JP2009214402A - 離型フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】 液晶偏光板の製造工程の広幅化や高速化において、加工適正に優れ、離型フィルムの高速剥離性にも優れ、液晶偏光板製造用として好適な離型フィルムを提供する。
【解決手段】 フィルム幅が1460mm以上のポリエステルフィルムの片面に、ビニル基を含有するポリシロキサン鎖におけるビニル基の含有割合がシロキサン単位で3%以上であるシリコーンを塗工した離型フィルムであり、当該離型フィルムのたるみ量が15mm/m以下であり、140℃の雰囲気下で5分間保持したときのフィルム両端長手方向の加熱収縮率が2.5%以下、同条件におけるフィルム両端長手方向の加熱収縮率の差が0.2%以下であることを特徴とする離型フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、近年著しい成長が見られる液晶ディスプレイ(以下、LCDと略記する場合がある)の偏向板製造用の離型フィルムに関するものであり、液晶偏光板の製造工程の広幅化や高速化において、加工適正に優れており、さらに高速での剥離時には軽剥離な離型フィルムに関するものである。
従来、ポリエステルフィルムを基材とする離型フィルムは、その優れた特性より、液晶偏光板、位相差板構成部材製造用、PDP構成部材製造用、有機EL構成部材製造用等、各種ディスプレイ構成部材製造用等、各種光学用途等に使用されている。
その中でも特に、液晶偏光板用離型フィルムに関しては近年のLCD市場の著しい成長に伴う生産量の急激な増加が見られる。また、LCD低価格化に伴い、部材の低価格実現のため、製造歩留まりの向上、および、製造の高速化に達成が大きな課題となっている。
大画面LCD市場の成長に対応するため、離型フィルムには広幅化とともに偏光板の取り効率の向上も求められている。例えば横930mm×縦520mmの42インチ型LCD偏光板を2枚以上取る場合、1460mm以上の幅を有する離型フィルムが必要とされる。
品質に関しては製造の高速化や、フィルムの広幅化に伴い、加熱による形状変化の均一性が求められているが、その改良は不十分である。さらに、製造の高速化要求は、偏光板の液晶パネルへの貼り付け工程にまで至っている、LCD偏光板の液晶パネルへの貼り付け時のタクトタイム短縮のため、離型フィルムの剥離速度の高速化が求められており、従来の数m/分から20m/分以上の剥離速度が実用化されており、20m/分以上の高速剥離時の剥離力が高いと、LCD偏光板から離型フィルムの剥離時に、偏向板固定側の吸引力が負け、偏向版の位置がずれる不具合が発生する、一旦不具合が発生すると、自動化ラインが停止し、生産性の低下を余儀なくされる、固定側吸引力を強くする対策も考えられるが、偏向板へ跡が残るため限界がある。
特開2001−290141号公報 特開2001−47580号公報
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その解決課題は、例えば、液晶偏光板の製造工程の広幅化や高速化において、加工適正に優れ、離型フィルムの高速剥離性にも優れ、液晶偏光板製造用として好適な離型フィルムを提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構成を有する離型フィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、フィルム幅が1460mm以上のポリエステルフィルムの片面に、ビニル基を含有するポリシロキサン鎖におけるビニル基の含有割合がシロキサン単位で3%以上であるシリコーンを塗工した離型フィルムであり、当該離型フィルムのたるみ量が15mm/m以下であり、140℃の雰囲気下で5分間保持したときのフィルム両端長手方向の加熱収縮率が2.5%以下、同条件におけるフィルム両端長手方向の加熱収縮率の差が0.2%以下であることを特徴とする離型フィルムに存する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における離型フィルムの基体であるポリエステルフィルムは単層構成であっても積層構成であってもよく、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。
本発明においてフィルムに使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。何れにしても本発明でいうポリエステルとは、通常60モル%以上、好ましくは80モル%以上がエチレンテレフタレート単位であるポリエチレンテレフタレート等であるポリエステルを指す。
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステル層中には、易滑性付与を主たる目的として粒子を配合することが好ましい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、フィルム原料の製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.05〜5μm、好ましくは0.05〜3μmの範囲である。平均粒径が0.05μm未満の場合には、粒子が凝集しやすく、分散性が不十分な場合があり、一方、5μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、後工程において種々の表面機能層を塗設させる場合等に不具合が生じる場合がある。
