JP5595899B2 - 偏光板用離型ポリエステルフィルム - Google Patents

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Description

本発明は、光学用途向けとして好適な偏光板用ポリエステルフィルムに関するものである。
近年、偏光板用途、または、基材レス両面粘着シートにおいて、剥離力の軽いフィルムの要求がある。このような軽い剥離力の離型フィルムを偏光板を貼り合わせて使う場合、クロスニコル法での検査をすることがある。この検査時に、貼り合わせた離型フィルムの異物等の欠点検出を容易とするため、離型フィルムに用いる二軸配向ポリエステルフィルムの配向主軸の傾きを小さくする提案がなされている(例えば、特許文献1等)。
偏光板用の離型フィルムは、外部に付着している異物はもちろんのこと、内部における異物も粘着剤と共に検査するため、今まで以上に異物等の欠点管理が重要な問題となっている。上記のような欠点検出については、偏光板基材などの光学用途に離型ポリエステルフィルムを用いる場合、偏光板を貼り付けたまま、異物など発見のための光学検査を行うことがある。そのため、原反に偏光板検査を可能する処方が必要となってくる。
特開2009−220496号公報 特開2003−231214号公報 特開2002−361737号公報 特開2001−301024号公報 特開2009−220496号公報 特開2010−132561号公報 特開平10−158519号公報
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、検査時の不具合を容易に検出することができ、光学用途、例えば、タッチパネル、液晶偏向板、位相差板等に好適に利用することのでき、さらに、粘着剤による剥離力、シリコーン成分の移行特性が共に低くする等が挙げられ、それらの問題を解決し、さらに、偏光検査性に優れる偏光板用離型ポリエステルフィルムを提供する。
本発明者は、上記実情に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するポリエステルフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、アルケニル基含有ポリジオルガノシロキサンを含む無溶剤系付加反応硬化型シリコーンを含有する塗布剤を塗布して設けられた離型層を片面に有する離型フィルムであり、該離型層中に25℃における粘度が150〜250mPa・Sである無溶剤系付加反応硬化型シリコーンを0.5〜5.0重量部含有し、離型層のテープ剥離力が15mN/cm以下であり、かつ、シリコーン系成分の移行性評価接着率が90%以上であることを特徴とする偏光板用離型ポリエステルフィルムに存する。
本発明によれば、剥離力が軽く、低分子シリコーン成分の移行性が低く、かつ、空気暴露性に優れ、さらには、偏光検査性に優れる離型ポリエステルフィルムを提供することができるため、その工業的価値は高い。
本発明でいうポリエステルフィルムとは、いわゆる押出法に従い押出口金から溶融押出されたシートを延伸したフィルムである。
上記のフィルムを構成するポリエステルとは、ジカルボン酸と、ジオールとからあるいはヒドロキシカルボン酸から重縮合によって得られるエステル基を含むポリマーを指す。
ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を、ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール等を、ヒドロキシカルボン酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等をそれぞれ例示することができる。かかるポリマーの代表的なものとして、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2、6−ナフタレート等が例示される。
本発明のフィルム中には、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することが好ましい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されているような耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.01〜3μm、好ましくは0.1〜2μmの範囲である。平均粒径が0.01μm未満の場合には、易滑性を十分に付与できない場合がある。一方、3μmを超える場合には、フィルムの製膜時に、その粒子の凝集物のために透明性が低下することがある他に、破断などを起こしやすくなり、生産性の面で問題になることがある。
さらにポリエステル中の粒子含有量は、通常0.001〜5重量%、好ましくは0.005〜3重量%の範囲である。粒子含有量が0.001重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、5重量%を超えて添加する場合には、フィルムの透明性が不十分な場合がある。
