形成装置。
(付記15)
前記所定の条件は、前記用紙の搬送方向と直交する方向の長さである用紙幅が所定の用紙幅以下であることである、付記11ないし13のいずれかに記載の画像形成装置。
(付記16)
前記所定の条件は、前記用紙の搬送方向の長さである用紙長が所定の用紙長以上であり、かつ、前記搬送方向と直交する方向の長さである用紙幅が所定の用紙幅以下であることである、付記11ないし13のいずれかに記載の画像形成装置。
(付記17)
前記用紙検出手段は、用紙の種類も検出し、前記画像形成制御手段は、前記用紙が片面に画像形成される場合でかつ各用紙の大きさが前記所定の条件を満たす場合において、検出された用紙の種類が所定の種類である場合には、前記定着手段で加熱された用紙を前記用紙反転手段で反転し、前記定着手段で加熱した後、前記排出手段で前記排紙トレイに排出し、検出された用紙の種類が前記所定の種類でない場合には、前記定着手段で加熱された用紙を前記排出手段で前記排紙トレイに排出する、付記11ないし16のいずれかに記載の画像形成装置。