さらにポリエステル層中の粒子含有量は、通常0.001〜5重量%、好ましくは0.005〜3重量%の範囲である。粒子含有量が0.001重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、5重量%を超えて添加する場合にはフィルムの透明性が不十分な場合がある。
ポリエステル層中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリマーを製造する任意の段階において添加することができる。
また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
本発明の離型フィルム厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲で、かつ、離型フィルムとしての加工が可能であれば特に限定されるものではないが、通常10μm〜100μm、好ましくは15μm〜50μmの範囲である。フィルム厚みが10μm未満では、フィルムに腰がないため、離型フィルムを剥がす工程でトラブルを生じやすくなり好ましくない。フィルム厚みが100μmを超える場合は、製造コストが上がるため低価格化の要求に反し、好ましくない。
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。
すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高める必要があり、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
また、本発明においては離型フィルムを構成するポリエステルフィルム製造に関しては同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法とは、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
さらに上述のポリエステルフィルムの延伸工程中にフィルム表面を処理する、いわゆるインラインコーティングを施すことができる。インラインコーティングによりポリエステルフィルム上に塗布層が設けられる場合には、延伸と同時に塗布が可能となると共に、塗布層の厚みを延伸倍率により変化させることができるため、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造できる。
次に本発明における塗布層の形成について説明する。本発明における離型フィルムを構成する塗布層は上述のインラインコーティングによりポリエステルフィルム上に設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、いわゆるオフラインコーティングを採用してもよく、両者を併用してもよい。なお、積層ポリエステルフィルムの製造が安価に対応可能な点でインラインコーティングの方が好ましく用いられる。
インラインコーティングについては以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては特に縦延伸が終了して、横延伸前にコーティング処理を施すことができる。塗布延伸法によりポリエステルフィルム上に塗布層が設けられる場合には、製膜と同時に塗布が可能になると共に塗布層を高温で処理することができ、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造できる。
次に本発明における離型層の形成について説明する。すなわち、本発明における離型フィルムを構成する離型層は、上述の塗布延伸法(インラインコーティング)等のフィルム製造工程内において、ポリエステルフィルム上に設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、いわゆるオフラインコーティングを採用してもよく、何れの手法を採用してもよい。塗布延伸法(インラインコーティング)については以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては特に1段目の延伸が終了して、2段目の延伸前にコーティング処理を施すことができる。塗布延伸法によりポリエステルフィルム上に離型層が設けられる場合には、延伸と同時に塗布が可能になると共に離型層の厚みを延伸倍率に応じて薄くすることができ、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造できる。
本発明の離型フィルムを構成する離型層は離型性を有する硬化型シリコーン樹脂で、硬化課程においてビニル基とケイ素-水素結合を有する基の付加反応を含むもの(いわゆる付加型シリコーン)である。
本発明における「ビニル基を含有するポリシロキサン鎖におけるビニル基の含有割合がシロキサン単位で3%以上であるシリコーン」とは、付加型シリコーンにおいて多くの場合主成分となるビニル基を有するポリシロキサンにおいて、その骨格を形成するシロキサン単位(Si原子1個を含む単位であり、一般に下記式で表される)を1単位として数えたときにビニル基を含有するものが3%以上であるものを言う。
