JP5236320B2 - 離型フィルム - Google Patents

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Description

ポリエステルフィルムを基材とする離型フィルムは、その優れた特性より、液晶偏光板、位相差板構成部材製造用、PDP構成部材製造用、有機EL構成部材製造用等、各種ディスプレイ構成部材製造用等、各種光学用途等に使用されている。その中でも特に、液晶偏光板用離型フィルムに関しては近年のLCD市場の著しい成長に伴う生産量の急激な増加が見られる。また、LCD低価格化に伴い、部材の低価格実現のため、製造歩留まりの向上、および、製造の高速化に達成が大きな課題となっている。
製造の高速化要求は、偏光板の液晶パネルへの貼り付け工程にまでいたっている。LCD偏光板の液晶パネルへの貼り付け時のタクトタイム短縮のため、離型フィルムの剥離速度の高速化が求められており、従来の数m/分から20m/分以上の剥離速度が実用化されており、20m/分以上の高速剥離時の剥離力が高いと、LCD偏光板から離型フィルムの剥離時に、偏向板固定側の吸引力が負け、偏向版の位置がずれる不具合が発生する、一旦不具合が発生すると、自動化ラインが停止し、生産性の低下を余儀なくされる、固定側吸引力を強くする対策も考えられるが、偏向板へ跡が残るため限界がある。
このように剥離時に軽剥離化が求められている一方、剥離されるまでの工程では十分な保持力を持って粘着層と密着していなければならない。特に偏光板を裁断、打ち抜き加工する際や、保管時の温湿度の変化による素材の伸縮度の違いなどによってメクレ、浮きが生じやすく、そのようなことが起こると生産性の低下につながる。
従来のフィルムにおいては、このような高速での剥離時の軽剥離と、保持力に関係の深い低速での剥離が比較的重いことの両立において必ずしも十分ではなく、またこのようなねらいで離型層の設計を変更した場合、ポリマーに固定されていない成分による移行性、離型面が大気にふれることにより重剥離化する大気暴露性が悪化する等、その性能において必ずしも十分ではなかった。
特開2001−290141号公報 特開2001−47580号公報
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、実際に剥離するときに相当する高速での剥離が軽く、保存時の保持力に関係の深い低速での剥離が比較的重く、大気暴露の影響も小さく、さらに非移行性にも優れる離型フィルムを提供することにある。
本発明者は上記実状に鑑み、鋭意検討した結果、塗料として特定の構造、構成のシリコーンを用いれば上述の課題を解決できることを知見し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に硬化型シリコーンを主とする塗料を塗工量(乾燥後)が0.06〜0.3g/mの範囲となるように塗工した離型フィルムであり、当該塗料が、ビニル基を含有するポリシロキサン鎖におけるビニル基の含有割合がシロキサン単位で3%以上である溶剤型シリコーンと、1000mPa・s以下の粘度を有し、ビニル基を含有するポリシロキサン鎖におけるビニル基の含有割合がシロキサン単位で3%以上である無溶剤型シリコーンと、反応性重剥離調整剤とを主成分として含有し、かつ塗料中のSiH/Vi比が2.5〜7であり、塗布面のアクリル粘着テープに対する低速(0.3m/min)での剥離力Aと高速(30m/min)での剥離力Bの比の値(A/B)が0.49以上であることを特徴とする離型フィルムに存する。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明において、ポリエステルフィルムに使用するポリエステルはホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート
(PEN)等が例示される。
一方、共重合ポリエステルの場合は30モル%以下の第三成分を含有した共重合体であることが好ましい。共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、P−オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
何れにしても本発明でいうポリエステルとは、通常80モル%以上、好ましくは90モル%以上がエチレンテレフタレート単位であるポリエチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート単位であるポリエチレン−2,6−ナフタレート等であるポリエステルを指す。
本発明におけるポリエステル層中には易滑性付与を主たる目的として粒子を配合することが好ましい。配合する粒子の種類は易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらにポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等の何れを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