ポリエステル層中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが良い。
また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常10〜350μm、好ましくは15〜100μmの範囲である。
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常90〜140℃、好ましくは95〜120℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常90〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
また、本発明のポリエステルフィルム製造に関しては、同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常90〜140℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
本発明のフィルムの塗布層上に形成する離型層は、離型性を有する材料を含有するものであり、具体的には、無溶剤系付加反応硬化型シリコーンを含有する塗布剤を塗布することにより設けられた離型層であり、当該離型層によれば、離型性が良好となるので好ましい。硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。
本発明においては、付加型を主体とし、主に比較的分子量の小さい無溶剤型の付加反応硬化タイプを用いる。
本発明において使用する、シリコーン樹脂の例としては以下のようなものが挙げられる。
(A)1分子中に2個以上のアルケニル基を有するポリジオルガノシロキサン
(B)SiH基を含有するポリオルガノシロキサン
ここで、(A)成分は、1分子中に2個以上のアルケニル基を有するポリジオルガノシロキサンであり、このようなアルケニル基含有ポリジオルガノシロキサンとしては、下記一般式(1)で示されるものが例示できる。
(3−a)SiO−(RXSiO)m−(R2SiO)n−(RXSiO)p−R(3-a)SiO …(1)
上記一般式(1)において、Rは炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、Xはアルケニル基含有の有機基である。aは0〜3の整数で1が好ましく、mは0以上であるが、a=0の場合、mは2以上であり、mおよびnは、それぞれ100≦m+n≦20000を満足する数であり、pは2以上である。Rは炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、トリル基などのアリール基などが挙げられるが、特にメチル基、フェニル基が好ましい。Xはアルケニル基含有の有機基で炭素数2〜10のものが好ましく、具体的にはビニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、アクリロイルプロピル基、アクリロイルメチル基、メタクリロイルプロピル基、シクロヘキセニルエチル基、ビニルオキシプロピル基等が挙げられるが、特にビニル基、ヘキセニル基などが好ましい。
このポリジオルガノシロキサンの性状は、オイル状、生ゴム状であればよく、(A)成分の粘度は、25℃において100mPa・s以上、特に1000mPa・s以上が好ましい。なお、上限としては、特に限定されないが、他成分との混合の容易さから、重合度が20000以下となるように選定することが好ましい。また、(A)成分は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(B)成分であるSiH基を含有するポリオルガノシロキサンは架橋剤であり、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2 個、好ましくは3 個以上有するオルガノヒドロポリシロキサンで、直鎖状、分岐状、環状のものなどを使用することができる。(B)成分としては、下記一般式(2)で表される化合物を挙げることができるが、これらのものには限定されない。
b1 (3-b)SiO−(HR1SiO)x−(R1 2SiO)y−SiR1 (3-b)b …(2)
上記一般式(2)において、R1は炭素数1〜6の脂肪族不飽和結合を含有しない1価炭化水素基である。bは0〜3の整数、x、yはそれぞれ整数であり、このオルガノヒドロポリシロキサンの25℃における粘度が1〜5000mPa・sとなる数を示す。このオルガノヒドロポリシロキサンの2 5 ℃ における粘度は、1〜5000mPa・s、特に5〜1000mPa・sであることが好ましく、また2種以上の混合物でもよい。
付加反応による架橋は、(A)成分と架橋剤の(B)成分の間で生じ、硬化後の粘着層のゲル分率は架橋成分の割合によって決まる。(B)成分の使用量は、(A)成分中のアルケニル基に対する(B)成分中のSiH基のモル比が0.5〜20、特に0.8〜15の範囲となるように配合することが好ましい。0.5未満では架橋密度が低くなり、これにともない保持力が低くなることがある。一方で、20を越えると粘着力が低下したり、処理液の使用可能時間が短くなったりする場合がある。