Figure 2009214402
硬化処理におけるエネルギー源は熱処理が一般的であるが、紫外線照射、電子線照射を併用することもできる。
本発明で用いるシリコーン化合物の分子量は特に限定されないが、溶剤に希釈して塗工することを考慮すると、少なくとも一成分に「ガム」と呼ばれる粘度でおよそ百万mPa・s以上のものを含むことが望ましい。実際の塗料においては30%トルエン溶液で粘度およそ1000mPa・s以上、好ましくは5000mPa・s以上のものを少なくとも一成分として含むことが望ましい。粘度が低いと、均一に塗工するための溶剤の選択が難しくなる、はじき等塗工面状が悪化し光学用フィルムとして適さなくなる等の悪影響が懸念される(「シリコーンハンドブック」p.523、日刊工業新聞社、伊藤邦雄編(1990)に記載がある)。
本発明で用いる付加型シリコーンにおいては、その架橋反応に関与するシロキサンのビニル基および≡SiH基とビニル基の含有比(SiH/Vi比)は、通常≡SiH基の方が過剰になるように用い、SiH/Vi比は1.2〜7、好ましくは2.5〜5.0である。
本発明における希釈溶剤としては、トルエン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、エチルメチルケトン(MEK)、イソブチルメチルケトン等のケトン類、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類が例示でき、溶解性、塗工性や沸点等を考慮して単独または複数混合して使用する。
また、離型層の特性を調整するために本発明の主旨を損なわない範囲において、反応調整剤、密着強化剤、剥離コントロール剤等の助剤を併用してもよい。
離型層の塗工量(乾燥後)は、通常0.01〜1g/m、好ましくは0.04〜0.5g/m、さらに好ましくは0.06〜0.3g/mの範囲である。離型層の塗工量が少な過ぎる場合、剥離力の安定性に欠けることがある。一方、塗工量が多すぎる場合、移行性の増大、ブロッキングの懸念がある。
本発明において、ポリエステルフィルムに離型層を設ける方法として、リバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。塗工方式に関しては「コーティング方式」槇書店 原崎勇次著 1979年発行に記載例がある。
本発明において、ポリエステルフィルム上に離型層を形成する際の硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、例えば、塗布延伸法(インラインコーティング)により離型層を設ける場合、通常、170〜280℃で3〜40秒間、好ましくは200〜280℃で3〜40秒間を目安として熱処理を行うのがよい。一方、オフラインコーティングにより離型層を設ける場合、通常、80〜200℃で3〜40秒間、好ましくは100〜180℃で3〜40秒間を目安として熱処理を行うのがよい。また、塗布延伸法(インラインコーティング)あるいはオフラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。なお、活性エネルギー線照射による硬化のためのエネルギー源としては、従来から公知の装置,エネルギー源を用いることができる。離型層の塗工量は塗工性の面から、通常0.005〜1g/m、好ましくは0.005〜0.5g/mの範囲である。塗工量が0.005g/m未満の場合、塗工性の面より安定性に欠け、均一な塗膜を得るのが困難になる場合がある。一方、1g/mを超えて厚塗りにする場合には離型層自体の塗膜密着性、硬化性等が低下する場合がある。
本発明において塗布層上に離型層を設ける場合、塗布層を設けた後にフィルムを一旦巻き取り、あらためて離型層を設けてもよく、また、塗布層を設けた後、連続して、離型層を塗布層上に設けてもよく、何れの方法を採用してもよい。
本発明における離型フィルムに関して、離型層が設けられていない面には本発明の主旨を損なわない範囲において、接着層、帯電防止層、オリゴマー析出防止層等の塗布層を設けてもよい。
また、離型フィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
本発明のフィルムのたるみ量(平面性)は、15mm/m以下、好ましくは7.5mm/m以下である。フィルム幅が1460mm以上を有するフィルム幅は、たるみ量の影響が大きく、偏光板の製造工程や、その後の最終製品(液晶偏光板)の平面性への影響と、両方に作用する。特に、粘着剤塗工をする際にフィルムのたるみ量が15mm/mを超えたものへ塗布厚さを一定にする加工を行うことが困難になる。例えば、コーターヘッドとフィルムの間隙が塗布厚さに影響する場合がそうであり、フィルム幅1460mm以上では、たるみ量が15mm/mを超える場合は、コーターヘッドとフィルムが部分的にしか接触できず、条件調整では対処ができない。これはあらゆる塗工方式において同様の影響を及ぼし好ましくない。
また、140℃の雰囲気下で5分間保持したときのフィルム長手方向の加熱収縮率は2.5%以下、好ましくは2.0%以下である。2.5%を超えるフィルムは加熱を含む加工工程で平面性を損なうため好ましくない。
また、140℃の雰囲気下で5分間保持したときのフィルム両端の長手方向の加熱収縮率差は0.2%以下であり、好ましくは0.1%以下である。当該加熱収縮率差が0.2%を超えるフィルムでは、加熱を含む加工工程で蛇行したり、片寄りを起こしたりして加工に好ましくない。