また、本発明においてポリエステルフィルムに含有される粒子の平均粒径は0.1〜5μmを満足するのが好ましく、さらに好ましくは0.5〜3μm、最も好ましくは0.5〜2μmの範囲である。平均粒径が0.1μm未満の場合には、粒子が凝集しやすく、分散性が不十分となり、一方、5μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、後工程において離型層を設ける場合等に不具合を生じることがある。
さらにポリエステル中の粒子含有量は、0.01〜5重量%を満足するのが好ましく、さらに好ましくは0.01〜3重量%の範囲である。粒子含有量が0.01重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分になる場合があり、一方、5重量%を超えて添加する場合にはフィルム表面の平滑性が不十分になる場合がある。
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には上述の粒子以外に本発明の主旨を損なわない範囲において、従来公知の酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
本発明の離型フィルムを構成するポリエステルフィルムの厚みはコスト的にはより薄膜であるのが好ましいが、一方においてはフィルム平面性確保の必要がある。離型フィルムを構成するポリエステルフィルム厚みが薄すぎる場合には加工時の熱処理によるしわ等により、フィルム平面性が損なわれる場合が多い。また偏光板に加工された後に力が加わった場合薄いフィルムでは粘着剤に対する保護機能が十分でなくなる恐れがある。かかる観点より、本発明における離型フィルムを構成するポリエステルフィルムの厚みは12〜125μmであるのが好ましく、さらに好ましくは25〜75μmの範囲がよい。
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高める必要があり、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する延伸温度は通常130〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。
上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用すること
もできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。また、同時二軸延伸を行うことも可能である。
同時二軸延伸法としては、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法で、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。
上述の延伸方式を使用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動式等、従来から公知の延伸方式を採用することができる。「スクリュー方式」はスクリューの溝にクリップを乗せてクリップ間隔を広げていく方式である。「パンタグラフ方式」はパンタグラフを用いてクリップ間隔を広げていく方式である。「リニアモーター方式」はリニアモーター原理を応用し、クリップを個々に制御可能な方式でクリップ間隔を任意に調整することができる利点を有する。
さらに同時二軸延伸に関しては二段階以上に分割して行ってもよく、その場合、延伸場所は一つのテンター内で行ってもよいし、複数のテンターを併用してもよい。
本発明において、同時二軸延伸により離型フィルムを構成するポリエステルフィルムを延伸することによれば、従来、逐次二軸延伸では面積倍率が大きくなる場合において、延伸時に破断する等の不具合を生じる場合があったが、同時二軸延伸においては延伸追従性が良好であるため、フィルム長手方向および幅方向において、逐次二軸延伸よりもさらに面積倍率を大きくすることが可能なため、さらにフィルム厚みむらの小さいポリエステルフィルムを製造することが可能となるので好ましい。
また、上述のポリエステルフィルムの延伸工程中にフィルム表面を処理する、いわゆる塗布延伸法(インラインコーティング)を施すことができる。それは以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては特に1段目の延伸が終了して、2段目の延伸前にコーティング処理を施すことができる。
本発明の離型フィルムを構成する離型層は離型性を有する硬化型シリコーン樹脂で、硬化課程においてビニル基とケイ素-水素結合を有する基の付加反応を含むもの(いわゆる付加型シリコーン)である。
本発明において、ビニル基を含有するポリシロキサン鎖におけるビニル基の含有割合がシロキサン単位で3%以上であるシリコーンとは、付加型シリコーンにおいて多くの場合主成分となるビニル基を有するポリシロキサンにおいて、その骨格を形成するシロキサン単位(Si原子1個を含む単位であり、一般に下記式で表される)を1単位として数えたときにビニル基を含有するものが3%以上であるものを言う。
Figure 0005236320
硬化処理におけるエネルギー源は熱処理が一般的であるが、紫外線照射、電子線照射を併用することもできる。