また、耐熱保持力などの耐熱性や溶剤浸透抑制などの耐溶媒性を向上させるためには、組成物中の架橋成分の割合を増やせばよいが、過剰に増やすと粘着力の低下や膜の柔軟性が低下するなどの影響が発生する場合がある。このような点から、(A)/(B)成分の配合質量比は20/80〜80/20とすればよく、特に45/55〜70/30とすることが好ましい。(A)成分の配合割合が20/80より少ないと、粘着特性が低下することがあり、また、80/20より多いと十分な耐熱性が得られないことがある。
本発明において、記載の剥離力、シリコーンの移行性を達成するためには、上記のように配合した無溶剤系付加反応硬化型シリコーンを使用しなければならない。その配合した無溶剤系付加反応硬化型シリコーンの25℃における粘度は、5〜1000mPa・sが好ましく、より好ましくは20〜500mPa・s、さらに好ましくは、50〜250mPa・sであり、本発明の実施例、比較例で用いられた無溶剤系付加反応硬化型シリコーンの25℃における粘度は、150〜250mPa・sの範囲のものであった。
無溶剤型シリコーン系樹脂塗剤の具体例を挙げると、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製のDEHESIVEシリーズのうち、DEHESIVE 636、919、920、921、924、929等が挙げられる。さらに離型層の剥離性等を調整するために剥離コントロール剤を併用してもよい。また、上述のとおり、離型層中にアミノ基を有するシラン化合物を添加することもある。
本発明におけるポリエステルフィルムでは、無溶剤系付加反応硬化型シリコーンの離型層中の含有量は、通常0.5〜5.0重量部の範囲である。好ましくは、1.0〜3.0重量部である。0.5重量部よりも少ない含有量では、目的の軽剥離が満足できないことがある。また、5.0重量部よりも大きい値では、低分子量シリコーンの移行性分が多く存在しているため、生産性に影響を及ぼすことがある。
本発明において、ポリエステルフィルムに離型層を設ける方法としては、リバースロールコート、グラビアコート、バーコート、ドクターブレードコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。本発明における離型層の塗布量は、通常0.01〜1g/mの範囲である。
本発明において、離型層が設けられていない面には、接着層、帯電防止層、オリゴマー析出防止層等の塗布層を設けてもよく、また、ポリエステルフィルムにはコロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
また、粘着剤層または離型層の塗膜の乾燥および/または硬化(熱硬化、電離放射線硬化等)は、それぞれ個別または同時に行うことができる。同時に行う場合には、80℃以上の温度で行うことが好ましい。乾燥および硬化の条件としては、80℃以上で10秒以上が好ましい。乾燥温度が80℃未満または硬化時間が10秒未満では塗膜の硬化が不完全であり、塗膜が脱落しやすくなるため好ましくない。
本発明におけるポリエステルフィルムでは、離型層をきれいかつ頑丈にするため、付加型の反応を促進する白金系触媒を用いる。本成分としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とオレフィンとの錯体、塩化白金酸とアルケニルシロキサンとの錯体等の白金系化合物、白金黒、白金担持シリカ、白金担持活性炭が例示される。
また、付加型の反応は非常に反応性が高いため、場合によっては、不可反応抑制剤として、アセチレンアルコールを添加することがある。その成分は炭素−炭素3重結合と水酸基を有する有機化合物であるが、好ましくは、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールおよびフェニルブチノールからなる群から選択される化合物である。
本発明における、剥離力とは、両面粘着テープ(日東電工製「No.31B」)を離型層面に貼り付け、室温にて1時間放置した後に、基材フィルムと剥離角度180°、任意の引張速度でテープを剥離したときに引張試験機で測定した値を言う。本発明において特定の剥離力を調整する方法は、離型層中の組成を選択することにより達成することができるが、その他の手段も採用でき、主にシリコーン離型層の離型剤の種類を、所望の剥離力に応じて変更することが好ましく、さらには、剥離力は用いる離型剤の塗布量に大きく依存するため、その離型剤の塗布量を調整する方法がさらに好ましい。本発明の離型フィルムにおける剥離力は10〜15mN/cmの範囲である。当該剥離力が10mN/cm未満の場合、剥離力が軽くなりすぎて本来剥離する必要がない場面においても容易に剥離する不具合を生じる。本発明におけるポリエステルフィルムにおける上記剥離力を達成させる手段は、25℃における粘度が5〜1000mPa・sである無溶剤系付加反応硬化型シリコーンを一定量配合したシリコーンを塗布膜として、ポリエステルフィルムの外層に積層することである。