本発明のフィルムの剥離力は、剥離速度30m/分における剥離力が通常100mN/cm以下であり、好ましくは80mN/cm以下であり、アクリル粘着テープに対する、剥離速度30m/分における剥離力が0.3m/分における剥離力の通常3倍以下、好ましくは2.5倍以下である。剥離速度30m/分における剥離力が100mN/cmを超える場合、あるいは、アクリル粘着テープに対する、剥離速度30m/分における剥離力が0.3m/分における剥離力の3倍を超える場合、LCD偏向板からの離型フィルムの剥離時に、偏向板固定側の吸引力が負け、偏向版の位置がずれる不具合が発生することがある。
以下、本発明のフィルムの製造方法に関して具体的に説明するが、本発明の要旨を満足する限り、本発明は以下の例示に特に限定されるものではない。
公知の手法により乾燥したポリエステルチップを溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーをダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
本発明においては、このようにして得られたシートを2軸方向に延伸してフィルム化することが好ましい。延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを好ましくは縦方向に70〜145℃で1.3〜6倍に延伸し、縦1軸延伸フィルムとした後、横方向に90〜160℃で1.3〜6倍延伸を行い、150〜240℃で1〜600秒間熱処理を行うことが好ましい。さらにこの際、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。延伸方法としては、逐次2軸延伸であっても同時2軸延伸であってもよく、同時2軸延伸法による延伸方法が好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その要求特性に応じて必要な特性、例えば帯電防止性、耐候性および表面硬度の向上のため、必要に応じて縦延伸終了後、横延伸のテンター入口前にコートをしてテンター内で乾燥する、いわゆるインラインコートを行ってもよい。また、フィルム製造後にオフラインコートで各種のコートを行ってもよい。このようなコートは片面、両面のいずれでもよい。コーティングの材料としては、オフラインコーティングの場合は水系および/または溶媒系のいずれでもよいが、インラインコーティングの場合は水系または水分散系が好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、本発明の効果を損なわない範囲であれば、フィルムの製膜過程の縦延伸後および/または横延伸後で、乾式の洗浄方法により異物を除去してもよい。もしくは、ポリエステルフィルムの幅、長さを調整するためのスリティング作業、巻き替え作業時に、乾式または湿式の洗浄方法、両洗浄方法の併用により異物除去を行うことが好ましい。湿式の洗浄方法は、洗浄液に超音波振動を付与させて、該液をフィルム表面に接触させることにより、フィルム表面の付着異物を剥離、除去する方法が好適である。
また、本発明のポリエステルフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲であれば、他の熱可塑性樹脂、例えばポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等を混合することができる。また、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、顔料、蛍光増白剤等を混合することができる。
離型層を設置する前段階で、乾式もしくは湿式洗浄、後段階で、乾式洗浄によりフィルム表面に付着した異物を除去することが好ましい。さらに、前段階では、乾式洗浄、次いで、洗浄液に超音波振動を付与させて、該液をフィルム表面に接触させることにより、フィルム表面の付着異物を剥離、除去する方法を用いて異物除去することが好適である。
本発明によれば、液晶偏光板の製造工程の高速化や低価格実現に向けての広幅化において、加工適正に優れ、かつ高速剥離性が安定している液晶偏光板用離型フィルムを提供することができ、本発明の工業的価値は高い。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中「部」とあるのは「重量部」を示す。また、本発明で用いた測定法は次のとおりである。
(1)ポリエステルの固有粘度の測定
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
(2)平均粒径(d50:μm)の測定
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA−CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
(3)加熱収縮率の測定
フィルムの両端の長手方向について15mm幅×150mm長の短冊上にサンプルを切り出し、無張力状態で140℃雰囲気中5分間、熱処理しその前後のサンプルの長さを測定することにより次式にて熱収縮率(%)を計算した。
加熱収縮率(%)=[(a−b)/a]×100