本発明における溶剤型シリコーンの意味するところは、当業者の間で「ガム」と呼ばれる粘度でおよそ百万mPa・s以上のシリコーンで、一般には取り扱いを容易にするために溶剤に溶解させた状態で供給される。実際の塗料においては30%トルエン溶液とした時の粘度でおよそ1000mPa・s以上、好ましくは5000mPa・s以上のものである。
本発明で用いる無溶剤型シリコーンとは、溶剤に希釈せずとも塗工できる粘度のシリコーンで、前記溶剤型よりも分子の小さい、短いポリシロキサン鎖よりなっている。たとえば、前記ガムは、シロキサン重合度で数千〜数万であるのに対し、無溶剤型は一般に数十から数百である。付加型シリコーンの架橋反応点となるビニル基は多くの場合、鎖の末端と内側に入っているが、末端のビニル基は反応の際立体障害が少ないため内側のビニル基と比べて非常に早く反応する。したがって、無溶剤型シリコーンは、反応性の高い末端ビニル基を溶剤型に比して非常に多く持つので、塗料とした場合硬化速度が速くなるという利点がある。
一方、ポリエステル基材に塗工する際の塗工性の面では劣る。低粘度であるためはじきやすく、特にポリエステル離型フィルム製造で通常行われる薄膜塗工においては良好な面状を得ることはきわめて難しい。
本発明ではこのような無溶剤型シリコーンの利点を生かし、欠点を補うために高粘度の溶剤型シリコーンと混用して用いる。混用の比率は固形分重量で(溶剤型/無溶剤型)の値で10/90〜95/5、好ましくは40/60〜90/10である。
本発明で用いる反応性重剥離調整剤とは、塗料乾燥時に離型塗料のシロキサンポリマーと反応して中に取り込まれるタイプの重剥離化調整剤である。化学構造は本発明の趣旨の範囲を逸脱しない限り特に限定されないが、反応基としてビニル基を有し、一般にMQレジン、MDQレジンと呼ばれるものが好ましい例として挙げられる。混用の比率は、所望の剥離を得るために任意に調整できるが、固形分重量において{重剥離調整剤/(無溶剤型、溶剤型シリコーンの和)}の値で1/99〜50/50、好ましくは2/98〜30/70である。多すぎる場合、反応性といえども移行性が増大し、また一般に該剥離調整剤は低粘度であることが多いため、良好な面状を得ることが難しくなる。
本発明で用いる付加型シリコーンにおいてはその架橋反応に関与するシロキサンのビニル基および≡SiH基とビニル基の含有比(SiH/Vi比)が重要である。通常≡SiH基の方が過剰になるように用い、この比は1.2〜2.0程度に設定されることが多い(小川匡彦、コンバーテック p.49(1996))。本発明で用いられるビニル基を含有するポリシロキサン鎖におけるビニル基の含有割合がシロキサン単位で3%以上であるシリコーンは官能基の絶対数が多いので、同じ過剰率でも過剰となる≡SiH基の絶対数も多くなるので通常は過剰率を控えめとすることが多い。しかしながら本発明者は、このようなシリコーンをポリエステルフィルムに薄膜塗工する場合は、好ましい領域が従来言われているものと大きくずれていることを知見した。好ましいSiH/Vi比は2.5〜7、より好ましくは3.0〜5.0である。
本発明における希釈溶剤としては、トルエン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、エチルメチルケトン(MEK)、イソブチルメチルケトン等のケトン類、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類が例示でき、溶解性、塗工性や沸点等を考慮して単独または複数混合して使用する。
また、離型層の特性を調整するために本発明の主旨を損なわない範囲において、反応調整剤、密着強化剤等の助剤を併用してもよい。
離型層の塗工量(乾燥後)はポリエステルフィルムが平坦であるため紙類に塗工するより薄くするのがよく0.01〜1g/m、好ましくは0.04〜0.5g/m、さらに好ましくは0.06〜0.3g/mの範囲である。離型層の塗工量が少な過ぎる場合、剥離力の安定性に欠けることがある。一方、塗工量が多すぎる場合、移行性の増大、ブロッキングの懸念がある。
本発明において、ポリエステルフィルムに離型層を設ける方法として、マルチロールコート、リバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、バーコート、ダイコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。塗工方式に関しては「コーティング方式」槇書店 原崎勇次著1979年発行に記載例がある。
また、本発明における離型フィルムを構成するポリエステルフィルムには予めコロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。さらに本発明における離型フィルムを構成するポリエステルフィルムには予め接着層、帯電防止層等の塗布層が設けられていてもよい。
本発明によれば、剥離力の剥離時に剥離が軽く、保存時の保持力に優れ、かつ耐大気暴露性や非移行性に優れる離型フィルムを提供することができ、その工業的価値は極めて高い。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法は次のとおりである。