本発明における離型層のシリコーン系成分の移行性評価接着率とは、フィルムで挟んで温度60℃、圧力1MPaの条件で2時間プレスしたときの、粘着テープ(日東電工(株)製「No.31B」)を用いた剥離力を測定し、処理前との剥離力の比を取った値で示される。剥離力は(株)インテスコ製「インテスコモデル2001型」を使用し、引張速度0.3(m/分)の条件下、180°剥離を行った。当該移行性評価接着率は、90%以上である必要がある。移行性評価接着率が90%よりも低い場合、移行成分が異物等の不具合となったり、巻き取り時に離型コート面と反対面へ移行して、先の工程で当該離型フィルムを剥離する際に不具合を生じたりする。
本発明において、ポリエステルフィルムにおける上記移行性を達成させる手段は、例えば、25℃における粘度が5〜1000mPa・sである無溶剤系付加反応硬化型シリコーンを一定量配合したシリコーンを塗布膜として、ポリエステルフィルムの外層に積層することが挙げられる。
本発明における離型層の空気暴露性の評価は、室温23℃湿度50%RHの非クリーン室で24時間つり下げた(暴露)後、粘着テープ(日東電工(株)製「No.31B」)を用いた剥離力を測定し、暴露前との剥離力の比を取った値で示される。剥離力は(株)インテスコ製「インテスコモデル2001型」を使用し、引張速度0.3(m/分)の条件下、180°剥離を行った。空気暴露後の剥離力は、15mN/cmよりも小さく、かつ、暴露前後の剥離力変動が±10%以内であることが好ましい。この範囲を外れる場合、製品として、温度、湿度の変化に著しく弱いフィルムとなり、保管コントロールが難しいなどの不具合となることがある。
本発明の偏光板用離型ポリエステルフィルムにおいて、工程の光学検査等で異物や光干渉色の発生を低減するには、離型フィルムをマイクロ波方式分子配向計で測定したMOR_C値の最適化が非常に重要である。
本発明の離型フィルムのMOR_C値は1.5〜3.0であり、好ましくは1.8〜2.7、さらに好ましくは2.1〜2.4である。MOR_C値が3.0よりも大きい場合には、離型層の均一性に欠けたり、光学検査において、光干渉色が見えやすくなる等の不具合が生じたりする。MOR_C値が1.5よりも小さい場合には、離型フィルム自体の生産歩留まり悪くなってしまう等の問題がある。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
(1)ポリエステルの固有粘度の測定
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
(2)平均粒径(d50:μm)の測定
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA−CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
(3)ポリエステルフィルムの透過率測定
JIS − K7105に準じ、日本電色工業社製積分球式濁度計NDH−300Aによりポリエステルフィルムの全光線透過率を測定した。次のような基準で判断する。
(4)ポリエステルフィルムのヘーズ(濁度)測定
JIS−K7105に準じ、日本電色工業社製積分球式濁度計NDH−20Dにより、フィルムのヘーズを測定した。
(5)ポリエステルフィルムの加熱収縮率測定
ポリエステルフィルムを縦長さの方向(以後、MDと略する)と横幅の方向(以後、TDと略する)にそれぞれ、任意の長さL(cm)でサンプリングする。続いて、そのサンプルをオーブンで160℃、5分の加熱を行い、そのサンプルをオーブンから取り出して長さl(cm)を測定する。この操作を3回行い、平均値を加熱収縮率の値として採用する。下記式で加熱収縮率は算出できる。
加熱収縮率(%)={(L−l)/L}×100
(6)塗布層中触媒量測定
SAICASを用いて、試料フィルムに斜め切削を行い、断面を露出させた。その後、TOF−SIMS(飛行時間型質量分析マススペクトル)を用いて、ポリエステルフィルム塗布層中に含まれる白金を含む触媒量を求めた。
(7)塗布層中の触媒量測定
SAICASを用いて、試料フィルムに斜め切削を行い、断面を露出させた。その後、TOF−SIMS(飛行時間型質量分析マススペクトル)を用いて、ポリエステルフィルム塗布層中に含まれる白金を含む触媒量を求めた。
(8)離型フィルムの剥離力(F)の評価
試料フィルムの離型層表面に両面粘着テープ(日東電工製「No.31B」)の片面を貼り付けた後、50mm×300mmのサイズにカットした後、室温にて1時間放置後の剥離力を測定する。剥離力は、引張試験機((株)インテスコ製「インテスコモデル2001型」)を使用し、引張速度300mm/分で、180°剥離を行った。次のような基準で判断する。
○:15mN/cm以下
×:15mN/cmより大きい
(9)離型フィルムのシリコーン低分子成分移行性の評価(XRF)
蛍光X線測定装置((株)島津製作所(製)型式「XRF−1500」)を用いてFP(Fundamental Parameter Method)法により、下記測定条件下、離型フィルムの離型層が設けられた面および離型層がない面の珪素元素量を測定し、その差をもって、離型層中の珪素元素量とした。次に得られた珪素元素量を用いて、−SiO(CHのユニットとしての塗布量(Si)(g/m)を算出した。