上記式中、aは熱処理前のサンプル長、bは熱処理後のサンプル長である。また、収縮率差は両端の測定結果より大きい値から小さい値を引いて値が正になるよう算出した。
(4)たるみ量の測定
空中に水平に置かれた2本の平行ロールに、ロール状フィルムから巻きだしたフィルムをかけ、ロールの間隔を1.5m、フィルムにかかる張力を40g/mmでとした。2本の平行ロールを結んでできる平面から、下に沈み込んだフィルム面までの距離を全面積で測定し、その(最大値−最小値)をフィルム幅で割った数値をたるみ量(mm/m)とした。
(5)離型層の塗布量測定
蛍光X線測定装置((株)島津製作所(製)型式「XRF−1500」)を用いてFP(Fundamental Parameter Method)法により、下記測定条件下、離型フィルムの離型層が設けられた面および離型層がない面の珪素元素量を測定し、その差をもって、離型層中の珪素元素量とした。次に得られた珪素元素量を用いて、−SiO(CHのユニットとしての塗布量(Si)(g/m)を算出した。
《測定条件》
分光結晶:PET(ペンタエリスリトール)
2θ:108.88°
管電流:95mA
管電圧:40kv
(5)離型フィルムの剥離力の評価
・剥離力A(剥離速度0.3m/分)の測定
試料フィルムの離型面に粘着テープ(日東電工(株)製「No.31B」)を貼り付けた後、50mm×300mmのサイズにカットし、室温にて1時間放置後の剥離力を測定した。剥離力は(株)インテスコ製「インテスコモデル2001型」を使用し、引張速度0.3(m/分)の条件下、180°剥離を行った。
・剥離力B(剥離速度30m/分)の測定
試料フィルムの離型面に粘着テープ(日東電工(株)製「No.31B」)を貼り付けた後、50mm×300mmのサイズにカットし、室温にて1時間放置後の剥離力を測定した。剥離力はテスター産業(株)製高速剥離試験機「TE−702型」を使用し、試料フィルムの離型面が上面になるように固定し、貼り合わせているNo.31B粘着テープ側を剥離する方法にて剥離速度30(m/分)にて180°剥離を行った。
(6)実用特性
<フィルムの平面性検査>
フィルム上に離型剤を塗布しドライヤー温度120℃、ライン速度30m/分の条件で得た離型フィルムの平面性を目視にて検査した。
○;極めて平面性がよく実用性に富んでいる
△;やや平面性に欠けるが実用的である
×;平面性が悪く実用性に欠ける
以下の実施例および比較例において使用したポリエステルの製造方法は以下のとおりである。
[ポリエステルの製造方法]
(ポリエステルチップの製造法)
ジメチルテレフタレート100部、エチレングリコール70部、および酢酸カルシウム一水塩0.07部を反応器にとり、加熱昇温すると共にメタノール留去させエステル交換反応を行い、反応開始後、約4 時間半を要して230℃ に昇温し、実質的にエステル交換反応を終了した。次に燐酸0.04部および三酸化アンチモン0.035部を添加し、常法に従って重合した。すなわち、反応温度を徐々に上げて、最終的に280℃とし、一方、圧力は徐々に減じて、最終的に0.05mmHgとした。4時間後、反応を終了し、常法に従い、チップ化して固有粘度が0.65であるポリエステルAを得た。さらに、上記ポリエステルAを製造する際、平均一次粒径2.4μmの非晶質シリカを5000ppm添加し、ポリエステルBを得た。また、上記ポリエステルAを製造する際、平均一次粒径60nmのδ型の酸化アルミニウムを20000ppm添加し、ポリエステルCを得た。
(ポリエステルフィルムの製造)
・ポリエステルフィルム(A)
上記ポリエステルAを70重量%、ポリエステルBを30重量%の配合比で180℃で4時間、不活性ガス雰囲気中で乾燥し、溶融押出機により290℃で溶融し、口金から押出し静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。得られた未延伸シートにまず、95℃で延伸倍率を長手方向に2.5倍延伸し、テンターに導き、幅方向に4.7倍の逐次二軸延伸を行った。その後、230℃ で10秒間の熱処理を行い、その後180℃ で幅方向に10% の弛緩を加え、幅3000mm、厚み38μmのポリエステルフィルムロールを得た。このロールの中央部分をスリットして、フィルムをコアに10000m巻取り、幅1600mmのポリエステルフィルム(A)を得た。
・ポリエステルフィルム(B)
ポリエステルフィルムの製造(A)において、幅3000mmのポリエステルフィルムロールを二分割にスリットし、幅1460mmのポリエステルフィルムを得る以外はポリエステルフィルムの製造(A)と同様にしてポリエステルフィルム(B)を得た。
・ポリエステルフィルム(C)
ポリエステルフィルムの製造(A)において、延伸倍率を長手方向に2.8倍、幅方向に4.6倍、延伸後の熱処理温度を225℃に変更する以外はポリエステルフィルムの製造(A)と同様にしてポリエステルフィルム(C)を得た。
・ポリエステルフィルム(D)
ポリエステルフィルムの製造(A)において、延伸倍率を長手方向に3.3倍、幅方向に4.2倍、延伸後の熱処理温度を190℃に変更する以外はポリエステルフィルムの製造(A)と同様にしてポリエステルフィルム(D)を得た。
・ポリエステルフィルム(E)
ポリエステルフィルムの製造(A)において、延伸倍率を長手方向に1.9倍、幅方向に4.6倍に変更する以外はポリエステルフィルムの製造(A)と同様にしてポリエステルフィルム(E)を得た。