(1)剥離力A(剥離速度0.3m/min)の測定
試料フィルムの離型面に粘着テープ(日東電工(株)製「No.31B」)を貼り付けた後、50mm×300mmのサイズにカットし、室温にて1時間放置後の剥離力を測定した。剥離力は(株)インテスコ製「インテスコモデル2001型」を使用し、引張速度0.3(m/min)の条件下、180°剥離を行った。
(2)剥離力B(剥離速度30m/min)の測定
試料フィルムの離型面に粘着テープ(日東電工(株)製「No.31B」)を貼り付けた後、50mm×300mmのサイズにカットし、室温にて1時間放置後の剥離力を測定した。剥離力はテスター産業(株)製高速剥離試験機「TE−702型」を使用し、試料フィルムの離型面が上面になるように固定し、貼り合わせているNo.31B粘着テープ側を剥離する方法にて剥離速度30(m/min)にて180°剥離を行った。
(3)剥離力C(大気暴露後剥離力)の測定
試料フィルムをA4大に切り取り、室温23℃湿度50%RHに調節された実験室(非クリーン環境)内に渡した紐に24時間つり下げる。離型面に粘着テープ(日東電工(株)製「No.502」淡色剥離紙側を使用)を貼り付けた後、50mm×300mmのサイズにカットし、室温にて1時間放置後の剥離力を測定した。剥離力は(株)インテスコ製「インテスコモデル2001型」を使用し、引張速度0.3(m/min)の条件下、180°剥離を行った。
(4)剥離力D(大気未暴露剥離力)の測定
剥離力Cの測定において試料フィルムを実験室内につり下げる代わりに、ポリエチレン製の袋に入れて外気に触れないようにして同じ実験室に24時間放置すること以外は同様にして剥離力を測定した。
(5)離型フィルムの移行性評価接着率
試料フィルムをA4大に切り取り、離型面に75μm厚2軸延伸PETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム株式会社製:ダイアホイルT100−75)を重ねて温度60℃、圧力1MPaの条件で2時間プレスする。この離型面に押し当てた75μm厚フィルムを移行性評価フィルムとする。
未処理のPETフィルムにも同様にして75μm厚2軸延伸PETフィルム(同)を押し当て、基準フィルムとする。それぞれのフィルムの押し当てた面に粘着テープ(日東電工(株)製「No.31B」)を貼り付けた後、50mm×300mmのサイズにカットし、室温にて1時間放置後の剥離力を測定した。剥離力は(株)インテスコ製「インテスコモデル2001型」を使用し、引張速度0.3(m/min)の条件下、180°剥離を行った。
移行性評価接着率(%)=(移行性評価フィルムの剥離力/基準フィルムの剥離力)×100
移行性の大きなフィルムでは押し当てたフィルムに多くのシリコーンが付着するため、粘着テープの剥離力が小さくなり、移行性評価接着率(%)も低下する。90%以上が好ましく、95%以上がさらに好ましい。
(6)塗料中のシロキサンのビニル基含有量、≡SiH基およびビニル基の含有量比(SiH/Vi比)
塗料中のシロキサンのビニル基含有量、≡SiH基およびビニル基の含有量比(SiH/Vi比)については、塗料単体または混合物のNMR分析により算出した。
実施例1:
38μm厚2軸延伸PETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム株式会社製:ダイアホイルT100−38)に下記組成からなる離型剤を塗布量(乾燥後)が約0.12(g/m2)になるように塗布し、150℃、10秒間熱処理し、離型フィルムを得た。
《離型剤組成》
・30%トルエン溶液での粘度が8000mPa・s、主ポリマーにビニル基をシロキサン単位で約8%含有する溶剤型シリコーン(信越化学(株)製:KS−3601、不揮発分30%) 70重量部
・粘度300mPa・s、主ポリマーにビニル基をシロキサン単位で約5%含有する無溶剤型シリコーン(信越化学(株)製:KNS−3002、不揮発分100%) 4.5重量部
・溶剤型反応性剥離調整剤(信越化学(株)製:KS−3800、不揮発分30%) 15重量部
・(CHSiO(−SiH(CH)−O)−Si(CHで表されるシリコーン(Gelest社製:HMS−991、粘度約20mPa・s) 2.4重量部
・白金含有触媒(信越化学(株)製:catPL−50T) 1重量部
これをトルエン/MEK/イソオクタンの混合溶媒(混合比率は1:1:1)にて希釈し、固形分濃度2重量%の塗布液を作製した。
実施例2:
実施例1において、離型剤組成を下記離型剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。
《離型剤組成》
・30%トルエン溶液での粘度が8000mPa・s、主ポリマーにビニル基をシロキサン単位で約8%含有する溶剤型シリコーン(信越化学(株)製:KS−3601、不揮発分30%) 70重量部
・粘度300mPa・s、主ポリマーにビニル基をシロキサン単位で約5%含有する無溶剤型シリコーン(信越化学(株)製:KNS−3002、不揮発分100%) 7.5重量部
・溶剤型反応性剥離調整剤(信越化学(株)製:KS−3800、不揮発分30%) 5重量部