《測定条件》
分光結晶:PET(ペンタエリスリトール)
2θ:108.88°
管電流:95mA
管電圧:40kv
(10)離型フィルムのシリコーン低分子成分移行性の評価
試料フィルムをA4大に切り取り、離型面に75μm厚2軸延伸PETフィルム(三菱樹脂株式会社製:ダイアホイルT100−75)を重ねて温度60℃、圧力1MPaの条件で2時間プレスする。この離型面に押し当てた75μm厚フィルムを移行性評価フィルムとする。未処理のPETフィルムにも同様にして75μm厚2軸延伸PETフィルム(同)を押し当て、基準フィルムとする。それぞれのフィルムの押し当てた面に粘着テープ(日東電工(株)製「No.31B」)を貼り付けた後、50mm×300mmのサイズにカットし、室温にて1時間放置後の剥離力を測定した。剥離力は(株)インテスコ製「インテスコモデル2001型」を使用し、引張速度0.3(m/分)の条件下、180°剥離を行った。
移行性評価接着率(%)=(移行性評価フィルムの剥離力/基準フィルムの剥離力)×100
得られた結果を次の基準で判断する。
○:90%以上
×:90%より小さい
(11)離型フィルムの耐空気暴露性の評価
試料フィルムをA4大に切り取り、室温23℃湿度50%RHに調節された実験室(非クリーン環境)内に渡した紐に24時間つり下げる。離型面に粘着テープ(日東電工(株)製「No.31B」)を貼り付けた後、50mm×300mmのサイズにカットし、室温にて1時間放置後の剥離力を測定した。剥離力は(株)インテスコ製「インテスコモデル2001型」を使用し、引張速度0.3(m/分)の条件下、180°剥離を行った。
次の基準で判断する。
○:15mN/cm以下
×:15mN/cmより大きい
(12)ポリエステルフィルムのマイクロ波分子配向計によるMOR_C値測定
王子計測機器株式会社製のマイクロ波方式分子配向計を用い、透過マイクロ波強度パターンからMOR_C値を求めた。次のような基準で判断する。
○:2.0〜2.5
△:1.5〜1.9、もしくは、2.6〜3.0
×:1.5%よりも低い、もしくは、3.0よりも高い
(13)実用特性
<クロスニコル下での目視検査性>
偏光板検査を考慮に入れて、フィルム上に離型剤を塗布しドライヤー温度120℃、ライン速度30m/minの条件で得た離型フィルムの幅方向が、偏光フィルムの配向軸と平行となるように、粘着剤を介して離型フィルムを偏光フィルムに密着させ偏光板とし、密着させた離型フィルム上に配向軸がフィルム幅方向と直交するように検査用の偏光板を重ね合わせ、偏光板側より白色光を照射し、検査用の偏光板より目視にて観察し、クロスニコル下での目視検査性を下記基準に従い評価した。なお、測定の際には、得られたフィルムの幅方向に対し中央部と両端部の計3ヶ所から、それぞれA4サイズのサンプルを切り出して実施した。
「判定基準」
○:光干渉性無く検査可能
△:光干渉はあるが検査可能
×:光干渉があり検査不能
○および△のものが実使用上問題のないレベルである。
(14)離型特性
粘着層を有する積層フィルムより離型フィルムを剥がした時の状況より、離型特性を評価した。
○:離型フィルムがきれいに剥がれ、粘着剤が離型層に付着する現象、または、離型層由来のシリコーン低分子成分が粘着剤に付着しない
△:離型フィルムは剥がれるが、速い速度で剥離した場合に粘着剤が離型層に付着する、または、離型層由来のシリコーン低分子成分が少量ながら粘着剤に付着する
×:離型フィルムに粘着剤が付着する、上手く剥がれない、または、離型層由来のシリコーン低分子成分が粘着剤に付着する
(15)総合評価
製膜性、生産性、検査特性全てを考慮に入れた評価を行う。次の基準で判断する。
○:生産しても充分に製品として供給できる。
△:生産性が良い、かつ、不具合の頻度が少ない。
×:生産性が悪い。不具合が多発する。
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
<ポリエステル(a)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒としてテトラブトキシチタネートを加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた後、4時間重縮合反応を行った。
すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.61に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、極限粘度0.61のポリエステル(a)を得た。
<ポリエステル(b)の製造方法>
ポリエステル(a)の製造方法において、エチレングリコールに分散させた平均粒子径2.0μmのシリカ粒子0.2部を加えて、極限粘度0.61に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステル(a)の製造方法と同様の方法を用いて、極限粘度0.61のポリエステル(b)を得た。