実施例1:
ポリエステルフィルム(A)に、下記離型剤組成−1からなる離型剤を塗布量(乾燥後)が0.1g/mになるようにリバースグラビアコート方式により塗布し、ドライヤー温度120℃、ライン速度30m/分の条件でロール状の離型フィルムを得た。得られたPETフィルムに下記離型剤組成−1からなる離型層を塗布量が0.12g/m(乾燥後)になるように設けて離型フィルムを得た。
《離型剤組成−1》
・30%トルエン溶液での粘度が15000mPa・s、主ポリマーにビニル基をシロキサン単位で約5%含有する溶剤型シリコーン(信越化学(株)製:KS−830、不揮発分30%) 100重量部
・(CHSiO(−SiH(CH)−O)−Si(CHで表されるシリコーン(Gelest社製:HMS−991、粘度約20mPa・s) 2重量部
・白金含有触媒(信越化学(株)製:catPL−50T) 1重量部
これをトルエン/MEK/イソオクタンの混合溶媒(混合比率は1:1:1)にて希釈し、固形分濃度2重量%の塗布液を作製した。
実施例2:
実施例1において、ポリエステルフィルム(A)をポリエステルフィルム(B)に変更する以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
実施例3:
実施例1において、ポリエステルフィルム(A)をポリエステルフィルム(C)に変更する以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
実施例4:
実施例1において、塗布剤組成を下記に示す離型剤組成−2に変更する以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
《離型剤組成−2》
・30%トルエン溶液での粘度が8000mPa・s、主ポリマーにビニル基をシロキサン単位で約8%含有する溶剤型シリコーン(信越化学(株)製:KS−3601、不揮発分30%) 100重量部
・(CHSiO(−SiH(CH)−O)−Si(CHで表されるシリコーン(Gelest社製:HMS−991、粘度約20mPa・s) 3重量部
・白金含有触媒(信越化学(株)製:catPL−50T) 1重量部
これをトルエン/MEK/イソオクタンの混合溶媒(混合比率は1:1:1)にて希釈し、固形分濃度2重量%の塗布液を作製した。
比較例1:
実施例1において、ポリエステルフィルム(A)をポリエステルフィルム(D)に変更する以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
比較例2:
実施例1において、ポリエステルフィルム(A)をポリエステルフィルム(E)に変更する以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
比較例3:
実施例1において、塗布剤組成を下記に示す離型剤組成−3に変更する以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
《離型剤組成−3》
・30%トルエン溶液での粘度が15000mPa・s、主ポリマーにビニル基をシロキサン単位で約1%含有する溶剤型シリコーン(信越化学(株)製:KS−3703、不揮発分30%) 100重量部
・(CHSiO(−SiH(CH)−O)−Si(CHで表されるシリコーン(Gelest社製:HMS−991、粘度約20mPa・s) 0.36重量部
・白金含有触媒(信越化学(株)製:catPL−50T) 1重量部
これをトルエン/MEK/イソオクタンの混合溶媒(混合比率は1:1:1)にて希釈し、固形分濃度2重量%の塗布液を作製した。
比較例4:
実施例1において、塗布剤組成を下記に示す離型剤組成−4に変更する以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
《離型剤組成−4》
・30%トルエン溶液での粘度が15000mPa・s、主ポリマーにビニル基をシロキサン単位で約0.4%含有する溶剤型シリコーン(信越化学(株)製:KS−847H、不揮発分30%) 85重量部
・MQレジンを含有する剥離調整剤(信越化学(株)製:KS−3800、不揮発分30%) 15重量部
・白金含有触媒(信越化学(株)製:catPL−50T) 1重量部
これをトルエン/MEK/イソオクタンの混合溶媒(混合比率は1:1:1)にて希釈し、固形分濃度2重量%の塗布液を作製した。
Figure 2009214402
Figure 2009214402
本発明の離型フィルムは、例えば、液晶偏光板の製造用の離型フィルムとして好適に利用することができる。

Claims (1)

  1. フィルム幅が1460mm以上のポリエステルフィルムの片面に、ビニル基を含有するポリシロキサン鎖におけるビニル基の含有割合がシロキサン単位で3%以上であるシリコーンを塗工した離型フィルムであり、当該離型フィルムのたるみ量が15mm/m以下であり、140℃の雰囲気下で5分間保持したときのフィルム両端長手方向の加熱収縮率が2.5%以下、同条件におけるフィルム両端長手方向の加熱収縮率の差が0.2%以下であることを特徴とする離型フィルム。
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