・(CHSiO(−SiH(CH)−O)−Si(CHで表されるシリコーン(Gelest社製:HMS−991、粘度約20mPa・s) 2.4重量部
・白金含有触媒(信越化学(株)製:catPL−50T) 1重量部
これをトルエン/MEK/イソオクタンの混合溶媒(混合比率は1:1:1)にて希釈し、固形分濃度2重量%の塗布液を作製した。
比較例1:
実施例1において、離型剤組成を下記離型剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。
《離型剤組成》
・30%トルエン溶液での粘度が8000mPa・s、主ポリマーにビニル基をシロキサン単位で約8%含有する溶剤型シリコーン(信越化学(株)製:KS−3601、不揮発分30%) 100重量部
・白金含有触媒(信越化学(株)製:catPL−50T) 1重量部
これをトルエン/MEK/イソオクタンの混合溶媒(混合比率は1:1:1)にて希釈し、固形分濃度2重量%の塗布液を作製した。
比較例2:
実施例1において、離型剤組成を下記離型剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。
《離型剤組成》
・30%トルエン溶液での粘度が15000mPa・s、主ポリマーにビニル基をシロキサン単位で約1%含有する溶剤型シリコーン(信越化学(株)製:KS−3703、不揮発分30%) 100重量部
・(CHSiO(−SiH(CH)−O)−Si(CHで表されるシリコーン(Gelest社製:HMS−991、粘度約20mPa・s) 0.36重量部
・白金含有触媒(信越化学(株)製:catPL−50T) 1重量部
これをトルエン/MEK/イソオクタンの混合溶媒(混合比率は1:1:1)にて希釈し、固形分濃度2重量%の塗布液を作製した。
比較例3:
実施例1において、離型剤組成を下記離型剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。
《離型剤組成》
・30%トルエン溶液での粘度が15000mPa・s、主ポリマーにビニル基をシロキサン単位で約0.8%含有する溶剤型シリコーン(信越化学(株)製:KS−774、不揮発分30%) 90重量部
・反応性官能基の少ない溶剤型剥離調整剤(信越化学(株)製:X−92−183、不揮発分30%) 10重量部
・白金含有触媒(信越化学(株)製:catPL−50T) 1重量部
これをトルエン/MEK/イソオクタンの混合溶媒(混合比率は1:1:1)にて希釈し、固形分濃度2重量%の塗布液を作製した。
比較例4:
実施例1において、離型剤組成を下記離型剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。
《離型剤組成》
・30%トルエン溶液での粘度が15000mPa・s、主ポリマーにビニル基をシロキサン単位で約0.4%含有する溶剤型シリコーン(信越化学(株)製:KS−847H、不揮発分30%) 85重量部
・溶剤型反応性剥離調整剤(信越化学(株)製:KS−3800、不揮発分30%) 15重量部
・白金含有触媒(信越化学(株)製:catPL−50T) 1重量部
これをトルエン/MEK/イソオクタンの混合溶媒(混合比率は1:1:1)にて希釈し、固形分濃度2重量%の塗布液を作製した。
上記実施例および比較例で得られた各フィルムの特性を下記表1にまとめて示す。
Figure 0005236320
実施例1および実施例2のフィルムは、保存時の保持力に関係の深い低速での剥離が比較的重いのに実際に剥離するときに相当する高速での剥離が軽く、大気暴露の影響も小さく、さらに非移行性にも優れる。一方、SiH/Vi比が小さい比較例1は、高速での剥離時の軽剥離と低速での剥離が比較的重いことの両立が十分でなく、大気暴露性も大きく低下した。ビニル基含有量が少ない比較例2では、SiH/Vi比を大きくしても低速と高速の剥離力の差が大きくなった。また、ビニル基含量の少ないシリコーンに剥離調整剤を加えた比較例3および4では、やはり高速での剥離時の軽剥離と低速での剥離が比較的重いことの両立が十分でなく、他の特性も悪化した。
本発明のフィルムは、例えば、離型フィルムとして好適に利用することができる。

Claims (1)

  1. ポリエステルフィルムの少なくとも片面に硬化型シリコーンを主とする塗料を塗工量(乾燥後)が0.06〜0.3g/mの範囲となるように塗工した離型フィルムであり、当該塗料が、ビニル基を含有するポリシロキサン鎖におけるビニル基の含有割合がシロキサン単位で3%以上である溶剤型シリコーンと、1000mPa・s以下の粘度を有し、ビニル基を含有するポリシロキサン鎖におけるビニル基の含有割合がシロキサン単位で3%以上である無溶剤型シリコーンと、反応性重剥離調整剤とを主成分として含有し、かつ塗料中のSiH/Vi比が2.5〜7であり、塗布面のアクリル粘着テープに対する低速(0.3m/min)での剥離力Aと高速(30m/min)での剥離力Bの比の値(A/B)が0.49以上であることを特徴とする離型フィルム。
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