実施例1:
〈ポリエステルフィルムの製造〉
表層の原料としてポリエステル(a)77重量%と、ポリエステル(b)23重量%を混合し、中間層の原料として、ポリエステル(a)を使用し、2台のベント付き押出機に各々供給し、290℃で溶融押出した後、静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。次いで、100℃にて縦方向に2.8倍延伸した後、テンターに導き、テンター内で予熱工程を経て120℃で5.1倍の横延伸を施した後、220℃で10秒間の熱処理を行い、その後180℃で幅方向に4%の弛緩を加え、幅4000mmのマスターロールを得た。このマスターロールの端から1400mmの位置よりスリットを行い、コアに1000m巻き取りし、ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの全厚みは38μm(層構成:表層4μm/中間層30μm/表層4μm)であった。
得られたポリエステルフィルムに、下記に示す離型剤組成−Aからなる離型剤を塗布量(乾燥後)が0.12g/mになるようにリバースグラビアコート方式により塗布し、ドライヤー温度120℃、ライン速度30m/分の条件でロール状の離型ポリエステルフィルムを得た。得られた離型ポリエステルフィルムは、剥離力が12mN/cm離型フィルムで、シリコーン系成分の移行性評価接着率が95%、耐空気暴露性試験で空気暴露1日後の剥離力が13mN/cm以下、空気暴露前後の剥離力変動比は8%、さらに、MOR_C値は2.3であった。
<離型剤組成−A>
付加型硬化シリコーン樹脂(BY24−561 30%:東レ・ダウコーニング社製)6.7部
無溶剤系付加型硬化シリコーン樹脂(DEHEISIVE 929 固形分濃度100重量%:旭化成ワッカーシリコーン社製) 1.0部
硬化剤(V24 固形分濃度100重量%:旭化成ワッカーシリコーン社製)
0.08部
付加型白金触媒(BY24−835 固形分濃度100重量%:東レ・ダウコーニング社製) 0.30部
MEK/トルエン/n−ヘプタン混合溶媒(混合比率は1:1:1.5)
得られたポリエステルフィルムは、下記方法で偏向板を作成し、クロスニコル下での目視検査性と剥離特性の評価を行った。得られた離型フィルムは光干渉性無く検査可能であり、かつ、偏光板綺麗に剥がれ、粘着剤が離型層に付着する現象が見られなかった。
<離型フィルム付き偏光板の製造>
偏光板に下記に示すアクリル粘着剤を、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、130℃の乾燥炉内を30秒で通過させた後、離型フィルムを貼り合わせ、粘着剤を介して離型フィルムと偏光フィルムが密着された離型フィルム付き偏光板を作成した。フィルムの貼り合せ方向は、離型フィルムの幅方向が、偏光フィルムの配向軸と平行となるように行った。
・アクリル粘着剤塗布液
アクリル粘着剤(オリバインBPS429−4:東洋インキ製) 100部
硬化剤(BPS8515:東洋インキ製) 3部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1) 50部
実施例2〜6:
実施例1において、ポリエステルフィルム製造時の延伸倍率、フィルム厚さを変更する、塗布層中離型剤組成の無溶剤系シリコーン含有量を変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。得られた結果をまとめて下記表1に示す。
Figure 0005595899
比較例1〜
実施例1において、ポリエステルフィルム製造時の延伸倍率、フィルム厚さを変更する、塗布層中離型剤組成の無溶剤系シリコーン含有量を変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。得られた結果をまとめて下記表2に示す。
Figure 0005595899
本発明のポリエステルフィルムは、需要が大きい光学用途における偏光板用、もしくは、基材レス両面粘着シート用分野で、工程汚染や粘着剤への異物軽減を図ることで生産性生産性が良く、剥離力が小さい、かつ偏光検査性に優れる離型ポリエステルフィルムとして好適に利用することができる。

Claims (2)

  1. アルケニル基含有ポリジオルガノシロキサンを含む無溶剤系付加反応硬化型シリコーンを含有する塗布剤を塗布して設けられた離型層を片面に有する離型フィルムであり、該離型層中に25℃における粘度が150〜250mPa・Sである無溶剤系付加反応硬化型シリコーンを0.5〜5.0重量部含有し、離型層のテープ剥離力が15mN/cm以下であり、かつ、シリコーン系成分の移行性評価接着率が90%以上であることを特徴とする偏光板用離型ポリエステルフィルム。
  2. 1日空気暴露後の離型層のテープ剥離力が15mN/cm以下である請求項1に記載の偏光板用離型ポリエステルフィルム。
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